(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768760
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 9/03 20060101AFI20150806BHJP
H01R 13/6473 20110101ALI20150806BHJP
【FI】
H01R9/03 Z
H01R13/6473
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-107003(P2012-107003)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-235703(P2013-235703A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小谷 一夫
(72)【発明者】
【氏名】千綿 直文
(72)【発明者】
【氏名】中谷 克俊
(72)【発明者】
【氏名】駒野 晴保
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−113925(JP,A)
【文献】
特許第3067680(JP,B2)
【文献】
特許第2599182(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/03
H01R 13/6473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1グランド端子と第1給電端子とを有する第1端子部と、
少なくとも、第2グランド端子と第2給電端子とを有する第2端子部と、を有し、
前記第1グランド端子と前記第2グランド端子、前記第1給電端子と前記第2給電端子をそれぞれ電気的に接続し、
前記第1グランド端子と前記第2グランド端子とを接続するグランド側接続部と、前記第1給電端子と前記第2給電端子とを接続する給電側接続部とを、当該両接続部間の静電容量を調整するための静電容量調整部材を介して対向配置した接続構造であって、
前記第1グランド端子、前記第1給電端子、前記第2グランド端子、および前記第2給電端子を前記静電容量調整部材に接触させた状態で、前記両接続部を前記静電容量調整部材に押しつけて固定する固定機構を備えた
ことを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記第1グランド端子、前記第1給電端子、前記第2グランド端子、および前記第2給電端子は、平板状に形成される
請求項1記載の接続構造。
【請求項3】
前記第2グランド端子の先端に、前記第1グランド端子の先端を収容するグランド側収容溝を設けると共に、
前記第2給電端子の先端に、前記第1給電端子の先端を収容する給電側収容溝を設けた
請求項2記載の接続構造。
【請求項4】
前記静電容量調整部材は、誘電体からなる
請求項1〜3いずれかに記載の接続構造。
【請求項5】
前記第1端子部は、前記第1グランド端子と前記第1給電端子間の距離を可変に構成され、
前記第2端子部は、前記第2グランド端子と前記第2給電端子間の距離を可変に構成される
請求項1〜4いずれかに記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用コネクタ等に用いられる接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高周波電流が流れるケーブルと回路基板等の機器とを接続する高周波用コネクタが開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2では、高周波用コネクタのコネクタ側の端子部を、回路基板等の機器側端子部に半田付けにより接続している。
【0004】
また、
図5(a),(b)に示すように、ケーブル51の端部、または複数のケーブル53の中心導体を撚り合わせた端部に圧着端子52を設け、その圧着端子52を、
図6(a),(b)に示すように、機器側に設けられた端子62にネジ63を用いてネジ止めした接続構造61も一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−117949号公報
【特許文献2】特開2009−16116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の接続構造や
図6の接続構造61では、端子同士の接続部において、インピーダンス不整合が生じてしまい、当該接続部において、伝送損失が増加してしまうという問題があった。この問題は、非接触用給電装置のように、必要な電流値が大きいほど、顕著な問題となる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、インピーダンス不整合を低減することが可能な接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、少なくとも、第1グランド端子と第1給電端子とを有する第1端子部と、少なくとも、第2グランド端子と第2給電端子とを有する第2端子部と、を有し、前記第1グランド端子と前記第2グランド端子、前記第1給電端子と前記第2給電端子をそれぞれ電気的に接続
し、前記第1グランド端子と前記第2グランド端子とを接続するグランド側接続部と、前記第1給電端子と前記第2給電端子とを接続する給電側接続部とを、当該両接続部間の静電容量を調整するための静電容量調整部材を介して対向配置した
接続構造であって、前記第1グランド端子、前記第1給電端子、前記第2グランド端子、および前記第2給電端子を前記静電容量調整部材に接触させた状態で、前記両接続部を前記静電容量調整部材に押しつけて固定する固定機構を備えた接続構造である。
【0010】
前記第1グランド端子、前記第1給電端子、前記第2グランド端子、および前記第2給電端子は、平板状に形成されてもよい。
【0011】
前記第2グランド端子の先端に、前記第1グランド端子の先端を収容するグランド側収容溝を設けると共に、前記第2給電端子の先端に、前記第1給電端子の先端を収容する給電側収容溝を設けてもよい。
【0012】
前記静電容量調整部材は、誘電体からなってもよい。
【0013】
前記第1端子部は、前記第1グランド端子と前記第1給電端子間の距離を可変に構成され、前記第2端子部は、前記第2グランド端子と前記第2給電端子間の距離を可変に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インピーダンス不整合を低減することが可能な接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る接続構造を示す図であり、(a)は平面図および断面図、(b)はその分解したときの平面図および断面図である。
【
図2】
図1の接続構造における第1端子部の平面図、断面図、および側面図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態に係る接続構造を示す図であり、(a)は平面図および断面図、(b)はその分解したときの平面図および断面図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態に係る接続構造を示す平面図および断面図である。
【
図5】(a),(b)は、従来の接続構造に用いる圧着端子を示す図である。
【
図6】従来の接続構造を示す図であり、(a)は平面図および断面図、(b)はその分解したときの平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る接続構造を示す図であり、(a)は平面図および断面図、(b)はその分解したときの平面図および断面図である。また、
図2は、その第1端子部の平面図、断面図、および側面図である。
【0018】
図1,2に示すように、本実施の形態に係る接続構造1は、少なくとも、第1グランド端子3と第1給電端子4とを有する第1端子部2と、少なくとも、第2グランド端子6と第2給電端子7とを有する第2端子部5と、を有し、第1グランド端子3と第2グランド端子6、第1給電端子4と第2給電端子7をそれぞれ電気的に接続するものである。
【0019】
ここでは、ケーブル8,9の端部に設けた圧着端子を第1グランド端子3と第1給電端子4とし、図示しない電気機器に設けられたバスバ端子を第2グランド端子6と第2給電端子7としているが、これに限定されるものではない。つまり、第1グランド端子3と第1給電端子4はバスバ端子であってもよいし、第2グランド端子6と第2給電端子7はケーブルの端部に設けた圧着端子であってもよい。各端子3,4,6,7としては、高周波電流を流すことを想定し、銅に金メッキを施したもの等を用いるとよい。また、同様の理由から、ケーブル8,9としては、各素線に絶縁被覆を施した撚線導体を中心導体11として用いた素線絶縁電線(リッツ線)等を用いるとよい。
【0020】
本実施の形態では、第1グランド端子3、第1給電端子4、第2グランド端子6、および第2給電端子7を、矩形の平板状に形成している。また、第1グランド端子3および第1給電端子4の基端部には加締め部10を形成し、その加締め部10にケーブル8,9の中心導体11の先端を加締めることにより、第1グランド端子3と第1給電端子4をケーブル8,9に固定している。第1グランド端子3に設けられる加締め部10は第1給電端子4と反対側に、第1給電端子4に設けられる加締め部10は第1グランド端子3と反対側に突出するように設けられており、第1グランド端子3と第1給電端子4は、互いに平面を対向させた状態で配置されている。
【0021】
本実施の形態に係る接続構造1では、第1グランド端子3と第2グランド端子6とを接続するグランド側接続部12と、第1給電端子4と第2給電端子7とを接続する給電側接続部13とを、当該両接続部12,13間の静電容量を調整するための静電容量調整部材14を介して対向配置している。
【0022】
本実施の形態では、静電容量調整部材14として、誘電体からなる直方体状のものを用いた。ただし、静電容量調整部材14の形状や材質はこれに限定されるものではなく、例えば、両接続部12,13間の距離を保つ機構のみを備えるもの(例えば枠体など)を用い、両接続部12,13間に空気層を形成するように構成することも可能である。
【0023】
図1では図示していないが、接続構造1は、両接続部12,13を静電容量調整部材14に押しつけて固定する固定機構をさらに備えている。固定機構は、両接続部12,13を静電容量調整部材14に押しつけて固定するものであれば、どのような構造のものを用いてもよい。本実施の形態では、バネ力により両接続部12,13を押さえつけるものを採用したが、これに限らず、例えばバンドで結束するような構造であってもよい。
【0024】
また、第2グランド端子6の先端には、第1グランド端子3の先端を収容するグランド側収容溝15が形成され、第2給電端子7の先端には、第1給電端子4の先端を収容する給電側収容溝16が形成される。
【0025】
本実施の形態では、グランド側収容溝15を第2グランド端子6の先端面の第2給電端子7側の端部(角部)に形成し、第2グランド端子6を断面視で左右反転したL字状に形成した。同様に、給電側収容溝16を第2グランド端子6の先端面の第2グランド端子6側の端部(角部)に形成し、第2給電端子7を断面視で左右反転したΓ字状に形成した。
【0026】
接続構造1を組み立てる際には、第1グランド端子3の先端を第2グランド端子6のグランド側収容溝15に収容してグランド側接続部12を形成すると共に、第1給電端子4の先端を第2給電端子7の給電側収容溝16に収容して給電側接続部13を形成し、両接続部12,13間に静電容量調整部材14を配置して、固定機構により両接続部12,13を静電容量調整部材14に押しつけて固定する。この際、
図1(a)の破線で囲んだ部分に示されるように、第1グランド端子3の先端面をグランド側収容溝15の底面に、第1給電端子4の先端面を給電側収容溝16の底面にしっかりと接触させた状態で、両接続部12,13を固定することが望ましい。
【0027】
ここで、接続部12,13におけるインピーダンスの調整方法について説明しておく。
【0028】
本実施の形態に係る接続構造1では、両接続部12,13間の静電容量を調整することにより、接続部12,13におけるインピーダンスを調整して、接続部12,13におけるインピーダンス不整合を低減させる。
【0029】
静電容量Cは、静電容量調整部材14(ここでは誘電体)の比誘電率をε、接続部12,13間の距離(第1グランド端子3と第1給電端子4間の距離、または第2グランド端子6と第2給電端子7間の距離)をL、両接続部12,13の対向部分の断面積をAとすると、下式(1)
C=ε・ε
0(A/L) ・・・(1)
但し、ε
0:真空の誘電率(8.85×10
-12F/m)
で表される。
【0030】
よって、静電容量調整部材14として用いる誘電体の比誘電率ε、接続部12,13間の距離L、両接続部12,13の対向部分の断面積Aのうち1つまたは複数を調整することにより、両接続部12,13間の静電容量Cを適切な値に調整することが可能になる。
【0031】
本実施の形態では、各端子3,4,6,7を保持する構造を別途備えない場合について説明したが、これに限らず、第1端子部2に第1グランド端子3と第1給電端子4を整列保持する機構を設けたり、第2端子部5に第2グランド端子6と第2給電端子7を整列保持する機構を設けてもよく、さらに両端子部2,5を覆うようにハウジング等を設けて、コネクタタイプとしてもよい。
【0032】
この場合、第1端子部2を、第1グランド端子3と第1給電端子4間の距離を可変に構成すると共に、第2端子部5を、第2グランド端子6と第2給電端子7間の距離を可変に構成することが望ましい。これにより、接続部12,13間に設ける静電容量調整部材14の材質や大きさ(つまり、上述の式(1)におけるεとL)を調整すれば、両接続部12,13間の静電容量Cを容易に変更することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係る接続構造1では、第1グランド端子3と第2グランド端子6とを接続するグランド側接続部12と、第1給電端子4と第2給電端子7とを接続する給電側接続部13とを、当該両接続部12,13間の静電容量Cを調整するための静電容量調整部材14を介して対向配置している。
【0034】
このように構成することで、静電容量調整部材14として用いる誘電体の比誘電率ε、接続部12,13間の距離L、両接続部12,13の対向部分の断面積Aのうち1つまたは複数を調整することにより、両接続部12,13間の静電容量Cを適切な値に調整し、接続部12,13におけるインピーダンス不整合を低減させることが可能になる。
【0035】
接続構造1は、接続部12,13での伝送損失を低減できるため、大電流を用いる非接触用給電装置等の高周波コネクタに用いる接続構造として好適である。
【0036】
また、接続構造1では、第1グランド端子3、第1給電端子4、第2グランド端子6、および第2給電端子7を平板状に形成しているため、静電容量Cの計算が容易となり、設計を容易とすることができる。なお、静電容量Cの計算は若干複雑になるが、各端子3,4,6,7を平板状でない形状、例えば断面形状が楕円形状となるように形成することも、当然に可能である。
【0037】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0038】
図3(a),(b)に示す接続構造31は、
図1の接続構造1において、グランド側収容溝15を第2グランド端子6の先端面の中央部に形成すると共に、給電側収容溝16を第2グランド端子6の先端面の中央部に形成し、第2グランド端子6と第2給電端子7を断面視で反時計周りに90度回転した凹字状に形成したものである。
【0039】
接続構造31では、第1グランド端子3と第2グランド端子6の間と、第1給電端子4と第2給電端子7の間に段差ができるので、静電容量調整部材14を断面視で反時計周りに90度回転したT字状に形成し、段差によってできた空間を埋めるようにしている。
【0040】
本実施の形態では、第1端子部2の端子3,4が接触する部分の静電容量調整部材14を、段差によってできた空間よりも若干低く形成し、第1端子部2の端子3,4にバネ力(押さえつける力)を作用させることで、両接続部12,13を静電容量調整部材14にしっかりと固定するようになっている。なお、第1端子部2の端子3,4が接触する部分の静電容量調整部材14を、段差によってできた空間よりも若干高く形成し、第2端子部5の端子6,7にバネ力(押さえつける力)を作用させることで、両接続部12,13を静電容量調整部材14に固定するよう構成することも可能である。
【0041】
また、
図4に示す接続構造41のように、静電容量調整部材14を直方体状のままとし、段差によってできた空間を埋めないように構成することも当然に可能である。ただし、接続構造41では、第1端子部2の端子3,4に強いバネ力(押さえつける力)を作用させると、端子3,4の先端部に変形が生じてしまうおそれがあるため、両グランド端子3,6、両給電端子4,7を接続した状態で保持する機構を別途設けることが望ましい。
【0042】
なお、
図3,4に示した接続構造31,41では、段差の前後で領域を分けて静電容量Cを計算する必要がある。
図3の接続構造31では、第1給電端子4と第1グランド端子3間に空気層が介在しないため、
図4の接続構造41よりも静電容量Cの計算が容易である。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 接続構造
2 第1端子部
3 第1グランド端子
4 第1給電端子
5 第2端子部
6 第2グランド端子
7 第2給電端子
8,9 ケーブル
10 加締め部
11 中心導体
12 グランド側接続部
13 給電側接続部
14 静電容量調整部材