特許第5768843号(P5768843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768843
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】調光フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20060101AFI20150806BHJP
   G02F 1/19 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   G02F1/167
   G02F1/19 501
【請求項の数】3
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-148287(P2013-148287)
(22)【出願日】2013年7月17日
(62)【分割の表示】特願2009-550554(P2009-550554)の分割
【原出願日】2009年1月22日
(65)【公開番号】特開2013-242586(P2013-242586A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2008-12932(P2008-12932)
(32)【優先日】2008年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】野村 理行
(72)【発明者】
【氏名】森下 芳伊
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−189123(JP,A)
【文献】 特開平02−081032(JP,A)
【文献】 特開2004−264693(JP,A)
【文献】 特開2002−040490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/167
G02F 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持された調光層を有し、前記調光層が、樹脂マトリックスと前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む調光フィルムであって、
前記透明導電性樹脂基材の少なくとも一方の前記調光層側にプライマー層を有し、該プライマー層が、アミノ基を有するシランカップリング剤含有溶液を用いて形成され、前記溶液中のアミノ基を有するシランカップリング剤の濃度が1〜15質量%であり、
前記樹脂マトリックスがシリコーン系樹脂の硬化物である調光フィルム。
【請求項2】
前記プライマー層の膜厚が1μm以下である請求項1記載の調光フィルム。
【請求項3】
前記アミノ基を有するシランカップリング剤が、下記式(3)又は下記式(4)で表される化合物である請求項1又は2記載の調光フィルム。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を示す。nは0〜2の整数である。)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を示す。nは0〜2の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光機能を有する調光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光調整懸濁液を含む調光硝子は、エドウィン・ランド(Edwin.Land)(米国特許第1,955,923号明細書、米国特許第1,963,496号明細書)により最初に発明されたもので、その形態は、狭い間隔を有する2枚の透明導電性基板の間に、液体状態の光調整懸濁液を注入した構造になっている。エドウィン・ランドの発明によると、2枚の透明導電性基板の間に注入されている液状の光調整懸濁液は、電界を印加していない状態では懸濁液中に分散されている光調整粒子のブラウン運動により、入射光の大部分が光調整粒子により反射、散乱又は吸収され、ごく一部分だけが透過することになる。
【0003】
即ち、光調整懸濁液に分散されている光調整粒子の形状、性質、濃度及び照射される光エネルギーの量により、透過、反射、散乱又は吸収の程度が決められる。前記の構造の調光硝子を用いた調光窓に電界を印加すると、透明導電性基板を通じて光調整懸濁液に電場が形成され、光調整機能を表す光調整粒子が分極を起こし、電場に対して平行に配列され、光調整粒子と光調整粒子の間を光が透過し、最終的に調光硝子は透明になる。
しかし、このような初期の調光装置は、実用上、光調整懸濁液内での光調整粒子の凝集、自重による沈降、熱による色相変化、光学密度の変化、紫外線照射による劣化、基板の間隔維持及びその間隔内への光調整懸濁液の注入が困難である等のために、実用化が難しかった。
【0004】
ロバート・エル・サックス(Robert.L.Saxe)の米国特許第3,756,700号、4,247,175号、4,273,422号、4,407,565号及び4,422,963号明細書、又はエフ・シー・ローウェル(F.C.Lowell)の米国特許第3,912,365号明細書、アール・アイ・トンプソン(R.I.Thompson)の米国特許第4,078,856号明細書には、調光窓の初期問題点、即ち、光調整粒子の凝集及び沈降、光学密度の変化等を補完した調光硝子を用いた調光窓を開示している。
【0005】
これらの特許等では、針状の光調整結晶粒子、結晶粒子分散用懸濁剤、分散調整剤及び安定剤等からなる液体状態の光調整懸濁液によって、光調整粒子と懸濁剤の密度を殆ど同様に合わせて光調整粒子の沈降を防止しながら、分散調整剤を添加して光調整粒子の分散性を高めることにより光調整粒子の凝集を防止し、初期の問題点を解決している。
しかし、これらの調光硝子もやはり従来の調光硝子のように、2枚の透明導電性基板の間隔内に液状の光調整懸濁液を封入した構造になっているため、大型製品製造の場合、2枚の透明導電性基板の間隔内への均一な懸濁液の封入が困難で、製品上下間の水圧差による下部の膨張現象が起こりやすい。また、外部環境、例えば、風圧によって基板の間隔が変化することにより、光学密度が変化して色相が不均質になりやすい。さらに、透明導電性基板の間に液体をためるための周辺の密封材が破壊され、光調整材料が漏れる等の問題がある。また、紫外線による劣化、透明導電性基板の周辺部と中央部間の電圧降下により、応答時間にむらが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを改善する方法として、液状の光調整懸濁液を硬化性の高分子樹脂の溶液と混合し、重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用してフィルムを製造する方法が提案されている。しかし、硬化してフィルムマトリックスとなる高分子樹脂は、透明導電性基板との密着性を考慮に入れた分子設計にはなっていないため、表面にITO等の導電性薄膜が成膜されたPETフィルム等の基板とフィルムマトリックスとの密着性は悪く、非常にはがれ易い問題がある。
【0007】
本発明は、フィルムマトリックスと基板との密着性を向上させ、安定した調光機能を発揮する調光フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、透明導電性樹脂基材の少なくとも一方の調光層側表面に、特定のプライマー層を設けることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持された調光層を有し、前記調光層が、樹脂マトリックスと前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む調光フィルムであって、前記透明導電性樹脂基材の少なくとも一方の前記調光層側にプライマー層を有し、プライマー層が、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルを用いて形成された調光フィルムに関する。
【0009】
前記分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルは、リン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルであることが好ましく、また、重合性基は(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。プライマー層は、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル含有溶液を用いて形成することが可能であり、前記溶液中の分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルの濃度が0.05〜20質量%であることが好ましい。
【0010】
前記プライマー層が、さらに、重合性モノマーあるいはオリゴマーを併用して形成されることが好ましい。また、前記重合性モノマーあるいはオリゴマーが、アクリレートからなることが好ましく、さらに前記重合性モノマーあるいはオリゴマーが、熱あるいは光により硬化されることがより好ましい。
【0011】
また、本発明は、2つの透明導電性樹脂基材と、前記2つの透明導電性樹脂基材に挟持された調光層を有し、前記調光層が、樹脂マトリックスと前記樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む調光フィルムであって、前記透明導電性樹脂基材の少なくとも一方の前記調光層側にプライマー層を有し、プライマー層が、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いて形成された調光フィルムに関する。
前記プライマー層は、アミノ基を有するシランカップリング剤含有溶液を用いて形成することが可能であり、前記溶液中のアミノ基を有するシランカップリング剤の濃度が1〜15質量%であることが好ましい。
上記の発明において、プライマー層の膜厚は好ましくは1μm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調光フィルムは、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が高く、安定した調光機能を発揮することができる。
【0013】
本発明の開示は、2008年1月23日に出願された特願2008−012932号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用によりここに援用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の調光フィルムの一態様の断面構造概略図である。
図2図1の調光フィルムの電界が印加されていない場合の作動を説明するための概略図である。
図3図1の調光フィルムの電界が印加されている場合の作動を説明するための概略図である。
図4】調光フィルムの端部の状態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の調光フィルムは、樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む調光層が、2つの透明導電性樹脂基材間に挟持された調光フィルムであり、透明導電性樹脂基材の少なくとも一方の調光層と接する面に、特定のプライマー層が設けられていることを特徴とする。
【0016】
調光層は、一般に、調光材料を用いて形成することが可能である。調光材料は、樹脂マトリックスとしての、エネルギー線を照射することにより硬化する高分子媒体と、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散した光調整懸濁液とを含有する。光調整懸濁液中の分散媒は、高分子媒体及びその硬化物と相分離しうるものであることが好ましい。該調光材料を用いて、両方の透明導電性樹脂基材の調光層と接する面にプライマー処理を施した2つの透明導電性樹脂基材間、あるいは一方の透明導電性樹脂基材のみ、調光層と接する面にプライマー処理を施した2つの透明導電性樹脂基材間等に、高分子媒体から形成された樹脂マトリックス中に光調整懸濁液が分散した調光層を挟持させることにより、本発明の調光フィルムが得られる。
すなわち、本発明の調光フィルムの調光層では、液状の光調整懸濁液が、高分子媒体が硬化した固体状の樹脂マトリックス内に微細な液滴の形態で分散されている。光調整懸濁液に含まれる光調整粒子は、棒状又は針状であることが好ましい。
【0017】
このような調光フィルムに電界を印加すると、樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴中に、浮遊分散されている電気的双極子モーメントをもつ光調整粒子が、電界に対し平行に配列されることにより、液滴が入射光に対して透明な状態に転換され、視野角度による散乱、又は透明性低下が殆どない状態で入射光を透過させる。本発明においては、特定のプライマー層上に調光層を設けてフィルム化することによって、従来の調光フィルムの問題点、即ち、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が弱く、製造過程あるいはフィルム製造後の加工過程等で調光層が透明導電性樹脂基材から剥がれるといった問題が解決される。
【0018】
以下、各層構成及び調光フィルムについて説明する。
<プライマー層>
まず、プライマー層について説明する。
(1)分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル
本発明において、プライマー層を形成するための材料の一つとして、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルが挙げられる。より好ましくは分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルが挙げられる。分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルは、通常、エステル部分に重合性基を有し、好ましくは1つのエステル部分に1つの重合性基を有する。分子内の重合性基の個数は1個又は2個であることが好ましい。また、リン酸エステルは、好ましくは、分子内に(ポリ)エチレンオキサイド、(ポリ)プロピレンオキサイド等の(ポリ)アルキレンオキサイド構造を有する。
【0019】
重合性基としては、熱、エネルギー線の照射等により重合する基が好ましく、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基がある。
より具体的には、プライマー層を形成するための材料は、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルであることが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルの例としては、(式1)または(式2)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示し、mは1以上の整数であり、nは1または2である。Xは、それぞれ独立に
【0022】
【化2】
から選択される。)
【0023】
mは好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6である。
なお、上記式1におけるRの炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基としては、具体的に下記のものが挙げられる。炭素数1〜4の直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。炭素数1〜4の分岐アルキレン基としては、i−プロピレン基等が挙げられる。
【0024】
【化3】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示し、l及びmはそれぞれ独立に1以上の整数であり、nは1または2である。Xは、それぞれ独立に
【0025】
【化4】
から選択される。)
【0026】
lは好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。mは好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。
上記式2におけるR及びRにおける炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基としては、具体的に下記のものが挙げられる。炭素数1〜4の直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。炭素数1〜4の分岐アルキレン基としては、i−プロピレン基等が挙げられる。
【0027】
入手可能なリン酸モノエステルとしては、ユニケミカル(株)製のホスマーPP、ホスマーPE、ホスマーM、共栄社化学(株)製のP−1M等が挙げられる。これらは下記構造式で示すことができる。なお、共栄社化学(株)製のP−1Mの構造は、ホスマーMと同じである。
【0028】
【化5】
【0029】
入手可能なリン酸ジエステルとしては、日本化薬(株)製のPM−21、共栄社化学(株)製のP−2M等が挙げられる。これらは下記構造式で示すことができる。
【0030】
【化6】
【0031】
分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルと一緒に、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーを用いることも好ましい。
重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートが挙げられる。
なお、上記の重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーは、熱あるいは光により硬化することが好ましい。それにより、リン酸エステル由来の強いタックを低減させることができる。
なお、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルは、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーが硬化する際に、硬化する必要はない。
【0032】
入手可能な重合性モノマーあるいは重合オリゴマーとしては、三洋化成工業(株)製のUV硬化型ハードコート剤(商品名:サンラッドRC−610R)等が挙げられる。なお、サンラッドRC−610Rは、下記式で示される化合物の混合物である。
【0033】
【化7】
【0034】
上記以外で入手可能なものとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート(商品名:ライトエステルTMP、共栄社化学(株)製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:ライトエステルTMP−A、共栄社化学(株))、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート(商品名:アロニックスM−408、東亞合成(株)製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名:アロニックスM−450、東亞合成(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:アロニックスM−405、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0035】
(2)アミノ基を有するシランカップリング剤
また、本発明において、プライマー層を形成するための別の材料として、アミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0036】
アミノ基を有するシランカップリング剤の例としては、(式3)または(式4)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化8】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を示す。nは0〜2の整数である。)
【0038】
上記式3におけるR及びRの炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基としては、具体的に下記のものが挙げられる。炭素数1〜4の直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。炭素数1〜4の分岐アルキレン基としては、i−プロピレン基等が挙げられる。
上記式3におけるRの炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキル基としては、具体的に下記のものが挙げられる。炭素数1〜4の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。炭素数1〜4の分岐アルキル基としては、i−プロピル基等が挙げられる。
【0039】
【化9】
(式中、Rは炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を示す。nは0〜2の整数である。)
【0040】
上記式4におけるRの炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキレン基としては、具体的に下記のものが挙げられる。炭素数1〜4の直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。炭素数1〜4の分岐アルキレン基としては、i−プロピレン基等が挙げられる。
上記式4におけるRの炭素数1〜4個の直鎖もしくは分岐アルキル基としては、具体的に下記のものが挙げられる。炭素数1〜4の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。炭素数1〜4の分岐アルキル基としては、i−プロピル基等が挙げられる。
【0041】
(式3)または(式4)で表される、入手可能なアミノ基含有シランカップリング剤としては、信越シリコーン(株)製のKBM−602、603、903、KBE−903等が挙げられる。また、それ以外のアミノ基含有シランカップリング剤としては、KBM−573等が挙げられる。構造は下記に示すとおりである。
【0042】
【化10】
【0043】
本発明において、プライマー層の膜厚は紫外・可視光線の反射率分光法、X線反射率測定、エリプソメトリー等によって測定可能である。プライマー層の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、さらに1nm〜1μmの膜厚であることがより好ましい。好ましくは1nm〜800nm、さらに好ましくは1nm〜500nm、また、より好ましくは1nm〜100nmである。
膜厚が1nm未満であると充分な接着強度を発現できない傾向がある。一方、膜厚が1μmを超えるとプライマー層に膜厚ムラが生じたり、タックが強くなるため調光フィルム製造時のハンドリング性が悪化したりする傾向がある。
【0044】
本発明において、プライマー層の形成には、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステル含有溶液を用いることができる。プライマー層を形成する際の溶液中の前記リン酸エステルの濃度は0.05〜20質量%であることが好ましく、さらに0.1〜15質量%であることが好ましく、また、0.3〜10質量%であることがより好ましい。
濃度が0.05質量%未満であると充分な接着強度を発現できない傾向がある。一方、濃度が20質量%を超えるとプライマー層に膜厚ムラが生じたり、タックが強くなるため調光フィルム製造時のハンドリング性が悪化したりする傾向がある。
【0045】
プライマー層の形成に、分子内に1つ以上の重合性基を有するリン酸エステルと共に、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーを用いる場合には、プライマー層を形成する際の溶液中の重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーの濃度は、リン酸エステル由来のタック性を軽減する効果の点から、プライマー層の材料全体に対して80〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは、90〜95質量%である。
【0046】
また、本発明において、プライマー層の形成には、アミノ基を有するシランカップリング剤含有溶液を用いることができる。プライマー層を形成する際の溶液中のアミノ基を有するシランカップリング剤の濃度は1〜15質量%であることが好ましく、さらに2〜10質量%であることが好ましく、また、3〜5質量%であることがより好ましい。
濃度が1質量%未満であると充分な接着強度を発現できない傾向がある。一方、濃度が15質量%を超えるとプライマー層に膜厚ムラが生じたり、タックが強くなるため調光フィルム製造時のハンドリング性が悪化したりする傾向がある。さらに、濃度が15質量%を超えると接着強度が減少する傾向がある。
【0047】
<調光層>
次に、調光層について説明する。
本発明における調光層は、樹脂マトリックスと該樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とを含む調光材料からなる。なお、樹脂マトリックスは、高分子媒体からなり、光調整懸濁液は、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散したものである。
高分子媒体及び分散媒(光調整懸濁液中の分散媒)としては、高分子媒体及びその硬化物と分散媒とが、少なくともフィルム化したときに互いに相分離しうるものを用いる。互いに非相溶又は部分相溶性の高分子媒体と分散媒とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
本発明において用いられる高分子媒体は、(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂及び(B)光重合開始剤を含み、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものが挙げられる。(A)エチレン性不飽和結合を有する樹脂としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が合成容易性、調光性能、耐久性等の点から好ましい。これらの樹脂は、置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を有することが、調光性能、耐久性等の点から好ましい。
【0049】
前記シリコーン系樹脂の具体例としては、例えば、特公昭53−36515号公報、特公昭57−52371号公報、特公昭58−53656号公報、特公昭61−17863号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
【0050】
前記シリコーン系樹脂は、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物等を、2−エチルヘキサン錫等の有機錫系触媒の存在下で、脱水素縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。シリコーン系樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましく用いられる。すなわち、シリコーン系樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。
【0051】
なお、シリコーン系樹脂の製造時の各種原料の仕込み配合において、(3−アクリロキシプロピル)メトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物の量は、原料シロキサン及びシラン化合物総量の19〜50質量%とすることが好ましく、25〜40質量%とすることがより好ましい。エチレン性不飽和結合含有シラン化合物の量は、19質量%未満であると最終的に得られる樹脂のエチレン性不飽和結合濃度が所望の濃度より低くなりすぎる傾向があり、50質量%を超えると得られる樹脂のエチレン性不飽和結合濃度が所望の濃度より高くなりすぎる傾向がある。
【0052】
前記アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン等の主鎖形成モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和結合導入用官能基含有モノマー等を共重合して、プレポリマーを一旦合成し、次いで、このプレポリマーの官能基と反応させるべく(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等のモノマーを前記プレポリマーに付加反応させることにより得ることができる。
【0053】
また、前記ポリエステル樹脂は、特に制限はなく、公知の方法で容易に製造できるものが挙げられる。
これら(A)エチレン性不飽和結合を有する樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって得られるポリスチレン換算の重量平均分子量は、20,000〜100,000であることが好ましく、30,000〜80,000であることがより好ましい。
【0054】
(A)エチレン性不飽和結合を有する樹脂のエチレン性不飽和結合濃度は、好ましくは0.3モル/kg〜0.5モル/kgとされる。この濃度が0.3モル/kg未満では、調光フィルム端部の処理が容易に行えず、相対する透明電極間がショートしやすく電気的信頼性が劣る傾向がある。一方この濃度が0.5モル/kgを超えると硬化した高分子媒体が、光調整懸濁液の液滴を構成する分散媒に溶け込みやすくなり、溶け込んだ高分子媒体が液滴中の光調整粒子の動きを阻害し調光性能が低下する傾向がある。
【0055】
エチレン性不飽和結合を有する樹脂のエチレン性不飽和結合濃度は、NMRの水素の積分強度比から求められる。また、仕込み原料の樹脂への転化率がわかる場合は計算によっても求められる。
【0056】
光重合開始剤としては、J.Photochem.Sci.Technol.,2,283(1977)に記載される化合物、具体的には2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン等を使用することができる。
【0057】
(B)光重合開始剤の使用量は、上記の(A)樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
【0058】
また、上記の(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ樹脂の他に、有機溶剤可溶型樹脂又は熱可塑性樹脂、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜100,000のポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等も高分子媒体の構成材料として併用することができる。
【0059】
また、高分子媒体中には、ジブチル錫ジラウレート等の着色防止剤等の添加物を必要に応じて添加してもよい。さらに、高分子媒体には、溶剤が含まれていてもよく、溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。
【0060】
光調整懸濁液中の分散媒としては、光調整懸濁液中で分散媒の役割を果たし、また光調整粒子に選択的に付着被覆し、高分子媒体との相分離の際に光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用し、電気導電性がなく、高分子媒体とは親和性がない液状共重合体を使用することが好ましい。
【0061】
例えば、フルオロ基及び/又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような液状共重合体を使用すると、フルオロ基、水酸基のどちらか1つのモノマー単位は光調整粒子に向き、残りのモノマー単位は高分子媒体中で光調整懸濁液が液滴として安定に維持するために働くことから、光調整懸濁液内に光調整粒子が非常に均質に分散され、相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に誘導される。
【0062】
このようなフルオロ基及び/又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、フルオロ基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを用いて共重合させたものが挙げられ、具体的には、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシプロピル/フマール酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、フルオロ基及び水酸基の両方を有することがより好ましい。
【0063】
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。
【0064】
これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となるフルオロ基含有モノマーの使用量は、原料であるモノマー総量の6〜12モル%であることが好ましく、より効果的には7〜8モル%である。フルオロ基含有モノマーの使用量が12モル%を超える場合には、屈折率が大きくなり、光透過率が低下する傾向がある。また、これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの原料となる、水酸基含有モノマーの使用量は0.5〜22.0モル%であることが好ましく、より効果的には1〜8モル%である。水酸基含有モノマーの使用量が22.0モル%を超える場合には、屈折率が大きくなり、光透過性が低下する傾向がある。
【0065】
本発明に使用される光調整懸濁液は、分散媒中に光調整粒子が流動可能に分散したものである。光調整粒子としては、例えば、高分子媒体、又は高分子媒体中の樹脂成分、即ち上記の(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ樹脂等と親和力がなく、また光調整粒子の分散性を高めることができる高分子分散剤の存在下で、光調整粒子の前駆体であるピラジン−2,3−ジカルボン酸・2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸・2水和物、ピリジン−2,5−ジカルボン酸・1水和物からなる群の中から選ばれた1つの物質とヨウ素及びヨウ化物を反応させて作ったポリヨウ化物の針状小結晶が、好ましく用いられる。使用しうる高分子分散剤としては、例えば、ニトロセルロース等が挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。このようにして得られるポリヨウ化物としては、例えば、下記一般式
CaI(C)・XHO (X:1〜2)
CaI(C・cHO (a:3〜7、b:1〜2、c:1〜3)
で表されるものが挙げられる。これらのポリヨウ化物は針状結晶であることが好ましい。
【0066】
また、調光フィルム用光調整懸濁液に用いる光調整粒子として米国特許第2,041,138号明細書(E.H.Land)、米国特許第2,306,108号明細書(Landら)、米国特許第2,375,963号明細書(Thomas)、米国特許第4,270,841号明細書(R.L.Saxe)及び英国特許第433,455号明細書に開示されている光調整粒子も、使用することができる。これらの特許によって公知とされたポリヨウ化物の結晶は、ピラジンカルボン酸、又はピリジンカルボン酸の1つを選択して、ヨウ素、塩素又は臭素と反応させることにより、ポリヨウ化物、ポリ塩化物又はポリ臭化物等のポリハロゲン化物とすることによって作製されている。これらのポリハロゲン化物は、ハロゲン原子が無機質又は有機質と反応した錯化合物で、これらの詳しい製法は、例えば、サックスの米国特許第4,422,963号明細書に開示されている。
【0067】
サックスが開示しているように、光調整粒子を合成する過程において、均一な大きさの光調整粒子を形成させるため、及び、特定の懸濁媒体内での光調整粒子の分散性を向上させるため、上述したように高分子分散剤としてニトロセルロースのような高分子物質を使用することが好ましい。しかしながら、ニトロセルロースを用いると、ニトロセルロースで被覆された結晶が得られ、このような結晶を光調整粒子として用いる場合、光調整粒子は相分離の時に分離される液滴内に浮遊せず、樹脂マトリックス内に残存することがある。これを防ぐためには、高分子媒体の(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基を持つ樹脂として、エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつシリコーン樹脂を用いることが好ましく、シリコーン系樹脂を用いた場合には、フィルム製造の際に光調整粒子が相分離により形成された微細な液滴内へ容易に分散、浮遊し、その結果、より優れた可変能力を得ることができる。
【0068】
上記の光調整粒子の他、例えば、炭素繊維等の無機繊維、τ型無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン等のフタロシアニン化合物等を使用することもできる。フタロシアニン化合物において、中心金属としては、銅、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、チタン、ベリリウム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、クロム等が挙げられる。
【0069】
本発明において、光調整粒子の大きさは1μm以下であることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.1〜0.5μmであることがさらに好ましい。光調整粒子の大きさが1μmを超える場合には、光散乱が生じたり、電界が印加された場合に光調整懸濁液中での配向運動が低下する等、透明性が低下する問題が発生することがある。なお、光調整粒子の大きさは、サブミクロン粒子アナライザ(例えば、N4MD(ベックマン・コールタ社製)で測定した光子相関分光分析法による体積平均粒径の値とする。
【0070】
本発明に使用される光調整懸濁液は、光調整粒子1〜70質量%及び分散媒30〜99質量%からなることが好ましく、光調整粒子4〜50質量%及び分散媒50〜96質量%からなることがより好ましい。本発明における高分子媒体の屈折率と分散媒の屈折率は近似していることが好ましい。具体的には、本発明における高分子媒体と分散媒との屈折率の差は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下である。調光材料は、高分子媒体100質量部に対して、光調整懸濁液を通常1〜100質量部、好ましくは6〜70質量部、より好ましくは6〜60質量部含有する。
【0071】
<透明導電性樹脂基材>
本発明による調光材料を利用して調光フィルムを製造するときに使用される透明導電性樹脂基材としては、一般的に、透明樹脂基材に、光透過率が80%以上の透明導電膜(ITO、SnO、In、有機導電膜等の膜)がコーティングされている表面抵抗値が3〜3000Ωの透明導電性樹脂基材を使用することができる。なお、透明樹脂基材の光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。また、透明樹脂基材としては、例えば、高分子フィルム等を使用することができる。
【0072】
上記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
【0073】
透明樹脂基材にコーティングされる透明導電膜の厚みは、10〜5,000nmであることが好ましく、透明樹脂基材の厚みは特に制限はない。例えば、高分子フィルムの場合には10〜200μmが好ましい。基材の間隔が狭く、異物質の混入等により発生する段落現象を防止するために、透明導電膜の上に数nm〜1μm程度の厚さの透明絶縁層が形成されている透明樹脂導電性基材を使用してもよい。また、本発明の調光フィルムを反射型の調光窓に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー等)は、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
【0074】
<調光フィルム>
本発明の調光フィルムは、調光材料を用いて形成することが可能であり、調光材料は、高分子媒体から形成された樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散した光調整懸濁液とからなり、調光層を形成する。調光層は、調光層との密着性を向上させるためのプライマー層を有する2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されているか、あるいはプライマー層を有する透明導電性樹脂基材とプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材の2枚の透明導電性樹脂基材に挟持されている。
【0075】
調光フィルムを得るためには、まず、液状の光調整懸濁液を、高分子媒体と均質に混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液からなる調光材料を得る。
具体的には、以下の通りである。光調整粒子を溶媒に分散した液と光調整懸濁液の分散媒を混合し、ロータリーエバポレーター等で溶媒を留去し、光調整懸濁液を作製する。
次いで、光調整懸濁液及び高分子媒体を混合し、光調整懸濁液が高分子媒体中に液滴状態で分散した混合液(調光材料)とする。
【0076】
この調光材料を、プライマー層を有する透明導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥除去した後、高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射し高分子媒体を硬化させる。その結果、硬化高分子媒体からなる樹脂マトリックス中に、光調整懸濁液が液滴状に分散されている調光層ができ上がる。高分子媒体と光調整懸濁液との混合比率を様々に変えることにより、調光層の光透過率を調節することができる。このようにして形成された調光層の上にもう一方のプライマー層を有する透明導電性樹脂基材を密着させることにより、調光フィルムが得られる。あるいは、この調光材料を、プライマー層を有する透明導電性樹脂基材上に一定な厚さで塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥除去した後、もう一方のプライマー層を有する透明導電性樹脂基材でラミネートした後に紫外線を照射し、高分子媒体を硬化させてもよい。プライマー層を有する透明導電性樹脂基材は、一方の透明導電性樹脂基材のみでもよい。2枚の透明導電性樹脂基材の両方の上に調光層を形成し、それを調光層同士が密着するようにして積層してもよい。調光層の厚みは、5〜1,000μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0077】
樹脂マトリックス中に分散されている光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、通常0.5〜100μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜5μmである。液滴の大きさは、光調整懸濁液を構成している各成分の濃度、光調整懸濁液及び高分子媒体の粘度、光調整懸濁液中の分散媒の高分子媒体に対する相溶性等により決められる。平均液滴径は、例えば、SEMを用いて、調光フィルムの一方の面方向から写真等の画像を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出することができる。また、調光フィルムの光学顕微鏡での視野画像をデジタルデータとしてコンピュータに取り込み、画像処理インテグレーションソフトウェアを使用し算出することも可能である。
【0078】
本発明における透明導電性樹脂基材のプライマー処理(プライマー層の形成)は、例えば、プライマー層を形成する材料を、バーコーター法、マイヤーバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等等を単独または組み合わせて用いて、透明導電性樹脂基材に塗布することにより行うことができる。なお、塗布する際は必要に応じて適当な溶剤で希釈し、プライマー層を形成する材料の溶液を用いてもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後乾燥を要する。尚、プライマー層となる塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0079】
プライマー層形成に用いる溶剤としては、プライマー層を形成する材料を溶解し、プライマー層形成後に乾燥等により除去できるものであればよく、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。また、これらの混合溶媒でもよい。
【0080】
調光層となる調光材料の塗布には、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工手段を用いることができる。調光材料を、透明導電性樹脂基材上に設けたプライマー層面に塗布し、あるいは、一方にプライマー層を有さない透明導電性樹脂基材を用いる場合には、透明導電性樹脂基材に直接塗布することもできる。なお、塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、透明導電性樹脂基材上に塗布した後に乾燥を要する。
【0081】
調光材料の塗布に用いる溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル等を用いることができる。また、これらの混合溶媒でもよい。
液状の光調整懸濁液が、固体樹脂マトリックス中に微細な液滴形態で分散されているフィルムを形成するためには、調光材料をホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等で混合して高分子媒体中に光調整懸濁液を微細に分散させる方法、高分子媒体中の樹脂成分の重合による相分離法、溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用することができる。
【0082】
上記の方法によれば、電場の形成により任意に光透過率が調節できる調光フィルムが提供される。この調光フィルムは、電場が形成されていない場合にも、光の散乱のない鮮明な着色状態を維持し、電場が形成されると透明な状態に転換される。この能力は、20万回以上の可逆的反復特性を示す。透明な状態においての光透過率増進と、着色された状態における鮮明度の増進のためには、液状の光調整懸濁液の屈折率と、樹脂マトリックスの屈折率を一致させることが好ましい。
調光フィルムを作動させるための使用電源は交流で、10〜100ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。本発明の調光フィルムは、電界に対する応答時間を、消色時には1〜50秒以内、着色時には1〜100秒以内とすることができる。また、紫外線耐久性は、750W紫外線等を利用した紫外線照射試験の結果、250時間が経過した後にも安定な可変特性を示し、−50℃〜90℃で長時間放置した場合にも、初期の可変特性を維持することが可能である。
【0083】
従来技術である液晶を使用した調光フィルムの製造における水を用いたエマルジョンによる方法を使用すると、液晶が水分と反応して光調整特性を失うことが多く、同一の特性のフィルムを製造しにくいという問題がある。
本発明においては、液晶ではなく、光調整粒子が光調整懸濁液内に分散されている液状の光調整懸濁液を使用するため、液晶を利用した調光フィルムとは異なり、電界が印加されていない場合にも光が散乱せず、鮮明度が優れて視野角の制限のない着色状態を表す。そして、光調整粒子の含量、液滴形態や膜厚を調節したり、又は電界強度を調節したりすることにより、光可変度を任意に調節できる。
また、本発明の調光フィルムは、液晶を用いないことから、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の透明導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。
【0084】
本発明による調光フィルムに電界が印加されていないときには、光調整懸濁液内の光調整粒子のブラウン運動のため、光調整粒子の光吸収、2色性効果による鮮明な着色状態を示す。しかし、電界が印加されると、液滴又は液滴連結体の中の光調整粒子が電場に平行に配列され、透明な状態に転換される。また、フィルム状態であるがため、液状の光調整懸濁液をそのまま使用する従来技術による調光硝子の問題点、即ち、2枚の透明導電性樹脂基材の間への液状の懸濁液の注入の困難性、製品の上下間の水圧差による下部の膨張現象、風圧等の外部環境による基材間隔の変化による局部的な色相変化、透明導電性基材の間の密封材の破壊による調光材料の漏洩が解決される。
【0085】
また、紫外線露光による色調変化及び可変能力の低下、大型製品特有の透明導電性樹脂基材の周辺部と中央部間に生ずる電圧降下に伴う応答時間差も解消される。また、液晶を利用した従来技術による調光窓の場合には、液晶が紫外線に容易に劣化し、またネマチック液晶の熱的特性によりその使用温度の範囲も狭い。更に、光学特性面においても、電界が印加されていない場合には光散乱による乳白色の半透明な状態を示し、電界が印加される場合にも、完全には鮮明化せず、乳濁状態が残存する問題点がある。従って、このような調光窓では、既存の液晶表示素子で動作原理として利用されている光の遮断及び透過による表示機能が不可能である。しかし、本発明による調光フィルムを使用すれば、このような問題点が解決できる。
【0086】
本発明の調光フィルムは、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が強く、製造過程あるいはフィルム製造後の加工過程等で調光層が透明導電性樹脂基材から剥がれるといった問題が生じることのない優れた調光フィルムである。
【0087】
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓硝子/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子、自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
適用法としては、本発明の調光フィルムを直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、例えば、ガラスや、上記透明樹脂基材と同様の高分子フィルム等を使用することができる。
【0088】
本発明による調光フィルムの構造及び動作を図面により更に詳しく説明すると、下記の通りである。
【0089】
図1は、本発明の一態様の調光フィルムの構造概略図である。調光層1が、透明導電膜5aがコーティングされている2枚の透明樹脂基材5bからなる透明導電性樹脂基材4の間に挟まれている。調光層1と透明導電性樹脂基材4の間にはプライマー層6が設けられている。スイッチ8の切り換えにより、電源7と2枚の透明導電膜5の接続、非接続を行う。調光層1は、高分子媒体としての前記(A)エチレン性不飽和結合を有する置換基をもつ樹脂を紫外線硬化させたフィルム状の樹脂マトリックス2と、樹脂マトリックス2内に液滴3の形態で分散されている液状の光調整懸濁液からなる。
【0090】
図2は、図1に示した調光フィルムの作動を説明するための図面で、スイッチ8が切られ、電界が印加されていない場合を示す。この場合には、液状の光調整懸濁液の液滴3を構成している分散媒9の中に分散している光調整粒子10のブラウン運動により、入射光11は光調整粒子10に吸収、散乱又は反射され、透過できない。
しかし、図3に示すように、スイッチ8を接続して電界を印加すると、光調整粒子10が印加された電界によって形成される電場と平行に配列するため、入射光11は配列した光調整粒子10間を通過するようになる。このようにして、散乱及び透明性の低下のない光透過機能が付与される。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(光調整粒子の製造例)
光調整粒子を製造するために、撹拌機及び冷却管を装着した500mlの四つ口フラスコに、ニトロセルロース1/4LIG(商品名、ベルジュラックNC社製)15質量%の酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業(株)製)希釈溶液87.54g、酢酸イソアミル44.96g、脱水CaI(化学用、和光純薬工業(株)製)4.5g、無水エタノール(有機合成用、和光純薬工業(株)製)2.0g、精製水(精製水、和光純薬工業(株)製)0.6gの溶液に、ヨウ素(JIS試薬特級、和光純薬工業(株)製)4.5gを溶解し、光調整粒子の基盤形成物質であるピラジン−2,5−ジカルボン酸2水和物(PolyCarbon Industries製)3gを添加した。45℃で3時間撹拌して反応を終了させた後、超音波分散機で2時間分散させた。このとき、混合液の色相は、茶色から暗紺色に変化した。
【0093】
次に、反応溶液から一定な大きさの光調整粒子を取り出すために、遠心分離機を用いて光調整粒子を分離した。反応溶液を750Gの速度で10分間遠心分離して沈殿物を取り除き、更に7390Gで2時間遠心分離して、浮遊物を取り除き、沈殿物粒子を回収した。この沈殿物粒子は、サブミクロン粒子アナライザ(N4MD、ベックマン・コールタ社製)で測定した平均粒径が0.36μmを有する針状結晶であった。この沈殿物粒子を光調整粒子とした。
【0094】
(光調整懸濁液の製造例)
前記の(光調整粒子の製造例)で得た光調整粒子45.5gを、光調整懸濁液の分散媒としてのアクリル酸ブチル(和光特級、和光純薬工業(株)製)/メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(工業用、共栄社化学(株)製)/アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光1級、和光純薬工業(株)製)共重合体(モノマーモル比:18/1.5/0.5、重量平均分子量:2,000、屈折率1.4719)50gに加え、撹拌機により30分間混合した。次いで酢酸イソアミルをロータリーエバポレーターを用いて133Paの真空で80℃、3時間減圧除去し、光調整粒子の沈降及び凝集現象のない安定な液状の光調整懸濁液を製造した。
【0095】
(エネルギー線硬化型シリコーン系樹脂の製造例)
ディーンスタークトラップ、冷却管、撹拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、両末端シラノールポリジメチルシロキサン(試薬、チッソ(株)製)17.8g、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン(試薬、チッソ(株)製)62.2g、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン(試薬、チッソ(株)製)20g、2−エチルヘキサン錫(和光純薬工業(株)製)0.1gを仕込み、ヘプタン中で100℃で3時間リフラックスし、反応を行った。
【0096】
次いで、トリメチルエトキシシラン(試薬、チッソ(株)製)25gを添加し、2時間リフラックスし、脱アルコール反応させ、ヘプタンをロータリーエバポレーターを用いて100Paの真空で80℃、4時間減圧除去し、重量平均分子量35000、屈折率1.4745のエネルギー線硬化型シリコーン系樹脂を得た。NMRの水素積分比からこの樹脂のエチレン性不飽和結合濃度は、0.31モル/kgであった。なお、エチレン性不飽和結合濃度は下記の方法により測定した。
【0097】
[エチレン性不飽和結合濃度の測定方法]
エチレン性不飽和結合濃度(モル/kg)は、NMRの水素積分比から算出した(エチレン性不飽和結合の水素の6ppm近傍の積分値、フェニル基の水素の7.5ppm近傍の積分値、及びメチル基の水素の0.1ppm近傍の積分値を使用)。測定溶媒はCDClとした。
上記で製造した樹脂においては、NMRの水素積分比から算出した質量比率がメチル基:フェニル基:エチレン性不飽和結合基=11:6.4:1、全体の中のエチレン性不飽和結合基の割合は5.4%、各々の分子量から1分子あたりのエチレン性不飽和結合基の数は9.35、よって、1kgあたりのモル数は0.31モル/kgと算出した。
【0098】
(実施例1)
上記(エネルギー線硬化型シリコーン樹脂の製造例)で得たエネルギー線硬化型シリコーン系樹脂10g、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルス(株)製)0.2g、着色防止剤としてのジブチル錫ジラウレート0.3gに、前記(光調整懸濁液の製造例)で得た光調整懸濁液2.5gを添加し、1分間機械的に混合し、調光材料を製造した。
【0099】
一方、ITO(インジウム錫の酸化物)の透明導電膜(厚み300Å)がコーティングされている、表面電気抵抗値が200〜700Ωのポリエステルフィルム(テトライトTCF、尾池工業(株)製、厚み125μm)からなる透明導電性樹脂基材に、リン酸ジエステルとして下記の構造を有するPM−21(日本化薬(株))をメチルエチルケトンに0.3質量%となるように溶解した溶液を、マイヤーバーコーター法を用いて全面塗布し、70℃で1分間乾燥してプライマー層を形成した。
【0100】
【化11】
【0101】
上記、プライマー層を形成した透明導電性樹脂基材の上に、上記で得られた調光材料を全面塗布した。次いでその上に、同様にプライマー層を形成した同じ透明導電性樹脂基材を、プライマー層用溶液の塗布面が調光材料の塗布層に向くようにして積層して密着させた。そして、メタルハライドランプを用いて3000mJ/cmの紫外線を、前記積層した透明導電性樹脂基材のポリエステルフィルム側から照射し、光調整懸濁液が球形の液滴として紫外線硬化した樹脂マトリックス内に分散形成されたフィルム状の厚み90μmの調光層が透明導電性樹脂基材に挟まれた厚み340μm調光フィルムを製造した。
なお、形成されたプライマー層の厚さを、分光エリプソメーターM−2000D(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製)を使用して測定したところ、2nmであった。
【0102】
次いで、この調光フィルムの端部から調光層を除去し、端部の透明導電膜を電圧印加用の通電をとるために露出させた(図4参照)。
調光フィルム中の光調整懸濁液の液滴の大きさ(平均液滴径)は、平均3μmであった。調光フィルムの光透過率は、交流電圧を印加しない場合(未印加時)は1.1%であった。また、400Hzの交流電圧50V(実効値)の印加時の調光フィルムの光透過率は33%であり、電界印加時と電界未印加時の光透過率の比が30と大きく、良好であった。
【0103】
目視により調光フィルム端部(調光層が除去され透明導電膜が露出した部分)を観察したところ、調光フィルムの厚み方向中心部へ向かっての透明導電性樹脂基材の曲がりこみは、きわめて小さかった(図4)。なお、調光フィルム中の光調整懸濁液の液滴の大きさ、調光フィルムの光透過率、調光層と透明導電性樹脂基材との接着強度、剥離モード、転写性、タック性の評価は下記のように測定した。
【0104】
[光調整懸濁液の液滴の大きさの測定方法]
調光フィルムの一方の面方向からSEM写真を撮影し、任意に選択した複数の液滴直径を測定し、その平均値として算出した。
【0105】
[調光フィルムの光透過率の測定方法]
分光式色差計SZ−Σ90(日本電色工業(株)製)を使用し、A光源、視野角2度で測定したY値(%)を光透過率とした。なお、電界印加時と未印加時の光透過率を測定した。
【0106】
[調光層の接着強度の測定方法]
接着強度の測定はレオメーター、STROGRAPH E−S(東洋精機(株))を使用し、90°ピール、ロード加重50N、引き上げスピード50mm/minで測定した。
【0107】
[剥離モードの評価方法]
上記接着強度の測定後に得られた、透明導電性樹脂基材を引き剥がした調光フィルムにおいて、調光フィルムからの透明導電性樹脂基材の剥離の仕方を下記のように評価基準を設け評価した。2枚の透明導電性樹脂基材の両方に調光層が残っていて、引きはがし時に調光層内部で破壊が起きている場合を凝集破壊とし、また、片方の透明導電性樹脂基材のみに調光層が残っていて、引きはがし時に調光層自体は破壊されない(基材のみが剥がれる)場合を界面剥離とした。
【0108】
[転写性の評価方法]
プライマー層とITO/PETのPET面を重ね合わせて約1kgの重りを乗せた状態で1週間保管し、プライマー層がITO/PETのPET面に転写しているか目視で確認した。転写の割合がプライマー塗工面積全体の5%以下の場合を○、5〜30%を△、30%以上を×とした。
【0109】
[タック性の評価方法]
プライマー層作製済みITO/PET(実施例1で作製された、調光層を形成する前の、プライマー層が形成された透明導電性樹脂基材)におけるタック性の評価は下記のようにして行った。
まず、プライマー層作製済みITO/PET(実施例1で作製された、調光層を形成する前の、プライマー層が形成された透明導電性樹脂基材)に調光材料を塗工する。
調光フィルムをロール・トゥ・ロールで作製する際、既に調光材料が塗工されている上記基材に、プライマー層作製済みITO/PET(実施例1で作製された、調光層を形成する前の、プライマー層が形成された透明導電性樹脂基材)をラミネートする。このとき、両者が正確に重なるように、塗工方向と垂直方向にプライマー層作製済みITO/PETの位置を微調整する必要がある。プライマー層作製済みITO/PETのプライマー層がテンションを掛けるための金属ロールに接した状態で容易に位置合わせ可能な場合を○、容易ではないが可能な場合を△、位置合わせ困難な場合を×とした。
【0110】
(実施例2)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸ジエステルとしてPM−21(日本化薬(株))を用いたメチルエチルケトン溶液0.5、1.0、5.0、及び10質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、それぞれ、3nm(0.5質量%)、22nm(1.0質量%)、89nm(5.0質量%)、162nm(10質量%)であった。
【0111】
(実施例3)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸ジエステルとして下記の構造を有するP−2M(共栄社化学(株))を用いたメチルエチルケトン溶液0.3質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さを、分光エリプソメーターM−2000D(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製)を使用して測定したところ、3nmであった。
【0112】
【化12】
【0113】
(実施例4)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸ジエステルとしてP−2M(共栄社化学(株))を用いたメチルエチルケトン溶液0.5、1.0、5.0、及び10質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、それぞれ、3nm(0.5質量%)、27nm(1.0質量%)、92nm(5.0質量%)、171nm(10質量%)であった。
【0114】
(実施例5)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸モノエステルとして、下記の構造を有するホスマーPP(ユニケミカル(株))を用いたメチルエチルケトン溶液1.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、25nmであった。
【0115】
【化13】
【0116】
(実施例6)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸モノエステルとして、ホスマーPP(ユニケミカル(株))を用いたメチルエチルケトン溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、84nmであった。
【0117】
(実施例7)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸モノエステルとして、下記の構造を有するホスマーPE(ユニケミカル(株))を用いたメチルエチルケトン溶液1.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、24nmであった。
【0118】
【化14】
【0119】
(実施例8)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸モノエステルとして、ホスマーPE(ユニケミカル(株))を用いたメチルエチルケトン溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、87nmであった。
【0120】
(実施例9)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸モノエステルとして、ホスマーM(ユニケミカル(株))を用いたメチルエチルケトン溶液1.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、23nmであった。
【0121】
【化15】
【0122】
(実施例10)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸モノエステルとして、ホスマーM(ユニケミカル(株))を用いたメチルエチルケトン溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、101nmであった。
【0123】
(実施例11)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸変性エポキシアクリレート(リン酸がエステル結合したエポキシアクリレート)として、RDX63182(ダイセル・ユーシービー(株))を用いたメチルエチルケトン溶液1.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、31nmであった。
【0124】
(実施例12)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸変性エポキシアクリレート(リン酸がエステル結合したエポキシアクリレート)として、RDX63182(ダイセル・ユーシービー(株))を用いたメチルエチルケトン溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、107nmであった。
【0125】
(実施例13)
プライマー層を形成する際の溶液を、アミノ基含有シランカップリング剤として、下記の構造を有するKBM−603(信越シリコーン(株))を用いたエタノール溶液3.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、68nmであった。
【0126】
【化16】
【0127】
(実施例14)
プライマー層を形成する際の溶液を、アミノ基含有シランカップリング剤として、KBM−603(信越シリコーン(株))を用いたエタノール溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、102nmであった。
【0128】
(実施例15)
プライマー層を形成する際の溶液を、アミノ基含有シランカップリング剤として、KBM−603(信越シリコーン(株))を用いたエタノール溶液10質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、188nmであった。
【0129】
(比較例1)
ITOの透明導電膜がコーティングされているポリエステルフィルム(商品名:テトライトTCF、尾池工業(株)製、厚み125μm)からなる透明導電性樹脂基材に、プライマー層を設けず、そのまま使用したことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。
【0130】
(比較例2)
プライマー層を形成する際の溶液を、下記式で表されるエポキシ基含有シランカップリング剤KBM−403(信越シリコーン(株))を用いたエタノール溶液1質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、33nmであった。
【0131】
(比較例3)
プライマー層を形成する際の溶液を、下記式で表されるメタクリロイル基含有シランカップリング剤KBM−503(信越シリコーン(株))を用いたエタノール溶液1.0質量%、エタノール溶液5.0質量%、エタノール溶液10質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、30nm(1.0質量%)、98nm(5.0質量%)、185nm(10質量%)であった。
【0132】
(比較例4)
プライマー層を形成する際の溶液を、下記式で表されるメルカプト基含有シランカップリング剤KBM−803(信越シリコーン(株))を用いたエタノール溶液1.0質量%、エタノール溶液5.0質量%、エタノール溶液10質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、それぞれ34nm(1.0質量%)、99nm(5.0質量%)、190nm(10質量%)であった。
【0133】
【化17】
【0134】
(比較例5〜8)
プライマー層を形成する際の溶液を、下記式で表されるポリビニルアセタール樹脂(エスレックBシリーズ(BL−1、BL−1H、BL−S):ポリビニルブチラール樹脂、エスレックKシリーズ(KS−10):特殊ポリビニルアセタール樹脂)を用い、積水化学工業(株))のエタノール/トルエン混合溶液(エタノール:トルエン=4:6)の10質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、それぞれ203nm(エスレックBL−1)、211nm(エスレックBL−1H)、228nm(エスレックBL−S)、208nm(エスレックKS−10)であった。
【0135】
【化18】
【0136】
(比較例9)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコを用意した。フラスコ内にジアミン化合物としてポリオキシプロピレンジアミン15.0mmol及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン105.0mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)287gを加え、室温で30分間撹拌した。
次いで、水と共沸可能な芳香族炭化水素系有機溶剤としてトルエン180g、テトラカルボン酸二無水物として4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物114.0mmolを加え、50℃まで昇温して、その温度で1時間撹拌した後、さらに160℃まで昇温して3時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、180℃まで昇温して反応溶液中のトルエンを除去し、下記式で表されるポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
上記ポリイミド樹脂のNMP溶液をメタノール中に投入し、析出物を回収後、粉砕、乾燥してポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂の重量平均分子量は112000であった。
【0137】
【化19】
【0138】
プライマー層を形成する際の溶液を、上記ポリイミド樹脂のメチルエチルケトン溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、それぞれ121nmであった。
【0139】
(比較例10)
プライマー層を形成する際の溶液を、脂肪酸変性エポキシアクリレートとしてのEB3702(ダイセル・ユーシービー(株))を用いたメチルエチルケトン溶液5.0質量%に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、それぞれ106nmであった。
【0140】
これらの結果を表1〜3に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
表1〜3に示すとおり、印加時及び未印加時の光透過率には、比較例1と実施例で殆ど差がなかった。一方、接着強度は、プライマー層無しの比較例1、本発明におけるプライマー層以外のプライマー層を設けた比較例2〜10共に、接着強度が著しく小さく、剥離も基材と調光層の界面で生じていた。これに対し、実施例はどの場合も、特定のリン酸エステル又は特定のシランカップリング剤を用いることによって、接着強度が大幅に向上し、剥離も凝集破壊モードで生じており、調光特性を保持したまま密着性を大幅に向上できた。
【0145】
(実施例16)
プライマー層を次の手順で作製した。重合性モノマーとして、UV硬化型ハードコート材:サンラッドRC−610R(三洋化成工業(株)製)と、リン酸モノエステルとしてP−1M(共栄社化学(株)製)との混合物を、メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1:1の混合溶媒に溶解させたものをマイヤーバーコーター法を用いて線径0.10mmで全面塗布した。なお、サンラッドRC−610Rには、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンが含有されている。
次いで50℃/30s、60℃/30s、70℃/1min乾燥後、メタルハライドランプ(照度:約250mW/cm、照射量:約1000mJ/cm)を用いて硬化させて、プライマー層を作製した。この時、サンラッドRC−610Rは3質量%、P−1Mは0.3質量%とした。その後、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、65nmであった。
【0146】
(実施例17)
活性エネルギー線重合性モノマーとしてのサンラッドRC−610Rの配合比率を1質量%とし、リン酸モノエステルとしてのP−1Mの配合比率を0.1質量%として、マイクログラビア法(メッシュ#150)を用いたことを除いては実施例16と同様にしてプライマー層を作成し、その後実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、10nmであった。
【0147】
(実施例18)
活性エネルギー線重合性モノマーとしてのサンラッドRC−610Rの配合比率を0.5質量%とし、リン酸モノエステルとしてのP−1Mの配合比率を0.05質量%としたことを除いては実施例16と同様にしてプライマー層を作成し、その後実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、3nmであった。
【0148】
(実施例19)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸変性エステルとしてP−1M(共栄社化学(株))を用いた0.3質量%溶液に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、2nmであった。
【0149】
(実施例20)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸変性エステルとしてP−1M(共栄社化学(株))を用いた0.1質量%溶液に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、1nmであった。
【0150】
(実施例21)
プライマー層を形成する際の溶液を、リン酸変性エステルとしてP−1M(共栄社化学(株))を用いた0.05質量%溶液に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、0.7nmであった。
【0151】
(比較例11)
プライマー層を形成する際の溶液を、重合性モノマーとしてサンラッドRC−610R(三洋化成工業(株)製)を用いた3質量%溶液に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、60nmであった。
【0152】
(比較例12)
プライマー層を形成する際の溶液を、重合性モノマーとしてサンラッドRC−610R(三洋化成工業(株)製)を用いた1質量%溶液に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、12nmであった。
【0153】
(比較例13)
プライマー層を形成する際の溶液を、重合性モノマーとしてサンラッドRC−610R(三洋化成工業(株)製)を用いた0.5質量%溶液に変えたことを除いては、実施例1と同様にして、調光フィルムを作製し各種の測定を行った。形成されたプライマー層の厚さは、4nmであった。
【0154】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の調光フィルムは、調光層と透明導電性樹脂基材との密着性が高く、安定した調光機能を発揮することができる。
図1
図2
図3
図4