特許第5768852号(P5768852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768852
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】CMP用研磨液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150806BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20150806BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20150806BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550D
   C09G1/02
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-194019(P2013-194019)
(22)【出願日】2013年9月19日
(62)【分割の表示】特願2010-508241(P2010-508241)の分割
【原出願日】2009年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-57071(P2014-57071A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2013年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2008-106740(P2008-106740)
(32)【優先日】2008年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-875(P2009-875)
(32)【優先日】2009年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】篠田 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝明
(72)【発明者】
【氏名】金丸 真美子
(72)【発明者】
【氏名】天野倉 仁
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−141314(JP,A)
【文献】 特開2005−136134(JP,A)
【文献】 特開2002−338232(JP,A)
【文献】 特開平8−153780(JP,A)
【文献】 特開2007−266500(JP,A)
【文献】 特開2006−147993(JP,A)
【文献】 特開2007−242839(JP,A)
【文献】 特開2008−34818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09G 1/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバリア金属と層間絶縁膜とを除去するために用いられ、二酸化珪素を研磨する速度が窒化タンタルを研磨する速度よりも大きいCMP用研磨液であって、
媒体と、前記媒体に分散しているコロイダルシリカ粒子とを含み、
前記コロイダルシリカ粒子は下記(1)〜(3)の条件
(1)前記コロイダルシリカ粒子を走査型電子顕微鏡により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径(R)が35〜55nm
(2)前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)と同じ粒径を有する真球体の比表面積計算値(S)で、BET法により測定された前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(S)を割った値(S1/S0)が1.20以下
(3)CMP用研磨液中における、動的光散乱方式粒度分布計により測定された前記コロイダルシリカ粒子の二次粒子径(Rs)と、前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)との比(会合度:Rs/R)が1.30以下
を満たすCMP用研磨液。
【請求項2】
前記コロイダルシリカ粒子は、配合量がCMP用研磨液100質量%に対して2.0〜8.0質量%である請求項1記載のCMP用研磨液。
【請求項3】
さらに、酸化金属溶解剤及び水を含む請求項1または2記載のCMP用研磨液。
【請求項4】
pHが1.5以上、5.5以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項5】
さらに、金属の酸化剤を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項6】
さらに、金属の防食剤を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【請求項7】
コロイダルシリカ粒子を含むスラリと、コロイダルシリカ粒子以外の成分を含む一又は二の液とに分けて保存されるCMP用研磨液であって、CMP研磨工程に使用しうる状態に調合した場合に、前記コロイダルシリカ粒子の配合量が、CMP用研磨液100質量%に対して2.0〜8.0質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載のCMP用研磨液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの配線形成工程等における研磨に使用されるCMP用研磨液及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下、LSIという)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPともいう)法もその一つであり、LSI製造工程、特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、最近は、LSIを高性能化するために、配線材料となる導電性物質として銅及び銅合金の利用が試みられている。
【0004】
しかし、銅又は銅合金は、従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。
【0005】
そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に、銅又は銅合金の薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の前記薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば、特許文献2に開示されている。
【0006】
銅又は銅合金等の導電性物質を研磨する金属CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッド(研磨布ともいう)を貼り付け、研磨パッド表面を金属用研磨液で浸しながら、基板の金属膜を形成した面を研磨パッド表面に押し付けて、研磨パッドの裏面から所定の圧力(以下、研磨圧力という)を金属膜に加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との相対的機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
【0007】
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び研磨粒子からなっており、必要に応じて、さらに酸化金属溶解剤、保護膜形成剤が添加される。まず酸化剤によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を研磨粒子によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。
【0008】
凹部の金属表面の酸化層は、研磨パッドにあまり触れず、研磨粒子による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基板表面は平坦化される。この詳細については、例えば、非特許文献1に開示されている。
【0009】
CMPによる研磨速度を高める方法として酸化金属溶解剤を添加することが有効とされている。研磨粒子によって削り取られた金属酸化物の粒を研磨液に溶解(以下、エッチングという)させてしまうと研磨粒子による削り取りの効果が増すためであると解釈される。
【0010】
酸化金属溶解剤の添加によりCMPによる研磨速度は向上するが、一方、凹部の金属膜表面の酸化層もエッチングされて金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜のエッチングが進行してしまう。このため研磨後に埋め込まれた金属配線の表面中央部分が皿のように窪む現象(以下、ディッシングという)が発生し、平坦化効果が損なわれる。
【0011】
これを防ぐために、さらに保護膜形成剤が添加される。保護膜形成剤は金属膜表面の酸化層上に保護膜を形成し、酸化層の研磨液中への溶解を防止するものである。この保護膜は研磨粒子により容易に削り取ることが可能で、CMPによる研磨速度を低下させないことが望まれる。
【0012】
銅又は銅合金のディッシングや研磨中の腐食を抑制し、信頼性の高いLSI配線を形成するために、グリシン等のアミノ酢酸又はアミド硫酸からなる酸化金属溶解剤及び保護膜形成剤としてBTA(ベンゾトリアゾール)を含有するCMP用研磨液を用いる方法が提唱されている。この技術は、例えば、特許文献3に記載されている。
【0013】
一方、図1(a)に示すように、銅又は銅合金などの配線用金属層からなる導電性物質3の下層には、層間絶縁膜1中への銅拡散防止や密着性向上のためのバリア金属2の層(以下、バリア層ともいう)が形成される。バリア金属2としては、例えばタンタル、タンタル合金、窒化タンタル等のタンタル化合物等が使用される。CMPプロセスでは、導電性物質を埋め込む配線部以外の部分において、露出したバリア金属2をCMPにより取り除く必要がある。
【0014】
しかし、これらのバリア金属2は、導電性物質3に比べ硬度が高いために、導電性物質用の研磨材料を組み合わせても十分な研磨速度が得られず、かつ平坦性が悪くなる場合が多い。そこで、図1(a)から図1(b)の状態まで導電性物質3を研磨する第1工程と、図1(b)から図1(c)の状態までバリア金属2を研磨する第2工程からなる2段研磨方法が検討されている。
【0015】
バリア金属2を研磨する第2の研磨工程では平坦性を向上させるために凸部層間絶縁膜1の厚みの一部も研磨するのが一般的である(オーバー研磨)。層間絶縁膜1は酸化ケイ素膜が主流であったが、近年LSIを高性能化するため酸化ケイ素膜よりも低誘電率であるケイ素系材料又は有機ポリマの利用が試みられており、例えばLow−k(低誘電率)膜であるトリメチルシランを出発原料とするオルガノシリケートグラスや全芳香環系Low−k膜等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4944836号明細書
【特許文献2】日本国特許第1969537号公報
【特許文献3】日本国特許第3397501号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌(Journal of Electrochemical Society)、1991年、第138巻、11号、p.3460−3464
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
バリア金属2及び層間絶縁膜1の研磨速度は、研磨工程の時間を短縮し、スループットを向上するため、高速であることが好ましい。層間絶縁膜1の研磨速度を向上させるためには、例えば、CMP用研磨液中の研磨粒子の含有量を多くする、研磨液中の研磨粒子の粒径を大きくすることが考えられる。
【0019】
しかしながら、いずれの場合も分散安定性が悪くなる傾向があり、研磨粒子の沈降が発生しやすくなる。つまり研磨液を一定期間保管した後使用する場合、層間絶縁膜の研磨速度が低下しやすくなり、平坦性が得られなくなるといった問題がある。したがって、従来のバリア層用研磨液と同等のバリア層研磨速度を有し、かつ層間絶縁膜の研磨速度も充分速いものが求められる。
【0020】
本発明は、前記問題点に鑑み、CMP用研磨液中の研磨粒子の分散安定性が良好であり、層間絶縁膜の研磨速度を高速に研磨でき、その特性を維持しつつ、バリア層の研磨速度も高速であるCMP用研磨液を提供することを目的とするものである。
【0021】
また、本発明は、微細化、薄膜化、寸法精度、電気特性に優れ、信頼性が高く、低コストの半導体デバイス等の製造における研磨方法を提供することを目的とするものである。
【0022】
本発明は、前記課題を解決するために種々の検討を行った結果、研磨粒子としてコロイダルシリカ粒子を使用したものであり、前記コロイダルシリカの平均一次粒径が所定の範囲にあること、粒子が真球に近い形状を有していること、CMP用研磨液中においてわずかに会合している状態にあることが重要なファクターであることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0023】
より具体的には、本発明は、
媒体と、前記媒体に分散しているコロイダルシリカ粒子とを含有するCMP用研磨液であって、前記コロイダルシリカ粒子は、下記(1)〜(3)に示される条件;
(1)前記コロイダルシリカ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径(R)が35〜55nm
(2)前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)と同じ粒径を有する真球体の比表面積計算値(S)で、BET法により測定された前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(S)を割った値(S1/S)が1.20以下
(3)CMP用研磨液中における、動的光散乱方式粒度分布計により測定された前記コロイダルシリカ粒子の二次粒子径(Rs)と、前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)との比(会合度:Rs/R)が1.30以下
の全てを満たす場合に、優れた特性を有し、さらに前記コロイダルシリカ粒子の配合量がCMP用研磨液100質量%に対して2.0〜8.0質量%でより優れた特性を有することを見いだしたものである。
【0024】
本発明の開示は、2008年4月16日に出願された特願2008−106740号、及び2009年1月6日に出願された特願2009−000875号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用によりここに援用される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、層間絶縁膜が高速に研磨できるCMP用研磨液が得られ、研磨工程時間の短縮によるスループットの向上が可能となる。
【0026】
また、研磨粒子の添加量が従来のものと比較して相対的に少ない場合であっても、層間絶縁膜の高い研磨速度を得ることができる。
【0027】
さらに、少ない研磨粒子添加量でよいため、研磨液を従来よりも高濃度で濃縮することができるため、保存・運搬に対する利便性が高いほか、顧客のプロセスにあわせたより自由度の高い使用方法が提供できる。
【0028】
また、このCMP用研磨液を用いて化学機械研磨を行う本発明の研磨方法は、生産性が高く、微細化、薄膜化、寸法精度、電気特性に優れ、信頼性の高い半導体デバイス及び他の電子機器の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、一般的なダマシンプロセスの経過の断面模式図であり、図1(a)は研磨前、図1(b)はバリア層が露出するまで配線用金属(導電性物質)を研磨した状態、図1(c)は層間絶縁膜の凸部が露出するまで研磨した状態である。
図2図2は、二軸平均一次粒子径を算出される粒子形状の一例である。
図3図3の(a)〜(d)は、半導体デバイスにおける配線層の形成工程の一例の断面模式図である。
図4図4は第2の研磨工程でオーバー研磨した一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のCMP用研磨液は、前記のように、媒体と、前記媒体に分散している研磨粒子としてコロイダルシリカ粒子とを含有してなり、前記コロイダルシリカ粒子は、下記(1)〜(3)に示される条件;
(1)前記コロイダルシリカ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径(R)が35〜55nm
(2)前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)と同じ粒径を有する真球体の比表面積計算値(S)で、BET法により測定された前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(S)を割った値(S1/S)が1.20以下
(3)CMP用研磨液中における、動的光散乱方式粒度分布計により測定された前記コロイダルシリカ粒子の二次粒子径(Rs)と、前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)との比(会合度:Rs/R)が1.30以下
の全てを満たすCMP用研磨液である。前記コロイダルシリカ粒子の配合量は、CMP用研磨液100質量%に対して2.0〜8.0質量%であると好ましい。
【0031】
以下、前記(1)〜(3)の意義や、CMP用研磨液に含有されうる各成分について詳細に説明する。
【0032】
(I.コロイダルシリカ粒子)
(I−i.二軸平均一次粒子径)
本発明のCMP用研磨液に添加するコロイダルシリカとしては、研磨液中での分散安定性が比較的良く、CMPにより発生する研磨傷の発生数の比較的少ないものが好ましい。具体的には、任意の粒子20個を走査型電子顕微鏡により観察した結果から得られる二軸平均一次粒子径が35nm以上、55nm以下の粒子であることが好ましく、40nm〜50nmのコロイダルシリカがより好ましい。二軸平均一次粒子径が35nm以上であると層間絶縁膜の研磨速度が向上し、また55nm以下であると、研磨液中での分散安定性が良好になる傾向がある。
【0033】
本発明において二軸平均一次粒子径は次のようにして求める。まず、通常水に分散しているコロイダルシリカ(一般的に固形分濃度5〜40wt%である)を、容器に適量量り取る。次に、その容器に、パターン配線付きウェハを2cm角に切ったチップを約30秒浸す。前記チップを取り出し、純水のはいった容器に移して約30秒間すすぎをし、そのチップを窒素ブロー乾燥する。その後、前記チップをSEM観察用の試料台に乗せ、加速電圧10kVを掛け、10万倍の倍率にて粒子を観察、画像を撮影する。得られた画像から任意の20個を選択する。
【0034】
例えば、選択した粒子が図2に示すような形状であった場合、粒子4に外接し、その長径が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形5)を導く。そしてその外接長方形5の長径をL、短径をBとして、(L+B)/2として一粒子の二軸平均一次粒子径を算出する。この作業を任意の20粒子に対して実施し、得られた値の平均値を、本発明における二軸平均一次粒子径(R)という。
【0035】
(I−ii.会合度)
本発明の研磨液に使用されるコロイダルシリカは、好ましい層間絶縁膜の研磨速度が得られ、また研磨液中での分散安定性に優れる点で、粒子の会合度が1.30以下であるものが好ましく、会合度が1.25以下である粒子であるものがより好ましい。本発明では、会合度は、コロイダルシリカ粒子の二次粒子径(Rs)と、前記(I−i)欄で述べた二軸平均一次粒子径(R)との比、すなわちRs/Rの値で示すものとする。
【0036】
ここで、前記二次粒子径(Rs)は、CMP用研磨液を適量量り取り、動的光散乱方式粒度分布計が必要とする散乱光強度の範囲に入るように必要に応じて水で希釈して測定サンプル調整する。次にこの測定サンプルを、動的光散乱方式粒度分布計に投入し、D50として得られる値を平均粒子径とする。このような機能を有する動的光散乱方式の粒度分布計としては、例えばコールタ社の型番N5型が挙げられる。なお、後述するようにCMP用研磨液を分液保存又は濃縮保存する場合は、コロイダルシリカを含むスラリから前記手法によってサンプルを調整して、二次粒子径を測定することができる。
【0037】
前記のように、コロイダルシリカの会合度が小さいということは、その単位粒子が球体に近いということを意味するものであり、研磨液中の単位粒子がある一定研磨対象面(ウエハ面)において、接触できる個数が多くなる。つまり、会合度が1の場合と会合度が2の場合で考えると、同じ質量%の粒子がCMP用研磨液に存在する時、会合度1の方が、会合度2の場合と比べて、個数濃度が2倍になるため、より多くの単位粒子がウェハ面に接触できることになる。そのため、層間絶縁膜の研磨速度が速くなると考えられる。
【0038】
また、球体に近い粒子の方が、粒子1個が研磨面に接触できる面積が大きくなるため、層間絶縁膜の研磨速度が高速になると考えられる。
【0039】
(I−iii.真球度)
本発明のCMP用研磨液に使用するコロイダルシリカは、より球体に近い粒子である方が好ましい。この観点で、測定により得られるBET比表面積の測定値と、仮に粒子が真球であった場合の比表面積の理論値をもとめ、両者の比(測定値/理論値。以下真球度という)が小さいことを要件とする。具体的には、前記真球度は、1.20以下であることが好ましく、1.15以下であることがより好ましく、1.13以下であることがさらに好ましい。
【0040】
前記真球度の値の求め方を説明する。まず、前記(I−i)欄の方法で、任意の研磨粒子20個を走査型電子顕微鏡により観察した結果から得られる二軸平均一次粒子径(R)を求める。
【0041】
次にこれと同じ材質の粒子で、同じ粒径(R)を持つ仮想真球体粒子の比表面積の理論値(S)を下記式(1)により求める。
【0042】
=4π(R/2)/[(4/3)π(R/2)×d] ・・・(1)
(式(1)中、R[m]は前記二軸平均一次粒子径を示し、d[g/m]は前記粒子の密度を示す。)
前記密度dは、気相置換法を用いて測定することができ、コロイダルシリカ粒子の真密度としては、2.05×10[g/m]との値を用いることができる。
【0043】
次に実際の粒子の比表面積の測定値(S)を求める。一般的な測定方法として、BET法が挙げられる。これは、窒素などの不活性気体を低温で固体粒子表面物理吸着させ、吸着質の分子断面積と吸着量から比表面積を見積もることができる。
【0044】
具体的には、水に分散しているコロイダルシリカサンプルおよそ100gを乾燥機に入れて、150℃にて乾燥させてシリカ粒子を得る。得られたシリカ粒子およそ0.4gを、BET比表面積測定装置の測定セルに入れて150℃で60分間、真空脱気する。BET比表面積測定装置としては、ガス吸着式比表面積・細孔分布測定装置であるNOVA-1200(ユアサアイオニクス製)を用い、吸着ガスとして窒素ガスを用いる定容法で測定し、Areaとして得られる値をBET比表面積とする。上記を2回測定し、その平均値を本発明におけるBET比表面積とする。
【0045】
BET理論によれば、ある吸着平衡圧Pにおいて分子層物理吸着量vは次式(2)で示される。
【0046】
v=vcP/(Ps-P)(1-(P/Ps)+c(P/Ps)) ・・・(2)
ここで、Psは測定温度における吸着質気体の飽和蒸気圧、vは単分子層吸着量(mol/g)、cは定数である。(2)式を変形すると、
P/v(Ps-P)=1/vmc+(c-1)/vmc・P/Ps ・・・(3)
上式より、P/v(Ps-P)を相対圧力P/Psに対してプロットすれば直線が得られる。例えば、相対圧力測定点として、0.1、0.2、および0.3の3点でのP/v(Ps-P)を測定して、得られた直線の傾きおよび切片から求めたvmに窒素分子の占有面積(m)とアボガドロ数(個/mol)を掛けたものが比表面積となる。単位質量あたりの粉体に含まれる粒子の表面積の総和が比表面積である。
【0047】
以上のようにして得られた仮想球状粒子の比表面積の理論値(S)で、BET法により測定された粒子の比表面積の測定値(S)を割った値(S1/S0)として真球度を求める。
【0048】
前記のような、コロイダルシリカの二軸平均一次粒子径、会合度及び真球度等のパラメータは、コロイダルシリカメーカの知見により、ある程度制御して製造することが可能であり、コロイダルシリカメーカから容易に入手が可能である。なお、本発明のCMP用研磨液において、前記した特性を満たす限りは、二種類以上の研磨粒子を組み合わせて使用することができる。
【0049】
前記のように、コロイダルシリカの真球度が1に近いということは、その粒子が球体に近いということを意味するものであり、研磨液中の粒子がある一定研磨対象面(ウエハ面)において、接触できる面積が多くなる。つまり、真球度が小さい場合、真球度が大きい場合と比較して、表面の形状が滑らかであるため、形状の凹凸が激しい場合と比較して、より多くの面積がウェハ面に接触できることになる。そのため、層間絶縁膜の研磨速度が速くなると考えられる。
【0050】
(I−iv.配合量)
CMP用研磨液中のコロイダルシリカの配合量は、CMP用研磨液100質量%に対して、2.0〜8.0質量%とすることが好ましい。前記の特性を有するコロイダルシリカの配合量が2.0質量%以上であれば、層間絶縁膜に対する良好な研磨速度が得られる傾向があり、8.0質量%以下であれば、粒子の凝集沈降がより抑制しやすくなり、結果として良好な分散安定性・保存安定性が得られる傾向にある。なお、ここでの配合量とは、CMP研磨工程に使用しうる状態に調製した状態での配合量であり、後述する分液保存時又は濃縮保存時の配合量ではない。
【0051】
(II.CMP用研磨液のpH)
本発明のCMP用研磨液は、層間絶縁膜を高速に研磨できることを特長とする。しかしながら、後述するバリア金属の研磨においてオーバー研磨する工程に好適に使用するためには、導電性物質及びバリア金属の研磨速度も良好な値に保つことが好ましい。このような点で本発明の研磨液のpHは、1.5〜5.5であることが好ましい。pHが1.5以上であれば、導電性物質に対する腐食を抑制しやすくなり、導電性物質が過剰に研磨されることに起因するディッシングを抑制しやすくなる。また酸性が強すぎる場合と比較して、取り扱いが容易になる。また、pHが5.5以下であれば、導電性物質及びバリア金属に対しても良好な研磨速度を得ることができる。
【0052】
(III.媒体)
CMP用研磨液の媒体としては、特に制限されないが、水を主成分とするものが好ましく、より具体的には、脱イオン水、イオン交換水、超純水等が好ましい。
【0053】
CMP用研磨液は、必要に応じて水以外の有機溶媒を添加しても良い。これらの有機溶媒は、水に溶解しにくい成分の溶解補助剤として使用したり、研磨する面に対するCMP用研磨液の濡れ性を向上させる目的で使用したりすることができる。これらの技術は、国際公開WO03/038883パンフレット、国際公開WO00/39844パンフレット等に開示されており、これらの開示内容は引用によりここに援用される。本発明のCMP用研磨液における有機溶媒としては特に制限はないが、水と任意で混合できるものが好ましく、1種類単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0054】
溶解補助剤として使用する場合の有機溶媒としては、アルコールや、酢酸等の極性溶媒を挙げることができる。また、濡れ性を向上させる目的では、例えば、グリコール類、グリコールモノエーテル類、グリコールジエーテル類、アルコール類、炭酸エステル類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、その他フェノール、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン、酢酸エチル、乳酸エチル、スルホラン等が挙げられる。好ましくは、グリコールモノエーテル類、アルコール類、炭酸エステル類から選ばれる少なくとも1種である。
【0055】
有機溶媒を配合する場合、有機溶媒の配合量は、CMP用研磨液100質量%に対して、0.1〜95質量%とすることが好ましく、0.2〜50質量%とすることがより好ましく、0.5〜10質量%とすることが特に好ましい。配合量が0.1質量%以上であれば、研磨液の基板に対する濡れ性を向上させる効果が得られやすい傾向があり、95質量%以下であれば、CMP用研磨液の取り扱いが困難になることが少ないので、製造プロセス上好ましい。
【0056】
なお、水の配合量は残部でよく、含有されていれば特に制限はない。また、後述する濃縮保存された研磨液を、使用に適する濃度まで希釈する希釈剤としても用いられる。
【0057】
(IV.その他の成分)
本発明のCMP用研磨液は、導電性物質及びバリア金属に対する研磨速度を得ることを主な目的として、さらに酸化金属溶解剤や、金属の酸化剤(以下、単に酸化剤という)を含有することができる。また、CMP用研磨液のpHが低い場合には、導電性物質のエッチングが生じる恐れがあるため、これを抑制する目的で金属防食剤を含有することができる。以下、これらの成分について説明する。
【0058】
本発明のCMP用研磨液に用いることのできる酸化金属溶解剤としては、pHの調整および導電性物質の溶解の目的で使用されるものであり、その機能を有していれば特に制限はない。具体的には例えば、有機酸、有機酸エステル、有機酸の塩、無機酸、無機酸の塩等が挙げられる。前記の塩としては、代表的なものはアンモニウム塩である。中でも、実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点でギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、アジピン酸等の有機酸が好ましい。また導電性物質に対する高い研磨速度が得られやすい点で硫酸等の無機酸が好ましい。これらの酸化金属溶解剤は1種類単独で又は2種類以上混合して用いることができ、前記有機酸と前記無機酸を併用してもかまわない。
【0059】
前記酸化金属溶解剤を配合する場合、その配合量は、導電性物質、バリア金属に対する良好な研磨速度が得られやすい点で、CMP用研磨液100質量%に対して、0.001質量%以上とすることが好ましく、0.002質量%以上とすることがより好ましく、0.005質量%以上とすることが特に好ましい。また、エッチングの抑制を容易にして、研磨面に荒れが生じるのを防ぐ傾向があるため、配合量は20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることが特に好ましい。
【0060】
本発明のCMP用研磨液に用いることのできる金属防食剤としては、導電性物質に対する保護膜形成能を有していれば特に制限はないが、具体的には例えば、トリアゾール骨格を有するもの、ピラゾール骨格を有するもの、ピラミジン骨格を有するもの、イミダゾール骨格を有するもの、グアニジン骨格を有するもの、チアゾール骨格を有するもの、テトラゾール骨格を有するもの等が挙げられる。これらは1種類単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0061】
前記金属防食剤の配合量としては、その効果を得るために、CMP用研磨液100質量%に対して、0.001質量%以上とすることが好ましく、0.002質量%以上とすることがより好ましい。また、研磨速度が低くなるのを抑制する点で、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以下とすることが特に好ましい。
【0062】
本発明のCMP用研磨液に用いることのできる酸化剤としては、前記導電性物質を酸化する能力を有していれば特に制限はないが、具体的には例えば、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、その中でも過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0063】
基板が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。なお、適用対象の基体が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0064】
前記酸化剤を配合する場合、その配合量としては、金属に対する酸化作用を得る点で、CMP用研磨液100質量%に対して、0.001質量%以上とすることが好ましく、0.005質量%以上とすることがより好ましく、0.01質量%以上とすることが特に好ましい。また、研磨面に生じうる荒れを抑制できる点で、50質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることが特に好ましい。なお、酸化剤として過酸化水素を使用する場合、通常過酸化水素水として入手できるので、過酸化水素が最終的に上記範囲になるように過酸化水素水を配合する。
【0065】
これまで説明してきたように、本発明のCMP用研磨液は層間絶縁膜に対する研磨速度が高く、かつ、研磨液材料としてのマージンが広いという大きな特長がある。すなわち、従来、CMP用研磨液の一つの特性を改善するために、一つの成分の種類や配合量を変えると、各種成分同士の微妙なバランスが崩れて、別の特性が劣化してしまう傾向があった。例えば、研磨後の表面の平坦性を向上させるために成分の種類を変えると、最も重要なファクターである研磨速度が低下する、といったことが起こりうる。
【0066】
しかし、本発明のCMP用研磨液は、前記の研磨粒子による研磨性能(特に研磨速度)の向上効果が高いため、他の成分で特性の調整がしやすい。例えば、上記「IV.その他の成分」として説明した成分の種類・添加量等を変えることにより、種々のタイプの研磨液とすることができる。これは、公知の知見を用いて導電性物質やバリア金属の研磨速度を上下させても、層間絶縁膜に対する研磨速度はあまり影響を受けないことを意味する。従って、その他の成分を変更することによって、バリア金属の研磨速度が導電性物質の研磨速度より高い、いわゆる選択性の高いCMP用研磨液や、逆に、バリア金属と導電性物質の研磨速度が同程度の、いわゆる非選択のCMP用研磨液とすることが容易になる。
【0067】
さらに、本発明の研磨液によれば、相対的に少ない研磨粒子の添加量でも比較的高い層間絶縁膜の研磨速度を得ることができるため、コスト面でも有利である。
【0068】
もちろん凝集/沈降等の影響を受けない程度に研磨粒子を多く添加することは可能である。しかしながら、少ない添加量でよいため、例えば、研磨液を運搬/保存する際には、高濃度に濃縮することが可能である。すなわち、コロイダルシリカ粒子を含むスラリと、コロイダルシリカ粒子以外の成分を含む一又は二の液とに分けて保存し、CMP研磨工程に際して、それらを混合することにより調合して使用しうる。例えば、コロイダルシリカ粒子の配合量をCMP用研磨液100質量%に対して2.0〜8.0質量%に調合して使用できる。
【0069】
(分液保存)
前記で説明してきたような酸化金属溶解剤などの成分を含むことによって、研磨速度を好ましい値に調整することができるが、これによって研磨粒子の安定性が低下することがある。これを避けるために、本発明の研磨液は、少なくとも前記のコロイダルシリカを含むスラリと、それ以外の成分(例えば、コロイダルシリカの分散安定性を低下させうる成分)を含む添加液とに分けて保存することができる。例えば、前記のコロイダルシリカ、酸化金属溶解剤、酸化剤、金属防食剤及び水を含有する研磨液の場合、コロイダルシリカの分散安定性に影響を与える可能性がある酸化剤をコロイダルシリカと分けて保存することができる。
【0070】
(濃縮保存)
本発明のCMP用研磨液に使用されるコロイダルシリカは、二軸平均一次粒子径、会合度及び真球度がこれまで説明した範囲にあるため、分散性に極めて優れるという特性を有しており、媒体に高濃度に分散させることができる。従来のコロイダルシリカは、公知の方法で分散性を高めた場合であってもせいぜい10質量%程度の含有量が限界であり、これ以上添加すると凝集沈降が起こる。しかしながら、本発明のCMP用研磨液に使用されるコロイダルシリカは、10質量%以上媒体に分散させることができ、12質量%程度までは容易に媒体に分散させることが可能である。また、最大で18質量%程度まで分散させることが可能である。このことは、本発明のCMP用研磨液が高い濃縮状態で運搬/保存できることを意味しており、プロセス上極めて有利である。例えば、コロイダルシリカを5質量%含有するCMP用研磨液として使用する場合、保存/運搬時は3倍濃縮が可能であることを意味する。
【0071】
より具体的には、例えば、少なくとも前記のコロイダルシリカを10質量%以上含む濃縮スラリと、それ以外の成分を含む添加液と、希釈液とに分け、これらを研磨工程の直前に混合、又は、研磨時に所望の濃度になるように流量を調節しながら供給することで、CMP用研磨液を得ることができる。また、希釈液にも、コロイダルシリカ以外の成分を含むことも可能であり、例えば、濃縮スラリと、酸化剤を含む希釈剤としての過酸化水素水と、それ以外の成分を含む添加液とに分けることも可能である。
【0072】
(V.用途・使用方法)
以上のような本発明の研磨液を、半導体デバイスにおける配線層の形成に適用できる。例えば導電性物質の層と、バリア金属の層、層間絶縁膜を有する基板へのCMPに使用することができる。
【0073】
本発明の研磨方法は、表面に凹部及び凸部を有する層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア金属の層と、前記凹部を充填してかつバリア金属を被覆する導電性物質層とを有する基板を研磨する研磨方法である。この研磨方法は、導電性物質層を研磨して前記凸部のバリア金属を露出させる第1の研磨工程と、少なくともバリア金属と凹部の導電性物質層とを研磨する第2の研磨工程とを含む。なお、第2の研磨工程においては、凸部の層間絶縁膜が露出した終点から、さらに層間絶縁膜の凸部の厚さの一部を研磨して平坦化させる場合もある。そして、前記第2の研磨工程で前記本発明のCMP用研磨液を供給しながら化学機械研磨する。
【0074】
前記導電性物質としては、銅、銅合金、銅の酸化物又は銅合金の酸化物、タングステン、タングステン合金、銀、金等の、金属が主成分の物質が挙げられ、銅が主成分であるのが好ましい。導電性物質層として公知のスパッタ法、メッキ法により前記物質を成膜した膜を使用できる。
【0075】
前記層間絶縁膜としては、シリコン系被膜や有機ポリマ膜が挙げられる。
【0076】
前記シリコン系被膜としては、二酸化ケイ素、フルオロシリケートグラス、トリメチルシランやジメトキシジメチルシランを出発原料として得られるオルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系被膜や、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドが挙げられる。
【0077】
また、前記有機ポリマ膜としては、全芳香族系低誘電率層間絶縁膜が挙げられる。特に、オルガノシリケートグラスが好ましい。これらの膜は、CVD法、スピンコート法、ディップコート法又はスプレー法によって成膜される。絶縁膜の具体例としては、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜等が挙げられる。
【0078】
前記バリア金属の層は層間絶縁膜中への導電性物質拡散防止及び絶縁膜と導電性物質との密着性向上のために形成され、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金、その他のタンタル化合物、チタン、窒化チタン、チタン合金、その他のチタン化合物、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金、その他のタングステン化合物、ルテニウム及びその他のルテニウム化合物から選ばれた少なくとも1種のバリア金属及びこのバリア金属を含む積層膜が挙げられる。
【0079】
研磨する装置としては、例えば、研磨パッドにより研磨する場合、研磨される基板を保持できるホルダと、回転数が変更可能なモータなどに接続し、研磨パッドを貼り付けた定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。
【0080】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限はない。
【0081】
研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200min−1以下の低回転が好ましい。被研磨面を有する半導体基板の研磨パッドへの研磨圧力は、1〜100kPaであることが好ましく、CMP速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5〜50kPaであることがより好ましい。
【0082】
研磨している間、研磨パッドにはCMP用研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の基板は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。本発明による化学機械研磨工程を実施し、さらに、基板洗浄工程を加えるのが好ましい。
【0083】
本発明の研磨方法は、例えば半導体デバイスにおける配線層の形成に適用できる。
【0084】
以下、本発明の研磨方法の実施態様を、図3に示すような半導体デバイスにおける配線層の形成に沿って説明する。
【0085】
まず、図3(a)に示すように、シリコンの基板6上に二酸化ケイ素等の層間絶縁膜1を積層する。次いで、図3(b)に示すように、レジスト層形成、エッチング等の公知の手段によって、層間絶縁膜表面に所定パターンの凹部7(基板露出部)を形成して凸部と凹部とを有する層間絶縁膜とする。次に図3(c)に示すように、層間絶縁膜上に、表面の凸凹に沿って層間絶縁膜を被覆するタンタル等のバリア金属2を蒸着又はCVD等により成膜する。
【0086】
さらに、図3(d)に示すように、前記凹部を充填するようにバリア金属を被覆する、銅等の配線用金属からなる導電性物質3層を蒸着、めっき又はCVDなどにより形成する。層間絶縁膜1、バリア金属2及び導電性物質3の形成厚さは、それぞれ0.01〜2.0μm、1〜100nm、0.01〜2.5μm程度が好ましい。
【0087】
次に、図1に示すように、この半導体基板の表面の導電性物質3層を、例えば、前記導電性物質/バリア金属の研磨速度比が十分大きい前記導電性物質用の研磨液を用いて、CMPにより研磨する(第1の研磨工程)。これにより、図1の(b)のように基板上の凸部のバリア金属が表面に露出し、凹部に前記導電性物質膜が残された所望の導体パターンが得られる。この得られたパターン面を、本発明のCMP用研磨液を使用する本発明の研磨方法における第2の研磨工程用の被研磨面として、研磨することができる。
【0088】
第2の研磨工程では、導電性物質、バリア金属及び層間絶縁膜を研磨できる本発明の研磨液を使用して、化学機械研磨により、少なくとも、前記露出しているバリア金属及び凹部の導電性物質を研磨する。
【0089】
図1の(c)のように凸部バリア金属の下の層間絶縁膜が全て露出し、凹部に配線層となる前記導電性物質層が残され、凸部と凹部との境界にバリア金属の断面が露出した所望のパターンが得られた時点で研磨を終了する。
【0090】
研磨終了時のより優れた平坦性を確保するために、さらに図4に示すように、オーバー研磨(例えば、第2の研磨工程で所望のパターンを得られるまでの時間が100秒の場合、この100秒の研磨に加えて50秒追加して研磨することをオーバー研磨50%という)して凸部の層間絶縁膜の一部を含む深さまで研磨しても良い。図4において、オーバー研磨された部分8を点線で示す。
【0091】
このようにして形成された金属配線の上に、さらに、層間絶縁膜及び第2層目の金属配線を形成し、その配線間及び配線上に再度層間絶縁膜を形成後、研磨して半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体デバイスを製造することができる(図示せず)。
【0092】
本発明のCMP用研磨液は、前記のような半導体基板に形成されたケイ素化合物膜の研磨だけでなく、所定の配線を有する配線板に形成された酸化ケイ素膜、ガラス、窒化ケイ素等の無機絶縁膜、フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザ用LEDサファイア基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実施例により制限するものではない。
【0094】
(実施例1〜3、比較例1〜8)
(I−1)CMP用研磨液の調製
研磨粒子(砥粒)として、コロイダルシリカA〜Kを5.0質量%、酸化金属溶解剤としてリンゴ酸を0.5質量%、金属の防食剤としてベンゾトリアゾールを0.1質量%、酸化剤として過酸化水素を0.5質量%及び水93.9質量%となるように各材料を混合してCMP用研磨液を調製した。なお、上記過酸化水素は30%過酸化水素水を使用し、前記配合比となるように添加した。コロイダルシリカA〜Kの二軸平均一次粒子径(R)、真球度S/S、会合度(Rs/R)の各値は、表1に示されるとおりである。
【0095】
(I−2)分散安定性評価用CMP用研磨液の調製
研磨液中の研磨粒子の分散安定性を評価するために、研磨粒子の配合量を5.0質量%から12質量%に、水の配合量を93.9質量%から86.9質量%に変更した以外は、前記(I−1)と同様にしてCMP用研磨液を調製した。
【0096】
(I−3)研磨粒子特性の測定方法
なお、表1中、コロイダルシリカA〜Kの特性は、下記のようにして調べた。
【0097】
(1)二軸平均一次粒子径(R
コロイダルシリカA〜Kを、まず、それぞれ通常水に分散している状態で、容器に適量量り取った。次に、その容器に、パターン配線付きウェハを2cm角に切ったチップを約30秒浸した。前記チップを取り出して純水で約30秒間すすぎ、そのチップを窒素ブロー乾燥した。その後、前記チップをSEM観察用の試料台に乗せ、加速電圧10kVを掛け、走査型電子顕微鏡10万倍の倍率にて粒子を観察、画像を撮影した。
【0098】
得られた画像から、任意の粒子20個を選択した。選択した粒子に外接し、その長径が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形)を導き、その外接長方形5の長径をL、短径をBとして、(L+B)/2として一粒子の二軸平均一次粒子径を算出した。この作業を任意の20粒子に対して実施し、得られた値の平均値を求め、二軸平均一次粒子径(R)とした。
【0099】
(2)真球度(S/S
コロイダルシリカA〜Kについて、BET法により測定されたコロイダルシリカ粒子の比表面積(S)を求めた。すなわち、水に分散しているコロイダルシリカA〜Kおよそ100gを乾燥機に入れて、150℃にて乾燥させてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子およそ0.4gを、BET比表面積測定装置(NOVA-1200ユアサアイオニクス製)の測定セルに入れて150℃で60分間、真空脱気した。吸着ガスとして窒素ガスを用いる定容法で測定し、Areaとして得られる値をBET比表面積とした。上記を2回測定し、その平均値を本発明におけるBET比表面積(S)とした。
【0100】
また、前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)と同じ粒径を有する真球体を想定し、その真球体の比表面積を計算してSを求めた。このようにして得られた値から、S/Sを計算した。
【0101】
(3)会合度(Rs/R
実施例1〜3及び比較例1〜8の研磨液について、動的光散乱方式による粒度分布計(コールタ社の型番N5型)を用いて、次のようにコロイダルシリカA〜Kの研磨液中における二次粒子径の平均値を求め、これをRsとした。すなわち、CMP用研磨液を適量量り取り、粒度分布計が必要とする散乱光強度の範囲に入るように必要に応じて水で希釈して測定サンプルを調製した。次にこの測定サンプルを、粒度分布計に投入し、D50として得られる値を二次粒子径の平均値(Rs)とした。
【0102】
これと前記(1)で求めた二軸平均一次粒子径(R)との比(Rs/R)を計算し会合度とした。
【0103】
(II:評価項目)
(II−1:研磨速度)
前記(I−1)で得られた研磨液を用いて、下記研磨条件で、3種類のブランケット基板(ブランケット基板a〜c)を研磨・洗浄した。
【0104】
(研磨条件)
・研磨、洗浄装置:CMP用研磨機(アプライドマテリアルズ社製、製品名MIRRA)
・研磨パッド:発泡ポリウレタン樹脂
・定盤回転数:93回/min
・ヘッド回転数:87回/min
・研磨圧力:14kPa
・研磨液の供給量:200ml/min
・研磨時間:60秒
(ブランケット基板)
・ブランケット基板(a):
厚さ1000nmの二酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板。
【0105】
・ブランケット基板(b):
厚さ200nmの窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板。
【0106】
・ブランケット基板(c):
厚さ1600nmの銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板。
【0107】
研磨・洗浄後の3種類のブランケット基板それぞれについて、下記のようにして研磨速度を求めた。
【0108】
ブランケット基板(a)については研磨前後での膜厚を膜厚測定装置RE−3000(大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて測定し、その膜厚差から求めた。
【0109】
ブランケット基板(b)及びブランケット基板(c)については、研磨前後での膜厚を金属膜厚測定装置(日立国際電気株式会社製 型番VR−120/08S)を用いて測定し、その膜厚差から求めた。
【0110】
研磨速度の測定結果を表1に示す。
【0111】
(II−2:分散安定性評価)
前記(I−2)で調製した分散安定性評価用CMP用研磨液を、それぞれ60℃の恒温槽に2週間保管した後、研磨液中の研磨粒子についての沈降の有無を目視で確認することで、研磨液中の研磨粒子の分散安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0112】
(III)評価結果
実施例1〜3のコロイダルシリカを用いたCMP用研磨液においては、分散安定性は良好であり、層間絶縁膜の研磨速度が90〜97nm/min程度と高速に研磨できることが確認された。
【0113】
これに対し、比較例1〜8では、規定した粒子の性質(1)〜(3)をすべて満たすコロイダルシリカ粒子ではない。これらの分散安定性は良好であるものと良好でないものがあり、さらに層間絶縁膜の研磨速度が約40〜70nm/min程度であった。
【表1】
【0114】
(実施例1のCMP用研磨液の研磨粒子量の検討)
実施例1のコロイダルシリカを用いたCMP用研磨液の研磨粒子の配合量を5.0質量%から3.0質量%に、水の配合量を93.9質量%から96.9質量%に変更した以外は、前記(I−1)と同様にしてCMP用研磨液(実施例4)を調製した。また、研磨粒子の配合量を5.0質量%から7.0質量%に、水の配合量を93.9質量%から90.9質量%に変更した以外は、前記(I−1)と同様にしてCMP用研磨液(実施例5)を調製した。
【0115】
上記の2液の二酸化珪素ブランケット基板(a)、窒化タンタルブランケット基板(b)、銅ブランケット基板(c)の研磨速度を上記の評価方法にて評価した。その結果を、実施例1の結果と共に表2に示す。
【0116】
表より、実施例1のCMP用研磨液の研磨粒子配合量をある程度変更しても、層間絶縁膜の研磨速度が81〜102nm/min程度と、比較例1〜8と比較しても高速に研磨できることが確認された。
【表2】
【産業上の利用の可能性】
【0117】
本発明によれば、層間絶縁膜が高速に研磨できるCMP用研磨液が得られ、研磨工程時間の短縮によるスループットの向上が可能となる。
【0118】
また、研磨粒子の添加量が従来のものと比較して相対的に少ない場合であっても、層間絶縁膜の高い研磨速度を得ることができる。
【0119】
さらに、少ない研磨粒子添加量でよいため、研磨液を従来よりも高濃度で濃縮することができるため、保存・運搬に対する利便性が高いほか、顧客のプロセスにあわせたより自由度の高い使用方法が提供できる。
【0120】
また、このCMP用研磨液を用いて化学機械研磨を行う本発明の研磨方法は、生産性が高く、微細化、薄膜化、寸法精度、電気特性に優れ、信頼性の高い半導体デバイス及び他の電子機器の製造に好適である。
【符号の説明】
【0121】
1 層間絶縁膜
2 バリア層
3 導電性物質
4 粒子
5 外接長方形
6 基板
7 凹部
8 オーバー研磨された部分
L 外接長方形の長径
B 外接長方形の短径
図1
図2
図3
図4