特許第5765230号(P5765230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765230
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】含フッ素化合物および含フッ素重合体
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/653 20060101AFI20150730BHJP
   C08F 120/22 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C07C69/653CSP
   C08F120/22
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-538525(P2011-538525)
(86)(22)【出願日】2010年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2010069515
(87)【国際公開番号】WO2011052783
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-252409(P2009-252409)
(32)【優先日】2009年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰輝
【審査官】 爾見 武志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−293705(JP,A)
【文献】 特表2003−523350(JP,A)
【文献】 特開2009−031502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/653
C08F 120/22
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)で表される含フッ素化合物。
CH=C(CH)COO(CHPhXC2r+1 …(I)
(ただし、式(I)中、nは0〜2の整数を、Phはフェニレン基を、Xは単結合、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基を、rは2〜6の整数をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記式(I)におけるPhが1,4−フェニレン基である請求項1記載の含フッ素化合物。
【請求項3】
前記式(I)におけるrが4〜6の整数である請求項1または2記載の含フッ素化合物。
【請求項4】
前記式(I)におけるXが単結合である請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
【請求項5】
前記式(I)で表される含フッ素化合物が、下式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表される化合物である請求項1記載の含フッ素化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項6】
前記式(I)におけるrが4〜6の整数であり、かつC2r+1が直鎖状である請求項1〜5のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の含フッ素化合物から選ばれる1種を重合して得られる含フッ素重合体。
【請求項8】
質量平均分子量(Mw)が2000〜1000000である請求項7記載の含フッ素重合体。
【請求項9】
質量平均分子量(Mw)が5000〜500000である請求項8記載の含フッ素重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素化合物およびそれを重合して得られる含フッ素重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に撥水性および撥油性を同時に付与する技術として、分子内にポリフルオロアルキル基(アルキル基の水素原子の少なくとも2個、最大で全ての水素原子がフッ素原子に置換された構造を有する基。以下、ポリフルオロアルキル基を「R基」と記す。)を含有する重合性単量体の重合単位を含む重合体またはこれと他の単量体との共重合体を、有機溶媒溶液または水性分散液としたものを用いて物品を処理することが行われている。
【0003】
この撥水撥油性の発現は、コーティング膜におけるR基の表面配向により、表面に臨界表面張力の低い「低表面エネルギーの表面」が形成されることに起因する。撥水性および撥油性を両立させるためには、表面におけるR基の配向が重要であり、R基の表面配向を実現するためには、重合体中に炭素数8以上のパーフルオロアルキル基(アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された構造を有する基。以下、パーフルオロアルキル基を「R基」と記す。)を有する単量体に基づく構成単位を有することが必要であるとされてきた。
【0004】
しかし、最近、EPA(米国環境保護庁)によって、炭素数が8以上のR基を有する化合物は、環境、生体中で分解し、分解生成物が蓄積するおそれ、すなわち環境負荷が高いおそれが指摘されている。そのため、炭素数が6以下のR基を有する単量体に基づく構成単位を有し、炭素数が8以上のR基を有する単量体に基づく構成単位を含まない撥水撥油剤組成物用の共重合体が要求されている。
【0005】
しかし、炭素数6以下のR基を有する単量体では、炭素数8以下のR基を有する単量体と比べ、表面でのR配向が弱くなるため撥水撥油機能が低下する。そこで、炭素数6以下のR基を有する単量体であっても、微結晶融点が高いR基を有さない単量体と共重合させる(特許文献1)、またはR基を有さず架橋しうる官能基を有する単量体と共重合させる(特許文献2)、ことで撥水撥油機能を高めることが知られている。
【0006】
一方で、炭素数6以下のR基を有する単量体のみからなる重合体では、これまでのところ十分な撥水撥油機能および優れた耐久性を付与することはできていない。
【0007】
そこで、炭素数が6以下のR基、特に炭素数が6以下のR基を有する単量体において、その単量体を重合することにより、高耐久性の撥水撥油機能を備えた重合体が得られる、単量体およびその重合体が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO02/083809国際公開パンフレット
【特許文献2】WO04/035708国際公開パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高耐久性の撥水撥油機能を有する含フッ素重合体の製造が可能な、環境負荷の少ない炭素数が6以下のR基を有する含フッ素化合物、およびその含フッ素化合物を重合して得られる、高耐久性の撥水撥油機能を有し環境負荷の少ない含フッ素重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の要旨を有するものである。
(1)下式(I)で表される含フッ素化合物。
CH=C(CH)COO(CHPhXC2r+1 …(I)
(ただし、式(I)中、nは0〜2の整数を、Phはフェニレン基を、Xは単結合、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基を、rは2〜6の整数をそれぞれ表す。)
(2)前記式(I)におけるPhが1,4−フェニレン基である上記(1)に記載の含フッ素化合物。
(3)前記式(I)におけるrが4〜6の整数である上記(1)または(2)に記載の含フッ素化合物。
(4)前記式(I)におけるXが単結合である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の含フッ素化合物。
(5)前記式(I)で表される含フッ素化合物が、下式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表される化合物である上記(1)に記載の含フッ素化合物。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
(6)前記式(I)におけるrが4〜6の整数であり、かつC2r+1が直鎖状である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の含フッ素化合物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の含フッ素化合物から選ばれる1種を重合して得られる含フッ素重合体。
(8)質量平均分子量(Mw)が2000〜1000000である上記(7)に記載の含フッ素重合体。
(9)質量平均分子量(Mw)が5000〜500000である上記(8)に記載の含フッ素重合体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の含フッ素化合物を用いれば、高耐久性の撥水撥油機能を有しかつ環境に対する負荷が少ない含フッ素重合体の製造が可能である。また、本発明の含フッ素重合体は高耐久性の撥水撥油機能を有し、かつ環境に対する負荷が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を説明する。
<本発明の含フッ素化合物>
本発明の含フッ素化合物は、下記式(I)に示される通り、一方の末端に重合性基としてメタクリロイルオキシ基を有し、他方の末端に炭素数が6以下のR基を有し、この両者を連結する2価の連結基として1個のベンゼン環を含む連結基を有する含フッ素化合物である。このような分子構造の本発明の含フッ素化合物を重合して得られる含フッ素重合体は、撥水撥油機能を有し、かつその撥水撥油機能が長期使用等によっても損なわれない高い耐久性を有するものである。
【0016】
CH=C(CH)COO(CHPhXC2r+1 …(I)
(ただし、式(I)中、nは0〜2の整数を、Phはフェニレン基を、Xは単結合、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基を、rは2〜6の整数をそれぞれ表す。)
【0017】
上記式(I)中、nは0〜2の整数を示すが、好ましいnの数は1または2である。nの数が1または2であれば原料の入手性が高く、耐久性に優れる。上記式(I)においてPhは、フェニレン基を示す。フェニレン基であれば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基および1,4−フェニレン基のいずれであってもよいが、本発明においては、Phが1,4−フェニレン基であることが原材料の入手性の点で好ましい。
【0018】
また、上記式(I)においてXは、単結合、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基を示す。エーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基として、具体的には、−(CH−O−(CH−(ただし、式中mは1〜3の整数を、qは1〜3の整数をそれぞれ表し、m+q=2〜4である。)、および、上記フェニレン基に直接エーテル性酸素原子が結合した−O−(CH−(ただし、式中pは1〜4の整数を表す。)が挙げられる。これらのうちでも、−(CH)−O−(CH−、−O−(CH−等が原材料の入手性の点で好ましい。
なお、本発明においては、上記式(I)におけるXが単結合である化合物、つまり炭素数6以下のR基がベンゼン環に直接結合した化合物が、これを重合して得られる含フッ素重合体に優れた撥水性を付与できる点でより好ましい。
【0019】
さらに、上記式(I)におけるrは2〜6の整数を示すが、rが4〜6の整数である含フッ素化合物が、高い撥水撥油性の点で好ましい。
【0020】
本発明においては、上記式(I)で表される含フッ素化合物のうちでも、特に、下式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
本発明において、上記式(I)におけるrが4〜6の整数であり、かつC2r+1が直鎖状であるのが好ましい。また上記式(I−1)〜(I−3)のR基は、直鎖状であるのが好ましい。
【0024】
<製造方法>
本発明において、上記式(I)で表される含フッ素化合物を製造する方法は特に限定されない。上記式(I)で表される含フッ素化合物の製造方法として、具体的には、式(I)中のXが異なる下記(i)〜(iii)の化合物毎に、以下の製造方法が挙げられる。
Xが単結合である上記式(I)の含フッ素化合物(i)
Xがエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基に分類される基であり、エーテル性酸素原子がベンゼン環に直接結合していない上記式(I)の含フッ素化合物(ii)(この場合、実質的には、アルキレン基の炭素数は2〜4である。)
Xがエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基に分類される基であり、エーテル性酸素原子がベンゼン環に直接結合している上記式(I)の含フッ素化合物(iii)
【0025】
(1)Xが単結合である上記式(I)の含フッ素化合物(i)の製造方法
上記含フッ素化合物(i)は、これに限定されないが、例えば、以下に説明する反応1−1から反応1−4を行うことにより製造することができる。なお、以下の製造過程において、得られる中間物質や目的物質の同定、確認は、H−NMRの測定、FT−IR、元素分析等の、一般的な方法により行うことができる。また、後述の(2)、(3)においてそれぞれ含フッ素化合物(ii)および含フッ素化合物(iii)を製造する場合にも同様の方法で、得られる中間物質や目的物質の同定、確認を行うことができる。
【0026】
<反応1−1>
一般式:Y(CHPhY(式中YはCl、Br、I、または水酸基を、YはBr、またはIを、それぞれ独立に表す。nは0〜2の整数を示す。)で表される化合物を出発物質として用いて、以下の反応式に示すようにこれに有機酸(酢酸)を反応させて化合物(A)を得る。
【0027】
(CHPhY + CHCOOH → CHCOO(CHPhY …(A)
【0028】
上記反応1−1においては、有機酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を用いてもよい。また、反応1−1は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン等を用いることが好ましい。反応1−1は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アセトン、2−ブタノン等を用いることができる。
反応1−1は、具体的には、反応物質である上記出発物質と有機酸(酢酸等)の合計量100質量部に、アルカリ(炭酸カリウム等)を20〜200質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0029】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:40〜150℃、圧力:0〜1MPa、時間:1〜50時間等の条件が挙げられる。なお、圧力条件は、反応における絶対圧力ではなく、加圧または減圧に用いる圧力の範囲を示す。以下、本明細書における反応圧力条件は、これと同様である。
このようにして得られる化合物(A)を含む反応粗液から、化合物(A)を精製する方法としては、例えば、反応粗液を十分な量の蒸留水で数回洗浄し、有機層を分離する方法等が挙げられる。
【0030】
<反応1−2>
次に上記反応1−1で得られた化合物(A)に、以下の反応式に示すように、炭素数6以下のR基(パーフルオロアルキル基)を有する化合物を反応させて、化合物(B)を得る。
【0031】
CHCOO(CHPhY+ C2r+1 → CHCOO(CHPhC2r+1 …(B)(反応式中、YはBrまたはIを表す。)
【0032】
上記反応1−2においては、必要に応じて反応触媒が用いられる。反応触媒として、好ましくは、銅等が挙げられる。また、反応1−2は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMF等を用いることができる。
反応1−2は、上記化合物(A)と炭素数6以下のR基を有する化合物の合計量100質量部に、触媒を10〜100質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0033】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:80〜180℃、圧力:0〜10MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜50時間、等の条件が挙げられる。
このようにして得られる化合物(B)を含む反応粗液から、化合物(B)を精製する方法としては、例えば、反応粗液から蒸留により化合物(B)を取り出し、さらに十分な量の蒸留水で数回洗浄し、有機層を分離する方法等が挙げられる。
【0034】
<反応1−3>
反応1−3は、上記反応1−2で得られた化合物(B)に、以下の反応式に示すようにアルカリ(水酸化ナトリウム)を反応させて化合物(C)を得る反応である。
【0035】
CHCOO(CHPhC2r+1 + NaOH → HO(CHPhC2r+1 …(C)
【0036】
上記反応1−3においては、アルカリとして、水酸化ナトリウムに替えて、水酸化カリウム等を用いてもよい。反応1−3は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、蒸留水とメタノール、エタノール、2−プロパノール等の混合溶媒等を用いることができる。
反応1−3は、具体的には、上記化合物(B)とアルカリ(水酸化ナトリウム等)の合計量100質量部に、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0037】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:30〜100℃、圧力:0〜1MPa、時間:1〜24時間等の条件が挙げられる。
このようにして得られる化合物(C)を含む反応粗液から、化合物(C)を精製する方法としては、例えば、反応粗液に、塩酸、酢酸、硫酸アンモニウム等の酸を加えてpHを2〜7に調整した後、十分な量の有機溶媒、例えば、ジクロロペンタフルオロプロパン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等で抽出し、さらに十分な量の蒸留水で数回洗浄した後、ヘキサン、メタノール等で再結晶させる方法等が挙げられる。
【0038】
<反応1−4>
上記反応1−3で得られた化合物(C)に、以下の反応式に示すようにメタクリル酸化合物を反応させて、本発明の含フッ素化合物(I)のうちXが単結合である(i)を得る。
【0039】
HO(CHPhC2r+1 + CH=C(CH)COY → CH=C(CH)COO(CHPhC2r+1 …(i)(反応式中、YはCl、水酸基またはアルコキシ基を表す。)
【0040】
上記反応1−4において、上記反応1−3で得られた化合物(C)に、メタクリル酸化合物としてYがClの化合物、すなわちメタクリル酸クロリドを反応させる場合、その反応は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、トリエチルアミン、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等が用いられる。この場合、反応1−4は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、ジクロロペンタフルオロプロパン、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、水等が挙げられる。
【0041】
上記メタクリル酸化合物としてメタクリル酸クロリドを用いる場合の反応1−4は、上記化合物(C)とメタクリル酸クロリドの合計量100質量部に、アルカリ(トリエチルアミン等)を25〜100質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で、さらに必要に応じて、ヒドロキノン等の重合禁止剤の適当量を合わせて混合し、次の好ましい反応条件により行われる。溶媒がピリジンの場合にはピリジンがアルカリとしても働くためにアルカリを添加する必要は無い。溶媒が水の場合(Schotten−Baumann反応)には、必要に応じて、N−メチルイミダゾール、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の触媒を用いることもある。
【0042】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:0〜40℃、圧力:0〜1MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜24時間等の条件が挙げられる。
【0043】
上記反応1−4において、上記反応1−3で得られた化合物(C)に、メタクリル酸化合物としてYが水酸基またはアルコキシ基である化合物を反応させる場合、その反応には、触媒として硫酸、4−トルエンスルホン酸1水和物等が用いられる。この場合、反応1−4は、無溶媒、もしくは溶媒中で行われ、このような溶媒として具体的には、トルエン、2−ブタノン等が挙げられる。
【0044】
上記メタクリル酸化合物としてYが水酸基またはアルコキシ基である化合物を用いる場合の反応1−4は、具体的には、上記化合物(C)とメタクリル酸化合物の合計量100質量部に、触媒(硫酸等)を0.01〜10質量部、溶媒を0〜5000質量部の割合で、さらに必要に応じて、ヒドロキノン等の重合禁止剤の適当量を合わせて混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0045】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:50〜150℃、圧力:−0.1〜1MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜100時間等の条件が挙げられる。さらに必要に応じて反応副生成物を留去しながら反応を行うことが好ましい。
【0046】
このようにして得られる含フッ素化合物(i)を含む反応粗液から、含フッ素化合物(i)を精製する方法としては、例えば、反応粗液を十分な量の蒸留水で数回洗浄し、有機層を分離し、溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0047】
(2)Xがエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基に分類される基であり、エーテル性酸素原子がベンゼン環に直接結合していない上記式(I)の含フッ素化合物(ii)(この場合、実質的には、アルキレン基の炭素数は2〜4である。)の製造方法
上記含フッ素化合物(ii)は、これに限定されないが、例えば、以下に説明する反応2−1から反応2−4を行うことにより製造することができる。
【0048】
<反応2−1>
一般式:Y(CHPh(CH(式中、YはCl、Br、I、または水酸基を、YはCl、Br、またはIを、nは0〜2の整数を、mは1〜3の整数を、それぞれ独立に表す。)で表される化合物を出発物質として用いて、以下の反応式に示すようにこれに炭素数6以下のR基を有する化合物を反応させて化合物(D)を得る。
【0049】
(CHPh(CH + C2r+1(CHOH → Y(CHPh(CHO(CH2r+1 …(D)(反応式中、qは1〜3の整数を、m+qは2〜4を、それぞれ表す。)
【0050】
上記反応2−1は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることが好ましい。反応2−1は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、アセトニトリル、DMF、水等を用いることができる。
反応2−1は、具体的には、反応物質である上記出発物質と炭素数6以下のR基を有する化合物の合計量100質量部に、アルカリ(水酸化ナトリウム等)を5〜50質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0051】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:50〜150℃、圧力:0〜5MPa、時間:1〜100時間等の条件が挙げられる。
このようにして得られる化合物(D)を含む反応粗液から、化合物(D)を精製する方法としては、例えば、反応粗液から溶媒を留去したものをメタノール、アセトン等に懸濁させ固体をろ別した後に、溶媒を留去することで化合物(D)を得る方法等が挙げられる。
【0052】
<反応2−2>
上記反応2−1で得られた化合物(D)に、以下の反応式に示すように有機酸(酢酸)を反応させて化合物(E)を得る。
【0053】
(CHPh(CHO(CH2r+1 + CHCOOH → CHCOO(CHPh(CHO(CH2r+1 …(E)
【0054】
上記反応2−2においては、有機酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を用いてもよい。また、反応2−2は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン等を用いることが好ましい。反応2−2は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、DMF、アセトニトリル、アセトン、2−ブタノン等を用いることができる。
反応2−2は、具体的には、上記化合物(D)と有機酸(酢酸等)の合計量100質量部に、アルカリ(炭酸カリウム等)を20〜200質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0055】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:40〜150℃、圧力:0〜1MPa、時間:1〜50時間等の条件が挙げられる。
このようにして得られる化合物(E)を含む反応粗液から、化合物(E)を精製する方法としては、例えば、反応粗液を十分な量の蒸留水で数回洗浄し、有機層を分離する方法が挙げられる。
【0056】
<反応2−3>
反応2−3は、上記反応2−2で得られた化合物(E)に、上記反応1−3と同様にして、以下の反応式に示すようにアルカリ(水酸化ナトリウム)を反応させて化合物(F)を得る反応である。
【0057】
CHCOO(CHPh(CHO(CH2r+1 + NaOH → HO(CHPh(CHO(CH2r+1 …(F)
【0058】
上記反応2−3においては、アルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いてもよい。反応2−3は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、蒸留水とエタノール、メタノール、2−プロパノール等の混合溶媒等を用いることができる。
反応2−3は、具体的には、上記化合物(E)とアルカリ(水酸化ナトリウム等)の合計量100質量部に、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0059】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:30〜100℃、圧力:0〜1MPa、時間:1〜24時間等の条件が挙げられる。
このようにして得られる化合物(F)を含む反応粗液から、化合物(F)を精製する方法としては、例えば、反応粗液に、塩酸、酢酸、硫酸アンモニウム等の酸を加えてpHを2〜7に調整した後、十分な量の有機溶媒、例えば、ジクロロペンタフルオロプロパン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等で抽出し、さらに十分な量の蒸留水で数回洗浄した後、ヘキサン、メタノール等で再結晶させる方法等が挙げられる。
【0060】
<反応2−4>
上記反応2−3で得られた化合物(F)に、上記反応1−4と同様にして、以下の反応式に示すようにメタクリル酸化合物を反応させて、本発明の含フッ素化合物(I)のうちXがエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜4のアルキレン基であり、エーテル性酸素原子がベンゼン環に直接結合していない化合物(ii)を得る。
【0061】
HO(CHPh(CHO(CH2r+1 + CH=C(CH)COY → CH=C(CH)COO(CHPh(CHO(CH2r+1 …(ii)
【0062】
上記反応2−4において、上記反応2−3で得られた化合物(F)に、メタクリル酸化合物としてYがClの化合物、すなわちメタクリル酸クロリドを反応させる場合、その反応は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、トリエチルアミン、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等が用いられる。この場合、反応2−4は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、ジクロロペンタフルオロプロパン、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、水等が挙げられる。
【0063】
上記メタクリル酸化合物としてメタクリル酸クロリドを用いる場合の反応2−4は、具体的には、上記化合物(F)とメタクリル酸クロリドの合計量100質量部に、アルカリ(トリエチルアミン等)を25〜100質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で、さらに必要に応じて、ヒドロキノン等の重合禁止剤の適当量を合わせて混合し、次の好ましい反応条件により行われる。溶媒がピリジンの場合にはピリジンがアルカリとしても働くためにアルカリを添加する必要は無い。溶媒が水の場合(Schotten−Baumann反応)には、必要に応じて、N−メチルイミダゾール、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の触媒を用いることもある。
【0064】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:0〜40℃、圧力:0〜1MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜24時間等の条件が挙げられる。
【0065】
上記反応2−4において、上記反応2−3で得られた化合物(F)に、メタクリル酸化合物としてYが水酸基またはアルコキシ基である化合物を反応させる場合、その反応には、触媒として硫酸、4−トルエンスルホン酸1水和物等が用いられる。この場合、反応2−4は、無溶媒、もしくは溶媒中で行われ、このような溶媒として具体的には、トルエン、2−ブタノン等が挙げられる。
【0066】
上記メタクリル酸化合物としてYが水酸基またはアルコキシ基である化合物を用いる場合の反応2−4は、具体的には、上記化合物(F)とメタクリル酸化合物の合計量100質量部に、触媒(硫酸等)を0.01〜10質量部、溶媒を0〜5000質量部の割合で、さらに必要に応じて、ヒドロキノン等の重合禁止剤の適当量を合わせて混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0067】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:50〜150℃、圧力:−0.1〜1MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜100時間等の条件が挙げられる。さらに必要に応じて反応副生成物を留去しながら反応を行うことが好ましい。
【0068】
このようにして得られる含フッ素化合物(ii)を含む反応粗液から、含フッ素化合物(ii)を精製する方法としては、例えば、反応粗液を十分な量の蒸留水で数回洗浄し、有機層を分離し、溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0069】
(3)Xがエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基に分類される基であり、エーテル性酸素原子がベンゼン環に直接結合している上記式(I)の含フッ素化合物(iii)の製造方法
上記含フッ素化合物(iii)は、これに限定されないが、例えば、以下に説明する反応3−1から反応3−2を行うことにより製造することができる。
【0070】
<反応3−1>
一般式:HO(CHPhOHで表される化合物を出発物質として用いて、以下の反応式に示すようにこれに炭素数6以下のR基を有する化合物を反応させて化合物(G)を得る。
【0071】
HO(CHPhOH + C2r+1(CH → HO(CHPhO(CH2r+1 …(G)(反応式中、YはBrまたはIを、nは0〜2の整数を、pは1〜4の整数を、それぞれ独立に表す。)
上記反応3−1は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン等を用いることが好ましい。反応3−1は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、DMF、アセトニトリル、アセトン、2−ブタノン等を用いることができる。
反応3−1は、具体的には、反応物質である上記出発物質と炭素数6以下のR基を有する化合物の合計量100質量部に、アルカリ(炭酸カリウム等)を10〜100質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0072】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:30〜100℃、圧力:0〜1MPa、時間:1〜24時間等の条件が挙げられる。
このようにして得られる化合物(G)を含む反応粗液から、化合物(G)を精製する方法としては、例えば、反応粗液を十分な量の蒸留水に滴下し、ジクロロペンタフルオロプロパン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等を加えて抽出した後、有機層を分液し十分な量の蒸留水で数回洗浄後、溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0073】
<反応3−2>
上記反応3−1で得られた化合物(G)に、上記反応1−4と同様にして、以下の反応式に示すようにメタクリル酸化合物を反応させて、本発明の含フッ素化合物(I)のうちXがエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜4のアルキレン基であって、エーテル性酸素原子がベンゼン環に直接結合している上記式(I)の含フッ素化合物(iii)を得る。
【0074】
HO(CHPhO(CH2r+1 + CH=C(CH)COY → CH=C(CH)COO(CHPhO(CH2r+1 …(iii)
【0075】
上記反応3−2において、上記反応3−1で得られた化合物(G)に、メタクリル酸化合物としてYがClの化合物、すなわちメタクリル酸クロリドを反応させる場合、その反応は、アルカリの存在下で行うのが好ましい。アルカリとしては、トリエチルアミン、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等が用いられる。この場合、反応3−2は、溶媒中で行われることが好ましく、このような溶媒として具体的には、ジクロロペンタフルオロプロパン、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、水等が挙げられる。
【0076】
上記メタクリル酸化合物としてメタクリル酸クロリドを用いる場合の反応3−2は、具体的には、上記化合物(G)とメタクリル酸クロリドの合計量100質量部に、アルカリ(トリエチルアミン等)を25〜100質量部、溶媒を50〜5000質量部の割合で、さらに必要に応じて、ヒドロキノン等の重合禁止剤の適当量を合わせて混合し、次の好ましい反応条件により行われる。溶媒がピリジンの場合にはピリジンがアルカリとしても働くためにアルカリを添加する必要は無い。溶媒が水の場合(Schotten−Baumann反応)には、必要に応じて、N−メチルイミダゾール、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の触媒を用いることもある。
【0077】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:0〜40℃、圧力:0〜1MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜24時間等の条件が挙げられる。
【0078】
上記反応3−2において、上記反応3−1で得られた化合物(G)に、メタクリル酸化合物としてYが水酸基またはアルコキシ基である化合物を反応させる場合、その反応には、触媒として硫酸、4−トルエンスルホン酸1水和物等が用いられる。この場合、反応3−2は、無溶媒、もしくは溶媒中で行われ、このような溶媒として具体的には、トルエン、2−ブタノン等が挙げられる。
上記メタクリル酸化合物としてYが水酸基またはアルコキシ基である化合物を用いる場合の反応3−2は、具体的には、上記化合物(G)とメタクリル酸化合物の合計量100質量部に、触媒(硫酸等)を0.01〜10質量部、溶媒を0〜5000質量部の割合で、さらに必要に応じて、ヒドロキノン等の重合禁止剤の適当量を合わせて混合し、次の好ましい反応条件により行われる。
【0079】
反応条件として好ましくは、反応容器:ガラス製、SUS製等、温度:50〜150℃、圧力:−0.1〜1MPa、雰囲気:窒素、アルゴン等によるガス置換、時間:1〜100時間等の条件が挙げられる。さらに必要に応じて反応副生成物を留去しながら反応を行うことが好ましい。
【0080】
このようにして得られる含フッ素化合物(iii)を含む反応粗液から、含フッ素化合物(iii)を精製する方法としては、例えば、反応粗液を十分な量の蒸留水で数回洗浄し、有機層を分離し溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0081】
<本発明の重合体>
本発明の重合体は、上記本発明の含フッ素化合物から選ばれる1種を重合して得られる単独重合体である。
【0082】
本発明の重合体は、質量平均分子量(Mw)が2000〜1000000であることが好ましく、5000〜500000であることがより好ましい。質量平均分子量(Mw)がこのような範囲の重合体は撥水撥油性の耐久性の点で有利である。
なお、本明細書でいう重合体の質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)で測定される、ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。
【0083】
上記本発明の含フッ素化合物を重合する方法としては、イオン重合法、ラジカル重合法等の重合方法を用いることができる。特に、重合開始剤としてラジカル開始剤を用いて穏和な条件で重合できる点で、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合は、具体的には懸濁重合、溶液重合、バルク重合、乳化重合等の重合方法を用いて行うことができる。
【0084】
これら重合方法のうちでも、本発明にかかる重合体の製造においては、重合開始剤の存在下、媒体中にて重合を行う重合方法をとることが好ましく、前記媒体として溶媒を用いる溶液重合、または界面活性剤と水を含む媒体を用いて行う乳化重合がより好ましく用いられる。
【0085】
重合体の製造は、具体的には、重合開始剤の存在下、媒体中にて、単量体を重合するものである。
【0086】
また、重合体の製造において、媒体中の単量体濃度は、媒体に対する単量体の容量割合で好ましくは5〜50容量%、より好ましくは20〜40容量%である。媒体としては、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化エーテル等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン等が挙げられる。
【0087】
ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、CHCClF、CHClCFCF、CHClFCFCClF等が挙げられる。
ハイドロフルオロカーボンとしては、CFCHFCHFCFCF、CF(CFCHF、CFCFCFCHCHCH、CF(CFCHCH、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
【0088】
ハロゲン化エーテルとしては、ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、CFCFCFCFOCH、(CFCFCFOCH、CFCFCFCFOCHCH、(CF)CFCFOCHCH、CFCFCF(OCH)CF(CF、CFCFCF(OCHCH)CF(CF、COCF(CF)CFOCH、CHFCFOCHCF、CFCFCHOCFCHF等が挙げられる。
【0089】
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、2−メチルブタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0090】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル等が挙げられる。
エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0091】
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましく、水系媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。
【0092】
重合開始剤の添加量は、単量体の100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0093】
単量体の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調節剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類またはメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。この様な分子量調整剤として、具体的には、メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等が挙げられる。
【0094】
分子量調節剤の添加量は、単量体の100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0095】
重合温度は20〜150℃が好ましい。その他、重合条件は通常アクリレートおよびメタクリレート系重合体を重合するのと同様の条件を適用することが可能である。例えば、重合を窒素雰囲気下で行うことや、振とう等の操作を加えることも可能であり、本発明の製造方法においては好ましい条件である。重合時間は、重合温度等その他の重合条件にもよるが概ね2〜24時間重合することで本発明の重合体を得ることができる。
【0096】
また、本発明の重合体を上記好ましい分子量の範囲、すなわち質量平均分子量(Mw)で、2000〜1000000、より好ましくは5000〜500000の範囲で得るためには、単量体濃度、重合開始剤量、重合温度、分子量調節剤量等の条件を上記の好ましい範囲内で調節すればよい。一般に単量体濃度が高い(低い)、重合開始剤量が少ない(多い)、重合温度が低い(高い)、分子量調節剤量が少ない(多い)重合条件下では、分子量は大きく(小さく)なる。
【0097】
本発明の重合体は、理由は定かではないが、本発明の含フッ素化合物を単量体とすることで、含フッ素化合物の連結基に含むベンゼン環のπ−πスタッキングによる相互作用によって、コーティング膜の表面にR基を表面配向する。R基が表面配向することで、炭素数が6以下のR基を有する単量体であっても高い撥水撥油機能を有することができる。また、本発明の含フッ素化合物は重合性基としてメタクリロイルオキシ基を有しており、これにより主鎖が硬くなる効果と前記相互作用を有することで高耐久性の撥水撥油機能を有することができる。
【実施例】
【0098】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
<1>含フッ素化合物の製造
[実施例1]
撹拌機、ジムロート冷却管を備えた反応器(内容積500mL、ガラス製)に、4−ブロモベンジルブロミド(100.0g)、酢酸(25.2g)、炭酸カリウム(66.4g)およびDMF(200mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が80℃になるように加熱し、さらに2時間攪拌した。
【0099】
得られた反応粗液に蒸留水(150mL)を加え、有機層を分液し、さらに蒸留水(200mL)で2回洗浄して90.5gの上記化合物(A)に分類され、下記構造式(A−1)で示される化合物(A−1)(無色透明液体)を得た。収率は97%であった。
【0100】
【化7】
【0101】
得られた化合物(A−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。なお、各測定値は、測定値に続く()内に示す基に由来する測定値を意味するが、この基に[]で囲まれた部分がある場合は、測定値は[]で囲まれた部分に由来する測定値を意味するものである。以下,実施例で示すNMRの測定結果については、全て同様である。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.15(3H、s、CH−)、5.05(2H、s、−O[CH]Ph−)、7.23(2H、d、Ph)、7.49(2H、d、Ph)。
【0102】
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積1L、ガラス製)に、化合物(A−1)(90.4g)、銅粉末(54.1g)、およびDMSO(600mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が125℃になるように加熱し、窒素雰囲気下、直鎖状のC13I(181.3g)を滴下した。滴下ロートをジムロート冷却管に換え、さらに2時間攪拌した。
【0103】
得られた反応粗液を単蒸留して、DMSOと上記化合物(B)に分類され、下記構造式(B−1)で示される化合物(B−1)の混合物として620gを得た。これに蒸留水(500mL)を加えて分液し、有機層をさらに蒸留水(200mL)で2回洗浄して129.6gの化合物(B−1)(淡黄色液体)を得た。収率は68%であった。
【0104】
【化8】
【0105】
得られた化合物(B−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.14(3H、s、CH−)、5.17(2H、s、−O[CH]Ph−)、7.49(2H、d、Ph)、7.59(2H、d、Ph)。
【0106】
撹拌機、ジムロート冷却管を備えた反応器(内容積500mL、ガラス製)に、化合物(B−1)(129.4g)、水酸化ナトリウム(21.0g)、蒸留水(22mL)およびエタノール(180mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が80℃になるように加熱し、2時間攪拌した。
【0107】
得られた反応粗液に蒸留水(150mL)を加え、塩酸を加えてpH=4になるまで中和すると二層に分離した。下層にジクロロペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、商品名AK−225)(50mL)を加え、蒸留水(150mL)で洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して115.0gの粗生成物(淡黄色固体)を得た。これをヘキサンから再結晶することにより、100.6gの上記化合物(C)に分類され、下記構造式(C−1)で示される化合物(C−1)(白色固体)を得た。収率は89%であった。
【0108】
【化9】
【0109】
得られた化合物(C−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):1.85(1H、s、−OH)、4.79(2H、s、−O[CH]Ph−)、7.51(2H、d、Ph)、7.59(2H、d、Ph)。
【0110】
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積500mL、ガラス製)に、化合物(C−1)(100.5g)、トリエチルアミン(28.4g)、およびAK−225(200mL)を投入して撹拌した。つづいて氷浴にて反応器の内温が10℃以下になるようにして、窒素雰囲気下、メタクリル酸クロリド(25.6g)を滴下した。さらに室温に戻して2時間攪拌した。
【0111】
得られた反応粗液を分液ロートに移し、蒸留水(200mL)で3回洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して111.9gの下記構造式(I−1)で示される直鎖状のC13を有する本発明の含フッ素化合物(I−1)(無色透明液体)を得た。収率は96%であった。
【0112】
【化10】
【0113】
得られた本発明の含フッ素化合物(I−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):1.99(3H、s、CH−)、5.26(2H、s、−O[CH]Ph−)、5.64(1H、s、transC=CH)、6.19(1H、s、cisC=CH)、7.51(2H、d、Ph)、7.60(2H、d、Ph)。
【0114】
[比較例1]
上記含フッ素化合物(I−1)のメタクリロイルオキシ基がアクリロイルオキシ基に置換した構造(下記構造式(Cf−1)に示す)の比較例の含フッ素化合物(Cf−1)を以下の通り製造した。
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積100mL、ガラス製)に、化合物(C−1)(13.50g)、トリエチルアミン(4.49g)、およびAK−225(30mL)を投入して撹拌した。つづいて氷浴にて反応器の内温が10℃以下になるようにして、窒素雰囲気下、アクリル酸クロリド(3.44g)を滴下した。さらに室温に戻して2時間攪拌した。
【0115】
得られた反応粗液を分液ロートに移し、蒸留水(30mL)で3回洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して9.93gの化合物(Cf−1)(無色透明液体)を得た。収率は65%であった。
【0116】
【化11】
【0117】
得られた比較例の含フッ素化合物(Cf−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):5.27(2H、s、−O[CH]Ph−)、5.90(1H、d、transC=CH)、6.19(1H、dd、−CH=)、6.48(1H、d、cisC=CH)、7.51(2H、d、Ph)、7.60(2H、d、Ph)。
【0118】
[実施例2]
撹拌機、ジムロート冷却管を備えた反応器(内容積1L、ガラス製)に、4−(ブロモメチル)ベンジルブロミド(100.0g)、直鎖状のC13CHCHOH(138.0g)、水酸化ナトリウム(16.6g)、およびアセトニトリル(500mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が80℃になるように加熱し、さらに8時間攪拌した。
【0119】
得られた反応粗液の固体をろ別し、溶媒を留去して179.2gの粗生成物を得た。これをメタノール(200mL)に懸濁し、固体をろ別してメタノールを留去し、77.4gの上記化合物(D)に分類され、下記構造式(D−1)で示される化合物(D−1)(H−NMRによる純度80質量%。黄色液体)を得た。収率は30%であった。
【0120】
【化12】
【0121】
得られた化合物(D−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.44(2H、m、−CHCF−)、3.77(2H、t、−O[CH]CHCF−)、4.50(2H、s、−Ph[CH]O−)、4.54(2H、s、Br[CH]Ph−)、7.29−7.40(4H、m、Ph)。
【0122】
撹拌機、ジムロート冷却管を備えた反応器(内容積300mL、ガラス製)に、化合物(D−1)(純度80質量%。55.0g)、酢酸(10.6g)、炭酸カリウム(30.4g)およびDMF(120mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が80℃になるように加熱し、さらに2時間攪拌した。
【0123】
得られた反応粗液を蒸留水(800mL)に落とし、有機層を分液し、さらに蒸留水(100mL)で2回洗浄して48.8gの上記化合物(E)に分類され、下記構造式(E−1)で示される化合物(E−1)(H−NMRによる純度80質量%。淡黄色液体)を得た。収率は100%であった。
【0124】
【化13】
【0125】
得られた化合物(E−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.10(3H、s、CH−)、2.44(2H、m、−CHCF−)、3.77(2H、t、−O[CH]CHCF−)、4.54(2H、s、−Ph[CH]OCH−)、5.10(2H、s、−COO[CH]Ph−)、7.29−7.37(4H、m、Ph)。
【0126】
撹拌機、ジムロート冷却管を備えた反応器(内容積200mL、ガラス製)に、化合物(E−1)(純度80質量%。48.8g)、水酸化ナトリウム(7.41g)、蒸留水(14mL)およびエタノール(60mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が80℃になるように加熱し、2時間攪拌した。
【0127】
得られた反応粗液に蒸留水(100mL)を加え、溶媒を含む下層の溶媒を留去して35.9gの粗生成物(淡黄色固体)を得た。これをヘキサンから再結晶することにより、18.5gの上記化合物(F)に分類され、下記構造式(F−1)で示される化合物(F−1)(白色固体)を得た。収率は37%であった。
【0128】
【化14】
【0129】
得られた化合物(F−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):1.63(1H、s、−OH)、2.44(2H、m、−CHCF−)、3.77(2H、t、−O[CH]CHCF−)、4.54(2H、s、−Ph[CH]OCH−)、4.70(2H、s、HO[CH]Ph−)、7.31−7.38(4H、m、Ph)。
【0130】
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積50mL、ガラス製)に、化合物(F−1)(6.00g)、トリエチルアミン(1.76g)、およびAK−225(20mL)を投入して撹拌した。つづいて氷浴にて反応器の内温が10℃以下になるようにして、窒素雰囲気下、メタクリル酸クロリド(1.55g)を滴下した。さらに室温に戻して2時間攪拌した。
【0131】
得られた反応粗液を分液ロートに移し、蒸留水(20mL)で3回洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して6.01gの下記構造式(I−2)で示される直鎖状のC13を有する本発明の含フッ素化合物(I−2)(無色透明液体)を得た。収率は88%であった。
【0132】
【化15】
【0133】
得られた本発明の含フッ素化合物(I−2)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(3H、s、CH−)、2.44(2H、m、−CHCF−)、3.77(2H、t、−O[CH]CHCF−)、4.54(2H、s、−Ph[CH]OCH−)、5.19(2H、s、−COO[CH]Ph−)、5.58(1H、s、transC=CH)、6.15(1H、s、cisC=CH)、7.32−7.39(4H、m、Ph)。
【0134】
[比較例2]
上記含フッ素化合物(I−2)のメタクリロイルオキシ基がアクリロイルオキシ基に置換した構造(下記構造式(Cf−2)に示す)の比較例の含フッ素化合物(Cf−2)を以下の通り製造した。
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積50mL、ガラス製)に、化合物(F−1)(6.00g)、トリエチルアミン(1.76g)、およびAK−225(30mL)を投入して撹拌した。つづいて氷浴にて反応器の内温が10℃以下になるようにして、窒素雰囲気下、アクリル酸クロリド(1.35g)を滴下した。さらに室温に戻して2時間攪拌した。
【0135】
得られた反応粗液を分液ロートに移し、蒸留水(30mL)で3回洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して5.90gの化合物(Cf−2)(無色透明液体)を得た。収率は89%であった。
【0136】
【化16】
【0137】
得られた比較例の含フッ素化合物(Cf−2)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.44(2H、m、−CHCF−)、3.77(2H、t、−O[CH]CHCF−)、4.55(2H、s、−Ph[CH]OCH−)、5.20(2H、s、−COO[CH]Ph−)、5.85(1H、d、transC=CH)、6.16(1H、dd、−CH=)、6.45(1H、d、cisC=CH)、7.32−7.39(4H、m、Ph)。
【0138】
[実施例3]
撹拌機、ジムロート冷却管を備えた反応器(内容積500mL、ガラス製)に、直鎖状のCCHCHCHBr(35.2g)、4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール(14.3g)、炭酸カリウム(28.5g)およびDMF(100mL)を投入して撹拌した。つづいて反応器の内温が80℃になるように加熱し、さらに3時間攪拌した。
【0139】
得られた反応粗液を蒸留水(800mL)に落とし、AK−225(100mL)を加えて抽出した。有機層を分液し、さらに蒸留水(100mL)で2回洗浄し、AK−225を留去して37.6gの上記化合物(G)に分類され、下記構造式(G−1)で示される化合物(G−1)(白色固体)を得た。収率は92%であった。
【0140】
【化17】
【0141】
得られた化合物(G−1)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):1.37(1H、t、OH)、2.05−2.14(2H、m、−OCH[CH]CH−)、2.22−2.40(2H、m、−CHCF−)、2.82(2H、t、−[CH]Ph−)、3.83(2H、q、HO[CH]−)、4.02(2H、t、−O[CH]CHCH−)、6.85(2H、d、Ph)、7.15(2H、d、Ph)。
【0142】
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積50mL、ガラス製)に、化合物(G−1)(9.50g)、トリエチルアミン(2.90g)、およびAK−225(20mL)を投入して撹拌した。つづいて氷浴にて反応器の内温が10℃以下になるようにして、窒素雰囲気下、メタクリル酸クロリド(2.99g)を滴下した。さらに室温に戻して2時間攪拌した。
【0143】
得られた反応粗液を分液ロートに移し、蒸留水(20mL)で3回洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して9.00gの下記構造式(I−3)で示される直鎖状のCを有する本発明の含フッ素化合物(I−3)(無色透明液体)を得た。収率は81%であった。
【0144】
【化18】
【0145】
得られた本発明の含フッ素化合物(I−3)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):1.93(3H、s、−CH)、2.04−2.14(2H、m、−OCH[CH]CH−)、2.22−2.40(2H、m、−CHCF−)、2.92(2H、t、−[CH]Ph−)、4.02(2H、t、−O[CH]CHCH−)、4.31(2H、t、−COO[CH]−)、5.54(1H、s、transC=CH)、6.08(1H、s、cisC=CH)、6.83(2H、d、Ph)、7.15(2H、d、Ph)。
【0146】
[比較例3]
上記含フッ素化合物(I−3)のメタクリロイルオキシ基がアクリロイルオキシ基に置換した構造(下記構造式(Cf−3)に示す)の比較例の含フッ素化合物(Cf−3)を以下の通り製造した。
撹拌機、滴下ロートを備えた反応器(内容積50mL、ガラス製)に、化合物(G−1)(9.50g)、トリエチルアミン(2.90g)、およびAK−225(30mL)を投入して撹拌した。つづいて氷浴にて反応器の内温が10℃以下になるようにして、窒素雰囲気下、アクリル酸クロリド(2.37g)を滴下した。さらに室温に戻して2時間攪拌した。
【0147】
得られた反応粗液を分液ロートに移し、蒸留水(30mL)で3回洗浄し、AK−225層の溶媒を留去して10.3gの化合物(Cf−3)(無色透明液体)を得た。収率は96%であった。
【0148】
【化19】
【0149】
得られた比較例の含フッ素化合物(Cf−3)のH−NMRの測定結果を以下に示す。
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.05−2.14(2H、m、−OCH[CH]CH−)、2.22−2.40(2H、m、−CHCF−)、2.92(2H、t、−[CH]Ph−)、4.02(2H、t、−O[CH]CHCH−)、4.33(2H、t、−COO[CH]−)、5.82(1H、d、transC=CH)、6.11(1H、dd、−CH=)、6.39(1H、d、cisC=CH)、6.84(2H、d、Ph)、7.15(2H、d、Ph)。
【0150】
<2>重合体の製造
[実施例4〜6]
上記実施例で得られた含フッ素重合体(I−1〜I−3)を単量体(モノマー)として以下の通り重合体(ポリマー)を製造した。
30mLのガラス製重合用アンプルに、表1に示す仕込み量のモノマー、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、および溶媒としてAK−225を入れた。アンプル内部のガスを窒素ガスで置換した後、密閉し、60℃の湯浴中で16時間保持した。
ポリマーを含む溶液を20倍質量のメタノールに滴下し、撹拌して固体を析出させた。得られた固体をろ取し、60℃で一晩真空乾燥して表1に示す質量のポリマーを得た。回収したポリマーの分子量をGPCにより測定した。得られた重合体の質量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0151】
なお、上記質量平均分子量(Mw)の測定は、以下のGPC測定方法により行った。
(GPC測定方法)
回収した重合体を、フッ素系溶媒(旭硝子社製、AK−225)/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール=99/1(体積比)の混合溶媒に溶解させ、0.5質量%の溶液とし、0.2μmのフィルタに通し、分析サンプルとした。該サンプルについて、数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を測定した。測定条件は下記のとおりである。
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC、
カラム:Polymer laboratories社製、MIXED−Eを2本直列でつなげたもの、
測定温度:37℃、
注入量:50μL、
流出速度:1mL/分、
標準試料:Polymer laboratories社製、EasiCal PM−2、
溶離液:フッ素系溶媒(旭硝子社製、AK−225)/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール=99/1(体積比)の混合溶媒。
【0152】
[比較例4〜6]
上記比較例で得られた含フッ素重合体(Cf−1〜Cf−3)を単量体(モノマー)として、実施例4〜6と同じ開始剤、溶媒を、それぞれ表1に示す量を用いて、上記実施例4〜6と同様の条件で重合させた。得られた重合体の質量平均分子量(Mw)を上記実施例と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
<評価>
上記実施例4〜6、比較例4〜6で得られたポリマーのそれぞれについて、下記の方法にて試験板を作製して、撥水撥油性を評価した。結果を表2に示す。
【0155】
[試験板の作製]
得られたポリマーを固形分濃度が2.0質量%となるようにAK−225にて希釈し、処理液とした。ポリマー溶液を3枚のガラスプレートにディップコートし、150℃で10分間乾燥させて表面に皮膜形成がされた処理基板を得た。
【0156】
[撥水撥油性]
上記処理基板の1枚を用いて、該皮膜上の水およびヘキサデカンの接触角を測定することにより、上記実施例、比較例で作製したポリマーを含む処理液から得られる皮膜の撥水撥油性を評価した。なお、接触角の測定は、協和界面科学社製CA−Xを用いて行った。結果として、接触角の実測値とともに、以下の基準に従って評価した結果を表示した。
【0157】
撥水性は、水の接触角100度を基準として3段階で評価した。
◎(接触角110度以上):撥水性に優れる
○(接触角100度以上110度未満):撥水性を有する
×(接触角100度未満):撥水性が不十分である
【0158】
撥油性は、n−ヘキサデカンの接触角50度を基準として3段階で評価した。
◎(接触角70度以上):撥油性に優れる
○(接触角50度以上70度未満):撥油性を有する
×(接触角50度未満):撥油性が不十分である
【0159】
[動的撥水性]
上記処理基板の1枚を用いて、該皮膜上の水に対する動的接触角を測定することにより、上記実施例、比較例で作製したポリマーを含む処理液から得られる皮膜の動的撥水性を評価した。なお、DCAT21(DataPhysics社製)を用い、ウィルヘルミー法にて、水に対する後退角を25℃で測定した。結果として、後退角の実測値とともに、以下の基準に従って評価した結果を表示した。
【0160】
動的撥水性は、水の後退角50度を基準として3段階で評価した。
◎(接触角80度以上):動的撥水性に優れる
○(接触角50度以上80度未満):動的撥水性を有する
×(接触角50度未満):動的撥水性が不十分である
【0161】
[耐久性]
上記処理基板の1枚を用いて、該基板を40℃の蒸留水に3時間浸漬したあとの動的接触角を測定し、該処理を行わない前記後退角と処理後の後退角の変化率から、該皮膜の動的撥水性の耐久性を評価した。結果として、浸漬後の後退角の実測値とともに、以下の基準に従って評価した結果を表示した。
【0162】
◎(変化率10%未満):動的撥水性の耐久性に優れる
○(変化率10%以上50%未満):動的撥水性の耐久性を有する
×(変化率50%以上):動的撥水性の耐久性が不十分である
【0163】
【表2】
【0164】
表2からわかるように、本発明の含フッ素化合物を用いれば、高耐久性の撥水撥油機能を有する重合体を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の含フッ素化合物は環境負荷の少ない炭素数が6以下のR基を有する含フッ素化合物であって、これを重合して得られる重合体は、高耐久性の撥水撥油機能を有することから、環境負荷の高い炭素数8以上のR基を有する共重合体にかわって、撥水撥油剤組成物などに利用可能である。
なお、2009年11月2日に出願された日本特許出願2009−252409号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。