【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの具現例は、基材と;上記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層と;を含む多層フィルムを提供する。
【0011】
本発明の他の具現例は、基材上にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を形成する段階を含む多層フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の具現例は、本発明の具現例による多層フィルムを含む光電池モジュール用裏面シートを提供する。
【0013】
本発明のさらに他の具現例は、本発明による光電池モジュール用裏面シートを含む光電池モジュールを提供する。
【0014】
以下、添付する図面を参照して本発明の具現例をさらに具体的に説明する。また、本発明を説明するにあたって、関連された公知の汎用的な機能または構成に関する詳細な説明は省略する。また、添付の図面は、本発明の理解を助けるための概略的なものであって、本発明をさらに明確に説明するために説明と関係ない部分を省略し、図面において様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しているため、図面に表示された厚さ、サイズ、比率などによって本発明の範囲が制限されない。
【0015】
本発明の1つの具現例は、基材と;上記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層と;を含む多層フィルムに関する。
【0016】
添付の
図1は、本発明の一態様による多層フィルムの断面図を示す。添付の
図1に示されたように、本発明の多層フィルム10は、基材12と、上記基材12上に形成される樹脂層11とを含み、上記樹脂層11は、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む。
【0017】
本発明において多層フィルムに含まれる基材の具体的な種類は、特に制限されず、この分野で公知された多様な素材を使用することができ、要求される機能、用途によって適切に選択して使用することができる。
【0018】
本発明では、例えば、基材として各種金属フィルムまたは高分子フィルムを使用することができる。上記で金属フィルムとしては、用途によって通常の金属成分、例えば、アルミニウムまたは鉄などよりなるものを挙げることができ、高分子フィルムとしては、アクリルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエステルフィルムなどの単一シート、積層シートまたは共押出物を挙げることができ、これらのうちポリエステルフィルムを使用することが一般的であるが、これに制限されるものではない。上記ポリエステルフィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephtalate)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene Naphtalate)フィルム及びポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybuthylene Terephtalate)フィルムよりなる群から選択された1つ以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0019】
また、上記ポリエステルフィルムとしては、耐加水分解特性に優れたものを使用することもできる。上記耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムは、縮合重合時に発生するオリゴマーの含量が少ないものを使用することが好ましい。また、上記ポリエステルフィルムに公知の耐加水分解特性を向上させる熱処理をさらに加え、ポリエステルの水分含量を低減し、収縮率を低減することによって、耐加水分解特性をさらに優秀にすることができる。耐加水分解特性に優れたフィルムとして市販製品を使用することもできる。
【0020】
本発明では、後述する樹脂層との接着力をさらに向上させるために、基材の一面または両面にコロナ処理またはプラズマ処理のような高周波数のスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;アンカー剤処理;カップリング剤処理;プライマ処理または気相ルイス酸(例えば、BF
3)、硫酸または高温水酸化ナトリウムなどを使用した化学的活性化処理などの表面処理を行うことができる。上記表面処理方法は、この分野で一般的に通用されるすべての公知手段によることができる。
【0021】
本発明において上記のような表面処理は、カルボキシル基、芳香族チオール基及びフェノール性ヒドロキシル基などを基材の表面に誘導し、樹脂層に含まれたオキサゾリン基との結合性を向上させることによって、基材と樹脂層の結合力をさらに向上させることができる。
【0022】
また、本発明では、水分遮断特性を向上させるために、基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層が形成されることができる。上記無機酸化物の種類は、特に制限されず、水分遮断特性があるものなら、制限なく採用することができる。本発明では、例えば、無機酸化物としてケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物を使用することができるが、これに制限されるものではない。本発明において基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層を形成する方法は、特に制限されず、この分野で一般的に通用される蒸着法などによることができる。
【0023】
本発明において基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層を形成する場合には、基材の表面に無機酸化物蒸着層を形成した後、上記無機酸化物蒸着層上に前述した表面処理を行うことができる。
【0024】
本発明において上記基材の厚さは、特に制限されず、例えば、50μm〜500μmの範囲であることができ、または100μm〜300μmの範囲であることができる。上記基材の厚さを上記のように調節し、多層フィルムの電気絶縁性、水分遮断性、機械的特性及び取り扱い性などを優秀に維持することができる。但し、本発明において基材の厚さは前述した範囲に制限されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節されることができる。
【0025】
本発明の多層フィルムは、上記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を含む。上記樹脂層は、フッ素系高分子とともにオキサゾリン基含有高分子を含むことによって、基材との接着力を向上させることができる。すなわち、フッ素系高分子との相溶性に優れたオキサゾリン基含有高分子を選択し、樹脂層内でフッ素系高分子とブレンドを形成することを容易にし、オキサゾリン基を通じて基材との接着力を向上させることができる。
【0026】
本発明においてオキサゾリン基含有高分子と混合され、多層フィルムの樹脂層を形成するフッ素系高分子の種類は、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物であることができる。
【0027】
また、上記フッ素系高分子は、ビニリデンフルオライド(VDF)と共単量体を含む共重合体またはビニルフルオライド(VF)と共単量体を含む共重合体であることができ、上記フッ素系共重合体に共重合された形態で含まれることができる共単量体の種類は、特に制限されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1種以上を挙げることができ、一例としては、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンなどの1種以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明において、上記フッ素系共重合体に含まれる共単量体の含量は、特に制限されず、例えば、フッ素系共重合体の全体重量に対して約0.5重量%〜50重量%、1重量%〜40重量%、7重量%〜40重量%、10重量%〜30重量%、10重量%〜20重量%であることがある。本発明では、フッ素系共重合体に含まれる共単量体の含量を上記範囲に制御することによって、多層フィルムの耐久性及び耐候性などを確保しながら、効果的な相互拡散作用及び低温乾燥を誘導することができる。
【0029】
本発明において上記フッ素系高分子の重量平均分子量は、5万〜100万であることができ、10万〜70万、または30万〜50万であることもできるが、これに制限されるものではない。本発明において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定される標準ポリスチレンの換算数値である。本発明では、フッ素系高分子の重量平均分子量を上記範囲に制御することによって、優れた溶解度及びその他の物性を確保することができる。
【0030】
本発明の具現例において、上記フッ素系高分子は、i)融点(melting point)が155℃以下であるか、または軟化点(softening point)が100℃以下である第1フッ素系高分子を含むことができる。このような第1フッ素系高分子は、特にオキサゾリン基を含有する高分子との混用性が良いため、多層フィルムの耐久性を向上させることができる。また、上記フッ素系高分子は、第1フッ素系高分子以外にも、さらに、ii)融点が155℃以上であり、軟化点が100℃以上である第2フッ素系高分子を含むことができるが、第2フッ素系高分子は、必要に応じて選択的に使用されることができる。
【0031】
上記第1フッ素系高分子及び第2フッ素系高分子は、いずれも前述したフッ素系高分子に該当するもので、フッ素系単量体の重合による物質の固有の特徴である融点及び軟化点によって区分される。上記融点が155℃以下であるか、または軟化点が100℃以下である第1フッ素系高分子は、全体樹脂層のフッ素系高分子のうち20重量%以上を占めることができ、50%以上を占めることが好ましい。上記第1フッ素系高分子の融点の下限は、特に制限されるものではないが、80℃以上であることができ、上記フッ素系高分子の融点の上限も、特に制限されるものではないが、175℃以下であることができ、本発明では、フッ素系高分子の融点または軟化点を調節し、オキサゾリン基含有高分子との混用性を高めることができ、多層フィルムの使用過程での変形を防止することができ、溶媒に対する溶解度を調節し、コーティング面の光沢を向上させることができる。また、水分散組成物の場合にも、多層フィルムの製造過程で融点が低いフッ素系高分子粒子を選択し、低い温度で溶融させることによって、均一なコーティング外観を得ることができ、多層フィルムに含まれた基材の劣化を防止することができる。
【0032】
本発明において上記フッ素系高分子と混合され、多層フィルムを形成するオキサゾリン基含有高分子の種類は、特に限定されないが、上記フッ素系高分子との相溶性に優れたものなら、制限なく使用可能である。本発明では、例えば、オキサゾリン基含有高分子として、オキサゾリン基含有単量体の単一重合体;オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体;またはこれらの混合物を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明において使用されることができるオキサゾリン基含有単量体は、下記化学式1で表示される化合物であることができる。
【0034】
【化1】
【0035】
上記化学式1で、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立的に、水素原子、アルキル基、ハロゲン、置換または非置換されたフェニル基を示し、R
5は、不飽和結合を有する非環式炭化水素基を示す。
【0036】
上記置換または非置換されたフェニル基において置換基としては、アミノ基、メチル基、クロロメチル基及びクロロ基よりなる群から選択された1つ以上を挙げることができる。
【0037】
また、上記不飽和結合を有する非環式炭化水素基としては、ラジカル重合が可能なアルケニル(alkenyl)基、アルキニル(alkynyl)基またはオレフィン(olefin)基などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明において上記アルケニル基は、例えば炭素数1〜12、または炭素数1〜5のアルケニル基であることができ、上記アルキニル基は、例えば炭素数1〜12、または炭素数1〜5のアルキニル基であることができ、上記オレフィン基は、例えば炭素数1〜12、または炭素数1〜5のオレフィン基であることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明において上記化学式1で表示される化合物の具体的な例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロフェニル−5−エチル−2−オキサゾリンよりなる群から選択された1つ以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明のオキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体内においてオキサゾリン基含有単量体は、上記共重合体の全体重量に対して1重量%以上、5重量%〜95重量%、または10重量%〜90重量%で含まれることができる。本発明のオキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体内において上記オキサゾリン基含有単量体の含量が1重量%未満なら、基材と樹脂層との十分な接着力を提供しにくいことがある。
【0041】
本発明において上記オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体に含まれる共単量体の種類は、特に制限されず、オキサゾリン基と反応せず、オキサゾリン基含有単量体と共重合が可能なものなら、制限なく使用可能である。本発明では、例えば、上記共単量体として、アルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有単量体、不飽和ニトリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ハロゲン含有α、β−不飽和単量体及びα、β−不飽和芳香族単量体よりなる群から選択された1つ以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、上記アルキル(メタ)アクリレートは、フッ素系高分子との相溶性の均衡及び優れた粘着特性を付与するために、炭素数1〜14のアルキル基を有することができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1つ以上を挙げることができる。
【0043】
また、本発明においてアミド基含有単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N’−メチレンビスアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドまたはメチロール(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができ、不飽和ニトリル単量体の例とては、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルまたはα−クロロアクリロニトリルなどを挙げることができ、ビニルエステル単量体の例としては、ビニルアセテートまたはビニルプロピオネートなどを挙げることができ、ビニルエーテル単量体の例としては、メチルビニルエーテルまたはエチルビニルエーテルなどを挙げることができ、ハロゲン含有α、β−不飽和単量体の例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデンまたはフッ化ビニルなどを挙げることができ、α、β−不飽和芳香族単量体の例としては、スチレンまたはα−メチルスチレンなどを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明においてオキサゾリン基含有高分子の重量平均分子量は、5,000〜50万であることができ、1万〜25万、または2万〜15万であることができるが、これに制限されるものではない。本発明において上記オキサゾリン基含有高分子の重量平均分子量を上記範囲内に制御することによって、フッ素系高分子との適切な相溶性及び流動性を確保し、接着力を付与することができる。
【0045】
本発明において使用されるオキサゾリン基含有高分子の重合方法は、特に制限されず、溶液重合、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などの公知された方法によって重合されることができる。また、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体またはグラフト共重合体などいずれでも良い。当業界では、オキサゾリン基含有高分子を製造する方法が多様に公知されており、本発明では、このような方式がすべて適用されることができる。
【0046】
本発明において樹脂層は、フッ素系高分子100重量部に対してオキサゾリン基含有高分子を0.1重量部〜50重量部で含むことができ、0.5重量部〜25重量部、または1重量部〜10重量部で含むことができる。本発明においては、上記オキサゾリン基含有高分子の含量を上記範囲内に制御することによって、優れた接着信頼性、耐光性及び耐候性を確保することができる。本発明において樹脂層の厚さは、特に制限されず、例えば、3μm〜50μmであることができ、または10μm〜30μmであることができる。上記樹脂層の厚さが3μm未満なら、樹脂層があまりに薄くて、充填剤の充填が不十分で、光遮断性が劣化するおそれがあり、50μmを超過すれば、製造コスト上昇の原因になることがある。
【0047】
本発明の樹脂層は、樹脂層の色相や不透明度の調節またはその他の目的のために、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子とともに、顔料または充填剤をさらに含むことができる。この際、使用されることができる顔料または充填剤の例としては、二酸化チタン(TiO
2)、シリカまたはアルミナなどのような金属酸化物;炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはカーボンブラックなどのようなブラックピグメント;または異なる色相を示すピグメント成分などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。上記のような顔料または充填剤は、樹脂層の色相や不透明度を制御する固有の効果とともに、各成分が含む固有の作用基によって樹脂層の接着力をさらに改善する作用をすることもできる。
【0048】
上記顔料または充填剤のようなその他の添加剤の含量は、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子の固形分を基準にして60重量%以下であることができるが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明の樹脂層は、また、紫外線安定剤、熱安定剤または障壁粒子のような通常の成分をさらに含むこともできる。
【0050】
本発明において上記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層は、コーティング層であることができる。本発明において使用する用語である「コーティング層」は、コーティング方式によって形成された樹脂層を意味する。より具体的に、コーティング層は、前述したフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子の混合物を含む樹脂層が、鋳造法(casting method)または押出方式で製造されたシートを、基材に接着剤などを使用してラミネートされる方式ではない、溶媒、例えば、低い沸点を有する溶媒に樹脂層を構成する成分を溶解して製造された樹脂組成物または水に樹脂層を構成する成分を分散させて製造された水分散コーティング液を基材にコーティングする方式で形成された場合を意味する。
【0051】
添付の
図1は、本発明の一態様による多層フィルム10が基材12と;上記基材12の一面にのみが形成された樹脂層11と;を含む場合を図示しているが、本発明の他の態様による多層フィルム(図示せず)は、基材の他の一面にも樹脂層が形成され、基材の両面に形成された樹脂層を含むことができる。
【0052】
また、本発明の具現例による多層フィルムは、必要に応じて当業界で公知されている多様な機能性層をさらに含むことができる。機能性層の例としては、接着層または絶縁層などを挙げることができる。例えば、本発明の多層フィルムにおいて、基材の一面には、前述した樹脂層が形成されており、他の一面には、接着層及び絶縁層が順次に形成されていてもよい。接着層または絶縁層は、この分野で公知されている多様な方式で形成することができる。例えば、絶縁層は、エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)で構成された層であることができる。上記エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)で構成される層は、絶縁層としての機能はもちろん、封止材(encapsulant)との接着力を高め、製造コストの節減が可能であり、再作業性(re−workability)も優秀に維持する機能を同時に行うことができる。
【0053】
本発明は、また、基材上にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を形成する段階を含む多層フィルムの製造方法に関する。
【0054】
本発明において、基材上に上記樹脂層を形成する方式は、特に制限されない。例えば、当業界で多様に公知されている方式に準じて、前述したフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子などを適切な有機溶媒または水性溶媒に溶解または分散させて製造された樹脂組成物またはコーティング液を基材上に塗布した後、所定条件で乾燥させるなどの方式で樹脂層の形成が可能である。この際、コーティング方式は、特に制限されず、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法などの周知の印刷方式や、ロールコートまたはナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を含み、均一なコーティング層を形成することができるものなら、いずれの方式も適用可能である。本発明では、上記方式以外にも、この分野で公知されている多様な方式が適用されることができ、上記樹脂組成物またはコーティング液は、必要に応じてその他多様な添加剤をさらに含むことができる。
【0055】
本発明の製造方法で使用されることができる基材の具体的な種類は、前述した通りであり、上記基材の一面または両面には、適切な蒸着処理、熱処理、プラズマ処理またはコロナ処理、アンカー剤処理、カップリング剤処理、プライマ処理及び熱処理よりなる群から選択された1つ以上の表面処理が、樹脂層の形成前に行われることもでき、既に上記の表面処理が行われ、1つ以上の表面処理層が形成されている基材を使用することもできる。
【0056】
本発明において樹脂層を形成するコーティング液、すなわち樹脂組成物は、前述した樹脂層を形成する各成分を、相対的に低い沸点を有する溶媒、具体的には、沸点が200℃以下の溶媒に溶解させるか、または水に分散させて製造されることができる。すなわち、本発明では、フッ素系高分子がオキサゾリン基含有高分子とともに混合されることによって、沸点が相対的に低い溶媒に効果的に溶解されるか、または水に分散されることができる。これにより、本発明では、製造過程で高温の乾燥工程が要求されないため、製造コストを節減すると同時に、高温乾燥時に誘発され得る基材の熱変形や熱衝撃などを防止し、製品の品質を向上させることができる。
【0057】
本発明において使用することができる上記のような溶媒の例としては、蒸留水などの水、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAC)よりなる群から選択された1種以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0058】
上記メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドのような溶媒は、200℃以下の温度で蒸発される溶媒であって、前述したフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層コーティング用材料を良好に溶解させることができるだけでなく、上記コーティング層材料とともに基材上に塗布された後、比較的低い温度で乾燥することができる。また、特に上記コーティング過程で樹脂組成物の溶媒が上記基材の表面または基材の表面処理層(例えば、プライマ層)をスウェリング(swelling)させることによって、上記基材上に塗布される樹脂層と上記基材との接触界面で、樹脂層のフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子と基材との相互拡散(interdiffusion)作用が起きるようになる。オキサゾリン基含有高分子の場合、オキサゾリン環の内部の二重結合部分を通じて基材の表面に存在する多様な作用基、例えば、カルボキシル基、芳香族チオール基またはフェノール性ヒドロキシル基などと結合を形成することができる。これにより、上記多層フィルムでは、上記樹脂層と隣接する基材の内部にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子が分布することができるので、上記樹脂層と基材間の物理的、化学的結合力が向上し、基材と樹脂層間の接着力をさらに向上させることができる。
【0059】
これは、基材上に上記樹脂組成物をコーティングして多層フィルムを形成する場合にのみ発生するもので、フッ素系フィルム及び基材フィルムをラミネーションするか、または接着剤を使用して接着させた場合には、フッ素系フィルム層のフッ素原子が基材に拡散しない。すなわち、本発明において、上記樹脂層と隣接する基材内部に分布するフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子は、上記基材上に上記樹脂組成物を塗布する場合に、上記樹脂組成物の成分が接触する基材表面の内部に相互拡散された結果、樹脂層と隣接する基材の内部にフッ素原子及びオキサゾリン基含有高分子が分布することができる。
【0060】
本発明において樹脂層の形成に適用される樹脂組成物には、上記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子以外にも、顔料、充填剤、紫外線安定剤または熱安定剤のような多様な添加剤がさらに含まれていてもよい。上記各添加剤は、フッ素系高分子などとともに溶媒に溶解されるか、または上記成分とは別にミルベース(mill base)形態で製造された後、さらに上記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む溶媒と混合されることもできる。上記のような樹脂層に含まれることができる充填剤または分散剤などの添加剤に含まれた作用基によってもファンデルワールス結合、水素結合、イオン結合、共有結合のような化学的相互作用が発生することができ、これにより、樹脂層と基材間の接着力がさらに向上することができる。
【0061】
本発明において樹脂組成物の製造方法や、樹脂組成物に含まれる各成分の比率などは、特に制限されず、この分野に公知されている多様な方式を適切に採用することができる。
【0062】
本発明では、上記樹脂組成物を基材上にコーティングする工程に引き続いて、コーティングされた樹脂組成物を乾燥させる工程をさらに行うことができる。上記乾燥時の条件は、特に制限されず、例えば、200℃以下、または100℃〜180℃の温度で30秒〜30分、または1分〜10分間行われることができる。本発明では、上記のような条件で乾燥工程を行うことによって、200℃以上の高温乾燥工程による製造コストの上昇を防止し、熱変形または熱衝撃などによる製品品質の低下を防止することができる。
【0063】
本発明は、また、前述した本発明による多層フィルムを含む光電池モジュール用裏面シートに関する。
【0064】
前述したように、上記光電池モジュール用裏面シートは、フッ素系高分及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を含み、上記オキサゾリン基含有高分子に含まれたオキサゾリン基は、基材表面の多様な作用基と化学的共有結合を形成することによって、基材と樹脂層間の優れた接着力を提供することができる。
【0065】
具体的に、上記光電池モジュール用裏面シートの製造工程において、上記樹脂層と基材の界面;または上記樹脂層と基材の表面処理層の界面で、上記樹脂層に含まれるフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子が上記基材または上記基材の表面処理層に相互拡散されることができ、これにより、上記基材と上記樹脂層間の化学的共有結合の形成のみならず、分子鎖の絡み合い(chain entanglement)とファンデルワールス力などによって接着力を向上させることができる。
【0066】
また、本発明の具現例による光電池モジュール用裏面シートは、長期間にわたる外部環境への露出においても光電池を安定的に保護することができるように、耐久性及び耐候性のみならず、絶縁性、水分遮断などの特性を有する。
【0067】
また、本発明は、また、前述した本発明による光電池モジュール用裏面シートを含む光電池モジュールに関する。
【0068】
本発明の光電池モジュールの構造は、上記多層フィルムを光電池モジュール用裏面シートとして含んでいる限り、特に制限されず、この分野で公知されている多様な構造を制限なく採択することができる。
【0069】
本発明において、例えば、光電池モジュールの構造は、裏面シートと;上記裏面シート上に形成された光電池または光電池アレイと;上記光電池または光電池アレイ上に形成された受光シートと;上記裏面シートと受光シートとの間で上記光電池または光電池アレイを封止している封止材層と;を含むことができる。
【0070】
本発明において裏面シートは、前述した本発明による多層フィルムを使用することができ、上記裏面シートの厚さは、特に制限されず、例えば30μm〜2,000μm、50μm〜1,000μm、または100μm〜600μmであることができる。本発明では、上記裏面シートの厚さを30μm〜2,000μmの範囲に制御することによって、光電池モジュールをさらに薄型で構成しながらも、光電池モジュールの耐候性などの物性を優秀に維持することができる。
【0071】
本発明において、上記裏面シートの上に形成される光電池の具体的な種類としては、光起電力を起こすことができるものなら、特に限定されず、この分野で一般的に通用することができる光電池素子を使用することができる。本発明において、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの結晶シリコン光電池、シングル(single)結合型またはタンデム(tandem)構造型などの無定形(amorphous)シリコン光電池、ガリウム−砒素(GaAs)、インジウム−リン(InP)などのIII−V族化合物半導体光電池及びカドミウム−テルリウム(CdTe)、銅−インジウム−セレナイド(CuInSe
2)などのII−VI族化合物半導体光電池などを使用することができ、また、薄膜の多結晶性シリコン光電池、薄膜の微結晶性シリコン光電池及び薄膜の結晶シリコンと無定形(amorphous)シリコンの混合型(hybrid)光電池などをも使用することができる。
【0072】
本発明において、上記光電池は、光電池と光電池の間を連結する配線によって光電池アレイ(光電池集合体)を形成することができる。本発明の光電池モジュールに太陽光を照らせば、光電池の内部で電子(−)と正孔(+)が発生し、光電池と光電池を連結する配線を通じて電流が流れるようになる。
【0073】
本発明において、上記光電池または光電池アレイ上に形成された受光シートは、光電池モジュールの内部を風雨、外部衝撃または火災などから保護し、光電池モジュールの屋外露出時に長期信頼性を確保する機能を行うことができる。本発明の上記受光シートの具体的な種類としては、光透過性、電気絶縁性、機械的または物理、化学的強度に優れたものなら、特に限定されず、例えば、ガラス板、フッ素系樹脂シート、環状ポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シートまたはポリエステル系樹脂シートなどを使用することができる。本発明の一具現例では、耐熱性に優れたガラス板を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明に使用される上記受光基板の厚さは、特に制限されず、例えば0.5mm〜10mm、1mm〜8mm、または2mm〜5mmであることができる。本発明では、上記受光基板の厚さを0.5mm〜10mmの範囲に制御することによって、光電池モジュールをさらに薄型で構成しながらも、光電池モジュールの長期信頼性などの物性を優秀に維持することができる。
【0075】
また、本発明において、光電池モジュールの内部で、具体的に上記裏面シートと受光シートの間で光電池または光電池アレイを封止する封止材層は、この分野で一般的に公知されている封止材を制限なく採用することができる。
【0076】
添付の
図2及び
図3は、本発明の多様な態様による光電池モジュールの断面図を示す図である。
【0077】
添付の
図2は、本発明の光電池モジュール用裏面シートを含むウェーハ系光電池モジュール20の一例を示す図である。添付の
図2に示されたように、本発明の一態様による光電池モジュールは、通常、強誘電体(例えば、ガラス)で構成されることができる受光シート21;本発明による光電池モジュール用裏面シート23;上記シリコン系ウェーハなどの光電池素子24;及び上記光電池素子24を封止している封止材層22を含むことができる。この際、上記封止材層22は、光電池素子24を封止しながら、上記受光シート21に付着される第1層22aと、光電池素子24を封止しながら、上記裏面シート23に付着される第2層22bとを含むことができる。本発明において、上記封止材層22を構成する第1層及び第2層は、前述したように、この分野で一般的に公知されている素材で構成されることができる。
【0078】
添付の
図2は、本発明の他の態様による薄膜型光電池モジュール30の断面図を示す図である。添付の
図3に示されたように、薄膜型光電池モジュール30の場合、光電池素子34は、通常、強誘電体で構成されることができる受光シート31上に形成されることができる。このような薄膜光電池素子34は、通常、化学的蒸着(CVD)などの方法で沈着されることができる。添付の
図3の光電池モジュール30は、
図2の光電池モジュール20と同様に、封止材層32及び裏面シート33を含み、上記封止材層32は、単層で構成されることができる。上記封止材層32及び裏面シート33に対する具体的な説明は、前述した通りである。
【0079】
本発明において、上記のような光電池モジュールを製造する方法は、特に制限されず、この分野で当業者に公知された多様な方法を制限なく採用して製造することができる。
【0080】
添付の
図1及び
図2に示された光電池モジュールは、本発明の光電池モジュールの多様な態様のうち1つに過ぎず、本発明による光電池モジュール用裏面シートを含む場合なら、モジュールの構造、モジュールを構成する素材の種類及びサイズなどは、特に制限されず、この分野で一般的に公知されているものを制限なく採用することができる。