特許第5768410号(P5768410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768410
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】近赤外光吸収膜形成材料及び積層膜
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   G02B5/22
【請求項の数】9
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2011-47254(P2011-47254)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2011-242751(P2011-242751A)
(43)【公開日】2011年12月1日
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-98453(P2010-98453)
(32)【優先日】2010年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 和美
(72)【発明者】
【氏名】白井 省三
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
(72)【発明者】
【氏名】ウ ソン ホワン
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ ゴールドファーブ
(72)【発明者】
【氏名】ワイ キン リー
(72)【発明者】
【氏名】マーチン グローデ
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−099887(JP,A)
【文献】 特開2007−171895(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0208865(US,A1)
【文献】 特開平07−146551(JP,A)
【文献】 特開2010−044365(JP,A)
【文献】 特開2009−092784(JP,A)
【文献】 特開2005−015532(JP,A)
【文献】 特開平09−120163(JP,A)
【文献】 特開昭62−264051(JP,A)
【文献】 特開2006−053404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位及び下記式で示されるオキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有する酸存在下で架橋反応を起こす繰り返し単位を1種以上含む高分子化合物1種以上と、(B)近赤外光吸収色素1種以上と、(C)溶剤1種以上とを含有することを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
【化1】
(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基の場合、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。nは1〜5の整数を示す。)
【化2】
(式中、R01は水素原子、メチル基、フッ素原子、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を示す。)
【請求項2】
上記(B)近赤外光吸収色素として、波長500〜1,200nmの光を吸収するシアニン色素を1種以上含有することを特徴とする請求項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項3】
上記(B)近赤外光吸収色素が、下記一般式(2)〜(6)で示される構造のものから選ばれるものである請求項1又は2記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【化3】
(式(2)〜(6)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R1aは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、該炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されたもの、あるいは−CH2−が酸素原子、硫黄原子、又は−C(=O)O−に置換されたものでもよい。R2は窒素原子を含み、かつ環状構造を含む有機基を示す。R3は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4,R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R7,R8,R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R11,R12,R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。X-は陰イオンを示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。rは1又は2である。c1、c2及びc3はそれぞれ独立に0〜5の整数である。d1、d2、d3及びd4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。eは1又は2である。f1、f2、f3及びf4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。)
【請求項4】
更に、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項5】
光リソグラフィーにおける光オートフォーカス用である請求項1乃至4のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料を基板上に塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有し、更に、その上にフォトレジスト材料を塗布し成膜することにより形成されるフォトレジスト膜を有することを特徴とする積層膜。
【請求項7】
上記積層膜が、フォトレジスト膜の直下に珪素を含有する膜を有し、更にその下に近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有することを特徴とする請求項6記載の積層膜。
【請求項8】
上記近赤外光吸収膜が、光オートフォーカスに使用される近赤外光の吸収膜として機能することを特徴とする請求項6又は7記載の積層膜。
【請求項9】
上記近赤外光吸収膜が、レジストパターンの形成に用いられる露光光の反射防止膜として機能することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の積層膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収膜形成材料に関し、特に、ArFエキシマレーザー光(193nm)での露光に好適な近赤外光吸収膜形成材料に関する。更に本発明は、この近赤外光吸収膜形成材料を用いて形成された積層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、光リソグラフィーによる微細加工が利用されている。光リソグラフィーとは、露光装置によってレチクル又はマスクと呼ばれる原版の像をシリコンウエハ上のフォトレジスト膜内に形成し、フォトレジスト膜を現像し、フォトレジストパターン下のシリコン又は他の金属等をエッチングして、シリコンウエハ上に電子回路を形成する技術である。パターンを微細化して半導体素子を集積化するため、光リソグラフィーに用いる露光光の短波長化が進んでおり、例えば、64MビットDRAMの量産プロセスにおいては、加工にKrFエキシマレーザー(248nm)が利用され、更に微細な加工技術を必要とする、例えば、加工寸法が0.13μm以下を必要とするDRAMの製造にはArFエキシマレーザー(193nm)が利用されている。更に、開口数(NA)を0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの製造が検討されている。次世代の45nmノードデバイスの製造においては波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がったが、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることでスキャナーがコストアップすること、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためにハードペリクルを採用することとなり光学系に変更を伴うこと、フォトレジスト膜のエッチング耐性が低いこと等の問題により、F2リソグラフィーの開発は中止され、現在はArF液浸リソグラフィーが検討されている。
【0003】
これら光リソグラフィーにおいてレチクルを介しフォトレジスト膜を露光する際、ウエハ表面が投影光学系の最良像面と合致するように、即ちフォーカス合わせが行われるように、露光装置中でウエハを載せた移動ステージが投影光軸方向に微動している。そのフォーカス合わせのためのセンサーとして、例えば、特開昭58−113706号公報(特許文献1)に開示されているように、ウエハの表面に斜めに結像光束(非露光波長)を投射して、その反射光を検出する斜入射光式の光フォーカス検出系が使われる。ここで用いられる結像光束としては、特開平2−54103号公報(特許文献2)、特開平6−29186号公報(特許文献3)、特開平7−146551号公報(特許文献4)、米国特許出願公開第2009/0208865号明細書(特許文献5)に記載されているように、赤外光、特に近赤外光が挙げられる。
【0004】
しかし、このように赤外光をフォーカス検出系に使用している露光装置では、フォトレジスト膜中を赤外光が透過してしまうために正確にフォーカスを検出できないという問題があった。即ち、フォーカス検出用の赤外光の一部がフォトレジスト膜を透過し、その透過光が基板表面で反射してウエハ上面で反射した光とともに検出系に入射することとなり、フォーカス検出の精度が劣化するという問題があった。
【0005】
上記した光オートフォーカスは、赤外光をウエハ上面で反射させ、この反射光を検出することでウエハの上面位置を検知し、これを投影レンズ像面に合致させるように駆動させるものである。ウエハ上面で反射した光のほかに、レジスト膜を透過して基板表面で反射した光が存在し、幅をもった光強度分布を有する検出光が検出系に入射すると、位置測定値はこの光強度分布の重心を示すこととなり、フォーカス検出の精度が劣化してしまう。一般に、基板はパターン形成された金属、誘電性材料、絶縁性材料、セラミック材料等を含む多層構造からなるものであり、パターン化基板では赤外光の反射が複雑となりフォーカス検出が難しくなる。フォーカス検出の精度が劣化すると投影像が不明瞭となりコントラストが低下するため、良好なフォトレジストパターンを形成することができない。
【0006】
近赤外光を用いた光オートフォーカスの精度を上げるため、近赤外光吸収色素を含むフォトレジスト膜を用いる方法が提案されている(特許文献4:特開平7−146551号公報)。この場合、近赤外光はフォトレジスト膜を透過せず、ウエハ上面で反射した光以外の反射光はフォーカス検出系に入射しないため、フォーカス検出の精度が向上する。しかし、ここで用いる近赤外光吸収色素は、露光光を吸収したりフォトレジストの解像性を劣化させたりするものであってはならないため、ArFエキシマレーザーを用いた光リソグラフィーにおいては適用が難しい。また、近赤外光吸収色素を含む膜をフォトレジスト膜下へ導入する手法が提案されており、この手法であればレジストの解像性の劣化を防ぐことができる(特許文献5:米国特許出願公開第2009/0208865号明細書)。
【0007】
光オートフォーカスに代わる手法として、ウエハ表面に空気を吐出する圧力を検知する原理からなるAir Gauge Improved Leveling (AGILETM)と呼ばれる手法も提案されている(非特許文献1:Proc. of SPIE Vol.5754,p.681 (2005))。しかし、この手法は、位置測定の精度に優れる一方で測定に長時間を要するため、スループットの向上を求める半導体の量産現場で許容される手法とならなかった。
【0008】
以上の通り、光リソグラフィーにおけるオートフォーカスを精度よく、かつ短時間で行う手法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−113706号公報
【特許文献2】特開平2−54103号公報
【特許文献3】特開平6−29186号公報
【特許文献4】特開平7−146551号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0208865号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Proc. of SPIE Vol.5754,p.681 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、半導体製造工程に用いられる光リソグラフィーに際するオートフォーカスを精度よく行うため、光オートフォーカスに用いられる近赤外光を吸収する膜を形成するための材料を提供することを目的とする。また、上記近赤外光吸収膜形成材料によって形成された近赤外光吸収膜及びフォトレジスト膜を含む積層膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した。まず、光オートフォーカスを精度よく行うため、近赤外光を吸収する膜をフォトレジスト膜下に導入する手法を検討した。近赤外光吸収膜の導入により、近赤外光が基板で反射してフォーカス検出系に入射することがなくなり、フォーカス検出の精度が向上すると考えられた。また、この手法であれば、現在半導体の製造現場で一般的に用いられている光フォーカス検出系をそのまま使用することができるため、フォーカス検出に要する時間は従来と同等であり十分実用に適うと考えられた。
【0013】
本発明者らは近赤外光吸収膜の導入にあたり、現在実用されているウエハ積層プロセスをそのまま使うことができるよう、既存の露光光の反射防止膜に近赤外光吸収の機能を併せ持たせる手法を考えた。現在、レジスト膜の下層に珪素含有膜、その下に炭素密度が高くエッチング耐性が高い下層膜(Organic Planarization Layer、以下OPLと略す)、その下に被加工基板を積層する3層プロセスを用い、各層のエッチング選択比を利用して基板を加工し、更に各層の光学特性を調整して露光光の反射を防止する検討が行われている(特開2005−250434号公報、特開2007−171895号公報、特開2008−65303号公報参照。)。本発明者らは、このOPLに近赤外光を吸収する機能を併せ持たせることを考えるに至った。
【0014】
OPLのベース樹脂は、露光光の反射防止を実現する光学特性に加え、高いエッチング耐性を有する必要がある。また、上記の珪素含有膜を成膜する際にOPL膜が損なわれてはならないため、OPL膜が十分に硬化するよう酸や熱で架橋反応が起こる樹脂を用いる必要がある。
【0015】
アセナフチレン又はその誘導体を共重合した高分子化合物を反射防止膜、下層膜のベース樹脂として用いる例が、特開平6−84789号公報、特開2005−15532号公報、特開2005−250434号公報で報告されている。これらの報告を参考に、本発明者らは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物をベース樹脂として用い、近赤外光吸収色素を含有した膜を形成することを考えた。
【0016】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基の場合、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。nは1〜5の整数を示す。)
で示される繰り返し単位を含む高分子化合物は、芳香環(ナフタレン構造)を有し、かつ主鎖に環構造を有することによって高いエッチング耐性を発現する。更に、193nmにおけるナフタレンの屈折率(n値)、消光係数(k値)が低いことから、上記高分子化合物はOPLとして用いた場合に反射防止の観点で好ましい光学特性を有する。即ち、エッチング耐性を向上させるために上記一般式(1)で示される繰り返し単位を相当量導入しても、一般的なOPL膜厚において反射防止に必要とされる光学特性を満たす。例えば、芳香環含有モノマーとして一般的に用いられるスチレンを比較対象とした場合、スチレン由来の繰り返し単位の導入比を増やすとk値が高くなりすぎ、反射を効果的に防止することができない。
【0017】
図1は、上記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物1(実施例参照)をベース樹脂としたOPLを用い、ArF用フォトレジスト膜/珪素含有膜/OPLからなる積層膜をシリコンウエハ上に形成した場合の反射率を計算した結果である。図2は、スチレンに由来する繰り返し単位を含む高分子化合物5(実施例参照)をOPLのベース樹脂とした場合の反射率を計算した結果である。図1図2により、珪素含有膜の膜厚が30〜40nmの範囲においては、高分子化合物1をベース樹脂としたOPLの方が反射率が低いことが分かった。
【0018】
以上の検討に基づき、本発明者らは、(A)上記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物、(B)近赤外光吸収色素、及び(C)溶剤を含有する近赤外光吸収膜形成材料を調製し、これをウエハ上に成膜した。本発明者らは、こうして形成された膜は高いエッチング耐性を有し、既存の珪素含有膜との組み合わせで露光光193nmの反射を防止する光学特性を有し、かつOPLとして実用に足る硬化性を有することを知見し、また、この膜は光オートフォーカスで用いられる近赤外光を吸収することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0019】
従って、本発明は、下記の近赤外光吸収膜形成材料及び積層膜を提供する。
請求項1:
(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位及び下記式で示されるオキシラン構造及び/又はオキセタン構造を有する酸存在下で架橋反応を起こす繰り返し単位を1種以上含む高分子化合物1種以上と、(B)近赤外光吸収色素1種以上と、(C)溶剤1種以上とを含有することを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
【化2】
(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基の場合、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。nは1〜5の整数を示す。)
【化25】
(式中、R01は水素原子、メチル基、フッ素原子、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を示す。)
請求項
上記(B)近赤外光吸収色素として、波長500〜1,200nmの光を吸収するシアニン色素を1種以上含有することを特徴とする請求項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項3:
上記(B)近赤外光吸収色素が、下記一般式(2)〜(6)で示される構造のものから選ばれるものである請求項1又は2記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【化26】
(式(2)〜(6)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R1aは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、該炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されたもの、あるいは−CH2−が酸素原子、硫黄原子、又は−C(=O)O−に置換されたものでもよい。R2は窒素原子を含み、かつ環状構造を含む有機基を示す。R3は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4,R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R7,R8,R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R11,R12,R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。X-は陰イオンを示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。rは1又は2である。c1、c2及びc3はそれぞれ独立に0〜5の整数である。d1、d2、d3及びd4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。eは1又は2である。f1、f2、f3及びf4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。)
請求項
更に、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項5:
光リソグラフィーにおける光オートフォーカス用である請求項1乃至4のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項6:
請求項1乃至5のいずれか1項記載の近赤外光吸収膜形成材料を基板上に塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有し、更に、その上にフォトレジスト材料を塗布し成膜することにより形成されるフォトレジスト膜を有することを特徴とする積層膜。
請求項7:
上記積層膜が、フォトレジスト膜の直下に珪素を含有する膜を有し、更にその下に近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより形成される近赤外光吸収膜を有することを特徴とする請求項6記載の積層膜。
請求項8:
上記近赤外光吸収膜が、光オートフォーカスに使用される近赤外光の吸収膜として機能することを特徴とする請求項6又は7記載の積層膜。
請求項9:
上記近赤外光吸収膜が、レジストパターンの形成に用いられる露光光の反射防止膜として機能することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の積層膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布し成膜することにより、近赤外光吸収膜を形成することができる。この近赤外光吸収膜とフォトレジスト膜とを含む積層膜を光リソグラフィーに用いることにより、従来行われている光オートフォーカスの検出精度が向上する。これにより光リソグラフィーの投影像が明瞭となり、コントラストが向上するため、良好なフォトレジストパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ArF用フォトレジスト膜/珪素含有膜/実施例で合成した高分子化合物1をベース樹脂としたOPLからなる積層膜をシリコンウエハ上に形成した場合における、珪素含有膜の膜厚を変化させたときの反射率の変化を示すグラフである。
図2】ArF用フォトレジスト膜/珪素含有膜/実施例で合成した高分子化合物5をベース樹脂としたOPLからなる積層膜をシリコンウエハ上に形成した場合における、珪素含有膜の膜厚を変化させたときの反射率の変化を示すグラフである。
図3】実施例において合成した近赤外光吸収色素D2の1H−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図4】実施例において合成した近赤外光吸収色素D2の19F−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図5】実施例において合成した近赤外光吸収色素D3の1H−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図6】実施例において合成した近赤外光吸収色素D3の19F−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図7】実施例において合成した近赤外光吸収色素D4の1H−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図8】実施例において合成した近赤外光吸収色素D4の19F−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図9】実施例において合成した近赤外光吸収色素D5の1H−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図10】実施例において合成した近赤外光吸収色素D5の19F−NMR/DMSO−d6スペクトルである。
図11】実施例2の近赤外光吸収膜形成材料を用いて形成された近赤外光吸収膜の、波長400〜1,200nmにおける消光係数の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物1種以上と、(B)近赤外光吸収色素1種以上と、(C)溶剤1種以上とを含有することを特徴とする。
【0023】
【化3】
(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基の場合、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。nは1〜5の整数を示す。)
【0024】
上記式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。上記直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基の具体例としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−メチルヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、2−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、ナフタレン等の炭化水素から水素原子を1つ除いたものを挙げることができる。また、これらの基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、また、これらの基の−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。
【0025】
上記炭素数1〜10のアルコキシ基の具体例として、例えば、上記の1価炭化水素基をR’と表した場合にR’O−で表される基を挙げることができる。
【0026】
上記炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基の具体例として、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、2−プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニル基、シクロプロピルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0027】
上記炭素数1〜10のアシロキシ基の具体例として、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、2−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、tert−アミルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0028】
上記(A)の高分子化合物は、より緻密な近赤外光吸収膜を形成するために酸存在下で架橋反応を起こす繰り返し単位、例えば、ヒドロキシル基又はオキシラン、オキセタン等の環状エーテル構造、又はカルボキシル基を含有する繰り返し単位を1種以上有することが好ましい。上記(A)の高分子化合物が架橋反応を起こす繰り返し単位を含有する場合、硬く緻密な近赤外光吸収膜を形成することができる。これにより、近赤外光吸収膜の直上に珪素含有膜等の別の膜を成膜する際に近赤外光吸収膜の膜厚が減少したり、該膜内の近赤外光吸収色素が溶出したりすることがなくなる。オキシラン構造、オキセタン構造を有する酸存在下で架橋反応を起こす繰り返し単位は、酸反応性が高く緻密な膜を形成することが可能となるため、特に好ましい。
【0029】
酸存在下で架橋反応を起こす繰り返し単位として以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
【化4】
(式中、R01は水素原子、メチル基、フッ素原子、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を示す。)
【0031】
上記(A)の高分子化合物には、光学特性を調整するために、上記一般式(1)で示される繰り返し単位以外の芳香環を含む繰り返し単位を導入してもよい。芳香環を有する繰り返し単位として、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】
(式中、R02は水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示す。Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。)
【0033】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を用いて近赤外光吸収膜を成膜する際、用いる高分子化合物や近赤外光吸収色素の組み合わせによっては成膜不良が発生し、ウエハ全面を均一な膜厚で覆うことができない場合がある。こうした現象を改善するため、フォトレジスト材料のベース樹脂に含有される繰り返し単位、例えば、酸不安定基を有する繰り返し単位、ラクトン構造を有する繰り返し単位、ヒドロキシル基を有する繰り返し単位、炭化水素基を有する繰り返し単位、ハロゲン原子を有する繰り返し単位等を1種以上含有させてもよい。また、同目的でその他の置換(メタ)アクリル酸エステル類、置換ノルボルネン類、不飽和酸無水物等の単量体に基づく繰り返し単位を1種以上含有させてもよい。これらの繰り返し単位として、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化6】
(式中、R03は水素原子、メチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示す。Meはメチル基を示す。)
【0035】
上記(A)の高分子化合物において、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば、下記<1>〜<4>に示す範囲とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。
<1>上記一般式(1)で示される繰り返し単位を5〜90モル%、好ましくは8〜80モル%、より好ましくは10〜70モル%。
<2>酸で架橋反応を起こす繰り返し単位を合計で5〜90モル%、好ましくは8〜80モル%、より好ましくは10〜70モル%。
<3>上記一般式(1)で示される繰り返し単位以外の芳香環を含む繰り返し単位を合計で0〜50モル%、好ましくは1〜45モル%、より好ましくは3〜40モル%。
<4>その他の繰り返し単位を合計で0〜40モル%、好ましくは1〜30モル%、より好ましくは3〜20モル%。
【0036】
なお、これら<1>〜<4>の合計は100モル%である。
【0037】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位のもととなる単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0038】
酸存在下で架橋反応を起こす繰り返し単位、上記一般式(1)で示される繰り返し単位以外の芳香環を含む繰り返し単位、そしてその他の繰り返し単位のもととなる単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0039】
上記(A)の高分子化合物を製造する重合反応は、公知の重合反応でよいが、好ましくはラジカル重合である。
【0040】
ラジカル重合反応の反応条件は、(a)溶剤としてベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を1種以上用い、(b)重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を1種以上用い、(c)分子量調整の必要に応じてラジカル連鎖移動剤、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、1−チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸等のチオール化合物を1種以上用い、(d)反応温度を0〜140℃程度に保ち、(e)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、これらの範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0041】
なお、上記(A)の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜180,000である。分子量が大きすぎる場合には、溶剤にポリマーが溶けない、あるいは溶剤に溶けた場合でも成膜性が悪く、スピンコートでウエハ全面に均一な厚さの膜を形成することができないことがある。また、パターン形成された基板上に成膜する際、パターンを空隙なく満たすことができないという問題が発生する場合がある。一方、分子量が小さすぎる場合は、形成した膜の直上に他の膜を成膜する際に膜の一部が洗い流されて膜厚が減ることがある。
【0042】
上記(B)の近赤外光吸収色素は、波長500〜1,200nmの光を吸収するものであればいずれのものでもよい。かかる近赤外光吸収色素として下記一般式(2)〜(6)で示される構造のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化7】
(上記式(2)〜(6)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R1aは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、該炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されたもの、あるいは−CH2−が酸素原子、硫黄原子、又は−C(=O)O−に置換されたものでもよい。R2は窒素原子を含み、かつ環状構造を含む有機基を示す。R3は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4,R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R7,R8,R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R11,R12,R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。R1aは上記の通りである。X-は陰イオンを示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。rは1又は2である。c1、c2及びc3はそれぞれ独立に0〜5の整数である。d1、d2、d3及びd4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。eは1又は2である。f1、f2、f3及びf4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。)
【0044】
上記式(2)、(3)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、−N(R1a2を示す。R1aは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子、シアノ基で置換されたもの、−CH2−が酸素原子、硫黄原子、−C(=O)O−に置換されたものでもよい。上記1価炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−メチルヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、2−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、ナフタレン等の炭化水素から水素原子1つを除いたのものを挙げることができる。
【0045】
上記式(2)、(3)中、R2は窒素原子を含み、かつ環状構造を含む有機基を示す。具体的には、下記一般式(7)又は(8)で示される構造が例示される。
【0046】
【化8】
(上記式(7)、(8)中、R2a及びR2bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、該炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されたもの、あるいは−CH2−が酸素原子、硫黄原子、又は−C(=O)O−に置換されたものでもよい。また、R2a及びR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環、特に炭素数5〜15の脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。Yは酸素原子、硫黄原子、−C(RY2−を示し、RYは水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基を示す。RYはR2bと互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環、特に炭素数5〜15の脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。R2cは炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、該炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子又はシアノ基に置換されたもの、あるいは−CH2−が酸素原子、硫黄原子、又は−C(=O)O−に置換されたものでもよい。)
【0047】
また、上記式(2)、(3)中、R2のどちらか一方は、上記式(7)のような陽イオン性の基であることが必要である。即ち、両方のR2は同時に上記式(7)のような陽イオン性の基となることはない。
【0048】
上記式(3)中、R3は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。上記1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、シクロペンチル基等を挙げることができる。
【0049】
上記式(4)中、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。これらの中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基、ビス(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノ基、ビス(4−ヒドロキシブチル)アミノ基が好ましい。
【0050】
上記式(5)中、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。これらの中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基、ビス(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノ基、ビス(4−ヒドロキシブチル)アミノ基が好ましい。
【0051】
上記式(6)中、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−SO21a、−O2CR1a、−CO21a、又は−N(R1a2を示す。これらの中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基、ビス(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノ基、ビス(4−ヒドロキシブチル)アミノ基が好ましい。
【0052】
なお、R1aは、R1において説明したものと同じである。
【0053】
上記式(2)〜(6)中、X-は陰イオンである。上記陰イオンとして、具体的には、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロプロピルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基等が例示される。
【0054】
また、上記式(2)中、a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、好ましくは0〜2である。上記式(3)中、b1及びb2はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、好ましくは0〜2である。rは1又は2である。上記式(4)中、c1、c2及びc3はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、好ましくは0〜2である。上記式(5)中、d1、d2、d3及びd4はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、好ましくは0〜2である。上記式(6)中、f1、f2、f3及びf4はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、好ましくは0〜2である。また、上記式(5)、(6)中、eは1又は2である。
【0055】
本発明の近赤外光吸収膜は酸による架橋反応で形成されるため、より硬化性が高く緻密な膜を形成するためにX-は強酸の共役塩基であることが好ましい。弱酸の共役塩基を用いた場合、酸発生剤の陰イオン交換が起こり、架橋反応の進行が遅くなる場合がある。具体的には、フルオロアルキルスルホネート、イミド酸、メチド酸を用いることが好ましい。
【0056】
なお、(B)の近赤外光吸収色素は両性イオンであってもよく、この場合にはX-を必要としない。
【0057】
これらの近赤外光吸収色素のうち、上記一般式(2)、(3)で示される、波長500〜1,200nmの光を吸収するシアニン色素は熱耐性と溶剤溶解性に優れるため、特に好適に用いられる。
【0058】
また、これらの近赤外光吸収色素は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の色素を組み合わせて用いる場合は、上記一般式(2)〜(6)で示される構造の陽イオンを複数種用いることもできる。近赤外光の吸収波長域が異なる2種以上の色素を組み合わせることにより、色素1種では実現できない吸収波長域を実現できる。これにより光オートフォーカスに用いられる近赤外光が効果的に吸収されるようになり、フォーカス合わせの精度が向上する場合がある。
【0059】
上記一般式(2)〜(6)で示される近赤外光吸収色素の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
【化13】
【0065】
両性イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化14】
【0067】
近赤外光吸収色素は、市販のものをそのまま使用したり、それらを前駆体とした誘導体を用いることができるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0068】
近赤外光吸収色素の配合量は、全高分子化合物100部(質量部、以下同じ)に対して20〜300部が好ましく、特に49〜100部とすることが好ましい。
【0069】
上記(C)の溶剤としては、本発明の近赤外光吸収膜形成材料に用いられる高分子化合物、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明の近赤外光吸収膜形成材料においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0070】
有機溶剤の配合量は、全高分子化合物100部に対して900〜20,000部が好ましく、特に1,000〜15,000部とすることが好ましい。
【0071】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、上記(A)〜(C)成分のほか、更に、酸発生剤、架橋剤をそれぞれ1種以上含有することが好ましい。本発明の近赤外光吸収膜形成材料が酸発生剤、架橋剤を含有する場合、スピンコート後の加熱において上記(A)の高分子化合物の架橋形成が促進され、より硬く緻密な膜を形成することができる。その結果、近赤外光吸収膜の直上に珪素含有膜等の別の膜を積層させる際に近赤外光吸収膜の膜厚が減少したり、該膜内の近赤外光吸収色素が溶出したりしなくなる。
【0072】
上記酸発生剤は、成膜時の架橋反応を促進させる働きを有する。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0073】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料で使用される酸発生剤としては種々用いることができるが、具体的には、特開2008−083668号公報で挙げられている酸発生剤等を挙げることができる。
【0074】
特に、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−メトキシフェニルメチル)ジメチルフェニルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等、α位がフルオロ置換されたスルホネートを陰イオンとするオニウム塩が好ましく用いられる。
【0075】
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
上記酸発生剤の添加量は、用いる高分子化合物の合計100部に対して、好ましくは0.1〜50部、より好ましくは0.5〜40部である。0.1部未満では酸発生量が不十分で、十分な架橋反応が起こらないおそれがあり、50部を超えると直上に形成された膜へ酸が移動することによるミキシング現象が起こるおそれある。
【0077】
また、上記架橋剤は、成膜時の架橋反応を促進させる働きを有する。本発明で使用可能な添加型の架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物等を挙げることができる。また、酸無水物、オキサゾリン化合物、複数のヒドロキシル基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。具体的には、特開2009−098639号公報で挙げられている架橋剤等を挙げることができる。
【0078】
特に、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0079】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料における架橋剤の配合量は、用いる高分子化合物の合計100部に対して0〜50部が好ましく、特に1〜40部が好ましい。架橋剤は膜の硬化に有効ではあるが、50部を超えると成膜時に膜外にアウトガスとして放出されて露光装置を汚染するおそれがある。なお、上記架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
また、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、更に界面活性剤を1種以上含有することが好ましい。本発明の近赤外光吸収膜はスピンコートにより成膜されるが、用いる高分子化合物や近赤外光吸収色素の組み合わせによっては成膜不良が発生し、ウエハ全面を均一な膜厚で覆うことができない場合がある。本発明の近赤外光吸収膜形成材料に界面活性剤を添加することにより、塗布性が向上して成膜不良が改善される。
【0081】
上記界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30、R90、R94(DIC(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,S−386,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社化学(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、下記構造の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【0082】
【化15】
【0083】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは上述の界面活性剤以外の記載に拘らず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価の基としてエチレン基、1,4−ブチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,5−ペンチレン基等が挙げられ、3価又は4価の基としては下記式のものが挙げられる。
【0084】
【化16】

(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0085】
これらの中で好ましく用いられるのは1,4−ブチレン基又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基である。
【0086】
Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、nとmの和は2〜4の整数であり、これはRの価数を示す。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくは、Bは4〜20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位は、その並びを規定したものではなく、ブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5,650,483号明細書等に詳しい。
【0087】
これらの中でもFC−4430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004、KH−20、KH−30、及び上記構造式にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料中の界面活性剤の添加量は、近赤外光吸収膜形成材料中のベース樹脂100部に対して2部以下、好ましくは1部以下である。また、0.0001部以上、特に0.001部以上であることが好ましい。
【0089】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布することにより形成される膜は、波長500〜1,200nmの光を吸収する色素を含有し、光オートフォーカスに使用される近赤外光を吸収する膜として機能する。
【0090】
本発明は、上記近赤外光吸収膜と、フォトレジスト材料を塗布することにより形成されるレジスト膜とを有する積層膜を提供する。本発明の積層膜を用いることにより、光オートフォーカスの際にレジスト膜を透過した近赤外光が基板で反射してフォーカス検出系に入射することがなくなり、光オートフォーカスの精度が向上する。また、現在半導体の製造現場で用いられている光オートフォーカスがそのまま適用可能であるため、実用に適う所要時間となる。
【0091】
本発明の近赤外光吸収膜は、光リソグラフィーに用いられる露光光の反射防止膜として用いることが好ましい。これにより、現在実用されているウエハ積層プロセスをそのまま使用することが可能となる。
【0092】
レジスト膜の薄膜化と共に被加工基板のエッチング選択比の関係から加工が難しくなっており、レジスト膜の下層に珪素含有膜、その下に炭素密度が高くエッチング耐性が高い下層膜(OPL)、その下に被加工基板を積層する3層プロセスが検討されている。酸素ガスや水素ガス、アンモニアガス等を用いる珪素含有膜と下層膜とのエッチング選択比は高く、珪素含有膜は薄膜化が可能である。単層レジスト膜と珪素含有膜のエッチング選択比も比較的高く、単層レジスト膜の薄膜化が可能となる。また、この3層の光学特性を適宜調整することにより、露光光の反射を効果的に防止することが可能となる。
【0093】
本発明の近赤外光吸収膜を反射防止膜として用いる場合、上記下層膜として用いることが特に好ましい。上記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物は、下層膜のベース樹脂として用いた場合に高い反射防止効果を実現する光学特性を有し、かつ高いエッチング耐性を有するためである。
【0094】
本発明の近赤外光吸収膜の形成方法について説明する。本発明の近赤外光吸収膜は、通常のフォトレジスト膜の形成法と同様にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法で基板上に形成することが可能である。近赤外光吸収膜形成材料を塗布した後、有機溶剤を蒸発させ、更に、直上に形成される膜とのミキシングを防止するためにベークをかけて架橋反応を促進することが好ましい。ベーク温度は100〜350℃の範囲内で、10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。なお、この反射防止膜の厚さは近赤外光吸収効果を高めるように適宜選定されるが、10〜200nmが好ましく、特に20〜150nmとすることが好ましい。
【0095】
本発明の積層膜を構成する珪素含有膜の形成方法としては、塗布とベークによる方法とCVDによる方法とが挙げられる。塗布法により膜を形成する場合にはシルセスキオキサン、籠状オリゴシルセスキオキサン等が、CVD法では各種シランガスが原料として挙げられる。珪素含有膜は光吸収を持った反射防止機能を有していてもよく、フェニル基等の吸光基を含有していたり、SiON膜であってもよい。珪素含有中間膜とレジスト膜の間に有機膜を形成してもよく、この場合の有機膜は有機反射防止膜であってもよい。なお、珪素含有膜の厚さは特に制限されないが、10〜100nmが好ましく、特に20〜80nmが好ましい。
【0096】
本発明の積層膜は、フォトレジスト材料を塗布し成膜することにより形成されるレジスト膜を有する。このレジスト膜を形成するためのフォトレジスト組成物としては、例えば、特開平9−73173号公報、特開2000−336121号公報等に示される公知の材料を使用することができる。
【0097】
本発明の積層膜を構成するレジスト膜は、フォトレジスト材料をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01〜2.0μmとなるように塗布し、ホットプレート上で好ましくは50〜150℃、1〜10分間、より好ましくは60〜140℃、1〜5分間プリベークして形成する。
【0098】
本発明の実施に用いるレジスト材料には、水を用いた液浸露光において、特にはレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤は高分子型の界面活性剤であり、水に溶解せずアルカリ現像液に溶解する性質を有し、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤としては、例えば、下記に示すものを挙げることができる。
【0099】
【化17】
(上記式中、LS01はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−LS07−C(=O)−O−を示し、LS07は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。RS01はそれぞれ同一でも異なってもよく水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。RS02はそれぞれ同一でも異なってもよく水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を示し、同一繰り返し単位内のRS02がそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。RS03はフッ素原子又は水素原子を示し、同一繰り返し単位内のLS02と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。LS02は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示し、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。RS04は1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、LS02とRS04が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合、該環は炭素数の総和が2〜12の三価の有機基を示す。LS03は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を示し、LS04は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CRS01S01−を示す。LS05は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、同一繰り返し単位内のRS02と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜10の非芳香環を形成してもよい。LS06はメチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示し、Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。(a−1)〜(a−3),b及びcは、0≦(a−1)<1、0≦(a−2)<1、0≦(a−3)<1、0<(a−1)+(a−2)+(a−3)<1、0≦b<1、0≦c<1であり、0<(a−1)+(a−2)+(a−3)+b+c≦1を満たす正数である。)
【0100】
高分子型の界面活性剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100部に対して好ましくは0.001〜20部、より好ましくは0.01〜10部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0101】
本発明の積層膜は、水を用いた液浸露光に適用するためのレジスト保護膜を有していてもよい。これにより、レジストからの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げることができる。保護膜のベース樹脂としては、水に溶解せず、アルカリ現像液に溶解する特性を有するものが好ましく、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物のように、β位が複数のフッ素原子で置換されたアルコール構造を有する高分子化合物がよい。このベース樹脂を炭素数4以上の高級アルコールや炭素数8〜12のエーテル化合物に溶解したものが保護膜形成材料として用いられる。保護膜の形成方法としては、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜形成材料をスピンコートし、プリベークによって形成する。保護膜の膜厚としては10〜200nmの範囲が好ましく用いられる。
【実施例】
【0102】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0103】
[高分子化合物1の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、11.26gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、8.74gのアセナフチレン、0.793gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液1を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液1を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA30.00gで希釈し、この溶液を撹拌した320gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物1)を18.16g得た。収率は91%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で12,300、分散度(Mw/Mn)は2.01であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/アセナフチレン由来の単位=51/49モル%であった。
【0104】
[高分子化合物2の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、9.25gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、10.75gのアセナフチレン、0.814gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液2を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液2を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA30.00gで希釈し、この溶液を撹拌した320gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物2)を17.42g得た。収率は87%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で10,800、分散度(Mw/Mn)は1.93であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/アセナフチレン由来の単位=41/59モル%であった。
【0105】
[高分子化合物3の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、7.12gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、12.88gのアセナフチレン、0.835gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液3を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液3を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA30.00gで希釈し、この溶液を撹拌した320gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物3)を16.87g得た。収率は84%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で10,100、分散度(Mw/Mn)は1.98であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/アセナフチレン由来の単位=31/69モル%であった。
【0106】
[高分子化合物4の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、11.92gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、5.55gのアセナフチレン、2.53gのスチレン、0.839gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液4を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液4を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した320gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物4)を17.13g得た。収率は86%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で12,100、分散度(Mw/Mn)は2.19であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/アセナフチレン由来の単位/スチレン由来の単位=48/31/21モル%であった。
【0107】
同様の重合反応により、比較例用の高分子化合物5〜7を合成した。
【0108】
[高分子化合物5の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、13.07gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、6.93gのスチレン、0.920gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液5を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液5を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した32gの水/288gのメタノールの混合溶剤に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物5)を18.07g得た。収率は90%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で14,300、分散度(Mw/Mn)は2.73であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/スチレン由来の単位=52/48モル%であった。
【0109】
[高分子化合物6の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、11.20gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、8.80gの2−ビニルナフタレン、0.788gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液6を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液6を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち2時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した32gの水/288gのメタノールの混合溶剤に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物6)を17.85g得た。収率は89%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で13,700、分散度(Mw/Mn)は1.78であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/2−ビニルナフタレン由来の単位=51/49モル%であった。
【0110】
[高分子化合物7の合成]
窒素雰囲気としたフラスコに、20.00gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、0.939gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、35.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液7を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに11.67gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液7を4時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち2時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA13.33gで希釈し、この溶液を撹拌した200gのn−ヘキサンに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのn−ヘキサンで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物7)を18.88g得た。収率は94%であった。得られた高分子化合物のGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で11,700、分散度(Mw/Mn)は2.49であった。
【0111】
[近赤外光吸収色素D1]
市販の3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを近赤外光吸収色素D1として用いた。構造を以下に示す。
【0112】
【化18】
【0113】
[近赤外光吸収色素D2の調製]
近赤外光吸収色素D2として、2−(2−{3−[2−(3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−クロロシクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−(3H)−インドール−1−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを下記方法によって調製した。
【0114】
【化19】
【0115】
2−(2−{3−[2−(3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−クロロシクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−(3H)−インドール−1−イウムブロミド1.81g(3ミリモル)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1.31g(4.5ミリモル)、水40g、メチルイソブチルケトン40gの混合溶液を室温で9時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.43g(1.5ミリモル)、水20gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで目的物である2−(2−{3−[2−(3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−クロロシクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−(3H)−インドール−1−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを得た[茶色結晶2.2g(収率93%)]。
【0116】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)を図3及び図4に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。また、アニオン/カチオン比を算出するために内部標準として1,2,4,5−テトラフルオロ−3,6−ジメチルベンゼンが使用され、1H−NMR及び19F−NMRにおいて観測された(アニオン/カチオン比=1.00/0.97)。
[赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1)]
3526、3413、2932、2883、1552、1500、1452、1434、1387、1362、1337、1308、1276、1252、1205、1132、1111、1088、1050、1029、1012、949、915、777、750、714、665、618cm-1
[飛行時間型質量分析(TOF−MS;MALDI)]
POSITIVE M+529(C3338ClN22相当)
NEGATIVE M-279(C26NO42相当)
【0117】
[近赤外光吸収色素D3の調製]
近赤外光吸収色素D3として、3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム パーフルオロブタンスルホネートを下記方法によって調製した。
【0118】
【化20】
【0119】
3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム p−トルエンスルホネート0.96g(1ミリモル)、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム0.51g(1.5ミリモル)、水20g、メチルイソブチルケトン20gの混合溶液を室温で6時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にパーフルオロブタンスルホン酸カリウム0.17g(0.5ミリモル)、水20gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで目的物である3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム パーフルオロブタンスルホネートを得た[茶色結晶1.1g(収率92%)]。
【0120】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)を図5及び図6に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。また、アニオン/カチオン比を算出するために内部標準として1,2,4,5−テトラフルオロ−3,6−ジメチルベンゼンが使用され、1H−NMR及び19F−NMRにおいて観測された(アニオン/カチオン比=1.00/0.98)。
[赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1)]
2958、2932、2870、1712、1541、1505、1440、1430、1409、1392、1359、1322、1272、1229、1187、1170、1140、1127、1109、1083、1053、1047、1014、959、927、902、892、867、834、818、805、786、754、724、682、652、634、624、602、584cm-1
[飛行時間型質量分析(TOF−MS;MALDI)]
POSITIVE M+759(C515522S相当)
NEGATIVE M-298(C493S相当)
【0121】
[近赤外光吸収色素D4の調製]
近赤外光吸収色素D4として、3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを下記方法によって調製した。
【0122】
【化21】
【0123】
3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム p−トルエンスルホネート2.87g(3ミリモル)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1.31g(4.5ミリモル)、水40g、メチルイソブチルケトン40gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.43g(1.5ミリモル)、水40gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで目的物である3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを得た[茶色結晶2.9g(収率87%)]。
【0124】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)を図7及び図8に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。また、アニオン/カチオン比を算出するために内部標準として1,2,4,5−テトラフルオロ−3,6−ジメチルベンゼンが使用され、1H−NMR及び19F−NMRにおいて観測された(アニオン/カチオン比=1.00/0.99)。
[赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)]
3432、2961、2933、2873、1624、1599、1584、1536、1503、1460、1441、1432、1416、1387、1352、1280、1228、1182、1166、1137、1102、1061、1013、958、922、897、864、832、808、786、748、725、680、651、616、588、569、553、534、525、511cm-1
[飛行時間型質量分析(TOF−MS;MALDI)]
POSITIVE M+759(C515522S相当)
NEGATIVE M-279(C264NS2相当)
【0125】
[近赤外光吸収色素D5の調製]
近赤外光吸収色素D5として、3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドを下記方法によって調製した。
【0126】
【化22】
【0127】
3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム p−トルエンスルホネート1.86g(2ミリモル)、56%トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸水溶液2.21g(3ミリモル)、25%水酸化ナトリウム水溶液0.48g、水30g、メチルイソブチルケトン30gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に56%トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸水溶液0.74g(1ミリモル)、水30gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで目的物である3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドを得た[茶色結晶2.2g(収率92%)]。
【0128】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)を図9及び図10に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測された。また、アニオン/カチオン比を算出するために内部標準として1,2,4,5−テトラフルオロ−3,6−ジメチルベンゼンが使用され、1H−NMR及び19F−NMRにおいて観測された(アニオン/カチオン比=1.00/0.99)。
[赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1)]
2962、2934、1538、1504、1463、1442、1433、1418、1377、1356、1325、1275、1234、1181、1140、1123、1084、1013、974、926、897、868、833、805、786、751、724、682、622、584cm-1
[飛行時間型質量分析(TOF−MS;MALDI)]
POSITIVE M+759(C515522S相当)
NEGATIVE M-410(C4963相当)
【0129】
[ArFエキシマレーザーの反射率の計算]
ArF用フォトレジスト膜/珪素含有膜/OPLからなる積層膜をシリコンウエハ上に形成した場合の、ArFエキシマレーザーの反射率を計算した。NA1.35の条件でArF用フォトレジスト膜の膜厚を160nm、屈折率nを1.67、消光係数kを0.04とし、珪素含有膜の屈折率nを1.64、消光係数kを0.15とし、高分子化合物1をベース樹脂としたOPL膜の膜厚を200nm、屈折率nに1.57、消光係数kに0.18を用いた場合における珪素含有膜の膜厚を変化させた時の反射率の変化を示すグラフを図1に示す。また、NA1.35の条件でArF用フォトレジスト膜の膜厚を160nm、屈折率nを1.67、消光係数kを0.04とし、珪素含有膜の屈折率nを1.64、消光係数kを0.15とし、高分子化合物5をベース樹脂としたOPL膜の膜厚を200nm、屈折率nに1.57、消光係数kに0.46を用いた場合、珪素含有膜の膜厚を変化させた時の反射率の変化を示すグラフを図2に示す。
【0130】
ここで用いたArFフォトレジスト膜の光学特性は、以下の高分子化合物を含むレジスト材料で形成されたレジスト膜の値である。
【化23】
【0131】
また、ここで用いた珪素含有膜の光学特性は、以下の高分子化合物を含む珪素含有膜形成材料から形成された珪素含有膜の値である。
【化24】
【0132】
[各高分子化合物の光学パラメーター測定]
上記高分子化合物1〜7、及び溶剤を、それぞれ表1に示す組成で混合し、組成物1〜7を得た。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、光学パラメーター測定用塗布液を調製した。調製した塗布液をSi基板上に塗布して、100℃で60秒間ベークして光学パラメーター測定用の塗布膜を形成した。塗布膜の形成後、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)を用いて波長193nmにおける屈折率(n)、消光係数(k)を測定した。その結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
[実施例1〜4、比較例1,2]
[近赤外光吸収膜の光学パラメーター測定]
上記高分子化合物1〜5、近赤外光吸収色素D1、下記AG1で示される酸発生剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を、表2に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、光学パラメーター測定用塗布液を調製した。調製した塗布液(実施例1〜4、比較例1,2)をSi基板上に塗布して、195℃で60秒間ベークして光学パラメーター測定用の塗布膜を形成した。塗布膜の形成後、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおける屈折率(n)、消光係数(k)、及び実施例1〜4、比較例1の波長400〜1,200nmの領域の最大吸収波長である920nmにおける消光係数(k)を測定した。その結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
表2中の各組成は次の通りである。
有機溶剤PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
近赤外光吸収色素D1:3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
酸発生剤AG1:トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート
【0137】
図11は、実施例2の波長400〜1,200nmにおける消光係数の測定結果を示すグラフであり、近赤外領域に所望の幅広い吸収を有する近赤外光吸収膜が形成されていることがわかった。また、比較例1の近赤外光吸収膜の193nmにおける屈折率及び消光係数はそれぞれ1.57及び0.46であり、上述の反射率計算結果から、実施例1の近赤外光吸収膜よりも反射防止効果に劣っていた(図1図2)。
【0138】
[実施例5〜7、比較例3,4]
[耐溶剤性評価]
上記高分子化合物1,5,6、近赤外光吸収色素D1,D2、下記AG1で示される酸発生剤、下記CR1で示される架橋剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を、表3に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、塗布液を調製した。調製した塗布液(実施例5〜7、比較例3,4)をSi基板上に塗布して、195℃で60秒間ベークして近赤外光吸収膜を形成した。これらの塗布膜上に、PGMEA及びPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)の混合溶剤(質量比30:70)をスピンコートした後、100℃で30秒間ベークし、処理前後の膜厚差を求めた。その結果を表3に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
表3中の各組成は次の通りである。
有機溶剤PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
近赤外光吸収色素D1:3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
近赤外光吸収色素D2:2−(2−{3−[2−(3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−クロロシクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−3,3−ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−(3H)−インドール−1−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
酸発生剤AG1:トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート
架橋剤CR1:テトラメトキシメチルグリコールウリル
【0141】
表3に示したように、本発明の近赤外光吸収膜形成材料を用いて形成される近赤外光吸収膜の溶剤処理による膜厚減少量は、比較例3,4で形成された近赤外光吸収膜の溶剤処理による膜厚減少量に比較して少なかった。高分子化合物1を用いることにより、高い溶剤耐性が実現された。また、架橋剤CR1が膜の溶剤耐性の向上に有効であった。
【0142】
[実施例8〜11、比較例5〜7]
[耐ドライエッチング性評価]
上記高分子化合物1〜5、高分子化合物7、近赤外光吸収色素D1、D3、下記AG1で示される酸発生剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を、表4に示す組成で混合した。次に、それらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、耐ドライエッチング性評価用塗布液を調製した。調製した塗布液(実施例8〜11、比較例5〜7)をSi基板上に塗布して実施例8〜11、比較例5では195℃で60秒間ベークし、比較例6,7では185℃で60秒間ベークしてそれぞれの塗布膜を形成した。
【0143】
これらの塗布膜を東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置TE−8500Pを用いてCHF3/CF4系ガスでエッチングし、エッチング前後の膜厚差を求めた。得られた結果を表4に示した。
【0144】
なお、エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 300mTorr
RFパワー 1,000W
ギャップ 9mm
CHF3ガス流量 50mL/min
CF4ガス流量 50mL/min
Heガス流量 200mL/min
2ガス流量 7mL/min
時間 60sec
【0145】
【表4】
【0146】
表4中の各組成は次の通りである。
有機溶剤PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
近赤外光吸収色素D1:3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
近赤外光吸収色素D3:3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3−イウム パーフルオロブタンスルホネート
酸発生剤AG1:トリエチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート
【0147】
表4に示したように、本発明の近赤外光吸収膜形成材料を用いて形成された近赤外光吸収膜は比較例5〜7で形成された近赤外光吸収膜と比較して高いエッチング耐性を有していた。
【0148】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11