(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<複合金属酸化物>
本発明の複合金属酸化物は、下記式(I)で表される組成を有し、P2構造を有する酸化物から構成される。このような複合金属酸化物をナトリウム二次電池用正極活物質として用いることで、Co、Ni等の稀少金属元素を含まなくてもナトリウム二次電池の電池性能が向上する。特にyが1/4以上2/3未満の場合に、電池性能の向上が顕著に現れる。さらに好ましいyの範囲は、1/5以上2/3未満である。
Na
xFe
yMn
1−yO
2・・・(I)
(式(I)中のxは1未満であり、yは1/3以上2/3未満である。)
【0019】
複合金属酸化物が、P2構造になりやすいx及びyの範囲は、それぞれ、2/3≦x≦9/10、0.33≦y≦0.60である。また、積層様式は基本的には規則的なP2型であり、3%以上の明確な積層欠陥を有さないことを特徴とする。
【0020】
ここで、x、yの値は、原料の使用量、製造条件等を調整することで調整することができる。詳細は後述する。
【0021】
複合金属酸化物がP2構造を有する酸化物であるか否かは、X線回析により確認することができる。具体的には実施例に記載の方法で確認することができる。
【0022】
本発明の複合金属酸化物は、P2構造を有する酸化物から構成されるが、本発明の効果を害さない限り他の成分が含まれていてもよい。
【0023】
<複合金属酸化物の製造方法>
本発明の複合金属酸化物は、下記の通り、金属含有化合物の混合物を焼成することによって製造できる。
【0024】
具体的には、対応する金属元素を含有する金属含有化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に、得られた混合物を焼成することによって製造できる。
【0025】
例えば、Na:Fe:Mn=2/3:1/2:1/2で表される金属元素比を有する複合金属酸化物は、炭酸ナトリウムと、酸化鉄と、酸化マンガンの各原料を、Na:Fe:Mnのモル比が2/3:1/2:1/2となるように秤量し、それらを混合し、得られた混合物を焼成することによって製造することができる。
【0026】
複合金属酸化物を製造するために用いることができる金属含有化合物としては、酸化物、ならびに高温で分解及び/又は酸化したときに酸化物になり得る化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩を用いることができる。ナトリウム化合物としてはNa
2CO
3、NaHCO
3、Na
2O
2が好ましく、取り扱い性の観点で、より好ましくはNa
2CO
3である。マンガン化合物としてはMnO
2が好ましく、鉄化合物としてはFe
3O
4が好ましい。また、これらの金属含有化合物は、水和物であってもよい。
【0027】
原料である金属含有化合物に、フッ化物、塩化物等のハロゲン化物を適量添加することによって、生成する複合金属酸化物の結晶性、複合金属酸化物を構成する粒子の平均粒径を制御することができる。この場合、ハロゲン化物は、反応促進剤(フラックス)としての役割を果たす場合もある。フラックスとしては、例えばNaF、MnF
3、FeF
2、NiF
2、CoF
2、NaCl、MnCl
2、FeCl
2、FeCl
3、NiCl
2、CoCl
2、Na
2CO
3、NaHCO
3、NH
4Cl、NH
4I、B
2O
3、H
3BO
3等を挙げることができる。また、これらのフラックスは、水和物であってもよい。
【0028】
金属含有化合物の混合には、ボールミル、V型混合機、攪拌機等の、工業的に通常用いられている装置を用いることができる。このときの混合は、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。また晶析法によって、所定の組成の金属含有化合物の混合物を得てもよい。
【0029】
上記のようにして得た金属含有化合物の混合物を焼成することによって、上記複合金属酸化物を得ることができる。焼成条件については特に限定されないが、焼成温度を800〜1000℃の範囲、焼成時間を2〜24時間の範囲に設定することが好ましい。焼成温度が800度以上であれば、過度な積層欠陥の生成を抑制するという理由で好ましく、焼成温度が1000℃以下であれば一次粒子サイズを低減するという理由で好ましい。また、焼成時間が2時間以上であれば単一粒子での均一な化学組成を得るという理由で好ましく、焼成時間が24時間未満であれば低温で積層欠陥を維持したまま結晶成長を行わせることも可能になるという理由で好ましい。
【0030】
焼成条件によってはP2構造以外の構造を有する酸化物が複合金属酸化物に含まれる場合もある。P2構造以外の構造を有する酸化物が複合金属酸化物に含まれると、本発明の複合金属酸化物を用いて製造したナトリウム二次電池の電池性能が低下する可能性がある。このため、P2構造以外の構造を有する酸化物の含有量は低いほど好ましい。P2構造以外の構造を有する酸化物の含有量を抑えるためには、焼成温度を850〜1000℃の範囲、焼成時間を6〜24時間の範囲に調整することが好ましい。
【0031】
焼成時の雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気;空気、酸素、酸素含有窒素、酸素含有アルゴン等の酸化性雰囲気;及び水素を0.1〜10体積%含有する水素含有窒素、水素を0.1〜10体積%含有する水素含有アルゴン等の還元性雰囲気のいずれでもよい。強い還元性の雰囲気で焼成するために、適量の炭素を金属含有化合物の混合物に含有させて焼成してもよい。焼成時の雰囲気としては、空気等の酸化性雰囲気が好ましい。
【0032】
原料の金属含有化合物として、高温で分解及び/又は酸化しうる化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩を使用した場合、上記の焼成を行う前に、400〜1600℃の温度範囲で金属含有化合物の仮焼を行って、酸化物にしたり、結晶水を除去したりしてもよい。仮焼を行う雰囲気は、不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気又は還元性雰囲気のいずれでもよい。また、仮焼後の仮焼物を粉砕して用いてもよい。
【0033】
また、上記のようにして得られる複合金属酸化物に、随意にボールミルやジェットミル等を用いた粉砕、洗浄、分級等を行って、粒度を調節することが好ましいことがある。また、焼成を2回以上行ってもよい。また、複合金属酸化物の粒子表面をSi、Al、Ti、Y等を含有する無機物質で被覆する等の表面処理をしてもよい。また、複合金属酸化物は、その結晶構造がトンネル構造でないものが好ましい。
【0034】
<ナトリウム二次電池>
本発明のナトリウム二次電池は、上記複合金属酸化物から構成される正極活物質を有する正極と、ナトリウムイオンを吸蔵及び脱離することができる負極と、電解質とを備える。
【0035】
[正極]
正極は集電体と、その集電体の表面に形成された正極活物質層とを有し、正極活物質層は、正極活物質、導電材、結着剤を有する。
【0036】
正極活物質層中の正極活物質の含有量は特に限定されないが、80〜95質量%であることが好ましい。
【0037】
本発明に使用可能な導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。正極活物質層中の導電材の含有量は特に限定されないが、5〜10質量%であることが好ましい。
【0038】
本発明に使用可能な結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体等が挙げられる。これらをそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。結着剤のその他の例示としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等の多糖類及びその誘導体等が挙げられる。また、使用可能な結着剤として、無機の微粒子、例えばコロイダルシリカ等を挙げることもできる。正極活物質中の結着剤の含有量は特に限定されないが、5〜10質量%であることが好ましい。
【0039】
本発明に使用可能な集電体としては、ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)等の導電性の材料を用いた箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等が挙げられる。メッシュの目開き、線径、メッシュ数等は、特に限定されず従来公知のものを使用できる。集電体の一般的な厚さは、5〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0040】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0041】
正極を製造する方法としては、先ず、正極活物質と導電材と結着剤と有機溶媒とを混合させて正極活物質スラリーを調製する。ここで、使用可能な有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピリアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0042】
次いで、上記正極活物質スラリーを正極集電体上に塗工し、乾燥後プレスする等して固着する。ここで、正極活物質スラリーを正極集電体上に塗工する方法としては、例えばスリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等を挙げることができる。
【0043】
なお、正極活物質層を、正極集電体上に形成する方法としては、上記の方法以外に、正極活物質、導電材、結着剤の混合物を正極集電体上に設置し、加圧成型する方法でもよい。
【0044】
[負極]
負極は集電体と、その集電体の表面に形成された負極活物質層とを有し、負極活物質層は負極活物質及び結着剤を有する。また、負極としては、負極活物質を含む負極合剤を負極集電体に担持したもの、ナトリウム金属又はナトリウム合金等のナトリウムイオンを吸蔵・脱離可能な電極を用いることができる。
【0045】
負極活物質としては、ナトリウムイオンを吸蔵・脱離することのできる天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、ハードカーボン、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素材料が挙げられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、又は微粉末の凝集体等のいずれでもよい。ここで、炭素材料は、導電材としての役割を果たす場合もある。
【0046】
上記の通り、本発明において負極活物質は、特定のものに限定されないが、ハードカーボンを使用することが好ましい。負極活物質として、ハードカーボンを使用することで、負極活物質が原因となる電池性能の低下を抑えられる。
【0047】
ハードカーボンは、2000℃以上の高温で熱処理してもほとんど積層秩序が変化しない炭素材料であり、難黒鉛化炭素ともよばれる。ハードカーボンとしては、炭素繊維の製造過程の中間生成物である不融化糸を1000〜1400℃程度で炭化した炭素繊維、有機化合物を150〜300℃程度で空気酸化した後、1000〜1400℃程度で炭化した炭素材料等が例示できる。ハードカーボンの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造されたハードカーボンを使用することができる。
【0048】
ハードカーボンの平均粒径、真密度、(002)面の面間隔等は特に限定されず、適宜好ましいものを選択して実施することができる。
【0049】
負極活物質層中の負極活物質の含有量は特に限定されないが、80〜95質量%であることが好ましい。
【0050】
結着剤としては、正極に使用可能なものと同様のものが使用可能であるため、これらについては説明を省略する。集電体としては、ニッケル、銅、ステンレス(SUS)等の導電性の材料を用いる。集電体は正極用の集電体と同様に、箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等から構成される。
【0051】
また、負極活物質層を集電体上に形成する方法としては、正極活物質層を集電体上に形成する方法と同様の方法を採用することができる。
【0052】
[電解質]
電解質は、特に限定されず、一般的な電解液、固体電解質のいずれも使用可能である。電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトン等の含硫黄化合物;又は上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものを用いることができる。通常は有機溶媒として、これらのうちの二種以上を混合して用いる。
【0053】
上記電解液の中でも、実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒を採用することが好ましい。特に、これらの非水溶媒の中からいずれかを採用し、負極活物質としてハードカーボンを採用すると、ナトリウムイオン二次電池は、優れた充放電効率及び充放電特性を持つ。
【0054】
ここで、「実質的に」とは、飽和環状カーボネートのみからなる非水溶媒(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒の他、充放電特性等のナトリウムイオン二次電池の性能に影響を与えない範囲で、他の溶媒を本発明に用いる上記非水溶媒に含んだ溶媒も含むことを指す。
【0055】
飽和環状カーボネートの中でもプロピレンカーボネートの使用が好ましい。また、混合溶媒の中でもエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒、又はエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合溶媒の使用が好ましい。
【0056】
電解質として、電解液を採用した場合に使用可能な電解質塩は、特に限定されず、ナトリウム二次電池に一般的に用いられる電解質塩を使用できる。
【0057】
ナトリウム二次電池に一般的に用いられる電解質塩としては、例えば、NaClO
4、NaPF
6、NaBF
4、CF
3SO
3Na、NaAsF
6、NaB(C
6H
5)
4、CH
3SO
3Na、CF
3SO
3Na、NaN(SO
2CF
3)
2、NaN(SO
2C
2F
5)
2、NaC(SO
2CF
3)
3、NaN(SO
3CF
3)
2等を挙げることができる。なお、上記電解質塩のうち1種を用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、電解液中の電解質塩の濃度は、特に限定されないが、上記電解質塩の濃度は3〜0.1mol/lであることが好ましく、1.5〜0.5mol/lであることがより好ましい。
【0059】
固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物等の有機系固体電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解質溶液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。また、Na
2S−SiS
2、Na
2S−GeS
2、NaTi
2(PO
4)
3、NaFe
2(PO
4)
3、Na
2(SO
4)
3、Fe
2(SO
4)
2(PO
4)、Fe
2(MoO
4)
3等の無機系固体電解質を用いてもよい。
【0060】
[ナトリウム二次電池の構造]
本発明のナトリウム二次電池の構造としては、特に限定されず、形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池等、従来公知のいずれの形態・構造にも適用しうるものである。また、ナトリウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、(内部並列接続タイプ)電池及び双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用しうるものである。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>
過酸化ナトリウム(Na
2O
2:和光純薬工業株式会社製:純度99.8%)、酸化マンガン(III)(Mn
2O
3:株式会社高純度化学研究所製:純度99.9%)、及び酸化鉄(III)(Fe
2O
3:株式会社高純度化学研究所製:純度99%)を、Na:Mn:Feのモル比が5/6:1/2:1/2となるように秤量し、メノウ乳鉢で30分にわたって混合して金属含有化合物の混合物を得た。得られた混合物を、アルミナボートに充填し、電気炉を用いて空気雰囲気において900℃で12時間の条件で焼成することによって、実施例1の複合金属酸化物(Na
5/6Fe
1/2Mn
1/2O
2)を得た。
【0063】
複合金属酸化物からなる正極活物質、導電材としてのアセチレンブラック、及び結着剤としてのポリビリニデンフルオライドを、正極活物質:導電材:結着剤=80:10:10(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した。その後、先ず、正極活物質と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、この混合物に、N−メチルピロリドンを加えて引き続き均一になるように混合し、混合物をスラリー化した。次いで、得られた正極活物質スラリーを、集電体である厚さ20μmのアルミ箔上に、アプリケータを用いて80μmの厚さで塗布し、これを乾燥機に入れ、N−メチルピロリドンを除去させながら、十分に乾燥することによって電極シートを得た。この電極シートを電極打ち抜き機で直径1.0cmに打ち抜いた後、ハンドプレスにて十分に圧着し、正極を得た。
【0064】
負極活物質である平均粒子径約10μmのハードカーボン(「カーボトロンP」、株式会社クレハ製)90質量%、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量%からなる固形分に対し、溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)を適量添加して、負極活物質スラリーを調製した。一方、負極用の集電体として、ニッケルメッシュを準備した。準備した集電体の一方の表面に、上記で調製した負極活物質スラリーをドクターブレード法により塗布し、塗膜を形成させた。次いでこの塗膜を80℃中で真空乾燥させることによって負極を得た。
【0065】
作用極に上記のハードカーボンを用いて作製した負極を、対極に複合金属酸化物を用いて作製した正極を使用して、コイン型ナトリウム二次電池を作製した。電解液としては、1Mの電解質塩(NaClO
4)を非水溶媒(プロピレンカーボネート)に溶解させたものを用いた。また、ナトリウム二次電池の作製はアルゴンを満たしたグローブボックス中にて行った。
【0066】
<実施例2>
複合金属酸化物の製造において、Na:Mn:Feのモル比を86:45:55に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の複合金属酸化物(Na
0.86Fe
0.55Mn
0.45O
2)を製造した。そして、実施例2の複合金属酸化物を用いて作製した正極を対極に使用した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のコイン型ナトリウム二次電池を作製した。
【0067】
<
参考例1>
複合金属酸化物の製造において、Na:Mn:Feのモル比を1:1/3:2/3に変更した以外は実施例1と同様の方法で
参考例1の複合金属酸化物(Na
1Fe
1/3Mn
2/3O
2)を製造した。そして、
参考例1の複合金属酸化物を用いて作製した正極を対極に使用した以外は、実施例1と同様の方法で、
参考例1のコイン型ナトリウム二次電池を作製した。
【0068】
<評価1>
実施例
及び参考例の複合金属酸化物について、粉末X線回折測定を行った。測定は、リガク製の粉末X線回折測定装置MultiFlexを用いて、以下の条件で行った。実施例1の測定結果を
図1(a)に、実施例2の測定結果を
図1(b)に、
参考例1の測定結果を
図1(c)に示した。
X線:CuKα
電圧−電流:30kV−20mA
測定角度範囲:2θ=10〜70°
ステップ:0.01°
スキャンスピード:1°/分
【0069】
図1(a)〜(c)から48付近のピークの幅が0.3度程度であることが確認できる。これにより、実施例
及び参考例の複合金属酸化物は、P2構造を有する酸化物であることが確認された。
【0070】
<評価2>
実施例1のナトリウム二次電池の充放電評価を行った。各電極に対して電流密度が12mA/gの電流になるように設定し、4.3V(充電電圧)まで定電流充電を行った。充電後、各電極に対して電流密度が12mA/gの電流になるように設定し、1.5V(放電電圧)まで定電流放電を行った。この充放電を30サイクル行い、1サイクル目から12サイクル目までのサイクル数と放電容量との関係を
図2に示した。なお、評価1の充放電は、温度25℃の条件下で行った。
【0071】
図2の結果から明らかなように、実施例1のナトリウム二次電池は、条件によっては、数サイクル充放電しても、およそ200mAh/gを超える高い放電容量(容量)を示すことが確認された。また、充放電を繰り返すと放電容量が200mAh/gを若干下回ることがあるものの、高い放電容量を安定して示すことが確認された。
【0072】
<評価2>
実施例2のナトリウム二次電池の充放電評価を、実施例1のナトリウム二次電池の充放電評価と同様の方法で行った。1サイクル目から10サイクル目までのサイクル数と放電容量との関係を
図3に示した。
【0073】
図3に示す通り、実施例2のナトリウム二次電池は、条件によっては、数サイクル充放電しても、およそ150mAh/gを超える高い放電容量(容量)を示すことが確認された。
【0074】
<評価3>
参考例1のナトリウム二次電池の充放電評価を、充電電圧を4V、放電電圧を1.5Vにして、20サイクルの充放電を行なった以外は実施例1のナトリウム二次電池の充放電評価と同様の方法で行った。サイクル数と放電容量との関係を
図4に示した。
【0075】
参考例1のナトリウム二次電池は、20サイクル充放電しても、100mAh/gを超える高い放電容量を安定して示すことが確認された。