特許第5767221号(P5767221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767221少なくとも2つの鏡面を有するミラーを製造する方法、マイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラー、及び投影露光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767221
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】少なくとも2つの鏡面を有するミラーを製造する方法、マイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラー、及び投影露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20150730BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20150730BHJP
   G02B 17/06 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
   G02B5/10 C
   !G02B17/06
【請求項の数】26
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-523302(P2012-523302)
(86)(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公表番号】特表2013-501370(P2013-501370A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2010061148
(87)【国際公開番号】WO2011020690
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年2月13日
(31)【優先権主張番号】102009036484.6
(32)【優先日】2009年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン へッツラー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング シンガー
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−111500(JP,A)
【文献】 特開平07−235476(JP,A)
【文献】 特開平08−152507(JP,A)
【文献】 特開2002−311198(JP,A)
【文献】 特表2002−522898(JP,A)
【文献】 特開2004−289127(JP,A)
【文献】 特開2005−231994(JP,A)
【文献】 特表2006−506772(JP,A)
【文献】 特表2008−514971(JP,A)
【文献】 特表2008−520084(JP,A)
【文献】 特表2008−529094(JP,A)
【文献】 特開2009−010174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置の光学系であって、
相対配置および相対配向が定められた、ミラー群とミラーとを備え、
該ミラー(M)は、基板本体(B)と、第1鏡面(S)と、第2鏡面(S′)とを有し、
前記第1鏡面(S)は、前記基板本体(B)の第1面(VS)に形成され、
前記第2鏡面(S′)は、前記基板本体(B)の第2面(RS)に形成され、該第2面は、前記基板本体(B)の前記第1面とは異なり、
前記基板本体(B)は、ガラスセラミック材料から製造され、
前記第1鏡面(S)に反射された光は、前記ミラー群を介して、前記第2鏡面(S’)に導光され、該第2鏡面(S’)で反射され、前記感光材料の露光に寄与する光学系
【請求項2】
感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置の光学系であって、
相対配置および相対配向が定められた、ミラー群とミラーとを備え、
該ミラー(M)は、基板本体(B)と、第1鏡面(S)と、第2鏡面(S′)とを有し、
前記第1鏡面(S)は、前記基板本体(B)の第1面(VS)に形成され、
前記第2鏡面(S′)は、前記基板本体(B)の第2面(RS)に形成され、該第2面は、前記基板本体(B)の前記第1面とは異なり、
前記基板本体(B)は、該基板本体の体積内で少なくとも1ppm変わる屈折率を有し、
前記第1鏡面(S)に反射された光は、前記ミラー群を介して、前記第2鏡面(S’)に導光され、該第2鏡面(S’)で反射され、前記感光材料の露光に寄与する光学系
【請求項3】
請求項2に記載のミラーにおいて、前記基板本体の前記屈折率は、前記基板本体の前記体積内で少なくとも10ppm変わる光学系
【請求項4】
感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラーであって、
該ミラー(M)は、基板本体(B)と、第1鏡面(S)と、第2鏡面(S′)とを有し、
前記第1鏡面(S)は、前記基板本体(B)の第1面(VS)に形成され、
前記第2鏡面(S′)は、前記基板本体(B)の第2面(RS)に形成され、該第2面は、前記基板本体(B)の前記第1面とは異なり、
前記ミラー(M)は、少なくとも1つの反射補助表面(HF1,HF2,HF3)を有し、
前記補助表面(HF1,HF2,HF3)は、前記感光材料の露光に寄与しない光を反射するミラー。
【請求項5】
請求項4に記載のミラーにおいて、前記補助表面(HF1,HF2,HF3)は、少なくともいくつかの領域で球面状に具現されるミラー。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のミラーにおいて、前記補助表面(HF1,HF2,HF3)は、前記第1鏡面(S)の所望の位置及び前記第2鏡面(S′)の所望の位置を事前規定する基準として具現されるミラー。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)に対する所
望の位置が、前記第2鏡面(S′)に関して事前規定される光学系
【請求項8】
請求項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)及び/又は前記第2鏡面(S′)の実際の位置の、所望の位置からのずれは、変位距離が100nm以下であり、回転角が100nrad以下である光学系
【請求項9】
請求項1〜3、7および8のいずれか1項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)は、前記感光材料の露光に寄与する100nm未満の波長を有する光を反射する光学系
【請求項10】
請求項1〜3および7〜9のいずれか1項に記載の光学系において、前記基板本体(B)の前記第1面(VS)は前面として具現され、前記基板本体(B)の前記第2面(RS)は前記前面とは逆向きの後面として具現される光学系
【請求項11】
請求項1〜3および7〜10のいずれか1項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)はそれぞれ、垂直入射時の露光光の反射率が少なくとも20%である光学系
【請求項12】
請求項1〜3および7〜11のいずれか1項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)は、垂直入射時の露光光の反射率が少なくとも20%である領域により相互に分離される光学系
【請求項13】
請求項1〜3および7〜12のいずれか1項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)は第1部分領域を有し、前記第2鏡面(S′)は第2部分領域を有し、前記第1部分領域及び前記第2部分領域は、前記第1部分領域で反射された光ビームが前記第2部分領域で反射された光ビームと交わらないよう具現される光学系
【請求項14】
請求項1〜3および7〜13のいずれか1項に記載の光学系において、前記第1鏡面(S)及び/又は前記第2鏡面(S′)は曲率を有する光学系
【請求項15】
請求項1〜3および7〜14のいずれか1項に記載の光学系において、前記感光材料の露光に寄与する光は、前記第1ミラー(S)での反射後に少なくとも2回反射された後に前記第2鏡面(S′)に衝突する光学系
【請求項16】
請求項4〜6のいずれか1項に従って具現された少なくとも1つのミラー(M)を備える、感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置。
【請求項17】
基板本体(B)と、第1鏡面(S)と、第2鏡面(S′)とを有するミラー(M)を製造する方法であって、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)を相互に対する位置に関して干渉測定し、そのプロセスにおいて、光を前記第1鏡面(S)に直接指向させ、光を前記第2鏡面(S′)に追加ミラー(24)を介して指向させる方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記第1鏡面(S)及び/又は前記第2鏡面(S′)の加工を、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)の測定の結果に応じて実行する方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法において、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)の測定中、光を前記第1鏡面(S)及び/又は前記第2鏡面(S′)に集束させる方法。
【請求項20】
請求項1719のいずれか1項に記載の方法において、前記第1鏡面(S)及び前記第2鏡面(S′)の測定中、光を前記第1鏡面(S)及び/又は前記第2鏡面(S′)に垂直入射で指向させる方法。
【請求項21】
請求項1720のいずれか1項に記載の方法において、前記第1鏡面(S)を第1回折構造組により測定し、前記第2鏡面(S′)を第2回折構造組により測定する方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記第1回折構造組及び前記第2回折構造組を相互に対して規定の位置に配置する方法。
【請求項23】
請求項1722のいずれか1項に記載の方法において、前記第1鏡面(S)の測定及び前記第2鏡面(S′)の測定を、前記ミラー(M)の同じ位置で実行する方法。
【請求項24】
請求項1723のいずれか1項に記載の方法において、前記追加ミラー(24)を、前記第2鏡面(S′)に対するその位置に関して測定する方法。
【請求項25】
請求項1724のいずれか1項に記載の方法において、前記鏡面(S′)の測定のために、光を前記ミラー(M)の切欠部(ZO)を通して指向させる方法。
【請求項26】
請求項1725のいずれか1項に記載の方法において、前記第2鏡面(S′)の測定のために、光を前記ミラー(M)の周辺に指向させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの鏡面を有するミラーを製造する方法に関する。さらに、本発明は、マイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラー及び該ミラーを備える投影露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ用投影露光装置は、通常は照明系及び投影対物光学系に細分される。照明系は、マスク又はレチクルのパターンを照明するための所望の光分布を生成する。投影対物光学系により、照明パターンは非常に高い分解能で感光材料に結像され、それにより感光材料はパターンで構造化されるように露光される。感光材料に露光されるパターンに基づき、実際の構造を半導体材料に、例えば後続の加工ステップにより作製することができる。
【0003】
照明系及び投影対物光学系はいずれも、概して多数の光学素子、例えばレンズ及び/又はミラー等を有する。非常に短い波長で、例えば100nm未満の波長で動作するよう設計した投影露光装置の場合、十分に高く同時に十分に均一な透過率を有する材料が利用可能でなく、したがってレンズを十分な品質で製造することができないので、ミラーの使用がすでに必要である。約100nm未満の波長範囲は、極紫外、略してEUVとも称する。EUV範囲で動作するリソグラフィシステムは、多くの場合、13.6nmの作動波長用に設計される。しかしながら、光源及び光学素子の利用可能性に応じて、他の作動波長を用いることもできる。
【0004】
パターンを感光材料に高精度で露光することを可能にするために、投影露光装置で用いるミラーを高精度に製造及び配向する(oriented)必要がある。さらに、投影露光装置の動作中に、ミラーの正確な整形及び正確な配向からのずれを許容公差内に確実に留めるよう留意しなければならない。これらの理由から、多くの場合のミラーは、ミラーに高い機械的安定性を与える非常に堅牢な基板本体を有する。しかしながら、ミラーのこの堅牢な実施形態及びそれに関連した大きな外形寸法の結果として、特に投影露光装置の基礎をなす光学設計が相互に僅かな距離を開けた後面合わせの2つのミラーの構成を必要とする場合、構造空間に関する問題が生じ得る。
【0005】
これに関連して、特許文献1は、遮光瞳を有するマイクロリソグラフィ用の高開口率投影対物光学系の場合に、鏡面をそれぞれ基板の前面及び後面に配置したダブルミラーとして1つのミラーを用いることを開示している。
【0006】
しかしながら、従来の製造法及び測定法を用いてダブルミラーを製造する場合に生じる2つの鏡面間の誤配向は、それに伴う結像収差があるので、さらに他のミラー又は投影対物光学系の他の光学素子による大幅な補正を必要とする。これは、存在する光学素子の数が比較的少ないことで補正の可能性が非常に限られている場合に、特に問題につながり得る。
【0007】
さらに別の問題は、2つの光学表面間、例えばレンズの2つの光学表面間の誤配向を測定する既知の方法において、測定は概して基板本体を通して行われるので、正確な測定結果を得るために基板本体に関して厳しい要件を課す必要があることである。レンズの場合、概してこれには追加費用はかからない。露光に用いる光も基板本体を通過するので、該レンズがすでにこの理由で高い光学的品質を有さなければならないからである。これに対して、結像特性がその基板本体の体積特性によってではなくその表面によって特徴付けられるミラーの場合、透過率の正確な測定に適した基板本体には相当な追加費用がかかり、さらに、適した材料が大幅に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2005 042 005号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、マイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラーを、構造空間に関する問題が回避され且つ感光材料へのパターンの正確な露光が投影露光装置で可能となるよう具現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項に記載のミラー及びミラーを製造する方法により達成される。
【0011】
感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置の本発明によるミラーは、基板本体と、第1鏡面と、第2鏡面とを備える。第1鏡面は基板本体の第1面に形成される。第2鏡面は基板本体の第2面に形成され、該第2面は基板本体の第1面とは異なる。基板本体はガラスセラミック材料から製造される。
【0012】
本発明によるミラーには、非常に小型に具現することができ、したがって投影露光装置内で必要な構造空間が比較的小さいという利点がある。さらに別の利点は、非常に低い熱膨張率を有するガラスセラミック材料が利用可能であることで、温度が変化した場合でも鏡面の形態及び位置が事実上不変のままとなることである。
【0013】
本発明はさらに、感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラーであって、基板本体と、第1鏡面と、第2鏡面とを有し、第1鏡面は基板本体の第1面に形成され、第2鏡面は基板本体の第2面に形成され、該第2面は基板本体の第1面とは異なり、基板本体は基板本体の体積内で少なくとも1ppm変わる屈折率を有するミラーに関する。屈折率の変化に関するこの指示は、干渉測定における測定波長として用いられることが多い633nmの波長に関するものである。
【0014】
このように具現したミラーには、多数の適当な材料が基板本体の実施形態に利用可能であり、したがって基板本体の所望の特性を材料の選択により実現することができるという利点がある。
【0015】
基板本体の屈折率は、特に基板本体の体積内で少なくとも10ppm変わり得る。屈折率の変化に関するこの指示は、やはり633nmの波長に関するものである。
【0016】
さらに、本発明は、感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置のミラーであって、基板本体と、第1鏡面と、第2鏡面とを有し、第1鏡面は基板本体の第1面に形成され、第2鏡面は基板本体の第2面に形成され、該第2面は基板本体の第1面とは異なり、ミラーは少なくとも1つの反射補助表面を有するミラーに関する。本発明によるミラーは、少なくとも3つの補助表面を有することが好ましい。
【0017】
少なくとも1つの反射補助表面を有するミラーには、第1鏡面の位置及び第2鏡面の位置を比較的低費用で非常に正確に決定できるという利点がある。
【0018】
ミラーは、補助表面が感光材料の露光に寄与しない光を反射するよう具現され得る。特に、補助表面は、感光材料の露光に寄与しない光のみを反射することができる。これには、補助表面を露光の要件から切り離して測定目的で最適化できるという利点がある。
【0019】
補助表面は、少なくともいくつかの領域で球面状に具現され得る。これにより、補助表面を含めることで可能な測定が単純化される。
【0020】
さらに、補助表面は、第1鏡面の所望の位置及び第2鏡面の所望の位置を事前規定する基準として具現され得る。第1ミラーに対する所望の位置を、第2鏡面に対して同様に事前規定することができる。このように、ミラーを高確度で指定することができる。
【0021】
第1鏡面及び/又は第2鏡面の実際の位置の、所望の位置からのずれは、変位距離が100nm以下であり、回転角が100nrad以下であり得る。第1鏡面及び/又は第2鏡面の実際の位置の、所望の位置からのずれを、最大10nm、特に最大1nmの変位距離及び最大10nrad、特に最大1nradの回転角とすることも同様に可能である。このような高精度を有する鏡面の実施形態には、残っている可能性のある位置ずれを投影露光装置のさらに他のコンポーネントにより容易に補償できるか又は補償が一切必要ないという利点がある。
【0022】
ミラーは、第1鏡面及び第2鏡面が感光材料の露光に寄与し100nm未満の波長を有する光を反射するよう具現され得る。
【0023】
ミラーは、正確には2つの鏡面を有し得る。しかしながら、ミラーが3つ以上の鏡面を有することも同様に可能である。
【0024】
基板本体の第1面は前面として、基板本体の第2面は前面とは逆向きの後面として具現され得る。
【0025】
第1鏡面及び第2鏡面はそれぞれ、垂直入射時の露光光の反射率が少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%であり得る。
【0026】
さらに、第1鏡面及び第2鏡面は、垂直入射時の露光光の反射率が少なくとも20%である領域により相互に分離され得る。
【0027】
第1鏡面は第1部分領域を有することができ、第2鏡面は第2部分領域を有することができ、これらは第1部分領域で反射された光ビームが第2部分領域で反射された光ビームと交わらないよう具現される。これは、第1鏡面及び第2鏡面が相互に空間的に大きく分離され得ることを意味する。
【0028】
第1鏡面及び/又は第2鏡面は曲率を有し得る。
【0029】
ミラーはさらに、第1鏡面での反射後に感光材料の露光に寄与する光が第2鏡面への衝突前に少なくとも2回反射されるよう具現され得る。
【0030】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1つのミラーを備える、感光材料の構造露光のためのマイクロリソグラフィ用投影露光装置に関する。
【0031】
本発明はさらに、基板本体と、第1鏡面と、第2鏡面とを有するミラーを製造する方法に関する。本発明による方法では、第1鏡面及び第2鏡面を相互に対する位置に関して干渉測定し、そのプロセスにおいて、光を第1鏡面に直接指向させ、光を第2鏡面に追加ミラーを介して指向させる。
【0032】
本発明による方法には、相互に対して非常に正確に配向された少なくとも2つの鏡面を比較的小さな構造空間内で実現することを可能にするという利点がある。この場合、測定中に光を基板本体に通過させる必要がなく、したがって基板本体の光学特性が測定に重要でないことが特に有利である。したがって、ミラーの製造中、基板本体に関しては、基板本体を通して可能な測定がその光学特性により高確度とならない、特にマイクロリソグラフィ用投影露光装置でのミラーの使用時に必要な確度とならない材料を用いることが可能である。さらに別の利点は、第1鏡面及び第2鏡面を、測定構成体を変更せずに測定することができることである。この場合、第1鏡面及び第2鏡面をさらに同時に測定することができる。特に、第1鏡面及び第2鏡面を、相互に対する位置からずらして製造することができ、該位置は、最大100nrad、特に最大10nrad、又はさらには最大1nradの回転と組み合わせた、最大100nm、特に最大10nm、又はさらには最大1nmの変位に対応する光学設計により事前規定される。
【0033】
ミラーは、100nm未満の波長範囲、特に13.6nmの波長で用いるよう具現することができ、垂直入射時のこの波長範囲における第1鏡面及び/又は第2鏡面の反射率は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%であり得る。
【0034】
第1鏡面及び/又は第2鏡面の加工は、第1鏡面及び第2鏡面の測定の結果に応じて実行され得る。ミラーの所望の精度を、このようにして確実に達成することができる。この場合、材料除去の過多を回避するために最初に許容値を用いることが可能である。2つの鏡面の所望の位置に達した場合、鏡面が相互から所望の距離になるまで均一な除去のみが行われる。しかしながら、許容不可能なほど程度の大きな材料除去を材料の塗布により軽減又は排除することも同様に可能である。これは、例えば気相からの材料成長により行う(affected)ことができる。
【0035】
第1鏡面及び第2鏡面の測定中、光を第1鏡面及び/又は第2鏡面に集束させることができる。このように、プローブ場所の位置を比較的高精度で決定することができる。さらに、第1鏡面及び第2鏡面の測定中、光を第1鏡面及び/又は第2鏡面に垂直入射で指向させることができる。これは、第1鏡面及び/又は第2鏡面の形態の非常に正確な測定を可能にする。集束による測定及び垂直入射による測定の組み合わせにより、鏡面の形態及び空間的配置を非常に正確に求めることができる。
【0036】
第1鏡面は、第1回折構造組により測定することができ、第2鏡面は、第2回折構造組により測定することができる。回折構造は、例えば、計算器ホログラム、略してCGHとしてそれぞれ具現され得る。CGHは、事実上任意の所望の様式で具現される測定対象表面について維持可能な費用で高精度に製造することができる。
【0037】
第1回折構造組及び第2回折構造組は、相互に対して規定の位置に配置することができる。特に、第1回折構造組及び第2回折構造組の相対位置は、相互に対して10nmよりも高い確度又は1nmよりも高い確度で把握される。この微細構造の位置確度は、例えばリソグラフィマスクでも求められる。
【0038】
例として、第1回折構造組及び第2回折構造組は、共通のキャリア上に一緒に配置することができる。これには、回折構造の位置がキャリアの位置の変化により変わった場合でも回折構造の相互に対する配向が永久に維持されるという利点がある。
【0039】
第1回折構造組及び第2回折構造組が2つのキャリア間、特にそれぞれ同一の2つのキャリア間にそれぞれ分配されることも同様に可能である。さらに、第1回折構造組及び第2回折構造組それぞれに対して別個のキャリアを設ける可能性もある。
【0040】
第1鏡面の測定及び第2鏡面の測定は、ミラーの同じ位置で実行することができる。これにより、ミラーの再位置決めに関連した新たな調整又は新たな位置判定を回避することが可能である。
【0041】
例として、光を第1回折構造により第1鏡面に、また第2回折構造により追加ミラーに指向させることができる。
【0042】
追加ミラーは、第2鏡面に対するその位置に関して測定することができる。これにより、事前規定された位置からの追加ミラーの生じ得るずれにより測定結果が乱されるのを防止することができる。ミラーの鏡面の測定中に、追加ミラーの位置を監視することも可能である。この目的で必要な回折構造は、ミラーの鏡面の測定用の回折構造も有する同じキャリア上にそれぞれ収容することができる。
【0043】
本発明による方法の一変形形態では、第2鏡面の測定用に、ミラーの切欠部を通して光を指向させる。この手順は、非常に小型の測定構成体を可能にする。
【0044】
本発明による方法のさらに別の変形形態では、第2鏡面の測定のために、光をミラーの周辺に指向させる。この手順は、特に切欠部を有さないミラーの場合を含めて普遍的に適用可能である。
【0045】
本発明を、図面に示す例示的な実施形態に基づき以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明に従って具現したマイクロリソグラフィ用投影露光装置の例示的な実施液体を概略図で示す。
図2】本発明による投影対物光学系の例示的な実施形態を概略図で示す。
図3】本発明に従って具現したミラーの例示的な実施形態を概略図で示す。
図4】第1測定ステップを実行中の本発明によるミラー測定用の測定構成体の例示的な実施形態を概略図で示す。
図5】第2測定ステップを実行中の図4からの測定構成体を概略図で示す。
図6】第1測定ステップを実行中の本発明によるミラー測定用の測定構成体のさらに別の例示的な実施形態を概略図で示す。
図7】第2測定ステップを実行中の図6からの測定構成体を概略図で示す。
図8】ミラー測定用の測定構成体のさらに別の例示的な実施形態を概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、本発明に従って具現したマイクロリソグラフィ用投影露光装置の例示的な実施形態を概略図で示す。投影露光装置は、照明系1及び投影対物光学系2を有する。図示の例示的な実施形態では、投影露光装置は、反射光学システムとして具現され、したがって光学素子としてミラーのみを有し、レンズを有さない。
【0048】
照明系1は、光源3、ミラーM1、ミラーM2、ミラーM3、及びミラーM4を有する。図示の例示的な実施形態では、照明系1の各ミラーは、基板本体及び基板本体上に具現された鏡面を有し、すなわち、ミラーM1は基板本体B1及び鏡面S1を有し、ミラーM2は基板本体B2及び鏡面S2を有し、ミラーM3は基板本体B3及び鏡面S3を有し、ミラーM4は基板本体B4及び鏡面S4を有する。
【0049】
基板本体B1,B2,B3,B4は、熱膨張率の低い材料、例えばZerodur又はULE等のガラスセラミック材料からなり得る。例えばケイ素又は炭化ケイ素が、ミラー材料としてさらに適している。基板本体B1,B2,B3,B4の材料は、屈折率に関して比較的高い不均一性を有し得る。特に、屈折率はそれぞれ、基板本体B1,B2,B3,B4の体積内で少なくとも1ppm(百万分率)又はさらに少なくとも10ppm変わり得る。屈折率の変動に関するこれらの指示は、干渉測定における測定波長として用いられることが多い633nmの波長に関するものである。鏡面S1,S2,S3,S4は、例えば層スタックとして、特にケイ素及びモリブデンから構成される交互層のスタックとして形成することができる。
【0050】
ミラーM1は、特に凹面鏡面S1を有するコレクタミラーとして具現され得る。ミラーM2及びM3は、ファセット鏡面S2及びS3を有し得る。ミラーM4は、特に凹面鏡面S4を有する集束ミラーとして具現され得る。
【0051】
光源3は、例えばプラズマ源として具現され、100nm未満の波長を有するEUV範囲の光を発生させる。例として、光源3が発生させる光の波長は13nm又は7nmであり得る。
【0052】
光源3が発生させる光は、ミラーM1の鏡面S1、ミラーM2の鏡面S2、ミラーM3の鏡面S3、及びミラーM4の鏡面S4により順に反射されてから、レチクル4に衝突する。この場合、照明系1の設計は、レチクル4が全面積にわたって照明されるのではなく、例えば環の形態又はその弧の形態を有し得る部分領域のみが照明されるようなものである。
【0053】
レチクル4は、衝突光を投影対物光学系2に向けて反射するパターンを有する。レチクル4のパターンは、例えば集積回路の構成部品を表し得る。投影対物光学系2を、図1では単に「ブラックボックス」として示す。投影対物光学系の構成は、図2を参照してより詳細に後述する。
【0054】
投影対物光学系2は、ウェーハ5をコーティングする感光材料にレチクル5のパターンを結像する。したがって、ウェーハ5は、ビーム経路内で投影対物光学系2の下流に配置される。ウェーハ5の感光材料へのパターンの結像は、特に走査プロセスに関連して行うことができ、走査プロセスでは、走査方向で、結像対象パターンの部分領域のみを照明してレチクル4及びウェーハ5を投影対物光学系2に対して同期移動させる。結像と同期した移動を可能にするために、投影対物光学系2の結像縮尺を、レチクル4及びウェーハ5の前進移動において考慮に入れる。レチクル4及びウェーハ5の前進移動は、図1に示すy方向と平行にそれぞれ行われる。z方向は、レチクル4の表面及びウェーハ5の表面が配置される平面に対して垂直に延びる。
【0055】
図2は、本発明による投影対物光学系2の例示的な実施形態を概略図で示す。
【0056】
投影対物光学系2は、ミラーM5、ミラーM6、ミラーM7、ミラーM8、及びミラーM9を有し、これらはビーム経路内でレチクル4から進んで順次配置される。ミラーM5は基板本体B5及び実質的に平面の鏡面S5を有し、ミラーM6は基板本体B6及び凹面鏡面S6を有し、ミラーM7は基板本体B7及び凸面鏡面S7、及び凹面鏡面S7′も有する。したがって、ミラーM7は、その基板本体B7上に2つの鏡面S7及びS7′を有し、該鏡面は基板本体B7の相互に反対側で具現される。ミラーM8は基板本体B8及び凹面鏡面S8を有し、ミラーM9は基板本体B9及び凸面鏡面S9を有する。
【0057】
したがって、光は、レチクル4からウェーハ5へ向かう途中に、ミラーM5の鏡面S5、ミラーM6の鏡面S6、ミラーM7の鏡面S7、ミラーM8の鏡面S8、ミラーM9の鏡面S9、及びミラーM7の鏡面S7′において順に反射される。
【0058】
図示の例示的な実施形態では、全鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9が、投影対物光学系2の光軸6に対して回転対称に具現され、球面又は非球面の形態を有し得る。しかしながら、完全な回転体が実際にそれぞれ存在する必要はない。正確には、鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9が、ウェーハ5の感光材料の露光に寄与する光を鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9に衝突させるようなものとして実際に形成されれば十分である。それぞれ遮光が生じるような鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9は形成されない。それ以外の点では、生産技術的な考慮事項及び可能な限り最適な投影対物光学系2の動作に関する考慮事項が、回転体において鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9を実際に形成する場所及びそれらを形成しない場所を決定するための基準として用いられる。
【0059】
回転対称鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9の代替形態として、回転対称性を有さない鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9を用いることも可能であり、これらを自由曲面と称する。回転対称に具現された鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9に関する上記説明は、自由曲面にも類似して準用される。さらに、投影対物光学系2の鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9に関する説明は、照明系の鏡面S1,S2,S3及びS4にも類似して適用される。特に、照明系1が共通の基板本体上に2つの鏡面を有するミラーを有することも可能である。
【0060】
ウェーハ5の感光材料へのレチクル4のパターンの結像中に高い結像品質を得るために、投影対物光学系2の鏡面S5,S6,S7,S7′,S8、及びS9をそれらの整形に関して高精度に製造し、それらを相互に対して高精度で調整する必要がある。しかしながら、ミラーM7の製造後、鏡面S7及びS7′は、基板本体B7上に一緒に具現されるので相互に独立して調整されることが不可能となる。2つの鏡面S7とS7′は一緒にのみ調整され得る。これは、2つの鏡面S7及びS7′の相互に対する誤配向を後から修正できなくなることを意味する。このような誤配向から生じる収差の補正は、残りの鏡面S5,S6,S8、及びS9に対する調整作業によって試みるしかない。しかしながら、これは非常に複雑であり得る。さらに、補正の可能性は、鏡面S5,S6,S8、及びS9が比較的少数であることに起因して制限され、その結果、鏡面S7とS7′との間の誤配向により生じる収差を概して一部しか補正できない。
【0061】
この問題を少なくとも軽減するために、鏡面S7とS7′との間の、又はより一般的にはミラーMの共通の基板本体B上に具現される2つの鏡面SとS′との間の誤配向を最小化するための措置が、本発明において講じられる。これは、本発明によれば、両方の鏡面S,S′を含む干渉測定を実行し、2つの鏡面S,S′間の誤配向を減らすためのミラーMの後続加工を測定結果に応じて行うことにより達成される。
【0062】
このような手順は、最初は不可能であるように思われる。レンズに関して既知である干渉測定法は、各前面側光学表面が光学的に直接プローブされ、各後面側光学表面がレンズを通して光学的にプローブされる方法であり、鏡面S,S′の場合に用いることはできないからである。これは、この方法が、例えば鏡面S及び基板本体Bを通した測定を必要とするからである。EUV範囲の透過性がないので、このような測定は、鏡面S及び基板本体Bが十分に透明であるような長い波長であれば辛うじて可能であるが、基板本体Bに光学的均一性がないことに起因して不可能となる。
【0063】
そのため、本発明では異なる手順が採用される。したがって、本発明の一変形形態によれば、補助表面をミラーMに設けて測定に含める。これを、図3図5を参照してより詳細に後述する。
【0064】
図6及び図7に示し、特に遮光ミラー(obscured mirrors)の測定で用いることもできるさらに別の変形形態では、測定対象のミラーMの構成部分ではない表面が測定に含められる。
【0065】
図8に示す変形形態では、上述の付加的な表面のいずれも鏡面S,S′の測定に必要ない。
【0066】
図3は、本発明に従って具現したミラーMの例示的な実施形態を概略図で示す。ミラーMは、基板本体Bと、基板本体Bの相互に逆向きの面に具現した2つの鏡面S及びS′とを有する。明確にする理由で、基板本体Bのうち鏡面Sを具現した面を以下で前面VSと称し、基板本体Bのうち鏡面S′を具現した面を後面RSと称する。
【0067】
ミラーMは、全体的にシリンダの基本形態を有し、鏡面Sを有する基板本体Bの前面VS及び鏡面S’を有する基板本体Bの後面RSは、シリンダの上部及び底部を形成する。球面状に具現した3つの補助表面HF1,HF2,HF3が、シリンダの外側面の周囲に分配されるようにして基板本体Bに配置される。補助表面HF1,HF2,HF3は、非常に精密に整形され、反射型であるよう具現される。この場合、さらにより詳細に後述する本発明による方法では、主に重要なのは、球の絶対サイズすなわち半径よりむしろ整形の精度、すなわち球形態からの最小限のずれである。特に、補助表面HF1,HF2,HF3は、鏡面S及びS′と同じ材料から製造することができ、したがって同様の反射特性を有することができる。
【0068】
鏡面S及びS′の適当な実施形態があれば、図3に示すミラーMを、例えば図2に示す投影対物光学系2のミラーM7として用いることができる。
【0069】
補助表面HF1,HF2,HF3を含めたミラーMの鏡面S及びS′の測定について、図4及び図5を参照して説明する。
【0070】
図4は、第1測定ステップを実行中のミラーMの測定用の測定構成体の例示的な実施形態を概略図で示す。測定は、例えばフィゾー干渉計として具現される干渉計IFを用いて以下のように実行される。
【0071】
例えばヘリウムネオンレーザとして具現される測定光源6により、平行光ビーム7を発生させる。平行光ビーム7はレンズ8に衝突し、レンズ8は光ビーム7を空間フィルタ9に集束させる。レンズ8の代わりに、光ビーム7を集束させるための対物系を設けることも可能である。空間フィルタ9は、例えばピンホールとして具現され、球面波面を有する発散光ビーム10の束を発生させる。異なる形で具現した空間フィルタ9をピンホールの代わりに用いることもできる。発散光ビーム10は、ビームスプリッタ11を通過してからコリメータレンズ12に衝突する。コリメータレンズ12は、発散光ビーム10からの平面波面を有する平行光ビーム13を発生させる。平行光ビーム13は、楔形プレート14を通過し、楔形プレート14から垂直に平面表面15を通って出る。
【0072】
平面表面15は、部分透過性である結果として平行光ビーム13の一部をそのまま反射し戻すよう具現される。楔形プレート14を通して反射し戻された光ビームは、コリメータレンズ12により再度集束されてからビームスプリッタ11により空間フィルタ16の方向に偏向される。空間フィルタ16を通過後、反射し戻された光ビームは、カメラ対物系17に衝突してから、例えばCCDチップとして具現され得る空間分解検出器18に衝突する。評価エレクトロニクス19が空間分解検出器18に接続される。
【0073】
楔形プレート14の平面表面15から出た光ビームは、CGH構成体20に衝突する。CGH構成体20は、共通のキャリア上に配置される複数の回折構造(図示せず)、特に計算器ホログラム、略してCGHを有し、一連の試験ビームを発生させる。CGH構成体20が発生させた試験ビーム21は、ミラーMの補助表面HF1,HF2,HF3に指向される。試験ビーム21は、ミラーMの補助表面HF1,HF2,HF3に垂直入射で衝突し、したがってそのまま反射し戻される。さらに、CGH構成体20は、試験ビーム22を発生させ、これはミラーMの前面VSにおける鏡面Sに垂直に衝突してそのまま反射し戻される。最後に、CGH構成体20は、ビーム23を発生させ、これはミラーMの前面VSにおける鏡面Sに集束されて鏡面SからCGH構成体20へ反射し戻される。
【0074】
反射し戻された試験ビームの全てがCGH構成体20、楔形プレート14、及びコリメータレンズ12を通過して、続いてビームスプリッタ11により空間フィルタ16に向けて偏向される。空間フィルタ16及びカメラ対物系17を通過後、反射し戻された試験ビームは空間分解検出器18に衝突し、空間分解検出器18において、反射し戻された試験ビームは、基準ビームとしての役割を果たす楔形プレート14の平面表面15において反射し戻された光ビームに干渉する。このようにして、それぞれ空間分解検出器18により検出され評価エレクトロニクス19により解析される一連のインターフェログラムが生成される。
【0075】
試験ビーム21で生成されたインターフェログラムは、補助表面HF1,HF2,HF3の正確な位置判定に用いることができる。補助表面HF1,HF2,HF3は、高精度で球面状に具現される。したがって、それらの表面形態、したがって試験ビーム21に対するそれらの影響が非常に正確に把握される。補助表面HF1,HF2,HF3における試験ビーム21の反射は、補助表面HF1,HF2,HF3の表面形態及び位置に応じて変わるので、補助表面HF1,HF2,HF3の位置を、試験ビーム21で生成されたインターフェログラムからそれぞれ判定することができる。結果として、例えば、補助表面HF1,HF2,HF3を高精度で事前規定された位置に配置することが可能であるが、これらの位置は、補助表面HF1,HF2,HF3の剛接合により事前規定された制約に適合しなければならない。このように、ミラーMの位置は全体的に高精度で規定される。補助表面HF1,HF2,HF3の大まかな予備位置決めは、触覚測定又は他の何らかの方法で行うことができる。事前規定された場所での補助表面HF1,HF2,HF3の正確な位置決めが行われない場合でも、それら実際の位置が、したがってミラーMの実際の位置も、高確度で把握される。
【0076】
ミラーMの上述の正確な配向又は位置判定の後、鏡面Sの形態及び位置が試験ビーム22及び23を用いて測定される。この目的で、鏡面Sにおいて反射し戻された試験ビーム22及び23が楔形プレート14の平面表面15において反射し戻された光ビームに干渉することにより生成されたインターフェログラムが評価される。反射し戻された試験ビーム22のインターフェログラムから、CGH構成体20内に符号化された所望の形態からの鏡面Sの形態ずれを、それ自体が既知の方法で判定することができる。しかしながら、この判定は、同様の表面で、すなわち表面に関して法線方向に沿った伝播により相互に変換可能な表面で、同じ結果をもたらす場合は明確ではない。したがって、試験ビーム23が付加的に評価される。反射し戻された試験ビーム23のインターフェログラムから、それ自体が既知の方法で、鏡面Sに対する試験ビーム23の集束ずれの程度、したがって鏡面Sの照射領域とCGH構成体20との間の距離を判定することが可能である。距離判定は、CGH構成体20が試験ビーム23を規定の方法で集束させること、すなわちCGH構成体20に対する焦点の位置が正確に分かっていることに基づく。
【0077】
ミラーMの前面VSにおける鏡面Sの測定は、補助表面HF1,HF2,HF3の測定と同じCGH構成体20により実行されるので、補助表面HF1,HF2,HF3により規定された座標系に対して鏡面Sを測定することが上述のように可能である。
【0078】
鏡面Sの測定後、CGH構成体20は、鏡面S′の測定用及び補助表面HF1,HF2,HF3のプロ―ビング用の回折構造を有するCGH構成体20で置き換えられる。さらに、ミラーMは、鏡面S′がCGH構成体20に面するよう位置決めされる。これは、例えば、ミラーMをCGH構成体20の表面と平行に延びる軸に関して180°回転させることにより達成することができる。このように再位置決めされたミラーMの鏡面S′の測定について、図5を参照して説明する。
【0079】
鏡面Sの測定及び鏡面S′の測定を、CGH構成体20を用いて実行することも同様に可能である。この場合、CGH構成体20は、鏡面Sの測定用の回折構造及び鏡面S′の測定用の回折構造を有し、それぞれに必要な回折構造が確実に照明されるよう留意すべきである。これは、例えば光を部分的に遮断することにより達成することができる。
【0080】
図5は、第2測定ステップを実行中の図4からの測定構成体を概略図で示す。図5において、干渉計IFは、内部構成が図4と変わらないので単に「ブラックボックス」として示してある。干渉計IFのほかに、CGH構成体20及び測定対象のミラーMを図5に示す。図5に示す第2測定ステップ中、測定構成体は図4と事実上変わらないままである。CGH構成体20に対するミラーMの配向だけが、図4に示す第1測定ステップと比較して変わり、ミラーMの後面RSが測定のためにアクセス可能となる。さらに、実施形態の変形に応じて適切であれば、CGH構成体20が他の回折構造を有するCGH構成体20で置き換えられるか、又はCGH構成体20の他の回折構造が確実に照明されるよう留意される。
【0081】
第1測定ステップと同一の方法で、第2測定ステップにおいて、ミラーSが最初に補助表面HF1,HF2,HF3により高確度で配向されるか、又は補助表面HF1,HF2,HF3の実際の位置が、したがってミラーMの実際の位置も高確度で判定される。したがって、第1測定ステップでも用いたのと同じ座標系が第2測定ステップで利用可能である。
【0082】
次に、鏡面S′が、第1測定ステップにおいて鏡面Sで行われた方法と同様に測定される。第2測定ステップの実行後、鏡面Sの形態及び鏡面S′の形態が高精度で把握される。さらに、補助表面HF1,HF2,HF3に対する、したがって同じく相互に対する鏡面Sの位置及び鏡面S′の位置が、それぞれ高精度で把握される。
【0083】
すでに説明したように、2つの測定ステップ中、補助表面HF1,HF2,HF3の正確な位置決めを省き、その代わりに単にそれらの位置を判定することがそれぞれ可能である。しかしながら、この場合、第1測定ステップと第2測定ステップとの間の補助表面HF1,HF2,HF3の位置ずれを、鏡面S及びS′の相互に対する位置の判定時にそれぞれ考慮に入れなければならない。
【0084】
ミラーMの製造において、例えば研削法、研磨法、又はコーティング法等の既知の加工技術により形成した鏡面S,S′は、適切であれば、上記測定法又は後述する変形形態若しくは他の何らかの変形形態により少なくとも1回は試験され再加工される。それ自体が既知の加工技術を再加工時に用いることができる。
【0085】
ミラーMの測定及び再加工は、所望の形態及び所望の位置からの鏡面S,S′の形態及び鏡面S,S′の相互に対する位置の両方のずれが、許容公差以下となるまで繰り返される。これを達成するために、形態に関してまだ公差内にない鏡面S,S′がそれぞれ再加工される。2つの鏡面S,S′間の位置ずれを、鏡面Sの後続加工により、鏡面S′の後続加工により、又は鏡面S,S′両方の後続加工により任意に補正することができる。位置ずれの補正のために再加工すべき鏡面S,S′の選択は、形態ずれの補正要件と結び付けることができる。例として、形態ずれを補正するためにいずれにせよ再加工しなければならない鏡面S又はS′を、位置ずれの補正に用いることができる。位置ずれのための再加工を、形態ずれの補正に必要な各鏡面S,S′の後続加工の範囲に制限することも同様に試みることができる。この手順は、特に、鏡面S,S′の両方を形態ずれの補正のために再加工しなければならず、位置ずれの補正を2つの鏡面S,S′間でどのように分配すべきかを決める必要がある場合に適している。
【0086】
挽回できないか又はできてもかなり複雑である材料除去の過多を回避するために、最初に許容値を用いることができる。2つの鏡面S,S′の所望の形態及び位置に達した場合、鏡面が相互から所望の位置になるまで均一な除去のみが行われる。しかしながら、許容不可能なほど程度の大きな材料除去を材料の塗布により軽減又は排除することも同様に可能である。これは、例えば気相からの材料成長により行うことができる。
【0087】
概説した方法で、ミラーMを、鏡面S,S′それぞれが高精度に具現された形態を有し且つ相互に対して高精度で配向されるよう製造することができ、この場合の相互に対する配向は、角度配向だけでなく相互からの距離も包含する。特に、ミラーMを、投影露光装置で用いられることを可能にする精度で製造することができる。
【0088】
3つ以上の鏡面を有するミラーも同様に製造することができる。
【0089】
形態に関する鏡面S及び鏡面S′の精度は、所望の形態からの実際の形態のずれによりそれぞれ表現することができる。具体的な数値を求めるために、形態ずれを二乗平均平方根値F_RMSとして定義することができ、これは以下の方法で計算することができる。
【0090】
【数1】
【0091】
この場合、Zは、支持点iに関する実際値と所望値との間のずれを表す。支持点iの数はnとして示される。
【0092】
値F_RMSを求める際、支持点密度と鏡面S,S′の形態の最大勾配との整合性をとり、値F_RMSに最大限の有意味性(meaningfulness)が与えられるようにすることを確実にするよう留意すべきである。高い勾配の場合、それに対応して高い支持点密度を提供すべきである。
【0093】
鏡面S,S′の形態に関する許容公差は、超えてはならない値F_RMSの上限により表現することができる。値F_RMSの上限として、例として値1nm又は0.1nmそれぞれを両方の鏡面F及びF′に関して事前規定することができる。
【0094】
用途の要件に応じて、値F_RMSについて同一の又は異なる上限を両方の鏡面S及びS′に関して事前規定することができる。
【0095】
値F_RMSは、所望の形態からのずれから生じる寄与のみを含む。所望の位置からのずれは、値F_RMSに影響を及ぼさない。この分離は、値F_RMSを求める前に実際の形態への所望の形態のフィッティングを行うことにより、位置の影響を排除する、すなわち位置をフィットパラメータとして用いることにより達成することができる。
【0096】
鏡面S,S′の位置は、3つの空間座標及び3つの角度によりそれぞれ規定することができる。したがって、位置ずれは、座標の3つの異なる値及び角度の3つの異なる値によりそれぞれ記述することができ、これらは形態のフィッティングの過程で求めた所望値及び実際値の比較によりそれぞれ判定することができる。この場合、所望値は、例えば補助表面HF1,HF2,HF3を用いて規定することができる任意の座標系に対して事前規定することができる。空間座標の3つの異なる値それぞれから、各変位距離を計算することが可能であり、角度の3つの異なる値それぞれから、各回転角を計算することが可能であり、これらが組み合わさって位置ずれを特徴付ける。これは、変位距離による単一変位と回転角による単一回転との組み合わせにより、実際の位置から所望の位置への移行が行われることを意味する。この場合、変位は、絶対値として変位距離を求めた変位ベクトルの方向に沿って実行すべきである。回転は、角度の種々の値からそれ自体が既知の方法で求めることができる回転軸に対して実行すべきである。
【0097】
説明したようにして、実際の位置と所望の位置との間の位置ずれを、鏡面S及び鏡面S′それぞれで定量的に検出することができる。特に、相互に対する鏡面S及びS′の相対位置は、多くの場合に重要であるから、鏡面Sの位置ずれ及び鏡面S′の位置ずれの代わりに、又はそれらに加えて、鏡面S及び鏡面S′の相互に対する位置ずれを判定することが得策である。これは例えば、鏡面S又はS′の一方について実際の位置が所望の位置と一致するよう座標系を選択することにより可能となる。同じ座標系における他方の鏡面S又はS′の実際の位置のずれは、このとき相対位置ずれに対応する。鏡面S及びS′の相対位置ずれに関する許容公差は、変位距離及び回転角の上限により表現することができる。例として、100nm、10nm、又は1nmを、変位距離の上限として事前規定することができる。例として、100mrad、10mrad、又は1mradを、回転角の上限として事前規定することができる。これは、形態ずれに関する許容公差が位置ずれに関する許容公差よりも大幅に小さいことを意味する。
【0098】
変位距離の代替形態として、例として、位置ずれの評価のために空間座標の種々の値を用いることも可能である。同様に、角度の種々の値を回転角の代わりに用いることができる。数値データを減らすために、この場合は例えば最大値のみをそれぞれ評価する可能性がある。この評価はさらに、すでに述べた大きさを有し得る上限との比較により行うことができる。この変形形態でも、鏡面S及びS′の相対位置ずれが特に対象となる。
【0099】
図4及び図5に示す測定構成体の例示的な実施形態の代替形態として、測定構成体の異なる構成の例示的な実施形態もミラーMの製造に用いることができる。これについて図6図8を参照して以下で説明する。
【0100】
図6は、第1測定ステップを実行中のミラーを測定する測定構成体のさらに別の例示的な実施形態を概略図で示す。図4と同様に、図6に示す測定構成体は、干渉計IF、CGH構成体20、及びミラーMを有する。図4における例示的な実施形態との相違点は、ミラーMの実施形態が異なること、及びミラーMと共に共通のマウント25に取り付けられる追加ミラー24の形態の付加的なコンポーネントがあることにある。図4とは対照的に、図6に示すミラーMは、補助表面HF1,HF2,HF3を有さない。さらに別の相違点は、図6に示すミラーMが光を通すことができる中央切欠部ZOを有することである。さらに、CGH構成体20は図6では傾斜して示されており、これは、例えば干渉計IFに出入りする光ビームがCGH構成体20に対して垂直に指向されなくてもよいことを示すためである。CGH構成体20の傾斜は、反射の妨害の回避に関して有利でさえあり得る。言うまでもなく、CGH構成体20は、図6における測定構成体の傾斜を伴わずに用いることもできる。これを示すために、CGH構成体20は図7では傾斜なしで示されており、図7はその他の点で同じ測定構成体を示す。
【0101】
CGH構成体20から出た試験ビーム26は、ミラーMの前面VSにおける鏡面Sに垂直に衝突してそのまま反射し戻され、すなわちCGH構成体20を通過してから干渉計IFに入る。上記試験ビーム26は、鏡面Sの形態を判定するのに用いられる。
【0102】
さらに、試験ビーム27が図6に示されており、この試験ビームは、CGH構成体20から出て、ミラーMの切欠部ZOを通過してから追加ミラー24に衝突する。追加ミラー24は、ミラーMの後面RSにおける鏡面S′に垂直に衝突するよう試験ビーム27をミラーMの方向に反射する。この目的で、追加ミラー24は曲面を有する。ミラーMの後面RSにおける鏡面S′に衝突する試験ビーム27は、そのまま反射し戻されることで追加ミラー24において新たな反射を引き起こしてから、ミラーMの切欠部ZOを通過する。試験ビーム27は、続いてCGH構成体20を通過して干渉計IFに入る。干渉計IFを用いて、鏡面S′の形態が試験ビーム27から判定される。
【0103】
最後に、第3タイプの試験ビーム28が図6に示されており、この試験ビームは、CGH構成体から出て、ミラーMの切欠部ZOを通過してから追加ミラー24に垂直入射で衝突し、追加ミラー24によりそのまま反射し戻される。反射し戻された試験ビーム28は、ミラーMの切欠部ZOを通過してCGH構成体20を通過してから干渉計IFに入る。干渉計IFを用いて、追加ミラー24の表面の形態を試験ビーム28から判定することができる。追加ミラー24の表面の形状が十分な確度ですでに分かっている場合、試験ビーム28は不要である。
【0104】
ミラーMの鏡面S,S′の形態の判定に加えて、鏡面S,S′の位置の判定が実行される。これについて図7を参照して説明する。
【0105】
図7は、第2測定ステップを実行中のミラーMの測定用の測定構成体の図6に示す例示的な実施形態を概略図で示す。CGH構成体20を除いて、図示のコンポーネントは図6に対応する。ビーム経路のみが図6とは異なる。これは、CGH構成体20が、図6における測定構成体と比較して異なった形で具現される回折構造を有することにより達成される。さらに別の相違点は、図7に示すCGH構成体20が傾斜していないことにある。しかしながら、図7と同様にCGH構成体20を傾斜させることも可能である。
【0106】
試験ビーム29が図7に示されており、CGH構成体20から出たこの試験ビームは、ミラーMの前面における鏡面Sに集束される。
【0107】
試験ビーム30がさらに図示されており、これは、CGH構成体20から出て、ミラーMの切欠部ZOを通過してから追加ミラー24によりミラーMの後面RSにおける鏡面S′の方向に反射され、鏡面S′上で焦点に衝突する。
【0108】
最後に、試験ビーム31も図7に示されており、この試験ビームは、CGH構成体20から出てミラーMの切欠部ZOを通過し、追加ミラー24に集束される。
【0109】
図7に示す試験ビーム29,30,31は全て、CGH構成体20とそれぞれプロ―ビングされた表面上の衝突領域との間の距離を判定することをそれぞれが可能にする。プローブ表面の形態に関する図6により判定した情報と共に、ミラーMの前面VS及び後面RSにおける鏡面S及びS′の相互に対する位置を判定することが可能である。
【0110】
図6及び図7に示す測定構成体の場合の手順が図4及び図5による手順と異なるのは、ミラーの前面VS及び後面RSにおける鏡面S,S′の両方が第1測定ステップにおいて面状に測定され、両方の鏡面S,S′が第2測定ステップにおいて焦点的に測定される点に限る。図4及び図5に示す測定構成体の場合、ミラーの前面VSのミラー面Sが第1測定ステップにおいて面状に且つ焦点的に測定され、ミラーMの後面RSにおける鏡面S′が第2測定ステップにおいて面状に且つ焦点的に測定される。
【0111】
図6及び図7における説明の代替形態として、原理上、試験ビーム27,30をミラーMの周辺でミラーMの後面RSにおける鏡面S′へ指向させることも可能である。この変形形態は、特に、中央切欠部ZOを有さないミラーMの場合に用いることもできる。この変形形態でも、ミラーMの必要な点全てをアクセス可能にするために追加ミラー24を用いることができる。
【0112】
さらに、第1測定ステップ及び第2測定ステップを組み合わせて共通の測定ステップを形成する可能性があり、これは、CGH構成体20に第1測定ステップ及び第2測定ステップの測定に必要な全回折構造が設けられている場合、2つの測定ステップ間で測定構成体を変更する必要がないからである。この場合、特に、全測定を同時に行うことも可能である。
【0113】
第1測定ステップの面状測定を実行し、焦点測定での第2測定ステップをなくすことも同様に可能である。この場合、第2測定ステップにより求めることができる距離情報は、他の何らかの方法で得られる。例として、必要な距離情報は、確度要件により許される限り、レーザ距離測定デバイスを用いて求めることができる。
【0114】
図8は、ミラーMの測定用の測定構成体のさらに別の例示的な実施形態を概略図で示す。図8に示す測定構成体は、CGH構成体20の回折構造が2つのキャリア上に配置される、すなわちCGH構成体20がコンポーネント20a及びコンポーネント20bを有することにより区別される。
【0115】
CGH構成体20のコンポーネント20aは、図8の図ではCGH構成体20のコンポーネント20aに左側から衝突する平面波から一連の試験ビーム32,33,34,35,36,37を発生させる。平面波は、図4に示すのと同様の方法で発生させることができる。
【0116】
試験ビーム32,33,34,35は、ミラーMにおいて反射されてからCGH構成体20のコンポーネント20bに衝突する。この場合、試験ビーム32は焦点において反射され、試験ビーム33はミラーMの前面VSにおける鏡面Sにおいて面状に反射される。試験ビーム34は焦点において反射され、試験ビーム35はミラーMの後面RSにおける鏡面S′において面状に反射される。
【0117】
試験ビーム36,37は、直接、すなわちミラーMにおいて反射されずに、CGH構成体20のコンポーネント20bに至り、CGH構成体20のコンポーネント20a及び20bの相互に対する距離判定、したがって位置決めの役割を果たす。
【0118】
CGH構成体20のコンポーネント20bを通過後、試験ビーム32,33,34,35,36,37は干渉計IFに供給される。基準ビーム(図示せず)が、CGH構成体20のコンポーネント20aの上流で平面波から取り出され、CGH構成体20及びミラーMの周辺で偏向されてから干渉計IFに供給される。干渉計IFは、図4と同様に構成することができるが、ビーム発生コンポーネント(beam-generated components)は、CGH構成体20のコンポーネント20bに隣接して配置されるため省略する。
【0119】
先の例示的な実施形態と同様に、図8でも、面状に反射された試験ビーム33,35が鏡面S及びS′の形態の判定に用いられる。焦点において反射された試験ビーム32,34を加えることにより、鏡面S及びS′の相互に対する位置判定が可能である。しかしながら、先の例示的な実施形態との1つの相違点は、試験ビーム32,33,34,35が鏡面S,S′に垂直にも対称にも衝突せず、したがってそのまま反射し戻されることも相互に反射し戻されることもないことである。
【0120】
測定結果に基づくミラーMの加工を、続いてすでに説明したのと同様の方法で行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8