(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基含有含フッ素重合体(A)と下式(1)で表される化合物(1)とを、反応溶媒および下式(2)で表わされる化合物(2)の存在下で、かつ、該化合物(2)の量を水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して化合物(2)中の金属の質量換算で40〜110ppmとして反応させることにより下式(3)で表される基を有する含フッ素重合体(B)を得ることを特徴とする加水分解性シリル基含有含フッ素重合体の製造方法。
OCN(CH2)mSiX1nR13−n(1)
(式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜10の1価炭化水素基、X1は炭素数1〜5のアルコキシ基、nは1〜3の整数、mは1〜5の整数を示す。)
MZn (2)
(式(2)中、Mは、亜鉛、錫、鉛、アルミニウム、チタン、およびジルコニウムから選ばれる1種以上の金属原子であるかまたは該金属原子に1個以上のアルキル基が結合したアルキル金属であり、Zは、酸素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、およびアシルオキシ基から選ばれる1種以上の原子または基である。nは、Mに結合するZの数を示し、Mの酸化数と同じ値の整数である。ただし、nが2以上の場合は、Zで表わされる基は、互いに異なっていてもよい。また、Zから選ばれる基の2以上の基が互いに連結して1個以上の環構造を形成していてもよく、Z中に環構造を形成するZ以外に環構造を形成しないZが存在する場合の該Zは、酸素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、およびアシルオキシ基から選ばれる1種以上の原子または基である。)
−OC(O)NH(CH2)mSiX1nR13−n(3)
(式(3)中、R1、X1、n、およびmは、前記と同じ意味を示す。)
水酸基含有含フッ素重合体(A)が、フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位(A1)および水酸基含有モノマーに基づく繰り返し単位(A2)を含む重合体であり、さらに、アルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合によって連結されてなるモノマーに基づく繰り返し単位(A3)、および置換基を有していてもよいオキセタニル基含有モノマーに基づく単位(A4)から選ばれる1種以上の繰り返し単位を含む重合体である請求項1または2に記載の加水分解性シリル基含有含フッ素重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において本発明を詳しく説明する。
本明細書では、モノマーが重合することによって得られる重合単位を「単位」と、フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位(A1)を「フルオロオレフィンの単位(A1)」または単に「単位(A1)」と記載することがある。その他の重合単位についても同様に記載することがある。
また、本明細書において、式(1)で表される化合物(1)を「化合物(1)」と、式(2)で表される化合物(2)を「化合物(2)」と表わすことがある。(メタ)アクリル酸との記載は、「アクリル酸」または「メタクリル酸」を表わす。(メタ)アクリロイルとの記載は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表わす。
【0014】
本発明は、水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基に、下式(1)で表される化合物(1)のイソシアネート基を反応させることにより得られる下式(3)で表わされる基を有する含フッ素重合体の製造において、下式(2)で表わされる化合物(2)を水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、化合物(2)中の金属の質量換算で40〜140ppm存在させて反応を行うことを特徴とする。
【0015】
OCN(CH
2)
mSiX
1nR
13−n (1)
(式(1)中、R
1は水素原子または炭素数1〜10の1価炭化水素基、X
1は炭素数1〜5のアルコキシ基、nは1〜3の整数、mは1〜5の整数を示す。)
MZ
n (2)
(式(2)中、Mは、酸化数2〜4であり、かつ電気陰性度が1.3〜2.0の金属原子であるかまたは該金属原子に1個以上のアルキル基が結合したアルキル金属であり、Zは、酸素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アシルオキシ基である。nは、Mに結合するZの数を示し、Mの酸化数と同じ値の整数である。ただし、nが2以上の場合は、Zで表わされる基は、互いに異なっていてもよい。また、Zから選ばれる基の2以上の基が互いに連結して1個以上の環構造を形成していてもよく、Z中に環構造を形成しないZが存在する場合の該Zは、酸素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、およびアシルオキシ基から選ばれる1種以上の原子または基である。)
−OC(O)NH(CH
2)
mSiX
1nR
13−n (3)
(式(3)中、R
1、X
1、n、およびmは、前記と同じ意味を示す。)。
【0016】
[水酸基含有含フッ素重合体(A)]
水酸基含有含フッ素重合体(A)(以下、「重合体(A)」ということもある。)は、フッ素原子および水酸基を有する重合体である。フルオロオレフィンの単位(A1)および水酸基含有モノマーの単位(A2)を含有することが好ましい。また、単位(A1)および単位(A2)の他に、アルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合によって連結されてなるモノマー(以下、「アルキル基含有モノマー」という。)の単位(A3)、および置換基を有していてもよいオキセタニル基含有モノマーの単位(A4)から選ばれる1種以上の単位を含むことが好ましい。
【0017】
[フルオロオレフィンに基づく単位(A1)]
フルオロオレフィンに基づく単位(A1)は、フルオロオレフィンが重合して形成された重合単位である。フルオロオレフィンは、不飽和炭化水素化合物の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物であり、かつ、残余の水素原子の一部または全部が塩素原子で置換されていてもよい、重合性の化合物である。
水素原子のうちフッ素原子で置換されている水素原子の数(以下、「フッ素付加数」という。)は2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が2以上であると、塗膜の耐候性が充分となる。
【0018】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等の炭素数2〜3のフルオロオレフィンが好ましく、塗膜の耐候性、耐溶剤性の観点からテトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という。)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」という。)がより好ましい。
重合体(A)中に含まれる単位(A1)は、1種のみでもよいし、2種類以上でもよい。
【0019】
[水酸基含有モノマーに基づく単位(A2)]
水酸基含有モノマーに基づく単位(A2)は、水酸基含有モノマーが重合して形成された重合単位である。水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロへキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル等のポリエチレングリコールモノビニルエーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテル、シクロへキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、テトラエチレングリコールモノアリルエーテル等のポリエチレングリコールモノアリルエーテル類;ヒドロキシ酢酸ビニルエステル、3−ヒドロキシプロピオン酸ビニルエステル、4−ヒドロキシ酪酸ビニルエステル等のヒドロキシアルキルカルボン酸ビニルエステル類;ヒドロキシ酢酸アリルエステル、3−ヒドロキシプロピオン酸アリルエステル、4−ヒドロキシ酪酸アリルエステル等のヒドロキシアルキルカルボン酸アリルエステル類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸1、4−シクロヘキサンジメタノールモノエステル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;ビニル酢酸ヒドロキシメチルエステル、ビニル酢酸2−ヒドロキシエチルエステル、ビニル酢酸3−ヒドロキシプロピルエステル、ビニル酢酸1、4−シクロヘキサンジメタノールモノエステル等のビニル酢酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。
水酸基含有モノマーがポリエチレングリコールモノビニルエーテル類またはポリエチレングリコールモノアリルエーテル類である場合には、多量化数は2〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。
【0020】
水酸基含有モノマーとしては、交互共重合性に優れ、かつ、化合物(1)との反応性が高いことから、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル類がより好ましい。具体的には、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルがより好ましい。
重合体(A)中に含まれる単位(A2)は、1種のみでもよいし、2種類以上でもよい。
【0021】
[アルキル基含有モノマーに基づく単位(A3)]
アルキル基含有モノマーに基づく単位(A3)は、アルキル基含有モノマーが重合して形成された重合単位である。アルキル基含有モノマーは、アルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合によって連結(以下、該エーテル結合とエステル結合を合わせて「連結結合」という。)されたモノマーである。連結結合がエステル基の場合、重合性の不飽和基はエステル結合の酸素原子と結合していることが好ましい。
【0022】
重合性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等のエチレン性不飽和基が好ましい。また、該重合性不飽和基と連結結合とは、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステル、アリルエステルの構造となっていることが好ましい。
アルキル基は、炭素数2〜16であることが好ましく、炭素数2〜10であることがより好ましい。アルキル基の構造としては、直鎖アルキル基または分岐アルキル基が好ましく、環状構造を有していてもよい。該環状構造としては、シクロペンチル基やシクロへキシル基等が好ましい。アルキル基の構造としては、溶剤として後述する弱溶剤を用いた場合に、重合体(A)の溶剤への溶解性が良好であることから、分岐アルキル基がより好ましく、炭素数3〜10の分岐アルキル基が特に好ましい。
【0023】
重合によって単位(A3)を形成するモノマーとしては、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル、ピバリン酸アリル、安息香酸アリル、バーサチック酸アリル等のアリルエステル類等が好ましい。単位(A3)を形成するモノマーは、溶剤として後述する弱溶剤を用いた場合に水酸基含有含フッ素重合体(A)の溶剤への溶解性が向上することから、エチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、バーサチック酸ビニルが特に好ましい。
【0024】
重合体(A)中に含まれる単位(A3)は、1種のみでもよいし、2種類以上でもよい。
【0025】
[オキセタニル基含有モノマーに基づく単位(A4)]
オキセタニル基含有モノマーに基づく単位(A4)は、オキセタニル基を含有するモノマーが重合して形成された重合単位である。オキセタニル基含有モノマーにおけるオキセタニル基は、オキセタン環上に置換基を有していてもよい。オキセタニル基含有モノマーとしては、オキセタニル基を含有するビニルエーテル、オキセタニル基を含有するアリルエーテル、オキセタニル基を含有するイソプロペニルエーテル、オキセタニル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、およびこれらのモノマーにおけるオキセタニル基のオキセタン環上に置換基を有するモノマーが挙げられる。
具体的には、3−エチル−3−ビニロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−ビニロキシシクロへキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−アリロキシメチルオキセタン、3−メタクリロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−アクリロイルオキシメチル−3−エチルオキセタン等が好ましい。入手性およびフルオロオレフィンとの交互共重合性の点から3−エチル−3−ビニロキシメチルオキセタンがより好ましい。
【0026】
重合体(A)中に含まれる単位(A4)は、1種のみでもよいし、2種類以上でもよい。
【0027】
[その他の単位]
重合体(A)は、前記(A1)〜(A4)以外にも、それら以外の単位(以下、「他の単位」という。)を含んでもよい。
他の単位を形成するモノマーは、塗料化の際に、塗膜の強靭性、耐溶剤性等を高めるために、架橋性のモノマーが好ましい。
具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸等の無水カルボン酸基含有モノマー;グリシジルビニルエーテル、グリシジルビニルエステル、グリシジルアリルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマーが好ましく挙げられる。
他の単位が重合体(A)に含有される場合、重合体(A)中の全重合単位に対する他の単位の割合は0〜5モル%が好ましい。他の単位の割合が0モル%であるとは、他の単位を含まないことを意味する。他の単位を含む場合の下限は0モル超%であるが、0.01モル%が好ましい。
【0028】
重合体(A)中に含まれる他の単位は、1種のみでもよいし、2種類以上でもよい。
【0029】
[水酸基含有含フッ素重合体(A)中の単位(A1)、単位(A2)および単位(A3)または単位(A4)の含有量]
重合体(A)中の単位(A1)の割合は、重合体(A)中の全重合単位に対して、10〜90モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。単位(A1)の割合が10モル%以上であると塗膜の耐候性が充分となる。90モル%以下であると溶剤に対する溶解性が充分となる。
重合体(A)中の単位(A2)の割合は、重合体(A)中の全重合単位に対して、1〜70モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましい。単位(A2)の割合が1モル%以上であると、重合体(A)と化合物(1)との相溶性が充分となる。70モル%以下であると、重合体(A)中の水酸基と化合物(1)との反応後、反応容器内の気液界面の内壁部に対して化合物(1)の縮合物が付着しすることにより発生するコンタミの量が少なくなる。
【0030】
重合体(A)中の単位(A3)および単位(A4)の割合は、それぞれ独立に重合体(A)中の全重合単位に対して、5〜70モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましい。単位(A3)の割合が5モル%以上であると溶剤に対する溶解性が充分となる。70モル%以下であると塗膜の柔軟性、耐チッピング性、折り曲げ加工性、基材との密着性が充分となる。単位(A4)の割合がこれらの範囲であると、光硬化を行った際に塗膜の硬度が充分となる。
【0031】
[水酸基含有含フッ素重合体(A)の組成]
重合体(A)は、単位(A1)および単位(A2)を必須の単位として含有することが好ましい。また、重合体(A)は、単位(A3)および単位(A4)から選ばれる少なくとも1種の単位を含有することが好ましく、さらに、他の単位を任意で含む重合体であることが好ましい。
重合体(A)の好ましい単位の組み合わせとしては、CTFEの単位/ヒドロキシアルキルビニルエーテルの単位/アルキルビニルエーテル類の単位の重合体、CTFEの単位/ヒドロキシアルキルビニルエーテルの単位/アルキルビニルエステル類の単位の重合体、TFEの単位/ヒドロキシアルキルビニルエーテルの単位/アルキルビニルエーテル類の単位の重合体、TFEの単位/ヒドロキシアルキルビニルエーテルの単位/アルキルビニルエステル類の単位の重合体、CTFEの単位/ヒドロキシアルキルビニルエーテルの単位/ビニロキシアルキルオキセタン類の単位等が好ましい。また、これらの組み合わせにさらに他の単位を含んだ組み合わせも好ましい。
【0032】
[水酸基含有含フッ素重合体(A)のフッ素含有量]
重合体(A)のフッ素含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。フッ素含有量が多いと、塗膜の耐候性が良好となる。
一方、水酸基含有含フッ素重合体(A)のフッ素含有量は、35質量%以下が好ましい。フッ素含有量がこの範囲であれば、水酸基含有含フッ素重合体(A)の溶剤への溶解性が充分に確保できる。
【0033】
[水酸基含有含フッ素重合体(A)の重合方法]
重合体(A)の重合方法としては、公知の手法により実施することができる。例えば、通常のラジカル重合法が採用でき、その重合形態としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が採用できる。
【0034】
重合体(A)の重合反応は、反応系を均一にして、反応を容易にできることから、有機溶媒を使用した溶液重合が好ましい。重合反応に使用する有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレピン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステル類やエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルアミロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルn−ブチルケトン、エチルアミルケトン等のケトン類;さらに、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノへキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−2−エチルへキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール誘導体が好ましい。
前記の有機溶媒は、1種のみでもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。前記の有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、モノマー原料100重量部に対して、通常、5〜95重量部として使用することが好ましく、20〜80重量部として使用することがより好ましい。
【0035】
重合時の反応温度は、重合開始剤により適宜変更される。ラジカル重合の場合には、通常、0〜130℃が好ましい。反応時間は1〜50間程度が好ましい。
【0036】
溶液重合を行う際の重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケテール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキシン等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−ミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のパーオキシエステル類;t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−へキシルパーオキシ−n−ブチルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−n−プロピルカーボネート等のパーオキシカーボネートエステル類;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロへキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔2−(1−ヒドロキブチル)〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキエチル)−プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロへキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジスルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリジン−2−イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン〕、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ化合物などが好ましい。
これらの重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種類以上を組み合わせでもよい。
【0037】
重合体(A)の重合反応を乳化重合で行う場合には、水中で、かつアニオン系やノニオン系の乳化剤存在下で、水溶性過酸化物、過硫酸塩、水溶性アゾ化合物等の開始剤を用いて重合反応を行うことが好ましい。
重合反応中に微量の塩酸またはフッ酸が生成する場合があるため、重合反応後に炭酸カルシウム、炭酸カリウム等のバッファーで除去することが好ましい。
【0038】
重合体(A)の分子量は、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量(Mn)が5000〜20000であることが好ましい。Mnが5000以上であると、塗膜の耐候性が良好となる。また、Mnが20000以下であると、化合物(1)との反応の際に、ゲル化しにくくなる。
【0039】
重合体(A)としては、ルミフロン(旭硝子(株)製、商品名)、フルオネート(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)、セフラルコート(セントラル硝子(株)製、商品名)、ザフロン(東亞合成(株)製、商品名)、ゼッフル(ダイキン工業(株)製、商品名)等の市販のフッ素樹脂を使用することができる。
【0040】
[式(1)で表される化合物(1)]
本発明の製造方法においては、下式(1)で表わされる化合物(1)が使用される。
【0041】
OCN(CH
2)
mSiX
1nR
13−n (1)
式(1)で表される化合物(1)において、R
1は水素原子または炭素数1〜10の1価炭化水素基であるが、炭素数は1〜5が好ましく、1または2がより好ましい。具体的には、メチル基またはエチル基が好ましい。X
1は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、エトキシ基またはメトキシ基が好ましい。nは1〜3の整数であり、3が好ましく、mは1〜5の整数であり、2〜4がより好ましい。
【0042】
具体的に化合物(1)としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシランが好ましく挙げられる。
これらの中でも入手が容易であることから、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
化合物(1)は、1種のみでもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0043】
[金属原子を含有する化合物(2)]
本発明の製造方法において使用される金属原子を含有する化合物(2)は、下式(2)で表される構造を有する。
【0044】
MZ
n (2)
式(2)で表わされる化合物(2)において、Mは、酸化数2〜4であって、かつ電気陰性度が1.3〜2.5である金属原子であるか、または、該金属原子に1個以上のアルキル基が結合したアルキル金属である。
化合物(2)においては、入手性の観点から、化合物(2)におけるMが金属原子の場合、Mは亜鉛(酸化数2、電気陰性度1.65)、錫(酸化数2と4、電気陰性度1.96)、鉛(酸化数2と4、電気陰性度2.33)、アルミニウム(酸化数3、電気陰性度1.61)、チタン(酸化数4、電気陰性度1.54)またはジルコニウム(酸化数4、電気陰性度1.33)から選ばれる1種以上の金属原子であることが好ましい。さらに、Mは、両性金属であることがより好ましく、具体的には亜鉛、錫、アルミニウムが好ましい。
さらに、Mは上記金属原子にアルキル基が1個以上結合したアルキル金属であってもよい。アルキル金属である場合の金属原子としては錫が好ましい。アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。金属原子1個に結合するアルキル基の数は1〜4が好ましく、2または3がより好ましい。
【0045】
Zは、酸素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、およびアシルオキシ基から選ばれる1種以上の原子または基である。nは、Mに結合するZの数を示し、Mの酸化数と同じ値の整数である。ただし、nが2以上の場合は、Zで表わされる基は、互いに異なっていてもよい。また、Zから選ばれる基の2以上の基が互いに連結して1個以上の環構造を形成していてもよく、Z中に環構造を形成するZ以外に環構造を形成しないZが存在する場合の該Zは、酸素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、およびアシルオキシ基から選ばれる1種以上の原子または基である。
【0046】
化合物(2)は、水酸基とイソシアネート基との反応において、触媒として作用して反応を促進させる。本発明の製造方法によって得られる加水分解性シリル基含有含フッ素重合体の貯蔵安定性を向上させるためには、触媒として使用する化合物は、水酸基とイソシアネート基との反応は促進させるが、シラノール基同士またはシラノール基と他の基との反応には影響しないことが好ましい。
【0047】
酸化数が2〜4であって、かつ電気陰性度が1.3〜2.5の範囲にある金属原子と特定の配位子とを有する化合物(2)は、金属原子上の電子密度と配位子との配位角が最適となり、水酸基とイソシアネート基との反応は促進させるが、シラノール基同士またはシラノール基と他の基との反応には影響しないと考えられる。
【0048】
具体的に化合物(2)は、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;亜鉛プロポキシド、亜鉛ブトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、鉛ブトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、錫プロポキシド、アルミニウムプロポキシド、錫ブトキシド、アルミニウムブトキシドなどの金属アルコキシド;亜鉛フェノキシド、ジルコニウムフェノキシド、鉛フェノキシド、チタンフェノキシド、錫フェノキシド、アルミニウムフェノキシドなどの金属フェノキシド;シュウ酸亜鉛、酢酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸鉛、2−エチルヘキサン酸酸化ジルコニウム、酢酸チタン、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸酸化チタン、2−エチルヘキサン酸錫、2−エチルヘキサン酸アルミニウム、酢酸錫、酢酸アルミニウム、ジブチル錫ジラウレート、トリブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナートなどのカルボン酸の金属塩が好ましい。
これらの中でも、触媒作用が良好であることから、カルボン酸の金属塩が好ましい。また、これらの中でも入手が容易であることから、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、トリブチル錫ジラウレートがより好ましい。また、反応の際に共存させる化合物(2)は、1種のみでもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0049】
本発明の製造方法において使用される前記化合物(2)は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、化合物(2)中の金属の質量換算で40〜140ppmの範囲である。使用される化合物(2)の量の下限値は、45ppmが好ましく、50ppmがより好ましく、60ppmが最も好ましい。一方、上限は、110ppmが好ましく、90ppmが好ましく、80ppmが最も好ましい。
本発明の製造方法においては、化合物(2)は反応触媒として反応を促進する作用を有するが、使用される化合物(2)が少なすぎると触媒として十分に作用せず、反応が遅いもしくは未反応の水酸基含有含フッ素重合体(A)や化合物(1)が残ることがある。しかし、40ppm以上であると、水酸基含有含フッ素重合体(A)と化合物(1)との反応が充分に進行し、未反応のまま残存する水酸基含有含フッ素重合体(A)および化合物(1)が少なくなる、もしくはなくなる。
【0050】
一方、ワニス中の化合物(2)の含有量が多いとワニスの貯蔵安定性が低下するが、共存する化合物(2)の量が前記140ppmに対応する量以下であると、残存する化合物(2)の影響で、得られる重合体を含有するワニスが着色したり、ゲル化して貯蔵安定性が損なわれることがない。また、化合物(1)の自己縮合物が、反応容器の気液界面の内壁部に付着することもない。残存する化合物(2)は、加水分解性シリル基同士の縮合や、残存する水酸基との縮合などを促進して、ゲル化を引き起こすものと考えられる。
【0051】
本発明の製造方法において使用される前記化合物(2)の量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対する化合物(2)中の金属の質量換算値である。生成した加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)の量は水酸基含有含フッ素重合体(A)の量(a)と反応した化合物(1)の量(c)との合計量(a+c)に相当する(未反応物がない場合)ことより、生成した加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対する化合物(2)の量は、金属の質量換算値で、前記数値の(a/(a+c))倍に相当する。実際には、水酸基含有含フッ素重合体(A)の種類、化合物(2)の種類、両者の反応割合等により変化するものであるが、前記数値の140ppmに相当する量は、大略135ppm以下となる。したがって、本発明の製造方法において生成した反応混合物における前記化合物(2)の量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)に対して、化合物(2)中の金属の質量換算値で、大略130ppm以下であり、通常は125ppm以下であると考えられる。なお、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)生成後は化合物(2)の存在は必須ではないので、ワニス等においては化合物(2)の量は0であってもよい。
【0052】
ここで、ワニスとは、合成樹脂などを有機溶剤に溶解させた溶液または分散させた分散液である。本発明においては、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体を有機溶剤に溶解させた溶液または分散させた分散液を示し、該溶液または分散液は加水分解性シリル基含有含フッ素重合体、有機溶剤以外の成分を含有していてもよい。
さらに、反応時に共存する化合物(2)の量がこの範囲であれば、化合物(2)が充分な触媒作用を有し、かつワニスの貯蔵安定性が充分に確保される。そのため、反応後に化合物(2)を除去しなくても、充分な貯蔵安定性を有するワニスが得られる。ワニス中の化合物(2)の量がこの範囲であれば、従来では達成できなかった12ヵ月という超長期に渡る貯蔵安定性が確保できる。
【0053】
水酸基含有含フッ素重合体(A)と化合物(1)との反応においては、水酸基含有含フッ素重合体(A)中の水酸基1モルに対して、化合物(1)を0.8〜1.5倍モルの割合で反応させることが好ましい。化合物(1)の割合の下限は0.9倍モルであることが好ましく、1.0倍モルであることがより好ましい。一方、化合物(1)の割合の上限は、1.4倍モルであることが好ましく、1.3倍モルであることがより好ましい。
化合物(1)が、0.8倍モルより多いと、得られた重合体を塗料用組成物とした際の安定性が良好である。1.5倍モル以下であると、化合物(1)が未反応物として残存しても、得られた重合体を塗料用組成物とした際の安定性への影響は少なく、また化合物(1)の自己縮合物がコンタミとして混入することによる影響も少ない。
【0054】
水酸基含有含フッ素重合体(A)と化合物(1)との反応においては、水酸基とイソシアネート基との反応を完結させることが好ましい。化合物(1)が多く残存すると、化合物(1)の自己縮合物が生成物にコンタミとして混入し、また得られた加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)が水酸基を多量に有していると、塗料用組成物の貯蔵安定性が低下し、さらに、可使時間が短くなる。
加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)中の水酸基を有する単位の含有量は、重合体中の全単位に対して、0〜3モル%であることが好ましく、0〜1モル%であることがより好ましい。
【0055】
水酸基含有含フッ素重合体(A)と化合物(1)との反応における反応溶媒は、イソシアネート基と反応する活性水素を含有しない溶媒であることが好ましい。活性水素を含有しない溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル等のエステル類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレピン油、ソルベッソ♯100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ♯150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素類;ジオキキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等エーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル等のエーテルエステル類;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等、一般的に用いられている有機溶媒を使用することができる。
【0056】
反応溶媒としては、環境負荷低減の観点から、PRTR法、HAPs規制に対応した溶媒、すなわち、芳香族を含有しない有機溶媒が好ましい。また、弱溶剤も好ましい。弱溶剤とは、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第三種有機溶剤に分類されている有機溶剤であり、下記(1)〜(2)のいずれかに相当するものである。
(1)ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む)。
(2)(1)の2種以上からなる混合物。
【0057】
具体的には、PRTR法、HAPs規制に該当しないエステル系溶剤やケトン系溶剤;第三種有機溶剤に分類されているパラフィン系溶剤やナフテン系溶剤を使用することが好ましい。パラフィン系溶剤やナフテン系溶剤を用いる場合には、市販の弱溶剤を用いることができる。
【0058】
ケトン系溶剤、エステル系溶剤としては、沸点や樹脂の溶解性の観点から、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル等のエステル類が好ましく使用できるが、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第二種有機溶剤に該当しない酢酸t−ブチルがより好ましい。
【0059】
弱溶剤としては、前記(1)または(2)に該当する溶剤を用いることが好ましい。また、アニリン点が30℃〜70℃の溶剤が好ましい。アニリン点の下限は更に好ましくは40℃、アニリン点の上限は更に好ましくは60℃である。アニリン点が30℃を超えると、旧塗膜を侵さず、アニリン点が70℃以下であれば、本発明で用いる含フッ素共重合体およびポリイソシアネート化合物が溶解可能となる。なお、アニリン点はJIS K 2256に記載のアニリン点試験方法に準じて測定すればよい。
【0060】
弱溶剤としては、引火点が室温以上であることから、ミネラルスピリットが好ましい。ミネラルスピリットとして一般に販売されている溶剤は、例えば、HAWS(シェルジャパン製、アニリン点17℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル化学製、アニリン点43℃)、LAWS(シェルジャパン製、アニリン点44℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル化学製、アニリン点55℃)、Aソルベント(新日本石油化学株式会社、アニリン点45℃)、クレンゾル(新日本石油化学株式会社製、アニリン点64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油化学株式会社製、アニリン点43℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学株式会社製、アニリン点44℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学株式会社製、アニリン点44℃)、リニアレン10、リニアレン12(出光石油化学株式会社製、αオレフィン系炭化水素、アニリン点44℃、54℃)、エクソールD30(エクソンモービル有限会社製、ナフテン系溶剤、アニリン点63℃)、リカソルブ900、910B、1000(新日本理化株式会社製、水添C9溶剤、アニリン点53℃、40℃、55℃)等として入手できる。本発明で用いる弱溶剤としては、これらを単独または混合して用いることができる。
【0061】
水酸基含有含フッ素重合体(A)と化合物(1)との反応は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜80℃で、窒素等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。反応圧力は大気圧が好ましい。反応時間は、4〜10時間が好ましく、4〜7時間が特に好ましい。反応溶媒は、水酸基含有含フッ素重合体に対して10〜90重量%を使用することが好ましい。
反応温度が40℃以上であると反応が完結し、100℃以下であると反応中に反応液がゲル化することがない。また、反応時間が4時間以上であると反応が完結し、10時間以下であると反応中に反応液がゲル化することがない。
【0062】
本発明の製造方法においては、まずは、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)と反応溶媒と化合物(2)とを含む組成物が得られる。この組成物には、未反応の水酸基含有含フッ素重合体(A)や化合物(1)を含む場合があるが、通常それらの量は加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)の量に比較して無視できる量である。得られた組成物はそのまま塗料用のワニスとして使用できる。すなわち、反応溶媒が有機溶剤であるワニスとすることができる。また、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)を分離して、分離された加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)に新たに有機溶剤を加えてワニスとすることもできる。化合物(2)は前記のようにワニス中に存在していてもよいので、分離された加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)中に残存していてもよい。
【0063】
ワニス中の有機溶剤としては弱溶剤が好ましい。反応溶媒として弱溶剤を使用することにより、本発明の製造方法で得られた、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)と反応溶媒と化合物(2)とを含む組成物をそのまま弱溶剤を含むワニスとすることができる。反応溶媒として弱溶剤以外の溶媒を使用した場合、本発明の製造方法で得られた組成物から、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)のみまたは化合物(2)を含む加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)を分離し、新たに弱溶剤を加えて、弱溶剤を含むワニスとすることもできる。また、反応溶媒よりも高沸点の弱溶媒を使用する場合は、水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)を分離することなく製造で得られた混合物に弱溶剤を加え、次いで反応溶媒を蒸発除去する方法を使用することもできる。
このように、反応溶媒として弱溶剤以外の溶媒を使用した場合であっても、上記のような溶媒置換方法で弱溶剤を含むワニスとすることができる。すなわち、弱溶剤以外の反応溶媒を使用して反応溶媒と加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)とを含む組成物を製造し、次いで前記反応溶媒を弱溶剤に溶媒置換することによって、弱溶剤と加水分解性シリル基含有含フッ素重合体とを含むワニスを得ることができる。この溶媒置換方法においては、化合物(2)は除去されてもよく、残存してもよい。
なお、弱溶剤以外の有機溶剤を含むワニスは、上記弱溶媒の場合と同様に溶媒置換方法などで製造することができる。加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)生成後であれば、ワニスにおける有機溶剤の少なくとも一部として、前記イソシアネート基と反応する活性水素を含有しない溶媒以外の有機溶剤を使用することもできる。例えば、アルコール系溶剤を使用することができる。
【0064】
本発明の製造方法により得られる加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)は、重合体の貯蔵安定性とその可使時間をより向上させるために、脱水剤を、反応後に添加することが好ましい。特に、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)と有機溶剤とを含むワニスに脱水剤を添加することが好ましい。脱水剤と共にアルコール系溶媒などの反応溶媒として使用できない有機溶剤を添加することもできる。
脱水剤は、前記本発明の製造方法においてまず得られる、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)と反応溶媒と化合物(2)とを含む組成物に添加することができる。また、前記溶媒置換等で得られたワニスに添加することもできる。脱水剤を含むワニスは長期保存が可能である。
脱水剤としては、下式(3)で表される、オルト酸エステル類、アセタール類、ヘミアセタール類が好ましい。
【0065】
(R
2O)(R
3O)C(R
4)(Y) (3)
式(3)中のR
2は、炭素数1〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。R
3、R
4はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。Yは、水素原子または炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。
脱水剤の沸点は、150℃以下であることが好ましく、5〜100℃であることがより好ましい。脱水剤の沸点がこの範囲であると、塗膜の乾燥・硬化の際に脱水剤が塗膜中に残存しにくく、短い時間で塗膜の形成が可能である。
【0066】
オルト酸エステル類の具体例としては、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル等のオルトギ酸エステル類;オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル等のオルト酢酸エステル類;オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリプロピル等のオルトプロピオン酸エステル類等が好ましい。
【0067】
アセタール類としては、ケトン化合物から誘導された化合物、アルデヒド化合物から誘導された化合物のいずれも好ましいが、アルデヒドから誘導された化合物は脱水効果が高い傾向にあり、より好ましい。アセタール類の具体例としては、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジメトキシプロパン、ジエトキシエタン、1,1−ジエトキシエタン、1,1−ジエトキシプロパン等が好ましい。
【0068】
ヘミアセタール類としては、ケトン化合物から誘導された化合物、アルデヒド化合物から誘導された化合物のいずれも好ましいが、アルデヒドから誘導された化合物は脱水効果がより高い傾向にあり、より好ましい。ヘミアセタール類の具体例としては、1−メトキシ−1−エタノール、1−メトキシ−1−プロパノール、1−メトキシ−1−ブタノール、1−エトキシ−1−エタノール、1−エトキシ−1−プロパノール、1−エトキシ−1−ブタノール等が好ましい。
【0069】
これらの脱水剤の中でも、入手が容易なことから、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1−メトキシ−1−エタノールがより好ましい。
脱水剤の添加量は、本発明の製造方法により得られた加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)の100質量部に対して、0.5〜30.0質量部の範囲が好ましい。また、1.0〜20.0質量部の範囲がより好ましく、2.0〜10.0質量部の範囲がさらに好ましい。
【0070】
脱水剤の量が、0.5質量部以上では、充分な脱水効果によって、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)の貯蔵安定性および可使時間を向上できる。また、30.0質量部以下では、塗料化の際に硬化が阻害されることがなく、塗膜の硬化不良が起きにくい。
脱水剤は、1種のみでもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0071】
本発明の製造方法により得られた加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)は、高耐候性のフッ素樹脂塗料用のフッ素樹脂として使用することができる。例えば、前記加水分解性シリル基含有含フッ素重合体(B)を含むワニスに、塗料用添加剤を配合し、塗料化することができる。このワニスには前記脱水剤が配合されていることが好ましい。ここで、塗料用添加剤とは、硬化剤、硬化触媒、顔料、その他樹脂、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤などを指す。
【0072】
硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤やシラン系硬化剤が好適に使用できる。
イソシアネート系硬化剤には、ブロック化イソシアネート系硬化剤も含まれ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロへキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、これらの三量体、これらのアダクト体やビュウレット体等が好ましい。
【0073】
シラン系硬化剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシランおよびこれらの部分加水分解縮合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシランおよびこれらの部分加水分解縮合物;ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシランおよびこれらの部分加水分解縮合物等が好ましい。
硬化剤の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して3.0〜70.0重量%が好ましく、5.0〜50.0重量%がより好ましい。
【0074】
硬化触媒としては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル等の酸性リン酸エステル類;ホウ酸モノエステル、ホウ酸ジエステル等の酸性ホウ酸エステル類;酸性リン酸エステルとアミンとの付加反応物、カルボン酸化合物とアミンとの付加反応物等のアミン付加物類;オクチル酸スズ、ジブチルチンジラウレート等の金属エステル類;トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム等の金属キレート類;アルミニウムイソプロポキサイド、チタニウムブトキサイド等の金属アルコキシド類等が好ましい。
硬化触媒の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して0.01〜10.0重量%が好ましく、0.05〜5.0重量%がより好ましい。
【0075】
顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料等が挙げられる。酸化チタンは、表面被覆した酸化チタンが好ましく、該酸化チタンは、例えば石原産業社製、商品名「PFC−105」;堺化学社製、商品名「D−918」等として入手できる。
顔料の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して10.0〜80.0重量%が好ましく、20.0〜70.0重量%がより好ましい。
【0076】
他の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂等の非フッ素系樹脂、および含フッ素重合体(A)以外のフッ素樹脂が好ましい。他の樹脂は、反応硬化性部位を有していてもよい。
他の樹脂の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して3.0〜70.0重量%が好ましく、5.0〜50.0重量%がより好ましい。
【0077】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物等が好ましい。該化合物は、「Viosorb130」、「Viosorb582」、「Viosorb583」(以上、共同製薬社製、商品名)、「チヌビン320」、「チヌビン982」、「チヌビン1130」、「チヌビン400」(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)等として入手できる。
紫外線吸収剤の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して0.01〜10.0重量%が好ましく、0.05〜5.0重量%がより好ましい。
【0078】
レベリング剤は、共栄社化学(株)製商品名「ポリフローNo.7」「ポリフローNo.50E」「ポリフローNo.55」「ポリフローNo.75」「ポリフローNo.77」「ポリフローNo.85」「ポリフローNo.S」「ポリフローNo.90」や楠本化成(株)製商品名「ディスパロンL−1980−50」「ディスパロンL−1982−50」「ディスパロンL−1983−50」「ディスパロンL−1984−50」「ディスパロンL−1985−50」、エアープロダクツジャパン(株)製商品名「サーフィノール104」「サーフィノール420」「サーフィノール440」「サーフィノール465」、BYK−Chemie社製商品名「BYK−300」「BYK−320」等として入手できる。
レベリング剤の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して0.01〜10.0重量%が好ましく、0.05〜5.0重量%がより好ましい。
【0079】
消泡剤は、共栄社化学(株)製商品名「フローレンAC−300HF」「フローレンAC−326F」「フローレンAC−901HF」「フローレンAC−903HF」「フローレンAC−1190HF」や楠本化成(株)製商品名「ディスパロンLAP−10」「ディスパロンLAP−20」「ディスパロンLAP−30」等として入手できる。
消泡剤の添加量は、加水分解性シリル基含有含フッ素重合体に対して0.01〜10.0重量%が好ましく、0.05〜5.0重量%がより好ましい。
【0080】
本発明の製造方法により得られた加水分解性シリル基含有含フッ素重合体を含むフッ素樹脂塗料は、各種基材に塗装することができ、塗装する基材としては、特に限定されず、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物;鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属;プラスチック、ゴム、接着材、木材等の有機物が挙げられる。また有機無機複合材であるFRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等も挙げられる。
【0081】
本発明の製造方法により得られた加水分解性シリル基含有含フッ素重合体を含むフッ素樹脂塗料は、自動車、電車、航空機等の輸送用機器;橋梁部材、鉄塔等の土木部材;防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材;ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材;道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁、ポリカーボネート、アクリル等の透光板等の道路部材;通信機材;電気および電子部品;等の他に、風力発電用塗料、太陽電池バックシート用塗料、太陽電池表面保護塗料、太陽熱発電のミラー用コーティング液等の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
[製造例1]
<水酸基含有含フッ素重合体(A)のミネラルスピリット溶液の製造>
1Lのナス型フラスコに、ルミフロンLF800Y(水酸基含有含フッ素重合体(A)のキシレン溶液、不揮発分60%、水酸基価36mgKOH/g、旭硝子(株)製)(600g)とミネラルスピリット(210g)を加え、エバポレーションしながらミネラルスピリットへの溶剤置換を行い、水酸基含有含フッ素重合体(A)のミネラルスピリット溶液(不揮発分73.5%)を得た。
【0084】
[実施例1]
温度計、還流冷却器、撹拌器を備えた容量500mlの4つ口フラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体(A)のミネラルスピリット溶液(326.5g)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(38.1g)、2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を加え、窒素雰囲気下、50℃で5時間反応を行った。
得られた溶液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収帯には、吸収ピークは観測されず、逆にウレタン結合の吸収帯に大きな吸収ピークが観測されたことから、加水分解性シリル基を含有する含フッ素重合体の生成を確認した。
反応後、オルトギ酸トリメチル(13.6g)、イソプロパノール(13.6g)をそれぞれ加え、含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、61.3ppmであった。
【0085】
[実施例2]
実施例1の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(38.1g)を(45.7g)に、さらに、2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を(0.1g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.2倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、122.0ppmであった。
【0086】
[実施例3]
実施例1の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(38.1g)を(34.3g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は0.9倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、61.3ppmであった。
【0087】
[実施例4]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を、2−エチルヘキサン酸亜鉛(0.1g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、亜鉛金属単体の換算で、77.4ppmであった。
【0088】
[実施例5]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(0.2g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、ジルコニウム金属単体の換算で、102.1ppmであった。
【0089】
[実施例6]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(0.3g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、アルミニウム金属単体の換算で、104.1ppmであった。
【0090】
[実施例7]
内容積300mlのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、3−エチル−3−ビニロキシメチルオキセタン(33.5g)、ヒドロキシエチルビニルエーテル(17.3g)、キシレン(100.0g)、エタノール(17.7g)、炭酸カリウム(1.0g)を一括で投入し、窒素により溶存酸素を除去した。
次に、クロロトリフルオロエチレン(45.8g)をオートクレーブ中に導入して徐々に昇温し、55℃に達した後、t−ブチルパーオキシピバレートの50%キシレン溶液(0.6g)を2時間かけてオートクレーブ中に導入し、その後さらに15時間撹拌した後に反応を停止した。反応後、ろ過により炭酸カリウムを除去し、さらに、エバポレーションしながらエタノールを留去することで、水酸基含有含フッ素重合体(A)のキシレン溶液(不揮発分50.0%)を得た。
続いて、この水酸基含有含フッ素重合体(A)のキシレン溶液(193.2g)を、温度計、還流冷却器、撹拌器を備えた容量500mlの4つ口フラスコに移し、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))(47.4g)、2−エチルヘキサン酸錫(化合物(2))(0.02g)を加え、窒素雰囲気下、50℃で5時間反応を行った。その後、エバポレーションしながらキシレンを留去することで、含フッ素重合体(B)のキシレン溶液(不揮発分73.5%)を得た。
【0091】
得られた溶液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収帯には、吸収ピークは観測されず、逆にウレタン結合の吸収帯に大きな吸収ピークが観測されたことから、加水分解性シリル基を含有する含フッ素重合体(B)の生成を確認した。
反応後、オルトギ酸トリメチル(4.3g)、イソプロパノール(4.3g)をそれぞれ加え、含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、61.3ppmであった。
【0092】
[比較例1]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を(0.025g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、30.5ppmであった。
【0093】
[比較例2]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を(0.3g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、367.0ppmであった。
【0094】
[比較例3]
温度計、還流冷却器、撹拌器を備えた容量300mlの4つ口フラスコに、ルミフロンLF200(水酸基含有含フッ素重合体(A)のキシレン溶液、不揮発分60%、水酸基価52mgKOH/g、旭硝子(株)製)(100g)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(11.3g)、ジブチル錫ジラウレートの10%キシレン溶液(0.1g)を加え、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応を行った。その後、エバポレーションしながらキシレンを留去することで、含フッ素重合体(B)のキシレン溶液(不揮発分73.5%)を得た。
得られた溶液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、ウレタン結合の吸収帯に大きな吸収ピークが観測されたものの、イソシアネート基の吸収帯にも、吸収ピークが観測され、反応が完結していないことが確認された。
反応後、オルトギ酸トリメチル(3.6g)、イソプロパノール(3.6g)をそれぞれ加え、含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、31.4ppmであった。
【0095】
[比較例4]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を(0.2g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、245.0ppmであった。
【0096】
[比較例5]
実施例1の2−エチルヘキサン酸錫(0.05g)を(0.15g)に変更した以外は、実施例1と同様にして含フッ素重合体(B)を含有する組成物(不揮発分70.0%)を得た。
水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基の1モルに対して、反応させた3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(化合物(1))は1.0倍モルであり、また、化合物(2)の添加量は、水酸基含有含フッ素重合体(A)に対して、錫金属単体の換算で、183.0ppmであった。
【0097】
実施例1〜7、比較例1〜5で得られた含フッ素重合体(B)を含有する組成物について、以下の保存安定性試験により評価を行った。
【0098】
[貯蔵安定性1]
実施例1〜7、比較例1〜5で得られた含フッ素重合体(B)を含有する組成物を、湿度50%、温度50℃の条件下において、密栓容器中で、9ヶ月保管し、その後、E型粘度計で粘度を測定した。初期粘度との粘度上昇比を算出し、以下の基準に従って評価を行った。
◎ : 粘度上昇比が1.1未満。
○ : 粘度上昇比が1.1以上1.5未満。
△ : 粘度上昇比が1.5以上。
× : 含フッ素重合体組成物がゲル化し、粘度の測定が不可能な状態。
【0099】
[貯蔵安定性2]
実施例1〜7、比較例1〜5で得られた含フッ素重合体(B)を含有する組成物を、湿度50%、温度50℃の条件下において、密栓容器中で、12ヶ月保管し、その後、E型粘度計で粘度を測定した。初期粘度との粘度上昇比を算出し、以下の基準に従って評価を行った。
◎ : 粘度上昇比が1.1未満。
○ : 粘度上昇比が1.1以上1.5未満。
△ : 粘度上昇比が1.5以上。
× : 含フッ素重合体組成物がゲル化し、粘度の測定が不可能な状態。
【0100】
【表1】
【0101】
*モル比は水酸基含有含フッ素重合体(A)の水酸基1モル当たりに反応させた化合物(1)の量を表わす。