(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させるステップが、圧力1〜1.5barおよび上部温度50〜70℃の(メタ)アクリル酸吸収塔で行われてなり、
前記(メタ)アクリル酸吸収塔の下部に(メタ)アクリル酸含有水溶液が排出され、前記(メタ)アクリル酸吸収塔の上部に(メタ)アクリル酸の脱気された非凝縮性ガスが排出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸の連続回収方法。
前記(メタ)アクリル酸吸収塔の下部に排出される(メタ)アクリル酸含有水溶液の5〜80重量%を前記急冷塔の上部に供給し、残部を前記精製ステップに供給することを特徴とする、請求項3又は4に記載の(メタ)アクリル酸の連続回収方法。
前記(メタ)アクリル酸吸収塔の上部に排出される非凝縮性ガスを水と接触させ、前記非凝縮性ガスに含まれている酢酸を回収するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項3〜5の何れか一項に記載の(メタ)アクリル酸の連続回収方法。
前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスと接触する水溶液が、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液より低濃度の(メタ)アクリル酸を含有する水溶液であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸の連続回収方法。
前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスと接触する水溶液が、(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得た後、再循環された水溶液を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の(メタ)アクリル酸の連続回収方法。
前記疎水性共沸溶媒が、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、N−ヘプタン(N−heptane)、シクロヘプタン(cycloheptane)、シクロヘプテン(cycloheptene)、1−ヘプテン(1−heptene)、エチル−ベンゼン(ethyl−benzene)、メチル−シクロヘキサン(methyl−cyclohexane)、N−ブチルアセテート(N−butyl acetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、イソブチルアクリレート(isobutyl acrylate)、2−メチル−1−ヘプテン(2−methyl−1−heptene)、6−メチル−1−ヘプテン(6−methyl−1−heptene)、4−メチル−1−ヘプテン(4−methyl−1−heptene)、2−エチル−1−ヘキセン(2−ethyl−1−hexene)、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、2−メチル−1−ヘキセン(2−methyl−1−hexene)、2,3−ジメチルペンタン(2,3−dimethylpentane)、5−メチル−1−ヘキセン(5−methyl−1−hexene)およびイソプロピル−ブチル−エーテル(isopropyl−butyl−ether)からなる群より選択される一種又は二種以上のものであることを特徴とする、請求項11記載の(メタ)アクリル酸の連続回収方法。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸は、一般に、プロパン、プロピレン、(メタ)アクロレインなどの化合物を触媒存在下で気相酸化反応させる方法によって製造される。例えば、反応器内において、適切な触媒の存在下、プロパン、プロピレンなどは気相酸化反応によって(メタ)アクロレインを経て(メタ)アクリル酸に転換され、反応器の後段において、(メタ)アクリル酸、未反応プロパンまたはプロピレン、(メタ)アクロレイン、不活性ガス、二酸化炭素、水蒸気および前記反応による各種有機副生物(酢酸、高沸点副生物など)を含む反応生成物の混合ガスが得られる。
【0003】
図1に示すように、前記反応生成物の混合ガスは吸収塔102で水と接触するが、そのうち、溶解性ガスは水と共に(メタ)アクリル酸水溶液として得られ、非溶解性ガスは吸収塔の上部に排出されて前記気相酸化反応器に再循環されるか、焼却炉を介して無害なガスに転換されて排出される。
【0004】
また、前記(メタ)アクリル酸水溶液は、水分離塔の蒸留塔105に供給され、蒸留塔の下部に高濃度の(メタ)アクリル酸が得られる。前記蒸留塔105では、主に、水と共沸可能な溶媒を用いて水を分離する共沸蒸留法が利用される。この時、共沸溶媒の選定に応じて、後段の分離カラムの運転法、蒸留塔で分離された水の処理方法などが大きく異なる。
【0005】
例えば、前記蒸留塔105の共沸溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)のような親水性共沸溶媒を使用する場合、酢酸を共沸除去しにくく、蒸留塔105では水のみが除去され、蒸留塔105の下部に多量の酢酸が含有された(メタ)アクリル酸が回収される。したがって、酢酸を除去するためには、低沸点分離塔107と酢酸分離塔109が必要になり、最終的に高沸点分離塔108を経て粗(crude)(メタ)アクリル酸を回収するようになる。
【0006】
他の例としては、
図2に示すように、前記蒸留塔105の共沸溶媒としてトルエンのような疎水性共沸溶媒を使用する場合、工程の主な副生物である酢酸が水と共に共沸して一度に回収される。それにより、
図1における低沸点分離塔107および酢酸分離塔109の精製ステップを省略することができ、蒸留塔105の下部で高沸点副生物と共にほぼ純粋な(メタ)アクリル酸が得られ、以降の精製ステップは、高沸点副生物を除去する高沸点分離塔108を経ると粗(メタ)アクリル酸を回収することができる。
【0007】
特に、本発明の発明者らは、大韓民国公開特許第2009−0041355号を通じて、蒸留塔105で疎水性共沸溶媒を使用する場合、蒸留塔105の上部に発生する酢酸含有廃水を(メタ)アクリル酸吸収塔102に循環させて再使用することにより、廃水量を減らし、反応器の有機物流入を効果的に抑制する方法を提案している。
【0008】
ただし、このような方法は、疎水性共沸溶媒を使用することにより、以降の精製ステップを簡素化する効果が得られるとはいえ、依然として高温の(メタ)アクリル酸含有ガスを冷却吸収して再蒸留しなければならず、以降の精製ステップで高沸点蒸留塔108を運転しなければならない。それにより、工程全体のエネルギー消耗量が増加し、高沸点副生物によって触発される蒸留塔105内の高分子生成などの問題が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、従来の回収方法に比べて工程全体のエネルギー消耗量を減らしながらも、蒸留塔をより安定的に運転することができ、優れた生産効率で高純度の(メタ)アクリル酸を連続して回収することができる方法を提供するためのものである。
【0010】
また、本発明は、前記(メタ)アクリル酸の連続回収のための装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物を触媒存在下で気相酸化反応させ、(メタ)アクリル酸含有混合ガスを得るステップと、
前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷し、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去するステップと、
前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得るステップと、
前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得るステップとを含む(メタ)アクリル酸の連続回収方法が提供される。
【0012】
ここで、前記気相酸化反応によって得られた(メタ)アクリル酸含有混合ガスの温度は150〜250℃であり得る。
【0013】
また、本発明によれば、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷することは、圧力1〜1.5barおよび上部温度70〜150℃の急冷塔で実施でき;この時、前記急冷塔の下部に高沸点副生物が排出され、前記急冷塔の上部に高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスが排出できる。
【0014】
そして、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスは、前記急冷塔に供給され、前記急冷塔の下部再循環液と前記(メタ)アクリル酸含有水溶液によって急冷できる。
【0015】
一方、本発明によれば、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させるステップは、圧力1〜1.5barおよび上部温度50〜70℃の(メタ)アクリル酸吸収塔で実施でき;この時、前記(メタ)アクリル酸吸収塔の下部に(メタ)アクリル酸含有水溶液が排出され、前記(メタ)アクリル酸吸収塔の上部に(メタ)アクリル酸の脱気された非凝縮性ガスが排出できる。
【0016】
前記ステップにおいて、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液は、濃度40〜90重量%の(メタ)アクリル酸を含むことができる。
【0017】
また、前記(メタ)アクリル酸吸収塔の下部に排出される(メタ)アクリル酸含有水溶液の5〜80重量%を前記急冷塔の上部に供給し、残部を前記精製ステップに供給することができる。
【0018】
一方、前記(メタ)アクリル酸吸収塔の上部に排出される非凝縮性ガスを水と接触させ、前記非凝縮性ガスに含まれている酢酸を回収するステップをさらに含むことができる。
【0019】
ここで、前記非凝縮性ガスを水と接触させるステップは、圧力1〜1.5barおよび上部温度50〜70℃の酢酸吸収塔で実施でき;この時、前記酢酸吸収塔の下部に排出される酢酸水溶液を前記(メタ)アクリル酸吸収塔の上部に再循環させ、前記酢酸吸収塔の上部排出物を前記気相酸化反応ステップに再循環させることができる。
【0020】
一方、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液の精製は、疎水性共沸溶媒が供給される蒸留塔で実施でき;この時、前記蒸留塔の下部に(メタ)アクリル酸を含む排出液が回収され、前記蒸留塔の上部に共沸溶媒、水および酢酸を含む排出液が回収できる。
【0021】
また、前記疎水性共沸溶媒は、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、N−ヘプタン(N−heptane)、シクロヘプタン(cycloheptane)、シクロヘプテン(cycloheptene)、1−ヘプテン(1−heptene)、エチル−ベンゼン(ethyl−benzene)、メチル−シクロヘキサン(methyl−cyclohexane)、N−ブチルアセテート(N−butyl acetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、イソブチルアクリレート(isobutyl acrylate)、2−メチル−1−ヘプテン(2−methyl−1−heptene)、6−メチル−1−ヘプテン(6−methyl−1−heptene)、4−メチル−1−ヘプテン(4−methyl−1−heptene)、2−エチル−1−ヘキセン(2−ethyl−1−hexene)、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、2−メチル−1−ヘキセン(2−methyl−1−hexene)、2,3−ジメチルペンタン(2,3−dimethylpentane)、5−メチル−1−ヘキセン(5−methyl−1−hexene)およびイソプロピル−ブチル−エーテル(isopropyl−butyl−ether)からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0022】
さらに、前記蒸留塔の上部に回収される共沸溶媒、水および酢酸を含む排出液中、水層に含まれる酢酸の濃度は1〜50重量%であり得る。
【0023】
また、前記蒸留塔の上部に回収される共沸溶媒、水および酢酸を含む排出液を溶媒分離塔に供給して共沸溶媒層および酢酸水溶液層に分離し;前記共沸溶媒層を前記蒸留塔の上部に再循環させ、前記酢酸水溶液層を、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させるステップに再循環させることができる。
【0024】
さらに、前記蒸留塔の下部排出液は、水および酢酸を1重量%未満で含み、共沸溶媒を500ppm未満で含むことができる。
【0025】
一方、本発明にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、前記蒸留塔の下部排出液を結晶化するステップをさらに含むことができる。
【0026】
また、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷させるステップ、および前記蒸留塔の下部排出液を結晶化するステップでそれぞれ回収される高沸点副生物を熱分解して(メタ)アクリル酸を回収するステップをさらに含むことができる。
【0027】
この時、前記高沸点副生物の熱分解ステップで回収された(メタ)アクリル酸を、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷させるステップに再循環させることができる。
【0028】
一方、本発明によれば、
プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物を触媒存在下で気相酸化反応させ、(メタ)アクリル酸含有混合ガスを製造する気相酸化反応器と、
前記気相酸化反応器から供給される前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷させ、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去する急冷塔と、
前記急冷塔から供給される前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得る(メタ)アクリル酸吸収塔と、
前記(メタ)アクリル酸吸収塔から供給される前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得る蒸留塔とを含む(メタ)アクリル酸の連続回収装置が提供される。
【0029】
ここで、前記急冷塔は、前記(メタ)アクリル酸吸収塔の下部に連結されて一体化されたものであり得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、エネルギー使用量を画期的に節減することができ、従来の回収方法に比べてより優れた生産効率で高純度の(メタ)アクリル酸を連続的に回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一方、本明細書全体において、明示的な言及がない限り、いくつかの用語は次のような意味で定義される。
【0033】
まず、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸(acrylic acid)および/またはメタクリル酸(methacrylic acid)を通称するものと定義する。
【0034】
また、「(メタ)アクリル酸含有混合ガス」とは、気相酸化反応によって(メタ)アクリル酸を製造する時に生成可能な混合ガスを通称する。つまり、本発明の一実施形態によれば、プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物(「原料化合物」)を触媒存在下で気相酸化反応させる方法によって前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを得ることができる。この時、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスには、(メタ)アクリル酸、未反応原料化合物、(メタ)アクロレイン、不活性ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気および各種有機副生物(酢酸、高沸点副生物など)などが含まれ得る。
【0035】
さらに、「高沸点副生物」(heavies)とは、目的とする(メタ)アクリル酸の製造および回収工程で生成可能な副生物であって、分子量が(メタ)アクリル酸より大きい物質を通称する。つまり、前記高沸点副生物は、(メタ)アクリル酸を製造するための前記気相酸化反応で生成される高分子量の物質を含み;前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製する過程で生成可能な(メタ)アクリル酸の重合体(二量体およびオリゴマーなど)、前記精製過程に使用可能な重合防止剤などを含む。
【0036】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法およびそのための回収装置について説明する。
【0037】
本発明者らは、(メタ)アクリル酸の連続回収方法に関する研究を繰り返す過程において、高沸点副生物(heavies)を除去するためのステップを工程の前段の(メタ)アクリル酸吸収塔の前に配置して運転する場合、追加的なエネルギーの供給なくても、工程自体のエネルギーだけで前記高沸点副生物を除去することができ、前記高沸点副生物を予め除去することにより、全体的な工程効率が向上することを確認し、本発明に至った。
【0038】
このような本発明の一実施形態によれば、
プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物を触媒存在下で気相酸化反応させ、(メタ)アクリル酸含有混合ガスを得るステップと、
前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷し、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去するステップと、
前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得るステップと、
前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得るステップとを含む(メタ)アクリル酸の連続回収方法が提供される。
【0039】
以下、
図3および
図4を参照して、本発明にかかる前記回収方法に含まれ得る各ステップについてより詳細に説明する。
【0040】
まず、本発明の一実施形態にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、気相酸化反応によって(メタ)アクリル酸含有混合ガスを得るステップを含む。
【0041】
前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスは、先に定義したように、プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物(「原料化合物」)を触媒存在下で気相酸化反応させる方法によって得ることができる。
【0042】
この時、前記気相酸化反応は、本発明の属する技術分野(以下、「当業界」とする)において通常の気相酸化反応器で通常の条件下で進行することができる。また、前記気相酸化反応における触媒は、当業界において通常のものを使用することができ、好ましくは、大韓民国登録特許第0349602号および第037818号に開示された触媒などを使用することができ、ただし、本発明をこれに限定するものではない。
【0043】
前記気相酸化反応によって生成される(メタ)アクリル酸含有混合ガスには、目的生成物の(メタ)アクリル酸のほか、未反応原料化合物、中間体の(メタ)アクロレイン、その他の不活性ガス、二酸化炭素、水蒸気および各種有機副生物(酢酸、高沸点副生物など)などが含まれ得る。
【0044】
一方、本発明の一実施形態にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷し、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去するステップを含む。
【0045】
前記ステップは、前のステップで得られた(メタ)アクリル酸含有混合ガスから高沸点副生物を優先的に除去するステップである。
【0046】
つまり、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスには高沸点副生物が含まれているが、従来の回収方法は、
図1または
図2に示すように、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスをアクリル酸吸収塔102に供給し、蒸留塔105などを経る方法を利用する。それにより、工程全般の流れに高沸点副生物が含まれている状態で運転されるため、高沸点副生物が配管または各種反応器の壁面に固着してエネルギー効率を低下させ得るだけでなく、蒸留塔105で(メタ)アクリル酸の重合を誘導するなど、全体的な生産効率が低下する問題があった。
【0047】
そこで、本発明は、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を予め除去する方法を通じてエネルギー効率を極大化し、前述した従来の回収方法の問題を解決しようとしたものである。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去するステップは、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷する方法で実施でき、好ましくは、急冷塔101で実施できる。
【0049】
つまり、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスは前記急冷塔101の下部に供給されるが、この時、前記急冷塔101に供給される前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスの温度は150〜250℃、好ましくは150〜200℃であり得る。
【0050】
特に、本発明の一実施形態によれば、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスは、前記急冷塔101に供給され、前記急冷塔101の下部再循環液および後述する(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部から排出される(メタ)アクリル酸含有水溶液によって急冷できる。それにより、前記ステップに追加的なエネルギーの供給なくても、工程自体のエネルギーだけで前記高沸点副生物を除去することができ、エネルギー効率を向上させることができるという利点がある。
【0051】
ここで、前記急冷塔101は、高沸点副生物の凝縮条件などを考慮して、圧力1〜1.5bar、好ましくは1〜1.3barで運転でき;前記急冷塔101の上部温度は30〜150℃、好ましくは50〜120℃、より好ましくは50〜100℃となるようにすることができる。
【0052】
このような急冷作用により、前記急冷塔101の下部には高沸点副生物が排出され、前記急冷塔101の上部には高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスが排出される。
【0053】
この時、急冷塔101の下部に排出される前記高沸点副生物は、別のクラッカー(cracker)で熱分解することができ、これについては後述する。
【0054】
また、急冷塔101の上部に排出される前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスは、連続的に(メタ)アクリル酸含有水溶液を得るステップに供給される。
【0055】
一方、本発明の一実施形態にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得るステップを含む。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を得るステップは、(メタ)アクリル酸吸収塔102で実施できる。
【0057】
つまり、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスは、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部に供給される。また、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部では、(メタ)アクリル酸を吸収するための工程水(PW)または水溶液が供給されるが、前記工程水は、別途に投入される水であり得、好ましくは、後述する酢酸吸収塔103の下部から排出される水溶液および/または後述する蒸留塔105で分離された水溶液が含まれ得る。
【0058】
つまり、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスと接触する水溶液は、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液より低濃度の(メタ)アクリル酸を含有する水溶液であって、酢酸吸収塔103の下部から排出される水溶液、蒸留塔105で分離された水溶液、またはこれらの混合物であり得る。ここで、前記蒸留塔105で分離された水溶液は、(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得た後、(メタ)アクリル酸吸収塔102に再循環される水溶液を意味し、当該工程については後述する。この時、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスと接触する水溶液は、酢酸吸収塔103および/または蒸留塔105から供給されることによって酢酸をさらに含むことができる。
【0059】
一方、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102は、(メタ)アクリル酸の凝縮条件および飽和水蒸気圧に応じた水分含有量条件などを考慮して、圧力1〜1.5bar、好ましくは1〜1.3barで運転でき;さらに、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部温度は30〜150℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは50〜80℃となるようにすることができる。
【0060】
このような工程を通じて、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部には(メタ)アクリル酸含有水溶液が排出され、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部には(メタ)アクリル酸の脱気された非凝縮性ガスが排出される。
【0061】
この時、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部に排出される前記非凝縮性ガスは、その一部が廃ガス焼却炉に供給され、残りは酢酸回収ステップに供給され得る。
【0062】
つまり、本発明の一実施形態によれば、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部に排出される前記非凝縮性ガスを水と接触させ、前記非凝縮性ガスに含まれている酢酸を回収するステップをさらに含むことができる。
【0063】
この時、前記非凝縮性ガスを水と接触させるステップは、酢酸吸収塔103で実施でき;効果的な酢酸吸収工程のために、前記酢酸吸収塔103は、圧力1〜1.5bar、好ましくは1〜1.3barで運転でき;前記酢酸吸収塔103の上部温度は30〜150℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは50〜80℃となるようにすることができる。
【0064】
このほか、前記酢酸吸収塔103の具体的な運転条件は、本出願人が先に出願した大韓民国公開特許第2009−0041355号に従うことができる。
【0065】
この時、前記酢酸吸収塔103の上部では、前記非凝縮性ガスに含まれている酢酸を回収するための工程水が投入され;前記酢酸吸収塔103の下部には酢酸水溶液が排出され、前記酢酸水溶液を(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部に供給し、(メタ)アクリル酸を吸収するための工程水として使用することができる。また、前記酢酸吸収塔103の上部には酢酸の脱気されたガスが排出され、前述した気相酸化反応ステップに再循環できる。
【0066】
一方、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部には(メタ)アクリル酸含有水溶液が排出されるが、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液は、濃度40〜90重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%の(メタ)アクリル酸を含むことが工程効率の面で好適である。
【0067】
また、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部に排出される(メタ)アクリル酸含有水溶液の一部を前述した急冷塔101の上部に供給することにより、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷させるのに使用することができる。これにより、前述した急冷ステップに別のエネルギーを供給しなくても、高沸点副生物を効果的に除去することができ、エネルギー効率を向上させることができる。この時、工程全体の効率を勘案して、前記急冷塔101の上部に供給される前記(メタ)アクリル酸含有水溶液は、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部に排出される(メタ)アクリル酸含有水溶液の5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%となるようにすることができる。
【0068】
さらに、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部に排出される(メタ)アクリル酸含有水溶液の一部は、熱交換器を介して(メタ)アクリル酸吸収塔102に再循環されて前記吸収工程を補助することができ、これを除いた残りの残部は脱気塔(図示せず)を経て後続の精製ステップに供給される。
【0069】
一方、本発明の一実施形態にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得るステップを含む。
【0070】
この時、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液の精製は、疎水性共沸溶媒が供給される蒸留塔105で実施でき、前記蒸留塔の下部に(メタ)アクリル酸を含む排出液が回収され、前記蒸留塔の上部に共沸溶媒、水および酢酸を含む排出液が回収される。
【0071】
つまり、本発明では、共沸溶媒として疎水性溶媒を使用することにより、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液に含まれている水と酢酸を蒸留塔105の上部に同時に回収することができる。
【0072】
ここで、前記疎水性溶媒としては、水および酢酸とは共沸をなすことができ、(メタ)アクリル酸とは共沸をなさない炭化水素系溶媒を制限なく使用することができ;好ましくは、沸点が10〜120℃の炭化水素類であり得;より好ましくは、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、N−ヘプタン(N−heptane)、シクロヘプタン(cycloheptane)、シクロヘプテン(cycloheptene)、1−ヘプテン(1−heptene)、エチル−ベンゼン(ethyl−benzene)、メチル−シクロヘキサン(methyl−cyclohexane)、N−ブチルアセテート(N−butyl acetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、イソブチルアクリレート(isobutyl acrylate)、2−メチル−1−ヘプテン(2−methyl−1−heptene)、6−メチル−1−ヘプテン(6−methyl−1−heptene)、4−メチル−1−ヘプテン(4−methyl−1−heptene)、2−エチル−1−ヘキセン(2−ethyl−1−hexene)、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、2−メチル−1−ヘキセン(2−methyl−1−hexene)、2,3−ジメチルペンタン(2,3−dimethylpentane)、5−メチル−1−ヘキセン(5−methyl−1−hexene)およびイソプロピル−ブチル−エーテル(isopropyl−butyl−ether)からなる群より選択される1種以上の溶媒であり得る。
【0073】
この時、前記蒸留塔105の上部に共沸溶媒、水および酢酸を含む排出液が回収されるが、前記上部排出液中、水層に含まれる酢酸の濃度は、共沸溶媒の種類およびカラムの還流比などに応じて異なり得る。本発明によれば、前記上部排出液中、水層に含まれる酢酸の濃度は、(メタ)アクリル酸の損失率などを考慮して、1〜50重量%、好ましくは3〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%であり得る。
【0074】
このように、蒸留塔105の上部に回収される共沸溶媒、水および酢酸を含む排出液を溶媒分離塔(decantor)に供給して共沸溶媒層および酢酸水溶液層に分離した後;前記共沸溶媒層を前記蒸留塔105の上部に再循環させ、前記酢酸水溶液層を前述した(メタ)アクリル酸吸収塔102に再循環させることができる。
【0075】
一方、前記蒸留塔105の下部には水、酢酸および共沸溶媒がほとんど除去された(メタ)アクリル酸を含む排出液が回収され、これを粗(crude)(メタ)アクリル酸として使用可能である。
【0076】
この時、前記蒸留塔105の下部排出液には水、酢酸および共沸溶媒が一部含まれていてもよいが、好ましくは、前記下部排出液に水および酢酸がそれぞれ1重量%未満で含まれ、共沸溶媒が500ppm未満で含まれるようにすることが、粗(メタ)アクリル酸として使用するのに好適である。
【0077】
一方、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液の精製過程で(メタ)アクリル酸が重合可能であり、それにより、(メタ)アクリル酸の二量体またはオリゴマーなどの重合体が生成できる。このように、(メタ)アクリル酸の重合を最少化するために、前記蒸留塔105には重合防止剤が添加され得、この時、前記重合防止剤としては、当業界において通常のものを使用できるため、特に限定しない。
【0078】
このような(メタ)アクリル酸の重合体および重合防止剤などを含む高沸点副生物は、前記蒸留塔105の下部排出液に含まれて回収されるが、前記蒸留塔105の下部排出液から(メタ)アクリル酸を選択的に回収するためのステップを追加的に行うことができる。
【0079】
つまり、本発明の一実施形態によれば、前記蒸留塔105の下部排出液を結晶化するステップをさらに含むことができる。
【0080】
前記結晶化ステップは結晶化器106で実施でき、前記結晶化器は2つのステップ以上で実施できる。例えば、第1結晶化器106では、前記蒸留塔105の下部排出液に含まれている前記(メタ)アクリル酸重合体および重合防止剤などの高沸点副生物を除去するステップであって、これにより、粗(メタ)アクリル酸(CAA)を選択的に得ることができる。後続の第2結晶化器106’は、前記粗(メタ)アクリル酸(CAA)を高度結晶化するステップであって、これにより、より高純度の(メタ)アクリル酸(HPAA)を得ることができる。
【0081】
ここで、前記結晶化ステップに用いられる結晶化器106、106’としては、当業界において通常の静的装置、動的装置、またはこれらを組み合わせた装置を用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0082】
一方、前記第1結晶化器106で分離される(メタ)アクリル酸重合体および重合防止剤などの高沸点副生物には、相当量の(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸重合体が含まれていてもよい。
【0083】
したがって、本発明の回収方法は、前記蒸留塔105の下部排出液を結晶化するステップで回収される高沸点副生物、および前述した急冷塔101で回収される高沸点副生物を熱分解して(メタ)アクリル酸を回収するステップをさらに含むことができる。
【0084】
この時、前記高沸点副生物の熱分解には、蒸発回収器、クラッカー(cracker)などを含む装置を用いることができ、好ましくは、本出願人が先に出願した大韓民国登録特許第0714631号の内容に従うことができる。
【0085】
つまり、前記高沸点副生物の熱分解ステップには、(メタ)アクリル酸蒸留装置および(メタ)アクリル酸重合体熱分解槽が一体化された(メタ)アクリル酸回収装置に前記高沸点副生物を導入するステップと、前記(メタ)アクリル酸回収装置において、減圧下、下部では(メタ)アクリル酸重合体を分解し、上部では蒸留によって(メタ)アクリル酸を回収するステップとを含む方法で実施できる。
【0086】
このような方法で高沸点副生物から回収可能な(メタ)アクリル酸は、前述した急冷塔102に再循環させることができる。
【0087】
一方、
図4は、本発明の他の実施形態にかかる(メタ)アクリル酸の回収方法を模式的に示す工程図であって、前記急冷塔101と(メタ)アクリル酸吸収塔102とを一体化したことを除き、前述した
図3の方法と同様の工程および条件で運転できる。
【0088】
ただし、前記
図4による実施形態では、急冷塔101と(メタ)アクリル酸吸収塔102とが一体化されているため、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102で(メタ)アクリル酸水溶液を回収する側流分枝の位置を調整することが重要である。本発明の一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸水溶液を回収する側流分枝の位置は、一体化された(メタ)アクリル酸吸収塔102の温度範囲が、
図3のように、分離された急冷塔102の上部温度の範囲と一致する地点から選択することができる。
【0089】
このように、本発明にかかる(メタ)アクリル酸の連続回収方法は、プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物を触媒存在下で気相酸化反応させ、(メタ)アクリル酸含有混合ガスを得るステップと、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷し、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去するステップと、前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得るステップと、前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得るステップとを含む方法で実施できる。
【0090】
ただし、前記重合方法は、前述したステップのほか、前記各ステップの前または後に本発明の属する技術分野において通常実施できるステップをさらに含んで実施可能であり、前述したステップによって本発明の回収方法が限定されるものではない。
【0091】
一方、本発明の他の実施形態によれば、
プロパン、プロピレン、ブタン、i−ブチレン、t−ブチレンおよび(メタ)アクロレインからなる群より選択される1種以上の化合物を触媒存在下で気相酸化反応させ、(メタ)アクリル酸含有混合ガスを製造する気相酸化反応器(図示せず)と、
前記気相酸化反応器から供給される前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷させ、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去する急冷塔101と、
前記急冷塔101から供給される前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得る(メタ)アクリル酸吸収塔102と、
前記(メタ)アクリル酸吸収塔102から供給される前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得る蒸留塔105とを含む(メタ)アクリル酸の連続回収装置が提供される。
【0092】
この時、前記急冷塔101は、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の下部に連結されて一体化されたものであり得る。
【0093】
また、前記装置は、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部に連結された酢酸吸収塔103をさらに含むことができる。
【0094】
さらに、前記装置は、前記蒸留塔105の下部に連結された結晶化器106をさらに含むことができる。
【0095】
そして、前記蒸留塔105は、前記(メタ)アクリル酸を得、残りの水溶液を(メタ)アクリル酸吸収塔102に再循環させ、前記再循環される水溶液は、高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスと接触することができる。
【0096】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明をこれらにのみ限定するものではない。
【0097】
実施例1
(メタ)アクリル酸の連続回収工程において、本発明にかかり、高沸点副生物を除去するためのステップを、(メタ)アクリル酸吸収塔の前に配置することによるエネルギー節減効果を検証するために、ASPEN PLUS工程シミュレータ(AspenTech社)を用い、急冷塔、(メタ)アクリル酸吸収塔および酢酸吸収塔に必要なエネルギー使用量を測定した。
【0098】
まず、
図3に示すように、前記気相酸化反応器(図示せず)から供給される前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスを急冷させ、前記(メタ)アクリル酸含有混合ガスに含まれている高沸点副生物を除去する急冷塔101と、前記急冷塔101から供給される前記高沸点副生物の除去された(メタ)アクリル酸含有混合ガスを水または水溶液と接触させ、(メタ)アクリル酸含有水溶液を得る(メタ)アクリル酸吸収塔102と、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102の上部に連結された酢酸吸収塔103と、前記(メタ)アクリル酸吸収塔102から供給される前記(メタ)アクリル酸含有水溶液を精製して(メタ)アクリル酸を得る蒸留塔105と、前記蒸留塔105の下部に連結された結晶化器106、106’とを含むシミュレータを用意した。
【0099】
シミュレーションに使用された(メタ)アクリル酸含有混合ガス(つまり、気相酸化反応によって得られた混合ガス)の組成は、アクリル酸約14.7重量%、アクロレイン約0.2重量%、酢酸約0.5重量%、未反応プロピレン約0.14重量%、二酸化炭素および一酸化炭素約3.1重量%、水蒸気約9.4重量%、窒素および酸素約68.96重量%、高沸点副生物約3重量%であった。
【0100】
前記混合ガスは、温度が約170℃で、約1.3barの圧力および約52400kg/hの流れで急冷塔101の下部に導入された。これは、年間約6万トンのアクリル酸の生産量を基準として換算したものである。
【0101】
急冷塔101の下部に得られる流れは約97℃、約1.25bar、400kg/hで、アクリル酸約50重量%、高沸点副生物約42重量%および残部のその他の混合物が得られ、これにより、前記混合ガスに含まれているすべての高沸点副生物が急冷塔101の下部で除去された。
【0102】
一方、急冷塔101の上部流れはアクリル酸吸収塔102に導入され、アクリル酸吸収塔102の下部に約67重量%のアクリル酸水溶液11200kg/hの流れを得た。
【0103】
この時、アクリル酸吸収塔102の上部では、酢酸吸収塔103の下部流れと共に、蒸留塔105の上部流れの一部から流入するアクリル酸および酢酸含有水溶液約4200kg/hが導入された。
【0104】
そして、アクリル酸吸収塔102の上部に排出される流れの約35重量%は、酢酸吸収塔103(上部温度約62℃)を経て約1.12barの圧力で吐出され、気相酸化反応のための反応器(図示せず)に再循環された。この時、酢酸吸収塔103の上部には、工程水(PW)が約500kg/hで投入されてアクリル酸と酢酸がさらに吸収され、それによる酢酸吸収塔103の下部流れはアクリル酸吸収塔102の上部に導入された。ここで、酢酸吸収塔103を経て気相酸化反応のための反応器(図示せず)に再循環される流れは、アクリル酸と酢酸が除去された流れで、水分の含有量が約13.3重量%であり、残りは非凝縮性ガス(窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、未反応プロピレンおよび未反応プロパンなど)を含んでいる。
【0105】
一方、アクリル酸吸収塔102の上部に排出される流れの約65重量%は、焼却器(図示せず)に移送されて廃棄され、この流れの組成は、アクリル酸約0.1重量%、酢酸約0.1重量%、アクロレイン約0.2重量%、水分約13.6重量%であり、残りとして非凝縮性ガス(窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、未反応プロピレンおよび未反応プロパンなど)を含んでいる。
【0106】
このように、急冷塔101、アクリル酸吸収塔102および酢酸吸収塔103までの工程で必要な冷却エネルギーは、急冷塔で約0.565Gcal/h、アクリル酸吸収塔で約1.46Gcal/h、および酢酸吸収塔で約0.03Gcal/hであって、その和は約2.055Gcal/hであった。
【0107】
これは、
図1または
図2のような既存の工程中、アクリル酸吸収塔102で必要な冷却エネルギーである約2Gcal/h(年間約6万トンのアクリル酸を生産する場合を基準とする)とほぼ似た程度のエネルギー量である。
【0108】
実施例2
図4に示すような装置、つまり、急冷塔101と(メタ)アクリル酸吸収塔102とが一体化された装置を用いたことを除き、前述した
図3の方法と同様の条件で(メタ)アクリル酸回収工程をシミュレーションした。
【0109】
実施例1におけるのと同様の(メタ)アクリル酸含有混合ガスは、急冷塔101と(メタ)アクリル酸吸収塔102とが一体化された理論段数7段を有する吸収塔(以下、アクリル酸吸収塔)の下部に導入された。前記アクリル酸吸収塔の側流分枝は第5段(´Side Cut AA´の部分)で行われ、第4段と第6段で冷却コイルを介して冷却エネルギーを投入した。
【0110】
前記アクリル酸吸収塔の下部に得られる流れは約102℃、1.19bar、335kg/hで、アクリル酸約44.2重量%、高沸点副生物約49.9重量%および残部のその他の混合物が得られ、これにより、最初に導入された混合ガスに含まれているすべての高沸点副生物が前記アクリル酸吸収塔の下部で除去された。
【0111】
一方、アクリル酸吸収塔の第5段の側流分枝では、温度73.5℃、圧力1.16bar、約67重量%のアクリル酸水溶液11200kg/hの流れを得た。
【0112】
この時、アクリル酸吸収塔の上部では、酢酸吸収塔103の下部流れと共に、蒸留塔105の上部流れの一部から流入するアクリル酸および酢酸含有水溶液約4200kg/hが導入された。
【0113】
前記アクリル酸吸収塔の上部に排出される流れの約35重量%は、酢酸吸収塔103(上部温度約62℃)を経て圧力1.12barで吐出され、気相酸化反応のための反応器(図示せず)に再循環された。この時、酢酸吸収塔103の上部には、工程水(PW)が約500kg/hで投入されてアクリル酸と酢酸がさらに吸収され、それによる酢酸吸収塔103の下部流れはアクリル酸吸収塔の上部に導入された。ここで、酢酸吸収塔103を経て気相酸化反応のための反応器(図示せず)に再循環される流れは、アクリル酸と酢酸が除去された流れで、水分の含有量が13.4重量%であり、残りは非凝縮性ガス(窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、未反応プロピレンおよび未反応プロパンなど)を含んでいる。
【0114】
一方、アクリル酸吸収塔の上部に排出される流れの約65重量%は焼却器(図示せず)に移送されて廃棄され、この流れの組成は、アクリル酸約0.2重量%、酢酸約0.1重量%、アクロレイン約0.2重量%、水分13.7重量%であり、残りとして非凝縮性ガス(窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、未反応プロピレンおよび未反応プロパンなど)を含んでいる。
【0115】
このように、急冷塔が一体化された
図4の工程で必要な冷却エネルギーは、アクリル酸吸収塔第6段で約0.55Gcal/h、第4段で約1.43Gcal/h、および酢酸吸収塔で約0.03Gcal/hであって、その和は約2.01Gcal/hであった。
【0116】
これは、
図1または
図2のような既存の工程中、アクリル酸吸収塔102で必要な冷却エネルギーである約2Gcal/h(年間約6万トンのアクリル酸を生産する場合を基準とする)とほぼ似た程度のエネルギー量である。
【0117】
前記実施例1および実施例2から分かるように、本発明にかかる(メタ)アクリル酸の回収方法は、
図1または
図2のような既存の工程中、アクリル酸吸収塔102で必要なエネルギー(約2Gcal/h)と似た水準のエネルギーだけでも、アクリル酸吸収塔の運転と共に、混合ガス内に含まれている高沸点副生物まで除去することができ、エネルギー使用量を画期的に節減することができた。
【0118】
それだけでなく、
図1または
図2のような既存の工程において、アクリル酸の蒸留後、必須工程である高沸点分離塔108の運転には約1.24Gcal/h(年間約6万トンのアクリル酸を生産する場合を基準とする)のエネルギーが追加的に必要になるが、本発明にかかる方法は、これに相当するエネルギー費用を節減できることを確認した。