(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分(A)の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対して、3〜55質量%である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
前記ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体における、前記ジメチルアクリルアミドの重合割合が、前記ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体の総質量に対して、重合原料換算で10〜15質量%である請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
前記成分(A)が、1分子あたり平均1.8〜2.5個のエポキシ基を有し、かつエポキシ当量が500以下であるエポキシ樹脂(X)と、分子内に前記式(1)で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ有するアミン化合物(Y)とを、反応させて得られるエポキシ樹脂である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているプリプレグでは、硬化時間が未だ長く、硬化物の破壊靭性も十分なものではない。
特許文献2に開示されているプリプレグは、低温での十分な硬化性を有してはいるものの、前記プリプレグの硬化物の破壊靭性については、さらなる向上が求められているのが現状である。
また、特許文献3、4、5および6の技術では、マトリックス樹脂の硬化時間が長く、高い硬化温度を必要とするため、上述の要求に合致するものではない。
【0009】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、低温でも短時間に硬化が完了し、プリプレグの常温での作業性と成形時のボイドの抑制を両立させることができるエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。また優れた機械物性、とりわけ優れた破壊靭性及び耐熱性をもった繊維強化プラスチックを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下の構成を満たすエポキシ樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂組成物と比較して低温かつ短時間で成形品が得られることを見出した。その上、このエポキシ樹脂組成物を用いることにより、優れた機械物性、とりわけ優れた破壊靭性及び耐熱性をもった繊維強化プラスチックが得られることを見出した。
すなわち本発明は以下に関する。
【0011】
[1]下記成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を含むエポキシ樹脂組成物;
成分(A):分子内に下記式(1)で表されるモノマーユニットを有するエポキシ樹脂
成分(B):数平均分子量が600以上、1300以下であり、かつ分子内に下記式(1)で表されるモノマーユニットを有さない2官能エポキシ樹脂
成分(C):
ポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体
成分(D):硬化剤
【化1】
[2]前記成分(B)がビスフェノール型2官能エポキシ樹脂である[1]に記載のエポキシ樹脂組成物;
[3]前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分(A)の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対して、3〜55質量%である、[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物;
[
4]前記成分(C)が、ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体である、[1]〜[
3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
[
5]前記ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体における、前記ジメチルアクリルアミドの重合割合が、前記ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体の総質量に対して、重合原料換算で10〜15質量%である[
4]に記載のエポキシ樹脂組成物;
[
6]前記成分(D)がジシアンジアミドである、[1]〜[
5]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
[
7]さらに下記成分(E)を含む、[1]〜[
6]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
成分(E):ウレア系硬化助剤
[
8]さらに下記成分(F)を含む、[1]〜[
7]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
成分(F):30℃で液状のエポキシ樹脂
[
9]前記成分(F)が、分子内に前記式(1)で表されるモノマーユニットを有さず、かつ30℃における粘度が1000Pa・s以下である、[
8]に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
0]前記成分(F)がビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂である、[
9]に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
1]前記成分(E)が3−フェニル−1,1−ジメチルウレア、またはトルエンビスジメチルウレアである、[
7]〜[1
0]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
2]前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対し、
前記成分(A)の含有量が3質量%〜55質量%であり、
前記成分(B)の含有量が45質量%〜97質量%であり、
前記成分(A)及び前記成分(B)の合計量が100質量%を超えず、
前記成分(C)の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対し、4〜11質量部であり、
前記成分(D)がジシアンジアミドであり、前記ジシアンジアミドの含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対し、1〜25質量部である、[1]〜[1
1]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
3]前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対し、
前記成分(A)の含有量が3質量%〜55質量%であり、
前記成分(B)の含有量が8質量%〜55質量%であり、
前記成分(F)の含有量が20〜60質量%であり、
前記成分(A)、(B)及び(F)の合計量が100質量%を超えず、
前記成分(C)の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対し、4〜11質量部であり、
前記成分(D)がジシアンジアミドであり、前記ジシアンジアミドの含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対し、1〜25質量部である、[
8]〜[1
1]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
4]前記成分(D)がジシアンジアミドであり、
前記エポキシ樹脂組成物中の前記成分(D)の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂が有するエポキシ基の全モル数に対して、前記ジシアンジアミドが有する活性水素のモル数が0.6〜1.0倍となる量である、[1
2]または[1
3]に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
5]前記成分(A)が、1分子あたり平均1.8〜2.5個のエポキシ基を有し、かつエポキシ当量が500以下であるエポキシ樹脂(X)と、分子内に前記式(1)で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ有するアミン化合物(Y)とを、反応させて得られるエポキシ樹脂である、[1]〜[1
4]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物;
[1
6]前記[1]〜[1
5]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物からなるフィルム;
[1
7]前記[1]〜[1
5]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材に含浸させたプリプレグ;
[1
8]前記[1]〜[1
5]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維からなる繊維強化プラスチック。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温でも短時間に硬化が完了できるエポキシ樹脂組成物を提供できる。また前記エポキシ樹脂組成物を用いることによって、優れた機械物性、とりわけ優れた破壊靭性及び耐熱性を有する繊維強化プラスチックを得ることができる。すなわち本発明によれば、優れたエポキシ樹脂組成物とこれを用いたフィルム及びプリプレグ、さらにはこのプリプレグから製造された繊維強化プラスチックを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について述べる。
なおエポキシ樹脂という用語は、一般的に熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、或いは分子内に1つまたは複数の1,2−エポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。
本発明における「分子量」とは、特に断りがない限り、数平均分子量を表す。
本明細書において、「〜」は、この「〜」の前後に記載された数値及び比等を含む。
【0014】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明の1つの態様において、エポキシ樹脂組成物とは、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を含むものである。以下、各成分について説明する。
(成分(A):分子内に式(1)で表されるモノマーユニットを有するエポキシ樹脂)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)として、分子内に下記式(1)で表されるモノマーユニットを有するエポキシ樹脂を含有する。下記式(1)で表されるモノマーユニットを有するエポキシ樹脂を含むことにより、本発明のエポキシ樹脂組成物は、低温かつ短時間での硬化が可能となる。
【化2】
本発明の1つの態様において、「低温」とは、100〜130℃の温度のことを意味する。また、「短時間」とは、5〜60分間のことを意味する。
【0015】
前記成分(A)は、例えばエポキシ樹脂(X)と、分子内に前記式(1)で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ有するアミン化合物(Y)とを混合し反応させる(以下、この反応を「予備反応」と称すことがある)ことにより、前記成分(A)に相当する、複数種類のエポキシ樹脂を含む混合物として得ることができる。得られた混合物から、前記成分(A)を単離して用いる必要は特にない。
予備反応に用いるエポキシ樹脂(X)としては、本発明の効果を有する限り特に制限は無いが、1分子あたり2個のエポキシ基を有し、エポキシ当量が500以下であるエポキシ樹脂であることが好ましい。なお、前記エポキシ当量は300以下であると、これを含むエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、例えば前記エポキシ樹脂組成物を含むプリプレグの製造・加工時における作業性(以下、単に「作業性」と称することがある)が良好となるため、より好ましい。また、前記エポキシ樹脂(X)のエポキシ当量の下限値としては、本発明の効果を有する限り特に制限はないが、通常100以上であることが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂(X)としては、100〜500のエポキシ当量を有するものが好ましく、100〜300のエポキシ当量を有するものがより好ましい。
エポキシ樹脂(X)のエポキシ当量を500以下とすることにより、前記成分(A)の粘度が高くなりすぎず、前記成分(A)を含むエポキシ樹脂組成物の増粘を抑制することができる。従って、前記エポキシ樹脂組成物やこれを含むプリプレグの加工成形時の作業性が良好になるため好ましい。
予備反応に好適に用いられるエポキシ樹脂(X)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、取扱い性及び経済性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。尚、種々の特性をもたせるために、数種類のエポキシ樹脂を混合して用いることも可能である。
分子内に式(1)で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ有するアミン化合物(Y)としては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、及びこれらの誘導体等が好ましく用いられる。分子内に式(1)で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ有するアミン化合物(Y)の添加量は、予備反応に用いるエポキシ樹脂(X)100質量部に対して5〜10質量部が好ましい。アミン化合物(Y)の添加量が5質量部以上であると、得られた成分(A)を含むエポキシ樹脂組成物が短時間で硬化可能となり、かつ、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性が高くなるため好ましい。またアミン化合物(Y)の添加量を10質量部以下とすることにより、作業性が良好となるため好ましい。
また、予備反応の反応温度は通常120〜180℃程度であり、反応時間は、目的とする成分(A)の分子量に応じ、通常1〜20時間とすることが好ましい。
本発明の1つの態様において、成分(A)は、1分子あたり2個のエポキシ基を有し、かつエポキシ当量が500以下であるエポキシ樹脂(X)と、分子内に前記式(1)で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ有するアミン化合物(Y)とを、反応させて得られるエポキシ樹脂であることが好ましく、1分子あたり2個のエポキシ基を有し、かつエポキシ当量が500以下であるエポキシ樹脂(X)と、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、及びこれらの誘導体等からなる群より選択される少なくとも1つのアミン化合物(Y)とを反応させて得られるエポキシ樹脂であることがより好ましい。
本発明の1つの態様において、「エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性」は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られた硬化物の、ガラス転移温度(G’−Tg)により評価することができる。
【0016】
本発明の1つの態様において、エポキシ樹脂組成物中の前記成分(A)の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し3質量部〜55質量部であることが好ましい。前記成分(A)の量が3質量部以上であれば、前記エポキシ樹脂組成物が短時間で硬化可能となり、かつ、硬化物の耐熱性が高くなるため好ましい。一方、硬化物の破壊靭性の観点から、55質量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは4〜45質量部である。特に好ましくは10〜45質量部である。すなわち、本発明の1つの態様において、前記エポキシ樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対して、3〜55質量%であることが好ましく、4〜45質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。
本発明の1つの態様において、「エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性」とは、ASTM D5045に示されるSENB法によって求められる破壊靭性値(臨界エネルギー開放率)GI
cのことを指す。
【0017】
(成分(B):数平均分子量が600以上、1300以下であり、かつ分子内に式(1)で表されるモノマーユニットを有さない2官能エポキシ樹脂)
本発明において「2官能エポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。以下、「3官能エポキシ樹脂」等についても同様である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(B)を含有することにより、破壊靭性が高くなるため好ましい。
前記成分(B)としては、ビスフェノール型2官能エポキシ樹脂、またはオキサゾリドン環構造を有する2官能エポキシ樹脂が好ましく、具体的には、ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂、ビスフェノールF型2官能エポキシ樹脂、オキサゾリドン環構造を持つ2官能エポキシ樹脂等が挙げられる。機械的強度が高いことからは、ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性が高いことからはオキサゾリドン環構造を持つ2官能エポキシ樹脂が好ましい。なお成分(B)は、オキサゾリドン環構造を有するビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂であってもよい。
また、成分(B)として、これらエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる成分(B)の数平均分子量は、600以上1300以下である。前記成分(B)の数平均分子量が600以上であれば、これを含むエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性が高くなるため好ましい。また、成分(B)の数平均分子量としてより好ましくは、900以上である。一方、エポキシ樹脂組成物の硬化物が高い耐熱性を有するためには、成分(B)の数平均分子量は1300以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。すなわち、成分(B)の数平均分子量は、600以上1300以下が好ましく、900以上1000以下がより好ましい。
本明細書において、「常温」とは、10〜30℃の温度範囲のことを意味する。
本発明において成分(B)として好ましく用いられるビスフェノール型2官能エポキシ樹脂の市販品としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER1001、jER1002(いずれも商品名、三菱化学(株)製)などが挙げられる。オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂としては、AER4152、AER4151(いずれも商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)、ACR1348(商品名、株式会社ADEKA社製)、DER852(商品名、DOW社製)などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる成分(B)は、2官能エポキシ樹脂であることが必要である。2官能エポキシ樹脂を用いることにより、例えば3官能以上のエポキシ樹脂を用いた場合より、前記エポキシ樹脂を含む樹脂組成物の硬化物の破壊靭性が向上し、1官能エポキシ樹脂を用いた場合より、前記硬化物の耐熱性が向上する。
【0019】
エポキシ樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し8〜97質量部であることが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対して、8〜97質量%であることが好ましい。
中でも、前記エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂として上述の成分(A)及び成分(B)のみを含有する場合、成分(B)の含有量は、前記成分(A)の含有量が前述の範囲となるよう定めればよい。例えば、前記成分(A)の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し3〜55質量部である場合、成分(B)の含有量は45〜97質量部であることが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂成分が、成分(A)と成分(B)のみである場合、これら成分(A)、(B)の割合は、エポキシ樹脂組成物に含まれる成分(A)と成分(B)の総質量に対して、成分(A)が3〜55質量%であり、成分(B)が45〜97質量%であることが好ましい。
また前記エポキシ樹脂組成物が、さらに後述する成分(F)のような他のエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、エポキシ樹脂の総質量に対して、8質量部以上55質量部以下であることが好ましい。成分(B)の含有量を8質量部以上とすることにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靱性がより高くなるので好ましい。一方、55質量部以下とすることにより、より耐熱性が高い成形品を容易に得ることができるため好ましい。成分(B)の含有量として、特に好ましくは、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の総質量に対して、20〜50質量部である。すなわち、エポキシ樹脂組成物が更に成分(F)を含む場合、エポキシ樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対して、8〜55質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
【0020】
(成分(C):トリブロック共重合体)
本発明において成分(C)として使用するトリブロック共重合体は、ソフトブロックとなるポリマーの両端にハードブロックとなるポリマーが連結した構造を持つトリブロック共重合体のことを指す。なお、「ソフトブロック」は、「ハードブロック」に対して相対的にTgが高い。また、「ポリマーの両端」とは、ポリマーを構成する分子鎖において、最も長い直鎖の末端部分のことを指す。
前記トリブロック共重合体としては、具体的には、ポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体、ポリ(スチレン)/ポリ(ブタジエン)/ポリ(メタクリル酸メチル)のトリブロック共重合体などが挙げられる。すなわち、ポリ(メチルメタクリレート)と、ポリ(ブチルアクリレート)と、ポリ(メチルメタクリレート)がこの順に共重合したトリブロック共重合体、またはポリ(スチレン)と、ポリ(ブタジエン)と、ポリ(メタクリル酸メチル)がこの順に共重合したトリブロック共重合体などが挙げられる。
中央のソフトブロックにエポキシ樹脂に非相溶なポリマーを選択し、ハードブロックの片方もしくは両方としてエポキシ樹脂と相溶しやすいポリマーを選択することで、トリブロック共重合体はエポキシ樹脂中にミクロ分散する。ソフトブロックを構成するポリマーはハードブロックを構成するポリマーよりも、ガラス転移温度が低く破壊靱性が良好である。従って、この構造のトリブロック共重合体をエポキシ樹脂中にミクロ分散することで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性の低下を抑制し、破壊靱性を向上させることができる。
エポキシ樹脂と相溶しやすいポリマーであるハードブロックを両側にもつ、ポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体は、エポキシ樹脂への分散が良好でエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靱性を大きく向上させることができるので、より好ましい。市販品として入手可能なポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体としては、例えばアルケマ(ARKEMA)社のナノストレングス(Nanostrength、登録商標)M52N、M22、M22N(いずれも商品名)などが挙げられる。
また成分(D)としては、前記ソフトブロック及び/又はハードブロックを構成する原料となる単量体として、更にジメチルアクリルアミドを含有するトリブロック共重合体を用いてもよい。ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体は、これを含むエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性が良好であるため、さらに好ましい。市販品として入手可能なポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体のうち、このような共重合体としては、例えばアルケマ(ARKEMA)社のナノストレングス(Nanostrength、登録商標)M52N、M22N(いずれも商品名)などが挙げられる。
さらに成分(C)におけるジメチルアクリルアミドの共重合割合が、前記成分(C)の原料単量体換算で10〜15質量%である場合に、エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性が特に良好であるため、特に好ましい。
すなわち、成分(D)がジメチルアクリルアミドを更に共重合したトリブロック共重合体である場合、前記ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体における、前記ジメチルアクリルアミドの重合割合が、前記ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体の総質量に対して、重合原料換算で10〜15質量%であることが好ましい。
市販品として入手可能なポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体のうち、このような共重合体としては、例えばアルケマ(ARKEMA)社のナノストレングス(Nanostrength、登録商標)M52N(商品名)などが挙げられる。
【0021】
また市販品として入手可能な、ポリ(スチレン)/ポリ(ブタジエン)/ポリ(メタクリル酸メチル)のトリブロックコポリマーとしては、例えばアルケマ社製のNanostrength 123、250、012、E20、E40(いずれも商品名)などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物における成分(C)の含有量は、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し、4質量部以上であればエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靱性が高く好ましく、11質量部以下であればエポキシ樹脂組成物の硬化物の曲げ強度が高く好ましい。特に好ましくは5〜9質量部である。
【0022】
(成分(D):硬化剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる成分(D)は、硬化剤として用いられる。成分(D)として用いられる硬化剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えばジシアンジミド、アミン系硬化剤、イミダゾール類、酸無水物、塩化ホウ素アミン錯体等を用いることができる。
このうち、アミン系硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスルホン、等が挙げられる。
また、イミダゾール類としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
また、酸無水物としては、水素化メチルナジック酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
中でもジシアンジアミドを用いることで、前記エポキシ樹脂組成物が空気中の湿気により性能が変化せず、前記エポキシ樹脂組成物の品質を長期間安定に保つことができ、かつ比較的低温で硬化を完了することができるため好ましい。
ここで、「比較的低温」とは、100〜130℃の温度のことを意味する。
成分(D)の含有量は、前記成分(D)の種類により異なるが、例えば成分(E)がジシアンジアミドである場合、前記エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂100質量部に対し、通常1〜25質量部である。より好ましくは、前記エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂が有するエポキシ基の全モル数に対し、前記ジシアンジアミドの活性水素のモル数が0.6〜1.0倍となる量であることが好ましい。0.6倍以上とすることにより、耐熱性が良好で、機械的物性が良好(すなわち強度が高い)な硬化物が得られるため好ましい。また、1.0倍以下とすることにより機械物性が良好な硬化物が得られるという利点を有する。前記エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂が有するエポキシ基の全モル数に対する、前記ジシアンジアミドの活性水素のモル数が0.6〜0.8倍であると、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより優れるので、さらに好ましい。
なお、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂が有するエポキシ基の全モル数は、仕込み量から算出すればよい。
【0023】
(成分(E):ウレア系硬化助剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて成分(E):ウレア系硬化助剤を含有していてもよい。特に前記成分(D)としてジシアンジアミドを使用し、前記ジシアンジアミドとウレア系硬化助剤を併用することで、これらを含むエポキシ樹脂組成物は低温でも短時間で硬化を完了することができるため、好ましい。
ウレア系硬化助剤としては、例えば3−フェニル−1,1−ジメチルウレア(PDMU)、トルエンビスジメチルウレア(TBDMU)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(DCMU)等の尿素誘導体化合物が挙げられるが、これらに限定されない。ウレア系硬化助剤は単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
特に3−フェニル−1,1−ジメチルウレアとトルエンビスジメチルウレアは、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性および曲げ強度が高くなること、また前記エポキシ樹脂組成物の硬化時間がより短くなることから好ましい。
また、前記成分(E)として3−フェニル−1,1−ジメチルウレアや3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアを用いることにより、これを含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物の、靱性が特に高くなるため好ましい。
【0024】
成分(E)の含有量は、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し、1.0〜5.0質量部であることが、良好な硬化物が得られる点から好ましい。さらに1.5〜4.0質量部であると、前記エポキシ樹脂組成物を、成形時に硬化温度まで加温した場合、急激な粘度上昇が起こらず、得られた成形品中にボイドが発生することを抑制でき、かつ高い耐熱性を有する成形品が得られるためさらに好ましい。
【0025】
(成分(F):30℃で液状のエポキシ樹脂)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記組成物の粘度調整のために、さらに成分(F)を含有していることが好ましい。成分(F)は、30℃で液状のエポキシ樹脂であり、好ましくは、分子内に式(1)で表されるモノマーユニットを有さず、かつ30℃における粘度が1000Pa・s以下であるエポキシ樹脂のことを指す。なお、成分(F)の分子量は、前記成分(F)の構造により異なるが、例えばビスフェノール型2官能エポキシ樹脂の場合は600未満が好ましく、500以下がより好ましい。また、前記成分(F)の分子量の下限値も、前記成分(F)の構造により異なるが、例えばビスフェノール型2官能エポキシ樹脂の場合なら200以上が好ましい。
前記成分(F)の30℃における粘度は、前記成分(F)を1Hz 2℃/minで昇温し、例えばDSR−200(レオメトリックス社)などのレオメーター(回転型動的粘弾性測定装置)を用いて、30℃における粘度を測定することで得られる。
また、成分(F)の粘度は、本明細書に規定した範囲外の粘度であっても、30℃における粘度に補正した時に本明細書に規定した粘度の値であれば、それらは本発明の範囲に含まれる。
このようなエポキシ樹脂の例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミン型エポキシ樹脂、グリシジルフェニルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。さらにはこれらのエポキシ樹脂を例えばゴムやウレタン等で変性したエポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定はされない。また、これらエポキシ樹脂を2種類併用しても構わない。
このようなエポキシ樹脂の市販品としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂としてjER828(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、jER834(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としてjER807(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を挙げることができる。
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物が高い耐熱性を有する点、及び前記エポキシ樹脂組成物は、成形時に加温されて硬化温度に達しても急激な粘度上昇が起こらず、得られる成形品中のボイド発生が抑制される点から、成分(F)は、ビスフェノール型の2官能エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。
【0026】
成分(F)の含有量は、前記成分(A)及び成分(B)の含有量が前述の範囲となるよう定めればよいが、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の合計量100質量部に対し20質量部以上60質量部以下であることが好ましい。
成分(F)の含有量が20質量部以上であれば、前記成分(F)を含むエポキシ樹脂組成物を用いることにより、ボイドの少ない成形品が得られる。一方、前記エポキシ樹脂組成物を含むプリプレグの作業性、および前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性の観点から、60質量部以下であることが好ましい。特に好ましくは45〜50質量部である。すなわち、成分(F)の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対して、20〜60質量%であることが好ましく、45〜50質量%であることがより好ましい。
【0027】
(その他のエポキシ樹脂(Z))
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)及び(B)のみ、或いは成分(A)、(B)及び(F)のみからなることが好ましいが、本発明の趣旨を損なわない範囲で成分(A)、成分(B)、及び成分(F)以外のエポキシ樹脂(Z)を含有していてもよい。
このようなエポキシ樹脂(Z)として、例えば、2官能エポキシ樹脂ではビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、さらにはこれらを変性したエポキシ樹脂等が挙げられる。3官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルフェニルエーテル型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノールのようなグリシジルアミン型かつグリシジルフェニルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。さらにはこれらのエポキシ樹脂を変性したエポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定はされない。また、これらエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせてその他エポキシ樹脂(Z)として使用しても構わない。
【0028】
(その他添加剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、任意の成分として、前記成分(B)以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーからなる群から選ばれた1種以上の添加剤(以下「任意の添加剤」と称す)を含有していてもよい。この任意の添加剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率およびチキソトロープ性を適正化する役割があるだけでなく、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性を向上させる。任意の添加剤として用いられる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びエラストマーは、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
また前記任意の添加剤は、エポキシ樹脂成分中に溶解していてもよく、微粒子、長繊維、短繊維、織物、不織布、メッシュ、パルプなどの形状でエポキシ樹脂組成物中に含まれていても良い。前記任意の添加剤が、微粒子、長繊維、短繊維、織物、不織布、メッシュ、パルプなどの形状でプリプレグの表層に配置される場合には、後述する前記プリプレグを積層して作製される繊維強化プラスチックの、層間剥離を抑制することができるので好ましい。
【0029】
前記熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた少なくとも1つの結合を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。より具体的には、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂が挙げられる。
中でも、耐熱性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどが特に好ましく使用される。また、これらの熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂との反応性官能基を有することは、本発明の樹脂組成物の硬化物の破壊靭性向上および耐環境性維持の観点から好ましい。エポキシ樹脂との好ましい反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、アミノ基および水酸基などが挙げられる。
【0030】
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法については、本発明の効果を有する限り特に制限は無く、公知の方法により製造すればよい。例えば、エポキシ樹脂組成物を構成する全成分を同時に混合してもよく、或いは予め組成物に含まれるエポキシ樹脂の一部と成分(E)(硬化剤)などを混合してマスターバッチを調製し、これを用いてエポキシ樹脂組成物を調製してもよい。混合操作には、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、万能攪拌機、ホモジナイザー、ホモディスペンサー等の混合機を用いることができる。
また、本発明の1つの態様において、エポキシ樹脂組成物は以下の工程で製造してもよい。
工程(1):成分(D)と成分(E)を、エポキシ樹脂の一部に均一に分散させて、触媒樹脂組成物を調製する工程。
工程(2):エポキシ樹脂(成分(A)及び成分(B)、又は成分(F)や成分(Z)を含む場合は、成分(A)、(B)及び(F)の全て)、及び添加剤等を溶解容器に仕込み、140〜170℃で、1〜6時間加熱混合して熱可塑性樹脂溶解ベースを得る工程。
工程(3):前記工程(2)で得られたマスターバッチを50〜70℃に冷却した後、前記工程(1)で得られた触媒樹脂組成物を添加し、50〜70℃で、0.5〜2時間混合してエポキシ樹脂組成物を得る工程。
なお、工程(2)と工程(3)の間に、以下の工程(3’)を有していても良い。その場合、工程(2)にてエポキシ樹脂の一部を仕込み、工程(3)にて残りを仕込むことになる。
工程(3’):熱可塑性樹脂溶解ベースと成分(A)、(B)、(F)、(Z)の残りを溶解容器に仕込み、70℃〜140℃で1〜3時間加熱混合してマスターバッチを得る工程。
【0031】
<エポキシ樹脂組成物からなるフィルム>
本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙などに塗布して硬化することで、前記エポキシ樹脂組成物のフィルムを得ることができる。本発明のフィルムはプリプレグを製造するための中間材料として、また、基材に貼り付け硬化させることで表面保護フィルム、接着フィルムとして有用である。
本発明の1つの側面は、前述のエポキシ樹脂組成物のフィルムとしての使用である。
また、その使用方法は、本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙などの基材の表面に塗布することが好ましい。得られた塗布層は未硬化のまま別の基材に張り付けて硬化しても良く、前記塗布層自体を硬化させ、フィルムとして使用しても良い。
【0032】
<プリプレグ及び繊維強化プラスチック>
本発明のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材に含浸させることにより、プリプレグを得ることができる。
本発明のプリプレグに用いられる強化繊維基材の形態は、トウ、クロス、チョップドファイバー、連続繊維を一方向に引き揃えた形態、連続繊維を経緯にして織物とした形態、トウを一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、複数枚の一方向の強化繊維のシートを異なる方向に重ねて補助糸でステッチして留めマルチアキシャルワープニットとした形態、また、強化繊維を不織布とした形態などが挙げられる。
中でも連続繊維を一方向に引き揃えた形態、連続繊維を経緯にして織物とした形態、トウを一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、また複数枚の一方向の強化繊維のシートを異なる方向に重ねて補助糸でステッチして留めマルチアキシャルワープニットとした形態が好ましい。
硬化物の強度発現のからは、連続繊維を一方向に引き揃えた形態がさらに好ましい。
前記強化繊維基材を構成する強化繊維には制限が無く、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、有機繊維、ボロン繊維、スチール繊維などを使用することができる。なかでも、炭素繊維や黒鉛繊維は、比弾性率が良好で、前記繊維を含む成形品の軽量化に大きな効果が認められるので、本発明のプリプレグに好適に用いることができる。また、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維または黒鉛繊維を用いることができる。
本発明のプリプレグは、公知の方法により、上述した本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることにより得られる。例えば、離型紙などの表面に所定量の前記エポキシ樹脂組成物を塗工し、その表面に強化繊維基材を供給した後、押圧ロールを通過させることにより強化繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させる、或いは、強化繊維基材に所定量の前記エポキシ樹脂組成物を直接塗工した後、必要に応じて前記強化繊維基材を離型紙などで挟んだ後、押圧ロールを通過させることにより、強化繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させることによって製造できる。
すなわち、本発明の1つの側面は、本発明のエポキシ樹脂組成物のプリプレグとしての使用である。前記プリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物と、強化繊維基材とを含むことが好ましい。
【0033】
本発明の繊維強化プラスチックは、上述した本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維からなる。前記繊維強化プラスチックの用途に制限は無く、航空機用構造材料をはじめとして、自動車用途、船舶用途、スポーツ用途、その他の風車やロールなどの一般産業用途に使用できる。
本発明の繊維強化プラスチックの製造方法としては、前述した本発明のプリプレグを用いてオートクレーブ成形、シートラップ成形、プレス成形などを行う成形方法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を含浸させて硬化し成形品を得るRTM(Resin Transfer Molding)、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:真空樹脂含浸製造法)、フィラメントワインディング、RFI(Resin Film Infusion)などの成形法を挙げることができるが、これらの成形方法に限られるものではない。
本発明のプリプレグをプレス成型することによって繊維強化プラスチックを製造する場合、本発明のプリプレグ、または前記プリプレグを積層したプリフォームを、予め硬化温度に調整した金型に挟んで加熱加圧する工程を含むことが好ましい。金型の温度は、120〜140℃であることが好ましい。また、5〜60分間硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0035】
<原材料>
(成分(A))
・成分(A−1):
以下の手順で合成した、エポキシ当量266g/eqであるエポキシ樹脂。数平均分子量370のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、製品名:jER828)100質量部と、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化(株)製、製品名:セイカキュアーS)9質量部とを混合し、170℃に加熱し、1時間反応(予備反応)させて、成分(A−1)を得た。
(成分(B))
・成分(B−1):ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂(数平均分子量900、商品名:jER1001、三菱化学(株)製)
・成分(B−2):ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂(数平均分子量1200、商品名:jER1002、三菱化学(株)製)
・成分(B−3):格中にオキサゾリドン環を持つ2官能エポキシ樹脂(数平均分子量814、商品名:AER4152、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)
(成分(C))
・成分(C−1):ポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体であり、さらにジメチルアクリルアミドが共重合した、アクリル系ブロック共重合体(商品名:Nanostrength M52N、アルケマ(株)製)
・成分(C−2):(ポリ(メチルメタクリレート)/ポリ(ブチルアクリレート)/ポリ(メチルメタクリレート)のトリブロック共重合体であり、さらにジメチルアクリルアミドが共重合したアクリル系ブロック共重合体(商品名:Nanostrength M22N、アルケマ(株)製)
(成分(D))
・成分(D−1):ジシアンジアミド(商品名:DICY15、三菱化学(株)製)
(成分(E))
・成分(E−1):3−フェニル−1,1−ジメチルウレア(商品名:オミキュア94、保土ヶ谷化学工業(株)製)
・成分(E−2):3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(商品名:DCMU99、PTIジャパン(株)製)
・成分(E−3):トルエンビスジメチルウレア(商品名:オミキュア24、保土ヶ谷化学工業(株)製)
(成分(F))
・成分(F−1):ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂(数平均分子量370、商品名:jER828、三菱化学(株)製)
(その他のエポキシ樹脂(Z))
・(Z−1):フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂(数平均分子量1100、商品名:N775、DIC(株)製)
(その他の成分(K))
・(K−1):トリブロック共重合体ではない、ブロック共重合体。ポリエーテルエステルアミド(商品名:TPAE32、T&K TOKA(株)製)
・(K−2):4,4−ジアミノジフェニルスルホン(商品名:セイカキュアS、和歌山精化工業(株)製)
・(K−3):エポキシ樹脂:jER828とDICY15の予備反応物
以下の手順で合成した、エポキシ樹脂。数平均分子量370のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、製品名:jER828)100質量部と、ジシアンジアミド(三菱化学(株)製、製品名:DICY15)9質量部とを混合し、150℃に加熱して、1時間反応させた。
【0036】
<実施例及び比較例で用いる、触媒樹脂組成物の調製手順>
表1〜表6に示す、各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物の組成のうち、成分(F−1)(商品名:jER828)の一部を取り分け、成分(D)(DICY15)と成分(E)を3本ロールミルで均一に分散させて触媒樹脂組成物を調製した。
<エポキシ樹脂組成物の調製手順>
表1〜表6に示す各成分から、前述の触媒樹脂組成物の調製に用いた成分と、エポキシ樹脂(1)及び(2)を除く全成分をガラスフラスコに計量し、150℃にて加熱混合することにより、均一なマスターバッチ1を得た。次に、得られたマスターバッチ1を90℃以下に冷却した後、エポキシ樹脂(1)または(2)を添加し、90℃で加熱混合することによって均一に分散させ、マスターバッチ2を得た。前記マスターバッチ2を60℃以下に冷却した後、前述の触媒樹脂組成物を添加し、60℃で加熱混合することにより均一に分散させ、エポキシ樹脂組成物を得た。得られた各エポキシ樹脂組成物の組成は、各々表1〜表6に記載の通りである。
【0037】
<エポキシ樹脂組成物の硬化樹脂板の作製手順>
前記エポキシ樹脂組成物の調製手順に従って得られたエポキシ樹脂組成物を、厚さ2mmまたは3mmのポリテトラフルオロエチレン製のスペーサーと共にガラス板で挟んで、昇温速度4℃/minで昇温し、120℃で45分間保持して硬化させることにより、硬化樹脂板を得た。
【0038】
<G’−Tgの測定方法>
前記エポキシ樹脂組成物の硬化樹脂板の作製手順で得られた厚み2mmの硬化樹脂板、または後述する実施例16〜21で得られた繊維強化プラスチックパネルを、試験片(長さ55mm×幅12.5mm)に加工し、レオメーター(TAインストルメンツ社製、製品名:ARES−RDA)を用いて、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で、logG’を温度に対してプロットした。logG’の平坦領域の近似直線と、G’が転移する領域の近似直線との交点の温度をガラス転移温度(G’−Tg)とする。
【0039】
<硬化樹脂板のGI
cの測定方法>
前記エポキシ樹脂組成物の硬化樹脂板の作製手順で得られた厚み3mmの硬化樹脂板について、ASTM D5045に示されるSENB法によって破壊靱性値(臨界エネルギー開放率)GI
cを求めた。
<繊維強化プラスチックの曲げ特性の測定方法>
後述する実施例16〜21で得られた繊維強化プラスチックパネルを、試験片の長手方向に対して補強繊維が0゜に配向するように試験片(長さ130mm×幅12.7mm)に加工し、万能試験機(INSTRON社製、製品名:INSTRON 4465)を用いて、繊維強化プラスチックの曲げ特性を測定した。温度23℃、湿度50%RHの環境下、3点曲げ治具(圧子R=5mm、サポートR=3.2mm)を用い、サポート間距離(L)と試験片の厚み(d)の比L/d=40、クロスヘッドスピード(分速)=(L
2×0.01)/(6×d)として、繊維強化プラスチックの曲げ強度、曲げ弾性率、および最大荷重時伸度を測定した。なお、0°曲げ特性はVf60%となるよう換算した。
【0040】
<繊維強化プラスチックの層間せん断強度の測定方法>
後述する実施例16〜21で得られた繊維強化プラスチックパネルを、試験片の長手方向に対して補強繊維が0゜に配向するように試験片(長さ25mm×幅6.3mm)に加工し、万能試験機(INSTRON社製、製品名:INSTRON 4465)を用いて、繊維強化プラスチックの層間せん断強度を測定した。温度23℃、湿度50%RHの環境下、3点曲げ治具(圧子R=3.2mm、サポートR=1.6mm)を用い、サポート間距離(L)と試験片の厚み(d)の比L/d=4、クロスヘッドスピード(分速)=(L
2×0.01)/(6×d)として、繊維強化プラスチックの層間せん断強度(ILSS)を測定した。
【0041】
<実施例1〜15、22〜24、比較例1〜6>
上記の調製手順及び作製手順により、表1〜5に示す組成のエポキシ樹脂組成物および硬化樹脂板を製造し、上記測定方法によりG’−Tg及びGI
cの測定を行った。結果を、各々表1〜5に示す。
実施例1〜15はいずれも、120℃で45分間保持の硬化条件で十分に硬化しており、GI
cが1000J/m
2以上の高い値であり、G’−Tgも125℃以上であった。
表1に示すように、比較例1は硬化時間が長く、耐熱性が低い。
表2に示すように、比較例2は破壊靭性が低い。
表3に示すように、比較例3は破壊靭性が低い。
表4に示すように、比較例4は破壊靭性が低く、比較例5及び6は耐熱性が低い。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
<実施例16〜21>
表6に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を得た。
次いで、2枚のフィルムを用いた場合のプリプレグの樹脂含有率が38質量%となるように樹脂フィルム目付けを設定し、65℃の条件で、得られたエポキシ樹脂組成物をフィルムコーターにて離型紙に塗布し樹脂フィルムを得た。
この樹脂フィルムの樹脂塗布面上に、繊維目付が150g/m
2のシートになるように、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:TR50S)をドラムワインドにて巻きつけた。さらにもう1枚の樹脂フィルムをドラムワインド上で炭素繊維シート上に貼り合わせた。
2枚の樹脂フィルムに挟まれた炭素繊維シートを温度100℃、圧力0.4MPa、送り速度1m/分の条件でフュージングプレス(アサヒ繊維機械工業(株)、製品名:JR−600S、処理長1340mm、圧力はシリンダー圧)に通し、繊維目付が150g/m
2、樹脂含有量が38質量%のプリプレグを得た。
得られたプレプレグを16枚積層し、オートクレーブで圧力0.6MPa下で、4℃/minで昇温し、80℃で7分保持後、さらに4℃/minで昇温し、120℃で23分間加熱硬化させ繊維強化プラスチックパネルを得た。
次いで、上記の測定方法により、G’−Tg、0゜曲げ強度、0゜曲げ弾性率、0°曲げ最大荷重時伸度、層間せん断強度(ILSS)の測定を行った。結果を表6に示す。
【0048】
【表6】