(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、ミラーで測定光の向きを変えることにより、測定面に対して測定光が斜めに入射するという欠点がある。この結果、測定光反射光の強度が落ち、測定感度が低下するとともに、測定対象物に対する測定光のスポットサイズが拡がってしまうため、高精度な測定ができないという問題がある。
【0006】
また、面の三次元形状を測定するためには、測定光による走査方向と直交する方向に測定対象物を移動させることが必要となり、測定に時間がかかるという欠点がある。
【0007】
従来、低コヒーレンス干渉の原理を利用した測定では、低コヒーレンス光源として、ハロゲンランプやLED(Light Emitting Diode)などの可視光域の光源、又は、SLD(Super Luminescent Diode)、ASE(Amplified Spontaneous Emission)、スーパーコンテニューム光源等の中心波長が赤外線領域の光源を使用している。しかし、このような光源は、測定対象物の表面で集光される測定光のスポットサイズが光源の波長の回折限界により制限される結果、横方向(測定光伝播方向に対して垂直な方向)の分解能を向上させることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、測定対象物の面の三次元形状を高速かつ高精度に測定することができる形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0010】
[1]第1の態様は、測定対象物の面の三次元形状を測定する形状測定装置であって、低コヒーレンス光を放射する光源と、光源から放射される低コヒーレンス光を平行光に変換するコリメート光学系と、コリメート光学系によって平行光にされた低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段から出射される参照光を反射する参照光反射体と、参照光反射体を移動させて参照光の光路長を変更する参照光路長変更手段と、参照光反射体の位置を検出する参照光反射体位置検出手段と、光分割手段から出射される測定光を拡大かつ平行化し、測定対象物に照射するテレセントリック光学系と、参照光反射体で反射される参照光と測定対象物で反射される測定光とを一つに合わせて干渉させる光干渉手段と、受光素子がマトリクス状に配列されて構成され、光干渉手段から出射される測定光と参照光との干渉光を受光する光検出手段と、受光素子ごとに干渉光の強度が最大となるときの参照光反射体の位置を検出して、測定光が照射された測定対象物の面の三次元形状を算出する演算手段と、を有する形状測定装置である。
【0011】
本態様によれば、測定光がテレセントリック光学系によって拡大、平行化されて測定対象物に照射される。これにより、測定対象物の広範囲に測定光を垂直に照射することができる。測定対象物で反射された測定光はテレセントリック光学系を介して光干渉手段に入射され、参照光反射体で反射された参照光と一つに合わされて干渉し、光検出手段に入射する。光検出手段は、受光素子をマトリクス状に配列して構成され、各受光素子で個別に光強度が検出される。したがって、各受光素子ごとに光強度が最大となるときの参照光反射体の位置を検出することにより、測定光が照射された測定対象物の面の三次元形状を求めることができる。すなわち、各受光素子ごとに対応する位置の面高さを測定することができるので、全受光素子の測定情報を取得することにより、測定光が照射された部位の形状を求めることができる。
【0012】
[2]第2の態様は、測定対象物の面の三次元形状を測定する形状測定装置であって、低コヒーレンス光を放射する光源と、光源から放射される低コヒーレンス光を平行光に変換するコリメート光学系と、コリメート光学系によって平行光にされた低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段から出射される参照光を反射する参照光反射体と、光分割手段から出射される測定光を拡大かつ平行化し、測定対象物に照射するテレセントリック光学系と、参照光反射体で反射される参照光と測定対象物で反射される測定光とを一つに合わせて干渉させる光干渉手段と、受光素子がマトリクス状に配列されて構成され、光干渉手段から出射される測定光と参照光との干渉光を受光する光検出手段と、コリメート光学系と光分割手段と参照光反射体と光干渉手段とテレセントリック光学系と光検出手段とをテレセントリック光学系の光軸に沿って移動可能に支持する支持体と、支持体を移動させて測定光の光路長を変更する測定光路長変更手段と、支持体の位置を検出する支持体位置検出手段と、受光素子ごとに干渉光の強度が最大となるときの支持体の位置を検出して、測定光が照射された測定対象物の面の三次元形状を算出する演算手段と、を有する形状測定装置である。
【0013】
本態様によれば、測定光がテレセントリック光学系によって拡大、平行化されて測定対象物に照射される。これにより、測定対象物の広範囲に測定光を垂直に照射することができる。測定対象物で反射された測定光はテレセントリック光学系を介して光干渉手段に入射され、参照光反射体で反射された参照光と一つに合わされて干渉し、光検出手段に入射する。光検出手段は、受光素子をマトリクス状に配列して構成され、各受光素子で個別に光強度が検出される。したがって、各受光素子ごとに光強度が最大となるときの支持体の位置を検出することにより、測定光が照射された測定対象物の面の三次元形状を求めることができる。
【0014】
[3]請求項第3の態様は、測定対象物の面の三次元形状を測定する形状測定装置であって、低コヒーレンス光を放射する光源と、光源から放射される低コヒーレンス光を平行光に変換するコリメート光学系と、コリメート光学系によって平行光にされた低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段から出射される参照光を反射する参照光反射体と、光分割手段から出射される測定光を拡大かつ平行化し、測定対象物に照射するテレセントリック光学系と、参照光反射体で反射される参照光と測定対象物で反射される測定光とを一つに合わせて干渉させる光干渉手段と、受光素子がマトリクス状に配列されて構成され、光干渉手段から出射される測定光と参照光との干渉光を受光する光検出手段と、測定対象物をテレセントリック光学系の光軸に沿って移動可能に支持する支持体と、測定対象物を移動させて測定光の光路長を変更する測定光路長変更手段と、測定対象物の位置を検出する測定対象物位置検出手段と、受光素子ごとに干渉光の強度が最大となるときの測定対象物の位置を検出して、測定光が照射された測定対象物の面の三次元形状を算出する演算手段と、を有する形状測定装置である。
【0015】
本態様によれば、測定光がテレセントリック光学系によって拡大、平行化されて測定対象物に照射される。これにより、測定対象物の広範囲に測定光を垂直に照射することができる。測定対象物で反射された測定光はテレセントリック光学系を介して光干渉手段に入射され、参照光反射体で反射された参照光と一つに合わされて干渉し、光検出手段に入射する。光検出手段は、受光素子をマトリクス状に配列して構成され、各受光素子で個別に光強度が検出される。したがって、各受光素子ごとに光強度が最大となるときの測定対象物の位置を検出することにより、測定光が照射された測定対象物の面の三次元形状を求めることができる。
【0016】
[4]第4の態様は、上記第1から3のいずれか1つの態様の形状測定装置において、測定光をテレセントリック光学系によって拡大かつ平行化することによって生じる測定光の光路長の変化に基づく測定データの補正情報が記憶された補正情報記憶手段を更に備え、演算手段は算出した測定データを補正情報で補正して真の測定データとする態様である。
【0017】
本態様によれば、測定光を拡大、平行化することによって生じる測定光の光路長の変化に基づく測定データのズレが補正される。これにより、更に高精度な測定を行うことができる。
【0018】
[5]第5の態様は、上記第1から3のいずれか1つの態様の形状測定装置において、参照光反射体と光干渉手段との間に配置され、測定光をテレセントリック光学系によって拡大かつ平行化することによって生じる測定光の光路長の変化に応じて参照光の光路長を補正する参照光路長補正手段を更に備えた態様である。
【0019】
本態様によれば、測定光を拡大、平行化することによって生じる測定光の光路長の変化に応じて参照光の光路長が補正される。すなわち、測定光の光路長と同じ変化量で参照光の光路長が変化するように、参照光の光路長が補正される。これにより、更に高精度な測定を行うことができる。
【0020】
[6]第6の態様は、上記第1から5のいずれか1つの態様の形状測定装置において、光源は中心波長が紫外線領域に属する低コヒーレンス光を放射する態様である。
【0021】
本態様によれば、中心波長が紫外線領域(波長400nm〜200nm)の低コヒーレンス光を放射する光源が用いられる。これにより測定光の像面解像度を向上させることができ(0.5μm程度)、横方向の分解能を向上させることができる。また、測定光の像面解像度を向上させることにより、測定対象物からの乱反射を抑制させることができ、高感度な測定を行うことができる。
【0022】
[7]第7の態様は、上記第1から6のいずれか1つの態様の形状測定装置において、光検出手段が固体撮像素子で構成され、三次元形状の測定と同時に測定対象の面の画像が撮像される態様である。
【0023】
本態様によれば、光検出手段が、CCDやCMOS等の固体撮像素子で構成され、測定対象の面の画像が撮像される。これにより、三次元形状のデータとともに、その測定された面の画像データも取得することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、測定対象物の面の三次元形状を高速かつ高精度に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0027】
〔第1の実施の形態〕
[装置構成]
図1は、本発明に係る形状測定装置の第1の実施の形態を示す概略構成図である。
【0028】
同図に示すように、本実施の形態の形状測定装置10は、主として、低コヒーレンス光源12と、ライトガイド14と、コリメータ16と、ビームスプリッタ18と、テレセントリック光学系20と、参照光走査光学系22と、光検出器24と、測定対象物駆動ステージ26と、コントローラ28とを備えて構成される。
【0029】
低コヒーレンス光源12は、コヒーレンス長が短く、広帯域な波長の光(低コヒーレンス光)を放射する光源である。
【0030】
図2は、低コヒーレンス光源が放射する光のスペクトル分布例を示す図である。
【0031】
同図に示すように、低コヒーレンス光源12から放射される光の発光スペクトルは、波長ΛMを中心として一定の拡がりをもった発光スペクトルとなる。
【0032】
特に、本実施の形態の形状測定装置10では、中心波長ΛMが紫外線領域(波長400nm〜200nm)の光源が用いられる。このような光源を使用することにより、像面解像度を向上させることができ(0.5μm程度)、横方向の分解能を向上させることができる。
【0033】
低コヒーレンス光源12としては、たとえば、キセノンランプ、紫外レーザ光源、LED(Light Emitting Diode)などを用いることができる(スペクトル幅50nm以上が好ましい。)。
【0034】
ライトガイド14は、可撓性を有する光ファイバで構成され、低コヒーレンス光源12から放出される光をコリメータ16に伝播する。
【0035】
コリメータ16は、ライトガイド14から出射される発散光を平行光にし、ビームスプリッタ18に入射する。
【0036】
ビームスプリッタ18は、光分割手段及び光干渉手段として機能し、コリメータ16から出射される光を測定光と参照光とに分割する(光分割手段としての機能)。測定光はテレセントリック光学系20に入射され、参照光は参照光走査光学系22に入射される。また、ビームスプリッタ18は、テレセントリック光学系20から戻る光(測定対象物Oで反射した測定光)と参照光走査光学系22から戻る光(CCP40で反射した参照光)とを一つに合わせて光学的に干渉させ(光干渉手段としての機能)、光検出器24に入射させる。
【0037】
テレセントリック光学系20は、ビームスプリッタ18から出射される測定光を拡大、平行化し、かつ、測定光の像面分解能を高め、像面歪曲等の収差を抑える役割を果す。測定光は、このテレセントリック光学系20を介して拡大、平行化されて測定対象物Oの表面に照射される(たとえば、Φ60〜100mm、像面分解能4.0μm以上とされて測定対象物Oの表面に照射される。)。これにより、測定対象物Oの表面(測定対象面)の広範囲に測定光を垂直に照射することができる。
【0038】
面の三次元形状を測定する測定エリアは、この測定光が照射されるエリア内に設定される。
【0039】
テレセントリック光学系20を介して測定対象物Oの表面に照射された測定光は、測定対象物Oの表面で反射し、テレセントリック光学系20を介してビームスプリッタ18に戻される。
【0040】
なお、テレセントリック光学系20は、ビームスプリッタ18で測定光(像)と参照光(像)とを干渉(重ね合わせ)させることを考慮すると、両側テレセントリック光学系とすることが好ましい。
【0041】
参照光走査光学系22は、ビームスプリッタ18から出射される参照光の光路長を変化させる。
【0042】
図3は、参照光走査光学系の概略構成図である。
【0043】
同図に示すように、参照光走査光学系22は、主として、CCP(Corner Cube Prism:コーナーキューブプリズム)40と、直動ステージ42と、リニアスケール44と、スケールヘッド46とを備えて構成される。
【0044】
CCP40は、参照光反射体として機能し、ビームスプリッタ18から出射される参照光を反射して、ビームスプリッタ18に入射する。
【0045】
直動ステージ42は、参照光路長変更手段として機能し、CCP40を移動させて参照光の光路長を変化させる。
図3に示すように、CCP40は、直動ステージ42に設けられる。直動ステージ42は、ガイドレール48上に設けられる。ガイドレール48は、ビームスプリッタ18から出射される参照光の光軸の平行同軸性を保つように配設される。直動ステージ42は、図示しない駆動手段(たとえば、圧電素子やボイスコイルモータ、超音波モータ等)に駆動されてガイドレール48上を往復移動する。直動ステージ42がガイドレール48上を往復移動することにより、CCP40がビームスプリッタ18から出射される参照光の光軸に沿って往復移動する。これにより、参照光の光路長が変化する。
【0046】
リニアスケール44とスケールヘッド46は、CCP40の位置を検出するための参照光反射体位置検出手段を構成する。リニアスケール44は、ガイドレール48に沿って移動する直動ステージ42の位置検出が可能となるように配設される。スケールヘッド46は、直動ステージ42に設けられる。直動ステージ42が移動すると、スケールヘッド46がリニアスケール44に沿って移動する。スケールヘッド46でリニアスケール44の位置情報を読み取り、CCP40の位置を検出する。スケールヘッド46で読み取られたCCP40の位置情報は、コントローラ28に出力される。
【0047】
光検出器(光検出手段)24は、
図4に示すように、多数の受光素子(画素)30をマトリクス状に配列して構成される。各受光素子30は、受光した光の強度に応じた電荷を蓄積する。光検出器24は、各受光素子30に蓄積された信号電荷を信号電圧に変換し、電気信号(干渉信号)として出力する。このような機能を有する光検出器24としては、たとえば、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)やCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)などの固体撮像素子が好適に用いられる。
【0048】
測定対象物Oで反射した測定光とCCP40で反射した参照光は、ビームスプリッタ18によって一つに合わされて光学的に干渉し、光検出器24の各受光素子30に入射される。
【0049】
光検出器24の各受光素子30は、測定エリア内に設定される各測定点に一対一で対応し、各測定点で反射した測定光の干渉光が、対応する受光素子30に入射される。すなわち、測定エリアは、測定光が照射されるエリアのうち、その反射光の干渉光が光検出器24に入射する領域として設定される。したがって、たとえば、光検出器24を固体撮像素子で構成した場合は、その撮像領域(固体撮像素子で撮像可能な領域)が測定エリアに設定される。そして、各測定点は、その測定エリアを受光素子30の配列にしたがって分割した領域として設定される。したがって、たとえば、受光素子30がm×nで配列される場合は、測定エリアをm×nで区画したときの各分割領域が測定点として設定される。
【0050】
光検出器24の各受光素子30で検出される干渉光の強度は、CCP40の移動により変化する。すなわち、干渉光の強度は、参照光と測定光との光路長差により変化するので、CCP40を移動させて参照光の光路長を変化させると、測定光と参照光との光路長差が変化して、干渉光の強度が変化する。そして、この干渉光の強度振幅は、測定光と干渉光との光路長差がゼロのときに最大となる。
【0051】
光検出器24は、所定の時間間隔でサンプリングし、各サンプリング時点における検出光量を電気信号(干渉信号)に変換してコントローラ28に出力する。
【0052】
なお、本実施の形態の形状測定装置10では、低コヒーレンス光源12として中心波長が紫外線領域の光源を使用するので、紫外線領域の感度が高い検出器を使用することが好ましい。
【0053】
また、上記のように、中心波長が紫外線領域の光源を使用した場合、測定光の像面解像度を向上させることができるので(横方向の分解能を向上させることができる)、光検出器24も高解像度の検出器(500万画素以上)を使用することが好ましい。これにより、高分解能な測定を行うことができる。
【0054】
測定対象物駆動ステージ26は、測定対象物Oが載置されるステージであり、互いに直交する二方向(X方向(
図1においてX方向)とY方向(
図1において紙面と直交する方向))に移動可能に設けられる(XY平面を移動可能に設けられる)。測定対象物駆動ステージ26は、図示しないステージ駆動手段に駆動されて、X方向とY方向とに移動する(XY平面を移動する)。
【0055】
測定対象物駆動ステージ26の位置は、図示しないステージ位置検出手段で検出され、検出された位置情報はコントローラ28に出力される。
【0056】
テレセントリック光学系20から出射される測定光は、この測定対象物駆動ステージ26に垂直(Z方向)に入射される(XY平面に対して垂直に入射される。)。
【0057】
コントローラ28は、測定対象物Oの寸法を算出するための演算手段として機能するとともに、形状測定装置10の全体の動作を統括制御する制御手段として機能する。コントローラ28は、いわゆるPC(Personal Computer)で構成され、所定のプログラムを実行して、演算手段及び制御手段としての機能を実現する。
【0058】
測定対象物駆動ステージ26の移動制御、CCP40の移動制御、低コヒーレンス光源12の発光制御などの各部の駆動制御は、このコントローラ28によって行われる。
【0059】
また、測定対象物Oの三次元形状の算出は、このコントローラ28によって行われる。すなわち、コントローラ28は、光検出器24から出力される各受光素子30の干渉信号(干渉光の強度)、スケールヘッド46から出力されるCCP40の位置情報、ステージ位置検出手段から出力される測定対象物駆動ステージ26の位置情報を取得し、これらの情報に基づいて測定対象物Oの測定対象面の三次元形状を算出する。
【0060】
具体的には、次のようにして、測定対象面の三次元形状を算出する。
【0061】
低コヒーレンス光源12から放射される光は、コヒーレンス長が短いため、測定光と参照光との光路長の差がゼロ又はその近傍でのみ干渉縞(白色干渉縞)が検出される。そして、その干渉縞は、測定光の光路長と参照光の光路長とが一致するとき、すなわち、両者の光路長の差がゼロのときにコントラストが最大になる。干渉縞のコントラストは、光検出器24で検出される干渉光の強度として表され、
図5に示すように、CCP40の位置、すなわち、測定光と参照光との光路長差に応じて変化する。
【0062】
そこで、低コヒーレンス干渉の原理を利用した寸法測定では、まず、寸法が既知の基準品(マスタ)について、干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置が求められ、次いで、測定対象物Oについて、干渉光の強度が最大となるときのCCP40の位置が求められる。そして、求められたCCP40の位置の差に相当する光路長差が求められ、求められた光路長差が基準品の寸法に加えられて、測定対象物Oの寸法が求められる。
【0063】
本実施の形態の形状測定装置10では、光検出器24を構成する各受光素子(画素)30で干渉光の光強度が検出される。したがって、受光素子30ごとに、基準品について干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置と、測定対象物Oについて干渉光の強度が最大となるときのCCP40の位置とが求められる。そして、受光素子30ごとに光路長差が求められ、求められた光路長差が基準品の寸法に加えられて、受光素子30ごとに寸法が求められる。この各受光素子30で求められる寸法は、対応する測定点の寸法を示し、すべての測定点の寸法を取得することにより、測定エリアの三次元形状が取得される。
【0064】
なお、基準品の測定は、測定対象物Oの測定を実施する前に行われる。そして、その測定で得られた情報はコントローラ28内の記憶装置(不図示)に記憶される。
【0065】
[作用]
次に、以上のように構成される本実施の形態の形状測定装置10を用いた測定対象物の面の三次元形状の測定方法について説明する。
【0066】
実際に測定対象物Oを測る事前準備として基準面の測定を行う。基準面の測定は、寸法(表面位置)が既知の基準品を測定対象物駆動ステージ26にセットし、その表面(基準面)を測定することにより行う。すなわち、基準品を測定対象物駆動ステージ26にセットし、低コヒーレンス光源12を点灯させ、基準品の表面に測定光を照射する。そして、CCP40を移動させ、干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置P0を検出する。
【0067】
ここで、上記のように、本実施の形態の形状測定装置10では、光検出器24の各受光素子30で干渉光が受光されるので、受光素子30ごとに干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置P0が検出される。
【0068】
コントローラ28は、受光素子30ごとに得られたCCP40の位置P0の情報を基準位置情報としてコントローラ28内の記憶装置(不図示)に記憶する。
【0069】
以上の事前準備が完了した後、測定対象物Oの測定を行う。
【0070】
測定対象物Oを形状測定装置10の測定対象物駆動ステージ26にセットする。セット後、オペレータはコントローラ28に測定開始を指示する。
【0071】
測定開始が指示されると、まず、コントローラ28は、低コヒーレンス光源12を点灯させる。これにより、ビームスプリッタ18で測定光と参照光に分割され、測定光が測定対象物Oの表面に照射されるとともに、参照光がCCP40に入射される。測定光は、測定対象物Oの表面で反射された後、ビームスプリッタ18に戻り、CCP40で反射した参照光と一つに合わされて干渉し、光検出器24に入射される。
【0072】
低コヒーレンス光源12から放射される光が安定したところで、コントローラ28は、直動ステージ42の駆動手段(不図示)を駆動し、CCP40を移動(往復)させる。CCP40が移動することにより、参照光の光路長が変化し、参照光と測定光との光路長差が変化する。
【0073】
コントローラ28は、スケールヘッド46からCCP40の位置情報を取得するとともに、光検出器24から各受光素子30の干渉信号を取得する。そして、各受光素子30において、干渉信号が最大となるときのCCP40の位置Pを検出する。
【0074】
検出された受光素子30ごとのCCP40の位置Pの情報は、検出位置情報として、コントローラ28内の記憶装置(不図示)に記憶される。
【0075】
コントローラ28は、受光素子30ごとに検出位置Pと基準位置P0との差を求め、その差に対応する測定光と参照光の光路長差を求める。そして、求めた光路長差を基準面の表面位置に加えて、受光素子30ごとに測定対象物Oの寸法(表面位置)を決定する。この各受光素子30で求められる寸法は、対応する測定点の寸法を示しているので、すべての測定点の寸法を取得することにより、測定エリア内の各測定点の寸法が取得でき、測定エリアの三次元形状が取得される。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態の形状測定装置10によれば、テレセントリック光学系20を介して測定光を拡大、平行化して、測定対象物に測定光を照射し、面の三次元形状を一度に測定することができるので、面の三次元形状を高速に測定することができる。
【0077】
また、テレセントリック光学系20を介して測定光を測定対象物Oに照射するので、測定光を測定面に対して垂直に入射させることができる。これにより、測定光が測定面に対して斜めに入射することによる散乱を回避でき、高感度な測定を行うことができる。
【0078】
更に、低コヒーレンス光源12として、中心波長が紫外線領域の光源を使用することにより、測定光の像面解像度を向上させることができる。これにより、横方向の分解能を高めることができ、高精度な測定を行うことができる。また、これにより、微細形状やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、粗さなどの計測を行うことができる。
【0079】
なお、上記の例では測定対象物Oの表面の1カ所だけを測定しているが、測定対象物駆動ステージ26をX方向(又はY方向)に移動させて、測定対象物Oを移動させ、測定対象物Oに対する測定エリアの位置を変えることにより、複数箇所の測定を行うことができる。
【0080】
〔第2の実施の形態〕
図6は、本発明に係る形状測定装置の第2の実施の形態を示す概略構成図である。
【0081】
本実施の形態の形状測定装置は、参照光の光路長が不変とされ、光学系の全体が移動することにより、測定光と参照光の光路長差が変えられる。
【0082】
なお、参照光の光路長が一定である点、及び、光学系の全体が移動可能とされている点以外は、基本的に上述した第1の実施の形態の形状測定装置10と同じである。したがって、以下においては、上記第1の実施の形態の形状測定装置10と相違する点についてのみ説明する。
【0083】
図6に示すように、本実施の形態の形状測定装置10Aでは、ビームスプリッタ18から出射された参照光を反射してビームスプリッタ18に戻すためのCCP(参照光反射体)40がビームスプリッタ18に対して一定位置に固定して配置される。したがって、参照光の光路長は不変とされ、一定に維持される。
【0084】
光学系を構成するコリメータ16と、ビームスプリッタ18と、テレセントリック光学系20と、CCP40と、光検出器24とは、光学系支持フレーム(支持体)50に設けられる。
【0085】
光学系支持フレーム50は、スライダ52を介してガイドレール54上に設けられる。ガイドレール54は、形状測定装置10Aの本体フレーム(不図示)に配設される。このガイドレール54は、テレセントリック光学系20から出射される測定光の光軸の平行同軸性を保つように配設される。光学系支持フレーム50は、図示しない駆動手段(たとえば、圧電素子やボイスコイルモータ、超音波モータ等)に駆動されてガイドレール54上を往復移動する。
【0086】
光学系支持フレーム50がガイドレール54上を往復移動することにより、コリメータ16と、ビームスプリッタ18と、テレセントリック光学系20と、CCP40と、光検出器24とが一体的に移動し、測定光の光路長が変化する。これにより、測定光と参照光との光路長差が変動する。
【0087】
光学系支持フレーム50の位置は、リニアスケール56とスケールヘッド58とからなる位置検出手段(支持体位置検出手段)によって検出される。
【0088】
リニアスケール56は、光学系支持フレーム50に設けられ、光学系支持フレーム50とともに移動する。スケールヘッド58は、形状測定装置10Aの本体フレーム(不図示)に固定して設けられる。スケールヘッド58でリニアスケール56の位置情報を読み取り、光学系支持フレーム50の位置を検出する。スケールヘッド58で読み取られた光学系支持フレーム50の位置情報は、コントローラ28に出力される。
【0089】
[作用]
次に、以上のように構成される本実施の形態の形状測定装置10Aを用いた測定対象物の面の三次元形状の測定方法について説明する。
【0090】
上記第1の実施の形態の形状測定装置10では、CCP40を移動させ、干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置を求めて、測定対象物Oの寸法を求める構成とされている。
【0091】
本実施の形態の形状測定装置10Aでは、光学系支持フレーム50を移動させ、干渉光の強度が最大になるときの光学系支持フレーム50の位置を求めて、測定対象物Oの寸法を求める。具体的には、以下のように測定が行われる。
【0092】
上記第1の実施の形態の形状測定装置10と同様に、事前準備として基準面の測定を行う。基準面の測定は、寸法(表面位置)が既知の基準品を測定対象物駆動ステージ26にセットし、その表面(基準面)を測定することにより行う。すなわち、基準品を測定対象物駆動ステージ26にセットし、低コヒーレンス光源12を点灯させ、基準品の表面に測定光を照射する。そして、光学系支持フレーム50を移動させ、干渉光の強度が最大になるときの光学系支持フレーム50の位置P0を検出する。光検出器24では、受光素子30ごとに干渉光が受光されるので、受光素子30ごとに干渉光の強度が最大になるときの光学系支持フレーム50の位置P0が検出される。
【0093】
コントローラ28は、受光素子30ごとに得られた光学系支持フレーム50の位置P0の情報を基準位置情報としてコントローラ28内の記憶装置(不図示)に記憶する。
【0094】
以上の事前準備が完了した後、測定対象物Oの測定を行う。
【0095】
測定対象物Oを形状測定装置10の測定対象物駆動ステージ26にセットする。セット後、オペレータはコントローラ28に測定開始を指示する。
【0096】
測定開始が指示されると、まず、コントローラ28は、低コヒーレンス光源12を点灯させる。これにより、ビームスプリッタ18で測定光と参照光に分割され、測定光が測定対象物Oの表面に照射されるとともに、参照光がCCP40に入射される。測定光は、測定対象物Oの表面で反射された後、ビームスプリッタ18に戻り、CCP40で反射した参照光と一つに合わされて干渉し、光検出器24に入射される。
【0097】
低コヒーレンス光源12から放射される光が安定したところで、コントローラ28は、光学系支持フレーム50の駆動手段(不図示)を駆動し、光学系支持フレーム50を移動(往復)させる。光学系支持フレーム50が移動することにより、参照光と測定光との光路長差が変化する。
【0098】
コントローラ28は、スケールヘッド58から光学系支持フレーム50の位置情報を取得するとともに、光検出器24から各受光素子30の干渉信号を取得する。そして、各受光素子30において、干渉信号が最大となるときの光学系支持フレーム50の位置Pを検出する。
【0099】
検出された受光素子30ごとの光学系支持フレーム50の位置Pの情報は、検出位置情報として、コントローラ28内の記憶装置(不図示)に記憶される。
【0100】
コントローラ28は、受光素子30ごとに検出位置Pと基準位置P0との差を求め、その差に対応する参照光と測定光との光路長差を求める。そして、求めた光路長差を基準面の表面位置に加えて、受光素子30ごとに測定対象物Oの寸法(表面位置)を決定する。この各受光素子30で求められる寸法は、対応する測定点の寸法を示しているので、すべての測定点の寸法を取得することにより、測定エリア内の各測定点の寸法が取得でき、測定エリアの三次元形状が取得される。
【0101】
以上説明したように、光学系の全体を移動させることによっても、面の三次元形状を測定することができ、高速に面の三次元形状を測定することができる。
【0102】
また、光学系の一部だけを移動させる構成とするのではなく(たとえば、テレセントリック光学系20のみを移動させる構成など)、光学系の全体を移動させる構成とすることにより、像面歪み等の発生を防止でき、高精度な測定を行うことができる。
【0103】
なお、本実施の形態では、光学系全体を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変動させる構成としているが、
図7に示すように、測定対象物駆動ステージ26を昇降可能(
図7中Z方向に移動可能)に構成し、測定対象物Oを上下動させる構成(テレセントリック光学系20から出射される測定光の光軸の平行同軸性を保つように移動させる構成)とすることもできる。この場合、光学系の全体は固定とされる。また、測定対象物駆動ステージ26の高さ位置(
図7中Z方向の位置)を位置検出手段(たとえば、リニアスケール56とスケールヘッド58等で構成)によって検出し、測定対象物の位置を検出する構成とされる。
【0104】
〔その他の実施の形態〕
[1]測定データの較正
上記のように、本発明に係る形状測定装置では、測定光をテレセントリック光学系によって拡大、平行化して測定対象物に照射する。しかし、測定光をテレセントリック光学系によって拡大、平行化して測定対象物に照射すると、偏向された測定光の光路長に変化が生じ、測定データにズレが生じる。そこで、測定光の偏向方向に基づく測定データのズレを補正するため、事前に補正データを取得し、この補正データを用いて測定データを補正する。これにより、より高精度な測定を行うことができる。
【0105】
補正データは、寸法が既知(形状データ(基準形状データ)が既知)の基準品の基準面を測定し、その測定結果から各測定点における測定データの補正データを生成する。たとえば、基準品を測定して得られた測定データと、基準品の基準形状データとを比較して、較正するための補正係数を作成し、これを補正データとする。
【0106】
コントローラ28は、たとえば、実際の測定開始前にこの補正データの生成処理を実施し、得られた補正データを記憶装置(補正情報記憶手段)に記録する。そして、実際の測定の際には、得られた測定データを補正データで補正して、真の測定データを算出する。
【0107】
上記のように、実際の測定では、事前準備として基準面の測定が行われるので、この基準面の測定と同時に補正データの生成を行うことが好ましい。
【0108】
[2]参照光路長の補正
上記のように、測定光をテレセントリック光学系によって拡大し平行化すると、測定光の光路長に変化が生じる。したがって、この拡大、平行化による測定光の光路長の変化に応じて、参照光の光路長も変化させることにより、より高精度な測定を行うことができる。すなわち、測定光の光路長の変化に対応させて、参照光の光路長を変化させる。これにより、測定光を拡大、平行化させることによる影響を取り除くことができる。
【0109】
ここで、テレセントリック光学系によって拡大、平行化させることによって測定光の光路長がどのように変化するかは、あらかじめ求めることができる。したがって、測定光の変化量と同じ変化量で参照光の光路長が変化するように、参照光の光路長を補正する。補正は、たとえば、
図8に示すように、参照光の光路中に補正用の光学系60を配置し、この補正用の光学系60で参照光の光路長を補正することにより行う。
【0110】
[3]分割手段及び光干渉手段の他の実施例
上記実施の形態では、分割手段及び光干渉手段としてビームスプリッタを使用しているが、分割手段及び光干渉手段には、この他、光カプラ等を用いることもできる。
【0111】
[4]参照光反射体の他の実施例
上記実施の形態では、参照光反射体としてCCPを使用しているが、参照光反射体としては、この他、CCM(Corner Cube Mirror:コーナーキューブミラー)や直角プリズム、直角ミラーなどを使用することもできる。
【0112】
[5]測定対象物
本発明によれば、測定対象物の寸法を広範囲にわたって高精度に測定することができる。測定対象物は特に限定されない。低コヒーレンス干渉法では、透明体を透過させて屈折率の異なる多層膜も計測することができるため、膜厚及び透明プラスチックなどで覆われた物体の形状測定も行うことができる。
【0113】
[6]測定対象物の撮影
上記のように、光検出器24にはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子が好適に用いられる。このような固体撮像素子を光検出器24に用いた場合、面の形状の測定と同時に、その面の画像を取得することができる。したがって、固体撮像素子を光検出器24に用いた場合は、形状の測定と同時に、その形状が測定された面の画像を撮像する構成とすることもできる。これにより、三次元形状のデータだけではなく、その三次元形状のデータが得られた面の画像データも取得することができる。