【文献】
HOSHINO, H., OKANO, F.,ISONO, H.,and YUYAMA, I.,Analysis of resolution limitation of integral photography,J. Opt. Soc. Am. A,1998年 8月,Vol.15, No.8,pp.2059-2065
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記要素光学素子は、要素凸レンズ、要素シリンドリカルレンズ、要素スリット、ピンホール、フレネルゾーンプレート、凸レンズとして作用するフレネルレンズ、シリンドリカルレンズとして作用するフレネルレンズ、屈折率分布レンズ、組み合わせレンズ、キノフォーム、ホログラフィック光学素子、のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の立体映像表示装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、任意の視点から自由に見られる立体映像方式として、インテグラルフォトグラフィ(Integral Photography、以下IPと記載する場合がある)方式が知られている。このIP方式は、例えば、
図12に示すような撮影装置100と、
図13に示すような表示装置200とにより3次元映像を撮影して表示するようにしている。
図12に示すように、撮影時には、撮影装置100は、撮影用の要素レンズ120
1,120
2 …,120
i,…,120
nが面内に配列された撮影用の要素レンズ群120を介して被写体Wを撮影する。撮影装置100では、撮像素子130上に各撮影用の要素レンズ120
iによって被写体Wの像(要素画像140
1,140
2,…,140
i,…,140
n)が形成され、被写体Wの要素画像群140が撮影される。
【0003】
図13に示すように、表示時には、表示装置200が用いられ、被写体Wを撮影した要素画像群140が表示された表示素子150を、表示用の要素レンズ160
1,160
2,…,160
i,…,160
nからなる要素レンズ群160を通して見ることで、被写体Wの3次元映像(立体再生映像)Waが観測される。ただしこの場合、観測者Wmには、被写体Wの凹凸が逆転した3次元映像Waが観測されていることになる。この被写体Wの凹凸が逆転する問題を回避する手法として、撮影用の要素レンズ120
1〜120
nを凸レンズではなく、長さを光の蛇行周期の3/4とした屈折率分布レンズ(GRadient INdexレンズ:GRINレンズ)を用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、各要素画像を電子的に180度回転させる方法(例えば、非特許文献1)などが提案されている。
【0004】
しかし、前記した構成の3次元映像の表示装置200では、表示素子の画素数が、3次元映像の解像度、3次元映像を見られる範囲である視域、及び、3次元映像の奥行き範囲に振り分けられるので、つぎのようなことについて考慮する必要があった。すなわち、表示装置200では、表示素子150の画素数を一定とした場合、3次元映像の解像度、視域および奥行き範囲の情報がトレードオフの関係となる。そのため、表示装置200において、3次元映像の解像度と奥行き範囲を維持したまま視域のみを広げる広視域化を図るには、表示素子150の画素数を上げることが必要となる。しかし、表示装置200において、表示素子150の画素数を向上させるには、高解像度の表示素子を新規に開発する必要があり、高コストとなる問題がある。
【0005】
このような問題に関して解決する手法として従来、つぎのような構成が提案されている。すなわち、表示装置において、1つの高解像度の表示素子を用いるのではなく、複数の表示素子を組み合わせて用いることで、表示系全体の総画素数を増やす方法がある。例えば、特許文献2で提案されている表示装置では、複数の表示素子からの要素画像群をレンズ及び駆動手段を介して1つのレンズアレイに重ね合わせて投射することで、表示系全体の画素数を増やしている。このような構成により、表示装置では、3次元映像の品質 (3次元映像の解像度、視域および奥行き範囲) を改善できることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記した従来の表示装置では、複数の表示素子からの要素画像群をレンズ及び駆動手段を介して1つのレンズアレイに重ね合わせて投射するに際して、プロジェクタから照射される光が指向性を有するといった特徴を利用している。つまり、前記した従来の表示装置は、光が指向性を有する場合に使用されるプロジェクタを用いた投射型表示系に限定されてしまい、光の伝搬方向を制御できないような直視型表示を行う構成の装置に対応することができなかった。また、従来の表示装置では、駆動手段を使用してレンズを振動させて広視域化を図っているが、本来の表示装置のようにレンズを振動させる駆動手段を備えることなく、広視域化を図ることが望まれていた。
【0009】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたもので、表示素子の画素数を一定とした場合において、3次元映像の解像度と奥行き距離を維持して、投射型表示系に限定されることなく、また、駆動手段を必要とせず、要素画像の幅と高さの比率を変えることで特定方向の視域角を拡大することができる立体映像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る立体映像表示装置は、前記課題を解決するため、以下に示すような構成とした。すなわち、インテグラルフォトグラフィ方式の3次元映像を表示するために、要素画像群を表示する表示手段と、前記表示手段から焦点距離を隔てた位置に前記表示手段と対面するように設置面が設定されるとともに、前記要素画像群からの光線を集光し、3次元映像を再生する要素光学素子群と、を備える立体映像表示装置であって、前記要素画像群上の各要素画像
の長辺が前記要素光学素子の幅を超え
、かつ、前記各要素画像の短辺が前記要素光学素子の幅未満である長方形の形状であるとともに、当該各要素画像が当該長方形の長辺方向を基準線の方向として一列に整列し要素画像列を形成し、前記要素光学素子群において、当該要素光学素子群に含まれる各要素光学素子のうち互いに接して一列に配置される要素光学素子列の中心直線が前記基準線に対して角度を持つように、前記要素光学素子列が前記設置面上で傾斜させた状態で配置され
、隣り合う前記要素光学素子で隙間無く隣り合って表示されるように前記各要素画像の長辺と短辺との比率が設定される構成とした。
【0011】
いうなれば、立体映像表示装置は、被写体を撮影する撮影側の光学系により特定方向に長い形状(長方形)に形成して整列する複数の要素画像、又は、計算により被写体の要素画像の特定方向に長い形状に形成した複数の要素画像、を表示する表示手段と、この表示手段に焦点距離を隔てて対面して設置され前記表示手段により表示される前記要素画像から変換して3次元映像を再生するための要素光学素子をアレー状に配置した要素光学素子群とを備え、前記基準線上に中心が配置される前記要素光学素子において、前記要素光学素子を中央にして隣り合う当該要素光学素子までの間に前記長方形の前記要素画像が形成され、当該要素画像を用いて3次元映像を表示する立体映像表示装置であって、前記要素光学素子群は、前記要素光学素子の中心を結んだ位置で隣接して一列に整列する要素光学素子列の中心直線を、特定方向に長い形状の前記要素画像に対応するように、前記基準線に対して、平面内において所定角度傾斜させた状態で前記要素光学素子が配置される構成とした。
【0012】
かかる構成により、立体映像表示装置は、特定方向に長い形状(長方形)に形成した要素画像を表示手段により表示すると、要素光学素子の中心直線を基準線に対して所定角度傾斜させた要素光学素子列の状態になるように要素光学素子を整列して、前記長い形状に形成した要素画像に対応して、要素光学素子群を形成しているため、当該基準線に沿って要素光学素子の中心が位置する要素光学素子の間に亘って長い要素画像を再生させることができる。また、立体映像表示装置は、要素画像を再生するための要素光学素子の間隔を広くして要素画像を再現し、全体としては要素画像の数が要素光学素子の数に対応するように構成されている。そのため、立体映像表示装置は、3次元映像の解像度と奥行き距離を維持しながらも、3次元映像の特定方向の視域を広くすることができる。
【0013】
また、前記立体映像表示装置は、前記要素光学素子群において、前記基準線に沿って中心が位置する要素光学素子に亘って前記要素画像列が配置するように(当該立体映像表示装置が表示する立体映像の視域の中心から観察者が装置方向を見たとき、前記各要素画像の中心の位置と、対応する前記各要素光学素子の中心の位置とがそれぞれ一致するように)、前記要素画像列における各要素画像の境界と、当該要素画像列と隣り合う他の要素画像列における各要素画像の境界との要素画像列方向のずれ量に応じて、前記要素光学素子列の前記設置面上での傾斜角度が設定される構成とした。
【0014】
かかる構成により、立体映像表示装置は、要素画像の長い形状(長方形)に合わせて、要素光学素子列の傾斜角度を設定することで、基準線に沿った位置に中心が位置する要素光学素子を配置して、長方形の要素画像に対応して当該長方形の要素画像を再生して、視域の広さを調整することが可能となる。
【0015】
さらに、前記立体映像表示装置においては
、前記配列が俵積み配列であ
り、前記傾斜角度
が、30度、19.1度、13.9度の何れかとすることができる。
このように、立体映像表示装置は、水平線又は垂直線からの所定傾斜角度
を変えることで、長い形状の要素画像に対応して、視域の広い3次元映像を表示することができる。
【0016】
また、前記立体映像表示装置において、前記要素光学素子は、要素凸レンズ、要素シリンドリカルレンズ、要素スリット、ピンホール、フレネルゾーンプレート、凸レンズとして作用するフレネルレンズ、シリンドリカルレンズとして作用するフレネルレンズ、屈折率分布レンズ、組み合わせレンズ、キノフォーム、ホログラフィック光学素子、のいずれかであってもよい。
かかる構成により、立体映像表示装置は、装置の構成により適宜要素光学素子を選択して適切なものを使用することができる。
【0017】
そして、前記立体映像表示装置において、前記表示手段により表示される要素画像は、前記基準線の方向が前記表示手段の幅方向であ
り、前記立体元映像が前記表示手段の高さ方向の視域が幅方向より小さくなるように再生される。また、前記立体映像表示装置において、前記表示手段により表示される要素画像は、前記基準線の方向が前記表示手段の高さ方向であ
り、前記3次元映像が前記表示手段の幅方向の視域が高さ向より小さくなるように再生される構成とした。
かかる構成により、立体映像表示装置は、3次元映像の水平視域又は垂直視域を広くとることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る立体映像表示装置は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
立体映像表示装置は、IP方式において、表示素子の画素数を一定として、3次元映像の解像度と奥行き距離を維持したまま、特定方向の視域を広げることができる。
また、立体映像表示装置は、多眼方式において、表示素子の画素数を一定として、3次元映像の解像度を維持したまま、特定方向の視域を広げることができる。
さらに、立体映像表示装置は、直視型あるいは投影型のいずれにおいても視域を広げて3次元映像を表示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る立体映像表示装置について、図面を参照して説明する。
なお、各図において、要素画像や要素光学素子等の構成について模式的に示している。また、立体映像表示装置1の概略と、要素画像A(A
1,A
2,…A
i,…A
n)を形成するための方法として撮影装置50の光学系により撮影した例とを先に説明して、その後に立体映像表示装置1の詳細を説明する。なお、立体映像、立体再生映像、3次元映像は同じ意味で使用する。
【0021】
図1に示すように、立体映像表示装置1は、IP方式により被写体W(
図5参照)の要素画像A(A
1,A
2,…A
i,…,A
n)から3次元映像Waを表示するものである。この立体映像表示装置1は、要素画像A(A
1,A
2,…A
i,…,A
n)からなる要素画像群Aaを表示する表示手段10と、この表示手段10に対面して設置面が設置された要素光学素子群としての要素レンズ群20と、を備えている。
表示手段10は、予め被写体Wを撮影して、あるいは、予め被写体Wを従来の構成から計算機により形成して生成した要素画像A
1〜A
nを図示しない記憶手段から読み出して表示している。ここでは、先に被写体Wを撮影装置50で形成した例を
図5〜
図8を参照して説明する。
【0022】
図1における要素画像A
1〜A
nは、例えば、
図5に示すように、撮影装置50により立体映像表示装置1の要素レンズの水平視域角を拡大して撮影される。この撮影装置50の遮光壁面SDの開口OPにより被写体Wからの光を制御することで、特定方向に長い形状(長方形)の要素画像Aを撮影する。ここでは、撮影装置50において、要素レンズ列RLの中心直線CLが基準線SLに対して30度の角度をもつときに、要素画像が基準線SLに沿って形成される要素画像Aとなるように開口OPを設定する一例を説明する。
【0023】
図5に示すように、水平視域角を拡大するための撮像光学系を備える撮影装置50は、被写体Wから焦点距離を隔てた位置に配置した第1レンズL1と、この第1レンズL1の焦点距離F
1を隔てた位置に配置した開口OPを形成した遮光壁面SDと、この遮光壁面SDから焦点距離F
2を隔てた位置に配置した第2レンズL2と、この第2レンズL2から焦点距離F
2を隔てた位置に配置した撮影用要素レンズ群20Raと、この撮影用要素レンズ群20Raから焦点距離fを隔てた位置に配置した第3レンズL3と、この第3レンズL3の焦点距離F
3の位置に配置した例えば撮影手段である撮影カメラKAと、を備えている。
【0024】
この撮影装置50では、
図5に示すように、被写体Wからの光がレンズL1により集光され、開口OPを有する遮光壁面SDであるアパーチャにより被写体Wの物体光の入射角度が制限され、第2レンズL2によりコリメート(平行光化)される。そして、撮影用要素レンズ群20Raに入射され、後焦点距離の位置に要素画像群Aa(
図1参照)を形成する。また、撮影用要素レンズ群20Raの後焦点距離の位置には、いわゆるフィールドレンズL3が挿入してあり、被写体Wからの光を撮影カメラKA側に曲げるように作用する。撮影カメラKAに取り付けられているカメラレンズは、要素画像群Aaにピントを合わせてあり、要素画像群Aaを撮影する。撮影カメラKAの位置に関して、
図5ではフィールドレンズL3の後焦点距離の位置としたが、この位置に制限されるものではない。
【0025】
第1レンズL1と第2レンズL2は、いわゆる、奥行き制御光学系を構成しており、撮影用要素レンズ群20Raから遠い被写体Wを撮影用要素レンズ群20Ra付近に結像させるために用いられる。これらのレンズ間の距離は、F
1+F
2である。ここで示す、F
1とF
2はそれぞれ第1レンズL1と第2レンズL2の焦点距離である。また、奥行き制御光学系の倍率Mは、M=F
1/F
2となる。なお、
図5では、被写体Wと撮影用要素レンズ群20Raをそれぞれ第1レンズL1と第2レンズL2の前焦点距離と後焦点距離の位置にそれぞれ設置しているが、この配置に制限されるものではない。
【0026】
フィールドレンズL3は要素画像群Aaの全体が撮影できるように挿入するものであって、撮影用要素レンズ群20Raと撮影カメラKAの間には、フィールドレンズL3の代わりに、複数のレンズからなるレンズ系が挿入されていてもよい。また、フィールドレンズL3の代わりに、拡散スクリーンを用いてもよい。また、撮影用レンズ群20Raが小さい場合は、フィールドレンズL3を挿入しなくてもよい。
【0027】
そして、撮影装置50(
図5参照)は、
図8に示すように、撮影用要素レンズ群20Raが、要素レンズR
1,R
2,…R
i,R
nの中心を結んだ要素レンズ列RLの中心直線CLを、予め設定した基準線SL(水平線HL)から所定角度φ
1だけ傾斜するように、当該要素レンズR
1〜R
nを配置している。撮影装置50は、ここでは、その一例として要素レンズ列RLの中心直線CLが水平線HLに対して30度の角度を持つように要素レンズR
1〜R
nを配列して構成されている。また、撮影用要素レンズ群20Raは、その要素レンズR
1〜R
nが俵積み配列(3つの要素レンズの中心を結ぶと正三角形となるデルタ配列)の関係になるように設定されている。
【0028】
ここでは、要素レンズ列RLの中心直線CLが基準線SL(水平線HL)に対して30度の角度を持つようになったときに、基準線SLに沿って並ぶ要素画像Aの中心が要素レンズRの中心に対して配置されるように、かつ、要素画像Aの視域を広げて撮影するように準備される。そのために、撮影装置50において遮光壁面SDの開口OP(
図5参照)は、要素レンズ列RLが基準線SLに対して30度の角度を持ったときに表示される要素画像群Aaが取得できる大きさに設定されることになる。
なお、撮影装置50は、撮影用要素レンズ群20Raに対応し、広視域化される要素画像Aの幅W
h(φ
1)と高さW
v(φ
1)を導出して、その導出した要素画像Aの幅W
h(φ
1)と高さW
v(φ
1)から遮光壁面SDの開口OPの幅A
h(φ)と高さA
v(φ)とを決定する。
【0029】
ここからは、
図6〜
図7に示した各パラメータについて、
図8を用いて説明する。
図6は、撮影用要素レンズ群20Raが俵積み配列であり、要素レンズ列RLの傾斜角φ
1を30度とした場合の要素画像群Aaの配置を表す。なお、以下の導出では、撮影用要素レンズ群20Raにおける要素レンズ列の中心直線CLの基準線SLに対する傾斜角がφ
1=30度の場合のみを示す。また、フィールドレンズL3と撮影カメラKAは省略してある。
はじめに、要素画像Aの幅w
h(φ
1)を導出する。
図8中においてx軸及びy軸を水平軸及び垂直軸として示す座標において、水平方向(中心直線CL方向)の要素レンズRのレンズピッチP
h(φ
1)は、つぎの式(1)となる。
【0031】
ここで、pは、
図8で示すように、撮影用要素レンズ群20Raの要素レンズRの中心点CP間におけるレンズピッチであり、x
1とy
1は
図8よりそれぞれ3p/2と、(√3)p/2とである。要素画像同士がオーバーラップせずに設置できる最大の幅をw
h(φ
1)とすると、式(2)となる。
【0033】
次に、要素画像Aの高さw
v(φ
1)を導出する。長方形の要素画像を隙間なく配置することを考えると、要素画像Aの面積は撮影用要素レンズ群20Raの傾斜角に依存せず一定となる。傾斜角が0度の場合、
図8に示すように、幅wh(0)と高さw
v(0)がそれぞれpと(√3)p/2の要素画像を設置することができる。よって、制約条件として、次の式(3)が成り立つ。以上より、次式の式(4)を得る。
【0036】
つぎに、他の要素画像とのクロストークが生じないための条件を導出する。要素画像Aの幅w
h(φ
1)と高さw
v(φ
1)を超えて入射される光線は、他の要素画像Aとのクロストークとなるため、取り除く必要がある。水平方向と垂直方向において、入射を許容する光線の最大入射角をそれぞれθ
h(φ
1)とθ
v(φ
1)とすると、次の式(5)、式(6)となる。
【0039】
ここで、fは撮影用要素レンズ群20Raの焦点距離を表す。式(5)と式(6)で表わされる角度以上で入射する光を除去することができれば、他の要素画像Aとのクロストークは生じない。
他の要素画像Aとのクロストークを除去するために、奥行き制御光学系内(第2レンズL2の前焦点距離の位置)に開口OPを形成した遮光壁面SDであるアパーチャを挿入する場合を考える。
図6及び
図7に示すように、撮影装置50は、遮光壁面(アパーチャ)SDの開口OPについて、水平方向と垂直方向の大きさをそれぞれA
h(φ
1)とA
v(φ
1)とすると、式(5)及び式(6)より、つぎの式(7)及び式(8)となる。
【0042】
以上のようにして、式(7)及び(8)で示される大きさの開口OPを持つ遮光壁面(アパーチャ)SDを、
図6及び
図7に示すように、撮影装置50の奥行き制御光学系内(第2レンズL2の前焦点距離の位置)に挿入することで、他の要素画像Aとのクロストークを取り除くことができる。
このようにして遮光壁面SDの開口OPの縦横の寸法を決めて、撮影装置50により要素画像群Aa(
図1参照)を撮影し、その撮影した要素画像群Aaを表示手段10で表示するようにしている。ここで撮影装置50により撮影された要素画像Aは、特定方向に長い形状(長方形)として形成されている。
なお、
図5〜
図7では,撮影用レンズ群20Raが凸レンズである場合を示した。この場合、3次元映像にいわゆる奥行き反転現象が生じる。この問題を避けるためには、各要素画像Aを180度回転させればよい。
【0043】
つぎに、前記した撮影装置50で撮像した要素画像群Aaを用いて立体映像表示装置1で3次元映像を表示する構成の詳細について説明する。
図1及び
図2に示すように、表示手段10は、撮影装置50で撮影した要素画像群Aaを表示するものである。この表示手段10は、例えば、要素画像群Aaを表示する液晶表示装置(LCD)や平面CRTなど既存のものである。なお、表示手段10は、直視型あるいは投影型で要素画像群Aaを表示させるものであっても構わない。
【0044】
この表示手段10は、
図2で示すように、被写体Wを一般的な設備の光学系で形成した1つの要素画像a1が要素レンズR(R
1,R
2,…R
i,…,R
n)の一つの範囲で円形のエリアで示されるのに対して(
図3(b)参照)、つぎのように要素画像Aを表示している。つまり、表示手段10は、要素レンズRの一つから基準線SLに沿って要素レンズRの中心点CPが配置される左右の要素レンズRまでの間において、長方形の要素画像Aが形成されるようにし、その長方形の長辺方向に一列で要素画像Aが整列するように表示している。そして、
図1及び
図3(c)に示すように、表示手段10は、要素画像列ALと次の列の要素画像列ALとでは、要素画像Aの位置が長辺方向において所定長さずれた位置関係となるように表示されている。
【0045】
図1及び
図2に示すように、表示手段10に対面して焦点距離f(要素レンズ焦点距離)の位置に設置面が設置される要素光学素子群は、一例として、ここでは、凸レンズである要素レンズR(R
1,R
2,…R
i,…,R
n)をアレー状に配置した要素レンズ群20を使用している。そして、要素レンズ群20は、要素レンズRの中心点(光軸中心)CPを結んで形成される中心直線CLが、予め設定された水平線(基準線SL)HLに対して所定角度傾斜させた状態で要素レンズRを配置している。要素レンズ群20は、ここでは、要素レンズ列RLの中心直線CLを水平線HLに対して、30度傾斜した状態で配置されている。
【0046】
そして、要素レンズ群20は、焦点距離を隔てた位置に表示手段10が位置するように設置されている。表示用の要素レンズ群20は、要素レンズ列の中心直線CLが水平線HLに対して、ここでは30度の傾斜角度を持つように配置され、かつ、当該30度の方向に平行で隣接する要素レンズ列RLに対して互いに要素レンズR間に配置される俵積み配列となるように設置されている。なお、
図1において、基準線SLに沿って要素レンズRの中心点CP間における矢印の範囲をレンズピッチとして示している。このレンズピッチ間に亘る基準線SLの方向に沿って要素画像列ALが形成されている。このレンズピッチ間に亘る基準線SLの方向おいて、要素画像Aの中心が要素レンズRの中心点CPと一致(要素レンズRと要素画像Aが対面)し、さらに要素画像Aの境界が配置されるように、要素レンズ列RLが配列されている。
【0047】
要素レンズ列RLの中心直線CLの基準線(水平線HL、垂直線VL)SLに対する所定傾斜角度の範囲は、要素画像Aの形状により決定する。つまり、要素画像Aの形状により要素レンズ列RLの中心直線CLの基準線SLに対する傾斜角度が決まり、設定できる範囲として、俵積み配列の場合には、0度、60度、120度、180度、240度、300度を除く傾斜角度の範囲で設定される。中心直線CLの基準線SLに対する傾斜角度が0度、60度、120度、180度、240度、300度の時には、基準線SLと平行又は直交する同じ角度になってしまうので、適用できない。したがって、俵積み配列の要素レンズ列RLの中心直線CLの基準線SLに対する所定傾斜角度の範囲は、0度、60度、120度、180度、240度、300度を除く傾斜角度の範囲である。なお、俵積み配列の場合では、60度を超える角度においては、0度から60度までのある傾斜角度と同じ傾斜状態となる。これは、要素画像Aの形状が、60度の周期で変化するためである。
【0048】
図1に示すように、この要素レンズ群20は、水平線HLに沿って平行に、要素レンズRの中心点CPが位置する中心直線CL上において隣り合う要素レンズRまでの間で要素画像Aを形成するように構成されている。要素レンズR1の中心に要素画像A1の中心が対応するようになり、要素レンズR1の左右に亘って当該要素画像A1の左右に長い長方形部分が表示されるように対応している。つまり、
図3(a)、(b)に示すように、要素画像Aが従来の円形のエリアで示される要素画像と比較して特定方向(水平方向)に長い長方形であるので、要素レンズ列RLの中心直線CLが基準線SLに対してここでは30度の角度を持つように構成されることで、要素画像Aの長方形の長辺と短辺との比率が、隣り合う要素レンズRで隙間無く隣り合って対応して表示することができるようになる
。
【0049】
ここで、要素レンズ列RLの中心直線CLが基準線SLに対して、他の傾斜角度になったときの関係について、
図4に示す。
図4に示すように、中心直線CLが基準線SL(HL、VL)に対して所定角度φ
1(30度)、φ
2(19.1度)、φ
3(13.9度)のように角度が変化したときに、要素画像Aの形状も徐々に細長いに近づく関係になっていることが分かる。この長方形の領域で示す要素画像Aは、どの傾斜角度であっても、一定の面積となるように形成されることになる。ここでは、要素画像Aは、撮影装置50(
図5参照)により30度で示す傾斜角度の場合に適切に表示できる状態で撮影されたので、表示する場合にも撮影側に対応する要素レンズRの配列状態とすることで、要素画像Aを隣接する要素レンズRにおいて隙間無く整列させた状態で表示することができる。
【0050】
図9には、立体映像表示装置1において、俵積み配列による要素レンズ列RLの傾斜角度と、要素画像の長方形の長さとの関係について示している。なお、要素画像の大きさは、要素レンズのピッチにより正規化してある。
図9において、縦軸に単位がないのは正規化された数値であることによる。
水平方向と垂直方向の視域角は、それぞれ以下の式(9)、式(10)のように表わすことができる。
【0053】
ここで、φは傾斜角度、ΩhとΩvはそれぞれ水平方向と垂直方向の視域角を表す。この式より、傾斜角が0の場合、すなわち要素画像の長辺が1の場合と比較して、傾斜角度を変えることにより、水平方向の視域角を広げられることがわかる。
【0054】
以上のように、立体映像表示装置1は、前記した構成の表示手段10及び要素レンズ群20を備えていることで、水平方向に視域が広い3次元映像を表示することができる。つまり、
図11に示すように、IP方式により他の条件(表示手段10から要素レンズ群20までの距離、要素レンズRの数)を一定にした状態で広視域化が可能となる立体映像表示装置1とすることが可能となる。
【0055】
図11(a)及び
図2に示すように、立体映像表示装置1は、作動する場合、表示手段10をオンにして、要素画像A(A
1,A
2,…A
i,…,A
n)から構成される要素画像群Aaが表示されると、要素画像群Aaの光が、要素レンズR(R
1,R
2,…R
i,…,R
n)から構成される要素レンズ群20を通ることで、被写体Wの3次元映像Waが形成されて観察者Wmから観察できるようになる。ここで、表示手段10の表示面と要素レンズ群20の間の距離は、おおよそ要素レンズRの焦点距離程度としている。したがって、観察者は、立体映像表示装置1が表示する3次元映像Waの視域の中心から装置方向を見たとき、被写体W(
図5参照)を3次元映像(立体再生映像)Waとして観察することができる。また、観察者は、3次元映像Waを表示画面中央の観察位置から左右に所定量移動した位置から観察しても、広視域化した要素画像Aにより3次元映像Waが再生されていることから、従来よりも広いエリア範囲において3次元映像Waを観察することが可能となる。なお、立体映像表示装置1は、要素画像Aの形状において、垂直方向の視域は、水平方向の視域よりも小さくなる。
【0056】
また、立体映像表示装置1は、要素画像Aと要素レンズRとは、装置中央では中心と中心が一致した状態で配列されている。しかし、立体映像表示装置1では、厳密には、周縁に位置する要素画像Aと要素レンズRとの関係は、表示する3次元映像Waの視域の中心から観察者Wmが見てつぎのようになっている。すなわち、要素画像Aと要素レンズRとの関係は、装置の中央から放射状に周縁に向かうにしたがって、徐々に要素画像Aの中心が要素レンズRの中心よりも周縁側になるようにずれて配置されている(
図11(a)参照)。立体映像表示装置1では、このような関係になることで視域が広がるように配置されることは従来の装置でも一般に用いられている構成である。そして、立体映像表示装置1では、要素画像Aを長方形にすることと、その要素画像Aを表示するように整列して、広視域となる状態で、さらに、従来の要素画像Aと要素レンズRとの周縁側の位置関係も採用してより広い視域を確保することが可能となる。
【0057】
以上説明した立体映像表示装置1においては、以下のような各構成であっても構わない。立体映像表示装置1は、ここでは、要素レンズ群20として凸レンズを所定の方向でアレー状に配列した例として説明したが、例えば、要素シリンドリカルレンズ、要素スリット、ピンホール、フレネルゾーンプレート、凸レンズとして作用するフレネルレンズ、シリンドリカルレンズとして作用するフレネルレンズ、屈折率分布レンズ、組み合わせレンズ、キノフォーム、ホログラフィック光学素子のいずれかを、アレー状に前記要素レンズと同等に配置した構成であってもよい。
【0058】
また、立体映像表示装置1は、いわゆる奥行き反転処理を行っていない要素画像群Aaを表示する場合は、要素レンズRを、正立像を結像する機能を持つレンズまたは組み合わせレンズ、キノフォーム、ホログラフィック光学素子とすればよい。
【0059】
また、撮影用要素レンズ群20Raは、図中において要素レンズRがいわゆる俵積み配列(デルタ配列)となっているが、正方配列、つまり、所定傾斜角度の要素レンズ例の中心直線CLに沿って要素レンズRの位置が隣接する位置の要素レンズRと同じ位置になるように配列することや、あるいは、同心配列(中心の要素レンズRの周りに同じ円となるように他の要素レンズRを配置して各要素レンズRの間隔を一定にしている配列)など他の配列であってもよい。また、要素画像Aは水平方向に長いものを記述したが、この方向は任意でよい。
【0060】
なお、要素レンズ列RLが正方配列である場合には、中心直線CLの基準線(水平線HL、垂直線VL)SLに対する所定傾斜角度の範囲は、0度、90度、180度、270度を除く傾斜角度となる。0度、90度、180度、270度の時には、基準線SLと同じまたは直交する傾斜角度になってしまうので適用できない。したがって、正方配列の要素レンズ列RLの中心直線CLの基準線SLに対する所定傾斜角度の範囲は、0度、90度、180度、270度を除く傾斜角度とする。なお、正方配列における所定傾斜角度は、0度を超え90度未満の角度の範囲である。要素レンズ例RLは、90度を超える角度では、90度未満のときのいずれかの角度と同じ傾斜角度に対応することになる。これは要素画像の形状が、傾斜角度に関して90度周期で変化することによる。
【0061】
また、ここでは、基準線SLに対して要素レンズ列RLの傾斜角度を30度の傾斜を持つように構成することとして説明したが、他の角度であっても構わない。基準線SLに沿って表示される要素画像列ALの各要素画像Aの境界と、隣接する要素画像列ALの各要素画像Aの境界との列方向(基準線SL方向)のずれ量に対応して、要素レンズ列RLの中心直線CLと基準線SLとの傾斜角度が設定されている。基準線SLに対する要素レンズ列RLの中心直線CLとの傾斜角度は、
図10で示す関係から、あるいは、
図4、
図5〜
図8において説明したように設定することで、30度以外の角度で配置することができる。
【0062】
さらに、
図11(c)に示すように、基準線SLに対して要素画像Aが垂直方向に長い形状(長方形)の要素画像列ALが表示されるように、表示手段10及び要素レンズ群20を配置するようにしても構わない。
このように、立体映像表示装置1は、予め設定した水平線HLに直交する垂直線VLに対して、中心直線CLが前記した範囲において所定角度で傾斜することで、垂直方向の広視域角を実現することができる。
【0063】
要素画像Aに対応する要素レンズRは、例えば、要素レンズ列RLの中心直線CLが基準線SLに対して30度に傾斜している場合に、水平方向の要素レンズ間の距離は、従来の要素レンズの配列における要素レンズ間の水平方向の距離が
図8に示すようにpであるのに対して、(√3)pとなる。一方、要素レンズ間の垂直方向における距離は、(1/2)pとなることがわかる。そして、要素画像Aの長辺方向に沿って整列させた状態の要素画像群Aaを撮像側で撮影あるいは形成して、表示手段10に受け渡して表示させることができる。
【0064】
なお、要素画像群Aaの取得方法は、要素画像Aを撮影装置50で形成せずに、図示しない計算機等により形成することとしても構わない。また、以下に示すような手法により撮影あるいは形成することであってもよい。例えば、(1)3次元モデルから生成する、(2)特許文献2に記載された要素画像群撮影装置により撮影し、特定方向に長い要素画像の要素画像群に変換する、(3)撮影時も同等に要素レンズ群を傾斜させて適用し、かつ要素レンズ群と撮像素子間に遮光壁を挿入して撮影する、(4)撮影時も同等に要素レンズ群を傾斜させて適用し、かつ要素レンズ群の前焦点距離の位置にアパーチャ群を挿入して撮影する、(5)要素画像を内挿により特定方向に長い形状(長方形)に引き延ばす等、どのような方法であってもよい。
【0065】
また、
図11(c)に示すように、垂直視域を拡大した構成では、基準線となる垂直線VLに対して所定角度傾斜させることで、垂直方向に視域を拡大することが可能となる。ここで、要素画像群Aaを構成する要素画像Aは垂直視域を拡大するために、垂直方向に長い長方形であるものとする。なお、中心直線CLに対する傾斜角度を示す場合に、傾斜角度の基準となる基準線SLは、水平線HLであっても垂直線VLであってもよく、基準線の向きは表示する画像により任意に設定することで構わない。
【0066】
さらに、IP方式により3次元映像を表示することについて説明したが、多眼方式(1次元IP方式を含む)による広視域立体映像表示装置であっても構わない。多眼方式では特定方向の視差のみを有する。そのため、要素レンズ群20を構成する要素レンズRとして、シリンドリカルレンズを適用する。前記シリンドリカルレンズは、視差を有する方向に集光作用があるように設置する。要素画像群Aaを構成する要素画像Aは、視域を拡大する方向に長いものとし、その方向に直交する方向の視差が拡大する方向よりも小さいか、あるいは視差を有さないものとなる。
【0067】
また、要素画像Aは、長方形の外径線を描く範囲の情報として示したが、要素画像Aの中心と要素レンズ(要素光学素子)の中心点CPとが一致するように表示手段10に表示可能であれば、特定方向に要素光学素子の大きさを超えて長い形状において、例えば、ひし形、長い楕円形や多角形など任意の形でよい。