(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
かくして本発明によれば、(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物と、(2)芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[A](以下、単に「重合体ブロック[A]」と言う)と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[B](以下、単に「重合体ブロック[B]」と言う)とを有し、重合体ブロック[A]が、全重合体ブロックに対して5〜80重量%であるブロック共重合体を、その主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合と、芳香環の炭素−炭素不飽和結合との合計である全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物(以下、単に「特定ブロック共重合体水素化物」という)とからなるバイオチップ用樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、当該樹脂組成物からなるバイオチップが提供される。
【0007】
(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物
本発明に用いるノルボルネン系開環重合体水素化物は、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られるノルボルネン系開環重合体を水素化することにより得られる。
【0008】
1)ノルボルネン系開環重合体
本発明で用いるノルボルネン系開環重合体は、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られる。
【0009】
・ノルボルネン系単量体
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、などの2環式単量体;トリシクロ[4.3.0
1,6.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、などの3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン及びその誘導体、などの4環式単量体;などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
このほか、ノルボルネン系単量体と開環重合しうる、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、及びシクロドデセン等の単環シクロオレフィン等の単量体を、コモノマーとして用いてもよいが、その割合は、全モノマー中10重量%以下の範囲とするのが、得られる成形体の耐熱性の観点から好ましい。
これらのノルボルネン系単量体及びこれと共重合しうる単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも耐熱性の面から、全ノルボルネン系単量体中に含まれる2環式単量体の量は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜15重量%であり、全ノルボルネン系単量体に含まれる3環式以上の単量体の合計量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。特に耐熱性が要求される分野においては、4環式単量体の量は、好ましくは40〜100重量%である。
【0010】
・開環重合方法
ノルボルネン系単量体の開環重合は、メタセシス重合触媒を用い、公知の方法に従って行うことができる。メタセシス重合触媒としては、特に限定はなく公知のものが用いられる。具体的には、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステンおよびモリブデンから選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;あるいは、特開平7−179575号、J.Am.Chem.Soc.,1986年,108,p.733、J.Am.Chem.Soc.,1993年,115,p.9858、およびJ.Am.Chem.Soc.,1996年,118,p.100などに開示されている公知のシュロック型やグラッブス型のリビング開環メタセシス触媒などを用いることができる。
【0011】
これらの触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択されればよいが、全単量体量に対するモル比で、通常1/1,000,000〜1/10、好ましくは、1/100,000〜1/100である。
【0012】
ノルボルネン系単量体の開環重合には、分子量調節剤として、直鎖α−オレフィンを用いることができる。直鎖α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセンなど炭素数4〜40の物が挙げられる。
【0013】
直鎖α−オレフィンの添加量は、全単量体100モルに対して、通常0.1〜3モル、好ましくは0.3〜2モル、より好ましくは0.5〜1.5モルである。
【0014】
さらに、極性化合物を加えて、重合活性や開環重合の選択性を高めることができる。極性化合物としては、例えば、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物、分子状ヨウ素、その他のルイス酸などが挙げられる。
含窒素化合物としては、脂肪族または芳香族第三級アミンが好ましく、具体例としては、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、α−ピコリンなどが挙げられる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。その用量は、適宜選択されるが、上記触媒中の金属との比、すなわち、極性化合物/金属の比(モル比)で、通常1〜100,000、好ましくは5〜10,000の範囲である。
【0015】
重合反応は、有機溶媒などの溶媒中で行ってよい。溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナンなどの脂環族炭化水素;ジクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;などが挙げられる。
【0016】
本発明で用いるノルボルネン系開環重合体を重合する形態は、格別制限はないが、一括重合法(バッチ法)、モノマー連続添加法(モノマーを連続添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特にモノマー連続添加法を用いるとよりランダムな連鎖構造を有し好ましい。
【0017】
直鎖α−オレフィンの添加方法としては、溶媒に直鎖α−オレフィンを全量添加した後に、ノルボルネン系単量体を連続添加していく方法、ノルボルネン系単量体と同時に直鎖α−オレフィンを連続添加していく方法等が挙げられ、特にノルボルネン系単量体と同時に直鎖α−オレフィンを連続添加していく方法がランダムな連鎖構造を有しているため、高い透明性が確保できる。
【0018】
重合温度は、通常−50℃〜250℃、好ましくは−30℃〜200℃、より好ましくは−20℃〜150℃の範囲である。重合圧力は、通常0〜50kg/cm
2、好ましくは0〜20kg/cm
2の範囲である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間の範囲である。
【0019】
本発明で用いられるノルボルネン系開環重合体の数平均分子量(Mn)は、通常5,000〜100,000、好ましくは6,000〜70,000であり、より好ましくは7,000〜60,000である。重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜350,000、好ましくは12,000〜245,000、より好ましくは14,000〜210,000である。ここで、ノルボルネン系開環重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、トルエンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値である。分子量が、これらの範囲にあるとき機械的強度と成形性とのバランスに優れる。分子量の分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0020】
2)ノルボルネン系開環重合体水素化物
本発明のノルボルネン系開環重合体水素化物は、前記のノルボルネン系開環重合体中の炭素−炭素の二重結合を水素化することによって得られる。
・水素化触媒および水素化方法
水素化は、常法に従って、水素化触媒の存在下にノルボルネン系開環重合体を水素と接触させて行うことができる。水素化触媒としては、特開昭58−43412号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭64−24826号公報、特開平1−138257号公報、特開平7−41550号公報などに記載されているものを使用することができる。
触媒は均一系でも不均一系でもよい。均一系触媒は、水素化反応液中で分散しやすいので添加量が少なくてよく、また、高温高圧にしなくとも活性を有するので重合体の分解やゲル化が起こらず、低コスト性および品質安定性などに優る。不均一系触媒は、高温高圧下に高活性となり、短時間で水素化でき、さらに除去が容易であるなど、生産効率の面で優る。
【0021】
均一系触媒としては、例えば、ウィルキンソン錯体、すなわち、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I);遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒、具体的には、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。
【0022】
不均一系触媒としては、例えば、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh等の水素化触媒金属を担体に担持させたものが挙げられる。特に、不純物等の混入が少ないほど好ましい場合は、担体として、アルミナや珪藻土等の吸着剤を用いることが好ましい。
【0023】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒としては、触媒に不活性なものであれば格別な限定はないが、生成する水素化物の溶解性に優れていることから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素類;などを挙げることができ、これらの中でも、シクロヘキサノンなどの低沸点の脂環族炭化水素類が好ましい。
これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は、重合反応溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
【0024】
本発明に係るノルボルネン系開環重合体水素化物が、芳香族環を有する繰り返し単位を有する場合には、主鎖構造中の炭素−炭素二重結合の水素化反応において、側鎖の芳香環族構造を残存させることもできるが、完全に水素化しても構わない。なお、
1H−NMRによる分析により、主鎖構造中の炭素−炭素二重結合は、芳香族環構造中の不飽和結合と区別して認識することができる。
【0025】
水素化反応は、常法に従って行えばよい。
水素化触媒の種類や反応温度によって水素化率は変わり、ノルボルネン系単量体が芳香族環を有する場合、芳香族環の残存率も変化させることがでる。上記の水素化触媒を用いた場合、芳香族環の不飽和結合をある程度以上残存させるためには、反応温度を低くしたり、水素圧力を下げたり、反応時間を短くする等の制御を行えばよい。
【0026】
水素化反応終了後、触媒は、遠心、ろ過等の常法にしたがって除去することができる。必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加したりしてもよい。医療用器材等、残留した遷移金属が溶出するのが好ましくない用途では、実質的に遷移金属が残留しないようにする。そのようなノルボルネン系開環重合体水素化物を得るためには、特開平5−317411号公報などで開示されているような、特定の細孔容積と比表面積を持ったアルミナ類等の吸着剤を用いたり、ノルボルネン系重合体水素化物溶液を酸性水と純水で洗浄したりすることが好ましい。
遠心方法やろ過方法は、用いた触媒が除去できる条件であれば、特に限定されない。ろ過による除去は、簡便かつ効率的であるので好ましい。ろ過する場合、加圧ろ過しても、吸引ろ過してもよく、また、効率の点から、珪藻土、パーライト等のろ過助剤を用いることが好ましい。
【0027】
本発明に用いるノルボルネン系開環重合体水素化物の数平均分子量は、通常5,000〜100,000、好ましくは6,000〜70,000であり、より好ましくは7,000〜60,000である。重量平均分子量は、通常10,000〜350,000、好ましくは12,000〜245,000、より好ましくは14,000〜210,000である。ここで、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値である。分子量が、これらの範囲にあるとき溶液安定性、機械的強度と成形性とのバランスに優れる。分子量の分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0028】
本発明に用いるノルボルネン系開環重合体水素化物のガラス転移温度(Tg)は、通常100〜200℃、好ましくは110〜170℃である。Tgが低いと耐熱性が低く使用環境が制限される恐れがあり、Tgが高いと流動性が低下し成形性が悪化する恐れがある。
ノルボルネン系開環重合体水素化物のガラス転移温度は、示差走査熱量分析計を用いてJIS K 7121に基づいて測定することができる。
【0029】
本発明に用いるノルボルネン系開環重合体水素化物は、ノルボルネン系開環重合体水素化物の主鎖二重結合の水素化率は、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.9%以上である。水素化率が高いと、耐熱性および防湿性に優れ、成形する際に樹脂焼けが起こり難く、特にフィルム成形する際には、ダイラインの発生を抑制することができる点で、好ましい。
ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、
1H−NMRにより測定して求めることができる。
【0030】
(2)特定ブロック共重合体水素化物
本発明に用いる特定ブロック共重合体水素化物は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを有するブロック共重合体を水素化したものである。
1.ブロック共重合体
本発明に係るブロック共重合体は、重合体ブロック[A]と重合体ブロック[B]を含有する。また、重合体ブロック[A]の、全重合体ブロックに対する割合は、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%である。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位が少なすぎると、本発明の樹脂組成物の透明性が低下し、逆に多すぎると転写性が低下する恐れがあり、いずれも好ましくない。
【0031】
共重合体ブロック[A]を与える芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、スチレンが特に好ましい。
また、重合体ブロック[A]中には、芳香族化合物由来の繰り返し単位以外に、その他のビニル化合物由来の繰り返し単位や鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を含むことができる。但し、その含有量は、全重合体ブロック[A]に対して、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
重合体ブロック[A]と[B]とは、いずれも、1つ以上あればよく、複数ある場合、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0032】
共重合体ブロック[B]を与える鎖状共役ジエン系化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0033】
共重合体ブロック[B]には、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位以外に、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位やその他のビニル化合物由来の繰り返し単位を含むことができる。ただし、その含有量は、全共重合体ブロック[B]に対して通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下である。鎖状ビニル化合物由来の繰り返し単位の割合が少なすぎると、転写性が低下するので好ましくない。
その他のビニル系化合物本発明で用いられるその他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物が挙げられ、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を有するビニル化合物及び/又は不飽和の環状酸無水物または不飽和イミド化合物を含んでも良いが、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンなどの、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましく、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0034】
本発明に使用するブロック共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。本発明のブロック共重合体の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。
【0035】
ブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0036】
本発明で使用するブロック共重合体の製造方法は、例えば重合体ブロック[A]を2つと、重合体ブロック[B]を1つ有するブロック共重合体を製造する場合、重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させる第1工程と、重合体ブロック[B]を形成させるモノマー成分として、鎖状共役ジエン系化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させる第2工程と、重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a2)(ただし、モノマー混合物(a1)とモノマー混合物(a2)は同一でも異なっていてもよい。)を重合させる第3工程を、有するものである。
【0037】
上記モノマー混合物を用いてそれぞれの重合体ブロックを重合する方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などのいずれを用いてもよい。ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを、リビング重合により行う方法、特にリビングアニオン重合により行う方法を用いた場合に、重合操作および後工程での水素化反応が容易になり、得られるブロック共重合体の透明性が向上する。
【0038】
重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜80℃、特に好ましくは20℃〜70℃の温度範囲において行う。リビングアニオン重合の場合は、開始剤として、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサンなどの多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
【0039】
重合反応形態は、溶液重合、スラリー重合などのいずれでも構わないが、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。この場合、各工程で得られる重合体が溶解する不活性溶媒を用いる。使用可能な不活性溶媒としては、たとえば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。中でも脂環式炭化水素類を用いると、後述する水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、ブロック共重合体の溶解性も良好であるため好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒の使用量は、全使用モノマー100重量部に対して、通常200〜2000重量部である。
【0040】
それぞれのモノマー混合物が2種以上の成分からなる場合、或る1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、ランダマイザーなどを使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物などをランダマイザーとして使用するのが好ましい。
【0041】
使用可能なルイス塩基化合物としては、たとえば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテルなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
2.ブロック共重合体水素化物
本発明で用いられるブロック共重合体水素化物は、上記のブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものであり、その水素化率は90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、本発明の樹脂組成物の透明性、耐候性、耐熱性が良好である。本発明で用いられるブロック共重合体水素化物の水素化率は、
1H−NMRによる測定において求めることができる。
【0043】
不飽和結合の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能であり、水素化反応は有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0044】
使用可能な不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、たとえば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒と担体との合計量に対して、通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲である。担持型触媒としては、たとえば、比表面積が100〜500m
2/g、平均細孔径100〜1000Å、好ましくは200〜500Åを有するものが好ましい。上記の比表面積の値は窒素吸着量を測定し、BET式を用いて算出した値であり、平均細孔径の値は水銀圧入法により測定した値である。
【0045】
使用可能な均一系触媒としては、たとえば、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(たとえば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムなどの有機金属錯体触媒などを用いることができる。
【0046】
ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、たとえば、各種金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物などが用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの水素化アルキルアルミニウムなどが挙げられる。
【0047】
有機金属錯体触媒としては、たとえば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケルなどの遷移金属錯体が挙げられる。
【0048】
これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。水素化触媒の使用量は、重合体100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0049】
水素化反応温度は、通常10℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃であるときに水素化率が高くなり、分子切断も減少する。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaであると水素化率が高くなり、分子鎖切断も減少し、操作性にも優れる。
【0050】
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物は、水素化触媒および/または重合触媒を、ブロック共重合体水素化物を含む反応溶液からたとえば濾過、遠心分離などの方法により除去した後、反応溶液から回収される。反応溶液からブロック共重合体水素化物を回収する方法としては、たとえば、ブロック共重合体水素化物が溶解した溶液から、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、ブロック共重合体水素化物の貧溶媒中に溶液を注いで析出、凝固させる凝固法などの公知の方法を挙げることができる。
【0051】
回収されたブロック共重合体水素化物の形態は限定されるものではないが、その後に成形加工し易いようにペレット形状とするのが通常である。直接脱溶媒法を用いる場合は、たとえば、溶融状態のブロック共重合体水素化物をダイからストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカッティングしてペレット状にして各種の成形に供することができる。凝固法を用いる場合は、たとえば、得られた凝固物を乾燥した後、押出機により溶融状態で押し出し、上記と同様にペレット状にして太陽電池素子封止材用途に供することができる。
【0052】
本発明で用いられるブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。このMwが範囲であると、本発明の樹脂組成物の機械強度や耐熱性が向上する。
また、ブロック共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。MwおよびMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明の樹脂組成物の機械強度や耐熱性が向上する。
【0053】
(3)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、上述した(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物と、(2)特定ブロック共重合体水素化物とを含有するものである。
(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物と(2)特定ブロック共重合体水素化物との配合割合は、ノルボルネン系開環重合体水素化物100重量部に対して、特定ブロック共重合体水素化物は通常1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。ノルボルネン系開環重合体水素化物の割合が少なすぎると、成型品の剛性や強度が不足するおそれがあり、特定ブロック共重合体水素化物の割合が少なすぎると転写性が不足するおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0054】
また、本発明の樹脂組成物は、上述した(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物と、(2)特定ブロック共重合体水素化物以外に、諸般の性能を向上させるため、添加剤を配合することができる。
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、滑剤などが挙げられる。
添加剤の配合量は、添加剤の使用目的に応じて適宜設計できるが、ノルボルネン系開環重合体水素化物100重量部に対して、通常0.001〜1重量部である。
【0055】
本発明の樹脂組成物の調整方法としては、上述した(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物と、(2)特定ブロック共重合体水素化物と必要に応じて用いられる添加剤を混練し、ペレット状にする方法;溶媒中で(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物と、(2)特定ブロック共重合体水素化物と必要に応じて用いられる添加剤を混合し、次いで溶媒を除去する方法などが挙げられる。
【0056】
混練では、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、フィーダールーダーなどの溶融混練機等を用いることができる。混練温度は、180〜400℃の範囲であると好ましく、200〜350℃の範囲であるとより好ましい。また、混練する際に、各成分を一括添加しても良いし、数回に分けて添加しても良い。また添加順序も特に制限されない。
また、混練によって樹脂組成物を調整する場合、添加剤はノルボルネン系開環重合体水素化物に添加してから特定ブロック共重合体水素化物と混練する;特定ブロック共重合体水素化物に添加してから、ノルボルネン系開環重合体水素化物と混練する;ノルボルネン系開環重合体水素化物と特定ブロック共重合体水素化物とを混練する際に添加剤を添加する;いずれでも良い。
【0057】
(4)バイオチップの製造
本発明のバイオチップは、上述した樹脂組成物を用いて得られるものである。
本発明のバイオチップは、検査のための混合、分離、抽出、ろ過、吸着、化学反応、生物反応、流動、貯蔵などを行うための微小なキャピラリーアレイやスポットを配列したマイクロアレイが上面に形成されたものであり、他の化学的、生物的素子や検査部品と組み合わせて生体分子検査素子となるものである。
本発明のバイオチップは、具体的には、マイクロアレイスキャナー用生体分子検査素子、フローサイトメーター用生体分子検査素子、電気泳動用生体分子検査素子、及び血液検査素子に好適に用いられる。
【0058】
本発明のバイオチップがキャピラリーアレイ型の場合、バイオチップ上に複数の物理的又は化学的な単位操作を行うためのスポットとそれを結ぶキャピラリーから構成される。スポット部には検査を行うための、化学物質、酵素類、DNR、RNA、タンパク質などの基準生体分子が固定化され、各種反応、分離、抽出などが行われるようになっている。また、キャピラリー部にも、検査対象液体を移送する機能のほかに、分離、吸着、ろ過などの単位操作機能を付加させることもできる。
バイオチップの大きさは、通常10〜200mm×10〜50mmの矩形形状であり、厚みは目的により適宜選択可能であるが、通常0.5〜5mmの間から適宜選択される。
【0059】
スポット部は、通常、円柱、直方体、球面体上の凹地形状であり、その形状は目的により適宜選択される。通常、その深さは、検査対象の貯槽を目的とした場合、0.001〜3mmであり、基材の厚みを超えない範囲で適宜選択され、円柱状の場合には、底面の寸法は、直径が0.1〜10mm、直方体形状の場合には、底面が0.1〜5mm×0.5〜5mmである。また、各種単位操作を目的とした場合には、その深さは0.1〜100μmの範囲で適宜選択され、円柱状の場合にはその寸法は、直径が0.5〜5mm、直方体形状の場合には、幅が0.1〜5mm、長さが0.5〜5mmである。
キャピラリー部の形状は、矩形、半円柱形、V字形状など適宜選択でき、通常その深さは1〜300μm、幅は1〜300μmである。
【0060】
本発明のバイオチップがマイクロアレイ型の場合、複数の検査を1枚の生体分子検査素子上で行うため、微小な検査用スポットが1枚のバイオチップ上に配列された形状である。検査用スポットは、円柱形状、円球形状、砲弾形状、深さ方向へのキャピラリー形状、多角形柱形状、円錐形状、多角錐形状、円錐台形状、多角錐台形状など公知の形状を適宜選択することが可能である。また、検査用スポットには、化学物質や生化学高分子あるいは酵素類などの基準生体分子を固定化するためのパターンが形成されていても良い。スポットの開口部の直径あるいは1辺の、長さは通常10〜700μmであり、深さは通常1〜500μmの範囲で適宜目的に応じて選択される。
【0061】
本発明のバイオチップは、公知の成形手段、例えば、微小なキャピラリー流路あるいは凹パターンを形成した金型を用い、キャビティーを減圧にする方法及び射出圧縮成形法の少なくとも1つの方法を適用した射出成形法、あるいはキャビティーを減圧にする方法と射出圧縮成形法を組み合わせた方法などを用いて形成することができる。
【0062】
本発明のバイオチップを作成するための金型の材質や構造は公知のものを採用することが可能である。好ましい材質としては、通常の炭素鋼、ステンレス鋼、あるいはこれらをベースにした公知の合金類が用いられ、表面は焼き入れ処理あるいはクロム、チタン、ダイヤモンドなど公知のコーティング処理、あるいはニッケル系金属、銅合金などパターン加工のための金属めっきを施すことができる。
バイオチップに形成されるパターンは、上記金属類あるいはめっき面、あるいはスタンパーとして、その表面に直接、放電加工機、切削加工機といった、公知の加工機でパターンを形成しても良く、部分めっきなどの方法でパターンを形成しても良い。
【0063】
バイオチップの成形条件は、成形手段に応じて適宜選択することができ、成形時の樹脂温度は通常200℃〜400℃、好ましくは210℃〜350℃である。また金型を使用する場合の金型温度T
0℃は、使用するノルボルネン系開環重合体水素化物のガラス転移温度Tgとの関係が、通常室温<T
0<(Tg+15)℃、好ましくは(Tg−30)<T
0<(Tg+10)℃、より好ましくは(Tg−20)<T
0<(Tg+5)℃に設定される(ただし、(Tg−30)<室温、あるいは(Tg−20)℃<室温である場合は、室温<T
0℃とする。)。射出成形条件は、特に限定されるものではないが、射出速度は、バイオチップの大きさや成形機のシリンダーサイズにより異なるが、例えば、シリンダー径が28mmの場合、通常50mm/秒以上、好ましくは60〜150mm/秒の高速で成形することが好ましく、保圧は成形品の形状が保持できる程度の最小圧・時間に調整してかけることが好ましい。
また、本発明のバイオチップ用樹脂組成物は、予め乾燥して用いることが好ましい。通常の熱風乾燥あるいは除湿乾燥機を用いることもできるが、バイオチップの色相の観点から、減圧乾燥機あるいは窒素などの不活性ガスの循環による乾燥機を使用することが好ましい。
【0064】
上記の方法で製造されたバイオチップは、さらに必要に応じて、親水性、疎水性、特定波長光線透過性、耐酸性、耐アルカリ性、ガスバリアー性、反射防止、ハードコート、光触媒性などの機能を持つ公知のコーティング加工を施すことが可能である。
コーティングは、真空蒸着法、スパッタ法、化学蒸着法などの乾式コーティング法、あるいは、本発明の樹脂組成物を不可溶な溶媒を用いた刷毛塗り、ロールコーティング、ディッピング、スピンコーティング、吹き付けなどの方法により塗布した後、目的により熱風、真空などの乾燥、熱や活性光線で硬化などを行う湿式コーティングなどの方法を採用することが可能である。
本発明のバイオチップは、医療や食品用途で採用されている方法で殺菌することが可能である。殺菌方法としては、高温蒸気によるオートクレーブ殺菌、γ線殺菌、電子線殺菌などの方法が用いることができる。
【0065】
本発明のバイオチップ用樹脂組成物は、オートクレーブ殺菌では、熱による変形、高温水蒸気成分による樹脂の失透のない、また、ガンマ線や電子線の殺菌においては、熱による変形及びこれら活性光線による劣化変色が少ない、バイオチップを与えることができる。
【0066】
本発明のバイオチップは、必要に応じて、核酸類や酵素類などによる修飾や反応薬品の塗布・固定化などの処理が施され、他の検査用冶具などと組み合わせて検査機器を構成することにより、医療検査や食品検査などに用いることが可能である。
このようなバイオチップは、標的生体分子をバイオチップの表面に接触させ、前記生体分子間で生じた特異的な反応を紫外線及び/又は蛍光を用いて検出する。
本発明のバイオチップは自家蛍光性が低いので、生体分子の検出感度が高い利点がある。
【実施例】
【0067】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0068】
各種物性の測定法は次のとおりである。
・ノルボルネン系開環重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、トルエンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置として、GPC−8020シリーズ(DP8020、SD8022、AS8020、CO8020、RI8020、東ソー社製)を用いた。
標準ポリスチレンとしては、標準ポリスチレン(Mwが500、2,630、10,200、37,900、96,400、427,000、1,090,000、5,480,000のものの計8点、東ソー社製)を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をトルエンに溶解後、カートリッジフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.5μm)で濾過して調製した。
測定は、カラムに、TSKgel GMHHR・H(東ソー社製)を2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0069】
・ノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、140℃にて測定試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに加熱溶解させて調製した。
標準ポリスチレンとしては、標準ポリスチレン(Mwが988、2,580、5,910、9,010、18,000、37,700、95,900、186,000、351,000、889,000、1,050,000、2,770,000、5,110,000、7,790,000、20,000,000のものの計16点、東ソー社製)を用いた。
測定装置として、HLC8121GPC/HT(東ソー社製)を用いた。
測定は、カラムに、TSKgel GMHHR・H(20)HT(東ソー社製)を3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、サンプル注入量300μml、カラム温度140℃の条件で行った。
【0070】
・特定ブロック共重合体水素化物とブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン(一級・和光純薬社製)を溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。サンプルは、サンプル濃度4mg/mlになるように、室温にて測定試料をテトラヒドロフラン(一級・和光純薬社製)に溶解させて調製した。
標準ポリスチレンとしては、標準ポリスチレン(Mwが500、1,050、2,500、5,870、9,490、17,100、37,200、98,900、189,000、397,000、707,000、1,110,000のものの計12点、東ソー社製)を用いた。
測定装置として、HLC−8120(東ソー社製)を用いた。
測定は、カラムに、TSK ground Column SuperH−H、TSK gel Super H5000、 TSKgel SuperH4000、
TSKgel SuperH2000、TSKgel Super H−RC、
(東ソー社製)を5本直列に繋いで用い、流速0.6ml/min、サンプル注入量20μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0071】
・水素添加率は、溶媒に重クロロホルムを用い、
1H−NMRにより測定して求めた。
・ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(製品名「DSC6220SII」、ナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K 6911に基づいて測定した。
【0072】
・パターン転写性は、次の方法で評価した。
ペレット化した樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製、型締力50t)を用い、直径5mmのフレネルレンズを成型し(射出速度20mm/s、樹脂温度250℃、金型温度60℃、保圧700kg/cm
2、保圧時間3s、冷却時間40s)、3Dレーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)を用いてパターン転写性を確認した。
評価基準は、レンズ中心から250μmのパターン部において、パターンの山頂部と谷底部の距離(差)Δdが、Δd≧2.5μmが◎、2.2μm≦Δd<2.5μm、Δd<2.2μmの場合×とした。
・蛍光特性は、次の方法で評価した。
ペレット化した樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製、型締力100t)を用い、一辺65mm、厚み3mmの板を成型した(射出速度10mm/s、樹脂温度250℃、金型温度70℃、保圧700kg/cm2、保圧時間10s、冷却時間40s)。得られた板を、分光蛍光光度計(製品名「F4500」、日立ハイテクノロジー社製)を用い、励起波長635nmの光を、スリット幅5nmで成形体に入射した時の蛍光ピーク(検出部のホトマル電圧700V)を測定した。検出波長605nm〜800nmにおける最大ピーク高さをピーク強度とした。
・透明性は、次の方法で評価した。
ペレット化した樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製、型締力100t)を用い、一辺65mm、厚み1mmの板を成型した。得られた板に対し、目視観察を行い、白濁度合いを判断した。
評価基準は、板を通して、1m先のものを見た場合、濁りを殆ど感じることなく物体を認識できる場合◎、やや濁りが掛かった状態で見えるものを○、物体を認識し難いものを△とした。
【0073】
(参考例1)ノルボルネン系開環重合体水素化物の製造
窒素で置換した反応器に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(以下、「MTF」という)とトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(以下、「DCP」という)とテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(以下、「TCD」という)(重量比5/90/5)の混合物7部(重合に使用するモノマー全量に対して1%)とシクロヘキサン1600部を加え、トリ−i−ブチルアルミニウム0.57部とイソブチルアルコール0.21部、反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.85部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン4.86部を添加した。ここに、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液24.3部を添加して、55℃で10分間攪拌した。次いで、反応系を55℃に保持しながら、MTFとDCPとTCD(重量比5/90/5)の混合物を693部とシクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液48.9部とをそれぞれ系内に150分かけて連続的に滴下した。その後、30分間反応を継続し重合を終了した。
重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は重合終了時で100%であった。
<水素添加>
得られた開環重合反応液を耐圧性の水素化反応器に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率57%)1.4部及びシクロヘキサン167部を加え、180℃、水素圧4.6MPaで6時間反応させた。この反応溶液を、ラヂオライト(登録商標)#500(昭和化学工業社製)を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(IHI社製、製品名「フンダフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。次いで、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノフィルター社製、孔径0.5〜1μm)にて順次濾過しさらに別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。開環重合体水素添加物の水素転化率は99.9%であった。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、開環重合体水素添加物(脂環構造含有重合体B)を得た。Tgは106℃、曲げ弾性率は2100MPaであった。
尚、開環重合体合成時の重合転化率が100%であり、水素転化率も99.9%と高水準であることから、開環重合体水素添加物中の、MTF由来の構造単位(MTF単位)、DCP由来の構造単位(DCP単位)、及びTCD由来の構造単位(TCD単位)は、開環重合体の製造に用いたモノマーの使用量に等しいと推定される。
【0074】
(参考例2)特定ブロック共重合体水素化物1の製造
・ブロック共重合体の製造
充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン5.0部、n−ジブチルエーテル0.5部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.68部を加えて重合を開始した。攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で重合転化率は99.5%であった。次に、脱水イソプレン90.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99%であった。その後、更に、脱水スチレンを5.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止した。得られたブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は55,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
特定ブロック共重合体水素化
得られた次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物(A)の重量平均分子量(Mw)は60,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、リン系酸化防止剤である6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン(製品名「スミライザー(登録商標)GP」、住友化学社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットしてブロック共重合体[1]のペレット90部を得た。得られたブロック共重合体水素化物[1]の重量平均分子量(Mw)は59,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。水素化率はほぼ100%であった。
得られたブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物(スチレン)由来の構造単位の量は、重合に用いたスチレン量に等しいと推定される(以下の参考例でも同じ)。
【0075】
(参考例3)特定ブロック共重合体水素化物2の製造
用いるスチレンの量を30%とし、イソプレンの量を70%としたこと以外は参考例2と同様にしてブロック共重合体2を得た。
次いで、ブロック共重合体1の代わりにブロック共重合体2を用いたこと以外は、参考例2と同様にして特定ブロック共重合体水素化物2を得た。
得られた水素化物2の水素化率は99.9%であった。
【0076】
(参考例4)特定ブロック共重合体水素化物3の製造
用いるスチレンの量を70%とし、イソプレンの量を30%としたこと以外は参考例2と同様にしてブロック共重合体3を得た。
次いで、ブロック共重合体1の代わりにブロック共重合体3を用いたこと以外は、参考例2と同様にして特定ブロック共重合体水素化物3を得た。
得られた水素化物3の水素化率は99.9%であった。
【0077】
(比較参考例1)ブロック共重合体水素化物Aの製造
用いるスチレンの量を3%とし、イソプレンの量を97%としたこと以外は参考例2と同様にしてブロック共重合体Aを得た。
次いで、ブロック共重合体1の代わりにブロック共重合体Aを用いたこと以外は、参考例2と同様にしてブロック共重合体水素化物Aを得た。
得られた水素化物Aの水素化率は99.9%であった。
【0078】
(比較参考例2)ブロック共重合体水素化物Bの製造
用いるスチレンの量を90%とし、イソプレンの量を10%としたこと以外は参考例2と同様にしてブロック共重合体Bを得た。
次いで、ブロック共重合体1の代わりにブロック共重合体Bを用いたこと以外は、参考例2と同様にしてブロック共重合体水素化物Bを得た。
得られた水素化物Bの水素化率は99.9%であった。
【0079】
(実施例1)
・樹脂組成物(ペレット)の調製
参考1で得られたノルボルネン系開環重合体水素化物A100重量部に対して、酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5重量部、及び参考例3で得られた特定ブロック共重合体水素化物2、20重量部を2軸混練機で混練して、ペレット化した。
・成型板の製造と評価
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2〜6)
特定ブロック共重合体水素化物を表1記載のものや配合量に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例1)
特定ブロック共重合体水素化物1を用いず参考1で得られたノルボルネン系開環重合体水素化物だけとしたこと以外は実施例1と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例2)
特定ブロック共重合体水素化物1の代わりに、芳香環中の炭素−炭素二重結合が実質的に水素化されていない、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(製品名「クインタック(登録商標)3421」、日本ゼオン社製;芳香族ビニル化合物由来の構造単位量14%)を用いたこと以外は施例2と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
特定ブロック共重合体水素化物1の代わりに、芳香環中の炭素−炭素二重結合が実質的に水素化されていない、水添スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(製品名「タフテック(登録商標)H1051」、旭化成社製;芳香族ビニル化合物由来の構造単位量42%)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
特定ブロック共重合体水素化物1の代わりに、芳香環中の炭素−炭素二重結合が実質的に水素化されていない、ポリカーボネート(製品名「ユーピロン(登録商標)H−4000」、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
特定ブロック共重合体水素化物1の代わりに、ブロック共重合体水素化物Aを用いたこと以外は実施例2と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例6)
特定ブロック共重合体水素化物1の代わりに、ブロック共重合体水素化物Bを用いたこと以外は実施例2と同様にしてペレットを得、成型板を成形した。
得られた成型板について、パターン転写性、蛍光特性及び透明性評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
(考察)
以上の結果より以下のことが分かる。
ノルボルネン系開環重合体水素化物にブロック共重合体水素化物を配合することで転写性が向上する(実施例1〜7、比較例1)
配合剤の配合剤が芳香環を有すると、蛍光発色が大きくなってしまう(比較例2〜4)
ブロック共重合体水素化物中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると透明性が悪くなる(比較例5)
ブロック共重合体水素化物中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が多すぎると転写性が悪くなる(比較例6)