特許第5767362号(P5767362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767362免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析方法及び免疫クロマト分析キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5767362
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析方法及び免疫クロマト分析キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20150730BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150730BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01N33/543 501M
   G01N33/543 521
   G01N33/53 V
   G01N33/72 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-91510(P2014-91510)
(22)【出願日】2014年4月25日
【審査請求日】2014年5月28日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】宮田 亜紀
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−210505(JP,A)
【文献】 特開2003−344397(JP,A)
【文献】 特表2009−516199(JP,A)
【文献】 特表2011−509404(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/106930(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0160090(US,A1)
【文献】 特開2006−058295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53−33/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン性界面活性剤を含有する試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置を用い、非イオン性界面活性剤を含有する検体希釈液で希釈した検体に含まれる血液中の糖化タンパク質を検出する、以下の工程(1)〜(4)を含む(但し、検体含有液を試料添加部に添加する前に被検出物質のエピトープを露出させる工程を除く)免疫クロマト分析方法であって、
前記検体希釈液中に前記非イオン性界面活性剤を0.3〜3.0質量%含有し、
前記試料添加部中に前記陰イオン性界面活性剤を16〜480μg含有する
免疫クロマト分析方法。
(1)検体を検体希釈液で希釈した検体含有液の一液のみを試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により被検出物質を認識させる工程
(3)検体及び標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
【請求項2】
前記試料添加部の素材がグラスファイバーである請求項1に記載の免疫クロマト分析方法。
【請求項3】
試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置と、検体を希釈して検体含有液の1液のみを展開するための検体希釈液とからなる免疫クロマト分析キットであって、
前記検体に含まれる被検出物質が血液中の糖化タンパク質であり、
前記検体希釈液中に非イオン性界面活性剤を0.3〜3.0質量%含有し、
前記試料添加部中に陰イオン性界面活性剤を16〜480μg含有し、
前記検体希釈液中に被検出物質のエピトープを露出させる物質を含まない
免疫クロマト分析キット。
【請求項4】
前記試料添加部の素材がグラスファイバーである請求項3に記載の免疫クロマト分析キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析方法及び免疫クロマト分析キットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿などの検体に含まれる種々の成分を測定することは、患者の健康状態を把握する上で臨床上極めて重要であり、従来、その成分に応じて各種の測定方法が採用されている。その一つとして、検体に含まれる被検出物質を免疫反応により発色させ、その発色シグナルを確認する免疫クロマト分析装置及び分析方法が知られている。
【0003】
一方、世界の糖尿病患者数は、2011年で3億6600万人存在し、2030年は5億5200万人(成人人口の約10%)にも及ぶと予測されている。またいわゆる糖尿病予備軍もそれと同等以上であると考えられる。従来、糖尿病の診断は血糖値を測定することによりなされていたが、近年では、血中のヘモグロビンに糖が結合した糖化ヘモグロビン(グリコヘモグロビン)、とくにヘモグロビンβ鎖のN末端バリン残基が糖化されたヘモグロビンA1c(以下、「HbA1c」と言う)の総ヘモグロビン量に対する濃度が、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映することから、糖尿病の診断や糖尿病の経過観察に適した指標として使用されつつある。
【0004】
しかし従来においてHbA1cの測定は、HPLC法、キャピラリー電気泳動法、酵素法、免疫学的測定法等により実施されるが、これらの方法は特定の装置や分析に対する専門的知識を必要とするために、小規模の病院や家庭等ではHbA1cの値を簡単に知ることができない、という問題点があった。
【0005】
また、HbA1cの血中濃度は、血中成分に個人差が存在するため、HbA1c以外のヘモグロビンも同時に測定し、HbA1cとHbA1c以外のヘモグロビンとの総ヘモグロビン量に対するHbA1量の比率を把握することで、糖尿病の陰性または陽性を判定していたが、この場合、HbA1cとHbA1c以外のヘモグロビンを個別に上記手段によって測定する必要があるため、測定の煩雑さがさらに悪化するという問題点も存在する。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1には、HbA1cを簡易的に測定する方法が提案され、ここで使用される免疫クロマト分析装置は、図3(a)の断面図、(b)の平面図に示されるように、プラスチック製粘着シートa上に、サンプルパッドb、標識物質で標識された粒子標識抗体含有パッドc、抗体固定化メンブレンf、吸水パッドgがこの順で装置の長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、抗体固定化メンブレンf上には、抗HbA1c抗体が塗布された抗HbA1c抗体塗布部d、抗HbA0抗体が塗布された抗HbA0抗体塗布部eがそれぞれ設けられ、免疫クロマト分析装置30を構成している。
【0007】
HbA1cの血中濃度を測定する際は、図4のフローチャートに示すように、まず、採取した血液と、ヘモグロビンβ鎖N末端をタンパク質表面に露出させる成分(N末端露出剤)とを混合し(S401)、数分間静置し、HbA1cのエピトープをヘモグロビンタンパク質の表面に露出させ、試料液を作成する(S402)。得られた試料液の適当量をサンプルパッドbに滴下する(S403)。
【0008】
続いて、サンプルパッドbにさらに展開液を適当量滴下し(S404)、試料液を毛細管現象により抗体固定化メンブレンf上で展開させる(S405)。抗体固定化メンブレンf上を展開した試料液は、抗HbA1c抗体塗布部dに到達し、ここで試料液中のHbA1cのみが反応し、検出される(S406)。
【0009】
続いてさらに抗体固定化メンブレンf上を展開した試料液は、抗HbA0抗体塗布部eに到達し、試料液中のHbA0のみが反応し、検出される(S407)。その他のヘモグロビンは反応せずに吸水パッドgまで移動する(S408)。このようにして、試料液中のHbA0及びHbA1cがそれぞれ検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−251789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記の従来の免疫クロマト分析装置を用いた場合、採取した血液と、ヘモグロビンβ鎖N末端をタンパク質表面に露出させる成分(N末端露出剤)とを混合する工程(S401)と、数分間静置して試料液を作成する工程と(S402)、試料液をサンプルパッドbに滴下する工程と(S403)、さらに展開液を別途準備してこれをサンプルパッド上に滴下する工程と(404)を有するため、試料液及び展開液の2液を必要とするとともに、これらを別々にサンプルパッドbに滴下する必要があり、測定準備及び操作が煩雑であり、また測定時間がかかり、効率性が悪いという問題点があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、上述の従来の課題を解決し、煩雑な測定準備及び操作を必要とせず、短い測定時間で、効率よく、血液、尿等の様々な検体に含まれる種々の成分を測定することを可能にする免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析方法及び免疫クロマト分析キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、被検出物質を含む検体を添加する試料添加部(サンプルパッド)に、陰イオン性界面活性剤を含有させることにより、上記のような従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0014】
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置であって、
前記試料添加部中に陰イオン性界面活性剤を含有し、
被検出物質が血液中の糖化タンパク質であり、
被検出物質を含む検体を検体希釈液で希釈した検体含有液の一液のみを展開するための免疫クロマトグラフ分析装置。
2.前記試料添加部が、グラスファイバー、セルロース及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれた1種である前記1記載の免疫クロマトグラフ分析装置。
3.前記試料添加部中に前記陰イオン性界面活性剤を8〜800μg含有する前記1又は2に記載の免疫クロマト分析装置。
.前記血液中の糖化タンパク質がHbA1cである前記に記載の免疫クロマト分析装置。
.前記陰イオン性界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である前記1〜のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
.陰イオン性界面活性剤を含有する試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置を用いて検体に含まれる血液中の糖化タンパク質を検出する、以下の工程(1)〜(4)を含む免疫クロマト分析方法。
(1)検体を検体希釈液で希釈した検体含有液の一液のみを試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により被検出物質を認識させる工程
(3)検体及び標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
.前記検体希釈液中に、非イオン性界面活性剤を含有する前記に記載の方法。
.前記検体希釈液中に前記非イオン性界面活性剤を0.01〜5質量%することを特徴とする前記に記載の方法。
.前記試料添加部中に前記陰イオン性界面活性剤を8〜800μg含有する前記6〜8のいずれか1項に記載の方法。
10.試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置と、検体を希釈して検体含有液の1液のみを展開するための検体希釈液とからなる免疫クロマト分析キットであって、
前記検体に含まれる被検出物質が血液中の糖化タンパク質であり、
前記検体希釈液中に非イオン性界面活性剤を含有し、
前記試料添加部中に陰イオン性界面活性剤を含有する免疫クロマト分析キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明の免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析方法及び免疫クロマト分析キットは、試料添加部に陰イオン性界面活性剤を含有しているので、従来のように試料液及び展開液の2液を必要とせず、被検出物質を含む検体を検体希釈液で希釈した検体含有液の1液のみを試料添加部に滴下すればよく、煩雑な測定準備及び操作を必要とせず、短い測定時間で、効率よく、血液、尿等の様々な検体に含まれる種々の成分を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)及び(b)は、本発明の免疫クロマト分析装置の一例を説明するための概略図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は平面図である。
図2図2は、本発明の免疫クロマト分析キットを用いてHbA1cの血中の総ヘモグロビン量に対する濃度を測定する際のフローチャートである。
図3図3は、従来技術の免疫クロマト分析装置を説明するための概略図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は平面図である。
図4図4は、従来技術の免疫クロマト分析装置を用いてHbA1cの血中の総ヘモグロビン量に対する濃度を測定する際のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明に用いられる検体は、例えば血液、血漿、血清のような血液試料、尿、唾液、髄液、汗、涙、羊水、乳頭分泌液、鼻汁、痰、鼻腔又は咽頭拭い液、皮膚からの浸出液、組織や細胞及び糞便からの抽出物等が挙げられる。
【0019】
本発明における被検出物質としては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、ガン胎児性抗原(CEA)等の腫瘍マーカー物質、フェリチン、前立腺特異抗原(PSA)、免疫グロブリンG(IgG)等の血清タンパク質、リューマチ因子、成長ホルモン(GH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)等のホルモン関連物質、インフルエンザウィルス、アデノウィルス、クラミジア抗原、A群溶連菌抗原等の細菌抗原、およびヘモグロビン由来のタンパク質等が挙げられ、好ましくは血液中の被検出物質、例えば、ヘモグロビン由来のタンパク質、血漿タンパク、リポタンパク、分泌タンパク、ホルモン、補体、脂質、コレステロール、糖、その他生体内成分、生体内投与薬物およびその代謝産物等が挙げられる。中でも本発明の効果の観点から、血液中の糖化アルブミンや糖化ヘモグロビン等の糖化タンパク質であることが好ましく、HbA1cであることがより好ましい。以下、被検出物質としてHbA1cを、陰性または陽性の判定の基準となる物質としてHbA1c以外のヘモグロビンを例として説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0020】
本発明の免疫クロマト分析装置は、試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む。以下、図面を参照しながら本発明のクロマト分析装置について説明する。図1(a)及び(b)は、本発明の免疫クロマト分析装置の一例を説明するための概略図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は平面図である。
【0021】
図1に示すように、免疫クロマト分析装置1は、プラスチック製粘着シート11上に、試料添加部12、標識物質で標識された抗ヘモグロビン抗体を含有する標識物質保持部13、クロマトグラフ媒体部14、吸収部15の順でキットの長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。
【0022】
また、クロマトグラフ媒体部14上には、検出部として、抗HbA1c抗体が塗布された抗HbA1c抗体塗布部16、抗ヘモグロビン抗体が塗布された抗ヘモグロビン抗体塗布部17、コントロールとして抗IgG抗体が塗布された抗IgG抗体塗布部18がそれぞれ設けられている。
【0023】
プラスチック製粘着シート11は、免疫クロマト分析装置1の基材をなすものであり、片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより片面が粘着面となり、該粘着面上に下記の各構成部位の一部または全部が密着する。プラスチック製粘着シート11の材質は、試料に対して不透過性、非透湿性となるようなものを適宜選択すればよい。
【0024】
試料添加部12は、下記で説明する検体含有液を迅速に吸収するが、保持力は弱く、速やかに抗原抗体反応領域へと検体含有液が移動していくような性質の多孔質シートで構成することができる。多孔質シートとしては、グラスファイバー、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、綿布等から構成されたパッド、繊維、メンブレン等が挙げられる。中でも、グラスファイバー、セルロース及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれた1種を用い、試料添加部12を構成するのが好ましい。
【0025】
試料添加部12は、陰イオン性界面活性剤を含有する。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウロイルメチルアラニン、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩等のアシルアミノ酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩及び特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤等が挙げられ、中でも本発明の効果が向上するという観点から、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等のアルキル硫酸塩がとくに好ましい。
【0026】
試料添加部12は、陰イオン性界面活性剤を、例えば、8〜800μgで含有することができ、10〜500μgで含有するのが好ましく、16〜480μgで含有するのがより好ましい。
試料添加部12に陰イオン性界面活性剤を乾燥保持するには、凍結乾燥、熱風乾燥、自然乾燥等の手段を適宜採用すればよい。
【0027】
陰イオン性界面活性剤は、採取した血液中のHbA1cのエピトープをヘモグロビンタンパク質の表面に露出させる機能を有する。具体的には、ヘモグロビンβ鎖N末端をタンパク質表面に露出させる成分(N末端露出剤)として機能する。
【0028】
このとき、試料添加部12を構成する素材として、グラスファイバー、セルロース及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれた1種を用いた場合に、HbA1cと陰イオン性界面活性剤との接触効率が高くなり、陰イオン性界面活性剤がN末端露出剤として効率的に作用するという効果を奏する。
【0029】
また試料添加部12には、必要に応じて、チオシアン酸ナトリウム、グアニジン塩酸塩、EDTA等の各種添加剤を添加することもできる。
【0030】
標識物質保持部13は、例えば標識物質で標識された抗ヘモグロビン抗体を保持する。標識物質保持部13における抗ヘモグロビン抗体は、検体含有液中のヘモグロビンに対して特異的に結合し得る。このような抗体としては、ポリクローナル抗体やモノクローナル抗体等が挙げられる。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントは、公知であり、入手可能であり、公知の方法により調製することができる。
【0031】
抗体産生動物種としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等である。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよい。モノクローナル抗体は、常法に従って、抗原で免疫したマウスの脾臓細胞と骨髄腫細胞をハイブリッドさせ、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選択し、このハイブリドーマから産生されてくるモノクローナル抗体を収得する[例えば、ケーラーとミルスタインの技法(Nature 256(1975)495−497)を参照]。ポリクローナル抗体は、常法により、抗原を産生動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)に免疫して得た抗血清中から目的とする抗体を分離することにより得られる。
【0032】
標識物質としては、視覚的に着色を確認できる有色物質が好ましく、当業界で公知のものを適宜採用できる。例えば、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス及び酵素標識等が挙げられるが、時間が経過しても退色し難い金属コロイド粒子が標識の安定性の観点からとくに好ましい。金属コロイド粒子としては、金、白金、銅、銀及びパラジウムコロイドの他、それらを混合した粒子等を使用することができ、とくに金コロイド粒子は適当な粒径において赤色を呈する点で好ましい。
【0033】
金属コロイド粒子の平均粒径は、例えば、1〜500nm、強い色調が得られる点で、好ましくは10nm〜150nm、より好ましくは20〜100nmの範囲内である。非金属コロイド粒子として、セレニウムコロイド等を例示することができる。金属コロイド及び非金属コロイド粒子は、常法により調製することができ、このとき、粒径は所望の色調を呈するよう調節される。また、市販品を利用することもできる。
【0034】
着色ラテックスは、ポリスチレン等の高分子重合体の粒子が赤や青色を呈する着色剤により着色したものが挙げられ、常法により調製することができる。酵素標識としては、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ及びガラクトシダーゼ等が挙げられる。酵素標識を使用する場合、当該酵素に対する基質及び必要に応じて発色試薬を作用させ、その反応により生じる発色を検出する。
【0035】
なお、標識物質で標識された抗体の調製は、公知の手段にしたがって行うことができる。例えば金コロイド粒子を抗体に担持する方法としては、物理吸着や化学結合などの公知の方法が挙げられ、具体的には、金粒子がコロイド状に分散した溶液に抗体を加えて物理吸着させた後、牛血清アルブミン溶液などのブロッキングタンパクを添加して抗体が未結合である粒子表面をブロッキングすることにより調製することができる。また、抗原抗体反応は、公知のサンドイッチ法、競合法や、それらを組み合わせた方法を採用することができる。
【0036】
標識物質保持部13の材質としては、例えば、グラスファイバー、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアセテート、ナイロンまたは綿布等が挙げられる。
【0037】
クロマトグラフ媒体部14は、毛細管現象により試料検体を吸収し移動させることができるものであればよく、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラスファイバー、ポリオレフィン、セルロース及びこれらの混合繊維等から構成することができる。
【0038】
クロマトグラフ媒体部14上に設けられた、抗HbA1c抗体塗布部16、抗ヘモグロビン抗体塗布部17、抗IgG抗体塗布部18は、例えば、それぞれの抗体を担持固定できる材料から構成され、該材料としては、例えば、ニトロセルロース等が挙げられる。
【0039】
吸収部15は、過剰の検体含有液を迅速に吸収する能力を有する材料が挙げられ、セルロース繊維、ガラス濾紙等が用いられる。
【0040】
次に本発明の免疫クロマト分析方法について説明する。本発明の免疫クロマト分析方法は、上記で説明した免疫クロマト分析装置を用いて検体に含まれる被検出物質を検出するものであって、以下の工程(1)〜(4)を含む。
(1)検体を検体希釈液で希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により被検出物質を認識させる工程
(3)検体及び標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
【0041】
以下、各工程について説明する。
(1)工程においては、まず、検体を検体希釈液で希釈した検体含有液を調製する。検体希釈液は、(3)工程における検体及び標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させるための展開液として作用することができる。検体希釈液は、展開性が良好でありかつ抗原抗体反応を阻害しないという観点から、非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0042】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド及びアルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。
【0043】
検体希釈液は、例えば、水を溶媒とし、非イオン性界面活性剤を、例えば、0.01〜5質量%の割合で含有することができ、0.03〜3.0質量%の割合で含有するのが好ましく、0.3〜3.0質量%の割合で含有するのがより好ましい。また、pHを調整するためにバッファー類、無機塩類等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0044】
また、本発明の効果が向上するという観点から、試料添加部12が含有する陰イオン性界面活性剤と、検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤との割合に一定の比率を持たせるのが好ましく、具体的には、該陰イオン性界面活性剤:該非イオン性界面活性剤(質量比)として、9:1〜1:90であるのが好ましく、3:1〜1:60であるのがより好ましい。
【0045】
上記のようにして得られた検体希釈液と、患者から採取した血液とを混合し、検体含有液を調製し、試料添加部12に滴下する。なお、患者からの血液の採取場所は、指、歯茎、腕静脈、耳等が挙げられる。
検体含有液に含まれるHbA1cは、試料添加部12に含まれる陰イオン性界面活性剤によって、ヘモグロビンβ鎖N末端がタンパク質表面に露出し、毛細管現象により標識物質保持部13に到達する。
【0046】
(2)工程において、標識物質保持部13に到達した検体含有液中のヘモグロビンは、標識物質により標識された抗ヘモグロビン抗体と抗原抗体反応することで、複合体を形成する。すなわち、被検出物質であるHbA1cも標識物質保持部13に保持されている標識物質により認識されることになる。
【0047】
(3)工程においては、検体及び標識物質、すなわち検体含有液と、抗ヘモグロビン抗体とヘモグロビンの複合体が移動相としてクロマトグラフ媒体部14に展開される。このとき、検体含有液に含まれる非イオン性界面活性剤が該展開の展開性を良化し、また続く抗原抗体反応を阻害しない効果を奏することは上述の通りである。
【0048】
続いて、(4)工程において、クロマトグラフ媒体部14に展開された移動相中の被検出物質であるHbA1cは、抗HbA1c抗体塗布部16に到達し、HbA1cはそこを通過する間に抗HbA1c抗体と反応して固定化される。HbA1c以外のヘモグロビン及び検体含有液は、抗HbA1c抗体塗布部16を反応せずに通過するが、抗ヘモグロビン抗体塗布部17に到達すると、HbA1c以外のヘモグロビンは抗ヘモグロビン抗体と反応し固定化される。
【0049】
なお、抗原と反応しなかった標識物質や抗体塗布部16及び17で反応しなかった標識物質は抗IgG抗体塗布部18で抗IgG抗体と反応し固定化され、展開が正常に行われていることを示すコントロールとして発色する。その他の試料液成分は反応せずに吸収部15まで移動する。このようにして、各塗布部においてHbA1c及びHbA1c以外のヘモグロビンの存在による発色シグナルが確認できる。なお、抗HbA1c抗体及び抗ヘモグロビン抗体は、前述のようなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよい。
【0050】
血中成分には個人差が存在し、単にHbA1cを発色させてその強度を確認しただけでは、糖尿病の判定は困難である。そこで、HbA1cとHbA1c以外のヘモグロビンを同時に発色させ、両者の発色度合いの比較から該判定を行うのがよい。
【0051】
具体的には、例えば、HbA1cとHbA1c以外のヘモグロビンの発色シグナルを比較し、HbA1cの発色シグナルがHbA1c以外のヘモグロビンのそれよりも強い場合、陽性と判定することができる。逆にHbA1cの発色シグナルがHbA1c以外のヘモグロビンと同等またはそれよりも弱い場合、陰性と判定することができる。
【0052】
本発明の免疫クロマト分析キットは、前記陰イオン性界面活性剤を含有する試料添加部12、標識物質保持部13、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部14及び吸収部15を含む本発明の免疫クロマト分析装置と、前記検体を希釈して展開するための非イオン性界面活性剤を含有する検体希釈液とからなる。
【0053】
図2は、本発明の免疫クロマト分析キットを用いてHbA1cの血中の総ヘモグロビン量に対する濃度を測定する際のフローチャートである。
【0054】
図2のフローチャートに示すように、まず、採取した血液と検体希釈液とを混合し、検体含有液を調製する(S201)。得られた検体含有液の適当量を試料添加部12に滴下する(S202)。続いて、検体含有液を毛細管現象により標識物質保持部13上で展開させる(S203)。標識物質保持部13上を展開した検体含有液は、クロマトグラフ媒体部14に担持された抗HbA1c抗体塗布部16に到達し、ここで試料液中のHbA1cのみが反応し、検出される(S204)。
【0055】
続いてさらにクロマトグラフ媒体部14上を展開した検体含有液は、抗ヘモグロビン抗体塗布部17に到達し、検体含有液中の抗HbA1c抗体塗布部16で反応しなかったヘモグロビンが反応し、検出される(S205)。その他の試料液成分は反応せずに吸収部15まで移動する(S206)。このようにして、試料液中のHbA1c以外のヘモグロビン及びHbA1cがそれぞれ検出される。
【0056】
本発明ではN末端露出剤である陰イオン性界面活性剤を試料添加部12に含有させているので、従来技術のようにN末端露出剤を含有する試料液及び展開液の2液を用意し、かつこれらの2液を個別に試料添加部12に滴下する必要がない。
【0057】
したがって、本発明では、煩雑な測定準備及び操作を必要とせず、短い測定時間で、効率よく、血液、尿等の様々な検体に含まれる種々の成分を測定することが可能となる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0059】
実施例1
以下の手順で、図1に示すような免疫クロマト分析装置1を作製した。
(1)試料添加部12の作製
グラスファイバーパッド(ミリポア社製商品名グラスファイバーコンジュゲートパッド、サイズ縦32mm(検体含有液展開方向)、横150mm、厚さ0.43mm)に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を、60μg/cmの割合で均一に添加し、50℃で4時間乾燥することにより、試料添加部12を作製した。
【0060】
(2)抗HbA1c抗体塗布部16、抗ヘモグロビン抗体塗布部17、抗IgG抗体塗布部18の作製
メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF12250mm×25mm)を用いた。5質量%のスクロース及び5質量%のイソプロパノールを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるように抗HbA1cモノクローナル抗体、抗ヘモグロビンモノクローナル抗体または抗IgGモノクローナル抗体を希釈し、その希釈された溶液150μLを抗体塗布機(BioDot社製)によりメンブラン上に1mmの幅で別々の場所に塗布し、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体部14上に抗HbA1c抗体塗布部16、抗ヘモグロビン抗体塗布部17、抗IgG抗体塗布部18をそれぞれ設けた。
【0061】
(3)標識物質溶液の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:平均粒子径40nm)0.5mLに、Tris緩衝(pH8.5)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈した抗ヘモグロビンモノクローナル抗体0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、0.01質量%のPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−200SH、分子量20000)を含むTris緩衝液(pH8.5)を0.1ml加え(添加後のPEG−SH濃度:0.001質量%)、室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液を作製した。
【0062】
(4)免疫クロマト分析装置1の作製
上記作製した標識物質溶液 220μlに100μlの25質量%トレハロース水溶液を含むリン酸緩衝液(pH9.0)を加えたものを8mm×100mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識物質保持部13を作製した。次に、プラスチック製粘着シート11上に、上記作製した試料添加部12、標識物質で標識された標識物質保持部13、クロマトグラフ媒体部14を貼り合わせ、汎用の吸収部15をさらに貼り合わせ、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、免疫クロマト分析装置1を作製した。この時、一装置あたりに含有するSDSの量は、96μgであった。
【0063】
下記の処方にて、各成分を攪拌し、検体希釈液を調製した。
非イオン性界面活性剤としてTritonX−100(SIGMA 社製、商品名)とTween20(和光純薬社製、商品名)との1:5の質量比の混合物:1.2質量%
バッファーとしてのBicine緩衝液:50mM
無機塩として塩化カリウム:0.6質量%
添加剤としてカゼインナトリウム:2.0質量%
残量:水
【0064】
検体の採取
健康成人男性及び糖尿病男性患者それぞれの指先を穿刺することにより、各種HbA1c濃度を有する血液を採取した。
【0065】
検体含有液の調製
前記血液と前記検体希釈液とを、前者:後者として(容量比)、1:1000で混合し、検体含有液を調製した。
【0066】
免疫クロマト分析の実施
上記のようにして作製した免疫クロマト分析装置1の試料添加部12に、前記検体含有液110μlを供給し、10分後の抗HbA1c抗体塗布部16における赤色の発色シグナルを目視で確認した。結果を表1に示す。
なお表中の評価基準は以下の通りである。
−:赤色の発色を確認できないもの
±:赤色の発色は確認できるが非常に色が薄いもの
+:赤色の発色を確認できるもの
++:強い赤色の発色を確認できるもの
+++:非常に強い赤色の発色が確認できるもの
【0067】
実施例2
実施例1において、試料添加部12の構成素材をグラスファイバーパッドから、セルロースファイバーパッド(旭化成せんい社製商品名SR−601)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
実施例1において、試料添加部12の構成素材をグラスファイバーパッドから、ポリエチレンテレフタレート(PET)パッド(旭化成せんい社製商品名ベンリーゼ A−01)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
実施例1において、試料添加部12の構成素材をグラスファイバーパッドから、ニトロセルロースメンブレン(ミリポア社製商品名HF120)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0070】
参考例1
実施例1において、SDSを添加しない試料添加部を用い、下記の組成を有するN末端露出剤を含有する抽出液に血液を添加し2分間静置して調製した試料液10μlと、下記の組成を有する展開液100μlとを、それぞれ個別に試料添加部12に滴下したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
(抽出液の組成)
陰イオン界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム:1.0質量%
添加剤としてチオシアン酸ナトリウム:100mM
添加剤としてEDTA:5mM
残量:水
(展開液の組成)
非イオン性界面活性剤としてTritonX−100(SIGMA 社製、商品名)とTween20(和光純薬社製、商品名)との1:5の質量比の混合物:1.2質量%
バッファーとしてのBicine緩衝液:50mM
無機塩として塩化カリウム:0.6質量%
添加剤としてカゼインナトリウム:2.0質量%
残量:水
【0071】
参考例2
参考例1において、抽出液を用いずに、展開液に血液を添加したこと以外は、参考例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0072】
参考例3〜5
参考例1において、抽出液を用いずに、展開液に表1に示す濃度のSDS及び血液を添加したこと以外は、参考例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例5〜8
実施例1において、試料添加部12に添加するSDSの一装置あたりの含有量と検体希釈液に含有する非イオン界面活性剤の含有率とを表2に記載の値に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表1及び表2の結果から、本発明の免疫クロマト分析装置を用いることにより、従来の参考例1のように試料液及び展開液の2液を必要とせず、検体含有液の1液のみを試料添加部に滴下すればよく、煩雑な測定準備及び操作を必要とせず、短い測定時間で、効率よく、血液、尿等の様々な検体に含まれる種々の成分を、従来の参考例1と同等に測定することができる。
【0077】
参考例2は、SDSを添加しない試料添加部を用い、かつ展開液のみを用いた例であるので、HbA1cの濃度が高くても、発色の度合いが貧弱であった。
【0078】
参考例3〜5は、SDSを添加しない試料添加部を用い、かつ展開液にSDSを添加した例であるが、参考例2よりも発色の度合いは改善されるものの、依然として満足されるレベルに到達することはできなかった。
【符号の説明】
【0079】
1 免疫クロマト分析装置
11 プラスチック製粘着シート
12 試料添加部
13 標識物質保持部
14 クロマトグラフ媒体部
15 吸収部
16 抗HbA1c抗体が塗布された抗HbA1c抗体塗布部
17 抗ヘモグロビン抗体が塗布された抗ヘモグロビン抗体塗布部
18 抗IgG抗体が塗布された抗IgG抗体塗布部
【要約】
【課題】煩雑な測定準備及び操作を必要とせず、短い測定時間で、効率よく、血液、尿等の様々な検体に含まれる種々の成分を測定することを可能にする免疫クロマト分析装置を提供することを課題とする。
【解決手段】試料添加部12、標識物質保持部13、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体部14及び吸収部15を含む免疫クロマト分析装置1であって、試料添加部12中に陰イオン性界面活性剤を含有し、被検出物質を含む検体を検体希釈液で希釈した検体含有液を展開するための免疫クロマト分析装置1によって上記課題を解決した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4