(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、前記研削手段に使用される研削ホイールと、を備えた研削装置であって、
前記研削手段は、スピンドルハウジングと、前記スピンドルハウジング中に回転可能に収容されたスピンドルと、前記スピンドルの先端に固定されたホイールマウントと、前記スピンドルを回転駆動する駆動源とを含み、
前記研削ホイールは、前記ホイールマウントとネジによって締結され、導電性部材で形成されたホイールベースと、前記ホイールベースの自由端部に環状に配設された複数の研削砥石と、前記ホイールベースに配設された環状超音波振動子と、前記環状超音波振動子に積層されて配設された環状電極と、前記ホイールベースの中央に固定端部側および自由端部側に開口した収容部と、前記収容部に収容された可動電極部と、前記ホイールベースの前記自由端部側の開口を外側から塞ぐ伸縮性のシール部材とを含み、
前記可動電極部は、前記環状超音波振動子に電力を供給するための可動電極と、前記可動電極を保持し前記開口に挿通する被収容部と、前記可動電極が前記固定端部側の前記開口から突設するように前記被収容部を規制する規制部と、前記可動電極部から前記環状電極に連結する導電性のフレキシブル導線とを含み、前記被収容部は前記ホイールベースの前記収容部に進退可能に収容されており、
前記ホイールマウントは、中央の自由端面近傍で且つ前記研削ホイールをネジにより締結した状態において前記可動電極に向き合う位置に配設された固定電極と、前記固定電極が底に配設され前記可動電極が係合される絶縁体から成る被係合凹部と、前記被係合凹部に前記可動電極が係合した状態で前記可動電極の側面に押し当てて前記可動電極を固定する固定部材とを有し、前記研削ホイールがネジにより前記ホイールマウントに締結され、前記可動電極部が前記ホイールマウントの前記開口の前記シール部材側から外力により押圧されると、前記可動電極が前記ホイールマウントの前記被係合凹部に係合されるとともに前記固定部材により前記可動電極が前記固定電極に接触した状態で固定され前記環状電極に通電されるとともに、前記可動電極部が前記ホイールベースに非接触になることを特徴とする研削装置。
前記ホイールマウントには、当該ホイールマウントの前記固定電極を前記ホイールマウントの自由端面側に付勢する付勢部材を有し、前記被係合凹部に前記可動電極が係合し前記固定部材により前記可動電極が固定されると前記固定電極の端面と前記可動電極の端面が密接することを特徴とする請求項1記載の研削装置。
被加工物を保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、前記研削手段に使用される研削ホイールと、を備えた研削装置であって、
前記研削手段は、スピンドルハウジングと、前記スピンドルハウジング中に回転可能に収容されたスピンドルと、前記スピンドルの先端に固定されたホイールマウントと、前記スピンドルを回転駆動する駆動源とを含み、
前記研削ホイールは、前記ホイールマウントとネジによって締結され、導電性部材で形成されたホイールベースと、前記ホイールベースの自由端部に環状に配設された複数の研削砥石と、前記ホイールベースに配設された環状超音波振動子と、前記環状超音波振動子に積層されて配設された環状電極と、前記ホイールベースの中央に固定端部側および自由端部側に開口した収容部と、前記収容部に収容された可動電極部と、前記ホイールベースの前記自由端部側の開口を外側から塞ぐ伸縮性のシール部材とを含み、
前記可動電極部は、前記環状超音波振動子に電力を供給するための可動電極と、前記可動電極を保持し前記開口に挿通する被収容部と、前記可動電極が前記固定端部側の前記開口から突設するように前記被収容部を規制する規制部と、前記可動電極部から前記環状電極に連結する導電性のフレキシブル導線とを含み、前記被収容部は前記ホイールベースの前記収容部に進退可能に収容されており、
前記ホイールマウントは、前記研削ホイールがネジにより前記ホイールマウントに締結した状態において前記可動電極に対応した位置に配設され前記可動電極が係合される被係合凹部と、前記被係合凹部に前記可動電極が係合した状態で前記可動電極の側面に押し当てて前記可動電極を固定する固定部材とを含み、前記固定部材は導電性であり高周波電力源に連結されており、
前記研削ホイールがネジにより前記ホイールマウントに締結され、前記可動電極部が前記ホイールマウントの前記開口の前記シール部材側から外力により押圧されると、前記可動電極が前記ホイールマウントの前記被係合凹部に係合されるとともに前記固定部材により押圧固定され、前記固定部材から前記環状電極に通電されるとともに、前記可動電極部が前記ホイールベースに非接触になることを特徴とする研削装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る研削装置1の一例を示す外観斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、
図1に示す左下方側を研削装置1の前方側と呼び、同図に示す右上方側を研削装置1の後方側と呼ぶものとする。また、以下においては、説明の便宜上、
図1に示す上下方向を研削装置1の上下方向と呼ぶものとする。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る研削装置1は、装置のハウジングを構成する基台100を有している。基台100は、研削装置1の前後方向に延在する主部101と、この主部101の後端部で上方側に延出して設けられた壁部102とを有している。主部101の上面の前方側には、研削装置1に対する指示を受け付ける操作パネル103が設けられている。操作パネル103の後方側には、ワークW(被加工物)を保持したチャックテーブル104を前後に移動可能に支持するテーブル支持台105が設けられている。一方、壁部102の前面には、上下方向に延びる一対のガイドレール106が設けられている。これらのガイドレール106に研削ユニット21(研削手段)が上下方向に移動可能に装着されている。
【0021】
研削ユニット21は、研削送り機構11によって駆動されて昇降可能となっている。研削送り機構11は、ガイドレール106に平行に配設され鉛直方向に延びるボールネジ111と、ボールネジ111の一端に連結されボールネジ111を正逆両方向に回転させるモータ112と、ボールネジ111に螺合する内部のナット(不図示)を有すると共に、脚部がガイドレール106に摺接した移動基台113と、移動基台113に連結され研削ユニット21を支持する支持部114とから構成される。研削送り機構11は、モータ112によって駆動されたボールネジ111が回動することによって、移動基台113がガイドレール106にガイドされて昇降することにより研削ユニット21を昇降させる。
【0022】
研削ユニット21は、移動基台113に装着されたスピンドルユニット22を備える。スピンドルユニット22は、支持部114によって支持される。スピンドルユニット22は、支持部114に支持されたスピンドルハウジング221と、このスピンドルハウジング221中に回転自在に配設された回転スピンドル222(
図1において不図示、
図2参照)とを有している。回転スピンドル222の下端部は、スピンドルハウジング221の下端部を越えて下方側に突出しており、その下端部の先端には円板形状のホイールマウント31が連結される。ホイールマウント31には、研削ユニット21による研削に使用される研削ホイール41が固定される。なお、ホイールマウント31は、上面(表面)が水平面に形成されたチャックテーブル104に対面可能に配設されている。
【0023】
図2は、本実施の形態に係る研削装置1の一部の構成を略示的に示す断面図である。
図2に示すように、回転スピンドル222は、スピンドルハウジング221によって非接触状態で回転可能に支持されている。
【0024】
研削ユニット21は、回転スピンドル222を回転駆動する駆動源としての電動モータ23を備える。電動モータ23は、回転スピンドル222の中間部に連結されたロータ231と、ロータ231の外周側に配設されたステータコイル232とを備える。電動モータ23は、電力供給手段51から電力の供給を受けて動作する。
【0025】
電力供給手段51は、高周波電力源を構成する交流電源511と、給電手段242の給電コイル242bとの間に介在する電圧調整手段512と、給電コイル242bに供給する交流電力の周波数を調整する周波数調整手段513と、電圧調整手段512及び周波数調整手段513を制御する制御手段514と、超音波振動の振幅等の入力に用いる入力手段515と含んで構成されている。
【0026】
交流電源511は、制御回路516及び配線517を介して電動モータ23のステータコイル232に接続される。このステータコイル232に交流電力を供給することによりロータ231及び回転スピンドル222を回転させることができる。
【0027】
回転スピンドル222の一端部(下端部)には、小径先端部223が設けられている。この小径先端部223の下端部にホイールマウント31が固定される。回転スピンドル222の他端部(上端部)には、ロータリートランス24が設けられる。ロータリートランス24は、回転スピンドル222の上端に連結された受電手段241と、受電手段241の外周側に位置する給電手段242とから構成される。
【0028】
受電手段241は、回転スピンドル222に連結されたロータコア241aと、ロータコア241aに巻回された受電コイル241bとから構成されている。給電手段242は、受電手段241を構成するロータコア241aの外周側に配設されたステータコア242aと、ステータコア242aに配設された給電コイル242bとから構成される。なお、給電コイル242bには、配線518を介して交流電力が供給される。
【0029】
受電手段241の受電コイル241bには、導電線25が接続されている。この導電線25の一部は、回転スピンドル222の軸方向に形成された貫通孔222aを通り、後述するホイールマウント31の固定電極62(
図2において不図示、
図5参照)に接続されている。
【0030】
ここで、回転スピンドル222の下端部に固定されるホイールマウント31、並びに、このホイールマウント31に装着される研削ホイール41の構成について説明する。
図3は、本実施の形態に係る研削装置1のホイールマウント31周辺の斜視図である。なお、
図3においては、研削ホイール41を外したホイールマウント31を下方側から示している。
図4は、本実施の形態に係る研削装置1の研削ホイール41の斜視図である。なお、
図4においては、研削ホイール41を上方側から示している。
【0031】
図3に示すように、ホイールマウント31は、導電性を有する金属材料で構成され、概して円板形状を有している。ホイールマウント31の下面中央には、回転スピンドル222の貫通孔222aに連通する円形状の凹部(以下、「円形凹部」という)31aが設けられている。この円形凹部31aは、貫通孔222aよりも大径に設けられ、その上端中央で貫通孔222aと連通している。この円形凹部31aには、詳細について後述するように、中央部に円形状の開口部を有し、後述する可動電極部71の可動電極713が係合する凹部(以下、「被係合凹部)という」61aが設けられた絶縁部材61が取り付けられる。この絶縁部材61には、被係合凹部61a内で一部が露出した状態で固定電極62及び固定部材63が保持される(
図5参照)。また、ホイールマウント31の外周縁部には、ホイールマウント31を上下方向に貫通する複数(本実施の形態では6個)のネジ穴31bが設けられている。
【0032】
図4に示すように、研削ホイール41は、導電性を有する金属材料で構成され、概して円板形状を有している。研削ホイール41は、円環形状を有し、ホイールマウント31に固定される装着リング411と、装着リング411に環状連結部412を介して一体的に形成されたホイールベース413と、ホイールベース413の自由端部に環状に配設された複数の研削砥石414とを備える。
【0033】
装着リング411の外周縁部には、研削ホイール41の上下方向に貫通する複数(本実施の形態では6個)のネジ穴411aが設けられている。このネジ穴411aは、ホイールマウント31に設けられたネジ穴31bに対応する位置に配置される。このホイールマウント31のネジ穴31bと装着リング411のネジ穴411aとをネジ31c(
図2参照)によって締結することにより、ホイールマウント31に研削ホイール41が装着される。
【0034】
ホイールベース413の中央部には、ホイールベース413の上方側(固定端部側)及び下方側(自由端部側)に開口した円形状の収容部413aが設けられている。より具体的には、収容部413aは、ホイールベース413を上下方向に貫通する貫通孔で構成される。ホイールベース413上の収容部413aの周囲には、収容部413aを構成する円形状の開口部と同心円状に環状超音波振動子415が配設される。
【0035】
なお、環状超音波振動子415としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi、Ti)O
3)、リチウムナイオベート(LiNbO
3)、リチウムタンタレート(LiTaO
3)、ニオブ酸カリウムナトリウム(K,N)(KNbO
3)などを用いることができる。
【0036】
環状超音波振動子415の上方には、環状超音波振動子415と略同一形状を有する環状電極416が積層して配設される。例えば、環状電極416は、環状超音波振動子415に接着剤等により固着される。環状電極416は、フレキシブル導線417を介して後述する可動電極部71(より具体的には、可動電極部71を構成する規制部712)と電気的に接続される。
【0037】
装着リング411とホイールベース413とは、環状連結部412により連結される。環状連結部412には、ホイールベース413の周方向に沿って複数のスリット412aが設けられている。これらのスリット412aは、環状連結部412を上下方向に貫通して設けられており(
図5参照)、ホイールマウント31に対する環状超音波振動子415による超音波振動の伝達を抑制する役割を果たす。
【0038】
ホイールベース413の収容部413a内には、可動電極部71が上下方向に進退可能に収容される。可動電極部71は、収容部413aの上方側の開口に挿通される略円柱形状の被収容部711と、被収容部711の上面に設けられた円板形状の規制部712と、規制部712を貫通して配置され、被収容部711に保持される可動電極713と、被収容部711の下面に設けられた円板形状の係合部714(
図4に不図示、
図5参照)とを含んで構成される。
【0039】
図5、
図6及び
図7は、ホイールマウント31及び研削ホイール41の断面模式図である。なお、
図5においては、ホイールマウント31に研削ホイール41を対向配置した装着前の状態を示している。
図6においては、ホイールマウント31に研削ホイール41を装着した状態を示している。
図7においては、
図6に示す状態から可動電極部71(より具体的には可動電極713)を、絶縁部材61内の固定電極62に接触させた状態を示している。
【0040】
図5に示すように、ホイールベース413の上方には、環状連結部412を介して装着リング411が連結されている。このため、ホイールベース413の上面413bと、ホイールマウント31の下面31dとの間には、研削ホイール41がホイールマウント31に装着されると、所定の空間が形成される(
図6参照)。上述した可動電極部71は、この空間内において、ホイールベース413に設けられた収容部413aに進退可能に収容される。収容部413aを構成する貫通孔の下方側(自由端部側)の開口部は、伸縮性を有するシール部材418により外側(下方側)から塞がれている。このシール部材418は、ゴムなどの耐水性及び伸縮性を有する材質で構成され、収容部413a内への研削水などの浸入を防止する役割を果たす。
【0041】
可動電極部71を構成する規制部712は、ホイールベース413の上方側の開口(収容部413aの開口)より径方向の幅寸法が僅かに大きく形成されている。すなわち、ホイールベース413の上方側の開口より大径に設けられており、当該開口を覆うように配置される。規制部712は、規制部712下面の外周縁部とホイールベース413の収容部413aの開口縁部とが当接した状態で、可動電極部71(より具体的には、被収容部711)を懸架し、可動電極部71の収容部413a内への落下を規制する。規制部712が収容部413a内への被収容部711の落下を規制することにより、可動電極713がホイールベース413の上方側(固定端部側)の開口(収容部413aの上方側の開口)から突設した状態に維持される。
【0042】
また、規制部712は、導電性を有する金属材料で構成される。この規制部712と、環状超音波振動子415に積層された環状電極416との間でフレキシブル導線417が連結されている。すなわち、ホイールマウント31から研削ホイール41が離反した状態においては、環状超音波振動子415の表面側とホイールベース413とがフレキシブル導線417及び規制部712を介して電気的に接続される。一方で、環状超音波振動子415の裏面側は、導電性部材で構成されたホイールベース413と接触しているので、環状超音波振動子415の上面側と下面側とが短絡される。
【0043】
保管時等のように、研削ホイール41がホイールマウント31に装着されていない状態においては、周囲の雰囲気に応じて研削ホイール41の伸縮等が発生し得る。このような研削ホイール41の伸縮は、例えば、真夏の外気から空調設備により温度管理された室内へ移動させる際の温度変化等の要因により発生することが考えられる。研削ホイール41の伸縮等に代表される外部からの応力は、環状超音波振動子415における圧電作用の発生原因となる。外部からの応力が作用する状況下においては、環状超音波振動子415の圧電作用により環状超音波振動子415の表面が帯電する事態が発生し得る。このような事態が発生した場合、ホイールマウント31に対する装着作業時等において、研削ホイール41を安全に取り扱うことが困難となる。このような事態に対応すべく、本実施の形態に係る研削ホイール41においては、導電性を有する金属材料で構成した規制部712を環状超音波振動子415と電気的に接続すると共に、ホイールマウント31から研削ホイール41が離反した状態で規制部712をホイールベース413に接触させることにより、環状超音波振動子415の上面側と下面側とを短絡させている。これにより、圧電作用により環状超音波振動子415に帯電した電荷を放電することができ(すなわち、環状超音波振動子415による圧電作用による帯電を防止でき)、研削後に取り外した研削ホイール41を安全に取り扱うことが可能となる。
【0044】
可動電極713は、磁力により引き付けられる材料、例えば、鉄により構成され、概して円柱形状を有する。可動電極713は、規制部712の略中央部に配置され、少なくとも一部が規制部712の上面から上方に突出するように設けられる。なお、可動電極713の上端部には、平面部が設けられている。
【0045】
可動電極713の側面を構成する周面には、半球形状の凹部713aが設けられている。可動電極713の周面には、例えば、可動電極713の軸心を挟んで反対側の位置に2個の凹部713aが設けられる。このように2個の凹部713aを設けたのは、詳細について後述するように、ホイールマウント31に対する装着時における研削ホイール41の向きに関わらず、被係合凹部61aに露出する固定部材63の一部と係合可能とするためである。なお、可動電極713に設けられる凹部713aの数及び形状については、上記内容に限定されるものでなく適宜変更が可能である。
【0046】
係合部714は、被収容部711の下面に設けられており、収容部413a内に配置される。係合部714は、規制部712と同様に、ホイールベース413の開口(収容部413aの上方側及び下方側の開口)より径方向の幅寸法が僅かに大きく設けられており、被収容部711が収容部413aから上方側又は下方側に離脱するのを防止する役割を果たす。また、係合部714は、ホイールマウント31に装着された研削ホイール41を取り外す際に収容部413aの内壁面と接触して、被係合凹部61aに係合した可動電極713を被係合凹部61aから脱落させる役割を果たす
【0047】
一方、ホイールマウント31の中央に設けられた円形凹部31aには、絶縁体からなる絶縁部材61が取り付けられる。絶縁部材61は、概して円盤形状を有し、その下端部が僅かにホイールマウント31の下面31dから下方側(研削ホイール41側)に突出するように取り付けられる。絶縁部材61の下面中央には、概して円柱形状の空間を形成するように被係合凹部61aが設けられている。また、絶縁部材61には、被係合凹部61aの内側に一部が露出するように固定電極62及び固定部材63が支持されている。
【0048】
固定電極62は、上下方向に延在する軸部621と、この軸部621の下端部に設けられた円板形状の平面部622とを含んで構成される。平面部622の外周縁部は、被係合凹部61aの周面部(被係合凹部61aを規定する絶縁部材61の内周面部)に設けられた環状溝61bに収容され、固定電極62の一定範囲以上の移動を規制する規制部として機能する。平面部622の上面であって軸部621の周囲には、付勢部材を構成するコイルばね623が配置されている。コイルばね623は、下端部が平面部622の上面で係止され、上端部が絶縁部材61の内壁面で係止される。固定電極62は、コイルばね623により下方側(ホイールマウント31の自由端部側)に付勢された状態で絶縁部材61に支持され、一定範囲で上下動可能に構成される。なお、固定電極62を構成する平面部622の下面は、被係合凹部61aの底面に配設されている。
【0049】
固定電極62を構成する軸部621の上端部は、絶縁部材61の上面から上方側に突出する。この軸部621の突出部分に、回転スピンドル222内に形成された貫通孔222aに配置された導電線25aが接続されている。一方、導電線25aと異なる他の導電線25bは、ホイールマウント31自体に接続されている。例えば、導電線25bは、貫通孔222aの内壁面に接続される。
【0050】
固定部材63は、例えば、水平方向に延在する金属製の筒状体631と、この筒状体631内に配置されるコイルばね632と、筒状体631の一端部(
図5に示す左方側端部)に組み込まれた球状体633とを含むプランジャーで構成される。球状体633は、コイルばね632の付勢力により被係合凹部61a側に付勢される一方、筒状体631の一部で一定位置以上の移動が制限される。なお、筒状体631の他端部(
図5に示す右方側端部)には、コイルばね632の一端を係止する壁部が設けられている。
図5に示すように、研削ホイール41がホイールマウント31に装着されていない状態において、球状体633は、被係合凹部61aの周面部から、可動電極713の移動経路上に一部が突出するように位置決めされる。固定部材63は、可動電極部71を構成する可動電極713が被係合凹部61aに係合した状態で、可動電極713の側面(周面)に球状体633を押し当てて可動電極713を固定する役割を果たす。
【0051】
ホイールベース413の中央に開口した収容部413に収容される可動電極部71と、ホイールマウント31の自由端面の中央近傍の円形凹部31aに取り付けられた絶縁部材61内に保持される固定電極62とは、研削ホイール41がネジ31cによりホイールマウント31に締結される状態において、互いに向き合う位置に配設される。
【0052】
研削ホイール41がネジ31cによりホイールマウント31に締結されると、
図6に示すように、可動電極713の先端部(上端部)が僅かに被係合凹部61aに入り込む。この場合、可動電極713の先端部は、固定部材63の球状体633に当接していない。このため、研削ホイール41がホイールマウント31に装着された状態においても、可動電極部71(より具体的には、被収容部711)が規制部712により収容部413aの開口縁部に懸架された状態(初期状態)においては、球状体633は、被係合凹部61aの周面部から、可動電極713の移動経路上に一部が突出した状態で維持される。
【0053】
一方、
図6に示す状態から、外力(例えば、作業者の指等による押圧力)によってシール部材418を介して可動電極部71が上方側に押圧されると、これに伴って可動電極部71が上方側に移動し、被係合凹部61a内に進入する。固定部材63の球状体633は、可動電極713の周面上を摺動し、凹部713aに到達するまでの過程でコイルばね632の付勢力に抗して筒状体631内に退避する。
【0054】
可動電極713の上面が固定電極62を構成する平面部622の下面に当接する位置まで可動電極部71が移動すると、
図7に示すように、球状体633は、コイルばね632の付勢力に応じて被係合凹部61a側に移動し、凹部713a内に嵌まり込む。これにより、可動電極713が固定電極62に接触した状態で可動電極部71が固定される。特に、固定電極62は、コイルばね623により下方側に付勢されていることから、固定電極62の端面(平面部622の下面)と可動電極713の端面(上面)とが密着した状態で固定される。このため、可動電極713と固定電極62との接続安定性が確保される。このように可動電極713が固定電極62に接触した状態においては、規制部712がホイールベース413の収容部413aの開口縁部から離間して、可動電極部71がホイールベース413と非接触状態になる。
【0055】
また、規制部712は、フレキシブル導線417を介して環状超音波振動子415(環状電極416)に電気的に接続された状態を維持している。このため、固定電極62と可動電極713とが電気的に接続されると共に、フレキシブル導線417を介して可動電極713に電気的に接続された環状超音波振動子415が固定電極62と電気的に接続される。この結果、電力供給手段51から固定電極62を介して環状超音波振動子415に電源が供給され、超音波振動を伴った研削ホイール41による研削加工が可能となる。
【0056】
なお、固定電極62と可動電極713とが接続した状態においては、環状超音波振動子415の裏面側に生じた電荷は、導電部材で構成されたホイールベース413、ホイールベース413と締結されたホイールマウント31及びホイールマウント31に接続された導電線25bを介して出力される。そして、研削装置1のグランド端子を介して接地される。
【0057】
このように、本実施の形態に係る研削装置1においては、研削ホイール41がネジ31cによりホイールマウント31に締結され、可動電極部71がシール部材418の外側から外力により押圧されると、可動電極713がホイールマウント31の被係合凹部61a内に係合され、固定電極62に接触した状態で固定部材63によって固定されて環状電極416が通電される。これにより、コネクタなどの特別な部品を介さずに研削ホイール41をホイールマウント31に装着した後、指等で可動電極部71を押圧するだけで固定電極62と可動電極713とが接続されるので、研削ホイール41を容易に着脱することが可能となる。
【0058】
また、固定部材63によって可動電極713が固定された状態において、可動電極部71がホイールベース413に非接触とされることから、ホイールベース413の振動が可動電極部71に伝わる事態を防止でき、振動による電極間の接触不良を回避することが可能となる。特に、固定電極62と可動電極713とが接触した状態で固定部材63により可動電極713が固定されることから、高精度な電極位置精度を要さずに固定電極62と可動電極713とを電気的に接続することが可能となると共に、超音波振動に伴う加工時に振動が相殺される領域であるノード領域が変化した場合においても、固定電極62と可動電極713との間の電極間の接触不良を抑制することが可能となる。さらに、可動電極部71をホイールマウント31の中央部に配設したことから、研削ホイール41の回転に伴う遠心力の影響を受けずに安定して接続状態を維持することが可能となる。
【0059】
なお、固定電極62と可動電極713とを接触させる際に、可動電極部71に加えられる外力を利用することから、これらの接触に磁力を利用する場合のように、ワーク(被加工物)Wに対して磁力の影響を与えることもない。
【0060】
次に、
図1に示した研削装置1を用いて被加工物(ワーク)Wを研削する場合の研削装置1の動作について説明する。ワークWは、被保持面にテープTが貼着されてチャックテーブル104に保持される。そして、チャックテーブル104が後方側に移動することにより、ワークWが研削ユニット21の下方側の領域に位置づけられる。
【0061】
そして、チャックテーブル2を例えば300RPMほどの回転速度で回転させると共に、回転スピンドル222を回転させることにより、研削ホイール41を例えば6000RPM程度の回転速度で回転させながら、研削送り機構11が研削ユニット21を降下させることにより、回転する研削砥石414をワークWに接触させて研削を行うことが可能となる。そして、ワークWが所望の厚さとなった時点で研削ユニット21を上昇させて研削を終了する。
【0062】
次に、本実施の形態に係る研削装置1の他の構成例について説明する。
図8は、本実施の形態に係る研削装置1の他の構成例を示す図であり、
図7に対応する一部の断面を模式的に示している。なお、以下においては、本実施の形態に係る研削装置1の他の構成例における相違点のみ説明するものとする。また、以下の説明においては、説明の便宜上、他の構成例に係る研削装置を研削装置10と呼ぶものとする。また、
図8において、
図7と同一の構成要素については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0063】
この研削装置10においては、
図8に示すように、固定部材63とは別に固定電極62を備えるのではなく、固定部材63に固定電極62としての機能を付与する点で上記実施の形態に係る研削装置1と相違する。固定電極62としての機能を付与することから、固定部材63を構成する筒状体631、コイルばね632及び球状体633は、導電性を有する金属材料で構成される。また、回転スピンドル222内に形成された貫通孔222aに配置された導電線25aが固定部材63に接続される点で上記実施の形態に係る研削装置1と相違する。
図8においては、導電線25aが絶縁部材61内を通過して固定部材63に接続される場合について示しているが、導電線25aの接続経路については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0064】
また、この研削装置10においては、固定電極62を備えないことから、絶縁部材61の形状において上記実施の形態に係る研削装置1と相違する。研削装置10の被係合凹部61aは、可動電極部71を構成する可動電極713の上下方向の寸法に応じた位置に底面部(被係合凹部61aを規定する絶縁部材61の下面部)61cが設けられている。
【0065】
このような相違点を有する研削装置10においても、研削ホイール41がホイールマウント31に装着されていない状態、並びに、研削ホイール41がホイールマウント31に装着された状態における固定部材63の球状体633の状態は、上記実施の形態に係る研削装置1と同様である(
図5及び
図6参照)。
【0066】
そして、研削ホイール41がホイールマウント31に装着された状態から外力(作業者の指等による押圧力)によってシール部材418を介して可動電極部71が上方側に押圧されると、これに伴って可動電極部71が上方側に移動し、被係合凹部61a内に進入する。固定部材63の球状体633は、可動電極713の周面上を摺動し、凹部713aに到達するまでの過程でコイルばね632の付勢力に抗して筒状体631内に退避する。
【0067】
可動電極713の上面が被係合凹部61aの底面部61cに当接する位置まで可動電極部71が移動すると、球状体633は、コイルばね632の付勢力に応じて被係合凹部61a側に移動し、凹部713a内に嵌まり込む。これにより、可動電極713が被係合凹部61a内に係合した状態で可動電極部71が固定される。この状態においては、規制部712がホイールベース413の収容部413aの開口縁部から離間して、可動電極部71がホイールベース413と非接触状態になる。
【0068】
また、規制部712は、フレキシブル導線417を介して環状超音波振動子415(環状電極416)に電気的に接続された状態を維持している。このため、固定電極として機能する固定部材63と可動電極713とが電気的に接続されると共に、フレキシブル導線417を介して可動電極713に電気的に接続された環状超音波振動子415が固定電極として機能する固定部材63と電気的に接続される。この結果、電力供給手段51から固定部材63を介して環状超音波振動子415に電源が供給され、超音波振動を伴った研削ホイール41による研削加工が可能となる。
【0069】
このように、
図8に示す研削装置10においても、研削ホイール41がネジ31cによりホイールマウント31に締結され、可動電極部71がシール部材418の外側から外力により押圧されると、可動電極713がホイールマウント31の被係合凹部61a内に係合され、固定電極として機能する固定部材63によって固定されて環状電極416が通電される。これにより、コネクタなどの特別な部品を介さずに研削ホイール41をホイールマウント31に装着した後、指等で可動電極部71を押圧するだけで固定電極として機能する固定部材63と可動電極713とが接続されるので、研削ホイール41を容易に着脱することが可能となる。
【0070】
また、固定部材63によって可動電極713が固定された状態において、可動電極部71がホイールベース413に非接触とされることから、ホイールベース413の振動が可動電極部71に伝わる事態を防止でき、振動による電極間の接触不良を回避することが可能となる。特に、固定電極として機能する固定部材63により可動電極713が固定されることから、高精度な電極位置精度を要さずに固定部材63と可動電極713とを電気的に接続することが可能となると共に、超音波振動に伴う加工時に振動が相殺される領域であるノード領域が変化した場合においても、固定部材63と可動電極713との間の電極間の接触不良を抑制することが可能となる。さらに、可動電極部71をホイールマウント31の中央部に配設したことから、研削ホイール41の回転に伴う遠心力の影響を受けずに安定して接続状態を維持することが可能となる。
【0071】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0072】
例えば、上記実施の形態においては、可動電極713の側面(周面)を押圧する固定部材63をプランジャーで構成する場合について説明している。しかしながら、固定部材63の構成については、これに限定されるものではなく可動電極部71(より具体的には可動電極71)を被係合凹部61a内で固定することができれば任意の構成を適用である。例えば、板ばね等の弾性部材で固定部材63を構成することができる。導電性を有する金属材料で板ばねを採用することにより、他の構成例に係る研削装置10にも適用することが可能である。
【0073】
また、可動電極713自体を、被係合凹部61aの所定位置に固定される構成とすることも可能である。例えば、被係合凹部61aの周面に凹部を設ける一方、この凹部に係合可能な凸部を可動電極713の周面に設けてもよい。また、可動電極713の周面に、バナナプラグ等のように弾性変形可能な弾性片を設け、この弾性片で被係合凹部61aの所定位置に位置決めするようにしてもよい。