(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給電線用延線機に前記給電線を送るとき、給電線の送り方向の先端にガイドワイヤを予め接続しておくと共にガイドワイヤを前記延線経路上に予め配設しておき、前記給電線の先端をガイドワイヤで引きながら給電線を延線する請求項5又は6記載の給電線の延線方法。
前記延線経路の全長に亘って前記給電線を延線した後、前記給電線を更に上方に送って前記給電線の終端を前記巻取ドラムから排出し、その給電線の終端を前記給電線用延線機で下方に送って前記巻取ドラムより下方の高層建築物に給電線を延線する請求項5〜7のいずれかに記載の給電線の延線方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、アンテナ以外にも用途を拡げた電波塔等の高層建築物が建築されており、このような高層建築物にも給電線を布設する必要性が生じてきている。
【0005】
このような高層建築物に給電線を布設する場合、給電線を複数箇所屈曲させて布設しなければならないが、給電線は高周波同軸ケーブルからなり、内部が空洞であるため、曲げに弱く、屈曲部をローラで支持するものとしても容易には布設できないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、給電線を複数箇所屈曲させて布設する必要のある高層建築物であっても給電線を容易に延線できる給電線用延線装置及び給電線用延線装置を用いた給電線延線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、建築物に固定される基部と、前記基部に設けられ給電線を軸方向に送るための送り機構と、前記送り機構に接続され送り機構を駆動する駆動部とを備え、前記送り機構は、前記給電線を挟むように対向して配置された一対の無限軌道と、前記無限軌道にその循環方向に沿って複数設けられ給電線を把持すべく弧状に形成された受部を有するケーブル把持部とを有し、前記受部は、前記給電線の周方向に分割されると共に、ケーブル把持部本体に前記給電線と平行な軸回りに揺動可能に設けられたものである。
【0008】
前記ケーブル把持部本体は、前記無限軌道に設けられ無限軌道と一体に循環する。また、前記受部には、前記給電線に当接する緩衝材が設けられるとよい。
【0009】
前記受部には、受部を揺動方向の一方に付勢するスプリングが設けられるとよい。また、前記スプリングは、分割された前記受部のそれぞれと前記ケーブル把持部本体との間に設けられるとよい。
【0010】
また、高層建築物に、巻取ドラムに巻かれた給電線を繰り出し可能に設けると共に、請求項1〜3のいずれかに記載の給電線用延線機を巻取ドラムから上方に延びると共に屈曲する延線経路に沿って複数配設し、巻取ドラムに巻かれた給電線を巻取ドラムから繰り出しつつ延線経路上の給電線用延線機に順次送って延線するものである。
【0011】
前記延線経路の屈曲部の前後に前記給電線用延線機を配設するとよい。
【0012】
前記給電線用延線機に前記給電線を送るとき、給電線の送り方向の先端にガイドワイヤを予め接続しておくと共にガイドワイヤを前記延線経路上に予め配設しておき、前記給電線の先端をガイドワイヤで引きながら給電線を延線するとよい。
【0013】
また、前記延線経路の全長に亘って前記給電線を延線した後、前記給電線を更に上方に送って前記給電線の終端を前記巻取ドラムから排出し、その給電線の終端を前記給電線用延線機で下方に送って前記巻取ドラムより下方の高層建築物に給電線を延線するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給電線を複数箇所屈曲させて布設する必要のある高層建築物であっても給電線を容易に延線できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は垂直に延びる延線経路に沿って高層建築物に設置した給電線用延線機の正面図であり、
図2は前記給電線用延線機を右側から視た側面図であり、
図3は前記給電線用延線機の要部底面図である。
【0017】
図1、
図2及び
図3に示すように、給電線用延線機1は、高層建築物等の建築物2に固定される基部3と、基部3に設けられ給電線4を軸方向に送るための送り機構5と、送り機構5に接続され送り機構5を駆動する駆動部6とを備える。
【0018】
基部3は、金属フレームからなり、建築物2の梁等にボルト、ナット等の締結具(図示せず)を介して着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0019】
送り機構5は、給電線4を挟むように対向して配置された一対の無限軌道機構7と、これら無限軌道機構7を給電線4に押し付けるための押付機構8とからなる。
【0020】
図2及び
図5に示すように、押付機構8は、基部3に設けられたギヤボックス9と、ギヤボックス9内のギヤ(図示せず)に設けられ外周に雄ネジが形成された一対のクランプシャフト10と、これらクランプシャフト10に螺合されクランプシャフト10が回転したときクランプシャフト10に沿って移動する可動フレーム11とからなる。ギヤボックス9内には、各クランプシャフト10に動力を伝達するための一対の前記ギヤが回転自在に設けられている。前記ギヤは互いに噛合されており、一対のクランプシャフト10を反対方向に回転させるようになっている。また、一対のクランプシャフト10に形成される雄ネジは互いに逆向きとなるように形成されており、クランプシャフト10が逆向きに回転しても可動フレーム11を同じ方向に送るようになっている。一方のクランプシャフト10には、押付用スプロケット12が設けられている。押付用スプロケット12は、押付用無端チェーン13を介して押付モータ14に連結されており、押付モータ14の動力を受けて回転するようになっている。
【0021】
図1、
図3及び
図4に示すように、無限軌道機構7は、可動フレーム11に設けられ給電線4の送り方向に延びる支持フレーム15と、支持フレーム15の両端に回転自在に設けられた一対の平行な回転軸(シャフト)16と、これら回転軸16に設けられ回転軸16と一体に回転する送り用スプロケット17と、これら送り用スプロケット17に巻回された無端チェーンからなる無限軌道18と、無限軌道18にその循環方向に沿って複数設けられ給電線4を把持するためのケーブル把持部19とを備える。一方の回転軸16には、駆動部6からの動力を一方の回転軸16に伝えるためのベベルボックス20が設けられている。送り用スプロケット17は、それぞれの回転軸16に軸方向に間隔を隔てて二段に設けられている。無限軌道18は、同じ段の送り用スプロケット17同士を各段毎に独立して接続するように二段に設けられており、無限軌道機構7間に給電線4を挟んだとき、対向する無限軌道機構7同士の無限軌道18が給電線4を挟んで対向するようになっている。
【0022】
ケーブル把持部19は、一対の無限軌道18に設けられ無限軌道18と一体に循環するケーブル把持部本体21と、ケーブル把持部本体21に設けられ給電線4を把持すべく弧状に形成された受部22とを備える。ケーブル把持部本体21は、アルミニウムからなり、回転軸16と平行に延びるブロック状に形成されている。受部22は、無限軌道機構7間の給電線4の周方向に二分割されると共に、ケーブル把持部本体21に給電線4と平行な軸回りに揺動可能に設けられている。これにより、受部22は、給電線4に押し付けられたとき給電線4の凹凸や当接した部位の硬さ等に応じて揺動し、給電線4の外周を均等に押圧するようになっている。
【0023】
また、受部22を周方向に分割してなる分割受部23は、それぞれアルミニウムからなり、給電線4の外周を把持するための受面24を有する。受面24は、直径15cmの給電線4の約1/4周の長さに形成されている。受面24には、給電線4に当接する緩衝材25が設けられており、給電線4の凹凸や硬さの違い等を吸収するようになっている。緩衝材25は、ゴムシートからなり、受面24の全面に焼き付けて設けられている。
【0024】
また、それぞれの分割受部23には、ケーブル把持部本体21にピン26を介して揺動可能に取り付けられるブラケット部27が一体に設けられると共に、分割受部23を揺動方向の一方に付勢するためのスプリング28が設けられている。具体的には、スプリング28はコイルスプリングからなる。スプリング28は、ピン26からケーブル把持部本体21に沿って延びる分割受部23とケーブル把持部本体21との間に圧縮した状態で設けられている。これにより、一対の分割受部23は給電線4に当接していないとき、同じケーブル把持部本体21に設けられた分割受部23同士を常に開いた姿勢に保つようになっている。
【0025】
また、給電線4には同時に複数のケーブル把持部19が当接するようになっており、広い面積で給電線4を把持するようになっている。具体的には、給電線4に同時に当接するケーブル把持部19のうち、送り方向の上流端のケーブル把持部19から下流端のケーブル把持部19までの長さは40cmに設定されている。
【0026】
図1及び
図2に示すように、駆動部6は、電動モータ(図示せず)と、電動モータに減速機(図示せず)を介して接続された一対のフレキシブルシャフト30とを備える。これらフレキシブルシャフト30は、同じ回転速度で互いに逆回転するようになっている。また、一対のフレキシブルシャフト30は、それぞれ別々の無限軌道機構7のベベルボックス20に回転軸16と直交する姿勢で接続されている。
【0027】
次に、給電線用延線機1を用いた給電線4の延線方法について述べる。
【0028】
図7(a)に示すように、高層建築物等の建築物2の所定階から頂上のアンテナ31まで給電線4を延線する場合、まず、建築物2に給電線用延線機1、ウインチ32等の延線工事に必要な機器を設置する。
【0029】
具体的には、建築物2の所定階に、巻取ドラム33に巻かれた給電線4を繰り出し可能に設ける。巻取ドラムは手動ブレーキを有するものとし、巻き付けが緩んできたら適宜ブレーキを掛けられるとよい。また、巻取ドラム33から上方に延びると共に屈曲する延線経路34に沿って給電線用延線機1を複数配設する。このとき、給電線用延線機1の配設位置は、延線経路34の屈曲部36の前後となるように設定する。ただし、延線経路34が異なる方向に連続的に屈曲する場合、一連の屈曲を一つの屈曲部36とする。給電線用延線機1は予め無限軌道機構7同士が離間した状態としておく。巻取ドラム33に最も近い給電線用延線機1は横引き用とし、巻取ドラム33からの給電線4を引出す目的で設置する。また、各給電線用延線機1を集中コントローラ35に接続する。集中コントローラ35は、各給電線用延線機1を一括して制御するためのものである。集中コントローラ35は、押付モータ14による締付の許可・禁止の設定を給電線用延線機1毎にできるようになっており、延線中の各給電線用延線機1での誤動作を防ぐようになっている。また、集中コントローラ35は、稼動させる給電線用延線機1のON・OFF、送り出しのスピード調整が可能となっている。集中コントローラ35は、稼動中の給電線用延線機1が1分間に送り出しするm数を表示する表示部(図示せず)を有する。またさらに、建築物2にウインチ32を設置すると共に、ウインチ32に接続されたガイドワイヤ37を延線経路34上に配置し、かつ、ガイドワイヤ37の先端を給電線4の送り方向の先端に接続する。また
図7(b)に示すように、延線経路34の屈曲部36に給電線4をガイドするためのガイドローラ38を設ける。なお、建築物2に前記機器を設置する順序は前後してもよい。
【0030】
次に、巻取ドラム33に巻かれた給電線4を、巻取ドラム33から繰り出しつつ延線経路34上の給電線用延線機1に順次送って延線する。このとき、ウインチ32でガイドワイヤ37を巻き取ることで給電線4の先端をガイドワイヤ37で引きながら給電線4を延線する。これにより、給電線4の先端が延線経路34上から外れるのを防ぐことができる。
【0031】
図6に示すように、給電線用延線機1に至った給電線4は、先端をガイドワイヤ37に引かれながら給電線用延線機1の無限軌道機構7間を通過する。給電線4の先端にはアンテナ31に接続するためのコネクタ39が設けられているが、無限軌道機構7同士は予め離間されているため、給電線4は容易に無限軌道機構7間を通過できる。給電線4が無限軌道機構7間を通過したら、一対の無限軌道機構7を給電線4に押し付けるように給電線用延線機1の操作ボタン(図示せず)を操作する。
図2及び
図5に示すように、押付モータ14が回転駆動されると共にクランプシャフト10が回転され、一対の可動フレーム11が互いに近接する方向に移動する。これにより、給電線4の両側に無限軌道機構7が押し付けられ、給電線4の両側が複数のケーブル把持部19に把持される。ケーブル把持部19の分割受部23はそれぞれケーブル把持部19の凹凸等に応じて揺動するため、給電線4に片当たりすることはなく、給電線4を複数の受面24で把持できると共に弧状の受面24全体で把持でき、給電線4が無限軌道機構7からの圧力で折れたり凹んだりするのを防ぐことができる。
【0032】
この後、給電線4を延線経路34に沿って順方向に送るように給電線4を把持した給電線用延線機1の駆動部6を集中コントローラ35で駆動する。駆動部6の動力はフレキシブルシャフト30を介してそれぞれの無限軌道機構7の回転軸16に伝達され、対向する無限軌道18が互いに反対方向に循環駆動される。これにより、給電線4を把持したケーブル把持部19がそれぞれ延線経路34に沿って順方向に移動され、給電線4が送られる。このとき、例えば一般的な形状の無限軌道で給電線4を把持すると把持している長さ方向全体に力が掛かるため、給電線4の径のバラツキ具合により把持力に差が出てしまい、給電線4に局所的に過度な力がかかる事も考えられるが、分割受部23が給電線4の外周形状に倣うように揺動するため、連続的に流れる給電線4の径のバラツキにも対応しながら所定の把持力で給電線4を把持でき、給電線4に局所的に大きな力がかかることはない。また、同じケーブル把持部本体21に設けられた一対の分割受部23は、ケーブル把持部本体21に沿って延びる分割受部23が給電線4に当接することで閉じるため、分割受部23が給電線4に擦れることはない。
【0033】
給電線4が延線経路34の屈曲部36に至ったら、給電線4をガイドローラ38に沿って屈曲させる。屈曲部36にあっては、延線中に給電線4の曲がる位置が動き、無限軌道機構7間の給電線4に径方向の力がかかる事もあるが、分割受部23が揺動して給電線4の力を吸収することができるため、無限軌道機構7間の給電線4に無理な力がかかることはない。
【0034】
以降、上述と同様の手順を繰り返して給電線4をアンテナ31の位置まで延線する。
【0035】
また
図7(c)に示すように、巻取ドラム33より下方の建築物2にも給電線4を延線する必要がある場合、その分の長さだけ給電線4の長さを長くしておき、延線経路34の全長に亘って給電線4を延線した後、給電線4を更に上方に送って給電線4の終端を巻取ドラム33から排出し、給電線4の終端を各給電線用延線機1で下方に送って巻取ドラム33より下方の建築物2に給電線4を延線するとよい。
【0036】
このように、給電線用延線機1が、建築物2に固定される基部3と、基部3に設けられ給電線4を軸方向に送るための送り機構5と、送り機構5に接続され送り機構5を駆動する駆動部6とを備え、送り機構5は、給電線4を挟むように対向して配置された一対の無限軌道18と、無限軌道18にその循環方向に沿って複数設けられ給電線4を把持すべく弧状に形成された受部22を有するケーブル把持部19とを有し、受部22は、給電線4の周方向に分割されると共に、ケーブル把持部本体21に給電線4と平行な軸回りに揺動可能に設けられるものとしたため、給電線4を複数箇所屈曲させて布設する必要のある建築物2であっても給電線4を傷めることなく容易に布設できる。
【0037】
受部22には、給電線4に当接する緩衝材25が設けられるものとしたため、給電線4が傷むのを更に良好に防ぐことができる。
【0038】
受部22には、受部22を揺動方向の一方に付勢するスプリング28が設けられるものとしたため、給電線4に当接していない受部22が振動等で勝手に揺動するのを防ぐことができる。また、スプリング28は、分割された受部22(分割受部23)のそれぞれとケーブル把持部本体21との間に設けられるものとしたため、簡易な構造で分割受部23を付勢できる。
【0039】
また、建築物2に、巻取ドラム33に巻かれた給電線4を繰り出し可能に設けると共に、給電線用延線機1を巻取ドラム33から上方に延びると共に屈曲する延線経路34に沿って複数配設し、巻取ドラム33に巻かれた給電線4を巻取ドラム33から繰り出しつつ延線経路34上の給電線用延線機1に順次送って延線するため、給電線4を複数箇所屈曲させて布設する必要のある建築物2であっても給電線4を容易に布設できる。
【0040】
延線経路34の屈曲部36の前後に給電線用延線機1を配設するため、屈曲部36であっても安定して容易に給電線4を送ることができる。
【0041】
給電線用延線機1に給電線4を送るとき、給電線4の送り方向の先端にガイドワイヤ37を予め接続しておくと共にガイドワイヤ37を延線経路34上に予め配設しておき、給電線4の先端をガイドワイヤ37で引きながら給電線4を延線するため、延線中に給電線4の先端が延線経路34外に外れるのを防ぐことができ、給電線4を安定して延線できる。
【0042】
また、延線経路34の全長に亘って給電線4を延線した後、給電線4を更に上方に送って給電線4の終端を巻取ドラム33から排出し、その給電線4の終端を給電線用延線機1で下方に送って巻取ドラム33より下方の建築物2に給電線4を延線するため、巻取ドラム33より下方の建築物2にも給電線4を延線する場合であっても容易に給電線4を延線できる。そして、1本の給電線4でアンテナ31と送信機(図示せず)等を接続することができ、複数本の給電線4を接続した場合のように接続部で給電線4の性能が落ちるのを防ぐことができる。
【0043】
なお、受部22は給電線4の周方向に二分割されるものとしたが、三つ以上の複数に分割されるものとしてもよい。
【0044】
また、送り用スプロケット17と無限軌道18は二段に設けられるものとしたが、一段であってもよく、三段以上の複数設けられるものとしてもよい。
【0045】
可動フレーム11は一対のクランプシャフト10に螺合されるものとしたが、三つ以上の複数のクランプシャフト10に螺合されるものとしてもよく、1つのクランプシャフト10に螺合されるものとしてもよい。ただし、1つのクランプシャフト10に螺合されるものとする場合、可動フレーム11がクランプシャフト10と一緒に回転しないように可動フレーム11をガイドするガイド手段を基部3又はギヤボックス9に設けるとよい。
【0046】
緩衝材25はゴムシートからなるものとしたが、他の樹脂シートからなるものであってもよい。
【実施例】
【0047】
給電線用延線機の単体動作・正常性試験の給電線用延線機使用条件の検証実験を行った。試験内容及び結果について述べる。実験では、給電線用延線機を巻取ドラム側からNo.1、No.2、…12と番号をつけて配置した。予備の給電線用延線機には13の番号を付した。
1.給電線用延線機使用による給電線施工時の影響特性について
【0048】
【表1】
2.給電線用延線機単体試験
2−1.圧縮特性
a.電気的特性
[試験概要]
ドラム巻きの給電線(CX−120D)を給電線用延線機(No.2)で押付モータを用いて押し付け後、クランプシャフトをトルクレンチ(200kg・f〜1000kg・f)で増し締めを行い、クランプ圧縮によって生じる給電線の電気的特性(VSWR・特性インピーダンス)を確認した。
[対象機]給電線用延線機No.2
[試験結果纏め]
トルクレンチ200kg・f〜1000kg・f増し締めにおいて、VSWR・特性インピーダンス共に変化は見られず異常はなかった。シースよじれ及びコルゲート変形も無し。
【0049】
【表2】
b.張力確認
[試験概要]
給電線用延線機を横置き設置 給電線(L3.2m)を押付セットした状態で張力計をセット。給電線用延線機を稼動させて張力(滑り出し前のMAX値)の確認を実施。
「モーター押付けのみ」、「モーター押付け+500kg・f」、「モーター押付け+600kg・f」でトルク増締めをしていき、その時の各張力を確認。No.9号機のみ水あり・なしの状態で確認実施。
【0050】
※モーター押付け状態でクランプシャフトに200kg・fトルク増締めを行ったが、既に200kg・fは掛かっている状態であった為、500kg・f・600kg・fにて試験を行った。
【0051】
※クランプシャフトに1000kg・fトルクを掛けるとクランプシャフトが水平応力により変形する虞があった為実施せず。
[対象機]
給電線用延線機全8台(No.1号、7号、8号、9号、10号、11号、12号、予備(13号)
[試験結果纏め]
「モーター押付け状態(増締トルク0kg・f)・水有り」にて430kg(min値)の張力があることを確認。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
2−2.把持力特性
a.把持力確認
[試験概要]
給電線用延線機を縦置きで足場上に設置。給電線(L3.2m:W25kg)を押付セットした状態で錘をセット。350kg(給電線+錘)から10kgづつ割り増ししてケーブル把持部から滑り落ちる時の総荷重を確認。
[対象機]
給電線用延線機No.13号(予備機)
[試験結果纏め]
「モーター押付け状態のみ」で総荷重370kgにて滑り有り。「モーター押付け+トルク500kg・f」状態で総荷重420kgにて滑り有り。
【0054】
【表5】
2−3.給電線用延線機無負荷運転時の駆動系測定
[駆動系測定]
・ベアリングチェッカーによる駆動用減速機(ベベルボックス)及び無限軌道機構の軸受部の回転振動音を確認:2.0G>0.23G(MAX値)にて良好
・施工速度(2m/min、3m/min)での無負荷運転におけるサーボアンプのトルク、回転数、負荷率を確認:各機バラツキは無く、一定速度での駆動良好
・ハンディ型回転計による軸部回転数の測定を行い、サーボアンプ表示の回転数と比較:回転数一致で良好
・全機連動状態での非常停止機能の確認:非常停止良好
3.まとめ
【0055】
【表6】
【0056】
表6より給電線への圧縮力による特性として、押付モータの増締めトルクを1000kg・fで締めても給電線のケーブル電気的及び機械的な特性の変動は見られなかった。また、単体試験において各機のモーター回転数のバラツキもなくー定速度であることを確認出来た。給電線の把持については張力試験・把持力試験のケーブル滑り出しの傾向と実測値から考慮すると押付モータのみ(増締めトルク0kg・f)の状態で370kg以下まで確保出来ているため、現場での給電線用延線機設置間隔を規定(給電線の許容張力÷単位長さ当たりの質量)内に設置することでケーブル特性に悪影響を及ぼすことなく布設可能である。