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特許5767283マルチチャネルにおける動作用の向上したキャリア検知
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767283
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】マルチチャネルにおける動作用の向上したキャリア検知
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20150730BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20150730BHJP
【FI】
   H04W74/08
   H04W72/08 110
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-168490(P2013-168490)
(22)【出願日】2013年8月14日
(62)【分割の表示】特願2011-70171(P2011-70171)の分割
【原出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-3673(P2014-3673A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2013年8月15日
(31)【優先権主張番号】12/748,678
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003943
【氏名又は名称】インテル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴング、ミシェル エックス.
(72)【発明者】
【氏名】ステファンズ、エイドリアン ピー.
【審査官】 伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−171506(JP,A)
【文献】 特開2006−238423(JP,A)
【文献】 特開2002−111672(JP,A)
【文献】 特開2003−348635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークで動作して、プロセッサ、メモリ、無線機、および少なくとも1つのアンテナを備える送信デバイスであって、
前記送信デバイスは、
複数のレシーバにアドレスされ、かつ前記送信デバイスによってフリーであると検知された複数のチャネルについて保留を要求する送信要求(RTS)を送信し、
前記複数のレシーバの中に含まれるレシーバから、前記送信デバイスによってフリーであると検知された1以上のチャネルのサブセットであり、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルを示す送信可(CTS)を受信し、
前記1以上のチャネルのうちの1または複数のみで前記レシーバに送信し、
前記RTSは、制御フレームとしてフォーマットされており、
前記制御フレームは、
前記RTSを示すフレーム制御フィールドと、
前記複数のレシーバ以外のデバイスが送信を控えるべき期間を示す期間フィールドと、
前記送信デバイスのアドレスを示すTAフィールドと、
フレームチェックシーケンス(FCS)フィールドと
を含み、
前記RTSは、前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルをさらに示し、
前記複数のチャネルは、一次チャネルを含み、前記送信デバイスは、前記一次チャネルで前記レシーバに送信する、送信デバイス。
【請求項2】
前記RTSの前記制御フレームは、前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルのリストを含むチャネルビットマップフィールドを有する、請求項1に記載の送信デバイス。
【請求項3】
前記送信デバイスは、多数ユーザ多数入力対多数出力(MU−MIMO)を利用して送信する、請求項1または請求項2に記載の送信デバイス。
【請求項4】
前記送信デバイスが送信しようとしている場合のみ、前記送信デバイスは、前記複数のチャネルを検知して、前記送信デバイスによってフリーであると検知される前記複数のチャネルを決定する、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の送信デバイス。
【請求項5】
無線通信ネットワークで動作して、プロセッサ、メモリ、無線機、および1つ以上のアンテナを備えるレシーバであって、
複数のレシーバにアドレスされ、かつ送信デバイスによってフリーであると検知された複数のチャネルについて保留を要求する送信要求(RTS)を、前記送信デバイスから受信し、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された1以上のチャネルのサブセットであり、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルを示す送信可(CTS)を前記レシーバから送信し、
前記1以上のチャネルのうちの1つまたは複数のみで前記送信デバイスから受信し、
前記CTSは、制御フレームとしてフォーマットされており、
前記CTSは、
前記CTSを示すフレーム制御フィールドと、
前記複数のレシーバ以外のデバイスが送信を控えるべき期間を示す期間フィールドと、
前記送信デバイスのアドレスを示すRAフィールドと、
フレームチェックシーケンス(FCS)フィールドと
を含み、
前記複数のチャネルは、一次チャネルを含み、前記レシーバは、前記一次チャネルで前記送信デバイスから受信する、レシーバ。
【請求項6】
前記CTSの前記制御フレームは、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルのリストを含むチャネルビットマップフィールドを有する、請求項5に記載のレシーバ。
【請求項7】
前記レシーバは、多数ユーザ多数入力対多数出力(MU−MIMO)送信信号を受信する、請求項5または請求項6に記載のレシーバ。
【請求項8】
前記RTSを受信した後のみ、前記レシーバは、前記複数のチャネルを検知し、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルを決定する、請求項5から請求項7のいずれか1つに記載のレシーバ。
【請求項9】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
複数のレシーバにアドレスされ、かつ送信デバイスによってフリーであると検知された複数のチャネルについて保留を要求する送信要求(RTS)を、前記送信デバイスから送信する工程と、
前記複数のレシーバの中に含まれるレシーバから、前記送信デバイスによってフリーであると検知された1以上のチャネルのサブセットであり、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルを示す送信可(CTS)を受信する工程と、
前記1以上のチャネルのうちの1または複数のみで前記レシーバに送信する工程と
を前記コンピュータに実行させ、
前記RTSは、制御フレームとしてフォーマットされており、
前記制御フレームは、
前記RTSを示すフレーム制御フィールドと、
前記複数のレシーバ以外のデバイスが送信を控えるべき期間を示す期間フィールドと、
前記送信デバイスのアドレスを示すTAフィールドと、
フレームチェックシーケンス(FCS)フィールドと
を含み、
前記RTSは、前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルをさらに示し、
前記複数のチャネルは、一次チャネルを含み、
前記レシーバに送信する工程は、前記一次チャネルで送信することを含む、プログラム。
【請求項10】
前記RTSの前記制御フレームは、前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルのリストを含むチャネルビットマップフィールドを有する、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記レシーバに送信する工程は、多数ユーザ多数入力対多数出力(MU−MIMO)を利用することを含む、請求項9または請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記送信デバイスが送信しようとしている場合のみ、前記送信デバイスは、前記複数のチャネルを検知して、前記送信デバイスによってフリーであると検知される前記複数のチャネルを決定する工程を前記コンピュータに実行させることをさらに含む、請求項9から請求項11のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項13】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
複数のレシーバにアドレスされ、かつ送信デバイスによってフリーであると検知された複数のチャネルについて保留を要求する送信要求(RTS)を、前記送信デバイスからレシーバで受信する工程と、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された1以上のチャネルのサブセットであり、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルを示す送信可(CTS)を前記レシーバから送信する工程と、
前記1以上のチャネルのうちの1つまたは複数のみで前記送信デバイスから受信する工程と
を前記コンピュータに実行させ、
前記CTSは、制御フレームとしてフォーマットされており、
前記CTSは、
前記CTSを示すフレーム制御フィールドと、
前記複数のレシーバ以外のデバイスが送信を控えるべき期間を示す期間フィールドと、
前記送信デバイスのアドレスを示すRAフィールドと、
フレームチェックシーケンス(FCS)フィールドと
を含み、
前記複数のチャネルは、一次チャネルを含み、前記送信デバイスから受信する工程は、前記一次チャネルで前記送信デバイスから受信することを含む、プログラム。
【請求項14】
前記CTSの前記制御フレームは、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルのリストを含むチャネルビットマップフィールドを有する、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記送信デバイスから受信する工程は、多数ユーザ多数入力対多数出力(MU−MIMO)送信信号を受信することを含む、請求項13または請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記RTSを受信した後のみ、前記レシーバによって前記複数のチャネルを検知し、前記レシーバによってフリーであると検知された前記1以上のチャネルを決定する工程を前記コンピュータに実行させることをさらに含む、請求項13から請求項15のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項17】
無線通信ネットワークで動作する送信デバイスであって、
プロセッサ、メモリ、無線機、および少なくとも1つのアンテナを備え、
前記送信デバイスは、
第1レシーバおよび第2レシーバを含む複数のレシーバにアドレスされ、制御フレームとしてフォーマットされた送信要求(RTS)をレシーバに送信し、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された複数のチャネルのサブセットであり、前記第1レシーバによってフリーであると検知された1または複数のチャネルを示す第1送信可(CTS)を前記第1レシーバから受信し、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルのサブセットであり、前記第2レシーバによってフリーであると検知された1または複数のチャネルを示す第2CTSを前記第2レシーバから受信し、
前記制御フレームは、
前記RTSを示すフレーム制御フィールドと、
前記複数のレシーバ以外のデバイスが送信を控えるべき期間を示す期間フィールドと、
前記送信デバイスのアドレスを示すTAフィールドと、
フレームチェックシーケンス(FCS)フィールドと、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルのリストを含むチャネルビットマップフィールドと
を含み、
前記送信デバイスによってフリーであると検知される前記複数のチャネルは、一次チャネルを含み、前記送信デバイスは、前記一次チャネルで前記RTSを送信する、送信デバイス。
【請求項18】
前記送信デバイスは、多数ユーザ多数入力対多数出力(MU−MIMO)を利用して送信する、請求項17に記載の送信デバイス。
【請求項19】
前記送信デバイスが送信しようとしている場合のみ、前記送信デバイスは、複数のチャネルを検知して、前記送信デバイスによってフリーであると検知される前記複数のチャネルを決定する、請求項17または請求項18に記載の送信デバイス。
【請求項20】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
第1レシーバおよび第2レシーバを含む複数のレシーバにアドレスされ、制御フレームとしてフォーマットされた送信要求(RTS)を送信デバイスから送信する工程と、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された複数のチャネルのサブセットであり、前記第1レシーバによってフリーであると検知された1または複数のチャネルを示す第1送信可(CTS)を前記第1レシーバから受信する工程と
前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルのサブセットであり、前記第2レシーバによってフリーであると検知された1または複数のチャネルを示す第2送信可(CTS)を前記第2レシーバから受信する工程と
を前記コンピュータに実行させ、
前記制御フレームは、
前記RTSを示すフレーム制御フィールドと、
前記複数のレシーバ以外のデバイスが送信を控えるべき期間を示す期間フィールドと、
送信デバイスのアドレスを示すTAフィールドと、
フレームチェックシーケンス(FCS)フィールドと、
前記送信デバイスによってフリーであると検知された前記複数のチャネルのリストを含むチャネルビットマップフィールドと
を含み、
前記送信デバイスによってフリーであると検知される前記複数のチャネルは、一次チャネルを含み、
前記RTSを送信する工程は、前記一次チャネルで送信することを含む、プログラム。
【請求項21】
前記レシーバに送信する工程は、多数ユーザ多数入力対多数出力MU−MIMO)を利用することを含む、請求項20に記載のプログラム。
【請求項22】
前記送信デバイスが送信しようとしている場合のみ、前記送信デバイスによって、複数のチャネルを検知して、前記送信デバイスによってフリーであると検知される前記複数のチャネルを決定する工程を前記コンピュータに実行させることをさらに含む、請求項20または請求項21に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々な規格下で動作する無線通信ネットワークにおいては、時としてデバイスがマルチチャネルで同時に送信を行う場合があり、従って、所定の期間におけるデータ送信量が増加する場合がある。マルチチャネル送信等の処理を行うときには、例えばデバイスが事前にこれら狭チャネルが現在ビジー状態ではないことを検知する必要がある。しかし、所謂「隠されたノード」の問題によって、意図されたトランスミッタによりフリーであると検知されるチャネルが、意図されたレシーバではビジーと検知される場合もある。例えば、現在のネットワークのエッジにあるレシーバは、現在のネットワークのトランスミッタに届くほど強くはない隣接するネットワークのデバイスからの信号を感知することができる場合がある。このトランスミッタがもしも隠されたノードの存在を認知していない理由から範囲を超えて送信を行うと、レシーバは、これらチャネルのいずれかの上にある隣接するデバイスからの干渉によってこの送信を正確に受信することができない場合がある。通信で単一のチャネルのみを利用するネットワークは、送信要求/送信可(RTS/CTS)交換を利用して隠されたノードの問題を回避することができるが、これら交換において、RTSおよびCTSの両方を単一のチャネル上に送信する必要がある。干渉信号がこの送信に含まれている他のチャネルの1つの上にある場合には、トランスミッタはこれには気づかず、受信される可能性の少ない信号を送信することになる。
【0002】
本発明の一部の実施形態は、以下の記載および本発明の実施形態を例示する添付図面を参照することで理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】本発明の一実施形態における無線通信ネットワークで互いに通信する無線デバイスを示す。
図2】本発明の一実施形態における2つのデバイス間の通信を示すフロー図である。
図3】本発明の一実施形態におけるMRTSのフォーマットを示す。
図4】本発明の一実施形態におけるMCTSのフォーマットを示す。
図5】本発明の一実施形態における通信シーケンスを示す。
図6】本発明の一実施形態における複数の応答デバイスが関与する通信シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の記載においては多数の特定の詳細を述べる。しかし本発明の実施形態は、これら特定の詳細なしに実行可能であることを理解されたい。また場合によっては、公知の回路、構造、および技術について詳述しないことで、本記載の理解を曖昧にしないように心がけている箇所もあることを理解されたい。
【0005】
本発明の実施形態における「一実施形態」「例示的な実施形態」「様々な実施形態」といった言い回しは、記載されている本発明の実施形態の一つまたは複数が、特定の特徴、構造、または特性を有することを示しているが、全ての実施形態が必ずしもこれら特定の特徴、構造、または特性を含まなければならないわけではない。さらに、一部の実施形態では、他の実施形態において記載される特徴の一部、または全てを含んでもよく、あるいは全く含まなくてもよいことを理解されたい。
【0006】
以下の記載および請求項において、「連結」および「接続」という用語がこれらの派生語とともに利用されている場合がある。これらの用語は、互いに同義語を意図していないことを理解されたい。特定の実施形態において、「接続」は2以上の部材が互いに直接物理的または電気的に接触状態にあることを意図する場合がある。他方で「連結」は、2以上の部材が互いに協同または相互作用するが、これらが物理的または電気的にコンポーネントを介さない場合がある。
【0007】
請求項では、特にそうではないと明記しない限り、「第1」「第2」「第3」等の序数の形容詞は、共通の部材を示すのに利用されており、言及する類似した部材の異なるインスタンスを示しているにすぎず、記載する部材が、時間的に、空間的に、ランクとして、あるいはその他の観点から特定のシーケンスでなければならない、という意味ではない。
【0008】
本発明の様々な実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアのいずれか、またはこれらの任意の組み合わせでの実装が可能である。さらに本発明は、コンピュータ可読媒体に含まれ、1以上のプロセッサにより読み出され実行されることで、ここに記載する動作を実行させる命令として実装可能である。コンピュータ可読媒体は、情報を1以上のコンピュータが読み出すことのできる形態で格納する任意のメカニズムを含んでよい。例えば、コンピュータ可読媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク格納媒体、光格納媒体、フラッシュメモリデバイス等を含むがこれらに限定はされない有形の格納媒体を含んでよい。
【0009】
「無線」という用語は、ここでは、非有形媒体により変調された電磁放射を利用してデータを通信する回路、デバイス、システム、方法、技術、通信チャネルを記載する際に利用されてよい。無線デバイスは、少なくとも1つのアンテナ、少なくとも1つの無線装置、および、少なくとも1つのプロセッサを含んで、無線装置のトランスミッタがアンテナによりデータを表す信号を送信し、無線装置のレシーバがアンテナを介してデータを表す信号を受信し、プロセッサが送信データおよび受信データを処理してよい。プロセッサはまた、送受信されない他のデータを処理することもできる。
【0010】
「ネットワークコントローラ(NC)」という用語は、少なくとも部分的に、ネットワークの他のデバイスによる無線通信をスケジュールしたり、制御したりするようなデバイスのことを意味してよい。ネットワークコントローラはさらに、基地局(BS)、アクセスポイント(AP)、セントラルポイント(CP)、または、ネットワークコントローラの機能を記載するのに利用されるその他の任意の用語として知られている場合もある。マルチチャネルネットワークでは、一般的に、ネットワークのデバイス間の通信に、複数のチャネルが利用可能である。これらの利用可能なチャネルは、産業規格で、政府の規制により、ネットワークデバイス自身の制約により、または、任意の他の実行可能な手段により特定される場合がある。利用可能なチャネルのうち、NCは、ネットワーク内の2つの特定のデバイス間の特定の通信で利用されうるものを選択することができる。NCは、この選択について必要に応じて変更することもある。
【0011】
「モバイルデバイス(MD)」という用語は、その無線通信がネットワークコントローラにより少なくとも部分的にスケジュールおよび制御されるようなデバイスのことである。モバイルデバイスはさらに、モバイルノード、STA、サブスクライバステーション(SS)、ユーザ機器(UE)、または、モバイルデバイスの機能を記載するのに利用されるその他の任意の用語として知られている場合もある。モバイルデバイスは、これらの通信中に移動することもあるが、移動は必須要件ではない。
【0012】
「フリーのチャネル」という用語は、判断デバイスによる検知により、利用されていないと判断されたチャネルのことであって、そのデバイスが利用可能なチャネルのことである。様々な実施形態では、この決定は、チャネル上で検知される電磁エネルギー量を監視して、そのチャネル上で符号化されたデータを復号しようとすることで、または、干渉される可能性が高くなく検知デバイスが通信にチャネルを利用することができることを意味する任意の他の実行可能な手段により、行うことができる。2つのデバイスが互いに通信しようとするような一部の状況においては、一方のデバイスがチャネルをフリーとして検知しても、他方のデバイスがそのチャネルをビジーであると検知するような場合もあり、これは、このチャネルを既に利用しているデバイスからの相対的な距離に起因している。
【0013】
「マルチチャネル送信要求(MRTS)」という用語は、複数のチャネルについて留保を要求する送信要求(RTS)を意味する。マルチチャネル送信可(MCTS)は、MRTSに応じて1以上の複数のチャネルの留保に同意する送信可(CTS)の意味である。RTS/CTS交換が単一のチャネルの留保に利用可能であるように、MRTS/MCTS交換は、同じ期間の複数のチャネルを留保する際に利用可能である。
【0014】
様々な実施形態では、第1の無線デバイスは、第1のデバイスが複数のチャネルのいずれをフリーとして検知されたかを示すMRTSを第2の無線デバイスへ送信することができる。第2のデバイスは、これらフリーのチャネルのいずれがさらに第2のデバイスによりフリーとして検知したかを示すMCTSで応答することができる。このMRTS/MCTS交換の後で、第1のデバイスは、両方のデバイスによりフリーとして検知された利用可能なチャネルのリストを有することになり、両方のデバイスによりフリーとして検知されたこれらチャネルのみを利用することで、後続するマルチチャネル通信において隠されたノードの問題を起こさないようにすることができる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における無線通信ネットワークで互いに通信する無線デバイスを示す。図示されている例では、デバイスの1つがネットワークコントローラ(NC)として示されており、このデバイスと通信する複数の他のデバイスがモバイルデバイスとして示されているが(MD1、MD2)、一部のネットワークデバイスがピア関係で通信しあうこともできる。2つのMDのみが示されているが、実施形態によっては、ネットワーク内に、NCと通信することのできる別のMDがあってもよい。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態における2つのデバイス間の通信を示すフロー図である。フロー図200では、2つのデバイスが要求デバイスおよび応答デバイスとして記載されている。各デバイスは、交換中に異なる時点で送受信を行うことができる。本明細書では、(MRTSを送信することで)通信を要求するデバイスを要求デバイスと称し、(MCTSを送信することで)要求に応答するデバイスを応答デバイスと称する。例によっては、応答デバイスが要求を拒否することもあるが(例えば、応答しないことで、フリーのチャネルがない旨を示すことで、または任意の他の実行可能な手段により)、ここでは応答デバイスが要求を許諾すると仮定する。一部の実施形態では要求デバイスはMDであり、応答デバイスがNCであるが、他の実施形態ではこの役割が逆転したり、またはデバイス同士がピアデバイスであったりする場合もある。
【0017】
210で、要求デバイスは、自身が利用可能な様々なチャネルのうちどのチャネルが現在フリーであるかを検知することができる。一部の実施形態では、これは、デバイス同士が媒体のコンテンションを許可される、ネットワークにおける「コンテンション」期間中に行われてよい。220で要求デバイスは現在フリーであるチャネルのリスト(例えばリストA)を作成して、230でこのリストをMRTSに含めて応答デバイスに対して送信することができる。リストは、任意の実行可能な形式であってよく、任意の実行可能な方法によりMRTSで表されていてよい。利用可能なフォーマットについては後述する。一部の例においては、様々な理由から要求デバイスはこのリストをフリーとして検知されたチャネルのサブセットのみに制限することができる。本明細書では、たとえリストに加えられるべきチャネルが他にもあるとしても、フリーのチャネルのリストはMRTSによりフリーと示されたチャネルのリストのことを指す。
【0018】
215では、応答デバイスが、自身が利用可能な様々なチャネルを検知して、どのチャネルが現在フリーであるかを検知することができる。多くの例において、「利用可能なチャネル」とは、両方のデバイスについて同じであってもよいし、同じではない場合があってもよい。225で、応答デバイスは、現在フリーであるチャネルのリスト(リストB)を作成し、235で、要求デバイスが送信したMRTSを受信することができる。
【0019】
一部の実施形態では、デバイスは、様々な利用可能チャネルを頻繁に監視して、フリーであるチャネルのリストを最新版に更新し続けることができる。この技術は図2に示す動作の順序により示唆されている。他の実施形態では、デバイスは、情報を知る必要のないときにはこのようにチャネルを調査しない場合もある。例えば、要求デバイスは、なんらかの情報(例えばMRTS)を送信することを決定するまで、チャネルを検知しなくてよく、応答デバイスは、MRTSを受信するまではチャネルを検知しなくてよい。この選択は、情報をどのくらい迅速に取得する必要があるかに応じて主に決定される。応答デバイスが数ミリ秒の間に応答送信を開始する必要があるが、チャネルがフリーであるかを検知するには数百ミリ秒がかかる、といった場合には、チャネルを予め走査する、といった方策が好適であろう。
【0020】
MRTSを受信した後で、応答デバイスは自身のリストBをリストAと比較して、リストAおよびリストBの両方にフリーであるとして示されているチャネルのみをリストにしたリストCを作成することができる。従ってリストCは、要求側および応答側の両方でフリーであるとして判断されたチャネルを表すことになる。255で、リストCをMCTSにより要求デバイスに返信して、これを要求デバイスが260で受信する。この段階では要求デバイスは、両方のデバイスでフリーと判断されたチャネルのリストを有しているので、270で要求デバイスは、リストCに含まれているチャネルのみを利用して、270および275の通信を応答デバイスとの間で開始することができる。リストCに含まれているチャネルの全てまたは一部のみをこの通信用に選択することができ、この選択は通信中に変更してもよい。一部の実施形態では、各デバイスは、リストCに含まれているチャネルのいずれを現在の送信に利用するか、選択することができる。送信デバイスが選択中のチャネルを受信デバイスに通知する方法としては、任意の実行可能な技術を利用することができる。
【0021】
「リスト」として記載してきたが、フリーであると検知されたチャネルを示す情報は任意の実行可能なフォーマットであってよい。一実施形態では、各利用可能チャネルをビットで表したビットマップを利用することができ、各ビットの状態が、関連するチャネルがフリーであるか否かを示してもよい。このビットマップは、後に、MRTSおよび/またはMCTSの特定のフィールドに配置することができる。他の実施形態では、この情報の伝送に任意の他の実行可能なフォーマット技術を利用することができる。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態におけるMRTSのフォーマットを示す。図3に示す実施形態では、MRTSは制御フレームとしてフォーマットされている。フレーム制御フィールドの内容は、MRTSである旨を示すものであってよい。期間フィールドの内容は、現在の情報交換にどれくらい時間がかかると予期されるかを示すものであってよい(これには、現在のMRTSフレーム、応答側のMCTSフレーム、ACKフレーム、および所定の数のフレーム間隔時間(IFS)遅延が含まれてよい)。この値は、それを受信しうる他のデバイスに対する、示されている期間にチャネルが留保されるのでこれら他のデバイス(つまり、意図されたレシーバとしてこのフレームが宛先とするデバイス以外のデバイス)がこの期間中には送信を控えるべきであることを示す留保通知としての役割を持っていてよい。
【0023】
RAフィールドの内容は、受信デバイス(つまり、このMRTSの受信者として意図される応答デバイス)のアドレスを示すものであってよい。同様に、TAフィールドは、送信デバイス(つまり、このMRTSを送信する要求デバイス)のアドレスを示すものであってよい。チャネルビットマップフィールドは、リストAを含んでよい(つまり、送信デバイスがフリーであると指定するチャネル)。FCSフィールドは、受信したフレームが破損していないことを証明するためのフレームチェックサム値を含んでよい。
【0024】
図4は、本発明の一実施形態におけるMCTSのフォーマットを示す。図4に示す実施形態では、MCTSが制御フレームとしてフォーマットされている。フレーム制御フィールドの内容は、MCTSである旨を示すものであってよい。期間フィールドの内容は、現在の情報交換の残りにどれくらい時間がかかることが予期されるかを示すものであってよい(これには、現在のMCTSフレーム、ACKフレーム、および所定の数のフレーム間隔時間(IFS)遅延が含まれてよい)。MRTS同様に、この値は、それを受信しうる他のデバイスに対する、示されている期間にチャネルが留保されているのでこれら他のデバイス(つまり、意図されたレシーバとしてこのフレームが宛先とする要求デバイス以外のデバイス)がこの期間中には送信を控えるべきであることを示す留保通知としての役割を持っていてよい。
【0025】
物理的な距離、障害、局所的な干渉等により、MCTSフレームを受信することのできるデバイスセットがMRTSフレームを受信することのできるデバイスセットとは異なる場合があり、これら両方のデバイスセットは、各々が受信可能な送信から期間フィールドの内容を読み出して送信を控えるべき期間を通知されることができる。両方を受信することのできるデバイスであれば、MCTS期間フィールドを、MRTS期間フィールドから予め取得した値を検証または更新するのに利用することができる。
【0026】
RAフィールドの内容は、受信デバイス(つまり、このMCTSの受信者として意図される要求デバイス)のアドレスを示すものであってよい。MRTSでアドレス指定されているデバイスがMCTSを応答するべきであるので、TAフィールドはなくてよい。受信デバイスは単に、MRTSに応答するデバイスが、MRTS内のRAフィールドが示したものと同じデバイスであると仮定してよい。チャネルビットマップフィールドはリストCを含んでよい(つまり、応答デバイスでもフリーであると検知されたリストAのチャネル)。前述したように、FCSフィールドは、受信したフレームが破損していないことを証明するためのフレームチェックサム値を含んでよい。
【0027】
これらの例におけるフォーマットは、単一のチャネル動作で既に利用されているRTSおよびCTSフォーマット全体に非常によく一致していることから示されている(もちろんチャネルビットマップフィールドは異なっているが)。このフリーのチャネル情報は、任意の便利なフォーマットで送信されてよく、これも本発明の様々な実施形態の範囲に含まれる。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態における通信シーケンスを示す。図5の例に示すように、要求デバイスは、3つのチャネルをフリーであるとしてリストに含むMRTSを送信することができ、MRTSは、これら3つのチャネル上各々で同時に送信されてよい(チャネル1、2および3として示されているが、これらは任意の実行可能な方法で識別可能である)。応答デバイスが、チャネル1および3をフリーとして、且つ、チャネル2をビジーとして判断する場合には、チャネル1および3のみをフリーであるとして示すMCTSを送信することができ、このMCTSを同時にチャネル1および3で送信することができる。この段階では要求デバイスは、両方の側でフリーであるチャネルのリストを有しているので、チャネル1および3を介してデータを応答デバイスに送信開始することができ、応答デバイスは、これら両方のチャネル上で、両方のチャネルでデータが正確に受信された旨を示す受領確認BAを送信することができる。
【0029】
図6は、本発明の一実施形態における複数の応答デバイスが関与する通信シーケンスを示す。一部のネットワークでは、要求デバイスは、同じ通信シーケンス内の複数の応答デバイスに対してデータの送信を希望する場合があり、MRTSは複数の応答デバイスを宛先とする場合がある。これらの複数の宛先管理は様々な方法で行うことができ、一つの限定ではない方法としてはマルチキャストアドレッシングが挙げられる。互いに干渉しないために、複数の応答デバイスが、自身からのMCTS送信をそれぞれ異なる時点に行うようにすることができる。
【0030】
示されている例では、要求デバイスは、チャネル1、2、および3がフリーであることを検知して、MRTSをチャネル1、2、および3の各々で応答デバイスAおよびBに送信する。応答デバイスAが、チャネル1および3のみがフリーである、あるいは、MRTSをチャネル1および3上のみで正確に受信することができることを検知すると、応答デバイスAは、チャネル1および3上各々にチャネル1および3がフリーであることを示すMCTSを送信する。応答デバイスBは、チャネル1、2、および3の全てがフリーであることを検知して、その旨を示すMCTSをチャネル1、2、および3上各々に送信する。この段階で要求デバイスは、応答デバイスBについては、チャネル2上でデータを送信することが許可されてはいるが、応答デバイスAについては干渉が生じる可能性もあることを知っている。従ってデータをチャネル1および3上のみで応答デバイスに対して送信する。MCTSに関しては、各応答デバイスは、自身の受領確認BAをそれぞれ異なる時点に送信することができる。
【0031】
一部の実施形態では、各マルチチャネル通信において一次チャネルと称される特定のチャネルを利用する必要がある。この場合には、一次チャネルは、MRTS、MCTS、および後続するデータを送信するときに利用される必要がある。従って一次チャネルが要求デバイスによりビジーであると検知されると、MRTSは送信しないようにしてよい。一次チャネルが応答デバイスによりビジーであると検知されると、MCTSおよび後続するデータは送信されない。
【0032】
一部のネットワークでは、デバイスは、多数ユーザ多数入力対数出力技術(MU MIMO)を利用して通信を行い、この技術によると、異なる「空間チャネル」を利用することで、同じ周波数チャネルで異なる信号を異なるデバイスに対して干渉なく送信することができる。(本明細書では、「チャネル」という用語は、特に空間チャネルであると規定しない限りは、周波数チャネルを想定している。)この場合、各空間チャネルは、同じチャネルが別の空間チャネル上で同時に利用されているかを考慮に入れる必要なしに前述した技術を利用することができる。
【0033】
前に示唆したように、MRTSおよびMCTSフレームの役割の一つは、参加していないデバイス(要求デバイスでも応答デバイスでもないデバイスのこと)に対して、あるチャネルが特定の期間留保されており、これらの参加していないデバイスはこの期間内はこれらのチャネル上での送信を控えるよう通知を行うことである。MRTSおよびMCTS両方における期間フィールドがこの役割を果たし、参加していないデバイスがこれらフレームのいずれかを受信したときには、自身のネットワーク分配ベクトル(NAV)を一定の期間に設定して、その期間は指定されたチャネル(1または複数)上で送信しないように周知させることができる。MCTSを受信できるときであれば、MCTSの期間フィールドにおけるリストを、どのチャネルを避けるべきかを知るためのリストとして利用することができるが、これは、要求デバイスが、後続する送信においては、潜在的により大きなMRTSリストよりもこのリストのほうを参照する可能性が高いからである。
【0034】
しかし、参加していないデバイスの一部では、MRTSを受信できるが、MCTSを受信できない、という場合もある。このようなデバイスは、自身のNAVを利用される可能性のないチャネルに設定することができる、というのも応答デバイスがビジーであると検知するかもしれないが要求デバイスはそうしないこともあるからである。利用できるにも関らず不当にチャネルを回避してしまうようなケースを避けるためには、参加していないデバイスが、MRTSに基づいて設定されたが対応するMCTSが受信されなかったような自身のNAVを、一定の期間の経過の後に潜在的にリセットするように習慣付ける、といった方策が考えられる。この一定の期間は、いずれのCTSをも受信することができるように十分長く、しかも、データ送信期間全体が経過するよりは短くてよい。一実施形態では、この待ち時間は、(2SIFSTimes)+(TXTIMEMCTS)+(PHY−RX−START遅延)+(2スロット時間)であってよく、ここでSIFSTimeは、短いフレーム間隔期間の長さであり、TXTIMEMCTSは、MCTSを送信するのにかかる期間であり、PHY−RX−START遅延は、受信前に待つ必要のある遅延であり、スロット時間は予め定められている。いずれの遅延に関する方程式を利用する場合にも、データ段階に達する程度の長さである必要がある。媒体が遅延期間の後にもビジーである場合には、デバイスは、MRTSから取得した元の期間が依然として有効であると仮定して、自身のNAVをリセットしなくてよい。
【0035】
ここまでの記載は、例示であって限定は意図していない。当業者にとっては様々な変形例が可能である。これら変形例は、本発明の様々な実施形態に含まれることが意図されており、以下の請求項の範囲による限定のみが想定されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6