【文献】
Dziezak,FOOD TECHNOLOGY,1990年 1月,p. 76-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糖類、水、植物性油脂、及び乳化剤を混合し、乳化させてソフトキャンディ原液を調製し、前記ソフトキャンディ原液を煮詰めてソフトキャンディベースとし、前記ソフトキャンディベースにゼラチンの溶液を所定温度で混合した後、冷却するソフトキャンディの製造方法において、(1)前記ソフトキャンディ原液、(2)前記ソフトキャンディベース、及び/又は(3)前記ソフトキャンディベースに前記ゼラチン溶液を添加したものに、グルコン酸、グルコン酸塩、及びグルコノデルタラクトンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を、最終的に得られるソフトキャンディを質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0となる量で添加し、更に、穀類、いも及びでん粉類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、菓子類、し好飲料類、調味料及び香辛料類、及び調理加工食品類乳原料から選ばれた少なくとも1種の風味材及び/又は香料を添加することにより、ミルク味、チョコ味、わたがし味、抹茶味、ニッキ味、ソーセージ味、芋味、栗味、野菜味から選ばれた一種の味とすることを特徴とするソフトキャンディの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソフトキャンディは、果汁や香料などで味付けされ、食感とともにその風味をたのしむことができるものであるが、従来のソフトキャンディは、フルーツ味などが多く、いずれも酸味を有するものであった。
【0006】
これに対して、本発明者らは、ソフトキャンディをミルク味や抹茶味などに味付けしようとしたところ、そのような味の場合、酸味と相性が悪いことがわかった。そこで、ソフトキャンディの酸味を低減すべく酸味料を減らしたところ、ソフトキャンディ全体のpHが中性側へ移動し、ゼラチンの粘度が低下してしまい、好ましいチューイング感や歯ごたえが得られなくなるという問題が生じることがわかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、酸味が除かれていても十分なチューイング性を有し、例えばミルク味や抹茶味などとの相性が良いソフトキャンディ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及び/又はリン酸塩を配合することにより、ミルク味や抹茶味などとの相性が良くない酸味を低減させても、十分なチューイング性を有するソフトキャンディが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のソフトキャンディは、少なくとも、糖類、植物性油脂、乳化剤、及びゼラチンを配合してなるソフトキャンディにおいて、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有し、質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0であることを特徴とする。
【0010】
本発明のソフトキャンディによれば、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有することにより、質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0という、比較的低いpHにすることができる。このため、酸味を感じさせずに、ゼラチンの粘度を上げることができ、好ましいチューイング感や歯ごたえを有するソフトキャンディを提供することができる。したがって、例えばミルク味や抹茶味などの酸味との相性がよくない味付けを施したソフトキャンディに好適である。
【0011】
本発明のソフトキャンディにおいては、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.001〜5.0質量%含有することが好ましい。
【0012】
本発明のソフトキャンディにおいては、更に、穀類、いも及びでん粉類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、菓子類、し好飲料類、調味料及び香辛料類、及び調理加工食品類乳原料から選ばれた少なくとも1種の風味材及び/又は香料を配合してなることが好ましい。これによれば、ソフトキャンディに含まれるグルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上と、これらの風味材及び/又は香料との風味の相性が良好である。
【0013】
本発明のソフトキャンディにおいては、前記風味材及び/又は香料を含有し、ミルクなどの乳製品味、チョコなどの洋菓子味、わたがしなどの和菓子味、抹茶などのし好飲料味、ニッキなどのスパイス又はハーブ味、ソーセージなどの魚介、肉、卵又はそれらの料理味、芋や栗や野菜などの植物又はその料理味から選ばれた一種の味とされていることが好ましい。これによれば、ソフトキャンディに含まれるグルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上が、それらの風味を損ねることがない。
【0014】
本発明のソフトキャンディは、実質的に酸味を感じさせない味とされていることが好ましい。ここで、実質的に酸味を感じさせないとは、パネラー10名以上の官能試験において、7割以上の人が酸味を感じない味を意味する。
【0015】
一方、本発明のソフトキャンディの製造方法は、糖類、水、植物性油脂、及び乳化剤を混合し、乳化させてソフトキャンディ原液を調製し、前記ソフトキャンディ原液を煮詰めてソフトキャンディベースとし、前記ソフトキャンディベースにゼラチンの溶液を所定温度で混合した後、冷却するソフトキャンディの製造方法において、(1)前記ソフトキャンディ原液、(2)前記ソフトキャンディベース、及び/又は(3)前記ソフトキャンディベースに前記ゼラチン溶液を添加したものに、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を、最終的に得られるソフトキャンディを質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0となる量で添加することを特徴とする。
【0016】
本発明のソフトキャンディの製造方法によれば、ソフトキャンディの製造工程において、(1)ソフトキャンディ原液、(2)ソフトキャンディベース、及び/又は(3)ソフトキャンディベースにゼラチン溶液を添加したものに、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を、最終的に得られるソフトキャンディを質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0となる量で添加するので、酸味を低減しつつpHを比較的低く維持して、ゼラチンの粘度を上げることができる。このため、酸味を感じさせずに、好ましいチューイング感や歯ごたえを有するソフトキャンディを製造することができる。
【0017】
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、前記グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.001〜5.0質量%添加することが好ましい。
【0018】
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、更に、穀類、いも及びでん粉類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、菓子類、し好飲料類、調味料及び香辛料類、及び調理加工食品類乳原料から選ばれた少なくとも1種の風味材及び/又は香料を添加することが好ましい。これによれば、ソフトキャンディに含まれるグルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上と、これらの風味材及び/又は香料との風味の相性が良好なソフトキャンディを得ることができる。
【0019】
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、前記風味材及び/又は香料を添加して、ミルクなどの乳製品味、チョコなどの洋菓子味、わたがしなどの和菓子味、抹茶などのし好飲料味、ニッキなどのスパイス又はハーブ味、ソーセージなどの魚介、肉、卵又はそれらの料理味、芋や栗や野菜などの植物又はその料理味から選ばれた一種の味とすることが好ましい。これによれば、ソフトキャンディに添加されたグルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上が、それらの風味を損ねることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも、糖類、植物性油脂、乳化剤、及びゼラチンを配合してなるソフトキャンディにおいて、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有することにより、質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0という、比較的低いpHにすることができる。このため、酸味を感じさせずに、ゼラチンの粘度を上げることができ、好ましいチューイング感や歯ごたえを有するソフトキャンディを提供することができる。したがって、例えばミルク味や抹茶味などの酸味との相性がよくない味付けを施したソフトキャンディに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に用いる糖類としては、例えばブドウ糖、果糖等の単糖類;砂糖、麦芽糖、乳糖等の二糖類;水飴、マルトデキストリン等の少糖類ないし多糖類、ソルビトール等の糖アルコール等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。このうち、水飴、砂糖が好ましい。
【0023】
本発明に用いる植物性油脂としては、融点等の物性に特に制限はなく、例えば菜種油やその硬化油等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0024】
本発明に用いる乳化剤としては、植物性油脂を乳化できるものであれば特に制限はなく、例えばショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド、ジグリセリド、レシチン等の食用乳化剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。このうち、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、かかる2種を併用することが特に好ましい。また、乳化剤は、親水性、親油性のいずれを用いてもよいが、親水性、親油性の乳化剤を併用することが好ましい。
【0025】
本発明に用いるゼラチンとしては、その原料に特に制限はなく、例えば牛骨および牛皮、豚皮、魚皮、魚鱗などから得られたものを用いることができる。このうち、豚皮、魚皮が好ましい。原料から効率良く高品質のゼラチンを抽出するためには、原料に対して塩酸や硫酸などの無機酸を用いて数時間から数日程度の前処理を行なう。あるいは、原料に対して石灰処理などでアルカリ処理を行う。一般に、アルカリ処理ゼラチンは、数ヶ月の処理期間を要し製造コストがかさむ。本発明においてはコストの安い無機酸による前処理を経て得られた酸処理ゼラチンを用いることが好ましい。
【0026】
上記ゼラチンの粒度は、水への溶解性、起泡性及びソフトキャンディの保型性等の観点から、4メッシュパスが90重量%以上、20メッシュオンが60重量%以上であることが好ましく、4メッシュパスが95重量%以上、20メッシュオンが80重量%以上であることが特に好ましい。また、そのゲル強度は、ソフトキャンディの保型性等の観点から、ブルーム値で100〜300が好ましく、150〜280がより好ましく、180〜240が特に好ましい。
【0027】
本発明のソフトキャンディは、上記の糖類、植物性油脂、乳化剤、ゼラチンを少なくとも配合してなり、更に、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有する。そして、質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0である。そのpHとしては3.0〜5.5であることがより好ましく、4.0〜5.0であることが最も好ましい。
【0028】
上記グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上はその合計量で0.001〜5.0質量%含有することが好ましく、0.01〜4.0質量%含有することがより好ましく、0.1〜3.0質量%含有することが最も好ましい。
【0029】
下記表1には、本発明に用いるグルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩の例として、日本で一般的に利用されている食品用の添加物を挙げる。これらは、食品に酸味を付与する酸味料やpHを調整するpH調整剤などとして用いられており、本発明にも安全に利用できる。ただし、これらに限られるものではない。なお、上記添加物の用途は、各国によって異なり、酸味料やpH調整剤のほか、日本以外では、保湿剤、品質改良剤、酸度調整剤などといった表記方法がある。
【0031】
本発明のソフトキャンディには、必要に応じて、穀類、いも及びでん粉類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、菓子類、し好飲料類、調味料及び香辛料類、及び調理加工食品類乳原料から選ばれた少なくとも1種の風味材及び/又は香料を配合してもよい。また、それらの風味材及び/又は香料を含有することによって、ミルクなどの乳製品味、チョコなどの洋菓子味、わたがしなどの和菓子味、抹茶などのし好飲料味、ニッキなどのスパイス・ハーブ味、ソーセージなどの魚介・肉・卵及びその料理味、又は芋や栗や野菜などの植物及びその料理味とされていてもよい。
【0032】
本発明のソフトキャンディにおいては、ソフトキャンディ全体に上記ゼラチンを、好ましくは0.1〜5質量%程度、より好ましくは1.0〜5質量%程度含有せしめることにより、好ましいチューイング性を具備させることができる。ソフトキャンディのチューイング性を客観的に評価する方法としては、例えば食感・テキスチャー測定機器である「テクスチャーアナライザーTA.XT plus」(英弘精機株式会社製)を用いて、下記試験例2に記載の方法に準じて行なうことができる。すなわち、ソフトキャンディのチューイング性は、ソフトキャンディを1回噛み、次に噛む時に再度噛むことができる戻り、言い換えれば跳ね返り(膨らみ戻り)の度合いで評価できるが、下記試験例2に記載の方法で得られるチューイング性の指標値は、その度合いを客観的に反映した値となっている。本発明のソフトキャンディにおいては、その方法によって得られるチューイング性の指標値が、10個程度のサンプルを測定した平均値として4,000〜4,800(g)であることが好ましく、4,300〜4,800(g)であることがより好ましい。
【0033】
本発明のソフトキャンディは、食感の軽さ、噛み出しの柔らかさ、歯への付き難さの観点から、比重が1.3以下、特に1.25以下であることが好ましい。また、本発明のソフトキャンディは、歯への付着防止、保型性の観点から、水分含量が5〜10重量%、特に6〜9重量%であることが好ましい。
【0034】
本発明のソフトキャンディは、酸味を感じさせないことが売りである品質を特性とする味とすることで、より商品価値の高いものとすることができる。
【0035】
一方、本発明のソフトキャンディの製造方法においては、糖類、水、植物性油脂、及び乳化剤を混合し、乳化させてソフトキャンディ原液を調製し、そのソフトキャンディ原液を煮詰めてソフトキャンディベースとし、得られたソフトキャンディベースにゼラチンの溶液を所定温度で混合した後、冷却してソフトキャンディを得る。
【0036】
[ソフトキャンディ原液及びソフトキャンディベースの調製]
ソフトキャンディ原液は、糖類、水、植物性油脂及び乳化剤を混合し、乳化させて調製する。各原料の混合は、例えばスーパーミキサー等を用いて行なうことができる。混合後、好ましくは70〜90℃に加温し、例えば上記スーパーミキサー等を用いて乳化する。
【0037】
次に、得られたソフトキャンディ原液を、煮詰めてソフトキャンディベースを調製する。このとき、着色しないように、減圧しながら煮詰めることが好ましい。また、煮詰めた後のソフトキャンディベースの水分含量は、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜7重量%、特に好ましくは3〜6重量%である。
【0038】
[フォンダントの調製]
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、結晶の大きさが30μm未満、好ましくは5〜20μmの砂糖微結晶(以下、「フォンダント」という)を調製して、これを配合してもよい。フォンダントは、例えば以下のようにして調製することができる。
【0039】
すなわち、砂糖、水飴等の砂糖以外の糖類、及び水を混合し、好ましくは100〜140℃、特に好ましくは110〜130℃で水分が好ましくは20重量%以下、特に好ましくは5〜15重量%になるまで煮詰める。次いでこれを冷却、撹拌、混合することにより調製することができる。ここで砂糖以外の糖類としては、水飴が好ましい。砂糖と砂糖以外の糖類との比率(重量比)は、50:50〜95:5が好ましく、60:40〜90:10がより好ましく、70:30〜85:15が特に好ましい。フォンダントの水分含量は、5〜15重量%が好ましく、6〜14重量%がより好ましく、8〜12重量%が特に好ましい。かかるフォンダントを用いることにより、噛み出しが柔らかで、歯につき難く、保型性のあるソフトキャンディを得ることができる。
【0040】
[ソフトキャンディベースとフォンダントとの混合]
本発明のソフトキャンディの製造方法において、フォンダントを配合する場合には、下記の態様で、ソフトキャンディベースとフォンダントとの混合物を調製することが好ましい。
【0041】
すなわち、ソフトキャンディベースとフォンダントの混合割合(重量比)は、99:1〜70:30が好ましく、95:5〜75:25がより好ましく、90:10〜80:20が特に好ましい。混合の温度は、フォンダントが溶解するのを防止するため、50〜70℃に保持することが好ましい。このとき、ソフトキャンディベース中の砂糖を結晶化させることが好ましい。砂糖は、ソフトキャンディベースとフォンダントを50〜70℃で30秒以上混練することにより、結晶化させることができる。
【0042】
[フラッペの調製]
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、ゼラチンを含有する溶液をホイップして調製したゼラチン含有調製物(以下、「フラッペ」という)を調製して、これを配合してもよい。フラッペは、例えば以下のようにして調製することができる。
【0043】
すなわち、糖類、例えば砂糖、水飴と、水を混合し、好ましくは80〜130℃、特に好ましくは90〜120℃で糖度が好ましくはBx70〜95°、特に好ましくはBx75〜90°となるように煮詰めた後、好ましくは60〜90℃、特に好ましくは65〜80℃に冷却する。別にゼラチンと水を混合し、好ましくは60〜90℃で加熱溶解した後、上記糖類の冷却液と混合する。これを比重が好ましくは0.3〜0.5、特に好ましくは0.35〜0.45となるようにホイップすることにより調製することができる。このとき、ゼラチンは、ゼラチンの好ましくは0.5〜4倍重量、特に1〜3倍重量の水に膨潤させ、加熱溶解することが好ましい。フラッペの組成(重量比)は、砂糖:水飴:ゼラチン:水が20〜50:20〜50:1〜10:10〜30であることが好ましく、25〜45:25〜45:2〜8:15〜25であることが特に好ましい。かかるフラッペを配合することにより、食感が軽く、噛み出しが柔らかく、歯に付き難いソフトキャンディ得ることができる。
【0044】
[ゼラチンの溶液の混合]
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、上記ソフトキャンディベースと、上記ゼラチンの溶液とを所定温度で混合する。混合の態様としては、ゼラチン含有調製物である上記フラッペを用いて、下記の態様で行なうことが好ましい。
【0045】
すなわち、エアレーションされたゲルの崩壊を極力少なくするという観点から、調製後好ましくは2時間以内、特に好ましくは1.5時間以内のフラッペを、上記ソフトキャンディベース、又は上記ソフトキャンディベースとフォンダントの混合物に添加する。このとき、上記したように、混合の際及び/又は混合後の品温は、70℃超になるとフォンダントが溶解したり、ゼラチンのゲル強度が低下するので、品温は50〜70℃に保持することが好ましい。この温度で30秒以上混練する。30秒以上混練することにより、フォンダントの結晶化、ソフトキャンディベースへのフォンダントの分散の効果が向上する。
【0046】
なお、ソフトキャンディに好ましいチューイング性を付与する観点から、ソフトキャンディ全体に上記ゼラチンを、好ましくは0.1〜5質量%程度、より好ましくは1.0〜5質量%程度含有せしめるように混合することが好ましい。また、食感の軽さの観点から、比重が1.3未満、特に1.25未満となるように混合することが好ましい。
【0047】
ソフトキャンディベース、フォンダント、フラッペの混合の順序は、上記のものに限られない。すなわち、ソフトキャンディベースとフラッペを混合してから、フォンダントを添加して混合してもよく、ソフトキャンディベース、フォンダント、フラッペを同時に添加して混合してもよい。なお、上記したように、混合の際及び/又は混合後の品温は、70℃超になるとフォンダントが溶解したり、ゼラチンのゲル強度が低下したりするので、品温は50〜70℃に保持することが好ましい。
【0048】
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、(1)上記ソフトキャンディ原液、(2)上記ソフトキャンディベース、及び/又は(3)上記ソフトキャンディベースに上記ゼラチン溶液を添加したものに、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を、最終的に得られるソフトキャンディを質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHが2.0〜6.0となる量で添加する。そのpHとしては3.0〜5.5であることがより好ましく、4.0〜5.0であることが最も好ましい。
【0049】
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、上記グルコン酸、グルコン酸塩、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びリン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上をその合計量で0.001〜5.0質量%添加することが好ましく、0.01〜4.0質量%添加することがより好ましく、0.1〜3.0質量%添加することが最も好ましい。
【0050】
本発明のソフトキャンディの製造方法においては、必要に応じて、穀類、いも及びでん粉類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、菓子類、し好飲料類、調味料及び香辛料類、及び調理加工食品類乳原料から選ばれた少なくとも1種の風味材及び/又は香料を添加してもよい。また、それらの風味材及び/又は香料を添加することによって、ミルクなどの乳製品味、チョコなどの洋菓子味、わたがしなどの和菓子味、抹茶などのし好飲料味、ニッキなどのスパイス・ハーブ味、ソーセージなどの魚介・肉・卵及びその料理味、又は芋や栗や野菜などの植物及びその料理味とされていてもよい。
【0051】
以上により、ソフトキャンディを製造することができるが、必要に応じて、所定の大きさ、形状に成形したり、得られた成形物のひずみを低減させたりすることにより、より商品価値の高いソフトキャンディを製造することができる。また、色や風味の異なるソフトキャンディを製造し、これを多層にすることもできる。さらに、1のソフトキャンディを、これとは色や風味の異なる他のソフトキャンディで包む形態にすることもできる。
【0052】
本発明の製造方法で得られたソフトキャンディは、酸味を感じさせないことが売りである品質を特性とする味とすることで、より商品価値の高いものとすることができる。
【実施例】
【0053】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
<製造例1>
特許第3618718号公報に記載された方法と同様にして、ソフトキャンディを製造した。このとき、酸味料として下記表2に示す酸を用いた。すなわち、グルコン酸(例1)、クエン酸(例2)、リンゴ酸(例3)、又は乳酸(例4)を、それぞれについて得られたソフトキャンディのpHが同じ(pH4.5)となるように配合量を調整して添加した。なお、ソフトキャンディのpHは質量換算で9倍量の水に溶かして測定したときのpHを測定した。
【0055】
【表2】
【0056】
その製造の方法は下記のとおりである。
【0057】
(1)ソフトキャンディ原液の調製
スーパーミキサーに、砂糖50重量部、水飴50重量部、水10重量部、ソルビタン脂肪酸エステル0.15重量部、HLB11のショ糖脂肪酸エステル0.15重量部を混合して、撹拌しながら80℃に加温した。次いでなたね油10重量部を混合し、撹拌しながら乳化して、ソフトキャンディ原液を得た。
【0058】
(2)ソフトキャンディベースの調製
(1)で得たソフトキャンディ原液を、スーパーフィルムクッカー(佐久間製作所(株)製)を用い、真空度600mmHg、温度118℃で、水分含量が約5重量%となるまで煮詰めた後、70℃に冷却してソフトキャンディベースを得た。
【0059】
(3)フォンダントの調製
砂糖70重量部、水飴30重量部及び水20重量部を溶解タンクに混合し、121℃で、水分含量が10重量%となるまで煮詰めた。次いでこれを70℃に冷却して粒径30μm以下のフォンダントを得た。
【0060】
(4)フラッペの調製
砂糖75重量部、水飴75重量部、水25重量部を混合し、118℃で糖度がBx90°になるまで煮詰めた後70℃まで冷却した。別に、酸処理ゼラチン(ゲル強度:200ブルーム、粒度:4メッシュパス100%、20メッシュオン90%)10重量部をその2重量倍の水に80℃で溶解し脱泡した後70℃に冷却した(ゼラチン溶液)。次いで両者を8:1(重量比)で混合し、フラッペを得た。該フラッペの糖度は、Bx80°であった。
【0061】
(5)ソフトキャンディベース、フォンダント、フラッペ等の混合
ソフトキャンディベース80重量部、フォンダント20重量部及び(4)で調製したゼラチン溶液1重量部を混合し、30秒以上混練した。混練後の温度は70℃であった。次いで、これに上記表2に示したいずれかの酸と、果汁、香料、着色料とを添加し、さらにフラッペを添加して30秒以上撹拌した。撹拌後の温度は、65℃であった。次いでこれを45℃に冷却し、ソフトキャンディ組成物を得た。
【0062】
(6)ソフトキャンディの成形
上記で得られたソフトキャンディ組成物を成形し、これを動転してひずみを低減して、ソフトキャンディを得た。
【0063】
<試験例1>
専門パネル11名に製造例1で製造した例1〜例4の各ソフトキャンディを食べてもらい官能評価を行なった。すなわち、一番酸っぱくないものを「1」と評価し、2番目に酸っぱくないものを「2」と評価するという順位法で、酸っぱくないものの順番をつけてもらった。なお、同率2位のものが2つある場合は「2.5」と評価し、同率3位のものが2つある場合は「3.5」と評価した。また、各ソフトキャンディのなかでチューイング性のないもの(満足しないもの)はあるかどうかを答えてもらった。結果を下記表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
その結果、グルコン酸を配合したソフトキャンディが、一番酸味を感じなかったとの評価するものの人数が10名に達し、その他の1名も二番目に酸味を感じなかったと評価した。また、11名全てが各ソフトキャンディのなかでチューイング性のないもの(満足しないもの)はないと答えた。
【0066】
したがって、グルコン酸を配合したソフトキャンディは、クエン酸、リンゴ酸、乳酸を配合したものに比べて、酸味が除かれており、なお且つチューイング性も良好であることが明らかとなった。
【0067】
<試験例2>
製造例1と同様にして、クエン酸を配合したソフトキャンディ(例5)、グルコン酸を配合したソフトキャンディ(例6)、及び上記酸を配合しないで製造したソフトキャンディ(例7)を製造し、各ソフトキャンディのそれぞれ10サンプルについて、以下の方法でそのチューイング性を測定した。
【0068】
(測定方法)
・測定機器:英弘精機株式会社製テクスチャーアナライザーTA.XT plus
・測定プローブ名:10mm DIA CYLINDER EBONITE
(1) 一個当たり約5.0gであり、およそ縦25mm、横14mm、高さ11mmの直方体状にソフトキャンディを成形した。測定面は25mm×14mmの面とした。
(2) 上記ソフトキャンディをテクスチャーアナライザーの試料台に固定した。ソフトキャンディの品温を20℃に保つため、測定は20℃の部屋で行なった。
(3) アナライザーの測定プローブ(直径10mmの円柱状)を1mm/secのスピードで降下させソフトキャンディの表面に進入させ、最大荷重25kgの範囲内で応力(Force)を測定した。
(4) 測定プローブがソフトキャンディの表面から5mm進入したところで、測定プローブを1mm/secのスピードで上昇させた。
(5) 測定プローブがソフトキャンディから離れた後に、再度(2回目)、測定プローブを1mm/secのスピードで降下させソフトキャンディの表面に進入させ、表面から5mm進入したところで、測定プローブを1mm/secのスピードで再度上昇させた。
【0069】
図1は、上記の操作により生じる測定プローブに対するソフトキャンディの応力の経時変化を示すモデル図である。実測のグラフから、
図1に示される第1の応力ピーク曲線下面積(A1)、第2の応力ピーク曲線下面積(A2)、第2の最大応力(F2)(実測の単位g)、第1の応力ピーク曲線の立ち上がりからピーク頂点に至るまでの時間(L1)、第2の応力ピーク曲線の立ち上がりからピーク頂点に至るまでの時間(L2)に相当する値を得ることができるので、これらの値を下記式(1)の算定式に入れて得られた値を、ソフトキャンディのチューイング性の指標値(Ch)とした。
【0070】
【数1】
【0071】
なお、ソフトキャンディのチューイング性は、ソフトキャンディを1回噛み、次に噛む時に再度噛むことができる戻り、言い換えれば跳ね返り(膨らみ戻り)の度合いで評価できるが、上記指標値は、その度合いを客観的に反映した値となっている。すなわち、プローブでソフトキャンディを1回目押さえるとソフトキャンディが一旦凹むが、プローブを引き上げる間にソフトキャンディが膨らむ。その後、再度プローブでソフトキャンディを2回目押さえ、1回目と同じ距離凹ますのに係る力(F2)を測定し、そのF2と、上記L1とL2との比、及び上記A1とA2との比から指標値が求められる。その指標値はソフトキャンディのチューイング性と密接に関連した指標値となっている。
【0072】
結果を下記表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
その結果、グルコン酸を使用したものは、クエン酸を使用したものに比べて、そのチューイング性の指標値に大差がなく、上記測定法によるチューイング性の指標値が、専門パネル11名によるチューイング性の官能評価の結果(試験例1)とよく一致していた。一方、クエン酸やグルコン酸を添加しないソフトキャンディでは、チューイング性の指標値は低くなり、ソフトキャンディ特有のチューイング性が損なわれていることが明らかとなった。
【0075】
<製造例2>
ゼラチンとして、アルカリ処理ゼラチン(ゲル強度:250ブルーム、粒度:4メッシュパス100%、20メッシュオン90%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、グルコン酸を配合したソフトキャンディ(例8)、上記酸を配合しないで製造したソフトキャンディ(例9)、及びクエン酸を配合したソフトキャンディ(例10)を製造した。
【0076】
<試験例3>
専門パネル11名に製造例2で製造した例8〜例10の各ソフトキャンディを食べてもらい、酸っぱさとチューイング性についての官能評価を行なった。結果を下記表5、6に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
その結果、酸っぱさについては、グルコン酸を使用した例8のソフトキャンディでは、11名中10名が「酸っぱくない」と評価したのに対して、クエン酸を使用した例10のソフトキャンディでは、11名中9名が「酸っぱい」と評価した。また、チューイング性については、グルコン酸を使用した例8のソフトキャンディでは、11名全員が「チューイング性がある」と評価したのに対して、クエン酸やグルコン酸を使用しないで製造した例9のソフトキャンディでは、11名中9名が「チューイング性がない」と評価した。
【0080】
したがって、クエン酸を配合したソフトキャンディでは酸味を呈するのに対して、グルコン酸を配合したソフトキャンディでは酸味を呈することがなく、また、酸を添加しないソフトキャンディではソフトキャンディ特有のチューイング性が損なわれてしまうのに対して、グルコン酸を配合したソフトキャンディではチューイング性も良好であることが明らかとなった。