(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記(A)成分のアクリル系ポリマーが、有機官能基を有しないアクリル系モノマー60〜99質量%、有機官能基を有するアクリル系モノマー1〜20質量%、及びこれらのモノマーと共重合可能なその他のモノマー(但し、上記(a)、(b)、(c)成分に該当するものは除く。)0〜20質量%を、これらの3種のモノマーの合計で100質量%としてなる共重合体である請求項1に記載の光学用感圧接着剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記要望に応えたもので、光学部材同士の接着、特に液晶素子におけるガラス基板と、偏光板、又は偏光板と位相差板との積層板との接着に適した光学用感圧接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、下記(a)〜(d)成分のラジカル共重合体である加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系グラフト共重合体がアクリル系ポリマーに添加されて接着性改質剤として優れた効果を与え、アクリル系ポリマーにこのアクリル/シリコーン系グラフト共重合体を配合した感圧接着剤組成物が、液晶素子を構成するガラス基板に偏光板又は偏光板と位相差板との積層板を適度な強度で確実に接着することができると共に、製造工程においてこの偏光板又は偏光板と位相差板との積層板を剥離する必要性が生じた場合には、ガラス基板などの液晶セルに損傷を与えることなく剥離することができ、しかもこのガラス基板上に接着剤が残留し難く、更に液晶素子を各種用途での実際の使用に供した後には安定した強固な接着強度を長期間維持できることを知覚し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の光学用感圧接着剤組成物を提供する。
〔1〕 (A)アクリル系ポリマー 100質量部と、
(B)下記(a)、(b)、(c)及び(d)成分のラジカル共重合体であって、加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系グラフト共重合体からなる接着性改質剤 0.01〜10質量部
とを含有する光学用感圧接着剤組成物。
(a)1分子中に1個のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物 1〜60質量%、
(b)下記式(1)で表されるラジカル重合性有機珪素化合物 5〜40質量%、
X−R
1−SiR
23-a(OR
3)
a (1)
(式中、Xはラジカル重合性基、R
1は酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜12の2価炭化水素基又は単結合、R
2及びR
3は各々炭素原子数1〜4の1価炭化水素基であり、aは1〜3の整数である。)
(c)1分子中に1個のラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン化合物 0〜30質量%、
(d)アクリル系モノマー(但し、上記(a)、(b)、(c)成分に該当するものは除く。) 0〜94質量%
(但し、(a)、(b)、(c)及び(d)成分の合計が100質量%である。)。
〔2〕 上記(A)成分のアクリル系ポリマーが、有機官能基を有しないアクリル系モノマー60〜99質量%、有機官能基を有するアクリル系モノマー1〜20質量%、及びこれらのモノマーと共重合可能なその他のモノマー(但し、上記(a)、(b)、(c)成分に該当するものは除く。)0〜20質量%を、これらの3種のモノマーの合計で100質量%としてなる共重合体である〔1〕に記載の光学用感圧接着剤組成物。
〔3〕 上記(a)成分が、下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサン化合物である〔1〕又は〔2〕に記載の光学用感圧接着剤組成物。
【化1】
(式中、R
4は水素原子又はメチル基、R
5は酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜12の2価炭化水素基、R
6はメチル基又はトリメチルシロキシ基、R
7は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基であり、bは平均重合度を示す0〜200の数、cは1〜3の整数である。)
〔4〕 上記(c)成分が、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物であり、5〜20質量%の割合で含有する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光学用感圧接着剤組成物。
【化2】
(式中、R
8は水素原子又はメチル基、R
9は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基又はアセチル基であり、dは平均で2≦d≦3を満足する数、eは平均重合度を示す2〜100の数である。)
〔5〕 上記(d)成分がエポキシ官能基を有するアクリル系モノマーを含み、5〜80質量%の割合で含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の光学用感圧接着剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学用感圧接着剤組成物は、液晶素子の製造工程において、ガラス基板と、偏光板又は偏光板と位相差板との積層板とを必要かつ十分な接着強度で接着することができる。この接着強度は該製造工程においては接着剤組成物が加熱などに付されても過度に高くならず適度なレベルに保持される。そのため、製造工程で接着に不具合が生じた場合には偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板をガラス基板から容易に剥離することができ、しかもその場合に基板上に接着剤は残留し難いし、剥離の際にガラス基板又は液晶セルに損傷を与えることが稀である。
更に、本発明の感圧接着剤組成物は、液晶素子の製造工程においては上記のように適度の接着性と剥離性を示す一方で、完成した液晶素子が各種用途に実際に供され、たとえ高温高湿のような過酷な条件にさらされても必要かつ十分な接着強度を長期間に渡って安定に維持し、偏光板又は偏光板と位相差板との積層板に膨れや剥がれなどの接着不良が発生し難い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の光学用感圧接着剤組成物について具体的に説明する。
本発明の光学用感圧接着剤組成物は、(A)主成分であるアクリル系ポリマーと、(B)接着性改質剤として加水分解性シリル基を有する特定のアクリル/シリコーン系グラフト共重合体を含有している。以下、順次説明する。
【0013】
[(A)アクリル系ポリマー]
(A)成分のアクリル系ポリマーは、本発明の組成物に感圧接着性を付与する作用を有する。
【0014】
本発明において、「アクリル系ポリマー」とは、アクリル系モノマーの重合体(即ち、単独重合体及び共重合体)である。アクリル系モノマーには、アクリル酸系モノマー及びメタクリル酸系モノマーが包含される。アクリル酸系モノマーとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミドが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。また、メタクリル酸モノマーとしては、例えばメタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリルアミドが挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」などの用語は、それぞれ、アクリル酸とメタクリル酸の総括概念、アクリレートとメタクリレートとの総括概念として用いる。
【0016】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーは、上記のモノマーの一種単独の重合体でも二種以上のモノマーの共重合体でもよい。中でも、有機官能基を有しないアクリル系モノマーと有機官能基を有するアクリル系モノマーを含む共重合体が好ましい。ここで、有機官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、アミド基等が挙げられる。
【0017】
有機官能基を有しないアクリル系モノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0018】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、好ましくは、上記の有機官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位を60〜99質量%、より好ましくは80〜98質量%有している。
【0019】
また、有機官能基を有するアクリル系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の有機官能基置換アルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びN−エチロール(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。これは単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0020】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、好ましくは、上記有機官能基含有アクリル系モノマーから誘導される繰り返し単位を、1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%有している。
【0021】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、上記の有機官能基を有しないアクリル系モノマー及び有機官能基を有するアクリル系モノマーに、更にこれらのモノマーと共重合可能なその他のモノマー(但し、後述する(a)、(b)、(c)成分に該当するものは除く。)を加え、これらの3種のモノマーの合計で100質量%としてなる共重合体としてもよい。即ち、(A)アクリル系ポリマーは、上記の有機官能基を有しないアクリル系モノマー及び有機官能基を有するアクリル系モノマー以外の単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよく、これらの例としては、スチレン系モノマーから誘導される繰り返し単位及びビニル系モノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0022】
具体的には、スチレン系モノマーの例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン及びヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;更に、ニトロスチレン、アセチルスチレン及びメトキシスチレン等を挙げることができる。
【0023】
また、ビニル系モノマーの例としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル及びアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン等の共役ジエンモノマー;塩化ビニル及び臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン等を挙げることができる。
【0024】
これらのモノマーは、単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。本発明で使用されるアクリル系ポリマー中には、上記他のモノマーから誘導される繰り返し単位は、通常は0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%の量で含有されている。
【0025】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、公知の方法により、例えば、上記のようなモノマーを反応溶媒に投入して、反応系内の空気を窒素ガス等の不活性ガスで置換した後、必要により反応開始剤の存在下に、加熱攪拌して重合反応させることにより製造することができる。
【0026】
上記反応溶媒の使用は任意であり、通常は有機溶媒が使用され、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。
【0027】
また、反応開始剤を使用する場合には、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0028】
上記の重合反応の反応温度は50〜90℃程度でよく、反応時間は2〜20時間程度であり、好ましくは4〜12時間である。上記のような反応において、モノマーは、得ようとするアクリル系ポリマー中における各繰り返し単位の量に対応して仕込まれる。また、反応溶媒を用いる場合にはモノマーの合計量100質量部に対して50〜300質量部の量で使用される。更に、反応開始剤は、通常は0.01〜10質量部の量で使用される。
【0029】
こうして反応させることにより本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、反応溶媒に(共)重合体が25〜70質量%の量で含有される溶液又は分散液として得られる。本発明では上記のようにして得られた反応溶媒を除去することなく、この反応溶媒に溶解又は分散させた状態でアクリル系ポリマーと他の成分とを混合すればよい。
【0030】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、通常100,000〜1,500,000、好ましくは300,000〜800,000の質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値。以下、同じ。)を有している。なお、このアクリル系ポリマーには、本発明の目的を損なわない範囲内で、無機フィラー等の他の成分を配合してもよい。
【0031】
[(B)接着性改質剤]
(B)成分の加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系グラフト共重合体からなる接着性改質剤は、本発明の組成物に適度な剥離性と接着強度の長期安定性を付与する作用を有する。
【0032】
(B)成分の加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系グラフト共重合体は、下記(a)、(b)、(c)及び(d)成分をラジカル共重合することによって得ることができる。
【0033】
(a)1分子中に1個のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物 1〜60質量%、
(b)下記式(1)で表されるラジカル重合性有機珪素化合物 5〜40質量%、
X−R
1−SiR
23-a(OR
3)
a (1)
(式中、Xはラジカル重合性基、R
1は酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜
12の2価炭化水素基又は単結合、R
2及びR
3は各々炭素原子数1〜4の1価
炭化水素基であり、aは1〜3の整数である。)
(c)1分子中に1個のラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン化合物 0〜30質量%、
(d)アクリル系モノマー(但し、上記(a)、(b)、(c)成分に該当するものは除く。) 0〜94質量%
(但し、上記(a)、(b)、(c)、(d)成分合計が100質量%である。)。
【0034】
(a)成分の1分子中に1個のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物は、本発明の感圧接着剤組成物の初期接着性を緩和し剥離性を付与する成分であり、(メタ)アクリル基、スチリル基、ケイ皮酸エステル基、ビニル基、アリル基等のラジカル重合性基を1分子中に1個有するものである限り特に制限されないが、上記(b)、(c)、(d)成分との共重合のし易さ、オルガノポリシロキサン化合物自体の合成のし易さあるいは入手のし易さ、及び本発明の感圧接着剤組成物への剥離性付与効果等の点から、下記式(2)で表されるラジカル重合性オルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【化3】
(式中、R
4は水素原子又はメチル基、R
5は酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基等の2価炭化水素基、R
6はメチル基又はトリメチルシロキシ基、R
7は炭素原子数1〜4のアルキル基等の1価炭化水素基であり、bは平均重合度を示す0〜200の数、cは1〜3の整数である。)
【0035】
上記R
5の具体例としては、−CH
2−、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−、−CH
2(CH
3)CHCH
2−、−(CH
2)
6−、−(CH
2)
12−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−等が挙げられる。
【0036】
上記R
7の具体例としては、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3等が挙げられる。
【0037】
bは0〜200、好ましくは0〜100の数である。bが200を超えると、得られる加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系グラフト共重合体と(A)成分のアクリル系ポリマーとの相溶性が不足し、接着剤組成物から分離したり剥離性が強すぎて接着性が得られない現象が起きる場合がある。
【0038】
上記(a)ラジカル重合性オルガノポリシロキサン化合物は、下記式(4)で表される(メタ)アクリレート置換クロロシラン化合物と下記式(5)で表される片末端水酸基含有ジメチルポリシロキサン化合物とを常法に従って脱塩酸反応させるか、式(4)の(メタ)アクリレート置換クロロシラン化合物と下記式(6)で表される片末端に−OLiを有するジメチルポリシロキサン化合物とを常法に従って脱塩化リチウム反応させることにより得ることができる。しかしながら、合成方法はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化4】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、b及びcは上記の通り。)
【0040】
前記式(2)で表されるラジカル重合性オルガノポリシロキサン化合物の具体例としては、下記式(7)〜式(14)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
(b)成分のラジカル重合性有機珪素化合物は、本発明の感圧接着剤組成物に接着強度の長期安定性を付与する成分であり、下記式(1)で表される。
X−R
1−SiR
23-a(OR
3)
a (1)
(式中、Xはラジカル重合性基、R
1は酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基等の2価炭化水素基又は単結合、R
2及びR
3は各々炭素原子数1〜4のアルキル基等の1価炭化水素基であり、aは1〜3の整数である。)
【0044】
Xの具体例としては、下記に示される置換基等が挙げられる。
【化7】
【0045】
上記R
1の具体例としては、−CH
2−、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−、−CH
2(CH
3)CHCH
2−、−(CH
2)
6−、−(CH
2)
12−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−等が挙げられる。
また、上記R
2及びR
3の具体例としては、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
2CH
3等が挙げられる。
【0046】
上記式(1)で表されるラジカル重合性有機珪素化合物の具体例としては、下記式(15)〜式(28)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
(c)成分の1分子中に1個のラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン化合物は、本発明の感圧接着剤組成物中の(A)成分と親和性を有し、接着剤組成物中から(B)成分が相分離することを防止する作用を有する成分であり、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化10】
(式中、R
8は水素原子又はメチル基、R
9は炭素原子数1〜4のアルキル基等の1価炭化水素基又はアセチル基であり、dは平均で2≦d≦3を満足する数、eは平均重合度を示す2〜100の数である。)
【0051】
上記R
9の具体例としては、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−COCH
3等が挙げられる。
【0052】
式(3)においてポリオキシアルキレン部分の繰返し単位を表す(−C
dH
2dO−)は、エチレンオキサイド単位(−C
2H
4O−)とプロピレンオキサイド単位(−C
3H
6O−)の平均組成であり、モル比1/1の場合はd=2.5となる。なお、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位の共重合体の場合、ランダム体でもブロック体でも構わない。
【0053】
eは2〜100、好ましくは2〜50である。eが100を超えると共重合性成分である(a)オルガノポリシロキサン化合物との溶解性が悪くなり均質な共重合体が得られなくなる。
【0054】
式(3)で表されるラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン化合物の具体例としては、下記式(29)〜式(37)に表される化合物が挙げられる。
【0057】
なお、これらのラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン化合物は市販品での入手が可能で、共栄社化学株式会社(ライトエステルシリーズ、ライトアクリレートシリーズ)、新中村化学工業(NKエステルシリーズ)などが販売されている。
【0058】
(d)成分のアクリル系モノマーは、アクリル/シリコーン系グラフト共重合体の幹ポリマーを構成する単位であり、他の(a)、(b)、(c)成分との兼ね合いで必ずしも必要不可欠の成分ではないが、(a)、(b)、(c)の3つの成分を均質に共重合させる効果や(A)成分のアクリル系ポリマーとの親和性のためにはあった方が好ましい成分である。なお、(d)アクリル系モノマーは、上記(a)、(b)、(c)成分に該当するものを除いたものである。
【0059】
(d)成分のアクリル系モノマーは、上記(A)成分に使用されるアクリル系ポリマーの場合と同じものが使用できる。即ち、有機官能基を有しないアクリル系モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が使用でき、有機官能基を有するアクリル系モノマーとして、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の有機官能基置換アルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びN−エチロール(メタ)アクリルアミド等が使用できる。これらは単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができ、どのモノマーを使用してもよいが、得られる(B)成分のアクリル/シリコーン系グラフト共重合体と(A)成分のアクリル系ポリマーとの反応が期待できる成分として、エポキシ官能基を有するグリシジル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0060】
(B)成分のアクリル/シリコーン系グラフト共重合体を構成するモノマー成分の比率は、(a)1〜60質量%,(b)5〜40質量%,(c)0〜30質量%,(d)0〜94質量%であり、好ましくは(a)5〜50質量%,(b)10〜30質量%,(c)5〜20質量%,(d)5〜80質量%であって、(a)、(b)、(c)及び(d)成分の合計で100質量%である。
【0061】
(a)成分が60質量%を超えると(A)成分のアクリル系ポリマーとの相溶性が不足し、接着剤組成物から分離したり剥離性が強すぎて接着性が得られない現象が起きる。また、(b)成分が5質量%未満だと接着強度の長期安定性が不足し、40質量%を超えると接着剤組成物の保存安定性が悪くなったり、初期に必要な剥離性が発現しなかったりする。また、(c)成分が30質量%を超えると(A)成分のアクリル系ポリマーとの親和性が強くなりすぎて初期剥離性や接着強度の長期安定性が不足する。
【0062】
(B)成分のアクリル/シリコーン系グラフト共重合体は、(A)成分のアクリル系ポリマーと同様な公知の方法で製造することができる。即ち、上記した(a)、(b)、(c)及び(d)成分を反応溶媒中で、反応開始剤の存在下に、加熱攪拌して重合反応させる方法である。このときの反応溶媒、反応開始剤、反応温度、反応時間も(A)成分の場合と同様でよい。反応により得られた共重合体溶液から反応溶媒を除去して共重合体を取り出してもよいが、反応溶媒を除去せずに溶液のまま使用することもできる。また、共重合体の分子量の上限に特に制限はないが、通常500,000まで、好ましくは200,000までの重量平均分子量のものが使用される。分子量が500,000を超えると(A)成分のアクリル系ポリマーとの相溶性が不足するおそれがある。
【0063】
本発明の光学用感圧接着剤組成物は、(A)成分のアクリル系ポリマー100質量部に対して、(B)成分の接着性改質剤を通常0.01〜10質量部の量で含有させ、好ましくは更に0.05〜5質量部の量で含有させる。(B)成分の量が多すぎると、初期接着強度が低下し、液晶素子使用環境下において、偏光板又は偏光板と位相差板との積層板の膨れや剥がれを生じやすくなる。また、(B)成分の量が少なすぎると、製造工程で加熱を受けたときに接着強度が高くなりすぎて適度の剥離性が失われるため、接着に不具合を生じても容易に剥離できず、偏光板又は偏光板と位相差板との積層板を基板から剥離すると液晶セルの損傷が起こりやすくなるし、接着剤の基板表面へののり残りが発生しやすくなる。
なお、(A)成分のアクリル系ポリマーと(B)成分の接着性改質剤は、組成物の使用直前に混合することが好ましい。
【0064】
[その他の成分]
本発明の光学用感圧接着剤組成物は、必須成分として上記(A)アクリル系ポリマーと(B)特定の接着性改質剤とを含有しているが、更に必要により他の成分を含んでいてもよい。
本発明の光学用感圧接着剤組成物に配合することができる他の成分の例としては、タッキファイヤー、可塑剤、架橋剤、染料等を挙げることができる。これらは公知のものが使用でき、これらの任意成分は一種単独でも二種以上を組み合わせてもかまわない。
【0065】
本発明の光学用感圧接着剤組成物には、特に架橋剤が配合されていることが好ましい。本発明で使用される架橋剤の例としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属キレート化合物及びアジリジン系化合物を挙げることができる。
【0066】
架橋剤として用いられるイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニレンメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び、これらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物等を挙げることができる。
【0067】
また、エポキシ系化合物の例としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン及び1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0068】
更に、アミン系化合物の例としては、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂及びメラミン樹脂等を挙げることができる。
【0069】
また更に、金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトンが配位した化合物、前記多価金属にアセト酢酸エチルが配位した化合物等を挙げることができる。
【0070】
更に、アジリジン系化合物の例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルフォスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、及びテトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等を挙げることができる。
【0071】
これらの架橋剤は一種単独でも二種以上を組み合わせても使用することができる。
該架橋剤は、本発明の組成物中の(A)成分100質量部に対して、通常は0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部の量で使用される。なお、これらの架橋剤は本発明の上記(A)成分及び(B)成分と反応性を有する場合が多いので、別々に包装し、使用直前に混合して使用するのが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下に本発明の合成例、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定的に解釈されるべきではない。
【0073】
[合成例1]
ガラス製反応容器に、下記式(9);
【化13】
で表されるラジカル重合性基含有オルガノポリシロキサン化合物30質量部、下記式(16);
【化14】
で表されるラジカル重合性有機珪素化合物(信越化学工業(株)製、KBM−503)15質量部、下記式(30);
【化15】
で表されるラジカル重合性基含有ポリオキシアルキレン化合物(共栄社化学(株)製、ライトエステル130MA)10質量部、n−ブチルアクリレート30質量部、エチルアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、メチルエチルケトン75質量部、酢酸エチル75質量部、及びアゾビスイソブチルニトリル2質量部を仕込み、窒素気流中攪拌しながら80〜85℃で5時間重合反応を行ない、固形分40質量%の無色透明な粘性液体を得た。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は62,000であった。
【0074】
[合成例2〜8]
各合成例において、合成例1で使用した各ラジカル重合性成分及び仕込み量(質量部)を表1のように変えた以外は同様な操作を行ない、表1に示す重量平均分子量の共重合体を40質量%含有する溶液を得た。
なお、合成例4で用いる(a)成分の他の成分は、下記式(7)で表わされるものである。
【化16】
また、合成例5、6で用いる(c)成分の他の成分は、下記式(38)で表されるものである。
【化17】
共栄社化学(株)製、ライトアクリレートDPM−A
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例1]
n−ブチルアクリレート43質量部、エチルアクリレート20質量部、2−エチルへキシルアクリレート25質量部、スチレン3質量部、アクリル酸7質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2質量部、酢酸エチル100質量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ、この反応器内を窒素ガスで置換した後、攪拌下に、窒素雰囲気中で63℃にて2時間反応させた。更に別に調製した酢酸エチル10質量部にアゾビスイソブチロニトリル0.05質量部を溶解させた溶液10質量部を、63℃にて上記反応器に2時間かけて滴下した。次いで、72℃に昇温し、上記と同様にして調製したアゾビスイソブチロニトリルの酢酸エチル溶液10質量部を4時間かけて滴下し、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液220質量部を得た。この酢酸エチル溶液中におけるアクリル系ポリマーの濃度は45質量%である。
上記の反応液220質量部(アクリル系ポリマー100質量部に相当)に合成例1にて合成したアクリル/シリコーン系グラフト共重合体溶液1.5質量部(共重合体0.6質量部に相当)と、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン(株)製)2質量部とを加えてよく攪拌して本発明の接着剤組成物を得た。
上記のようにして得られた接着剤組成物をポリエステル製離型フィルムに塗布した後に乾燥させて乾燥後の厚さが25μmの被膜を形成した。次いで、この離型フィルム上の接着剤組成物の被膜を、厚さ0.20mmの偏光板の片面上に転写し、温度23℃、湿度65%の条件で7日間熟成させた。その後、この偏光板の接着剤組成物の被膜側をガラス基板の表面に貼り合わせてサンプルを作製した。このサンプルを温度50℃、圧力5kg/cm
2の条件で20分間保持して接着させた。
【0077】
<剥離性>
(初期接着強度)
こうして接着した偏光板とガラス基板との接着力について、JIS−Z−0237及びJIS−Z−0238に準じて初期接着強度(23℃で1時間放置した後の接着強度)を測定した。
【0078】
(加熱エージング後の接着強度)
更に、上記と同様にして作製したサンプルを80℃で10時間放置した後、23℃まで放冷し、この温度で1時間放置した後、接着強度を上記と同様にして測定した。
【0079】
(のり残り)
上記のように初期及び加熱エージング後の接着強度の測定において、ガラス基板から偏光板を剥離した際に、ガラス基板表面に接着剤が残留したか否か(即ち、のり残り)を目視で観察して評価した。
【0080】
<実装性>
上記と同様にして作製したサンプルを縦横20cm×30cmの寸法に裁断したものを、上記条件下で接着させ、100℃、乾燥下で800時間の条件で放置し、またそれとは別に、60℃、90%RHで800時間の条件で放置した後、接着剤組成物被膜内の発泡の有無及び偏光板とガラス基板との剥離発生の有無を目視で観察して評価した。
これらの結果を表2に示す。本実施例で偏光板をガラス基板表面に貼り合わせた液晶素子は良好な特性を示した。
【0081】
[実施例2]
実施例1において使用した合成例1で合成したアクリル/シリコーン系グラフト共重合体溶液を10質量部(共重合体4質量部に相当)に代えた以外は同様にして、接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表2に示す。本実施例で偏光板をガラス基板表面に貼り合わせた液晶素子は良好な特性を示した。
【0082】
[実施例3〜8]
実施例1において、合成例1で合成したアクリル/シリコーン系グラフト共重合体溶液の代わりに、合成例2〜7で合成したアクリル/シリコーン系グラフト共重合体溶液を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表2に示す。本実施例で偏光板をガラス基板表面に貼り合わせた液晶素子は良好な特性を示した。
【0083】
[比較例1]
実施例1において、合成例1で合成したアクリル/シリコーン系グラフト共重合体溶液の代わりに、合成例8で合成したアクリル/シリコーン系グラフト共重合体溶液を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明はここに示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。