(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上にプラズマを生成して所定の処理を行うプラズマ処理装置のプラズマ処理方法をコンピュータに実施させるためのプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記憶媒体であって,
前記プラズマ処理装置は,基板を載置する基板載置部を有し,高周波電力が印加されるサセプタと,前記基板載置部に載置された基板の周囲を囲むように配置され,前記基板より高い上面を有する外側リングと,この外側リングの内側に延在して前記基板の周縁部の下方に入り込むように配置され前記基板より低い上面を有する内側リングとで一体に構成されたフォーカスリングと,を備え,前記フォーカスリングと前記サセプタとの間に介在する誘電性リングと,前記誘電性リングの誘電率を可変する誘電率可変機構と,前記誘電性リングの外側に前記フォーカスリングの下面との間に隙間を開けて配置した接地電位を保持する接地体と,を備えることによって,前記サセプタからの電流が前記基板を介して前記フォーカスリングに流れて前記接地体へと流れる経路と,前記サセプタからの電流が前記誘電性リングを介して前記フォーカスリングに流れて前記接地体へと流れる経路と,を形成し,
前記プラズマ処理方法は,前記誘電率可変機構によって前記誘電性リングの誘電率を前記基板の種類に応じて調整して前記サセプタから前記誘電性リングを介して前記フォーカスリングに流れる電流を調整することにより,前記サセプタから前記基板を介して前記フォーカスリングに流れる電流を調整し,前記基板の表面にプロセス処理を実行することを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
(プラズマ処理装置の構成例)
先ず,本発明の実施形態にかかるプラズマ処理装置の概略構成を図面を参照しながら説明する。ここでは,平行平板型のプラズマ処理装置を例に挙げる。
図1は,本実施形態にかかるプラズマ処理装置100の概略構成を示す縦断面図である。
【0025】
プラズマ処理装置100は,例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムから成る円筒形状に成形された処理容器を有する処理室102を備える。処理室102は接地されている。処理室102内の底部にはウエハWを載置するための略円柱状の載置台110が設けられている。
【0026】
載置台110は下部電極113を,セラミックなどで構成された絶縁体112で支持して構成される。下部電極113は,その本体を構成するサセプタ114を備える。サセプタ114は,その中央部は周縁部よりも高い凸状の基板載置部が形成されている。
【0027】
この基板載置部はウエハWの径よりも小径に形成されており,ウエハWを載置したときにウエハWの周縁部が張り出すようになっている。このため,ウエハWのプロセス処理を行う際に処理ガスなどの成分がウエハWの縁部裏側に回り込み,ウエハWの縁部裏側にも付着物(CFポリマーなど)が付着する場合がある。この付着物は後述する付着物除去処理によって除去することができる。
【0028】
サセプタ114には,フォーカスリング装置200が配置されている。フォーカスリング装置200は,サセプタ114の基板載置部とその表面に載置されるウエハWを囲むように配置されたフォーカスリング210を備える。
【0029】
本実施形態におけるフォーカスリング装置200は,フォーカスリング210の上面電位を調整できるようになっている。このフォーカスリング210の上面電位を調整することで,フォーカスリング210からウエハ周縁部にかけてその上方のプラズマシースを調整できるので,ウエハ周縁部における処理レート(例えばエッチングレート,成膜レート),印加電圧などを制御できる。これによって,ウエハWの周縁部と中央部との処理の均一性を向上させたり,ウエハ周縁部に付着した付着物を除去する処理の処理レートを向上させたりすることができる。このようなフォーカスリング装置200の具体的構成例については後述する。
【0030】
サセプタ114の基板載置部の上面には,ウエハWを静電力によって吸着保持する静電チャック115が設けられている。静電チャック115はセラミックなどで構成され,その内部には電極116が設けられる。電極116には,図示しない直流電源が接続されている。これによれば,直流電源から電極116に直流電圧(例えば1500V)が印加される。これによって,ウエハWが静電チャック115に静電吸着される。
【0031】
サセプタ114内には,サセプタ温調部117が設けられている。サセプタ温調部117は,例えばサセプタ114内に設けられたリング状の温度調節媒体室118に温度調節媒体を循環するように構成されている。このような温度調節媒体の循環により,サセプタ114を所望の温度に制御できるようになっている。
【0032】
なお,サセプタ114には上記の他,図示はしないが,ウエハWの裏面に伝熱媒体(例えばHeガスなどのバックサイドガス)を供給するためのガス通路が形成されている。この伝熱媒体を介してサセプタ114とウエハWとの間の熱伝達がなされ,ウエハWが所定の温度に維持される。
【0033】
下部電極113の上方には,この下部電極113に対向するように上部電極130が設けられている。この上部電極130と下部電極113の間に形成される空間がプラズマ生成空間となる。上部電極130は,絶縁性遮蔽部材131を介して,処理室102の上部に支持されている。
【0034】
上部電極130は,主として電極板132とこれを着脱自在に支持する電極支持体134とによって構成される。電極板132は例えば石英から成り,電極支持体134は例えば表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどの導電性材料から成る。
【0035】
電極支持体134には処理ガス供給源142からの処理ガスを処理室102内に導入するための処理ガス供給部140が設けられている。処理ガス供給源142は電極支持体134のガス導入口143にガス供給管144を介して接続されている。
【0036】
ガス供給管144には,例えば
図1に示すように上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)146および開閉バルブ148が設けられている。なお,MFCの代わりにFCS(Flow Control System)を設けてもよい。処理ガス供給源142は所定の処理ガスを供給するようになっている。例えばプロセス処理としてエッチングを行う場合には,処理ガスとしてC
4F
8ガスのようなフルオロカーボンガス(C
xF
y)が供給される。
【0037】
なお,
図1にはガス供給管144,開閉バルブ148,マスフローコントローラ146,処理ガス供給源142等から成る処理ガス供給系を1つのみ示しているが,プラズマ処理装置100は,複数の処理ガス供給系を備えている。例えば,CF
4,O
2,N
2,CHF
3等の処理ガスが,それぞれ独立に流量制御され,処理室102内に供給される。
【0038】
電極支持体134には,例えば略円筒状のガス拡散室135が設けられ,ガス供給管144から導入された処理ガスを均等に拡散させることができる。電極支持体134の底部と電極板132には,ガス拡散室135からの処理ガスを処理室102内に吐出させる多数のガス吐出孔136が形成されている。ガス拡散室135で拡散された処理ガスを多数のガス吐出孔136から均等にプラズマ生成空間に向けて吐出できるようになっている。この点で,上部電極130は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0039】
処理室102の底部には排気管104が接続されており,この排気管104には排気部105が接続されている。排気部105は,ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており,処理室102内を所定の減圧雰囲気に調整する。また,処理室102の側壁にはウエハWの搬出入口106が設けられ,搬出入口106にはゲートバルブ108が設けられている。ウエハWの搬出入を行う際にはゲートバルブ108を開く。そして,図示しない搬送アームなどによって搬出入口106を介してウエハWの搬出入を行う。
【0040】
上部電極130には,第1高周波電源150が接続されており,その給電線には第1整合器152が介挿されている。第1高周波電源150は,50〜150MHzの範囲の周波数を有するプラズマ生成用の高周波電力を出力することが可能である。このように高い周波数の電力を上部電極130に印加することにより,処理室102内に好ましい解離状態でかつ高密度のプラズマを形成することができ,より低圧条件下のプラズマ処理が可能となる。第1高周波電源150の出力電力の周波数は,50〜80MHzが好ましく,典型的には図示した60MHzまたはその近傍の周波数に調整される。
【0041】
下部電極としてのサセプタ114には,第2高周波電源160が接続されており,その給電線には第2整合器162が介挿されている。この第2高周波電源160は数百kHz〜十数MHzの範囲の周波数を有するバイアス用の高周波電力を出力することが可能である。第2高周波電源160の出力電力の周波数は,典型的には2MHzまたは13.56MHz等に調整される。
【0042】
なお,サセプタ114には第1高周波電源150からサセプタ114に流入する高周波電流を濾過するハイパスフィルタ(HPF)164が接続されており,上部電極130には第2高周波電源160から上部電極130に流入する高周波電流を濾過するローパスフィルタ(LPF)154が接続されている。
【0043】
プラズマ処理装置100には,制御部(全体制御装置)400が接続されており,この制御部400によってプラズマ処理装置100の各部が制御されるようになっている。また,制御部400には,オペレータがプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや,プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部410が接続されている。
【0044】
さらに,制御部400には,プラズマ処理装置100で実行される各種処理(例えばウエハWの表面をエッチングしたり成膜したりするプロセス処理,ウエハWの周縁部に付着する付着物の除去処理など)を制御部400の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部420が接続されている。
【0045】
記憶部420には,例えば複数の処理条件(レシピ)が記憶されている。これらの処理条件は,プラズマ処理装置100の各部を制御する制御パラメータ,設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。各処理条件は例えば処理ガスの流量比,処理室内圧力,高周波電力などのパラメータ値を有する。また,本実施形態では,例えば後述する
図16に示す上面電位調整データのように,ウエハWの種類ごとにフォーカスリング210の上面電位を調整するデータが関連づけられて記憶されている。
【0046】
なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部420の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0047】
制御部400は,操作部410からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部420から読み出して各部を制御することで,プラズマ処理装置100での所望の処理を実行する。また,操作部410からの操作により処理条件を編集できるようになっている。
【0048】
このような構成のプラズマ処理装置100では,例えばウエハWに対して所定のプロセス処理を実行する場合,図示しない搬送アームなどによりウエハWを処理室102内へ搬入し,載置台110上に載置させて,静電チャック115によりウエハWを静電吸着する。そして,処理ガス供給源142から処理室102内に所定の処理ガスを導入し,排気部105により処理室102内を排気することにより,処理室102内を所定の真空圧力に減圧する。
【0049】
このように所定の真空圧力を維持した状態で,第1高周波電源150から上部電極130に例えば60MHzのプラズマ生成用高周波電力を印加するとともに,第2高周波電源160から下部電極113のサセプタ114に例えば2MHzのバイアス用高周波電力を印加することにより,プラズマ生成用高周波電力の作用でウエハWに処理ガスのプラズマが発生するとともに,バイアス用高周波電力の作用でウエハW(サセプタ114)にセルフバイアス電位が発生する。このため,ウエハW上にはプラズマ電位とウエハ電位(サセプタ電位)に応じたプラズマシースの電界が形成されて,プラズマ中のイオンを引き込むことができる。これにより,ウエハW上のプロセス処理(エッチング処理,成膜処理など)を進行させることができる。
【0050】
このとき,フォーカスリング210上にもその表面電位に応じたプラズマシースの電界が形成される。従って,フォーカスリング装置200によってフォーカスリング210の表面電位を調整することで,ウエハWの周縁部においても,中央部と同様のプロセス処理を進行させることができる。
【0051】
(フォーカスリング装置の構成例)
次に,本実施形態におけるフォーカスリング装置200の構成例について説明する。フォーカスリング装置200は,静電チャック115上に載置されたウエハWを囲むように配置され,導電性を有するフォーカスリング210を備える。フォーカスリング210とサセプタとの間には,誘電性リング220が介在している。すなわち,誘電性リング220は,サセプタ114の周縁部の上部及び側部を囲むように配置され,この誘電性リング220上にフォーカスリング210が設けられている。
【0052】
フォーカスリング210は,例えばSi(導電性を出すためにB(ホウ素)等をドープ済みのSi),C,SiC等の導電性材料からなる。誘電性リング220は,例えばクォーツ,アルミナ等のセラミックス,ベスペル(登録商標)等の樹脂などの誘電性材料からなる。
【0053】
フォーカスリング210は,上面の高さが異なる外側リング214とその内側に延在する内側リング212とを一体で構成してなる。外側リング214の上面215はウエハWの上面よりも高くなるように形成され,内側リング212の上面213はウエハWの下面よりも低くなるように形成される。外側リング214はウエハWの周縁部の外側にその周囲を囲むように離間して配置され,内側リング212はウエハWの周縁部の下側に離間して配置される。
【0054】
図1では,内側リング212と外側リング214とが一体で構成されるので,これらは互いに電気的に導通している。また,内側リング212と外側リング214はともに,誘電性リング220によってサセプタ114に対して電気的に絶縁されている。しかも,フォーカスリング210(外側リング214と内側リング212)は,誘電性リング220の他には電気的に接触していないので,接地電位(グランド)に対しても電気的に浮いたフローティング状態(絶縁状態)になっている。このようにフローティング状態にしてサセプタ114(ウエハW)との間に電位差を発生させることで,ウエハWの周縁部に付着する付着物を低減できる。
【0055】
誘電性リング220の外側には,フォーカスリング210の下方にリング状の接地体230が設けられている。接地体230は,接地されており,常に接地電位に保持される。接地体230の上面とフォーカスリング210の下面との間は接触しないように隙間が設けられている。フォーカスリング210と誘電性リング220の外周は絶縁部材240で囲まれている。なお,絶縁部材240の上部はカバーリングとして構成してもよい。
【0056】
また,外側リング214の上面215の内周縁部に内側(ウエハW側)に向けて次第に低くなる傾斜面を形成すると,外側リング214の上面215は外側の水平面と内側の傾斜面で構成される。これにより,外側リング214上とウエハW上との境界でのシースの厚さの変動を緩和できる。
【0057】
ところで,本実施形態のフォーカスリング210のように,フォーカスリング210の下に誘電性リング220を設けて,フォーカスリング210をフローティング状態にすると,フォーカスリング210の上面電位は,例えばサセプタ114とフォーカスリング210との距離,基板の種類などによって変動し,ウエハWの周縁部におけるプロセス処理,付着物除去処理に影響を与える虞がある。
【0058】
そこで,本実施形態におけるフォーカスリング装置200においては,誘電性リング220の誘電率を可変する誘電率可変機構250を設けることによって,誘電性リングを交換することなくその誘電率を調整できるようにした。すなわち,誘電率可変機構250によって誘電性リング220の誘電率を調整することで,サセプタ114とフォーカスリング210との間のインピーダンスを調整することができる。これにより,ウエハWの周縁部の印加電圧のばらつきを抑えることができ,フォーカスリング210の上面電位を所望の値に制御できる。
【0059】
このような誘電率可変機構250としては,例えば誘電性リング220に形成した空間内で導電体を昇降させる導電体昇降機構によって構成する。これによれば,導電体をサセプタ114の近傍でフォーカスリング210に近づけたり遠ざけたりすることで,誘電性リング220の誘電率を変えることができるので,フォーカスリング210の上面電位を調整できる。
【0060】
以下,このような誘電率可変機構250を備えるフォーカスリング装置200の具体例について図面を参照しながら説明する。
図2は,本実施形態におけるフォーカスリング装置200の具体的構成例を示す断面図であって,誘電率可変機構の構成例を説明するための図である。
図3は,
図2に示すフォーカスリング装置の動作説明図であって,導電体を上昇させた場合である。
図4は,
図2に示すフォーカスリング装置の動作説明図であって,導電体を下降させた場合である。
図3,
図4はそれぞれ,
図2に示すフォーカスリング210の近傍の構成を拡大したものである。
【0061】
図2に示す誘電率可変機構250は,誘電性リング220にサセプタ114寄りにリング状の空間を形成し,その空間内にリング状の導電体252を導電体駆動機構254によって昇降自在に設ける。導電体252は例えばアルミニウムなどの導電性材料で構成される。
【0062】
なお,
図2に示す誘電率可変機構250では,上述した誘電性リング220に形成する空間の上部を開口することで,導電体252をフォーカスリング210の下面に直接接触するまで上昇可能にしている。このような構成に限られるものではなく,誘電性リング220に形成する空間はその上部を閉塞して,導電体252をフォーカスリング210の下面に直接接触しないようにしてもよい。
【0063】
導電体駆動機構254は,具体的には例えば
図2に示すように昇降自在に設けられたベース256と,導電体252を下方から支持する複数(例えば3つ)の支持体257と,ベース256をボールネジなどのロッドに接続して昇降駆動させるモータ259とにより構成される。
【0064】
このような構成によれば,例えば
図3に示すように導電体駆動機構254によって導電体252を上昇させて,導電体252をフォーカスリング210に近づけると,誘電性リング220内ではサセプタ114から導電体252を介してフォーカスリング210に流れる電流が増加する。すなわち,誘電性リング220の見かけ上のインピーダンスが低下し,誘電性リング220の誘電率が上昇する。
【0065】
この場合は,導電体252を上昇させるに連れて,サセプタ114から導電体252を介してフォーカスリング210に流れる電流が増え,誘電性リング220の誘電率も上昇させることができる。これにより,フォーカスリング210の上面電位をサセプタ114の電位に近づくように上昇させることができる。
【0066】
これに対して,
図4に示すように導電体駆動機構254によって導電体252を下降させて,導電体252をフォーカスリング210から遠ざけると,誘電性リング220内ではサセプタ114からフォーカスリング210を介してフォーカスリング210に流れる電流が減少する。すなわち,誘電性リング220の見かけ上のインピーダンスが上昇し,誘電性リング220の誘電率が低下する。
【0067】
この場合は,導電体252を下降させるに連れて,サセプタ114から導電体252を介してフォーカスリング210に流れる電流が減り,誘電性リング220の誘電率も低下させることができる。これにより,フォーカスリング210の上面電位を低下させることができる。
【0068】
このように,
図2に示すフォーカスリング装置200によれば,誘電率可変機構250によって導電体252を上昇させることで,フォーカスリング210の上面電位をサセプタ114の電位に近づけることができる。このとき,導電体252を上昇させることで,フォーカスリング210には,サセプタ114からの電流は導電体252を介して流れ込み易くなるのに対して,ウエハWからの電流は流れ込み難くなる。
【0069】
これによって,フォーカスリング210の上面電位は,ウエハWの抵抗値の影響を受け難くなるので,ウエハ周縁部の印加電圧(高周波バイアス電圧Vpp)のばらつきに起因する処理レートの低下を防ぎ,処理レートを向上させることができる。
【0070】
なお,
図2に示すように導電体252を支持体257で支持する場合には,サセプタ114からの電流が導電体252に流れ込んでも,その電流が支持体257を介して導電体駆動機構254に流出しないような構成にすることが好ましい。例えば導電体252のみならず,支持体257もアルミニウムなどの導電性材料で構成した場合は,
図2に示すように各支持体257とベース256との間に絶縁体258を介在させることが好ましい。
【0071】
こうすることによって,サセプタ114から導電体252に流れ込んだ電流は,支持体257を介してベース256に漏れ出すことなく,フォーカスリング210の方に流れるようにすることができる。なお,
図2に示す構成に限られるものではなく,例えば支持体257全体を絶縁材料で構成してもよく,またベース256を絶縁材料で構成してもよい。
【0072】
次に,
図2に示すフォーカスリング装置200において,誘電率可変機構250による導電体252の位置とその作用効果について,誘電率可変機構250を設けないフォーカスリングと比較しながらより詳細に説明する。
図5は誘電率可変機構250を設けない場合の比較例にかかるフォーカスリング装置の作用効果を説明するための部分断面図であり,
図6は,
図5に示す比較例にかかるフォーカスリング装置の等価回路を示す図である。
図7は,誘電率可変機構250を設けた本実施形態にかかるフォーカスリング装置200の作用効果を説明するための部分断面図である。
【0073】
図5に示すように,誘電率可変機構250を設けない場合には,静電チャック115の厚みを厚くするほど,フォーカスリング210がサセプタ114から離れるので,プラズマを生成したときにフォーカスリング210にはサセプタ114からの電流が流れ込み難くなるのに対して,ウエハWから電流が流れ込み易くなる。
【0074】
この点について
図6に示す等価回路によってより具体的に説明する。
図6に示す等価回路のうち,プラズマPとウエハWとの間の静電容量をC1,プラズマPとフォーカスリング210との間の静電容量をC2とする。また,ウエハWと静電チャック115とサセプタとの間の静電容量をC3とし,フォーカスリング210と誘電性リング220との間の静電容量をC4とする。さらに,フォーカスリング210と接地体230との間の静電容量をC5とし,ウエハWとフォーカスリング210との間の静電容量をC6とする。
【0075】
図6によれば,フォーカスリング210とサセプタ114との距離が離れるほど,静電容量C3,C4,C5を通るルート(サセプタ114→誘電性リング220→フォーカスリング210→接地体230)で電流が流れ難くなるので,その分,静電容量C6,C5を通るルート(サセプタ114→ウエハW→フォーカスリング210→接地体230)で電流が流れ易くなる。
【0076】
このように,ウエハWからフォーカスリング210に電流が流れ易くなると,フォーカスリング210の上面電位は,ウエハWの表面構造による抵抗値の相違に影響してしまう。すなわち,ウエハWの種類が異なればその抵抗値も異なるので,フォーカスリング210に流れる電流にもばらつきが生じる。このため,例えばウエハWの種類によってウエハWへの印加電圧(高周波バイアス電圧Vpp)は変動し,フォーカスリング210の上面電位も低下し,ウエハWの周縁部の処理レートが低下してしまうという問題がある。
【0077】
本実施形態によれば,誘電率可変機構250を制御することでこの問題を解消できる。具体的には,
図7に示すように誘電率可変機構250によって導電体252を上昇させてフォーカスリング210に近づけて誘電性リング220の誘電率を制御すればよい。これによれば,サセプタ114から導電体252を介してフォーカスリング210に電流が流れ易くなる。すなわち,誘電性リング220の誘電率を変えることで
図6に示す静電容量C4を制御できるので,静電容量C3,C4,C5を通るルートに電流を流れ易くすることができる。その分,静電容量C6,C5を通るルートに流れる電流を抑えることができるので,ウエハWからフォーカスリング210に流れる電流を抑えることができる。
【0078】
これによって,ウエハWの種類が変わっても,それによるウエハWへの印加電圧(高周波バイアス電圧Vpp)のばらつきをなくすことができる。これによって,ウエハWの周縁部の処理レートの低下を向上させることができる。
【0079】
ところで,上述したようにウエハWの種類によってその抵抗値も異なるので,ウエハWからフォーカスリング210に流れる電流も変わる。このため,ウエハWの種類に応じてウエハWからフォーカスリング210に流れる電流が最も小さくなるように導電体252の位置を調整することで,ウエハWへの印加電圧(高周波バイアス電圧Vpp)のばらつきをより効果的に防止でき,ウエハWの周縁部の処理レートの低下を効果的に向上させることができる。
【0080】
この場合,ウエハWの種類ごとに予め導電体252の最適な位置を上面電位調整データとして記憶部420に記憶しておき,ウエハWのプロセス処理を実行するときにウエハWの種類に応じて記憶部420から調整データを読み出して誘電率可変機構250を駆動して導電体252の位置を自動的に調整するようにしてもよい。
【0081】
さらに,本実施形態では,導電体252をフォーカスリング210に近づけるほど,フォーカスリング210の上面電位をサセプタ114の電位に近づけることができる。これにより,フォーカスリング210へのイオンなどの活性種の引き込みを高めることができるので,ウエハWの周縁部の処理レートをさらに向上させることもできる。
【0082】
なお,
図2に示す誘電率可変機構250では,誘電性リング220内を昇降可能な導電体を設けた場合について説明したが,これに限られるものではない。誘電率可変機構250は誘電性リング220の内部に誘電性を有する流体(液体やガス)を導入可能に構成してもよい。
【0083】
例えば液状の誘電性流体を用いる場合には,
図8に示すように誘電性リング220内に設けたリング状の流体室251を誘電性流体で満たして循環させることで,誘電性リング220の誘電率を変えることができる。具体的には
図8に示す流体室251には導入管251aを介して誘電性流体を導入し,排出管251bから排出させることで誘電性流体を循環させる。
【0084】
液状の誘電性流体としては,メタノール,アセトン,ベンゼン,ニトロベンゼンなどが挙げられる。このような誘電性流体の種類によって誘電率が異なる。例えばエタノール,メタノール,アセトンの比誘電率はそれぞれ,24.3,32.6,20.7である。このため,流体室251を循環させる誘電性流体の種類を変えることで,誘電性リング220の誘電率を調整することができる。例えば流体室251内に比較的比誘電率の大きなメタノールを循環させることで,誘電性リング220の誘電率を大きくすることができる。
【0085】
このような構成によれば,流体室251に所定の誘電性流体を循環させて誘電性リング220の誘電率を大きくすることで,
図9に示すようにサセプタ114から導電体252を介してフォーカスリング210に電流が流れ易くなり,ウエハWからフォーカスリング210に流れる電流を抑えることができる。
【0086】
これによれば,ウエハWの種類に拘わらず,フォーカスリング210の上面電位の低下を抑えることができる。このため,ウエハWへの印加電圧(高周波バイアス電圧Vpp)のばらつきをなくすことができ,ウエハWの周縁部の処理レートを向上させることができる。
【0087】
なお,ガス状の誘電性流体を用いる場合には,ガス供給源から例えばPCVバルブなどの圧力調整バルブを介して所定の圧力で導入する。これによっても,誘電性リング220の誘電率を変えることができる。
【0088】
(フォーカスリング装置の変形例)
次に,フォーカスリング装置200の変形例について図面を参照しながら説明する。上述した
図2に示すものでは,誘電性リング220内の導電体252をフォーカスリング210に近づけたり,遠ざけたりすることによってフォーカスリング210の上面電位を調整する場合について説明したが,接地体230をフォーカスリング210に近づけたり,遠ざけたりすることによってフォーカスリング210から接地電位に流れる電流を調整することによっても,フォーカスリング210の上面電位を制御できる。そこで,ここでは,導電体252のみならず,接地体230についても昇降可能に構成したフォーカスリング装置200について説明する。
【0089】
図10は,本実施形態におけるフォーカスリング装置200の変形例の構成を示す断面図であって,
図2に示すフォーカスリング装置200の接地体230を昇降可能に構成したものである。
図11は,
図10に示すフォーカスリング装置の動作説明図であって,接地体を下降させた場合である。
図12は,
図10に示すフォーカスリング装置の動作説明図であって,接地体を上昇させた場合である。
【0090】
図10に示す接地体230は接地電位(グランド電位)を保持したまま接地体昇降機構234によって昇降可能に設けられ,フォーカスリング210との隙間を調整できる。接地体昇降機構234は,具体的には例えば
図10に示すように昇降自在に設けられたベース236と,接地体230を下方から支持する複数(例えば3つ)の支持体237と,ベース236をボールネジなどのロッドに接続して昇降駆動させるモータ239とにより構成される。
【0091】
このような構成によれば,例えば
図11に示すように接地体昇降機構234によって接地体230を下降させて,接地体230をフォーカスリング210から遠ざけると,これらの間の隙間は広くなり,フォーカスリング210から接地体230に流れる電流が減少する。
【0092】
この場合は,接地体230を下降させるほど,フォーカスリング210から接地体230に流れる電流が減り,フォーカスリング210をよりフローティングに近い状態にできる。従って,この状態で導電体252の位置を調整すれば,その導電体252の位置に応じたフォーカスリング210の上面電位を保持できる。
【0093】
これに対して,例えば
図12に示すように接地体昇降機構234によって接地体230を上昇させて,接地体230をフォーカスリング210に近づけると,これらの間の隙間は狭くなり,フォーカスリング210から接地体230に流れる電流が増加する。
【0094】
この場合は,接地体230を上昇させるに連れて,フォーカスリング210から接地体230に流れる電流が増えるので,フォーカスリング210の上面電位を接地電位近くまで低下させることができる。すなわち,導電体252の位置を変えなくても,接地体230を上昇させるに連れて,フォーカスリング210の上面電位を低下させることができる。
【0095】
なお,フォーカスリング210に接触するまで接地体230を上昇させると,フォーカスリング210の上面電位は接地電位まで低下してしまうので,これを避けるには,フォーカスリング210に接触しない程度に接地体230を上昇させることが好ましい。
【0096】
このように,
図10に示すフォーカスリング装置200によれば,誘電率可変機構250の導電体252の位置のみならず,接地体230の位置を調整することによっても,フォーカスリング210の上面電位を制御することができる。すなわち,接地体230をフォーカスリング210に近づけることによって,導電体252の位置を変えなくても,フォーカスリング210の上面電位をフローティング状態のときの電位から接地電位の近くまで,所望の電位に低下させることができる。
【0097】
これによれば,例えばウエハWの周縁部の付着物を除去する付着物除去処理を行うときには,接地体230をフォーカスリング210に近づけることによって,ウエハW(サセプタ114)とフォーカスリング210との間に,より大きな電位差を発生させることができるので,付着物除去処理の処理レートを高めることができる。
【0098】
次に,
図10に示すフォーカスリング装置200において,接地体230の位置とその作用効果について図面を参照しながら説明する。
図13,
図14は
図10に示すフォーカスリング装置200の作用効果を説明するための図であり,導電体252の位置を所定の位置にしてその位置を変えずに,接地体230の位置を変えたものである。
図13は接地体230を下降させた場合であり,
図14は接地体230を上昇させた場合である。
【0099】
図13に示すように接地体230を下降させると,フォーカスリング210はフローティング状態に近くなる。このとき,プラズマ処理中のサセプタ114の電位(ウエハWの電位)が例えば−1000Vであったとすれば,フォーカスリング210の上面電位もそれに近い電位になるように,導電体252の位置が調整されているものとする。
【0100】
図13に示す場合には,プラズマPとウエハWの上面との間及びプラズマPとフォーカスリング210の上面との間にはプラズマシースの電界Eが生じる。このとき,ウエハW上からフォーカスリング210上にかけてプラズマシースの厚みはほぼ同じになる。
【0101】
このような電界Eの作用により,プラズマPからのイオンIはほぼ垂直にウエハWの上面とフォーカスリング210の上面に引き込まれる。従って,ウエハWの周縁部近傍に向かうイオンIもほぼ垂直となる。しかも,ウエハWとフォーカスリング210との間には電位差が発生しないので,ウエハ周縁部とフォーカスリング210との隙間にイオンIが入射しても,ウエハ周縁部の側面や裏側にまでは到達し難い。このため,ウエハWの周縁部の側面や下面(裏面)にポリマーなどの付着物(デポジション)Dが付着し易い。
【0102】
これに対して,
図14に示すように接地体230を上昇させると,フォーカスリング210から接地体230に流れる電流が増えるので,フォーカスリング210の上面電位は低下する。このとき,例えばフォーカスリング210の上面電位が−400Vになるように接地体230の位置が調整されているとすれば,内側リング212の上面と外側リング214の上面の電位もともに−400Vになる。
【0103】
このため,フォーカスリング210(内側リング212と外側リング214)とウエハW(サセプタ114)と間には大きな電位差(ここでの電位差は600V)が生じるので,これにより電界E′が発生する。電界E′の等電位面は
図14に点線で示すように,ウエハWの外周面と外側リング214の内周面との間ではほぼ垂直方向,すなわちイオンIが外側リング214の外周面からウエハ周縁部の外周面に向かうように形成される。また,ウエハ周縁部の下面と内側リング212の上面213との間ではほぼ水平方向,すなわちイオンIが内側リング212の上面213からウエハWの周縁部の裏面に向かうように形成される。
【0104】
このような電界E′の作用により,プラズマPからウエハWの周縁部に向かうイオンIの一部はウエハ周縁部の外周面に衝突し,他の一部はウエハ周縁部の外周面と外側リング214の内周面との間に入り込むとウエハ周縁部の下面(裏面)に衝突する方向に加速する。従って,プラズマからのイオンIをウエハ周縁部の上面のみならず,側面や下面(裏面)にも衝突させることができる。
【0105】
このとき,フォーカスリング210(内側リング212と外側リング214)とウエハW(サセプタ114)と間の電位差が大きいほど,ウエハ周縁部に衝突させることができるイオンIを増やし,加速させることができる。これにより,ウエハ周縁部の側面と下面(裏面)での付着物Dを除去する付着物除去処理の処理レートを高めることができる。
【0106】
(フォーカスリングの上面電位制御の具体例)
次に,
図10に示すフォーカスリング装置200を用いて行うフォーカスリング210の上面電位制御の具体例について図面を参照しながら説明する。
図15は,フォーカスリングの上面電位制御の概略をフローチャートに示した図である。ここでは,導電体252を調整してウエハWに対するプロセス処理を行った後に,接地体230の位置を調整してそのウエハWに対して付着物除去処理を連続して行う例を挙げる。
【0107】
先ず,処理対象のウエハWにプロセス処理を実行する場合には,ステップS110,S120にて処理対象のウエハWの種類に応じて導電体252の位置を調整する。すなわち,ステップS110にて処理対象のウエハWの種類に関連づけられた導電体252のプロセス処理時位置を例えば
図16に示す上面電位調整データから取得し,ステップS120にて導電体252をそのプロセス処理時位置にしてフォーカスリング210の上面電位を高くする方向(サセプタ114の電位に近づける方向)に調整する。
【0108】
このとき,接地体230はフォーカスリング210から最も離れた基準位置(例えば
図13に示す接地体230の位置)に下降させたままにしておく。これにより,フォーカスリング210から接地体230を通って流出する電流が抑制されるので,導電体252の位置に応じたフォーカスリング210の上面電位を維持できる。
【0109】
上記導電体252のプロセス処理時位置は,例えばプラズマ生成時にウエハWからフォーカスリング210に流れる電流が最も小さくなる導電体252の位置をウエハWの種類ごとに予め測定して,
図16に示す上面電位調整データとして記憶部420に記憶しておく。そして,上記ステップS110にて導電体252の位置を取得する際に,その上面電位調整データからウエハの種類に関連づけられたプロセス処理時の導電体252の位置を取得する。
図16に示す例によれば,ウエハWの種類がXの場合における導電体252のプロセス処理時位置はAx(例えば
図13に示す導電体252の位置)である。
【0110】
こうして導電体252の位置を調整した後に,ステップS130にてウエハWのプロセス処理を実行する。これにより,ウエハWの種類に拘わらず,フォーカスリング210の上面電位の低下を抑えることができ,ウエハWの周縁部の処理レートを向上させることができる。
【0111】
次に,処理対象のウエハWに付着物除去処理を実行する場合には,ステップS140,S150にて処理対象のウエハWの種類に応じて接地体230の位置を調整する。すなわち,ステップS140にて処理対象のウエハWの種類に関連づけられた接地体230の付着物除去処理時位置を例えば
図16に示す上面電位調整データから取得し,ステップS150にて接地体230をその付着物除去処理時位置にしてフォーカスリング210の上面電位を低くする方向(接地電位に近づける方向)に調整する。
【0112】
このとき,導電体252は上記プロセス処理時位置のままにしておくことが好ましい。こうすることによって,次に同じ種類のウエハWをプロセス処理する場合には導電体252の位置を再度調整する必要がなくなる。しかも,導電体252の位置を変えなくても,接地体230をフォーカスリング210に近づけることでその上面電位を十分に下げることができる。
【0113】
上記接地体230の付着物除去処理時位置は,例えばウエハWの周縁部に付着する付着物の除去レートが高くなる接地体230の位置をウエハWの種類ごとに予め測定して,
図16に示す上面電位調整データとして記憶部420に記憶しておく。そして,上記ステップS140にて接地体230の位置を取得する際に,その上面電位調整データからウエハWの種類に関連づけられた付着物除去処理時の接地体230の位置を取得する。
図16に示す例によれば,ウエハWの種類がXの場合における接地体230の付着物除去処理時位置はBx(例えば
図14に示す接地体230の位置)である。
【0114】
こうして接地体230の位置を調整した後に,ステップS160にてウエハWの付着物除去処理を実行する。これにより,フォーカスリング210とウエハWと間の電位差を大きくすることができるので,付着物除去処理の処理レートを高めることができる。
【0115】
ステップS160による付着物除去処理が終了すると,ステップS170にて接地体230を元の基準位置に戻す。こうして,次のウエハWのプロセス処理に備える。そして,ステップS180にて次のウエハWの処理をするか否かを判断し,次のウエハWの処理をしないと判断した場合は,一連のフォーカスリングの上面電位処理を終了する。また,ステップS180にて次のウエハWの処理をすると判断した場合は,ステップS190にてウエハWの種類に変更があるか否かを判断する。
【0116】
このステップS190にてウエハWの種類に変更なしと判断した場合は,ステップS130の処理に戻る。すなわち,この場合はウエハWの種類に変更がないので,導電体252の位置を変えないでプロセス処理を行う。
【0117】
これに対して,ステップS190にてウエハWの種類に変更ありと判断した場合は,ステップS110の処理に戻る。すなわち,この場合はウエハWの種類に変更があるので,ステップS110及びS120にて導電体252の位置をそのウエハWの種類に合わせて変更してからステップS130にてプロセス処理を行う。
【0118】
これによれば,次のウエハWの種類に変更がある場合にのみ,導電体252の位置を調整し,次のウエハWの種類に変更がない場合は導電体252の位置の調整を省略できるため,ウエハ処理全体のスループットを向上させることができる。
【0119】
なお,
図10に示すフォーカスリング装置200では,
図2に示す導電体252を昇降可能に構成した誘電率可変機構250を備えるフォーカスリング装置200の接地体230を昇降自在に構成した場合を例に挙げたが,これに限られるものではなく,誘電性を有する液体やガスを挿入可能に設けた誘電率可変機構250を備えるフォーカスリング装置の接地体230を昇降可能に構成してもよい。さらに,
図5に示すような誘電率可変機構250を設けないフォーカスリング装置200の接地体230を昇降可能に構成してもよい。
【0120】
また,
図10に示すフォーカスリング装置200においては,
図17に示すようにフォーカスリング210の上面電位を測定する上面電位検出センサ260を設けるようにしてもよい。上面電位検出センサ260としては,例えば温度センサで構成することができる。フォーカスリング210の温度は上面電位に応じて変化する。このため,フォーカスリング210の上面電位と温度との関係を予め計測して記憶部420に記憶しておけば,温度センサの測定値からそのときの上面電位を検出できる。
【0121】
これによれば,上面電位検出センサ260によってフォーカスリング210の上面電位を測定しながら,導電体252や接地体230の位置を調整することができる。これによって,導電体252や接地体230の最適な位置を測定することができる。
【0122】
また,ウエハの処理を繰り返すことによって,フォーカスリング210の上面電位にずれが生じた場合でも,そのずれた分だけ,導電体252や接地体230の位置を調整することで補正することができる。これにより,フォーカスリング210の上面電位を常に最適な状態に保つことができる。さらに,フォーカスリング210の上面電位にずれが所定値以上の場合は,フォーカスリング210の交換を促すようにしてもよい。
【0123】
なお,上面電位検出センサ260は温度センサに限られるものではない。例えばフォーカスリング210の歪みを検出する歪みセンサで構成してもよい。フォーカスリング210はその上面電位に応じて温度が変化し,それに応じた歪みが発生する。このため,フォーカスリング210の上面電位と歪みとの関係を予め計測して記憶部420に記憶しておけば,歪みセンサの測定値からそのときの上面電位を検出できる。また,上面電位検出センサ260はフォーカスリング210の電位を直接測定できる電圧計で構成してもよい。
【0124】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0125】
例えば上記実施形態では,プラズマ処理装置として上部電極と下部電極(サセプタ)の両方に高周波電力を印加する場合について説明したが,これに限定されるものではなく,下部電極(サセプタ)のみに周波数の異なる2周波の高周波電力を重畳して印加する場合にも本発明を適用できる。また,上記実施形態では本発明をエッチングや成膜を行うプラズマ処理装置に適用した場合について説明したが,これに限られるものではなく,スパッタリング,CVD等の他のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に適用してもよい。さらに,基板としてはウエハWを用いた場合について説明したが,これに限られるものではなく,FPD基板,太陽電池用基板等の他の基板であってもよい。