【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらに実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>ヒメマツタケ菌糸体の培養及び抽出方法
ヒメマツタケの種菌を株式会社モナより入手した。そして、担子菌用滅菌済みの液体培地にヒメマツタケの種菌を接種し、雑菌汚染を防止しつつ好気条件下に30℃で14日間振とう培養して菌糸体を生育させた。培養系を遠心分離して得た菌糸体を、グルカナーゼ処理後、凍結乾燥した。これを加工した粉末(以下、「ヒメマツタケ粉薬」という)を投与実験に用いた。また、ヒメマツタケ粉薬を10倍重量の90℃ 以上の熱水で10分間抽出し、その熱水抽出物を遠心分離して、上澄み液を得た。この上澄み液(以下、「ヒメマツタケ抽出物」といい、図面中では、「ABE」と示す)を以下の活性の評価などに供した。
【0051】
<実施例2>血液サンプルの調製方法
末梢血液サンプルは、ヒメマツタケ粉薬(250mg/日)を一年間連日投与の前後について、8人の高脂血症患者から採取した。投与を中断して4か月後に、投与を再開し3ヵ月間、ヒメマツタケ粉薬を投与し、血液サンプルを定期的に採取した。また、対照とする血液サンプルは6人の健常人から自発的に提供されたものを用いた。なお、全ての血液サンプルは東京女子医科大学の倫理委員会の認可のもと、個人の了解を得たものである。
【0052】
<実施例3>ヒメマツタケ粉薬の投与による血清中の酸化LDLレベルの抑制効果
(1)酸化LDLレベルの測定
最初に、家族性高脂血症、狭心症、心筋虚血と穏やかな非インシュリン依存性糖尿病を併発した56才の男性患者にヒメマツタケ粉薬(250mg/日)を与えた。投与前の、患者の心筋血流は左心室の前側部において、テクネチウムの蓄積が低くなっていたが(
図1A)、ヒメマツタケ粉薬の経口摂取後4ヵ月後に正常レベルのテクネチウムの蓄積が見られるように改善され(
図1B)、そして、酸化LDLの量は11ヵ月後に5μgのLDLタンパク質につき1.5ngから0.1ngに減少した。
【0053】
この知見から、我々はヒメマツタケ粉薬が酸化LDLレベルを減らす化学物質を含有すると仮定した。そして、それによって脈管損害の回復を促進するとともに、動脈硬化の予防と改善が可能になると考えた。
【0054】
次に、我々は、高脂肪血症患者に対して、血清中の酸化LDLレベルに関して、ヒメマツタケ粉薬の連日投与の影響を検討した。ヒメマツタケ粉薬を1年間摂取した高脂血症患者(n=8)、及び健常人(n=6)から血液を採取し、血清酸化LDLレベルを測定した。その後、高脂血症患者は4ヶ月間摂取を中断した後、再び3ヶ月間摂取を再開した。ヒメマツタケ粉薬(250mg/日)を1年間連日投与する前と後について、血液を採取し、血清中の酸化LDLレベルをサンドイッチELISAにより測定した。血清中の酸化LDL分画は超遠心分離によって種々の血液成分から分離され、タンパク質濃度はBCA試薬(バイオラッド社;米国カリフォルニア州ヘラクレス)を使って決定された。希釈したLDL(50μg/ml)分画100μlを、抗・酸化フォスファチジルコリンモノクローナル抗体(DLH3; 0.5μg/well)でプレコートされたマイクロタイターウェルに加え反応させた後、ウェルを十分に洗浄し、ウェルに結合した酸化LDLを抗アポBタンパク質ポリクローナル抗体を1次抗体として、さらにアルカリホスファターゼを結合した2次抗体を用いて検出した。最終的に、ウェルはパラニトロフェニルリン酸(1mg/ml、1Mのトリエタノールアミン緩衝液(pH 9.8)に溶解したもの)とともに、10〜30分間、37℃でインキュベートした。酸化LDL量はマイクロプレートリーダーを用いて405nmの吸光度として測定し、銅を用いて作成した酸化LDLを標準物質として定量を行った。
【0055】
(2)結果
図2に示すように、対照群(健常人群)において、血清中の酸化LDLレベルは、1年を通して不変であった。これとは逆に、患者グループについては、注目に値する酸化LDLレベルの改善を見いだした。これらの結果は、ヒメマツタケ粉薬が高脂血症患者の血清中の酸化LDLレベルを低下させたことを示唆する。
【0056】
また、我々は、ヒト由来のLDL(0.2mg/mL)を、ヒメマツタケ抽出物(2、20、200μg/mL)、アセチルシステイン(AcCys:20μg/mL)あるいはブチルヒドロキシトルエン(BHT:2μg/mL)の存在下、5μM硫酸銅により37℃で3時間酸化反応を行い、反応後、TBARS(thiobarbituric acid-reactive substance)の量を測定した。その結果、
図3に示すように、ヒメマツタケ粉薬がインビトロでは、LDLの脂質過酸化反応を促進しないことを明らかにした。
【0057】
したがって、ヒメマツタケ粉薬の投与による血清中の酸化LDLレベルの抑制効果は、特定の細胞による血清からの酸化LDLの除去によるものであることが示唆された。
【0058】
<実施例4>冠状動脈におけるヒメマツタケ粉薬の影響の免疫組織化学的な分析
(1)試験方法
高脂肪血の近交系日本白ウサギの2つの群(グループIおよびII)を用い、動脈硬化に関する、ヒメマツタケ粉薬の影響を調べた。
【0059】
約2.5kgの近交系白ウサギ16匹を、以下の3つのグループにランダムに分けた。
・グループI:ヒメマツタケ粉薬投与無し(n=8)
・グループII:ヒメマツタケ粉薬投与有り(n=6)
・コントロール:無処理群(n=2)
最初にグループIおよびIIのウサギの大動脈を、バルーンチップカテーテルを使って損傷した。その後、すべてのウサギは別々に飼育し、それぞれのウサギは食物(100g/日)と水を自由摂取できるようにした。グループIおよびIIのウサギ群に、12週の間、高コレステロール含有飼料[0.5%のコレステロールを、CLEA Rabbit Diet CR-3(クリア社)に加えたもの]を与えた。次の23週間は、グループIIのウサギ群には0.01%のヒメマツタケ粉薬(3.3mg/kg:人間の摂取量と同じ換算比率にしたもの)を含むCR-3飼料を与えたが、グループIのウサギ群には通常のCR-3飼料を与えた。コントロールのウサギ群には、35週間にわたりCR-3飼料のみを与えた。この実験期間の終わりには、グループIとグループのIIのウサギの重量は、ともに約3.5kgになっていた。第12週と第35週の終わりに、ウサギの眼部内膜の厚みと、下行腹部大動脈の眼部内膜の厚みを超音波エコーを使って測定した。投与期間終了後(35週後)のウサギはネンブタール(50mg/kg)で麻酔し、解剖してその後の実験に用いた。
【0060】
さらに、すべてのウサギの組織切片と下行大動脈は、ヘマトキシリンエオジン(HE)、マソントリクロームおよびビクトリアブルーによる従来の方法を使用して染色した。免疫化学的な分析は、すべてのウサギに対して、抗ウサギマクロファージ11(RAM11)モノクローナル抗体、抗ヒト酸化LDLレセプター(LOX-1)モノクローナル抗体、Ki67(MIB-1)タンパク質に対するマウス抗体、平滑筋性アクチン(αSMA)に対する抗体、Bcl2系タンパク質検出のためのマウス抗BAXタンパク質モノクローナル抗体、酸化LDLレセプター検出のための抗CD36タンパク質抗体とヒトコラーゲンタイプI、IIIとVIに対するマウス抗体を使って行った。アポトーシスは、TUNEL法により評価した。
【0061】
(2)結果
高コレステロール飼料を23週間にわたって与えている間、グループIの4匹のウサギ(50%)は心筋梗塞で死亡したが、グループIIのウサギが早世することはなかった。グループIおよびIIウサギの間では、脳、下垂体、骨格の筋肉、腎臓、尿管、大動脈、すい臓、精巣、直腸、肺、肝臓、脾臓、胸腺、胃、小腸と副腎については、相違点は見いだされなかった。しかし、冠状動脈だけは、組織学的な相違点が見いだされた。
【0062】
泡沫化マクロファージの浸潤による内膜増殖は、グループIウサギにおいて心房の冠状動脈と両心室において観測されたが、特に心室中隔において顕著であり、内膜アテローム硬化性障害(
図4A)の存在が示された。RAM 11の免疫染色(
図4B)によって明らかな泡沫化マクロファージと平滑筋αアクチンによって免疫染色(
図4C)される平滑筋細胞を伴う顕著な隆起性色素増殖は、グループIウサギの冠状病巣で観察された。グループIIウサギ群(
図4D-F)は、コントロールウサギ群(
図4G-I)と明確な差異を示さず、冠状動脈に対する障害はほとんど見られなかった。
【0063】
これらの結果から、グループIウサギの冠状動脈ではアテローム性動脈硬化の症状が見られたが、グループIIウサギまたはコントロール群においては見られなかったことが明らかとなり、ヒメマツタケ粉薬を投与することによって、アテローム性動脈硬化が改善されることが示された。
【0064】
さらに、下行大動脈の内膜厚みを心エコー検査法によって測定することにより次の知見が得られた。
【0065】
高脂肪含有の飼料を与えた12週の間に、グループIおよびIIのすべてのウサギに対して、同様に内膜厚みの増大(I:0.63 ± 0.17 μm;II:0.67 ± 0.10 μm)が観察されたが、高脂肪の飼料の投与を停止した23週間後に、正常レベル(I:0.38 ± 0.04 μm;II:0.41 ± 0.08 μm)に戻った。対照群は、投与期間を通して、一貫して同じ内膜の厚み(0.40 ± 0 μm)を示した。この知見はヒメマツタケ粉薬が下行大動脈内膜の厚みを全体として変化させるものではなく、動脈硬化部位に直接作用することを示唆するものである。このことは、組織学的データによっても無処置の動物(
図5)との顕著な違いとして明らかになった。
【0066】
大動脈の組織病理学では、繊維の増殖とマクロファージ浸潤で内膜が厚くなることが明らかになっている。RAM 11による免疫組織化学的な染色では、グループIIウサギ(
図5K)に比較して、グループIウサギ(
図5A)の顕著なマクロファージ増殖を示した。α-平滑筋アクチン、タイプI、III、IVコラーゲン、Ki67(MIB-1)、BAX、LOX-1とCD36について、内膜についての免疫染色は良好であったが、グループI(
図5B-I)とグループIIウサギ(
図5L-S)の違いは見いだせなかった。大動脈の内膜のTUNEL分析では、グループIウサギ(
図5J)ではアポトーシスを示す細胞がグループIIウサギ(
図5T)に比べて多いことが判明した。このことは動脈硬化に伴う細胞へのダメージがグループIウサギではより顕著であったことを示す。
【0067】
<実施例5>ヒメマツタケ菌糸体抽出物のエストロゲン様作用
我々は、ヒメマツタケ菌糸体抽出物による脈管損害を改善するメカニズムがエストロゲン様作用によるものではないかと考え、乳癌由来のMCF-7細胞の増殖に対するヒメマツタケ抽出物の影響を検討した。
(1)Sulforhodamine B(SRB)比色分析評価
ヒト乳癌由来MCF-7細胞は、JCRB Cell Bank(国立医薬品食品衛生研究所、東京)から入手し、RPMI 1640培地(インビトロジェン;米国カリフォルニア州カールスバッド)で、5%の二酸化炭素の存在下、10%の胎児のウシ血清(FBS)を補充して継代培養した。17βエストラジオール(以下、E2という)またはヒメマツタケ抽出物による細胞の処理のために、培地を10%のデキストランコートチャーコール処理をしたFBS(DCC-FBS)とフェノールレッドを含まないRPMI 1640培地と交換した。SRB分析評価は、ポーウェルズらによる報告(2003年)にしたがって行った。
(2) 分析結果
図6に示すように、抽出物濃度が4μg/mlで細胞増殖阻害率が50%になり、6 及び8μg/mlでは80%に至ったことから、ヒメマツタケ抽出物は細胞増殖抑制に対して量的依存性を示すことが明らかになった。
【0068】
このように、ヒメマツタケ菌子体の抽出物は、実施例4で確認された脈管損害の改善作用を有するものの、エストロゲンの持つ癌細胞増殖活性は有していないことが確認された。本実施例の結果は、ヒメマツタケ菌子体の抽出物を投与することの安全性を示すものである。
【0069】
<実施例6>遺伝子発現レベルでの考察1
ヒメマツタケ抽出物を用いて、遺伝子発現レベルでエストロゲン様作用を示すかどうかを、DNAマイクロアレイを用いて調べた。
【0070】
(1)cDNAマイクロアレイアッセイ
cDNAマイクロアレイは、エストロゲンに応答する172の遺伝子を含む全部で203の遺伝子のcDNA断片(500bp〜1.5kb)をガラス基板上に機械的にスポットしたものであり、インフォジーンズ社(筑波)によって製造されたもの(商品名EstrArray)を用いた。EstrArray分析評価のために、MCF-7細胞を、10%のDCC-FBSを含み、フェノールレッドを含まないRPMI 1640培地で3日間培養し、10nMのE2、2μg/mlのヒメマツタケ抽出物、または溶媒のみ(DMSOまたは無菌のミリQ水をコントロールとしたもの)で72時間処理した。全RNAはISOGEN(和光純薬社;東京)を用いて、製品の指示書に従って単離した。アンチセンスRNA(aRNA)は、RiboAmp RNA Amplificationキット(タカラバイオ;日本)を使用して、5 mgの全RNAから精製した。EstrArray分析評価は、別々の培養細胞を用いた3回の独立した実験結果をもとに行った。
【0071】
得られたデータの処理は、それぞれの遺伝子について、Cy3及びCy5のシグナル値が30かそれ以上、あるいは、対応するシグナルエリアが50かそれ以上の場合にのみ行ない、発現比率の計算はMicrosoft Excelを使用して行なった。2つのスポットから得られたCy3あるいはCy5のシグナル値の平均をそれぞれ求め、Cy5値に対するCy3値の比率を各々の遺伝子について計算した。得られたデータを標準化するために、28のコントロール遺伝子について、まずCy3とCy5のシグナルエリアが100未満の遺伝子を除去し、次に、残りの遺伝子のCy3とCy5のシグナル強度の比の平均を求めた。そして最後に、28のコントロール遺伝子について求めた平均のCy3/Cy5値を用いて、すべての遺伝子について標準値を計算した。標準化したCy3/Cy5値はさらにlog
2変換してそれ以降の統計分析に用いた。
【0072】
相関解析とt検定は、SPSS 12.0Jソフトウェアを使用して実行した(SPSS Japan;東京)。120の遺伝子のUniGene名は、Entrez Geneデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov)登録名を用いた。また、これらの120の遺伝子は、再現性の極めて高いエストロゲンに応答する遺伝子として選択されたものである。
【0073】
(2)結果
図7に示すように、10nM E2と2μg/mlの抽出物で処理した細胞の間で類似した遺伝子発現プロファイルが得られた(相関係数またはR = 0.63)ことから、抽出物にエストロゲン様の作用を示す物質が存在している可能性が示された。
【0074】
<実施例7>遺伝子発現レベルでの考察2
抽出物とE2の間で遺伝子発現プロファイルの相違を見つけるために、合計172のエストロゲン応答遺伝子について、ANOVA検定とt検定を行なった。表1に、10 nM E2とヒメマツタケ抽出物処理による遺伝子発現の変化度(3回のEstrArray 解析によって得られた値をlog
2変換した値の平均の比)の間で統計的に有意な変化を示した遺伝子を示す。アクセッション番号はEntrez Geneデータベース登録のそれぞれの遺伝子の番号を示す。大部分の遺伝子が類似した応答を示したが、6つの遺伝子(CEBPB、RBBP8、IER3、DHCR24、ARHGDIAとIGFBP5)はこの処理に対して、かなり異なる応答(P<0.05)を示した。
【0075】
【表1】
【0076】
(1)リアルタイム定量RT- PCR
これらの違いを確かめるために、リアルタイム定量RT-PCRを行った。
リアルタイム定量逆転写(RT)-PCRは、SYBRグリーンキット(インビトロジェン社;米国カリフォルニア州カールスバッド)で2段階qRT-PCR法を使って実行した。PCRは、表2に記載したプライマーを用いて、それぞれの遺伝子について3回行った。PCRサイクルは、LightCycler(ロシュ社;ドイツ国マンハイム)を用いて、まず、3分間95℃で変性し、そして、95℃で5秒間と60℃で30秒間のサイクルを50サイクル行った。β-アクチンを内部標準として用いた。
【0077】
【表2】
【0078】
(2)結果
表1、
図8に示すように、選んだ遺伝子の中で、DHCR24以外の全ての遺伝子は統計学的に有意な遺伝子発現の違いを示した。したがって、E2とヒメマツタケ抽出物の細胞に対する影響を比較すると、一部の遺伝子については明確な差異を示すが、多くの遺伝子については遺伝子発現レベルでは区別できないくらいよく似た効果を与えることが明らかになった。
【0079】
<実施例8>ヒメマツタケ抽出物によって誘発されるErk1/2、Aktとp38の活性化
(1)試験方法
ヒメマツタケ抽出物によって急激に誘発される細胞内シグナル伝達を調べるために、ヒトの臍静脈内皮細胞(HUVEC細胞)とマクロファージ細胞由来のTIB-67細胞を用いた。
【0080】
HUVEC細胞(Cambrex社;米国ニュージャージー州イーストルサフォード)は、10%(v/v)のデキストランコートしたチャーコールで処理した子牛血清(DCC-FBS)を補充・添加したフェノールレッドを含まないダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)(インビトロジェン社;米国カリフォルニア州カールスバッド)を用いて、95%の空気、5%の二酸化炭素のもと湿った環境で培養した。
【0081】
マクロファージ由来のTIB-67細胞はATCC(米国バージニア州マナサス)から入手し、10%のFBSを含むRPMI 1640培地を用いて、5%の二酸化炭素の存在下、37℃で継代培養した。
【0082】
血清の枯渇処理を施した細胞にヒメマツタケ抽出物(100μg/mL)、E2(10 nM)あるいは溶媒のみを与えて刺激し、表示の時間の後に細胞を溶解してタンパク質を精製し、SDS緩衝液に溶解した。タンパク質は5-20%ゲル勾配のSDSポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動により分離し、ニトロセルロースメンブランに転写後、それぞれのリン酸化抗体を用いて検出した。全タンパク量はそれぞれ全タンパク質を検出する抗体を用いて検出した。エストロゲン応答の阻害実験のために、細胞を1μM ICI 182,780(ICI)で15分間処理した。
【0083】
(2)結果
HUVEC細胞をヒメマツタケ抽出物で処理した際には、急激に誘発されるエストロゲン様作用がErk1/2とAktの活性化によるものであることが明らかになったが、TIB-67細胞ではそのような活性化は見られなかった(
図9)。ヒメマツタケ抽出物によるErk1/2とAktの迅速な活性化は、エストロゲンアンタゴニストICI 182,780(ICI)の処理では抑制されないことが観察されたことから、ERαやERβとは異なったシグナル経路が抽出物による応答経路には存在することが推測された。Erk1/2とAktの活性化状態は30分以内に元のレベルに戻ったことは注目に値する。
【0084】
本実施例では、エストロゲンアンタゴニストICI 182,780がエストロゲン(E
2)とは異なり、Erk1/2及びAktのリン酸化を阻害しなかったが、この結果はヒメマツタケ抽出物がエストロゲン様作用を持たないことを示すのではなく、ヒメマツタケ抽出物の示すエストロゲン様作用がエストロゲンとは異なるシグナル伝達経路を持つことによるものである。実際に、エストロゲン様作用を持つ化学物質がエストロゲンとは異なるシグナル伝達経路を示す例としては、エストロゲン様作用を持つ化学物質の代表例として知られているビスフェノールAがGPR30受容体やエストロゲン関連受容体γ(ERRγ)を介して作用を示す例が報告されている(Filardoら、Mol. Endocrinol.誌、16巻、70〜84ページ、2002年;Okadaら、Envirn. Health Perspect.誌、116巻、32〜38ページ、2008年)。また、エストロゲン様作用を持つ化学物質がエストロゲンとは異なるシグナル伝達経路を示すことは、エストロゲンの持つ発癌リスク・血栓リスクや組織に対する特異性の低さなど、エストロゲンの持つ欠点を改善する根拠になるものである。
【0085】
<実施例9>酸化LDLによるシグナルに対する抑制効果
(1)試験方法
酸化LDL(OxLDL)刺激によるErk1/2、Aktおよびp38MAPキナーゼの活性化に対するヒメマツタケ抽出物の効果について検討した。
【0086】
HUVEC及びTIB-67細胞をヒメマツタケ抽出物(100μg/mL)、LDL(50μg/mL)、酸化LDL(50μg/mL)あるいは溶媒のみで6時間処理し、酸化LDLシグナルの阻害作用を調べるために、ヒメマツタケ抽出物(100μg/mL)あるいは抗LOX-1抗体(Ab:5μg/mL)を酸化LDLを加える1時間前に細胞に加えた。タンパク質はSDSサンプル緩衝液を用いて抽出し、ウエスタンブロッティングにより解析した。
【0087】
全タンパク質はSDS緩衝液で抽出し、氷上で30秒間超音波処理した。SDS-PAGE用サンプル調製用緩衝液を加えて95℃で5分間インキュベーションした後、タンパク質サンプル(20mg)は5-20%勾配ゲル法によるSDS-PAGEによって分離し、セミドライトランスファーセル(BIO-RAD社;米国カリフォルニア州ヘラクレス)を用いて、1mA/cm
2で1時間の条件で、ニトロセルロースメンブラン(ミリポア社;米国マサチューセッツ州ビルリカ)へ転写した。
【0088】
リン酸化Erk1/2(P-Erk1/2)、リン酸化Akt(P-Akt)、及びリン酸化p38(P-p38)は、0.1%のTween-20と5%のBSAを含んでいるトリス緩衝液(TBST-BSA)の中で事前にブロックしたメンブランに対して用いた。メンブランは、Erk1/2、P-Erk1/2、Akt、P-Akt、p38、P-p38に対する抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー社;米国カリフォルニア州サンタクルーズ)を十分(1:200から1:1000)に希釈した後に、TBST-BSA中で、終夜、4℃の条件で反応させた。反応後、ウサギまたはマウスの抗原抗体複合体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合したウサギまたはマウスIgG(セルシグナリングテクノロジー社)に対するヤギ抗体をTBST-BSAで3,000倍に希釈したものを用いて検出した。そして、各タンパク質のバンドはECL-Plusウエスタンブロット検出法(アマシャムファルマシアバイオテック社;米国イリノイ州アーリントンハイツ)を用いることで視覚化した。
【0089】
(2)結果
酸化LDLによって誘発されるErk1/2、 Aktあるいはp38の迅速な活性化反応が抗LOX-1(酸化LDLレセプター)抗体(Ab)と同様にヒメマツタケ抽出物によっても抑制された(
図10)。すなわち、ヒメマツタケ抽出物が、酸化LDL応答をターゲットとするアテローム性動脈硬化症治療と同じように利用できることを示唆している。
【0090】
<実施例10>遺伝子発現レベルでの解析
次に、ヒメマツタケ抽出物の血管内皮細胞に対する作用を遺伝子発現レベルで解析を行った。リアルタイムRT-PCRを用いて、HUVEC細胞におけるGPX3、LOX-1、及びeNOSのmRNA
蓄積レベルの解析
をした。HUVEC細胞をヒメマツタケ抽出物(100μg/mL)、酸化LDL(50μg/mL)あるいは溶媒のみで24時間処理した後に全RNAを調製した。
【0091】
その結果を
図11に示す。ヒメマツタケ抽出物は活性酸素種(reactive oxygen species)の減少に関与する2つの遺伝子、グルタチオンペルオキシダーゼ3(GPX3)とαシンヌクレイン(SNCA)、の発現を上昇させた。エストロゲンはエストロゲン受容体経路とは別にGPX3とSNCA遺伝子の発現を上昇させることがわかっており、この結果は、ヒメマツタケ抽出物によって誘発された抗酸化作用が血清酸化LDLレベルの低下(
図1)に貢献していることを示すと考えられる。さらに、ヒメマツタケ抽出物は、一酸化窒素合成酵素遺伝子(eNOS)の発現を上昇させる。酸化LDLによると、eNOS遺伝子の発現減少が誘発されるが、これに、ヒメマツタケ抽出物を添加すると、eNOS遺伝子の発現が上昇した(
図11)。ヒメマツタケ抽出物で処理した細胞では、MCP-1(monocyte chemotactic protein-1)遺伝子の発現を減少させ、酸化LDLに応答するMCP-1の遺伝子発現を阻害する。したがって、これらの結果は、eNOS遺伝子の結果をよく説明できる。
【0092】
さらに、ヒメマツタケ抽出物のGPX3やeNOS遺伝子に対する影響はタンパク質レベルでも確認するためにHUVEC細胞におけるGPX3、及びeNOSタンパク質のウエスタンブロッティング解析を行った(
図12)。
【0093】
結果を
図12に示す。
図12に示すように、ヒメマツタケ抽出物は、eNOS、GPX3遺伝子の発現を上昇させることが分かる。
【0094】
したがって、実施例9、10の結果から、
図13の模式図に示すように、ヒメマツタケ抽出物は、Akt及びErkタンパク質の活性化を通じてeNOS、GPX3、及びSNCA遺伝子の発現を上昇させることが分かった。GPX3及びSNCA遺伝子はミトコンドリアにおける活性酸素種(ROS)の発生を減少させる。一方で、eNOSタンパク質はMCP-1遺伝子発現を低下させ、一酸化窒素(NO)濃度を上昇させることによりバランスの取れた血管機能を維持する役割を果たしていることが分かった。
【0095】
<実施例11>ブレフェルディンAの単離
実施例1で得られた培養菌糸体の乾燥体100gに、2リッターの酢酸エチルを加えて2時間撹拌する。撹拌後の溶液を、濾過し、上澄み液を、40℃以下で減圧乾固した。得られた濃縮物を80%メタノールに溶解し、HPLC(条件:5mg/50mlを逆相カラム5C18-200に吸着し、水でカラムを洗浄後、0-60%のアセトニトリル勾配で1ml/minの速度で溶出した)で210nmで検出して、分画を得た。
【0096】
得られたそれぞれの分画について、Erk1/2リン酸化活性(実施例9で示したリン酸化Erk1/2及び全Erk1/2の定量によって得られるErk1/2リン酸化活性)を測定した結果、
図14Aに示すように、50-60%アセトニトリル溶出分画である、分画番号51-60のみに強いErk1/2リン酸活性が示された。
したがって、同分画をさらにHPLCにより同じ条件で精製して、リン酸化活性を示した分画番号58(
図14B)を、再クロマトグラフィーを行い、単一成分として100gの培養菌糸体の乾燥体から148mgのErkリン酸活性成分を得た。
【0097】
このようにして得られた活性成分は、マクロラクトン型の化学構造と考えられ以下の物性を示した。以下の値は (+)-ブレフェルディンAの文献値(Tetrahedron Letters, Volume 47, Issue 37, 11, 6527-6530)と、すべて一致し、(+)-ブレフェルディンAであると同定された。なお、比較実験には和光純薬社製の標品を用いた。
【0098】
(測定によって得られたデータ)
1)比旋光度(メタノール中):[a]
25D = +92.09。方法:(19.6 mg/5mLメタノール)。
【0099】
2)NMRデータ:
1H NMR (CD
3OD, 75 MHz) δ 7.46 (dd, 1H), 5.82 (ddd, 1H), 5.76 (ddd, 1H), 5.27 (dd, 1H), 4.84 (qdd, 1H), 4.22 (m, 1H), 4.05 (td, 1H), 2.44-0.87 (m, 12H), 1.25 (d, 3H);
13C NMR (CD
3OD, 75 MHz) δ 167.2, 153.9, 136.9, 130.2, 116.5, 75.4, 72.0, 71.8, 52.0, 44.2, 42.9, 40.6, 33.8, 31.8, 26.8, 19.9。
【0100】
3)FT-IRデータ: 3366, 2927, 1712, 1644, 1449, 1257 cm
-1。方法:試料1.06mgを秤量し、KBr 200.8mgと均一に混合後、FTS-135装置(Bio-Rad Laboratories社製)で2 cm
-1で32回測定した。
【0101】
上記の実験で示されたように、ブレフェルディンAはヒメマツタケ菌糸体に対して、乾燥重量換算で約0.15%含有されている。この含量は、菌類の基本構成物を除く、二次代謝物の含量としてはかなりの高濃度であり、ブレフェルディンAは、菌糸体の生産する量的にも主要な化学成分の一つであると考えられる。
【0102】
そして、上記の実験でブレフェルディンAを含む分画のみが、Erk1/2リン酸活性を示していることを考慮すると、菌糸体抽出物のエストロゲン様作用や動脈硬化などに対する治療効果に、ブレフェルディンAが重要な役割を果たしていることが示される。
【0103】
<実施例12>SRB試験によるブレフェルディンAの細胞増殖活性評価
(1)解析法
ヒト乳癌由来MCF-7細胞を、5%の二酸化炭素の存在下で培養し、24ウェル培養プレートで10
4細胞/ウェルまで増やし、10 nM のE
2、あるいは、10 pM〜1μMのブレフェルディンA(BFA)を添加し、3日間培養した。その後、4℃の10%トリクロロ酢酸で固定し、SRB試験により細胞増殖活性の評価を行った。結果は対照実験の値を100%として表示した。それぞれの試験は6回行い、標準偏差(SD)を算出した。
(2)結果
結果を
図15に示す。いずれの濃度においてもブレフェルディンAは細胞増殖活性を示さなかった。一方で、1μMでは細胞増殖阻害作用を示した。この結果は、「<実施例5>ヒメマツタケ菌糸体抽出物のエストロゲン様作用」で得られた結果と一致する。
【0104】
<実施例13>ブレフェルディンAによるErk1/2タンパク質の活性化
(1)解析法
「<実施例8>ヒメマツタケ抽出物によって誘発されるErk1/2、Aktとp38の活性化」で用いた方法により、ブレフェルディンAによるErk1/2タンパク質の活性化の評価を行った。
(2)結果
結果を
図16に示す。ブレフェルディンAはErk1/2タンパク質のリン酸化を促進することがわかった。この反応はエストロゲンアンタゴニストのICI 182,780(ICI)では阻害されなかった。この結果は、「<実施例8>ヒメマツタケ抽出物によって誘発されるErk1/2、Aktとp38の活性化」で示したヒメマツタケ菌糸体抽出物の結果と一致する。
【0105】
<実施例14>レポーター遺伝子試験によるブレフェルディンAのエストロゲン活性評価1
(1)解析法
ヒトのエストロゲン受容体α遺伝子のエストロゲン応答配列(ERE)をルシフェラーゼ遺伝子上流に導入したレポーター遺伝子試験用のプラスミドT3(A+B)-pTK-Lucを用いてエストロゲン活性の評価を行った。試験法とプラスミドは文献(Li et al., 2002:Gene 294, 279-290)に従った。以下に簡単に説明する。10
5細胞あたり2.0μgのレポーター遺伝子DNAをβガラクトシダーゼ遺伝子DNAと混ぜて、Lipofectin (Gibco-BRL社)によりMCF-7 細胞にトランスフェクションを行った。24時間培養した後に、E
2(10 nM)、ブレフェルディンA(BFA:0.01 nM、1 nM、100 nM)、あるいは、それぞれの濃度のヒメマツタケ菌糸体抽出物(ABE)を添加後、さらに24時間培養した。ルシフェラーゼ活性はキットを用いて測定し、結果はβガラクトシダーゼ遺伝子の発現量で補正し、対照実験の値を100%として表示した。それぞれの試験は4回行い、標準偏差(SD)を算出した。
(2)結果
結果を
図17に示す。ブレフェルディンA及びヒメマツタケ菌糸体抽出物のいずれにも有意なエストロゲン応答配列依存のルシフェラーゼ活性が見られた。これは、ブレフェルディンAがエストロゲン応答配列依存的にプロモーターを活性化することを意味しており、すなわち、ブレフェルディンAにエストロゲン活性があることを示す。
【0106】
<実施例15>レポーター遺伝子試験によるヒメマツタケ菌糸体抽出物のエストロゲン活性評価
(1)解析法
エストロゲン応答配列(ERE)を有するヒトのエストロゲン受容体α遺伝子のプロモーターAとBをルシフェラーゼ遺伝子上流に導入したレポーター遺伝子試験用のプラスミドpG-ERα-ABを用いてエストロゲン活性の評価を行った。試験法とプラスミドは文献(Inoue et al., 2002:J. Pharmacol. Toxicol. Methods 47, 129-135.)に従った。以下に簡単に説明する。10
5細胞あたり2.0μgのレポーター遺伝子DNAを、Lipofectin (Gibco-BRL社)を用いてMCF-7 細胞にトランスフェクションを行った。24時間培養した後に、E
2(10 nM)、ヒメマツタケ菌糸体抽出物(ABE:0.01〜8μg/ml)、あるいは、それぞれの濃度のヒメマツタケ菌糸体抽出物に1μMのICI 182,780(ICI)を加えた試料を添加後、さらに24時間培養した。ルシフェラーゼ活性はキットを用いて測定し、対照実験の値を100%として表示した。それぞれの試験は4回行ない、標準偏差(SD)を算出した。**印は、危険率(p値)が0.01未満であることを示す。
(2)結果
結果を
図18に示す。ヒメマツタケ菌糸体抽出物には有意なエストロゲン応答配列依存のルシフェラーゼ活性が見られた。これは、ヒメマツタケ菌糸体抽出物にエストロゲン活性があることを示す。この活性は、エストロゲンと同様に、アンタゴニストであるICI 182,780によって阻害を受けた。
【0107】
<実施例16>レポーター遺伝子試験によるブレフェルディンAのエストロゲン活性評価2
(1)解析法
試験は、「レポーター遺伝子試験によるブレフェルディンAのエストロゲン活性評価(その1)」で示した方法で行った。E
2(10 nM)、あるいは、ブレフェルディンA(0.01 nMあるいは1 nM BFA)を添加し、2群に分け、1群には1μMのICI 182,780(ICI)を添加し、もう1群には添加しなかった。
(2)結果
結果を
図19に示す。ブレフェルディンAの示すエストロゲン応答配列依存のルシフェラーゼ活性はICI 182,780によって阻害を受けた。また、この結果は、「<実施例13>ブレフェルディンAによるErk1/2タンパク質の活性化」で得られたICI 182,780非依存的Erk1/2活性化の結果と異なるが、<実施例15>で示したヒメマツタケ菌糸体抽出物の結果と一致している。MCF-7細胞の増殖活性を示さない現象と合わせて、ブレフェルディンAに特徴的な現象と考えられる。
【0108】
<比較例1>子実体との活性の比較
本実施例で用いた培養菌糸体の乾燥体得られるブレフェルディンAによる効果は、子実体を用いた場合は期待できないことが以下の比較例により明らかになった。
【0109】
(1)子実体試料の由来と抽出方法
子実体試料は次の3つの市販品を用いた。1つは乾燥子実体(A社)であり、残りの2つは子実体の抽出物(エキス)を加工したものである。
【0110】
I社:株式会社大愛
(製品名)乾燥「神仙茸」:子実体Aとする
(調製法)5 gの乾燥アガリクス茸を細かく砕き、40 mlの沸騰水で20分間抽出。
【0111】
II社:株式会社S・S・I SFB:子実体Bとする
(製品名)協和のアガリクス茸仙生露顆粒SSG-PLUS35
(調製法)2袋(4.0 g)を水40 mlに溶解。
【0112】
III社:有限会社吉田コーゲイYN:子実体Cとする
(製品名)スーパーゴールドアガリクスエキス顆粒2800(1包中に乾燥アガリクス茸2800 mg相当のエキス顆粒を含む。これは生のアガリクス茸28 gに相当する)。
【0113】
(調製法)2包(5.6 g)を水40 mlに溶解。
【0114】
(2) 抽出後の処理
水(あるいは沸湯水)で抽出後はMILEX社の0.45 μmフィルターでろ過し、3ml乾燥して重量を測定した。さらに、濃度を5.0 mg/mlに調整して 、HPLC分析(和光純薬社・逆相カラム5C18-200を用いてメタノールで溶出、210nm吸収波長で検出)を行った。全分画に対するブレフェルディンA溶出分画のパターンを比較した。水抽出物の乾燥重量は菌糸体抽出物も含めていずれも1〜5 g程度であり、子実体抽出物が特に高い抽出効率を示すということはなかった。
【0115】
(3) 結果
結果を
図20に示す。本実施例で用いたアガリクス(ヒメマツタケ)菌糸体標品(
図20A)とアガリクス子実体標品3点を比較した(
図20B、C、D)。いずれの子実体標品についても、ブレフェルディンAが溶出されるHPLCの保持時間では、顕著なピークを示されなかったが、本実施例で用いたヒメマツタケ菌糸体標品では顕著なピークを示し、その量比はその積分値からの換算では、少なくとも150倍であることが明らかになった。このことにより、ブレフェルディンAは子実体にはほとんど存在しなく、子実体を治療に用いても、ブレフェルディンAに由来する効果はほとんど期待できないことが示された。このことからも、ヒメマツタケ菌糸体標品に見られた効果は、ヒメマツタケ菌糸体に特有のものであり、子実体における効果と異質のものであることが判明した。
【0116】
<比較例2>様々な溶媒によるブレフェルディンAの抽出効率
(1) 解析方法
ヒメマツタケ培養菌糸体乾燥物2.5 gから、A:水抽出、B:エタノール抽出、C:メタノール抽出、D:酢酸エチル抽出を行い、MILEX社の0.45 μmフィルターでろ過後、一部乾燥して重量を測定した。さらに、濃度を5.0 mg/mlに調整して 、HPLC分析(和光純薬社・逆相カラム5C18-200を用いてメタノールで溶出、210nm吸収波長で検出)を行い、ブレフェルディンA溶出パターンを比較した(図にピーク位置を示した)。
【0117】
(2) 結果
ヒメマツタケ菌糸体標品を様々な溶媒を用いて抽出を行い、得られた分画におけるブレフェルディンAの重量を定量した。結果(BFA分画の重量%)は、
図21に示すように、0.015%(水抽出)、0.036%(エタノール抽出)、0.029%(メタノール抽出)及び0.012%(酢酸エチル抽出)であり、いずれの溶媒を用いてもブレフェルディンAは抽出されることが判明した。