(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態の説明>
図1は、第1実施形態の撮像素子モジュールの構成例を示す断面図である。第1実施形態の撮像素子モジュール11は、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話のカメラモジュールなどの撮像装置に組み込まれる。
【0016】
第1実施形態の撮像素子モジュール11は、シリコン基板上にCMOS(相補性金属酸化膜半導体)プロセスを使用したCMOS型の撮像素子12を含む。上記の撮像素子12は、撮像画素と、焦点検出画素との2種類の画素を複数有している。
【0017】
撮像画素は、被写体の像を撮像して画像信号を生成する画素である。撮像画素には、それぞれが異なる色成分の光を透過させる複数種類のカラーフィルタが所定の色配列で配置されている。そのため、撮像画素は、カラーフィルタでの色分解によって各色に対応するカラーの画像信号を出力する。
【0018】
焦点検出画素は、一対の受光素子で光学系(撮影レンズなど)の瞳の異なる部分領域を通過する光束をそれぞれ受光し、AF時に一対の被写体像の位相差情報を取得する。なお、被写体の像の位相差情報を用いて光学系のデフォーカス量を求める位相差AFの手法は公知であるので、その原理説明は省略する。
【0019】
図2は、第1実施形態の撮像素子モジュール11を受光面側からみた図である。第1実施形態の例では、撮像素子12の受光面において、それぞれ横方向に延在する焦点検出画素の配列が3×3の正方格子状に9箇所に配置されている。また、受光面において、焦点検出画素の配列を除く他の部分には撮像画素が配置されている。
【0020】
ここで、
図3(a)は撮像画素の構成例を示し、
図3(b)は焦点検出画素の構成例を示す。
図3(a)に示すように、撮像画素は1画素につき1つの電荷蓄積領域(受光素子)を有している。この撮像画素の電荷蓄積領域はほぼ正方形状に形成されている。一方、
図3(b)に示すように、焦点検出画素は、1画素につき、射出瞳の像を分割して受光する1対(2個)の電荷蓄積領域PD1,PD2を有している。焦点検出画素の電荷蓄積領域PD1,PD2は、それぞれ撮像画素の電荷蓄積領域よりも小さな縦長(または横長)の矩形状に形成されており、1画素に2つの電荷蓄積領域PD1,PD2が並列に配置されている。
【0021】
図1に戻って、撮像素子12の受光面において、各画素の上にはそれぞれマイクロレンズ13が配置されている。ここで、各マイクロレンズ13は、光軸方向(図中上下方向)へ移動可能な透光性基板14の上に形成されている。そのため、複数のマイクロレンズ13は、透光性基板14と一体となってマイクロレンズアレイをなしている。
【0022】
また、撮像素子モジュール11は、マイクロレンズ13の位置を光軸方向に調整するレンズ調整部15を有している。以下、レンズ調整部15の構成を説明する。
【0023】
撮像素子12の画素とマイクロレンズアレイとに挟まれた第1の空間16は、ピエゾ素子などの圧電素子17によって加圧される第2の空間18と接続されている。そして、第1の空間16および第2の空間18には、透光性および流動性を有する流体であるゲル状樹脂が充填されている。なお、撮像素子12の各画素の上面には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の層間絶縁膜(不図示)が形成されており、ゲル状樹脂によって撮像素子12の動作に支障をきたすことはない。
【0024】
上記の圧電素子17は、コントローラ19によって制御される。コントローラ19によって圧電素子17を駆動させると、第2の空間18の一面(図中の上面)が圧電素子17で撓められて押圧される。これにより、第2の空間18のゲル状樹脂は第1の空間16に押し出されるとともに、第1の空間16ではゲル状樹脂の動きによってマイクロレンズアレイが図中上側に移動する。一方、コントローラ19によって圧電素子17の動作を停止させると、第2の空間18の撓みがなくなって第1の空間16から第2の空間18にゲル状樹脂が流れ込む。これにより、第1の空間16ではゲル状樹脂の動きによってマイクロレンズアレイが図中下側に移動する。したがって、コントローラ19は、圧電素子17で第2の空間18への圧力を調整することにより、パスカルの原理でマイクロレンズ13の位置を光軸方向に調整できる。このように、第1実施形態の撮像素子モジュール11は、圧電素子17によってマイクロレンズ13の焦点位置を調整するレンズ調整部15を有するので、製造時に生じるマイクロレンズ13の位置のばらつきを簡単に校正できる。
【0025】
なお、第1実施形態での撮像素子モジュール11の製造では、撮像素子12の受光面上にゲル状樹脂を塗布し、ゲル状樹脂の上側にマイクロレンズアレイを形成する手順によって第1の空間16を形成すればよい。また、第1実施形態での撮像素子モジュール11の製造において、ゲル状樹脂の代わりにダミーの樹脂を塗布し、ダミーの樹脂の上にマイクロレンズアレイを形成し、その後にダミーの樹脂とゲル状樹脂とを置換してもよい。
【0026】
以下、
図4、
図5を参照しつつ、第1実施形態の撮像素子モジュール11でのマイクロレンズ13の位置調整の動作例を説明する。以下の説明では、焦点検出画素の出力を用いて、マイクロレンズアレイの光軸方向位置を焦点検出画素に適した位置に調整する例を説明する。なお、マイクロレンズ13の位置調整は、撮像素子の検査工程で行われてもよく、ユーザが任意のタイミングで実行してもよい。
【0027】
図4(a)〜(c)は、焦点検出画素においてマイクロレンズアレイを光軸方向に移動させたときの焦点位置の変化をそれぞれ示している。
図4は、いずれも焦点検出画素に平行光が入射された状態を示している。
図4(a)は、マイクロレンズ13の焦点位置が撮像素子の受光面よりも手前にある状態を示している。
図4(b)は、マイクロレンズ13の焦点位置が撮像素子の受光面上にある状態を示している。
図4(c)は、マイクロレンズ13の焦点位置が撮像素子の受光面よりも奥にある状態を示している。第1実施形態の撮像素子モジュール11は、圧電素子17の動作によってマイクロレンズアレイを光軸方向に移動できるので、マイクロレンズ13の焦点位置を調整しうることが分かる。
【0028】
また、第1実施形態でマイクロレンズ13の位置調整を行う場合、平行光の入射角を鉛直からわずかに傾けた状態とし、焦点検出画素の出力を用いて位置調整を行えばよい。
図5(a)〜(c)は、平行光の入射角を鉛直から図中左側にわずかに傾けて、焦点検出画素においてマイクロレンズアレイを光軸方向に移動させた状態をそれぞれ示している。
図5(a)〜(c)において、マイクロレンズ13の光軸方向位置は上側から下側に順次移動している。また、
図5(b)は、マイクロレンズ13の焦点位置が撮像素子の受光面上にある状態を示している。
【0029】
図5では、平行光の入射角を鉛直から図中左側にわずかに傾けているため、マイクロレンズアレイを上下に移動させると、焦点検出画素の受光素子PD1,PD2の出力比が変化する。そして、マイクロレンズ13の焦点位置が撮像素子の受光面上にあるとき(
図5(b))には、焦点検出画素において図中左側の受光素子PD1の出力が最も小さくなる。
【0030】
撮像素子モジュール11のコントローラ19は、圧電素子17でマイクロレンズアレイを移動させつつ、焦点検出画素の受光素子PD1,PD2の出力をモニタする。そして、平行光を鉛直から図中左側にわずかに傾けて入射させている場合、コントローラ19は、受光素子PD1の出力が極小値となるマイクロレンズアレイの位置を求めればよい。以上の動作により、コントローラ19は、マイクロレンズ13の光軸方向位置を焦点検出画素に適した位置に調整できる。なお、上記の焦点位置の調整は1画素の出力でも可能であるが、コントローラ19は複数の受光素子PD1,PD2の出力を平均化することで、マイクロレンズ13の焦点位置をより精度よく受光面に合わせることが可能となる。
【0031】
さらに、第1実施形態の撮像素子モジュール11は、撮影光学系の絞りの変化に応じて、マイクロレンズ13の光軸方向位置を調整してもよい。
図6は、絞りの開口量が異なるときの焦点検出画素への入射光束の例を示す図である。絞りの開口量が小さいとき(F値:大)には、
図6(a)に示すように、受光素子に投影される像の重心を十分に分離することが難しくなる場合がある。一方、絞りの開口量が大きいとき(F値:小)には、
図6(b)に示すように、受光素子に投影される像が画素の受光素子の領域よりも広がってしまうことがある。
【0032】
そこで、第1実施形態でのコントローラ19は、撮影光学系の絞りが変化したときに、以下のようにマイクロレンズ13の光軸方向の位置を調整する。まず、絞りの開口量が小さくなるときには、コントローラ19は、マイクロレンズアレイを図中上側に移動させて、マイクロレンズ13の焦点位置を受光素子から遠ざける(
図7参照)。これにより、受光素子に投影される像の重心が画素の中央部から外側に広がるので、焦点検出画素による焦点検出が容易となる。一方、絞りの開口量が大きくなるときには、コントローラ19は、マイクロレンズアレイを図中下側に移動させて、マイクロレンズ13の焦点位置を受光素子に近づける(
図8参照)。これにより、受光素子に投影される像の広がりが画素の中央部に縮まるので、焦点検出画素による焦点検出が容易となる。
【0033】
例えば、F1.4、F5.6、F16の絞りでは撮像素子への光束の入射角がそれぞれ異なるため、マイクロレンズの最適な焦点位置はF値によって相違する。従来の撮像素子では、マイクロレンズの焦点位置は所定のF値に最適化されるため、F値によっては焦点検出画素の性能が十分に発揮できない場合もありうる。これに対し、第1実施形態の撮像素子モジュール11では、マイクロレンズの光軸方向位置を絞りの変化に応じて調整できるので、絞りのF値にかかわらず焦点検出画素の性能を確保できる。
【0034】
<撮像装置の構成例>
また、
図9は、第1実施形態の撮像素子モジュール11を実装した撮像装置(電子カメラ)の構成例を示す図である。
図9の撮像装置は、撮影光学系21と、レンズドライバ22と、絞り23と、絞りドライバ24と、撮像素子モジュール11と、A/D変換部25と、画像処理エンジン26と、メモリ27と、記録I/F28と、操作部29とを有している。ここで、レンズドライバ22、絞りドライバ24、撮像素子モジュール11、A/D変換部25、メモリ27、記録I/F28、操作部29は、それぞれ画像処理エンジン26と接続されている。なお、操作部29は、ユーザのF値の手動入力等を受け付ける。
【0035】
撮影光学系21は、例えばズームレンズやフォーカスレンズなどの複数のレンズを含む。フォーカスレンズの位置は、レンズドライバ22によって光軸方向に調整される。なお、
図9では、簡単のため撮影光学系21を1枚のレンズで図示する。絞り23は、複数の絞り羽根を動かすことで撮像素子モジュール11に入射する単位時間当たりの光量を調節する。絞り23の開口量(F値)は、絞りドライバ24によって調整される。
【0036】
撮像素子モジュール11の撮像素子は、撮影光学系21による結像を撮像する。上記の撮像素子の出力は、A/D変換部25を介して画像処理エンジン26に接続されている。
【0037】
画像処理エンジン26は、撮像装置の動作を統括的に制御するプロセッサである。例えば、画像処理エンジン26は、焦点検出画素の出力を用いて撮影光学系21のAFを実行する。また、画像処理エンジン26は、撮像画素の画像信号に各種の画像処理を施して画像のデータを生成する。
【0038】
また、画像処理エンジン26は、撮像画素の出力を用いたAE演算により、撮影ジーンに相応する絞り値を求める。そして、画像処理エンジン26は、絞りドライバ24を介して絞り23の開口量を調節する。このとき、画像処理エンジン26は、絞り値に応じて撮像素子モジュール11のマイクロレンズの位置を調節してもよい。
【0039】
メモリ27は、画像のデータを一時的に記憶するメモリであって、例えば揮発性の記憶媒体であるSDRAMである。記録I/F28は、不揮発性の記憶媒体28aを接続するためのコネクタを有している。そして、記録I/F28は、コネクタに接続された記憶媒体28aに対して画像のデータの書き込み/読み込みを実行する。
【0040】
<第2実施形態の説明>
図10は、第2実施形態での撮像素子モジュール11aの構成例を示す図である。第2実施形態は、マイクロレンズ13を光軸方向に調整してシェーディング補正を行う例を説明する。第2実施形態での撮像素子モジュール11aは、焦点検出画素を有しない撮像素子に適用するものであってもよい。
【0041】
なお、以下の実施形態の撮像素子モジュールにおいて、第1実施形態と共通の構成には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
第2実施形態の撮像素子モジュール11aでは、
図10に示すように、受光面中央部の画素と受光面周辺部の画素とがそれぞれグループ化されており、マイクロレンズアレイはグループごとに分割されている。そして、受光面中央部の画素のグループと、受光面周辺部の画素のグループとは、それぞれ独立したレンズ調整部15を有している。これにより、第2実施形態の撮像素子モジュール11aでは、受光面中央部のマイクロレンズアレイと、受光面周辺部のマイクロレンズアレイとを独立して光軸方向に移動させることができる。なお、受光面中央部の画素のグループに対応するレンズ調整部15について、第1の空間16および第2の空間18を接続する管路(図中破線で示す)は、例えば画素間の配線部分に配置すればよい(
図10参照)。
【0043】
そして、第2実施形態の撮像素子モジュール11aは、受光面中央部のマイクロレンズアレイに対して、受光面周辺部のマイクロレンズアレイを受光素子に近づけるように調整する。第2実施形態の撮像素子モジュール11aは、上記のマイクロレンズ13の位置調整により、撮像素子のシェーディングを緩和できる。
【0044】
<第3実施形態の説明>
図11は、第3実施形態での撮像素子モジュール11bの構成例を示す図である。第3実施形態では、撮像素子がカラーラインセンサである例を説明する。
【0045】
第3実施形態の撮像素子は、Rの画像信号を出力する第1画素列と、Gの画像信号を出力する第2画素列と、Bの画像信号を出力する第3画素列とが並列に配置されている。撮像素子のマイクロレンズアレイは各画素列で分割されている。そして、各々の画素列は、それぞれ独立したレンズ調整部15を有している。
【0046】
これにより、第3実施形態の撮像素子モジュール11bでは、各画素列でマイクロレンズアレイを独立して光軸方向に移動させることができる。そして、第3実施形態では、上記のマイクロレンズの位置調整により、カラーラインセンサの色収差を補正できる。
【0047】
<実施形態の補足事項>
(a)本発明の撮像素子モジュールは、撮像素子12のチップ上にレンズ調整部15を一体化したものであってもよい。また、本発明の撮像素子モジュールは、撮像素子12とレンズ調整部15とが別部品であってもよい。
【0048】
また、
図12に示すように、マイクロレンズアレイおよびレンズ調整部15を撮像素子12に取り付けることで上記実施形態の撮像素子モジュールをなすマイクロレンズモジュール31も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
(b)第1実施形態では焦点検出画素を基準としてマイクロレンズの焦点位置を調整する例を説明した。しかし、第1実施形態の撮像素子モジュール11の構成は、撮像画素のみの撮像素子の場合にも同様に適用できる。
【0050】
(c)上記実施形態の撮像素子モジュールでは、流体の圧力でマイクロレンズ13を移動させるレンズ調整部15の例を説明した。しかし、本発明のレンズ調整部は、例えばネジ送り機構や超音波モータ等を用いて、マイクロレンズアレイを機械的に移動させるものでもよい。
【0051】
(d)上記実施形態の撮像素子モジュールでは、撮像素子の受光面とマイクロレンズアレイとの間にゲル状樹脂を充填する例を説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、撮像素子の受光面とマイクロレンズアレイとの間に透光性を有する液体や気体を充填してもよい。
【0052】
(e)上記の第3実施形態では、カラーラインセンサの色別にマイクロレンズの焦点位置を調整する例を説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、撮ベイヤ配列の撮像素子について、各画素のマイクロレンズの位置を色別に調整する撮像素子モジュールも含む。
【0053】
(f)上記実施形態では、撮像素子モジュールが実装される撮像装置の一例として電子カメラを説明した。しかし、本発明の撮像装置は、上記実施形態に限定されることなく、例えば、携帯電話のカメラモジュールや、顕微鏡などであってもよい。
【0054】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。