(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極および前記第1の電流測定トランスは、前記第1の電線に対して重なり合うことのないように、前記第1の電線の長手方向にずらして設置されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電流波形測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電流波形測定装置の基本構成を示す図である。
【
図2】電流測定手段を用いて測定した電流波形の例を示す図である。
【
図3】(a)は電気機器Aの単独動作時の電流波形と電圧波形を示す図であり、(b)は電気機器Bの単独動作時の電流波形と電圧波形を示す図であり、(c)は電気機器A、Bが同時に動作した時の合成電流波形と電圧波形を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る電流波形測定装置の基本構成する図を示す。
【
図5】本発明の実施形態1に係る電流波形測定装置の等価回路を示す図である。
【
図6】実施形態1における電圧波形測定装置105を作製し、その周波数特性を測定した結果と、C1、C2、Cp、Rpの各パラメータをフィッティングした場合の(1)式に基づく計算の結果を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る電流波形測定装置の構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係る電流波形測定装置の基本構成を示す図である。
【
図9】実施形態3における電流波形測定装置の等価回路を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態4に係る電流波形測定装置の基本構成を示す図である。
【
図11】実施形態4における電流波形測定装置の等価回路を示す図である。
【
図12】実施形態4における電流波形測定装置の簡略化した等価回路を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態5に係る電流波形測定装置の基本構成を示す図である。
【
図14】実施形態5における電流波形測定装置の等価回路を示す図である。
【
図15】実施形態5においてシールドケーブルを用いて系全体のシールド効果を高めた電流波形測定装置の構成例を示す図である。
【
図16】実施形態5における電流波形測定装置の別の構成例を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態6に係る電流波形測定装置の基本構成を示す図である。
【
図18】実施形態6における電流波形測定装置の等価回路を示す図である。
【
図19】(7)式および(8)式で表される検出電圧の振幅、位相の周波数特性の計算結果を示す図である。
【
図20】(a)〜(c)は、電極や電流測定トランスを備えたクランプ型プローブの構成を示す図である。
【
図21】本発明の実施形態7に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。
【
図22】本発明の実施形態8に係る電流波形測定装置の構成例1を示す。
【
図23】本発明の実施形態8に係る電流波形測定装置の構成例2を示す。
【
図24】電流測定トランスと電圧測定用の電極との位置をずらしたクランプ型プローブの構成例を示す図である。
【
図25】家電機器(冷蔵庫)の電源線の電源電圧波形と、その電源線を流れる電流波形の一例を示す図である。
【
図26】
図25の電流波形について計算した電力値の真の電力値に対する相対値と、電圧と電流の位相差との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記に述べた課題を解決するため、本発明の電流波形測定装置では、被測定電線からの電磁誘導により電線を流れる電流を測定する電流測定トランスと、2本の被測定電線をそれぞれ取り囲む電極の間に生じる静電誘導電圧を測定する電圧測定プローブの双方を同時に用いることで、これらの被測定電線に接触することなく電流と電圧を同時に測定することを可能とするものである。また、これらを一体として構成することで、小型で簡単な構成のセンサが実現できる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0025】
(実施形態1)
図1に、本発明の実施形態1に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。
図1では、2本の電線L1、L2に本発明の電流波形測定装置を設置する場合の例を示している。この例は、商用AC電源などの電源線に電気機器などの負荷Loadが接続しているときに、その電源供給回路(閉回路)を流れる電流の時間波形を測定するケースを示したものである。
【0026】
一般に、このような電線を流れる電流を測定する手段としては、電磁誘導を利用した電流測定トランスや、ホール効果を用いた電流測定手段が知られている。これらの手段では一般に、測定対象の電線を取り囲むように、円筒状やドーナツ状の磁性体のコアを設置し、電流が流れるときにこの磁性体コアに発生する磁束やその変化量を検出することで、電流やその波形の測定を行う。電流測定トランスでは、磁性体コアに巻いたコイルに誘導起電力が発生することを利用している。
図1の図中には、この電流測定トランス103を用いた電流測定装置104を示している。
【0027】
図1中の2本の電線L1、L2の線間には被測定電圧Voが印加されている。これらの電線を囲むように、それぞれ円筒形の電極101および電極102を設ける。電線L1、L2は、それぞれ電極101、102の内部を透過するようになっており、各電線は出来るだけ各電極の中心軸と一致するように、また電極と電線とは電気的接触をしないように配置する。すなわち、電極は電線と一定の間隔を有して電線を取り囲むように設置する。
【0028】
なお、一般にこれらの電線には絶縁体の被覆がある場合が多く、その場合電極とは電気的に接触しないが、被覆のない電線を測定する場合などには、電極と電線の間の接触を防ぐために、絶縁体や誘電体をスペーサとして挟んでも良い。誘電体を挟む場合には、それが無い場合に比べて静電容量C1、C2の値が大きくなり、感度が向上する。また、これらのスペーサの形状を電線に合わせて適切に設計すれば、電極の中心軸上に電線を固定することが容易になる。
【0029】
電極101、102には、それらの間の電圧を測定するための、電圧測定装置105を設ける。前述の通り、電圧測定装置105の入力インピーダンスは出来るだけ高くしておくことが、感度向上の点で望ましい。電圧測定装置105としては、高い入力インピーダンスを持つオペアンプやバッファアンプ、計測用アンプ等を用いることが出来る。また、電圧測定装置105では、読み取った電圧値Vをそのまま表示させても良いし、電圧値やアナログ・ディジタル変換した電圧値を出力し、後段に接続する装置で処理や表示を行っても良い。
【0030】
電圧測定装置105は、電極101、102と出来るだけ近い位置に設けることが、外来雑音の侵入防止や感度向上の面で有利であるが、電極101、102に測定用ケーブルを接続し、離れた場所に電圧測定装置105を設けて、測定ケーブルを介した測定を行っても良い。ただしこの場合、測定ケーブルによって電極101、102との間の浮遊容量が増加し、感度の悪化等につながるため、このような場合は必要に応じて浮遊容量の小さい測定ケーブルを選択すると良い。
【0031】
図1中には、電線L1および電極101の外側に設置する電流測定トランス103と、電流測定装置104を示しているが、これらの機能によって電線L1を流れる電流Iの値が測定可能である。電線L1、L2が電源線であり、その間に電気機器などの負荷Loadが接続されている場合には、その負荷を流れる電流の時間波形が測定できる。
【0032】
このとき、上述したように、消費電力の測定を正確に行う場合や、接続している電気機器の識別推定を行う場合においては、電流波形の電圧に対する位相差を情報として取得しておく必要がある。ここで、上記の電圧測定装置105の出力情報から、電圧波形から電圧のゼロクロス点などのタイミング情報を得ることが出来る。
図6に示した位相特性がほぼフラットな周波数範囲(
図6では1kHz以下および100kHz以上の領域)においては、予め電流波形と電圧波形の位相差を、純抵抗を負荷とした測定などによって測定、把握しておくことにより、この位相差を補正し、電流波形を電圧と同期した形で取得することが出来る。
【0033】
以上述べたように、本発明の電流波形測定装置においては、電流値と、電流の電圧に対する位相差の情報を同時に測定することが出来、電圧に同期した形での電流波形が、非接触で測定可能である。
【0034】
図2に、電流測定手段を用いて測定した電流波形の例を示す。一般に、電気機器等で消費される電流の波形は、
図2(a)のように、供給電圧の波形(商用AC電源の場合ほぼ正弦波)に同期した周期波形となる。
図2(a)に示したように、電圧に同期した形で電流波形を測定することが出来れば、電圧と電流の積を時間積分することで、負荷の消費電力の値を正確に算出することができる。一方で、
図2(b)に示したように、測定系の位相特性などによって、電流波形の測定値と電圧の測定値との間に位相差が生じた場合、消費電力の算出結果にはこの位相差に基づく誤差が生じることになる。
【0035】
図3(a)、(b)に電気機器A、Bの単独動作時の電流波形と電圧波形を示し、
図3(c)に電気機器A、Bが同時に動作した時の合成電流波形と電圧波形を示す。一般には
図3(a)、(b)に示すように、電気機器の種類や動作状態によって、その電流波形は異なるものとなる。一方で、上述の電気機器の識別技術においては、分電盤での合成電流波形は
図3(c)に示すようにこれらそれぞれの波形の和になる。そのため、予め取得した各電気機器が単体で動作しているときの電流波形と、これらの合成電流波形とを比較対照することで、家庭内で使用されている電気機器の種別や動作状態を分電盤上でも識別することができる。但し、このような場合についても、機器の識別推定を精度良く行うためには、電流波形の電圧に対する位相差が一定の値に保たれている必要がある。
【0036】
以上のように、これらの用途では、電源線などの電流波形を測定する場合に、電流に関する測定値だけではなく、電圧に対する電流波形の位相差の情報が必要となり、電流に加えて電圧波形、もしくは少なくとも、周期波形において等間隔で出現するゼロクロス点などのタイミング情報を取得しておく必要がある。
【0037】
図4に、本発明の実施形態1に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。
図4中には、電圧測定装置105の入力端子間の入力容量Cpおよび入力抵抗Rpを示している。また、電線L1と電極101との間の静電容量をC1、電線L2と電極102との間の静電容量をC2として示している。
図4においては、電線L1を流れる電流を電流測定トランス103及び電流測定装置104で測定し、電線L1、L2の間の電圧を電圧測定装置105で測定することとなる。なお、電線L2は、電源線の中性線等の場合、接地させてもよい。
【0038】
図5に、本発明の実施形態1に係る電流波形測定装置の等価回路を示す。測定する対象である線間電圧Voは、C1と電圧測定装置105の入力インピーダンス(CpおよびRp)とC2が直列に接続された回路に加わっている。測定電圧Vは、これらのインピーダンスによって線間電圧Voが分圧された結果として、
【0040】
と表される。ここで、C12はC1とC2を直列にした場合の合成容量で
C12=C1C2/(C1+C2)
であり、ωは
角周波数を示している。(jは虚数単位)
(1)式より、電圧測定装置の入力インピーダンスが十分に高い場合、すなわちCpが小さく、Rpが大きな場合には、分母の値はC12に近づき、測定結果Vは線間電圧Voとほぼ等しくなる。
【0041】
また、被測定電圧の周波数が高い領域(ω≧1/(Rp(C12+Cp))となる場合)では、(1)式は
【0043】
と近似でき、高周波領域では電圧の変換感度が周波数に依存しない一定値になる。
【0044】
図6に、実施形態1における電圧波形測定装置105を作製し、その周波数特性を測定した結果と、C1、C2、Cp、Rpの各パラメータをフィッティングした場合の(1)式に基づく計算の結果を示す。
図6に示した振幅特性は、線間電圧Voと検出電圧Vとの比であり、電圧の変換感度に相当するものであるが、上記に示した通り、10kHzを超える高周波領域では、フラットな振幅周波数特性を示している。
【0045】
以上のように、電圧測定装置105で測定された電圧Vは、電圧測定装置105の入力インピーダンスが十分に高い場合には線間電圧Voにほぼ等しくなり、電線L1と電極101、電線L2と電極102の間の静電容量C1、C2の値に関わらず線間電圧Voを測定することが可能である。また、電圧測定装置105の入力インピーダンスとして上記のような十分に高い値が得られない場合についても、周波数が十分に高い領域であれば、電圧の感度は周波数に依らずほぼ一定値となることから、歪みのない電圧波形の測定が可能となる。
【0046】
なお、一般商用電源のように周波数の低い領域(50/60Hz)においても、高周波領域に比べて電圧の変換感度は落ちるものの、電圧波形や位相情報を(1)式に応じた出力電圧Vとして計測することが出来る。
【0047】
以上に述べたような電圧測定装置105の入力インピーダンスの高い測定系においては、外部で発生した高周波ノイズを拾いやすく、ノイズの多い場所では測定結果に影響が出る場合がある。本発明の電流波形測定装置104においては、電極101、102の外側に、同心円筒状のシールド電極を設け、シールド電極の接続や、各電極との間の静電容量C1、C2の設計を特定の条件で行うことで、外部から誘導するノイズの影響を抑えることができ、精度の高い電圧波形測定が可能となる。
【0048】
また、一般商用電源のように周波数の低い領域(50/60Hz)での電圧測定においては、適切な静電容量のコンデンサを、電圧を測定する電極間に接続することによって、位相周波数特性を低周波領域までフラットにすることができ、電圧測定装置105の入力インピーダンスにかかわらず、電圧波形および位相情報を正確に測定することが可能である。
【0049】
加えて、電圧測定用の電極101と、電流測定トランス103とを一体化し、クランプ式に既存の電線に取り付けられる構成とすることで、小型で設置が容易な測定装置が実現できる。
【0050】
(実施形態2)
図7に、本発明の実施形態2に係る電流波形測定装置の構成を示す。
図7では、例として一般家庭の単相三線式の電源系統に本電流波形測定装置を適用した場合の構成例を示しており、電線L1、L2と、中性線である電線Eとの間には、それぞれ逆相のAC100Vの電圧が印加されている。
【0051】
本実施形態においては、電線L1および電極201の外側に、電流測定トランス203と、電流測定装置205を設置すると共に、電線L2のおよび電極202の外側に、電流測定トランス204と、電流測定装置206を設置したことが特徴である。このような実施形態においては、電線L1と電線Eとの間に接続される電気機器等の負荷Load1に流れる電流I1を電流測定トランス203および電流測定装置205を用いて測定し、電線L2と電線Eとの間に接続される負荷Load2に流れる電流I2を電流測定トランス204および電流測定装置206を用いて、それぞれ個別に測定する。このような測定により、2つの電源系統(電線L1〜電線E、および電線L2〜電線E)に接続されている負荷Load1、Load2に流れる電流を、それぞれ個別に測定することが可能である。
【0052】
一方で、電源電圧については、電線L1および電線L2を囲むようにそれぞれ設置された、円筒形の電極201および電極202との間の電圧を、電圧測定装置207により測定する。このときの電線L1〜電線L2間の電圧はAC200Vとなるが、2つの電源系統(電線L1〜電線E、および電線L2〜電線E)の電圧の位相が反転しているため、この線間電圧Voの測定により両電源系統の位相情報を同時に得ることができる。
【0053】
(実施形態3)
図8に、本発明の実施形態3に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。また、
図9に、実施形態3における電流波形測定装置の等価回路を示す。
【0054】
本実施形態においては、
図4で示した実施形態に加えて、電極301および電流測定トランス303の外側に、これと中心軸が一致するように円筒形のシールド電極304を設ける。シールド電極304は、電線L1にも電極301にも電気的に接触させないが、電線305等により電極302と電気的に接触させる。なお、電線L1と電極301との間の位置関係は固定しておくことが望ましいため、間隙にスペーサ等を設けて物理的に固定しても良い。なお、電極301とシールド電極304の間の静電容量を、容量C1および係数αを用いてαC1とした。
【0055】
一般家庭向けの商用電源(単相3線)の電圧を測定する場合、AC100Vの片側(コールド側)は中性点として接地されている。このような場合は、コールド側を電線L2として使用することが望ましい。また、被測定電線が通信線等の場合でも、片線が回路アース等に接続されている場合については、アース側を電線L2として使用することが望ましい。これは、シールド電極304が外来ノイズ、特にコモンモードノイズの影響を防ぐために設置するものであり、それが電極302と接続されていることから、電極302の大地に対するインピーダンスが低い方が、ノイズ除去効果が高くなるためである。
【0056】
なお、電圧測定装置307の片側は、シールド電極304に接続しても、電極302に接続しても、どちらでも構わない。
【0057】
図8中には、ノイズ源として、コモンモードのノイズ電圧V
Nが生じている導体Nが示してある。ノイズ源Nは静電誘導によってノイズの影響をもたらすが、図ではそれを左右する導体Nとシールド電極304の間の結合容量をC
Nとして示している。
【0058】
コモンモードのノイズ電圧V
Nは、電線L1や電線L2の大地に対するコモンモードインピーダンスが高い場合、電極301とシールド電極304のコモンモードインピーダンスはほぼ同等とみなせるため、ノイズ電圧V
Nが電極301とシールド電極304間の電圧である測定電圧Vに及ぼす影響は小さい。
【0059】
一方で商用電源線などでは、前述の通りその一方(この場合電線L2)が接地されているため、電極302のコモンモードインピーダンスは低く、それに接続しているシールド電極304も同様である。ノイズ電圧V
Nによるノイズ電流はC
NからC2を介してアースに流れるため、容量C2がC
Nに比べて十分大きな値であれば、ノイズ電圧V
Nが測定電圧Vに与える影響を小さくすることが出来る。なお、構成上可能であれば、電極302を接地するか、電極302と接地されている電線L2とを直接接続させることが出来れば、理想的なノイズのシールドが可能である。
【0060】
(実施形態4)
図10に、本発明の実施形態4に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。また、
図11に、実施形態4における電流波形測定装置の等価回路を示す。
【0061】
図10では、円筒形の電極402および電流測定トランス404の外側に、これと中心軸が一致するように円筒形のシールド電極406を設ける。シールド電極406は、電線L2にも電極402にも電気的に接触させないが、電線407等でシールド電極405と電気的に接触させる。なお、電極401とシールド電極405の間の静電容量を係数α1および容量C1を用いてα1C1とし、電極402とシールド電極406の間の静電容量を係数α2および容量C2を用いてα2C2とした。
【0062】
図10には、前述の
図8に示した実施形態3と同様に、ノイズ源Nのコモンモードノイズ電圧V
Nが結合容量C
Nを介して影響を与える様子を示している。本実施例では、シールド電極405とシールド電極406が電気的に接続されており、その等価回路は
図11のようになる。
【0063】
図12に、実施形態4における電流波形測定装置においてノイズ電圧V
Nが測定電圧Vに与える影響のみを調べるため、Rp、Cp、および電圧源Voを省略し、簡略化した等価回路を示す。
図12には、電極401および電極402にノイズ電圧V
Nによって生じるアースに対する電圧を、それぞれV1、V2と示してある。このとき、
【0066】
がそれぞれ成立するため、測定電圧Vは
【0068】
となる。α1=α2のとき、(3)式はV=0となり、測定電圧Vはノイズ電圧V
Nの影響を受けなくなる。以上のことから、電極およびシールド電極の構造や位置関係を、α1=α2となるように設計しておくことにより、外来ノイズをキャンセルすることができる。
【0069】
なお、α1=α2という条件を言い換えると、電線L1と電極401との間の静電容量をC10、電極401とシールド電極405との間の静電容量をC11、電線L2と電極402との間の静電容量をC20、電極402とシールド電極406との間の静電容量をC21、とそれぞれしたときに、これらの静電容量の間に
【0072】
(4)式が成り立つように設計を行った場合、上記のように外来ノイズの影響を受けにくい電圧測定が可能となり、位相情報に関しての測定精度が向上し、より精度の高い電流波形の測定が可能となる。
【0073】
(実施形態5)
図13に、本発明の実施形態5に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。また、
図14に、実施形態5における電流波形測定装置の等価回路を示す。
【0074】
図13では、電極とシールド電極については
図10に示す実施形態4と同等であるが、2つの電圧測定装置510、511を設け、電圧測定装置510で電極501とシールド電極505の間の電圧を測定し、電圧測定装置511で電極502とシールド電極506の間の電圧を測定する。それぞれの電圧の測定結果をVp1、Vp2としたときに、その差分
V=Vp1−Vp2 ・・・(5)
を測定結果とするものである。
【0075】
電圧測定装置をそれぞれの電線毎に分けたことにより、2本の電線の距離が離れているときでも、近接した電極とシールド電極との間の電圧を測定すればよいことから、電線間にハイインピーダンスな測定ケーブルを引き回すことで外部ノイズを拾いやすくなる問題が無くなり、感度が良く、しかもノイズの影響を受けにくい測定が可能となる。
【0076】
また、シールド電極505、506を
図13、
図14に鎖線aで示したように接地することができれば、装置全体での理想的なシールド効果が期待できる。
【0077】
図15に、実施形態5においてシールドケーブルを用いて系全体のシールド効果を高めた電流波形測定装置の構成例を示す。この例では、シールド電極505、506を、シールドケーブル513を介して電線507で電気的に接触させている。電圧測定装置510、511で測定された測定結果Vp1、Vp2は差分算出装置512に送られ、(5)式のようにそれらの差分から測定電圧Vを算出する。
【0078】
図16に、実施形態5における電流波形測定装置の別の構成例を示す。
図16では、電圧測定装置510、511は、高い入力インピーダンスで電圧を測定し、その結果を低い出力インピーダンスで出力するアンプ回路、もしくはバッファ回路を備える。また、圧測定装置510、511は、電極501、502やシールド電極505、506に直接接続して電圧を測定する。
【0079】
この構成では、外来ノイズを拾い易いハイインピーダンスな部分が極力短く出来るため、ノイズの影響を受けにくくなる。また、出力インピーダンスが低いため、ペアケーブル等のシールドの無い安価なケーブルを用いた場合でもノイズの影響を受けることが少なくなる。
【0080】
(実施形態6)
図17に、本発明の実施形態6に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。実施形態6では、実施形態1の構成に対して、電極601、602の間に静電容量C3のコンデンサが接続された構成とする。静電容量C3は、電線L1と電極1との間の静電容量C1や、電線L2と電極2との間の静電容量C2に比べて十分大きいものとする。
【0081】
図18に、実施形態6における電流波形測定装置の等価回路を示す。
図18に示すように、測定する対象である線間電圧Voは、C1と、電圧測定装置の入力インピーダンス(CpおよびRp)とC3の並列回路と、C2が直列に接続された回路に加わっており、測定電圧VはこれらのインピーダンスによってVoが分圧された結果として、
【0083】
と表される。ここで、C12はC1とC2を直列にした場合の合成容量で
C12=C1C2/(C1+C2)
であり、ωは
角周波数を示している。(jは虚数単位)
(6)式より、電圧測定装置の入力インピーダンスの抵抗成分Rpが十分に大きく、被測定電圧の周波数が高い領域(ω≧1/(Rp(C12+C3+Cp))となる場合)では、(7)式は
【0085】
と近似でき、高周波領域では電圧の変換感度が周波数に依存しない一定値になる。一方で、(6)式の位相θは、
【0089】
と表されるが、(8)式より、ωがωoより十分に大きい場合にはθ=0となり、ωがωoより十分に小さい場合にはθ=2/πとなる。このことから、ωがωoより十分に大きい場合には、入力電圧と出力電圧の間に位相差が生じないことがわかる。
【0090】
図19に、(7)式および(8)式で表される検出電圧の振幅、位相の周波数特性の計算結果を示す。
図19に示すように、C3がない場合においては、fo=ωo/2π=9.5kHzよりも高い周波数領域で振幅特性がほぼフラットとなり、実際の電圧と検出電圧の位相差はほぼ0°となる。このように、本発明の電流波形測定装置はfoよりも高い周波数領域での測定に用いる場合、感度が良く、しかも位相特性も良好な測定ができる。
【0091】
一方で、foよりも低い周波数範囲においては、位相特性が最大90°まで変化していくため、位相特性を測定後に位相差を補正する必要が生じる。このとき、十分大きな静電容量を持ったC3を接続し、foを測定対象とする信号の周波数よりも十分に低く設定しておくことにより、実際の電圧と検出された電圧の間の位相差を十分小さな値に抑えることができる。
図19では、例として商用電源を測定する場合において、C3の値を0.01μF(C1=C2=1pF)としておくことで、50Hz〜60Hzの周波数領域での位相差を十分小さな値に抑えることができることを示している。このことにより、電圧の位相情報の測定精度が向上し、結果としてより精度の高い電流波形の測定が可能となる。
【0092】
なお、(7)式や
図19からわかるように、C3の値を増やすとそれに伴って電圧感度が低下することから、位相差と電圧感度を考慮して、適切なC3の値を選定することが望ましい。
【0093】
(実施形態7)
図20に、本発明の実施形態7に係る電流波形測定装置の基本構成を示す。特にAC電源電圧などの低周波な電圧波形を測定する場合、
図6に示す周波数特性のように、高周波領域の電圧感度は低周波領域に比べて高いために高周波の外来ノイズの影響を受けやすい。また、測定対象の線間電圧波形Voが正弦波に近い形状であっても、測定後の波形にノイズや歪みが発生していることがある。このような場合、所望の周波数帯域より高い周波数成分を除去する機能を持ったローパスフィルタを通すことで、高周波ノイズや歪みの影響を抑圧し、
図20中のグラフに示したように元の電圧波形に近い波形を再生することが出来る。
【0094】
以上述べてきた電流波形測定装置において、電極や電流測定トランスを備えるセンサ部分は、クランプ型の構成とすることも出来る。
図21(a)〜(c)に、電極や電流測定トランスを備えたクランプ型プローブの構成を示す。電流測定トランスについては、被測定電線の周りが磁性体コア801で囲まれるような構成をとることで、効率良く電流測定が可能である。また、電極部分は、
図21(c)のようにクランプの両側に電極804を備え、それをクランプが閉じたときに電気的に接触している状態にしておくことにより、精度の良い電圧検出が可能である。電流測定トランス802と電極804とを
図21(c)のように一体化して構成することによって、小型であり、かつ既存の電線に手を加えることなしに非接触な形で容易に取り付けることのできる電流波形測定装置が実現可能である。
【0095】
(実施形態8)
図22、23に、本発明の実施形態8に係る電流波形測定装置の構成例を示す。これらの図では、電流測定トランス903、1003、1004と電圧測定用の電極901、902、1001、1002を、被測定電線L1、L2の長手方向に対して位置をずらして構成している。
【0096】
本発明の電流波形測定装置においては、検出される電流値は電流測定トランス903、1003、1004と電線間の相互誘導係数によって左右され、また検出される電圧値は電圧測定用の電極901、902、1001、1002と電線間の静電容量によって左右される。このとき、電流測定トランスと電圧測定用電極とは、お互いに電磁気的な影響を及ぼし合うために、上記の相互誘導係数や静電容量はこれらの位置関係によって複雑に変化し、電流や電圧の検出感度などの性能に関する設計値と、実際に作製した装置での値とは、必ずしも精度良く一致するとは限らない。
【0097】
このとき、
図22、23に示したように、電流測定トランス903、1003、1004と電圧測定用の電極901、902、1001、1002の位置をずらすことによって、これら相互の電磁気的な影響を最小限に抑えることが出来、事前の設計通りの性能が得やすくなる。
【0098】
図24に、このように電流測定トランスと電圧測定用の電極との位置をずらしたクランプ型プローブの構成例を示す。
図24では、クランプ型のセンサの半分が電流測定トランス1102を実装した電流測定部分になっており、残りの半分が電圧測定用の電極1101を実装した電圧測定部分となっている。このような構成とすることで、既存の電線に取り付け可能で、かつ設計した性能を得ることが容易な、小型の電流波形測定装置を実現することができる。
【0099】
最後に
図25、26を用いて、本発明の電流波形測定装置で交流消費電力を測定する場合、電流と電圧との測定を同時に行うことで、電力測定精度が向上する効果について説明する。
【0100】
図25に、家電機器(冷蔵庫)の電源線の電源電圧波形と、その電源線を流れる電流波形の一例を示す。
図25中の太い実線で示した電流波形は、電圧と電流の位相差がない測定系で電流を測定した実測値を示している。このときの電圧波形を、
図25中に薄い点線で示している。また、
図25にはこの電流波形の実測値をもとに、電圧と電流の位相差をそれぞれ1/10周期分遅らせた波形および1/10周期分進ませた波形(共に計算値)を示している。
【0101】
図25に示した家電機器で消費される電力は、電流と電圧の積を1周期にわたって積分した値として得ることができる。実際の測定を行なう際に、電圧と電流の測定結果に位相差が生じた場合には、図に示したように時間軸上でずれた波形が測定されることになり、このような波形をもとに電力計算をすると、電力算出結果に誤差が生じることとなる。
【0102】
図26に、
図25の電流波形について計算した電力値の真の電力値に対する相対値と、電圧と電流の位相差との関係を示す。ここでは、位相差がない場合の電力値を真の電力値とし、100%として相対表示している。このように、電圧と電流の位相差によって電力の計算値は大きく変動し、位相差が45度の場合に50%近い誤差が生じている。
【0103】
このようなことから、電流と電圧の測定値の位相差をできるだけ小さくすることが、電力値の測定や、有効電力、無効電力や力率の測定精度を上げるために重要である。本発明の電流波形測定装置では、電流波形に加えて電圧を測定することにより、電圧の周期に同期した電流波形を測定することができ、正確な電力等の測定が可能となる。
【0104】
以上述べたように、本発明の電流波形測定装置を用いることで、電源線や通信線などを流れる電流波形を、その電圧との間の位相関係も含めて測定することができる。このとき、電圧測定については、従来では直接これらの電線に接触させる必要があり、感電の危険が伴ったり、通信機能に影響を与えたりする問題があったが、本発明の電流波形測定装置では電圧測定を非接触で行うことが出来ることからこれらの問題が生じず、既存の被測定系にほとんど影響を与えることなく、安全な測定が可能となる。
【0105】
また、本発明の電流波形測定装置では、外来ノイズをシールドする効果やキャンセルする効果が得られ、外来ノイズの影響を受けにくく、精度の高い電圧測定が可能となる。
【0106】
特に、商用電源のように周波数の低い(50/60Hz)領域についても、電圧と電流の位相差が少ない測定を行うことができ、正確な消費電力の測定や、機器電力の推定技術に用いるための、電圧と同期した電流波形の測定が可能となる。