(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱板は、下方に開口すると共に全ての前記溝部に繋がるように前記板状部の中央に設けられた凹部と、前記凹部の底を貫通する通気孔とを更に有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の基板熱処理装置。
下方に開口すると共に全ての前記溝部に繋がるように前記板状部の中央に設けられた凹部と、前記凹部の底を貫通する通気孔とを更に有する熱板を用いる、請求項6〜8のいずれか一項記載の基板熱処理方法。
基板熱処理装置に、請求項6〜10のいずれか一項記載の基板熱処理方法を実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な基板熱処理用記録媒体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造工程のスループットを向上させるために、上述した基板熱処理装置には、ウェハ(基板)を迅速に加熱することが望まれる。ウェハを迅速に加熱するには、加熱時においてウェハと熱板とをより接近させる必要がある。しかしながら、ウェハと熱板とを接近させ過ぎると、ウェハの裏面及び熱板の上面の微小なうねりに起因して、ウェハと熱板との部分的な接触が生じるおそれがある。このような部分的な接触を防止するために、ウェハと熱板との間隔は余裕をもった大きさに設定される必要がある。
【0005】
特に、近年の半導体製造には大型のウェハが用いられる傾向がある。大型のウェハにおいては裏面のうねりがより大きくなる。また、ウェハに対応して大型化する熱板においても上面のうねりがより大きくなる。更に、大型化に伴う加熱速度の低下を抑制するために、熱板は大型化に応じて薄型化される傾向がある。この薄型化により、熱板の上面のうねりはより一層大きくなる。このため、ウェハが大型化されると、ウェハと熱板との間隔をより大きく設定する必要がある。
【0006】
従って、加熱時においてウェハと熱板とを接近させるのには限界があり、基板の加熱の迅速化を図ることは難しかった。そこで本発明は、基板を迅速に加熱できる装置、方法及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る基板熱処理装置は、基板の熱処理を行う装置であって、水平に配置された基板の表面に間隙をもって対向する可撓性の板状部と、板状部の下面に設けられ、平面視で板状部の中央から周縁に向けて延びる渦巻状の複数の溝部とを有する熱板と、基板又は熱板を回転させる回転機構と、基板又は熱板を昇降させる昇降機構と、溝部が板状部の中央から延出する方向に、熱板が基板に対して相対的に回転するように、回転機構を制御すると共に、基板と熱板とを接近させるように昇降機構を制御する制御部とを備える。
【0008】
この基板熱処理装置においては、基板又は熱板を回転させるように回転部が制御されると共に、基板と熱板とを接近させるように昇降部が制御される。基板又は熱板の回転に伴い、基板から見て、溝部が板状部の中央から延出する方向に熱板が回転する。これにより、熱板の周囲のガスが溝部内に引き込まれ、熱板と基板との間に集まる。熱板と基板との間に集まったガスにより、熱板と基板との接触が防止される。また、熱板の板状部は可撓性であるため、基板に接近した熱板は基板の表面に倣って撓む。これらのことから、熱板と基板との接触を防止しつつ、熱板と基板とを十分に接近させることができる。従って、基板を迅速に加熱できる。
【0009】
また、熱板の板状部が可撓性であることは、熱板の温度制御の高速化にも寄与する。すなわち、熱板の板状部を剛体化する必要がないため、熱板の薄型化が可能である。熱板を薄型化することにより、熱板の熱容量を大幅に低減し、熱板の温度制御の高速化を図ることができる。
【0010】
回転機構が熱板を回転させる場合、熱板が回転することにより、溝部内のガスが熱板の中央に導かれ、熱板の周囲のガスが溝部内に引き込まれる。このため、熱板の周囲のガスを熱板と基板との間に集め、熱板と基板とを離間した状態に保つことができる。
【0011】
回転機構が基板を回転させる場合、基板の回転に伴って、基板と熱板との間のガスが基板の回転方向に流動する。これに伴い、溝部内のガスが熱板の中央に導かれ、熱板の周囲のガスが溝部内に引き込まれる。このため、熱板を回転させる場合と同様に、熱板の周囲のガスを熱板と基板との間に集め、熱板と基板とを離間した状態に保つことができる。なお、熱板には、内蔵のヒータ又はセンサ用等のケーブルを接続する必要があるのに対し、基板にはこれらを接続する必要がない。このため、基板を回転させる場合、熱板を回転させるのに比べ装置の構成を単純化できる。
【0012】
熱板は、下方に開口すると共に全ての溝部に繋がるように板状部の中央に設けられた凹部と、凹部の底を貫通する通気孔とを更に有してもよい。この場合、熱板と基板との間に集まるガスを通気孔に通して熱板の上方へ逃がすことにより、熱板と基板との隙間を小さく保つことができる。従って、基板をより迅速に加熱できる。
【0013】
熱板は、通気孔の絞り部と、基板と熱板との間の気圧を計測する圧力計とを更に有し、制御部は、気圧が高くなるのに応じて通気孔の開口面積を大きくするように、更に絞り部を制御してもよい。この場合、基板と熱板との間の気圧を安定化することにより、基板と熱板との間隔を安定化できる。
【0014】
本発明に係る基板熱処理方法は、基板の熱処理を行う方法であって、水平に配置された基板の表面に間隙をもって対向する可撓性の板状部と、板状部の下面に設けられ、平面視で板状部の中央から周縁に向けて延びる渦巻状の複数の溝部とを有する熱板を用い、溝部が板状部の中央から延出する方向に熱板が基板に対して相対的に回転するように、基板又は熱板を回転させると共に、基板と熱板とを接近させる加熱工程を備える。
【0015】
この基板熱処理方法においては、基板又は熱板を回転させると共に、基板と熱板とを接近させる。基板又は熱板の回転に伴い、基板から見て、溝部が板状部の中央から延出する方向に熱板が回転する。これにより、熱板の周囲のガスが溝部内に引き込まれ、熱板と基板との間に集まる。熱板と基板との間に集まったガスにより、熱板と基板との接触が防止される。また、熱板の板状部は可撓性であるため、基板に接近した熱板は基板の表面に倣って撓む。これらのことから、熱板と基板との接触を防止しつつ、熱板と基板とを十分に接近させることができる。従って、基板を迅速に加熱できる。
【0016】
また、板状部が可撓性の熱板を用いることは、熱板の温度制御の高速化にも寄与する。すなわち、熱板の板状部を剛体化する必要がないため、熱板の薄型化が可能である。熱板を薄型化することにより、熱板の熱容量を大幅に低減し、熱板の温度制御の高速化を図ることができる。
【0017】
熱板を回転させる場合、熱板が回転することにより、溝部内のガスが熱板の中央に導かれ、熱板の周囲のガスが溝部内に引き込まれる。このため、熱板の周囲のガスを熱板と基板との間に集め、熱板と基板とを離間した状態に保つことができる。
【0018】
基板を回転させる場合、基板の回転に伴って、基板と熱板との間のガスが基板の回転方向に流動する。これにより、溝部内のガスが熱板の中央に導かれ、熱板の周囲のガスが溝部内に引き込まれる。このため、熱板を回転させる場合と同様に、熱板の周囲のガスを熱板と基板との間に集め、熱板と基板とを離間した状態に保つことができる。なお、熱板には、内蔵のヒータ又はセンサ用等のケーブルを接続する必要があるのに対し、基板にはこれらを接続する必要がない。このため、基板を回転させる場合、熱板を回転させるのに比べ装置の構成を単純化できる。
【0019】
下方に開口すると共に全ての溝部に繋がるように板状部の中央に設けられた凹部と、凹部の底を貫通する通気孔とを更に有する熱板を用いてもよい。この場合、熱板と基板との間に集まるガスを通気孔に通して熱板の上方へ逃がすことにより、熱板と基板との隙間を小さく保つことができる。従って、基板をより迅速に加熱できる。
【0020】
加熱工程において、基板と熱板との間の気圧が高くなるのに応じて通気孔の開口面積を大きくしてもよい。この場合、基板と熱板との間の気圧を安定化することにより、基板と熱板との間隔を安定化できる。
【0021】
本発明に係る基板熱処理用記録媒体は、基板熱処理装置に、請求項6〜10のいずれか一項記載の基板熱処理方法を実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能なものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る装置、方法及び記録媒体によれば、基板を迅速に加熱できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る基板熱処理装置の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
<第1実施形態>
第1実施形態の基板熱処理装置2は、基板の一種であるウェハの塗布・現像装置において、ウェハの熱処理を行う装置である。
【0026】
(塗布・現像装置)
まず、本実施形態の基板熱処理装置が適用される塗布・現像装置の一例について説明する。
図1〜
図3に示すように、塗布・現像装置1は、キャリアブロックS1と、キャリアブロックS1に隣接する処理ブロックS2と、処理ブロックS2に隣接するインターフェースブロックS3とを備える。以下、塗布・現像装置1の説明における「前後左右」は、インターフェースブロックS3側を前側、キャリアブロックS1側を後側とした方向を意味するものとする。
【0027】
キャリアブロックS1は、キャリアステーション12と、搬入・搬出部13とを有する。キャリアステーション12は、複数のキャリア11を支持する。キャリア11は、複数枚のウェハWを密封状態で収容し、キャリアステーション12上に着脱自在に設置される。キャリア11は、ウェハWを出し入れするための開閉扉(不図示)を一側面11a側に有する。搬入・搬出部13は、キャリアステーション12上の複数のキャリア11にそれぞれ対応する複数の開閉扉13aを有する。搬入・搬出部13は、受け渡しアームA1を内蔵している。受け渡しアームA1は、キャリアステーション12に設置されたキャリア11からウェハWを取り出して処理ブロックS2に渡し、処理ブロックS2からウェハWを受け取ってキャリア11内に戻す。
【0028】
処理ブロックS2は、下層反射防止膜形成(BCT)ブロック14と、レジスト膜形成(COT)ブロック15と、上層反射防止膜形成(TCT)ブロック16と、現像処理(DEV)ブロック17とを有する。これらのブロックは、床面側からDEVブロック17、BCTブロック14、COTブロック15、TCTブロック16の順に積層されている。
【0029】
BCTブロック14は、反射防止膜形成用の薬液の塗布ユニット(不図示)と、加熱・冷却ユニット(不図示)と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA2とを内蔵しており、ウェハWの表面上に下層の反射防止膜を形成する。COTブロック15は、レジスト膜形成用の薬液の塗布ユニット(不図示)と、加熱・冷却ユニット(不図示)と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵しており、下層の反射防止膜の上にレジスト膜を形成する。TCTブロック16はBCTブロック14と同様に、塗布ユニットと、加熱・冷却ユニットと、搬送アームA4とを内蔵しており、レジスト膜の上に上層の反射防止膜を形成する。
【0030】
DEVブロック17は、複数の現像処理ユニットU1と、複数の加熱・冷却ユニットU2と(
図3参照)、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA5と、これらのユニットを経ずに処理ブロックS2の前後間でウェハWを搬送する直接搬送アームA6とを内蔵しており、露光されたレジスト膜の現像処理を行う。本実施形態の基板熱処理装置2は、加熱・冷却ユニットU2として用いられる。
【0031】
処理ブロックS2の後側には棚ユニットU3が設けられている。棚ユニットU3は、床面からTCTブロック16に亘るように設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルC30〜C38に区画されている。棚ユニットU3の近傍には、昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、セルC30〜C38間でウェハWを搬送する。処理ブロックS2の前側には棚ユニットU4が設けられている。棚ユニットU4は、床面からDEVブロック17の上部に亘るように設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルC40〜C42に区画されている。
【0032】
インターフェースブロックS3は、露光装置E1に接続される。インターフェースブロックS3は、受け渡しアームA8を内蔵している。受け渡しアームA8は、処理ブロックS2の棚ユニットU4から露光装置E1にウェハWを渡し、露光装置E1からウェハWを受け取り棚ユニットU4に戻す。
【0033】
このような塗布・現像装置1では、まず、複数のウェハWを収容したキャリア11がキャリアステーション12に設置される。このとき、キャリア11の一側面11aは搬入・搬出部13の開閉扉13aに向けられる。次に、キャリア11の開閉扉と搬入・搬出部13の開閉扉13aとが共に開放され、受け渡しアームA1により、キャリア11内のウェハWが取り出され、処理ブロックS2の棚ユニットU3のいずれかのセルに順次搬送される。
【0034】
受け渡しアームA1により棚ユニットU3のいずれかのセルに搬送されたウェハWは、昇降アームA7により、BCTブロック14に対応するセルC33に順次搬送される。セルC33に搬送されたウェハWは、搬送アームA2によってBCTブロック14内の塗布ユニット及び加熱・冷却ユニットに搬送され、このウェハWの表面上に下層反射防止膜が形成される。
【0035】
下層反射防止膜が形成されたウェハWは、搬送アームA2によってセルC33の上のセルC34に搬送される。セルC34に搬送されたウェハWは、昇降アームA7によって、COTブロック15に対応するセルC35に搬送される。セルC35に搬送されたウェハWは、搬送アームA3によりCOTブロック15内の各ユニットに搬送され、このウェハWの下層反射防止膜の上にレジスト膜が形成される。
【0036】
レジスト膜が形成されたウェハWは、搬送アームA3によってセルC35の上のセルC36に搬送される。セルC36に搬送されたウェハWは、昇降アームA7によって、TCTブロック16に対応するセルC37に搬送される。セルC37に搬送されたウェハWは、搬送アームA4によってTCTブロック16内の各ユニットに搬送され、このウェハWのレジスト膜の上に上層反射防止膜が形成される。
【0037】
上層反射防止膜が形成されたウェハWは、搬送アームA4によってセルC37の上のセルC38に搬送される。セルC38に搬送されたウェハWは、昇降アームA7によって直接搬送アームA6に対応するセルC32に搬送され、直接搬送アームA6によって棚ユニットU4のセルC42に搬送される。セルC42に搬送されたウェハWは、インターフェースブロックS3の受け渡しアームA8により露光装置E1に渡され、レジスト膜の露光処理が行われる。露光処理後のウェハWは、受け渡しアームA8によりセルC42の下のセルC40,C41に搬送される。
【0038】
セルC40,C41に搬送されたウェハWは、搬送アームA5により、DEVブロック17内の各ユニットに搬送され、レジスト膜の現像処理が行われる。DEVブロック17において、加熱・冷却ユニットU2は、例えばポストエクスポージャベーク処理、ポストベーク処理等の熱処理を行う。ポストエクスポージャベーク処理は、現像処理前にウェハWを加熱・冷却する処理である。ポストベーク処理は、現像処理後にウェハWを加熱・冷却する処理である。
【0039】
現像処理後のウェハWは、搬送アームA5により、棚ユニットU3のうちDEVブロック17に対応したセルC30,C31に搬送される。セルC30,C31に搬送されたウェハWは、受け渡しアームA1がアクセス可能なセルに昇降アームA7によって搬送され、受け渡しアームA1によってキャリア11内に戻される。
【0040】
なお、塗布・現像装置1の構成は一例に過ぎない。塗布・現像装置は、塗布ユニット、現像処理ユニット等の液処理ユニットと、加熱・冷却ユニット等の前処理・後処理ユニットと、搬送装置とを備えるものであればよく、これら各ユニットの個数や種類、レイアウト等は適宜変更可能である。また、基板熱処理装置2を、BCTブロック14、COTブロック15又はTCTブロック16の加熱・冷却ユニットとして用いてもよいし、全てのブロック14,15,16,17の加熱・冷却ユニットとして用いてもよい。
【0041】
(基板熱処理装置)
続いて、基板熱処理装置2について詳細に説明する。
図4に示すように、基板熱処理装置2は、筐体20と、冷却板30と、冷却板移送機構50と、熱板40と、熱板回転機構60と、基板昇降機構70と、制御部21とを備える。筐体20は、冷却処理空間R1と加熱処理空間R2とを内部に有する。冷却処理空間R1と加熱処理空間R2とは水平方向で隣接している。以下、基板熱処理装置2の説明における「前後」は、加熱処理空間R2側を前側、冷却処理空間R1側を後側とした方向を意味する。
【0042】
冷却板30は、冷却処理空間R1内で水平に配置されており、ウェハWの裏面Wbに対向してウェハWを冷却する(
図5参照)。冷却板30内には、冷却水を通す流水路(不図示)が形成されている。冷却板移送機構50は、冷却板30の下方に配置され、筐体20に固定されている。冷却板移送機構50は、上方に突出する移動体50aを有しており、前後方向に沿って移動体50aを移送する。移動体50aの先端部は、冷却板30の中心CL1の後方に位置し、冷却板30の下面の周縁部に固定されている。すなわち、冷却板移送機構50は、冷却板30を前後方向に沿って移送する。冷却板30の移送範囲は、加熱処理空間R2内に亘っている。なお、冷却板30には、前後方向に沿う複数のスリット30aが形成されている。各スリット30aは前方に開いており、加熱処理空間R2において後述の支持ピン71b及び基板保持部76を前方から受け入れる。
【0043】
熱板40は、加熱処理空間R2内で水平に配置されている。熱板40は、冷却板30に比べ上方に位置しており、上下方向において冷却板30と離間している。
図5及び
図6に示すように、熱板40は、板状部41と、複数の溝部41aとを有する。
【0044】
板状部41は可撓性であり、平面視で円形を呈する。板状部41の材料としては、例えばポリイミド樹脂、ガラス、セラミック又は表面を絶縁性材料等で被覆した金属(例えばステンレス又はアルミ)等が挙げられる。板状部41の厚さTは、板状部41に所望の可撓性を付与できる範囲であればよく、材質に応じて適宜設定される。板状部41がポリイミド樹脂からなる場合、板状部41の厚さは例えば0.2〜1.0mmである。板状部41の直径は、ウェハWの直径以上であればよい。ウェハWの直径が300mmである場合、板状部41の直径は例えば300〜330mmである。ウェハWの直径が450mmである場合、板状部41の直径は例えば450〜495mmである。板状部41の上面には、例えばステンレス箔からなるシート状のヒータ42が貼り合わされている。ヒータ42には、給電ケーブル43が接続されている。ヒータ42の上には温度センサ44が取り付けられており、温度センサ44には、信号ケーブル45が接続されている。
【0045】
複数の溝部41aは、板状部41の下面に形成されており、それぞれ平面視で板状部41の中央から周縁に向けて延びる渦巻状を呈している。例えば、溝部41aは、板状部41の周縁との交点において、板状部41の周縁の接線と所定の角度θをなす。また、板状部41の周縁と同心である任意の円CR1との交点においても、円CR1の接戦と角度θをなす。角度θは、例えば20〜60°である。溝部41aの本数は、例えば20〜80本である。溝部41aの深さは、例えば0.02〜0.1mmである。
【0046】
また、板状部41の下面の中央には凹部41bが形成されている。凹部41bは、全ての溝部41aに繋がっている。凹部41b内には、凹部41bの底を貫通する通気孔41cが形成されている。すなわち、熱板40は、下方に開口すると共に全ての溝部41aに繋がるように板状部41の中央に設けられた凹部41bと、凹部41bの底を貫通する通気孔41cとを更に有する。通気孔41cには、排気チューブ46が接続されている。
【0047】
図4に示すように、熱板回転機構60は、本体61と、回転体62と、複数のスポーク63と、回転体駆動機64とを有する。本体61は、熱板40の中心の上方に位置して筐体20に固定されている。回転体62は、例えば磁力により本体61の下に取り付けられており、鉛直な軸線CL2を中心に回転自在となっている。複数のスポーク63は、回転体62の周面から放射状に突出すると共に、下方に傾斜している。スポーク63の先端部は、熱板40の上面の周縁部に固定されている。これにより、熱板40は、軸線CL2を中心に回転自在となっている。板状部41が可撓性であるため、熱板40は、スポーク63により周縁部を保持された状態で自重により中央部が低くなるように撓む。回転体駆動機64は、例えば電動モータであり、本体61に隣接して筐体20に固定されている。回転体駆動機64は、ギア等を介して回転体62を回転させる。すなわち、熱板回転機構60は、軸線CL2を中心に熱板40を回転させる。
【0048】
図7に示すように、回転体62の周縁部と本体61の周縁部との間には、複数の球体65が介在している。回転体62の周縁部の上面には複数の球体65をそれぞれ収容する複数の球体用凹部62aが形成されている(
図8参照)。複数の球体用凹部62aは周方向に沿って配置されている。本体61の周縁部の下面には複数の球体65を収容する円環状の球体用溝部61aが形成されている。複数の球体用凹部62aにそれぞれ収容された球体65が球体用溝部61aに沿って転がることにより、本体61に対する回転体62の回転が円滑化される。
【0049】
回転体62の中心には、軸線CL2に沿って上下に開口する通気孔62bが形成されている。通気孔62bの下端部には、排気チューブ46が接続される。回転体62の上面には、複数の接続端子62c,62dが設けられている。接続端子62c,62dは、それぞれ軸線CL2を中心とする環状を呈し、通気孔62bを囲んでいる。接続端子62cには給電ケーブル43が接続され、接続端子62dには信号ケーブル45が接続されている。
【0050】
本体61には、通気孔62bに連通すると共に筐体20の外部に連通する通気孔61bが形成されている。本体61の下面には、複数の接続端子61c,61dが設けられている。接続端子61c,61dは、それぞれ制御部21に接続されると共に下方に突出しており、接続端子62c,62dにそれぞれ接触する。接続端子61c,61dと接続端子62c,62dとの接触により、ヒータ42及び温度センサ44と制御部21とが接続される。接続端子62c,62dが軸線CL2を中心とする環状を呈することから、回転体62が回転しても接続端子62c,62dと接続端子61c,61dとの接触が維持される。
【0051】
なお、回転体62と本体61とを連結するために必ずしも磁力を用いなくてもよい。
図9は、磁力を用いずに回転体62と本体61とを連結する構造の例を示している。
図9において、回転体62の上部には、本体61を囲む筒状部62eが形成されている。本体61の下端部の外周には、筒状部62e側に突出する環状凸部61fが形成されている。筒状部62eの上端部の内周には、環状凸部61fの上方において本体61側に突出する環状凸部62fが形成されている。環状凸部62fが環状凸部61fに引っ掛ることで、回転体62と本体61とが連結されている。
【0052】
環状凸部61fと環状凸部62fとの間には、複数の球体65が介在している。環状凸部61fの上面には複数の球体65をそれぞれ収容する複数の球体用凹部61gが形成されている。複数の球体用凹部61gは周方向に沿って配置されている。環状凸部62fの下面には複数の球体65を収容する円環状の球体用溝部62gが形成されている。複数の球体用凹部61gにそれぞれ収容された球体65が球体用溝部62gに沿って転がることにより、本体61に対する回転体62の回転が円滑化される。
【0053】
図4に示すように、基板昇降機構70は、昇降体71と、昇降体駆動機72とを有する。昇降体71は、熱板40の下方に水平に配置された昇降板71aと、昇降板71aから上方に突出した3本の支持ピン71bとを有する。なお、
図4中には、2本の支持ピン71bのみを図示している。支持ピン71bの本数は4本以上であってもよい。それぞれの支持ピン71bの先端部には、ウェハWを真空吸着等により保持する基板保持部76が設けられている。昇降体駆動機72は、例えばエアシリンダーであり、上方に突出した昇降ロッド72aを有する。昇降体駆動機72は、昇降体71の下方に位置して筐体20に固定されており、昇降ロッド72aの先端部が昇降板71aの下面に固定されている。昇降体駆動機72は、昇降ロッド72aを昇降させることで昇降体71を昇降させる。昇降体71の昇降に伴って、基板保持部76は、冷却板30の上面より下から熱板40の近傍に亘る範囲で昇降する。
【0054】
制御部21は制御用のコンピュータであり、熱処理条件の設定画面を表示する表示部(不図示)と、熱処理条件を入力する入力部(不図示)と、コンピュータ読み取り可能な記録媒体からプログラムを読み取る読取部(不図示)とを有する。記録媒体には、制御部21にウェハWの熱処理を実行させるプログラムが記録されており、このプログラムが制御部21の読取部によって読み取られる。記録媒体としては、例えば、ハードディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、メモリカード等が挙げられる。制御部21は、入力部に入力された熱処理条件と、読取部により読み取られたプログラムとに応じて、冷却板30、熱板40、冷却板移送機構50、基板昇降機構70、熱板回転機構60を制御することでウェハWの熱処理を実行する。
【0055】
以下、
図10〜13を参照し、制御部21により実行される熱処理について説明する。まず、制御部21は、冷却板30の温度及び熱板40の温度を制御する。この状態でウェハWが筐体20内に搬入され、冷却板30上に載置される(
図10参照)。制御部21は、冷却板30上にウェハWが載置された状態を保つことによりウェハWを冷却する(第1の冷却工程)。
【0056】
次に、制御部21は、基板保持部76の上端が冷却板30の上面より下に位置する状態で、冷却板30を加熱処理空間R2内に移送するように冷却板移送機構50を制御し、冷却板30上のウェハWを熱板40の下方に配置する(
図11参照)。支持ピン71b及び基板保持部76は冷却板30のスリット30a内に受け入れられるため、冷却板30は支持ピン71b及び基板保持部76に妨げられることなく加熱処理空間R2内に進入する。
【0057】
次に、制御部21は、熱板回転機構60を制御して熱板40を回転させる。このとき、熱板40の回転方向は、溝部41aが板状部41の中央から延出する方向に設定される。すなわち、制御部21は、溝部41aが板状部41の中央から延出する方向に、熱板40がウェハWに対して相対的に回転するように熱板回転機構60を制御する。ウェハWを熱板40の下方に配置するのと同時に、又はそれより前に熱板40の回転を開始してもよい。熱板40の回転速度は、例えば100〜1000rpmである。
【0058】
次に、制御部21は、基板昇降機構70を制御して昇降体71を上昇させる(
図12参照)。基板保持部76がウェハWに当接すると、制御部21は、基板保持部76にウェハWを吸着させると共に、更に昇降体71を上昇させるように基板昇降機構70を制御する。これにより、ウェハWが熱板40に接近する。すなわち、制御部21は、ウェハWと熱板40とを接近させるように基板昇降機構70を制御する。
【0059】
溝部41aが板状部41の中央から延出する方向に熱板40が回転しているので、溝部41a内のガスが熱板40の中央に導かれ、熱板40の周囲のガスが溝部41a内に引き込まれる。このため、熱板40の周囲のガスが熱板40とウェハWとの間に集まる。熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40とウェハWとの接触が防止される。中央が低くなるように撓んでいた熱板40は、ガスを介してウェハWに押し上げられ、平板状になる。また、ウェハWは基板保持部76に吸着されているため、ガスの流動に伴うウェハWの位置ずれが確実に防止される。
【0060】
ウェハWの高さが目標高さに達すると、制御部21は、昇降体71の上昇を停止させるように基板昇降機構70を制御する。ウェハWの目標高さは、熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40を支持し得る浮力が発生するように設定される。次に、制御部21は、冷却板30を冷却処理空間R1に戻すように冷却板移送機構50を制御し(
図13参照)、ウェハWと熱板40とが接近した状態を保つことでウェハWを加熱する(加熱工程)。
【0061】
上述したように、熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40とウェハWとの接触が防止される。また、熱板40の板状部41が可撓性であるため、ウェハWの表面Waに微少なうねりが生じている場合であっても、熱板40はウェハWの表面Waに倣って撓む。これらのことから、熱板40とウェハWとの接触を防止しつつ、熱板40とウェハWとを十分に接近させることができる。従って、ウェハWを迅速に加熱できる。
【0062】
熱板40の板状部41が可撓性であることは、熱板40の温度制御の高速化にも寄与する。すなわち、熱板40の板状部41を剛体化する必要がないため、熱板40の薄型化が可能である。熱板40を薄型化することにより、熱板40の熱容量を大幅に低減し、熱板40の温度制御の高速化を図ることができる。
【0063】
熱板40の回転により、熱板40とウェハWとの間に集まったガスは、通気孔41cを通って熱板40の上方に流れ、排気チューブ46、通気孔62b,61bを通って筐体20の外に排出される。ガスを通気孔41cに通して熱板40の上方へ逃がすことにより、熱板40とウェハWとの隙間を小さく保つことができる。従って、ウェハWをより迅速に加熱できる。
【0064】
通気孔41cからガスが流出することにより、熱板40とウェハWとの間にガスの流れが生じる。これにより、熱板40とウェハWとの間を換気できる。また、熱板40とウェハWとの隙間は小さく保たれるので、熱板40とウェハWとの間の換気を迅速に行うことができる。これらの特性を利用し、熱板40とウェハWとの間にパージ用又は疎水化処理用等のガスを供給することもできる。
【0065】
ウェハWの上方に高温の熱板40を配置しているので、ウェハWからの気化物の凝縮又は凝固が抑制される。このため、ウェハWからの気化物の付着を抑制することができる。
【0066】
ウェハWの加熱が完了すると、制御部21は、冷却板30を加熱処理空間R2内に再度移送するように冷却板移送機構50を制御する(
図12参照)。次に、制御部21は、ウェハWを下降させると共に、基板保持部76によるウェハWの吸着を解除ように基板昇降機構70を制御する。基板保持部76の上端が冷却板30の上面より下に下降すると、ウェハWが冷却板30上に載置される(
図11参照)。制御部21は、冷却板30を冷却処理空間R1内に戻すように冷却板移送機構50を制御し(
図10参照)、冷却板30上にウェハWが載置された状態を保つことによりウェハWを冷却する(第2の冷却工程)。以上でウェハWの熱処理が完了し、ウェハWが筐体20内から搬出される。
【0067】
<第2実施形態>
第2実施形態である基板熱処理装置2Aは、熱板40を回転させ、ウェハWを昇降させるのに代えて、ウェハWを回転させ、熱板40を昇降させる点で、基板熱処理装置2と異なる。
図14に示すように、基板熱処理装置2Aは、基板熱処理装置2と同様の筐体20、冷却板30、冷却板移送機構50及び熱板40を備えると共に、基板昇降機構70Aと、基板回転機構80と、熱板昇降機構60Aと、制御部21Aとを備える。
【0068】
基板昇降機構70Aは、昇降体73と、昇降体駆動機74とを有する。昇降体73は、昇降体71と同様に昇降板73aと支持ピン73bとを有するが、昇降体73の支持ピン73bの先端部には基板保持部76が設けられていない。昇降体駆動機74は、昇降体駆動機72と同様に例えばエアシリンダーであり、昇降ロッド74aを有する。昇降体駆動機74は、昇降板73aの周縁部の下方に配置され、昇降ロッド74aの先端部は昇降板73aの下面の周縁部に固定されている。
【0069】
基板回転機構80は、例えば電動モータであり、上方に突出する回転軸80aを有する。回転軸80aの先端部には、真空吸着等によりウェハWを吸着する基板保持部81が設けられている。基板回転機構80は昇降板73aの中心の下方に配置されており、回転軸80aは昇降板73aを貫通している。基板保持部81の上端は、冷却板30の上面より下に位置する。基板昇降機構70Aが昇降体73を最も下降させたときに、基板保持部81の上端は支持ピン73bの先端より上に位置する。なお、回転軸80a及び基板保持部81も、冷却板30のスリット30aに受け入れられる。
【0070】
熱板昇降機構60Aは、昇降体66と、複数のスポーク63と、昇降体駆動機67とを有する。昇降体66は、熱板40の中心の上方に位置する。複数のスポーク63は、昇降体66の下端部から放射状に突出すると共に下方に傾斜しており、それぞれのスポーク63の先端部は熱板40の周縁部に固定されている。板状部41が可撓性であるため、熱板40は、スポーク63により周縁部を保持された状態で自重により中央部が低くなるように撓む。昇降体66には、制御部21Aに接続された複数の接続端子(不図示)と、筐体20の外部に連通する通気孔(不図示)とが設けられている。給電ケーブル43及び信号ケーブル45は、昇降体66の複数の接続端子にそれぞれ接続され、排気チューブ46は昇降体66の通気孔に接続されている。
【0071】
昇降体駆動機67は、例えばエアシリンダーであり、上方に突出する昇降ロッド67aを有する。昇降体駆動機67は、平面視で熱板40の周縁部に位置しており、昇降ロッド67aは熱板40の周囲を通って上方に突出している。昇降ロッド67aは熱板40の上方において熱板40の中心側に折れ曲がっており、昇降ロッド67aの先端部は昇降体66に固定されている。昇降体駆動機67は、昇降ロッド67aを昇降させることで昇降体66を昇降させる。すなわち、熱板昇降機構60Aは、熱板40を昇降させる。
【0072】
制御部21Aは、制御部21と同様のコンピュータであり、入力部に入力された熱処理条件と、読取部により記録媒体から読み取られたプログラムとに応じて、冷却板30、熱板40、冷却板移送機構50、基板昇降機構70A、基板回転機構80及び熱板昇降機構60Aを制御することでウェハWの熱処理を実行する。
【0073】
以下、
図15〜18を参照して制御部21Aにより実行される熱処理について説明する。まず、制御部21Aは、制御部21と同様に冷却板30の温度及び熱板40の温度を制御してウェハWの搬入を待機する。この状態でウェハWが筐体20内に搬入され、冷却板30上に載置される。制御部21Aは、冷却板30上にウェハWが載置された状態を保つことによりウェハWを冷却する(第1の冷却工程)。
【0074】
次に、制御部21Aは、昇降体73の支持ピン73bの先端が冷却板30の上面より下に位置する状態で、冷却板30を加熱処理空間R2内に移送するように冷却板移送機構50を制御し、冷却板30上のウェハWを熱板40の下方に配置する(
図15参照)。支持ピン73b、回転軸80a及び基板保持部81は冷却板30のスリット30a内に受け入れられるため、冷却板30は支持ピン73b、回転軸80a及び基板保持部81に妨げられることなく加熱処理空間R2内に進入する。
【0075】
次に、制御部21Aは、昇降体73を上昇させるように基板昇降機構70Aを制御する(
図16参照)。ウェハWが支持ピン73bにより押し上げられて冷却板30から離間すると、制御部21Aは昇降体73の上昇を停止させるように基板昇降機構70Aを制御し、冷却板30を冷却処理空間R1に戻すように冷却板移送機構50を制御する。次に、制御部21Aは、昇降体73を下降させるように基板昇降機構70Aを制御してウェハWを基板保持部81上に載置し(
図17参照)、基板保持部81によりウェハWを吸着させるように基板回転機構80を制御する。
【0076】
次に、制御部21Aは、基板回転機構80を制御してウェハWを回転させる。このとき、ウェハW側から見て、溝部41aが板状部41の中央から延出する方向に熱板40が回転するように、ウェハWの回転方向が設定される。すなわち、制御部21Aは、溝部41aが板状部41の中央から延出する方向に、熱板40がウェハWに対して相対的に回転するように、基板回転機構80を制御する。ウェハWの回転速度は、例えば100〜1000rpmである。
【0077】
次に、制御部21Aは、熱板昇降機構60Aを制御して熱板40を下降させる(
図18参照)。これにより、熱板40がウェハWに接近する。すなわち、制御部21Aは、ウェハWと熱板40とを接近させるように熱板昇降機構60Aを制御する。ウェハWの回転に伴って、ウェハWと熱板40との間のガスがウェハWの回転方向に流動する。これに伴い、溝部41a内のガスが熱板40の中央に導かれ、熱板40の周囲のガスが溝部41a内に引き込まれる。このため、熱板40を回転させる場合と同様に、熱板40の周囲のガスが熱板40とウェハWとの間に集まる。熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40とウェハWとの接触が防止される。中央が低くなるように撓んでいた熱板40は、ガスを介してウェハWに押し上げられ、平板状になる。
【0078】
熱板の高さが目標高さに達すると、制御部21Aは、熱板40の下降を停止させるように熱板昇降機構60Aを制御する。熱板40の目標高さは、熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40を支持し得る浮力が発生するように設定される。制御部21Aは、ウェハWと熱板40とが接近した状態を保つことでウェハWを加熱する(加熱工程)。
【0079】
基板熱処理装置2Aにおいても、基板熱処理装置2と同様の効果が得られる。更に、熱板40には給電ケーブル43、信号ケーブル45及び排気チューブ46が接続されるのに対し、ウェハWにはこれらを接続する必要がない。このため、ウェハWを回転させる場合、熱板40を回転させるのに比べ装置の構成を単純化できる。
【0080】
ウェハWの加熱が完了すると、制御部21Aは、熱板40を上昇させるように熱板昇降機構60Aを制御する。次に、制御部21Aは、ウェハWの回転を停止させた後に、基板保持部81によるウェハWの吸着を解除するように基板回転機構80を制御し、昇降体73を上昇させるように基板昇降機構70Aを制御する。ウェハWが支持ピン73bにより押し上げられて冷却板30の上面より上に達すると、制御部21Aは、昇降体73の上昇を停止させるように基板昇降機構70Aを制御する。次に、制御部21Aは、冷却板30を加熱処理空間R2に移送するように冷却板移送機構50を制御し、冷却板30をウェハWの下に配置する(
図16参照)。次に、制御部21Aは、昇降体73を下降させるように基板昇降機構70Aを制御してウェハWを冷却板30上に載置する(
図15参照)。制御部21Aは、冷却板30を冷却処理空間R1内に戻すように冷却板移送機構50を制御し、冷却板30上にウェハWが載置された状態を保つことによりウェハWを冷却する(第2の冷却工程)。以上でウェハWの熱処理が完了し、ウェハWが筐体20内から搬出される。
【0081】
<第3実施形態>
第3実施形態である基板熱処理装置2Bは、熱板40と冷却板30Aとを常に対向させている点で基板熱処理装置2と異なる。
図19に示すように、基板熱処理装置2Bは、基板熱処理装置2と同様に筐体20、熱板40、熱板回転機構60を備えると共に、冷却板30Aと、基板昇降機構70Bと、制御部21Bとを備える。冷却板30Aは、複数のスリット30aを有さず、中心部に貫通孔30bを有する点を除き、冷却板30と同じである。冷却板30Aは、熱板40の下面に間隙をもって対向した状態で筐体20に固定されている。
【0082】
基板昇降機構70Bは、例えばエアシリンダーであり、上方に突出する昇降ロッド70cを有する。基板昇降機構70Bは冷却板30Aの中心部の下方に配置されており、昇降ロッド70cは貫通孔30bを通って冷却板30Aの上方に突出している。昇降ロッド70cの先端部には、基板保持部77が設けられている。基板保持部77は、ウェハWを水平に支持して例えば真空吸着により保持する。
【0083】
制御部21Bは、制御部21と同様のコンピュータであり、入力部に入力された熱処理条件と、読取部により記録媒体から読み取られたプログラムとに応じて、冷却板30A、熱板40、基板昇降機構70B及び熱板回転機構60を制御することでウェハWの熱処理を実行する。
【0084】
以下、
図20〜22を参照して制御部21Bにより実行される熱処理について説明する。まず、制御部21Bは、冷却板30Aの温度及び熱板40の温度を制御すると共に、基板昇降機構70Bを制御して基板保持部77を熱板40と冷却板30Aとの間に位置させる。この状態で、水平に支持されたウェハWが筐体20内に搬入され、基板保持部77上に載置される(
図20参照)。制御部21Bは、基板保持部77を下降させるように基板昇降機構70Bを制御してウェハWを冷却板30A上に載置し(
図21参照)、その状態を保つことによりウェハWを冷却する(第1の冷却工程)。
【0085】
次に、制御部21Bは、基板熱処理装置2の加熱工程と同様に、熱板回転機構60を制御して熱板40を回転させる。次に、制御部21Bは、基板昇降機構70Bを制御して基板保持部77を上昇させる。基板保持部77がウェハWの裏面Wbに当接すると、制御部21Bは、基板保持部77によりウェハWを吸着させると共に、基板保持部77を更に上昇させるように基板昇降機構70Bを制御する。これにより、ウェハWが熱板40に接近する(
図22参照)。すなわち、制御部21Bは、ウェハWと熱板40とを接近させるように基板昇降機構70Bを制御する。
【0086】
溝部41aが板状部41の中央から延出する方向に熱板40が回転しているので、溝部41a内のガスが熱板40の中央に導かれ、熱板40の周囲のガスが溝部41a内に引き込まれる。このため、熱板40の周囲のガスが熱板40とウェハWとの間に集まる。熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40とウェハWとの接触が防止される。中央が低くなるように撓んでいた熱板40は、ガスを介してウェハWに押し上げられ、平板状になる。
【0087】
ウェハWの高さが目標高さに達すると、制御部21Bは、基板保持部77の上昇を停止させるように基板昇降機構70Bを制御する。ウェハWの目標高さは、基板熱処理装置2の加熱工程と同様に設定される。制御部21Bは、ウェハWと熱板40とが接近した状態に保つことにより、ウェハWを加熱する(加熱工程)。
【0088】
ウェハWの加熱が完了すると、制御部21Bは、ウェハWを下降させると共に、加工の途中で基板保持部77によるウェハWの吸着を解除ように基板昇降機構70Bを制御する。基板保持部77の上端が冷却板30Aの上面より下に下降すると、ウェハWが冷却板30A上に載置される(
図21参照)。制御部21Bは、ウェハWが冷却板30A上に載置された状態を保つことにより、ウェハWを冷却する(第2の冷却工程)。以上でウェハWの熱処理が完了し、ウェハWが筐体20内から搬出される。
【0089】
基板熱処理装置2Bによれば、基板熱処理装置2と同様の効果が得られる。更に、熱板40と冷却板30Aとを常に対向させているので、ウェハWを昇降させるのみで、加熱処理用のウェハWの配置と冷却処理用のウェハWの配置とを切り替えることができる。従って、ウェハWの熱処理をより迅速に行うことができる。
【0090】
<第4実施形態>
第4実施形態である基板熱処理装置2Cは、熱板40を回転させるのに代えて、ウェハWを回転させる点で、基板熱処理装置2Bと異なる。
図23に示すように、基板熱処理装置2Cは、基板熱処理装置2Bと同様に筐体20、冷却板30A及び熱板40を備えると共に、基板昇降機構70Cと、基板回転機構80Aと、熱板保持機構60Bと、制御部21Cとを備える。
【0091】
基板昇降機構70Cは、例えばエアシリンダーであり、上方に突出する昇降ロッド70dを有する。基板昇降機構70Cは冷却板30Aの中心の下方に配置されている。基板回転機構80Aは、例えば電動モータであり、上方に突出する回転軸80bを有する。基板回転機構80Aは、昇降ロッド70dの先端部に固定されており、回転軸80bは冷却板30Aの貫通孔30bを通って冷却板30Aの上方に突出している。回転軸80bの先端部には、基板保持部82が設けられている。基板保持部82は、ウェハWを水平に支持して例えば真空吸着により保持する。
【0092】
熱板保持機構60Bは、本体68と、複数のスポーク63とを有する。本体68は、熱板40の中心の上方に位置して筐体20に固定されている。複数のスポーク63は、本体68の周面から放射状に突出すると共に、下方に傾斜している。スポーク63の先端部は、熱板40の上面の周縁部に固定されている。板状部41が可撓性であるため、熱板40は、スポーク63により周縁部を保持された状態で自重により中央部が低くなるように撓む。
【0093】
本体68には、制御部21Cに接続された複数の接続端子(不図示)と、筐体20の外部に連通する通気孔(不図示)とが設けられている。給電ケーブル43及び信号ケーブル45は、本体68の複数の接続端子にそれぞれ接続され、排気チューブ46は本体68の通気孔に接続されている。
【0094】
制御部21Cは、制御部21Bと同様のコンピュータであり、入力部に入力された熱処理条件と、読取部により記録媒体から読み取られたプログラムとに応じて、冷却板30A、熱板40、基板昇降機構70C及び基板回転機構80Aを制御することでウェハWの熱処理を実行する。
【0095】
以下、
図24〜26を参照して制御部21Cにより実行される熱処理について説明する。まず、制御部21Cは、冷却板30Aの温度及び熱板40の温度を制御すると共に、基板昇降機構70Cを制御して基板保持部82を熱板40と冷却板30Aとの間に位置させる。この状態で、水平に支持されたウェハWが筐体20内に搬入され、基板保持部82上に載置される(
図24参照)。制御部21Cは、基板保持部82を下降させるように基板昇降機構70Cを制御してウェハWを冷却板30A上に載置し(
図25参照)、その状態を保つことによりウェハWを冷却する(第1の冷却工程)。
【0096】
次に、制御部21Cは、基板昇降機構70Cを制御して基板保持部82を上昇させる。基板保持部82がウェハWの裏面に当接すると、制御部21Cは、基板保持部82によりウェハWを吸着させるように基板回転機構80Aを制御すると共に、基板保持部82を更に上昇させるように基板昇降機構70Cを制御する。ウェハWが冷却板30Aから離間すると、制御部21Cは、基板熱処理装置2Aの加熱工程と同様に、基板回転機構80Aを制御してウェハWを回転させる。これにより、ウェハWは、回転しながら熱板40に接近する(
図26参照)。
【0097】
ウェハWの回転に伴って、ウェハWと熱板40との間のガスがウェハWの回転方向に流動する。これに伴い、溝部41a内のガスが熱板40の中央に導かれ、熱板40の周囲のガスが溝部41a内に引き込まれる。このため、熱板40を回転させる場合と同様に、熱板40の周囲のガスが熱板40とウェハWとの間に集まる。熱板40とウェハWとの間に集まったガスにより、熱板40とウェハWとの接触が防止される。中央が低くなるように撓んでいた熱板40は、ガスを介してウェハWに押し上げられ、平板状になる。
【0098】
ウェハWの高さが目標高さに達すると、制御部21Cは、基板保持部82の上昇を停止させるように基板昇降機構70Cを制御する。ウェハWの目標高さは、基板熱処理装置2Aの加熱工程と同様に設定される。制御部21Cは、ウェハWと熱板40とが接近した状態に保つことにより、ウェハWを加熱する(加熱工程)。
【0099】
ウェハWの加熱が完了すると、制御部21Cは、ウェハWの回転を停止させると共に、基板保持部82によるウェハWの吸着を解除ように基板回転機構80Aを制御する。制御部21Cは、基板保持部82を下降させるように基板昇降機構70Cを制御する。基板保持部82の上端が冷却板30Aの上面より下に下降すると、ウェハWが冷却板30A上に載置される(
図25参照)。制御部21Cは、ウェハWが冷却板30A上に載置された状態を保つことにより、ウェハWを冷却する(第2の冷却工程)。以上でウェハWの熱処理が完了し、ウェハWが筐体20内から搬出される。
【0100】
基板熱処理装置2Cにおいても、基板熱処理装置2Bと同様の効果が得られる。更に、熱板40には給電ケーブル43、信号ケーブル45及び排気チューブ46が接続されるのに対し、ウェハWにはこれらを接続する必要がない。このため、ウェハWを回転させる場合、熱板40を回転させるのに比べ装置の構成を単純化できる。
【0101】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、熱板40は必ずしも凹部41b及び通気孔41cを有しなくてもよい。複数の溝部41aは上述したものに限定されず、熱板40の周囲のガスを引き込む作用を奏するものであればどのようなものであってもよい。
【0102】
制御部21,21A,21B,21Cは、加熱工程において、回転機構60,80,80Aを制御して熱板40又はウェハWの回転数を調節することで、ウェハWと熱板40との間隔を調節してもよい。
【0103】
熱板40は、
図27に示すように、通気孔41cの絞り部47と、ウェハWと熱板40との間の気圧を計測する圧力計48とを更に有してもよく、制御部21,21A,21B,21Cは、圧力計において計測された気圧が高くなるのに応じて通気孔41cの開口面積を大きくするように、更に絞り部47を制御してもよい。この場合、ウェハWと熱板40との間の気圧を安定化することにより、ウェハWと熱板40との間隔を安定化できる。