特許第5768939号(P5768939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768939
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】軸受
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/00 20060101AFI20150806BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20150806BHJP
   F16C 25/04 20060101ALI20150806BHJP
   F16C 33/24 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C23C2/00
   F16C17/02 Z
   F16C25/04 Z
   F16C33/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-528208(P2014-528208)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2013070802
(87)【国際公開番号】WO2014021399
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-171697(P2012-171697)
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-187466(P2012-187466)
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(72)【発明者】
【氏名】小川 衛介
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−207247(JP,A)
【文献】 特表2004−530797(JP,A)
【文献】 特開平09−125216(JP,A)
【文献】 特開平08−013113(JP,A)
【文献】 特開平07−018395(JP,A)
【文献】 特開2010−150664(JP,A)
【文献】 特開2003−105511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属めっき浴中に浸漬される回転体の軸部を回転自在に支持する軸受であって、
前記軸部が摺動する摺動面及び前記摺動面と直接的又は間接的に接続された端面を有するセラミックスからなる少なくとも2の部分円筒形の軸受部と、前記少なくとも2の軸受部を、それらの一方の端面が間隙を介し相対するように周方向に並べて挿着するための挿着凹部、及び前記軸受部の他方の端面に当接し周方向の移動を規制するための移動規制部を有する保持部とを備え、
前記少なくとも2の軸受部は、前記間隙を介して相対する一方の端面が接触又は離間するよう、少なくとも一の軸受部が他の軸受部に対し周方向に移動可能に構成されていることを特徴とする軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の軸受において、前記間隙を通して前記摺動面の中心を見た場合に、前記間隙と前記中心とが交差していることを特徴とする軸受。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸受において、前記移動規制部は、前記軸受部の他方の端面に当接する、周方向に突出する曲面からなる端面を有することを特徴とする軸受。
【請求項4】
請求項3に記載の軸受において、前記軸受部の他方の端面、又は前記軸受部の他方の端面に相対する前記移動規制部の端面に径方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする軸受。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の軸受において、前記移動規制部は、前記挿着凹部と接続するように設けられた周方向に沿って延びる溝を有することを特徴とする軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属めっき浴中に浸漬される回転体の軸部を回転自在に支持する軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属めっき装置20は、図1に示すように、溶融金属めっき浴(以下、めっき浴と言う場合がある。)21が貯留されるめっき槽22と、前記めっき浴21の表層部分に浸漬されて、前記めっき浴21の内に導入される鋼板Wの酸化を防止するためのスナウト23と、前記めっき浴21の中に配置されたシンクロール28と、前記めっき浴21の内でシンクロール28の上方に位置する一対のサポートロール27と、前記めっき浴21の表面より僅か上方に位置するガスワイピングノズル26とを有している。前記シンクロール28自体には外部駆動力が付与されず、走行する鋼板Wとの接触による摩擦力で反時計回りに駆動される。前記サポートロール27は、通常、外部のモータ(図示せず)に連結された駆動ロールである。なお、サポートロール27には外部駆動力が付与されない無駆動タイプもある。前記シンクロール28は、支持フレーム25に取り付けられた軸受90により回転自在に支持されている。前記サポートロール27も、同様に、支持フレーム24に取り付けられた軸受により回転自在に支持されている。前記シンクロール28と前記サポートロール27とは、常に一体としてめっき浴21の内に浸漬される。
【0003】
前記鋼板Wは、前記スナウト23を経て前記めっき浴21の内に斜方から進入し、前記シンクロール28を経由して上方に進行方向が変えられる。前記めっき浴21の中を上昇する前記鋼板Wは、当該鋼板Wを一定の力で押し付けた一対のサポートロール27に挟まれ、パスラインが保たれるとともに、反りや振動が防止される。ガスワイピングノズル26は、めっき浴21から出てきた鋼板Wに高速ガスを吹き付け、高速ガスのガス圧により、鋼板Wに付着した溶融金属めっきの厚さを均一に調整する。このようにして、表面にめっきが施された鋼板Wを得ることができる。
【0004】
溶融金属めっき装置に組み込まれる軸受に関連する先行技術として、特開2001-207247号は、少なくとも一部を2〜10質量%の窒化クロムを含有し、かつ理論密度の95%以上の焼結体密度を有する窒化珪素系セラミックスで被覆してなる浸漬部材を開示しており、例えば図11に示すような、前記セラミックスからなる半円筒状の2の軸受部90a,90bを、円筒状の金属製の保持部90cの内周面に組み込んだ軸受90を記載している。前記セラミックからなる軸受部90a,90bは、めっき浴(溶融金属)の間に熱膨張差を有するため、前記軸受90をめっき浴から引き上げたときの冷却により、その外周面と保持部90cの内周面との間に噛み込まれためっき浴に起因する圧縮又は引っ張り応力を受ける。特開2001-207247号に記載の軸受90は、前記軸受部90aと軸受部90bとが周方向において相対する端面90d,90eの間に1 mm以上の間隙90fを設けることにより、前記応力を緩和することができると記載している。
【0005】
しかしながら特開2001-207247号に記載された軸受は、前述したように2の軸受部90a,90bの間に間隙90fを有することにより軸受部90a,90bの破損が抑制されるものの、軸部90gと軸受部90a,90bとの直接接触により摩耗及び破損が発生するといった問題がある。すなわち、前記2つの軸受部90a,90bの間に設けられた間隙90fが、軸部90gの外周面が回転しながら接触する部分に配置された場合、前記間隙90fでは軸部90gを支える動圧が低下するため前記軸部90gの表面が摺動面及び/又は前記軸受部90a,90bの端面90d,90eの縁部分に直接接触し、前記軸部90g及び軸受部90a,90bの摩耗が早期に進み、それらの寿命が短くなる。さらに、モータ等から回転力が付与されず、走行する鋼板との接触による摩擦力で駆動されるシンクロールの場合には、軸部90gの表面が摺動面に直接接触すると摩擦係数が増大し、鋼鈑の走行速度にシンクロールの回転が追従できず、鋼鈑がシンクロール外周面との間でスリップし、鋼鈑にすり疵等の不良を生じさせる可能性がある。
【0006】
特開2001-262299号は、軸と摺動接触する硬質セラミックス焼結体からなる軸受とを鋼製の保持器で変位可能に保持してなる連続溶融金属めっき浴中ロール用すべり軸受装置を開示しており、前記軸受は、有効角度90°超〜160°の部分円筒形であると記載している。特開2001-262299号は、このように、軸受を変位可能に保持する保持器を有する軸受装置を使用することにより、めっき浴から引揚げ後の冷却過程において発生する、残留めっき金属の凝固収縮による軸受の割損を防止できると記載している。
【0007】
しかしながら、特開2001-262299号に記載の軸受装置を使用した場合であっても、何度も繰り返し使用することによりセラミックスの軸受が破損する場合があり、特に中心角(特開2001-262299号の図1におけるθ)が比較的大きな場合(約100°以上の場合)にはセラミックスの軸受の破損が高い確立で発生する。
【0008】
特開2002-294419号は、金属製軸受ホルダーと、前記軸受ホルダーの内面に設けられた軸方向全長にわたる溝に装着された部分円筒形のセラミックス部材とからなり、前記軸受ホルダーに設けられた溝の内壁面と、それと対向するセラミックス部材の外壁面との間に、溶融金属を排出させるための隙間を有する連続溶融金属めっき浴中ロール用軸受を開示しており、軸受を浴中から引き揚げた際に軸受ホルダーとセラミックス部材との隙間に入った溶融金属を容易に排出でき、軸受の圧縮破壊を防止できると記載している。
【0009】
しかしながら、特開2002-294419号に記載の軸受を使用した場合であっても、何度も繰り返し使用することによりセラミックス部材が破損する場合があり、特に中心角(特開2002-294419号の図1におけるθ1)が比較的大きな場合(約100°以上の場合)にはセラミックスの軸受の破損が高い確立で発生する。
【0010】
特表2004-530797号は、金属帯を案内するための溶融金属中に回転可能に支持された軸と、2つの軸受面を備えたセラミックスからなる軸受シェルからなり前記軸を支持するための滑り軸受とを備え、前記軸受シェルが前記2つの軸受面の間にグラファイトシート等からなる変形要素を有する、溶融金属中で金属帯にコーティングを施すコーティング装置を開示しており、可撓性を有する変形要素により2つの軸受面又は軸受シェルが接続を維持しながら歪みを許容するように構成されているため、2つの軸受シェルの間に半径方向の大きな力がかかったときに、軸受シェルの破損が回避されると記載している。
【0011】
しかしながら、特表2004-530797号に記載の軸受シェルは、2つの軸受シェルが変形要素により接続されているため、軸受シェルと前記軸受シェルを収納する軸受ハウジングとの隙間に差し込んだ溶融金属がすみやかに排出されず、コーティング装置を引き上げたときに軸受シェルと軸受ハウジングとの熱膨張差及び/又は溶融金属の凝固により軸受シェルが破損する場合がある。また特表2004-530797号に記載の軸受シェルは、2つの軸受面(摺動面)は平面であるため、応力が集中することによって破損する場合がある。
【0012】
特開2006-250274号は、ロール軸を内周面で支持するセラミック軸受と、セラミック軸受の外周側を保持する金属製軸受保持器とを備え、セラミック軸受の外周面と金属製軸受保持器の内周面との間に緩衝材を嵌装してなり、少なくとも前記緩衝材の織糸をアルミナ長繊維として絨毯織りしてなる連続溶融金属めっき浴中で使用されるロール軸受を開示しており、前記セラミック軸受として上部セラミック軸受と下部セラミック軸受とに2分割し、前記緩衝材を上部セラミック軸受の外周面と金属製軸受保持器の内周面との間、及び上部セラミック軸受と下部セラミック軸受の間に嵌装して構成したロール軸受を記載している。特開2006-250274号は、前記緩衝材を用いることにより、溶融金属との接触部分では非濡れ性が向上し、凝固した溶融金属を容易に取り除くことができるとともに、溶融金属が緩衝材内部まで浸入せず、その間に空気の層が形成されるので断熱効果が高くなると記載している。
【0013】
しかしながら、特開2006-250274号に記載のロール軸受は、前記緩衝材で分割したセラミック軸受の隙間を充填しているため、セラミック軸受と金属製軸受保持器との隙間に差し込んだ溶融金属がすみやかに排出されず、コーティング装置を引き上げたときにセラミック軸受と金属製軸受保持器との熱膨張差及び/又は溶融金属の凝固によりセラミック軸受が破損する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の目的は、溶融金属めっき浴中に浸漬される回転体の軸部を回転自在に支持する、保持部に組み込まれたセラミックスを主体とした軸受部を有する軸受において、軸受を引き上げたときに保持部と軸受部との隙間に差し込んだめっき浴による軸受部の破損を抑制しつつ、稼動時には軸部と軸受部との直接接触を抑制可能な軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者、セラミックスからなる部分円筒形の軸受部と、前記軸受部を収納する保持部とからなる軸受において、前記軸受部を周方向に分割し、それらの端面が間隙を介し相対するように周方向に移動可能に並べて配置することにより、軸受を引き上げたときに軸受部と保持部との隙間に差し込んだ溶融金属がすみやかに排出され、軸受部と保持部との熱膨張差及び/又は溶融金属の凝固に起因したセラミック軸受の破損が発生しなくなること、並びに稼動時に軸受部と軸部との間に発生する動圧の低下を招かないことを見出し、本発明に想到した。
【0016】
すなわち、本発明の軸受は、
溶融金属めっき浴中に浸漬される回転体の軸部を回転自在に支持する軸受であって、
前記軸部が摺動する摺動面及び前記摺動面と直接的又は間接的に接続された端面を有するセラミックスからなる少なくとも2の部分円筒形の軸受部と、前記少なくとも2の軸受部を、それらの一方の端面が間隙を介し相対するように周方向に並べて挿着するための挿着凹部、及び前記軸受部の他方の端面に当接し周方向の移動を規制するための移動規制部を有する保持部とを備え、
前記少なくとも2の軸受部は、前記間隙を介して相対する一方の端面が接触又は離間するよう、少なくとも一の軸受部が他の軸受部に対し周方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0017】
前記間隙を通して前記摺動面の中心を見た場合に、前記間隙と前記中心とが交差しているのが好ましい。
【0018】
前記移動規制部は、前記軸受部の他方の端面に当接する、周方向に突出する曲面からなる端面を有するのが好ましい。
【0019】
前記軸受部の他方の端面、又は前記軸受部の他方の端面に相対する前記移動規制部の端面に径方向に延びる溝が形成されているのが好ましい。
【0020】
前記移動規制部は、前記挿着凹部と接続するように設けられた周方向に沿って延びる溝を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の軸受は、めっき浴から引き上げたときに軸受部と保持部との隙間に差し込んだ溶融金属がすみやかに排出されるので、軸受部と保持部との熱膨張差及び/又は溶融金属の凝固に起因したセラミック軸受の破損が効果的に抑制されるとともに、稼動時には軸受部と軸部との間に発生する動圧の低下を招かないので軸受部の破損や摩耗を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の軸受が組み込まれた溶融金属めっき装置を示す模式図である。
図2】本発明の軸受周辺を示す部分断面図である。
図3(a)】本発明の第1実施形態の軸受を示す模式図である。
図3(b)】図3(a)の軸受部を抜き出して示す模式図である。
図3(c)】図3(a)のB部拡大図である。
図4】本発明の軸受の保持部を抜き出して示す模式図である。
図5(a)】図3(a)に示す軸受の上左四半部を拡大して示す部分断面図である。
図5(b)】図5(a)のC-C断面である。
図5(c)】図5(a)のC-C断面を示す斜視図である。
図6(a)】本発明の第1実施形態の軸受の使用中の状態を示す部分断面図である。
図6(b)】本発明の第1実施形態の軸受の使用中の状態を示す部分断面図である。
図6(c)】図6(b)のD部拡大図である。
図7(a)】本発明の第2実施形態の軸受を示す模式図である。
図7(b)】図7(a)のE部の軸受部のみを抜き出し、紙面上方から見た模式図である。
図7(c)】図7(a)のE部拡大図である。
図7(d)】軸受部の相対する端面形状の他の一例を示す模式図である。
図8(a)】軸受部の相対する端面形状の他の一例を示す、図7(b)と同一の視点から見た模式図である。
図8(b)】軸受部の相対する端面形状のさらに他の一例を示す、図7(b)と同一の視点から見た模式図である。
図8(c)】軸受部の相対する端面形状のさらに他の一例を示す、図7(b)と同一の視点から見た模式図である。
図9(a)】本発明の第2実施形態の軸受の使用中の状態を示す部分断面図である。
図9(b)】図9(a)のJ部を中心軸方向から見た模式図である。
図10(a)】本発明の第2実施形態の軸受の使用中の状態を示す部分断面図である。
図10(b)】図10(a)のK部を中心軸方向から見た模式図である。
図11】従来の軸受を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の軸受について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されることなく、その作用効果を奏する限り、同一性の範囲内で適宜変形して実施することができる。以下の説明では、めっき浴中に浸漬される回転体としてシンクロールの軸部を回転自在に支持する軸受を例として説明するが、本発明は、サポートロールその他溶融金属めっき浴中に浸漬される回転体において、同様に適用することができる。本発明の軸受は、図1に示す溶融金属めっき装置と同様な溶融金属めっき装置に組み込まれるものであり、溶融金属めっき装置の詳細な説明は省略する。
【0024】
[1]第1実施形態
軸受1は、図2に示すように、ほぼ矩形の外形を有し、溶融金属めっき装置20のめっき浴21に浸漬される固定フレーム25の先端部25aに設けられた、2辺が直交するほぼL字形状の支持部材25eの内面に、上面及び左面が密着するよう配置されている。固定フレーム25の先端部25aから右方に延設されたアーム25bの右端には、弾性体等が組み込まれた押圧部25dを介し平板状の固定部材25cが配置されており、前記固定部材25cは、支持部材25eに密着するように配置された軸受1の右下部分に当接し、前記軸受1を支持部材25eに押し付けるようにして固定している。シンクロール28は、その軸部28aが、支持部材25eに固定された前記軸受1の中空部1nの中を挿通するよう配置される。操業中のシンクロール28には、その外周面に接触する鋼鈑Wによる張力、めっき浴による浮力等が作用し、上方に向け引き上げられる。もって、シンクロール28の軸部28aは、その外周面が中空部1nの内面の摺動面1c,1dで支持されつつ回転する。
【0025】
溶融金属めっき浴21中に浸漬される回転体の軸部28aを回転自在に支持するための軸受1は、図3(a)に示すように、軸部28aが摺動する摺動面1c,1d、前記摺動面1c,1dと直接的に接続された一方端面1f,1g、及びその反対側に配置された他方端面1o,1pを有する、セラミックスを主体とした少なくとも2の部分円筒形の軸受部1a,1bと、前記少なくとも2の軸受部1a,1bを、各々の一方端面1f,1gが間隙1eを介し相対するように周方向(中心軸I回りの方向)に並べて挿着するための挿着凹部4e、及び前記軸受部1a,1bの周方向の移動を規制するための移動規制部4iを有する保持部2とを備えている。前記少なくとも2の軸受部1a,1bは、前記間隙1eを介して相対する端面1f,1gが接触又は離間するよう、軸受部1a,1bのうち一方の軸受部1b(又は軸受部1a)が他方の軸受部1a(又は軸受部1b)に対し周方向に移動可能に保持部2に組み込まれている。なお、図3(a)において軸受部は2個の部分からなるが、これに限定されず、3個以上の軸受部で軸受を構成してもよい。以下、軸受部1a,1b、保持部2及び移動規制部4iの構成について詳細に説明する。
【0026】
(1)軸受部
軸受部1a,1bは、部分円筒形(軸方向に垂直な断面が部分円環形状)であり、図3(a)に示すように、中心軸Iからの半径が同一の曲面である摺動面1c,1dを各々有している。この軸受部1a,1bは、一方端面1f,1gが間隙1eを介し相対するように、他方端面1o,1pがそれぞれ前記移動規制部4iの端面4j,4mに当接するように前記挿着凹部4eに周方向に並べて挿着されている。このように軸受1は、前記挿着凹部4eに挿着された軸受部1a,1bの摺動面1c,1dと、前記保持部2に設けられた前記移動規制部4iとによって、軸部28aが挿入されるほぼ円柱形状の中空部1nを構成している。
【0027】
軸受部1a,1bの軸方向に垂直な断面における中心角θa,θb(図3(b)を参照)は、各々90°以下が好ましく、各々30〜85°がより好ましく、各々50〜70°であるのが最も好ましい。軸受の摺動面1c,1dの曲率半径は、軸部28aの曲率半径よりも大きく設定する。間隙1eの幅は特に限定されず、軸部28a及び摺動面1c,1dの半径により適宜設定される。例えば、軸受の摺動面1c,1dの曲率半径は20〜100mmであるのが好ましく、30〜90 mmであるのが最も好ましい。その場合、隙間1eの幅は、5 mm以下であるのが好ましく、0.1〜5 mmであるのがより好ましく、0.5〜5 mmであるのが最も好ましい。軸受部1a,1bの軸方向長さは300 mm以下が好ましく、30〜200 mmがより好ましく、50〜200 mmであるのが最も好ましい。軸受部1a,1bの径方向厚さは5〜40 mmであるのが好ましく、10〜30 mmであるのがより好ましい。
【0028】
前記軸受部1a,1bにおいて、互いに相対する一方の端面1f及び端面1gは、それぞれ摺動面1c及び摺動面1dに対し直接的に接続してもよいし、図3(c)に示すように、R面1j,1k等を介して間接的に接続してもよい。
【0029】
軸受部1a,1bは、例えば一方の軸受部1bが他方の軸受部1aに対し周方向に移動可能に保持部2に配置されている。この例では、軸受部1aが保持部2に固定され、軸受部1bが周方向に移動可能に配置されているが、逆に、軸受部1bが保持部2に固定され、軸受部1aが周方向に移動可能に配置されていてもよい。軸受部が3以上の部分からなる場合は、少なくとも1つの部分が固定され、他の部分が移動可能に配置されていればよい。
【0030】
軸受部1a,1bは、保持部2の側面に固定された位置決め片2bにより中心軸I方向の移動が規制されている。位置決め片2bは、例えば、1つの軸受部(例えば、軸受部1b)の周方向の移動を拘束しないよう、軸受部1bの側面に接触する程度に配置されている。このように構成することにより、周方向に沿う力が作用すると軸受部1bは周方向に移動することができる。なお、中心軸I方向における軸受部1a,1bの移動を規制するための構成は前記位置決め片2bに限定されず、周方向における軸受部1bの移動を拘束しない手段であればどのような手段でも適宜選択することができる。
【0031】
軸受1の引き上げ時におけるめっき浴の排出をより円滑に行うためには、図3(c)に示すように、軸受部1a,1bの端面1f,1gとその摺動面(内周面)1c,1dが交差する角部に、R面1j,1kを設けておくのが好ましい。また、同様な観点から、軸受部1a,1bの端面1f,1gとその外周面が交差する角部にも、R面1h,1iを設けておくのが好ましい。なお前記R面1j,1k及びR面1h,1iは、C面であっても良い。R面1j,1kの曲率半径は径方向における軸受部1a,1bの厚さの半分以下とし、たとえば2.5〜20 mm程度とすればよく、C面の長さは径方向における軸受部1a,1bの厚さの半分以下とし、たとえば2.5〜20 mm程度とすればよい。
【0032】
軸受部1a,1bを構成するセラミックスとしては、軸受部1a,1bが使用される雰囲気その他の操業条件の要請による耐熱衝撃性・耐蝕性などに応じ、アルミナ・ジルコニア・シリカその他の酸化物系セラミックス、硼化ジルコニウム・硼化チタン・硼化ボロンその他の硼化物系セラミックス、炭化シリコン・炭化ボロンその他の炭化物系セラミックス、又はカーボンなどの無機材料を利用することができる。しかしながら、めっき浴への浸漬及び取出しの際に急熱及び急冷されるため、軸受部1a,1bとしては耐熱衝撃性に優れた材料で構成するのが好ましい。従って、軸受部1a,1bを構成するセラミックスとしては、熱伝導率が高い窒化珪素、窒化アルミニウム、及びその他の窒化物系セラミックスが好ましく、めっき浴である溶融金属に対し高い耐溶損性及び耐磨耗性を有し、高温強度に優れたサイアロンを含む窒化珪素系セラミックスが特に好ましい。
【0033】
(2)保持部
保持部2は、図4に示すように、中心軸Iと直交する断面がほぼ矩形の外形を有し、その中央部に形成された挿着孔部2aと、前記挿着孔部2aの内周面に配置された部分円筒形(断面がほぼ半円環形)の移動規制部4iとを有しており、前記移動規制部4iが配置されていない部分には、前記挿着孔部2aの内周面と、前記移動規制部4iの周方向の一方の端面4jと、他方の端面4mとにより構成された、前記軸受部1a,1bを挿着するための挿着凹部4eを有している。なお、移動規制部4iは、保持部2と一体的に構成してもよいし、別体として製作された移動規制部4iを機械的に挿着孔部2aの内周面に固定してもよい。
【0034】
挿着孔部2aの直径は、軸受部1a,1bの外径とほぼ同じ大きさとなるよう調整されている。保持部2を構成する材料は特段限定されないが、容易に加工できる金属を主体として構成することが好ましい。金属を主体とし保持部2を構成する場合には、めっき浴に対する耐食性の点からその表面に例えばセラミックスやサーメット等の被覆を施しておくのが好ましい。
【0035】
(3)移動規制部
移動規制部4iの端面4j,4mは、図4に示すように、周方向に突出する曲面であるのが好ましい。さらに図5(a)に示すように、移動規制部4iの端面4j,4mにそれぞれ相対する前記軸受部1a,1bの他方端面1o,1pは、同様に、いずれも周方向において外側に突出する曲面であるのが好ましい。なお、前記移動規制部4iの端面4j,4m、及び前記移動規制部4iの端面4j,4mに相対する軸受部1a,1bの他方端面1o,1pの全てを曲面とする必要はなく、少なくともいずれか一面のみを曲面とすればよいが、相対する面同士の少なくとも一方の面を曲面とするのが好ましい。また、前記移動規制部4iの端面4j,4m及び/又は軸受部1a,1bの他方端面1o,1pに突条部を設けてもよい。例えば、軸受の摺動面1c,1dの曲率半径が20〜100 mmである場合、突条部は、幅5〜10 mm程度、ピッチ10〜20 mm程度、及び突出する寸法である高さ1〜10 mm程度とすればよい。ピッチは、突条部を複数設ける場合の周期に相当する。
【0036】
このように、前記移動規制部4iの端面4j,4m及び軸受部1a,1bの他方端面1o,1pのいずれか一面を曲面とすることにより、前記曲面とした端面により構成される隙間から、保持部2の内周面と軸受部1a,1bの外周面との間に差し込んだめっき浴を、円滑に排出させることができる。
【0037】
さらに、前記移動規制部4iの端面4j,4mは、図5(a)、図5(b)及び図5(c)に示すように、径方向に延びる溝4kを有するのが好ましい。例えば、軸受の摺動面1c,1dの曲率半径が20〜100 mmである場合、溝4kは軸方向における幅が5〜10 mm程度であればよい。前記移動規制部4iの端面4j,4mの溝4kは、周方向において挿着凹部4eに開口するとともに中空部1nに接続するように径方向に延びるように形成されている。図5(b)及び図5(c)に示す例では、移動規制部4iの端面4j,4mの溝4kは径方向に4条形成されているが、1条でもよいし、2条以上の任意の数を選択してもよい。前記溝4kは、移動規制部4iの端面4j,4mに形成する代わりに、軸受部1a,1bの他方端面1o,1pに形成してもよく、移動規制部4i側か、軸受部1a,1b側かの少なくとも一方に形成されていればよい。
【0038】
このように移動規制部4iの端面4j,4mに溝4kを設けることにより、保持部2の内周面と軸受部1a,1bの外周面との間に差し込んだめっき浴を、前記溝4kを通じて容易に排出さえることができる。なお溝4kの断面形状は特段限定されないが、例えばほぼ矩形の断面を有する溝4kをセラミックスで構成された軸受部1a,1bの他方端面1o,1pに形成する場合には、高温のめっき浴への軸受3の浸漬及び取り出し時の急熱急冷による溝4kの破損を抑制するために、前記溝4kの底面と側面との隅部にR面を設けるのが好ましい。また溝4kの断面形状を、鋭角な角部のないほぼ半円形としてもよい。
【0039】
前記移動規制部4iは、前記挿着凹部4eに通じる周方向に沿って延びる溝4Lを有するのが好ましい。例えば、軸受の摺動面1c,1dの曲率半径が20〜100 mmである場合、溝4Lの寸法は、径方向で5〜10 mm程度、及び軸方向で5〜10 mm程度とすればよい。前記溝4Lは、図5(a)、図5(b)及び図5(c)に示すように、挿着凹部4eに通じるほぼ半円環状であり、保持部2を構成する移動規制部4iの側面に形成されている。溝4Lは、挿着凹部4eに通じていることが必要であり、すなわち、周方向において挿着凹部4eに開口した開口端を有する。なお溝4Lの断面形状は特段限定されない。前記溝4Lを設けることにより、保持部2の内周面と軸受部1a,1bの外周面との間に差し込んだめっき浴を、当該溝4Lを通じて容易に排出させることができる。
【0040】
(4) 操業時の状態
軸受部1a,1bの少なくとも一方を周方向に移動可能に構成した本発明の軸受1を使用したときの操業時の状態を以下に説明する。図2に示すように、軸受1の中空部1nにシンクロール28の軸部28aを挿入し、固定フレーム25の先端部25aに設けられた支持部材25eに軸受1を固定し、めっき浴21に浸漬する。めっき浴21への浸漬により生じた鋼板Wによる張力、めっき浴による浮力等によりシンクロール28が浮上し、軸部28aと軸受部1a,1bとが接触する。この状態では、軸受部1a,1bの各々の端面1g,1fの間には、図6(a)に示すように間隙1eがまだ存在している。
【0041】
めっき浴21に浸漬されたシンクロール28の胴部の外周面に接触するようめっき処理すべき鋼鈑Wをセットした後、図1に示すように、鋼鈑Wを矢印方向に走行させる。このとき軸部28aは、図6(b)に示すように、図示A方向に反時計回りに回転する。矢印A方向(反時計回り)に回転する軸部28aの外周面が摺動面1c,1dと摺動すると、図6(c)に示すように、その摺動に伴う摺動摩擦により軸受部1bが矢印A方向(反時計回り)に移動する。ここで、左方に配置された軸受部1aは、その他方端面1oが移動規制部4iに当接しているため移動が規制され、右方に配置された軸受部1bのみが軸受部1aに向かい周方向に移動する。この軸受部1bの移動により、軸受部1bの端面1gが軸受部1aの端面1fと接触した状態となり、両者の間に介在していた間隙1eが閉じられる。その結果、摺動面1c,1dは、周方向においてほぼ連続した状態となり、見かけ上単一の摺動面を構成することとなる。そのため、間隙1eに起因した摺動面上の動圧の低下が回避され、軸部28aと軸受部1a,1bとの直接接触が抑制される。動圧の低下をさらに抑制するためには、端面1f,1gが接触した際に両者が密着した状態となるよう、例えば端面1f,1gを対応する平面に形成しておくのが好ましい。
【0042】
なお、軸部28aの回転方向が、矢印Aと逆方向(時計回り)の場合には逆に、軸受部1bを固定し、軸受部1aを周方向に移動可能に配置することにより、矢印Aと逆方向(時計回り)に回転した軸部28aが軸受部1aを矢印Aと逆方向(時計回り)に移動させ、軸受部1a,1bの端面1f,1gは接触した状態となる。
【0043】
操業が終了し、シンクロール28をめっき浴21より引き上げたとき、周方向に移動可能に構成された軸受部1bは、重力により下方に移動し、図6(a)に示す組立時の状態に復帰する。その結果、軸受部1a,1bの各々の端面1f,1gの間には隙間1eが形成されるので、保持部2の内周面と軸受部1a,1bの外周面との間に差し込んだめっき浴が前記隙間1eから排出され、軸受1の引き上げ時におけるめっき浴の凝固に起因した軸受部1a,1bの破損を抑制することが可能となる。
【0044】
[2]第2実施形態
本発明の第2の実施形態の軸受8は、図7(a)及び図7(b)に示すように2の軸受部8a,8bの一方の端面8f,8g間に構成された間隙8eを通して前記中心軸Iを見たときに、前記中心軸Iと前記間隙8eとが交差して見えるように構成された軸受部8a,8bを有する以外第1の実施形態の軸受1と同様である。すなわち、2の軸受部8a,8bが相対する前記一方の端面8f,8gが、2の軸受部8a,8bの摺動面8c,8dの中心軸Iに対して平行ではないように構成された軸受部8a,8bを有する。
【0045】
以下に第2の実施形態の軸受8について詳細に説明する。なお軸受部8a,8b以外の部分については第1の実施形態の軸受1と同様であるため説明を省略する。
【0046】
(1)軸受部
軸受部8a,8bの各端面8f,8gはいずれも平面であり、かつ両面は中心軸Iに対しともに角度αで交差するよう周方向における幅Hで平行に配置されている。従って、間隙8eを通して前記中心軸Iを見たときに、前記中心軸Iに対して前記間隙8eは角度αで交差している。角度αは特段限定されないが、本発明の効果を奏するためには5〜45°であるのが好ましく、10〜30°とするのがより好ましい。軸受の摺動面8c,8dの曲率半径は、軸部28aの曲率半径よりも大きく設定する。間隙8eの幅Hは特に限定されず、軸部28a及び摺動面8c,8dの半径により適宜設定される。例えば、軸受の摺動面8c,8dの曲率半径は20〜100 mmであるのが好ましく、30〜90 mmであるのが最も好ましい。その場合、隙間8eの幅Hは、5 mm以下であるのが好ましく、0.1〜5 mmであるのがより好ましく、0.5〜5 mmであるのが最も好ましい。また軸受部8a,8bの軸方向長さは300 mm以下が好ましく、30〜200 mmがより好ましく、50〜200 mmであるのが最も好ましい。軸受部8a,8bの径方向厚さは5〜40mmが好ましく、10〜30mmがより好ましい。
【0047】
軸受部8a,8bの軸方向に垂直な断面における中心角θa,θbは各々90°以下であるのが好ましく、各々30〜85°であるのがより好ましく、各々50〜70°であるのが最も好ましい。なお前記軸方向に垂直な断面は、軸受部8a,8bの軸方向長さの中央部における断面である。軸受の摺動面8c,8dの曲率半径は、第1の実施形態と同様、軸部28aの曲率半径よりも大きく設定する。
【0048】
軸受部8a,8bの各々の摺動面8c,8dと端面8f,8gとの接続する角部の破損や摩耗を防止するためには、図7(c)に示すように、第1の実施形態と同様に前記角部にR面8j,8kを設けておくことが望ましい。また、同様な観点から、軸受部1a,1bの端面1f,1gとその外周面が交差する角部にも、図7(d)に示すように、R面8h,8iを設けておくのが好ましい。また前記R面8j,8k及びR面8h,8iの代わりにC面を設けても良い。R面8j,8kの曲率半径は径方向における軸受部8a,8bの厚さの半分以下とし、たとえば2.5〜20 mm程度とすればよく、C面の長さは径方向における軸受部8a,8bの厚さの半分以下とし、たとえば2.5〜20 mm程度とすればよい。
【0049】
中心軸Iに対する前記間隙8eの構成として、中心軸Iに対して軸受部8a,8bの各端面8f,8gがともに角度αで交差するように平行に配置させる例を示したが、本発明の第2の実施形態の軸受はこれに限定されず、以下に示すように、軸受部の各端面の間隙を通して前記中心軸Iを見たときに、前記中心軸Iに対して前記間隙が交差していればどのような構成でも良い。ただし、各端面8f,8gが中心軸Iに対して角度αで交差するように構成した本態様のように、中心軸I方向において軸受部8a,8bの両端側に、摺動領域と間隙8eとが重複していない部分(以下、非重複部と呼ぶ)が配置されるように軸受部8a,8bを構成した場合に、軸部28aの支持がより安定するので好ましい。
【0050】
例えば、図8(a)に示すように、軸受部5a,5bの相対する端面5f,5gが曲面からなり、前記端面5f,5gによって構成される間隙5eの幅Hが中心軸I方向に沿って一定ではない構成を有する軸受5であってもよい。この軸受5は、間隙5eを通して前記中心軸Iを見たときに、前記中心軸Iに対して前記間隙5eが交差するように軸受部5a,5bが配置されており、その結果、動圧を維持する非重複部G1が形成される。
【0051】
図8(b)に示す軸受6は、軸受部6a,6bの相対する端面6f,6gがそれぞれ凸面及び凹面からなり、前記端面6f,6gによって構成される間隙6eが樋状に湾曲している例である。この軸受6は、間隙6eを通して前記中心軸Iを見たときに、前記中心軸Iに対して前記間隙6eが交差するよう軸受部6a,6bが配置されており、軸受部6a,6bの中心軸I方向中央部に非重複部G1が形成されている。
【0052】
さらに図8(c)に示す軸受7は、軸受部7a,7bの相対する端面7f,7gが階段状であり、前記端面7f,7gによって中心軸Iと交差する屈曲した間隙7eを有している例である。この軸受7は、その軸受部7a,7bの両端に非重複部G1が形成されている。
【0053】
(2) 操業時の状態
このようにして構成された軸受部8a,8bを有する第2の実施形態の軸受8を使用した場合、第1の実施形態における軸受1と同様に、図9(a)において反時計回りに回転する軸部28aの外周面が摺動面8c,8dと摺動すると図10(a)に示すように、摺動摩擦により軸受部8bが矢印A方向(反時計回り)に移動する。
【0054】
ここで、軸部28aの回転の初期段階においては、図9(a)に示すように軸受部8a,8bの一方端面8f,8g間に間隙8eが存在しており、図9(b)に示すように、回転する軸部28aは軸受部8a,8bの摺動面8c,8dと接触し、前記間隙8eと交差するように軸部28aの外周面が摺動する領域(以下、摺動領域と言う場合がある。)Fを形成する。前記軸部28aの回転数が上昇するに伴って、この摺動領域Fに動圧が発生する。
【0055】
このとき、図9(b)に示すように、中心軸Iに沿う方向(以下、中心軸I方向と言う場合がある)において、摺動領域Fと間隙8eとが重複している部分(以下、重複部と言う場合がある。)G2では、間隙8eが存在するため動圧が低下するが、前記摺動領域Fと間隙8eとが重複していない部分(以下、非重複部と言う場合がある。)G1では、摺動面8c,8dと軸部28aの外周面との間で生じる動圧が維持される。このように、第2の実施形態の軸受8では非重複部G1が存在するので、回転の初期段階における間隙8eに起因した動圧の低下が回避され、軸部28aと軸受部8a,8bとの直接接触が抑制される。すなわち間隙8eを斜めに設けることで、間隙8eが開いた状態から閉じた状態になるまでの短い時間においても、間隙8eが軸方向に平行な場合に比べて、軸部28aと軸受部8a,8bとの直接接触が抑えられるのでより好ましい。また間隙8eを斜めに設けることで、端面8f,8gと摺動面8c,8dとの角部が、軸部28aとの摺動摩擦を受けた場合でも破損又は摩耗しにくくなる。
【0056】
さらに軸部28aが回転すると、第1の実施形態の軸受1の場合と同様に、軸受部8a,8bには軸部28aとの摺動による矢印A方向の力が作用し、右方に配置された軸受部8bが矢印A方向に移動し、図10(a)及び図10(b)に示すように、軸受部8bの端面8gは軸受部8aの端面8fと接触し、両者の間に介在していた間隙8eが閉じられ、摺動面8c,8dは、周方向においてほぼ連続した状態となり、見かけ上単一の摺動面を構成する。その結果、摺動領域Fと間隙8eとの重複部G2で、間隙8eが存在するために低下していた動圧が回復し、軸部28aと軸受部8a,8bとの直接接触がさらに抑制される。動圧の低下をさらに抑制するためには、端面8f,8gが接触した際に両者が密着した状態となるよう、例えば端面8f,8gを対応する平面にしておくのが望ましい。
【0057】
ここで、第2態様の軸受8では、上記のように軸受部8aに対し軸受部8bが周方向に移動し、各々の端面8f,8gが接触することによって、図10(b)に示すように、平面視で中心軸Iの投影線と交差した接触界面8hが形成される。この接触界面8hも、摺動領域Fと接触界面8hとが重複しない部分(以下、非重複部と言う場合がある。)G3と、摺動領域Fと接触界面8hが重複する部分(以下、重複部と言う場合がある。)G4とを有している。
【0058】
なお、軸受8の間隙8eと同様に、平面視で見たときの接触界面8hの形状は特段限定されず、接触界面8hと中心軸Iの投影線とが交差していればよい。特に、本態様のように、重複部G4の両側に非重複部G3が配置されるような摺動領域Fが形成される接触界面8hを有していれば、軸部28aの支持がより安定するので好ましい。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図11