特許第5769037号(P5769037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5769037多層フィルム及びこれを含む光電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769037
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】多層フィルム及びこれを含む光電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20150806BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20150806BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   H01L31/04 500
【請求項の数】33
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-547296(P2013-547296)
(86)(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公表番号】特表2014-502570(P2014-502570A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】KR2011009336
(87)【国際公開番号】WO2012091309
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2013年8月27日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0138242
(32)【優先日】2010年12月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0128415
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キュン・クォン
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−072819(JP,A)
【文献】 特開2009−267294(JP,A)
【文献】 特開2004−107573(JP,A)
【文献】 特開2010−221614(JP,A)
【文献】 特開2008−108947(JP,A)
【文献】 特開2005−196122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
H01L31/0392− 31/078
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 −101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と;
前記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層と;を含み、
前記フッ素系高分子は、融点(melting point)が155℃以下であるか、または軟化点(softening point)が100℃以下である第1フッ素系高分子を含む多層フィルム。
【請求項2】
前記基材は、金属フィルムまたは高分子フィルムである、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記高分子フィルムは、アクリルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及びポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムよりなる群から選択された1つ以上である、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記基材の一面または両面にプラズマ、コロナ、プライマ、アンカー剤、カップリング剤処理及び熱処理のうち選択された1つ以上の処理が実施される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層が形成される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記基材の厚さは、50μm〜500μmである、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記フッ素系高分子は、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記フッ素系高分子は、ビニリデンフルオライド(VDF)またはビニルフルオライド(VF)と、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の共単量体を含む共重合体またはこれらの混合物である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記フッ素系共重合体に含まれた共単量体の含量は、フッ素系共重合体の全体重量に対して0.5重量%〜50重量%である、請求項8に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記フッ素系高分子の重量平均分子量は、5万〜100万である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記フッ素系高分子は、融点が155℃以上であり、軟化点が100℃以上である第2フッ素系高分子をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記融点(melting point)が155℃以下であるか、または軟化点(softening point)が100℃以下である第1フッ素系高分子の全体のフッ素系高分子に対する比率が20重量%以上である、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記オキサゾリン基含有高分子は、オキサゾリン基含有単量体の単一重合体;オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体;またはこれらの混合物である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記オキサゾリン基含有単量体は、下記の化学式1で表示される化合物である、請求項13に記載の多層フィルム。
【化1】
前記化学式1で、R、R、R及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、アルキル基、ハロゲン、置換または非置換されたフェニル基を示し、Rは、不飽和結合を有する非環式炭化水素基を示す。
【請求項15】
前記オキサゾリン基含有単量体は、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロフェニル−5−エチル−2−オキサゾリンよりなる群から選択された1つ以上である、請求項13に記載の多層フィルム。
【請求項16】
前記共重合体に含まれたオキサゾリン基含有単量体の含量は、オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体の全体重量に対して1重量%以上である、請求項13に記載の多層フィルム。
【請求項17】
前記共重合体に含まれたオキサゾリン基含有単量体の含量は、オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体の全体重量に対して5重量%〜95重量%である、請求項16に記載の多層フィルム。
【請求項18】
前記共重合体に含まれた共単量体は、アルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有単量体、不飽和ニトリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ハロゲン含有α、β−不飽和単量体及びα、β−不飽和芳香族単量体よりなる群から選択された1つ以上である、請求項13に記載の多層フィルム。
【請求項19】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリルレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート及びn−テトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1つ以上である、請求項18に記載の多層フィルム。
【請求項20】
前記オキサゾリン基含有高分子の重量平均分子量は、5,000〜50万である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項21】
前記樹脂層は、フッ素系高分子100重量部に対してオキサゾリン基含有高分子を0.1重量部〜50重量部で含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項22】
前記樹脂層の厚さは、3μm〜50μmである、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項23】
前記樹脂層は、顔料、充填剤、紫外線安定剤、熱安定剤及び障壁粒子よりなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項24】
前記樹脂層と隣接する基材の内部にフッ素原子が分布している、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項25】
基材上にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を形成する段階を含み、
前記フッ素系高分子は、融点(melting point)が155℃以下であるか、または軟化点(softening point)が100℃以下である第1フッ素系高分子を含む多層フィルムの製造方法。
【請求項26】
前記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層の形成段階は、フッ素系高分子、オキサゾリン基含有高分子及び沸点が200℃以下の溶媒を含む樹脂組成物またはフッ素系高分子、オキサゾリン基含有高分子及び水を含む水分散組成物を基材上にコーティングすることによって行われる、請求項25に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項27】
前記沸点が200℃以下の溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドよりなる群から選択された1つ以上である、請求項26に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項28】
前記樹脂層を形成する前に、基材の一面または両面にプラズマ処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカー剤処理、カップリング剤処理、蒸着処理及び熱処理よりなる群から選択された1つ以上の表面処理を行う段階をさらに含む、請求項25に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項29】
前記樹脂組成物を基材上にコーティングする工程の後に、乾燥する工程をさらに行う、請求項26に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項30】
前記乾燥する工程は、200℃以下の温度で30秒〜30分間行われる、請求項29に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項31】
請求項1〜24のいずれかに記載の多層フィルムを含む光電池モジュール用裏面シート。
【請求項32】
請求項31に記載の光電池モジュール用裏面シートを含む光電池モジュール。
【請求項33】
前記融点(melting point)が155℃以下であるか、または軟化点(softening point)が100℃以下である第1フッ素系高分子の全体フッ素系高分子に対する比率が50重量%以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、光電池モジュール用裏面シート、その製造方法及びこれを含む光電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題と化石燃料の枯渇などによる新再生エネルギー及び清浄エネルギーに対する関心が高まっていて、そのうち太陽光エネルギーは、環境汚染問題及び化石燃料枯渇問題を解決することができる代表的な無公害エネルギー源として注目されている。
【0003】
太陽光発電原理が適用される光電池は、太陽光を電気エネルギーに転換させる素子であって、太陽光を容易に吸収することができるように外部環境に長期間露出しなければならないので、セルを保護するためのさまざまなパッケージングが行われ、ユニット(unit)形態で製造され、このようなユニットを光電池モジュール(Photovoltaic Modules)という。
【0004】
一般的に、光電池モジュールは、長期間外部環境に露出した状態でも光電池を安定的に保護することができるように、耐候性及び耐久性に優れた裏面シートを使用する。このような裏面シートは、基材にPVF(polyvinyl fluoride)などのフッ素系重合体を含む樹脂層が積層されている裏面シートを含むことが一般的である。
【0005】
しかし、上記PVF樹脂は、裏面シートの基材として代表的に使用されるPET(Polyethylene Terephtalate)フィルムに対する接着力が良くないため、押出またはキャスティングにより得られたフッ素系重合体フィルムをウレタン系接着剤などを使用して基材にラミネーションして使われている。しかし、これは、高価なフィルム製造設備が必要であり、接着剤の使用が必要であり、接着剤コーティング工程とラミネーション工程がさらに必要であるという問題がある。また、フィルム製造工程でのフィルム取り扱い性のために要求されるフィルム厚さよりもさらに厚いフィルムを使用しなければならないし、多様な添加剤、フィラーなどの使用が制限され、高い工程温度が必要であるという問題点があった。
【0006】
これとは異なり、フッ素系重合体フィルムを樹脂懸濁液や溶液で製造し、基材にコーティングして乾燥する場合にも、通常、沸点(boiling point)が高い溶媒を使用するため200℃以上の高い乾燥温度を必要とする、という短所がある。
【0007】
高い乾燥温度を要求するPVF樹脂溶液は、高い乾燥温度を提供するために、多くのエネルギーを使用するようになり、光電池モジュールの裏面シートの製造費用を増加させ、また、熱衝撃を印加するか、または熱変形を誘発し、製品の機械的特性などの品質を悪化させ、屋外で長期使用時に機械的物性の速い低下を起こす。
【0008】
したがって、優れた耐久性及び耐候性を有しながらも、低い乾燥温度で乾燥することができ、光電池裏面シートの製造費用を節減することができ、光電池モジュールの生産性及び品質を向上させることができる光電池用裏面シート材料に対する要求は持続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の具現例は、多層フィルム、光電池モジュール用裏面シート、その製造方法及びこれを含む光電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの具現例は、基材と;上記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層と;を含む多層フィルムを提供する。
【0011】
本発明の他の具現例は、基材上にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を形成する段階を含む多層フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の具現例は、本発明の具現例による多層フィルムを含む光電池モジュール用裏面シートを提供する。
【0013】
本発明のさらに他の具現例は、本発明による光電池モジュール用裏面シートを含む光電池モジュールを提供する。
【0014】
以下、添付する図面を参照して本発明の具現例をさらに具体的に説明する。また、本発明を説明するにあたって、関連された公知の汎用的な機能または構成に関する詳細な説明は省略する。また、添付の図面は、本発明の理解を助けるための概略的なものであって、本発明をさらに明確に説明するために説明と関係ない部分を省略し、図面において様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しているため、図面に表示された厚さ、サイズ、比率などによって本発明の範囲が制限されない。
【0015】
本発明の1つの具現例は、基材と;上記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層と;を含む多層フィルムに関する。
【0016】
添付の図1は、本発明の一態様による多層フィルムの断面図を示す。添付の図1に示されたように、本発明の多層フィルム10は、基材12と、上記基材12上に形成される樹脂層11とを含み、上記樹脂層11は、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む。
【0017】
本発明において多層フィルムに含まれる基材の具体的な種類は、特に制限されず、この分野で公知された多様な素材を使用することができ、要求される機能、用途によって適切に選択して使用することができる。
【0018】
本発明では、例えば、基材として各種金属フィルムまたは高分子フィルムを使用することができる。上記で金属フィルムとしては、用途によって通常の金属成分、例えば、アルミニウムまたは鉄などよりなるものを挙げることができ、高分子フィルムとしては、アクリルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエステルフィルムなどの単一シート、積層シートまたは共押出物を挙げることができ、これらのうちポリエステルフィルムを使用することが一般的であるが、これに制限されるものではない。上記ポリエステルフィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephtalate)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene Naphtalate)フィルム及びポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybuthylene Terephtalate)フィルムよりなる群から選択された1つ以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0019】
また、上記ポリエステルフィルムとしては、耐加水分解特性に優れたものを使用することもできる。上記耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムは、縮合重合時に発生するオリゴマーの含量が少ないものを使用することが好ましい。また、上記ポリエステルフィルムに公知の耐加水分解特性を向上させる熱処理をさらに加え、ポリエステルの水分含量を低減し、収縮率を低減することによって、耐加水分解特性をさらに優秀にすることができる。耐加水分解特性に優れたフィルムとして市販製品を使用することもできる。
【0020】
本発明では、後述する樹脂層との接着力をさらに向上させるために、基材の一面または両面にコロナ処理またはプラズマ処理のような高周波数のスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;アンカー剤処理;カップリング剤処理;プライマ処理または気相ルイス酸(例えば、BF)、硫酸または高温水酸化ナトリウムなどを使用した化学的活性化処理などの表面処理を行うことができる。上記表面処理方法は、この分野で一般的に通用されるすべての公知手段によることができる。
【0021】
本発明において上記のような表面処理は、カルボキシル基、芳香族チオール基及びフェノール性ヒドロキシル基などを基材の表面に誘導し、樹脂層に含まれたオキサゾリン基との結合性を向上させることによって、基材と樹脂層の結合力をさらに向上させることができる。
【0022】
また、本発明では、水分遮断特性を向上させるために、基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層が形成されることができる。上記無機酸化物の種類は、特に制限されず、水分遮断特性があるものなら、制限なく採用することができる。本発明では、例えば、無機酸化物としてケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物を使用することができるが、これに制限されるものではない。本発明において基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層を形成する方法は、特に制限されず、この分野で一般的に通用される蒸着法などによることができる。
【0023】
本発明において基材の一面または両面に無機酸化物蒸着層を形成する場合には、基材の表面に無機酸化物蒸着層を形成した後、上記無機酸化物蒸着層上に前述した表面処理を行うことができる。
【0024】
本発明において上記基材の厚さは、特に制限されず、例えば、50μm〜500μmの範囲であることができ、または100μm〜300μmの範囲であることができる。上記基材の厚さを上記のように調節し、多層フィルムの電気絶縁性、水分遮断性、機械的特性及び取り扱い性などを優秀に維持することができる。但し、本発明において基材の厚さは前述した範囲に制限されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節されることができる。
【0025】
本発明の多層フィルムは、上記基材上に形成され、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を含む。上記樹脂層は、フッ素系高分子とともにオキサゾリン基含有高分子を含むことによって、基材との接着力を向上させることができる。すなわち、フッ素系高分子との相溶性に優れたオキサゾリン基含有高分子を選択し、樹脂層内でフッ素系高分子とブレンドを形成することを容易にし、オキサゾリン基を通じて基材との接着力を向上させることができる。
【0026】
本発明においてオキサゾリン基含有高分子と混合され、多層フィルムの樹脂層を形成するフッ素系高分子の種類は、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物であることができる。
【0027】
また、上記フッ素系高分子は、ビニリデンフルオライド(VDF)と共単量体を含む共重合体またはビニルフルオライド(VF)と共単量体を含む共重合体であることができ、上記フッ素系共重合体に共重合された形態で含まれることができる共単量体の種類は、特に制限されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1種以上を挙げることができ、一例としては、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンなどの1種以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明において、上記フッ素系共重合体に含まれる共単量体の含量は、特に制限されず、例えば、フッ素系共重合体の全体重量に対して約0.5重量%〜50重量%、1重量%〜40重量%、7重量%〜40重量%、10重量%〜30重量%、10重量%〜20重量%であることがある。本発明では、フッ素系共重合体に含まれる共単量体の含量を上記範囲に制御することによって、多層フィルムの耐久性及び耐候性などを確保しながら、効果的な相互拡散作用及び低温乾燥を誘導することができる。
【0029】
本発明において上記フッ素系高分子の重量平均分子量は、5万〜100万であることができ、10万〜70万、または30万〜50万であることもできるが、これに制限されるものではない。本発明において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定される標準ポリスチレンの換算数値である。本発明では、フッ素系高分子の重量平均分子量を上記範囲に制御することによって、優れた溶解度及びその他の物性を確保することができる。
【0030】
本発明の具現例において、上記フッ素系高分子は、i)融点(melting point)が155℃以下であるか、または軟化点(softening point)が100℃以下である第1フッ素系高分子を含むことができる。このような第1フッ素系高分子は、特にオキサゾリン基を含有する高分子との混用性が良いため、多層フィルムの耐久性を向上させることができる。また、上記フッ素系高分子は、第1フッ素系高分子以外にも、さらに、ii)融点が155℃以上であり、軟化点が100℃以上である第2フッ素系高分子を含むことができるが、第2フッ素系高分子は、必要に応じて選択的に使用されることができる。
【0031】
上記第1フッ素系高分子及び第2フッ素系高分子は、いずれも前述したフッ素系高分子に該当するもので、フッ素系単量体の重合による物質の固有の特徴である融点及び軟化点によって区分される。上記融点が155℃以下であるか、または軟化点が100℃以下である第1フッ素系高分子は、全体樹脂層のフッ素系高分子のうち20重量%以上を占めることができ、50%以上を占めることが好ましい。上記第1フッ素系高分子の融点の下限は、特に制限されるものではないが、80℃以上であることができ、上記フッ素系高分子の融点の上限も、特に制限されるものではないが、175℃以下であることができ、本発明では、フッ素系高分子の融点または軟化点を調節し、オキサゾリン基含有高分子との混用性を高めることができ、多層フィルムの使用過程での変形を防止することができ、溶媒に対する溶解度を調節し、コーティング面の光沢を向上させることができる。また、水分散組成物の場合にも、多層フィルムの製造過程で融点が低いフッ素系高分子粒子を選択し、低い温度で溶融させることによって、均一なコーティング外観を得ることができ、多層フィルムに含まれた基材の劣化を防止することができる。
【0032】
本発明において上記フッ素系高分子と混合され、多層フィルムを形成するオキサゾリン基含有高分子の種類は、特に限定されないが、上記フッ素系高分子との相溶性に優れたものなら、制限なく使用可能である。本発明では、例えば、オキサゾリン基含有高分子として、オキサゾリン基含有単量体の単一重合体;オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体;またはこれらの混合物を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明において使用されることができるオキサゾリン基含有単量体は、下記化学式1で表示される化合物であることができる。
【0034】
【化1】
【0035】
上記化学式1で、R、R、R及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、アルキル基、ハロゲン、置換または非置換されたフェニル基を示し、Rは、不飽和結合を有する非環式炭化水素基を示す。
【0036】
上記置換または非置換されたフェニル基において置換基としては、アミノ基、メチル基、クロロメチル基及びクロロ基よりなる群から選択された1つ以上を挙げることができる。
【0037】
また、上記不飽和結合を有する非環式炭化水素基としては、ラジカル重合が可能なアルケニル(alkenyl)基、アルキニル(alkynyl)基またはオレフィン(olefin)基などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明において上記アルケニル基は、例えば炭素数1〜12、または炭素数1〜5のアルケニル基であることができ、上記アルキニル基は、例えば炭素数1〜12、または炭素数1〜5のアルキニル基であることができ、上記オレフィン基は、例えば炭素数1〜12、または炭素数1〜5のオレフィン基であることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明において上記化学式1で表示される化合物の具体的な例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロフェニル−5−エチル−2−オキサゾリンよりなる群から選択された1つ以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明のオキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体内においてオキサゾリン基含有単量体は、上記共重合体の全体重量に対して1重量%以上、5重量%〜95重量%、または10重量%〜90重量%で含まれることができる。本発明のオキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体内において上記オキサゾリン基含有単量体の含量が1重量%未満なら、基材と樹脂層との十分な接着力を提供しにくいことがある。
【0041】
本発明において上記オキサゾリン基含有単量体及び1つ以上の共単量体を含む共重合体に含まれる共単量体の種類は、特に制限されず、オキサゾリン基と反応せず、オキサゾリン基含有単量体と共重合が可能なものなら、制限なく使用可能である。本発明では、例えば、上記共単量体として、アルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有単量体、不飽和ニトリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ハロゲン含有α、β−不飽和単量体及びα、β−不飽和芳香族単量体よりなる群から選択された1つ以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、上記アルキル(メタ)アクリレートは、フッ素系高分子との相溶性の均衡及び優れた粘着特性を付与するために、炭素数1〜14のアルキル基を有することができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1つ以上を挙げることができる。
【0043】
また、本発明においてアミド基含有単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N’−メチレンビスアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドまたはメチロール(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができ、不飽和ニトリル単量体の例とては、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルまたはα−クロロアクリロニトリルなどを挙げることができ、ビニルエステル単量体の例としては、ビニルアセテートまたはビニルプロピオネートなどを挙げることができ、ビニルエーテル単量体の例としては、メチルビニルエーテルまたはエチルビニルエーテルなどを挙げることができ、ハロゲン含有α、β−不飽和単量体の例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデンまたはフッ化ビニルなどを挙げることができ、α、β−不飽和芳香族単量体の例としては、スチレンまたはα−メチルスチレンなどを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明においてオキサゾリン基含有高分子の重量平均分子量は、5,000〜50万であることができ、1万〜25万、または2万〜15万であることができるが、これに制限されるものではない。本発明において上記オキサゾリン基含有高分子の重量平均分子量を上記範囲内に制御することによって、フッ素系高分子との適切な相溶性及び流動性を確保し、接着力を付与することができる。
【0045】
本発明において使用されるオキサゾリン基含有高分子の重合方法は、特に制限されず、溶液重合、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などの公知された方法によって重合されることができる。また、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体またはグラフト共重合体などいずれでも良い。当業界では、オキサゾリン基含有高分子を製造する方法が多様に公知されており、本発明では、このような方式がすべて適用されることができる。
【0046】
本発明において樹脂層は、フッ素系高分子100重量部に対してオキサゾリン基含有高分子を0.1重量部〜50重量部で含むことができ、0.5重量部〜25重量部、または1重量部〜10重量部で含むことができる。本発明においては、上記オキサゾリン基含有高分子の含量を上記範囲内に制御することによって、優れた接着信頼性、耐光性及び耐候性を確保することができる。本発明において樹脂層の厚さは、特に制限されず、例えば、3μm〜50μmであることができ、または10μm〜30μmであることができる。上記樹脂層の厚さが3μm未満なら、樹脂層があまりに薄くて、充填剤の充填が不十分で、光遮断性が劣化するおそれがあり、50μmを超過すれば、製造コスト上昇の原因になることがある。
【0047】
本発明の樹脂層は、樹脂層の色相や不透明度の調節またはその他の目的のために、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子とともに、顔料または充填剤をさらに含むことができる。この際、使用されることができる顔料または充填剤の例としては、二酸化チタン(TiO)、シリカまたはアルミナなどのような金属酸化物;炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはカーボンブラックなどのようなブラックピグメント;または異なる色相を示すピグメント成分などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。上記のような顔料または充填剤は、樹脂層の色相や不透明度を制御する固有の効果とともに、各成分が含む固有の作用基によって樹脂層の接着力をさらに改善する作用をすることもできる。
【0048】
上記顔料または充填剤のようなその他の添加剤の含量は、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子の固形分を基準にして60重量%以下であることができるが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明の樹脂層は、また、紫外線安定剤、熱安定剤または障壁粒子のような通常の成分をさらに含むこともできる。
【0050】
本発明において上記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層は、コーティング層であることができる。本発明において使用する用語である「コーティング層」は、コーティング方式によって形成された樹脂層を意味する。より具体的に、コーティング層は、前述したフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子の混合物を含む樹脂層が、鋳造法(casting method)または押出方式で製造されたシートを、基材に接着剤などを使用してラミネートされる方式ではない、溶媒、例えば、低い沸点を有する溶媒に樹脂層を構成する成分を溶解して製造された樹脂組成物または水に樹脂層を構成する成分を分散させて製造された水分散コーティング液を基材にコーティングする方式で形成された場合を意味する。
【0051】
添付の図1は、本発明の一態様による多層フィルム10が基材12と;上記基材12の一面にのみが形成された樹脂層11と;を含む場合を図示しているが、本発明の他の態様による多層フィルム(図示せず)は、基材の他の一面にも樹脂層が形成され、基材の両面に形成された樹脂層を含むことができる。
【0052】
また、本発明の具現例による多層フィルムは、必要に応じて当業界で公知されている多様な機能性層をさらに含むことができる。機能性層の例としては、接着層または絶縁層などを挙げることができる。例えば、本発明の多層フィルムにおいて、基材の一面には、前述した樹脂層が形成されており、他の一面には、接着層及び絶縁層が順次に形成されていてもよい。接着層または絶縁層は、この分野で公知されている多様な方式で形成することができる。例えば、絶縁層は、エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)で構成された層であることができる。上記エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)で構成される層は、絶縁層としての機能はもちろん、封止材(encapsulant)との接着力を高め、製造コストの節減が可能であり、再作業性(re−workability)も優秀に維持する機能を同時に行うことができる。
【0053】
本発明は、また、基材上にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を形成する段階を含む多層フィルムの製造方法に関する。
【0054】
本発明において、基材上に上記樹脂層を形成する方式は、特に制限されない。例えば、当業界で多様に公知されている方式に準じて、前述したフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子などを適切な有機溶媒または水性溶媒に溶解または分散させて製造された樹脂組成物またはコーティング液を基材上に塗布した後、所定条件で乾燥させるなどの方式で樹脂層の形成が可能である。この際、コーティング方式は、特に制限されず、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法などの周知の印刷方式や、ロールコートまたはナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を含み、均一なコーティング層を形成することができるものなら、いずれの方式も適用可能である。本発明では、上記方式以外にも、この分野で公知されている多様な方式が適用されることができ、上記樹脂組成物またはコーティング液は、必要に応じてその他多様な添加剤をさらに含むことができる。
【0055】
本発明の製造方法で使用されることができる基材の具体的な種類は、前述した通りであり、上記基材の一面または両面には、適切な蒸着処理、熱処理、プラズマ処理またはコロナ処理、アンカー剤処理、カップリング剤処理、プライマ処理及び熱処理よりなる群から選択された1つ以上の表面処理が、樹脂層の形成前に行われることもでき、既に上記の表面処理が行われ、1つ以上の表面処理層が形成されている基材を使用することもできる。
【0056】
本発明において樹脂層を形成するコーティング液、すなわち樹脂組成物は、前述した樹脂層を形成する各成分を、相対的に低い沸点を有する溶媒、具体的には、沸点が200℃以下の溶媒に溶解させるか、または水に分散させて製造されることができる。すなわち、本発明では、フッ素系高分子がオキサゾリン基含有高分子とともに混合されることによって、沸点が相対的に低い溶媒に効果的に溶解されるか、または水に分散されることができる。これにより、本発明では、製造過程で高温の乾燥工程が要求されないため、製造コストを節減すると同時に、高温乾燥時に誘発され得る基材の熱変形や熱衝撃などを防止し、製品の品質を向上させることができる。
【0057】
本発明において使用することができる上記のような溶媒の例としては、蒸留水などの水、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAC)よりなる群から選択された1種以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0058】
上記メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドのような溶媒は、200℃以下の温度で蒸発される溶媒であって、前述したフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層コーティング用材料を良好に溶解させることができるだけでなく、上記コーティング層材料とともに基材上に塗布された後、比較的低い温度で乾燥することができる。また、特に上記コーティング過程で樹脂組成物の溶媒が上記基材の表面または基材の表面処理層(例えば、プライマ層)をスウェリング(swelling)させることによって、上記基材上に塗布される樹脂層と上記基材との接触界面で、樹脂層のフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子と基材との相互拡散(interdiffusion)作用が起きるようになる。オキサゾリン基含有高分子の場合、オキサゾリン環の内部の二重結合部分を通じて基材の表面に存在する多様な作用基、例えば、カルボキシル基、芳香族チオール基またはフェノール性ヒドロキシル基などと結合を形成することができる。これにより、上記多層フィルムでは、上記樹脂層と隣接する基材の内部にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子が分布することができるので、上記樹脂層と基材間の物理的、化学的結合力が向上し、基材と樹脂層間の接着力をさらに向上させることができる。
【0059】
これは、基材上に上記樹脂組成物をコーティングして多層フィルムを形成する場合にのみ発生するもので、フッ素系フィルム及び基材フィルムをラミネーションするか、または接着剤を使用して接着させた場合には、フッ素系フィルム層のフッ素原子が基材に拡散しない。すなわち、本発明において、上記樹脂層と隣接する基材内部に分布するフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子は、上記基材上に上記樹脂組成物を塗布する場合に、上記樹脂組成物の成分が接触する基材表面の内部に相互拡散された結果、樹脂層と隣接する基材の内部にフッ素原子及びオキサゾリン基含有高分子が分布することができる。
【0060】
本発明において樹脂層の形成に適用される樹脂組成物には、上記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子以外にも、顔料、充填剤、紫外線安定剤または熱安定剤のような多様な添加剤がさらに含まれていてもよい。上記各添加剤は、フッ素系高分子などとともに溶媒に溶解されるか、または上記成分とは別にミルベース(mill base)形態で製造された後、さらに上記フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む溶媒と混合されることもできる。上記のような樹脂層に含まれることができる充填剤または分散剤などの添加剤に含まれた作用基によってもファンデルワールス結合、水素結合、イオン結合、共有結合のような化学的相互作用が発生することができ、これにより、樹脂層と基材間の接着力がさらに向上することができる。
【0061】
本発明において樹脂組成物の製造方法や、樹脂組成物に含まれる各成分の比率などは、特に制限されず、この分野に公知されている多様な方式を適切に採用することができる。
【0062】
本発明では、上記樹脂組成物を基材上にコーティングする工程に引き続いて、コーティングされた樹脂組成物を乾燥させる工程をさらに行うことができる。上記乾燥時の条件は、特に制限されず、例えば、200℃以下、または100℃〜180℃の温度で30秒〜30分、または1分〜10分間行われることができる。本発明では、上記のような条件で乾燥工程を行うことによって、200℃以上の高温乾燥工程による製造コストの上昇を防止し、熱変形または熱衝撃などによる製品品質の低下を防止することができる。
【0063】
本発明は、また、前述した本発明による多層フィルムを含む光電池モジュール用裏面シートに関する。
【0064】
前述したように、上記光電池モジュール用裏面シートは、フッ素系高分及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を含み、上記オキサゾリン基含有高分子に含まれたオキサゾリン基は、基材表面の多様な作用基と化学的共有結合を形成することによって、基材と樹脂層間の優れた接着力を提供することができる。
【0065】
具体的に、上記光電池モジュール用裏面シートの製造工程において、上記樹脂層と基材の界面;または上記樹脂層と基材の表面処理層の界面で、上記樹脂層に含まれるフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子が上記基材または上記基材の表面処理層に相互拡散されることができ、これにより、上記基材と上記樹脂層間の化学的共有結合の形成のみならず、分子鎖の絡み合い(chain entanglement)とファンデルワールス力などによって接着力を向上させることができる。
【0066】
また、本発明の具現例による光電池モジュール用裏面シートは、長期間にわたる外部環境への露出においても光電池を安定的に保護することができるように、耐久性及び耐候性のみならず、絶縁性、水分遮断などの特性を有する。
【0067】
また、本発明は、また、前述した本発明による光電池モジュール用裏面シートを含む光電池モジュールに関する。
【0068】
本発明の光電池モジュールの構造は、上記多層フィルムを光電池モジュール用裏面シートとして含んでいる限り、特に制限されず、この分野で公知されている多様な構造を制限なく採択することができる。
【0069】
本発明において、例えば、光電池モジュールの構造は、裏面シートと;上記裏面シート上に形成された光電池または光電池アレイと;上記光電池または光電池アレイ上に形成された受光シートと;上記裏面シートと受光シートとの間で上記光電池または光電池アレイを封止している封止材層と;を含むことができる。
【0070】
本発明において裏面シートは、前述した本発明による多層フィルムを使用することができ、上記裏面シートの厚さは、特に制限されず、例えば30μm〜2,000μm、50μm〜1,000μm、または100μm〜600μmであることができる。本発明では、上記裏面シートの厚さを30μm〜2,000μmの範囲に制御することによって、光電池モジュールをさらに薄型で構成しながらも、光電池モジュールの耐候性などの物性を優秀に維持することができる。
【0071】
本発明において、上記裏面シートの上に形成される光電池の具体的な種類としては、光起電力を起こすことができるものなら、特に限定されず、この分野で一般的に通用することができる光電池素子を使用することができる。本発明において、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの結晶シリコン光電池、シングル(single)結合型またはタンデム(tandem)構造型などの無定形(amorphous)シリコン光電池、ガリウム−砒素(GaAs)、インジウム−リン(InP)などのIII−V族化合物半導体光電池及びカドミウム−テルリウム(CdTe)、銅−インジウム−セレナイド(CuInSe)などのII−VI族化合物半導体光電池などを使用することができ、また、薄膜の多結晶性シリコン光電池、薄膜の微結晶性シリコン光電池及び薄膜の結晶シリコンと無定形(amorphous)シリコンの混合型(hybrid)光電池などをも使用することができる。
【0072】
本発明において、上記光電池は、光電池と光電池の間を連結する配線によって光電池アレイ(光電池集合体)を形成することができる。本発明の光電池モジュールに太陽光を照らせば、光電池の内部で電子(−)と正孔(+)が発生し、光電池と光電池を連結する配線を通じて電流が流れるようになる。
【0073】
本発明において、上記光電池または光電池アレイ上に形成された受光シートは、光電池モジュールの内部を風雨、外部衝撃または火災などから保護し、光電池モジュールの屋外露出時に長期信頼性を確保する機能を行うことができる。本発明の上記受光シートの具体的な種類としては、光透過性、電気絶縁性、機械的または物理、化学的強度に優れたものなら、特に限定されず、例えば、ガラス板、フッ素系樹脂シート、環状ポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シートまたはポリエステル系樹脂シートなどを使用することができる。本発明の一具現例では、耐熱性に優れたガラス板を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明に使用される上記受光基板の厚さは、特に制限されず、例えば0.5mm〜10mm、1mm〜8mm、または2mm〜5mmであることができる。本発明では、上記受光基板の厚さを0.5mm〜10mmの範囲に制御することによって、光電池モジュールをさらに薄型で構成しながらも、光電池モジュールの長期信頼性などの物性を優秀に維持することができる。
【0075】
また、本発明において、光電池モジュールの内部で、具体的に上記裏面シートと受光シートの間で光電池または光電池アレイを封止する封止材層は、この分野で一般的に公知されている封止材を制限なく採用することができる。
【0076】
添付の図2及び図3は、本発明の多様な態様による光電池モジュールの断面図を示す図である。
【0077】
添付の図2は、本発明の光電池モジュール用裏面シートを含むウェーハ系光電池モジュール20の一例を示す図である。添付の図2に示されたように、本発明の一態様による光電池モジュールは、通常、強誘電体(例えば、ガラス)で構成されることができる受光シート21;本発明による光電池モジュール用裏面シート23;上記シリコン系ウェーハなどの光電池素子24;及び上記光電池素子24を封止している封止材層22を含むことができる。この際、上記封止材層22は、光電池素子24を封止しながら、上記受光シート21に付着される第1層22aと、光電池素子24を封止しながら、上記裏面シート23に付着される第2層22bとを含むことができる。本発明において、上記封止材層22を構成する第1層及び第2層は、前述したように、この分野で一般的に公知されている素材で構成されることができる。
【0078】
添付の図2は、本発明の他の態様による薄膜型光電池モジュール30の断面図を示す図である。添付の図3に示されたように、薄膜型光電池モジュール30の場合、光電池素子34は、通常、強誘電体で構成されることができる受光シート31上に形成されることができる。このような薄膜光電池素子34は、通常、化学的蒸着(CVD)などの方法で沈着されることができる。添付の図3の光電池モジュール30は、図2の光電池モジュール20と同様に、封止材層32及び裏面シート33を含み、上記封止材層32は、単層で構成されることができる。上記封止材層32及び裏面シート33に対する具体的な説明は、前述した通りである。
【0079】
本発明において、上記のような光電池モジュールを製造する方法は、特に制限されず、この分野で当業者に公知された多様な方法を制限なく採用して製造することができる。
【0080】
添付の図1及び図2に示された光電池モジュールは、本発明の光電池モジュールの多様な態様のうち1つに過ぎず、本発明による光電池モジュール用裏面シートを含む場合なら、モジュールの構造、モジュールを構成する素材の種類及びサイズなどは、特に制限されず、この分野で一般的に公知されているものを制限なく採用することができる。
【発明の効果】
【0081】
本発明は、多層フィルムに関し、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層を含むことによって、耐熱/耐湿条件での信頼性及び接着力に優れているとともに、耐候性、耐久性に優れている。また、本発明による多層フィルムの樹脂層は、低沸点溶媒を使用して低い乾燥温度で低コストで製造することができ、製造コストを節減することができ、このような多層フィルムは、光電池モジュール用裏面シートなどに有用に使用され、長期間外部環境に露出しても、優れた耐久性を有する光電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1は、本発明の一態様による多層フィルムの断面図を示す図である。
図2図2は、本発明の一態様による光電池モジュールの断面図を示す図である。
図3図3は、本発明の他の態様による光電池モジュールの断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0084】
実施例及び比較例で製造されたフィルムの各物性は、下記の方式で測定した。
【0085】
1.180度剥離強度
剥離強度は、ASTM D1897に準拠して、試験片を10mmの幅で切断した後、4.2mm/secの速度及び180度の剥離角度で剥離しながら測定した。
【0086】
2.クロス−ハッチ接着力
クロスカット試験基準であるASTM D3002/D3359の規格に準拠して、クロスカットテストを行った。具体的に、試験片を1mmの間隔で横及び縦方向にそれぞれ11ラインずつブレードで引いて横と縦がそれぞれ1mmである100個の正方形格子を形成した。その後、Nichiban社のCT−24接着テープを上記切断面に付着した後、引き離す時に、一緒に脱落する面の状態を測定し、下記基準で評価した。
〈クロス−ハッチ接着力評価基準〉
5B:脱落した面がない場合
4B:脱落した面が全体面積に対して5%未満の場合
3B:脱落した面が全体面積に対して5%〜15%の場合
2B:脱落した面が全体面積に対して15%超過35%以下の場合
1B:脱落した面が全体面積に対して35%超過〜65%以下の場合
0B:ほとんど大部分が脱落する場合
【0087】
3.湿熱(damp heat)テスト
実施例及び比較例で製造された多層フィルム(基材の両面をフッ素系高分子/オキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層でコーティング)を85℃及び85%R.H.の条件が維持されるオーブンに1,000時間、2,000時間または3,000時間放置した後、接着力の変化を観察した。本明細書において単位「R.H.」は、相対湿度を意味する。
【0088】
4.PCT(pressure cooker test)
実施例及び比較例で製造された多層フィルム(基材の両面をフッ素系高分子/オキサゾリン基含有高分子を含む樹脂層でコーティング)を2気圧、121℃及び100%R.H.の条件が維持されるオーブンに25時間、50時間及び75時間放置した後、接着力の変化を観察した。
【0089】
〈製造例1〉
基材層の準備
両面にアクリルプライマ処理が行われたPET(poly(ethylene terephthalate)、厚さ:250μm)フィルム(コーロング社製)の表面上にコロナ処理を行った。
【0090】
フッ素系高分子の準備
フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子の混合物を製造するために、下記表1のように多様なフッ素系高分子を準備した。下記表1には、実施例と比較例で使用されるフッ素系高分子の単量体成分、重量平均分子量、融点及び軟化点を記載した。
【0091】
【表1】
【0092】
〈実施例1〉
樹脂層用樹脂組成物の製造
ジメチルホルムアミド(DMF:N、N−dimethyl formamide)400gに上記製造例1で準備したフッ素系高分子A(ビニリデンフルオライド(VDF)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を85:15(VDF:CTFE)の重量比率で重合された形態で含む共重合体)70g;上記製造例1で準備したフッ素系高分子D(ビニリデンフルオライド(VDF)の重合体、PVDF)30g;及び重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形分40%))、日本触媒社製)1gをあらかじめ溶解させて第1コーティング液を準備した。
【0093】
また、上記とは別に、ジメチルホルムアミド90gに顔料分散剤であるBYK 111(BYK社製)0.9g及び顔料である二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社製)90gを溶解させ、さらに直径が0.3mmであるジルコニアビーズ(Zirconiabead)50gを入れた後、1,000rpmの速度で1時間撹拌させた後、ビーズを完全に除去し、ミルベース分散液180.9gを製造した。
【0094】
製造されたミルベース分散液120g(二酸化チタン60gを含む)をあらかじめ準備した第1コーティング液に投入し、さらに撹拌し、樹脂層用樹脂組成物を準備した。
【0095】
コーティング及び乾燥
上記あらかじめ準備した基材上に上記樹脂層用樹脂組成物をコンマリバース(comma reverse)方式で塗布した。具体的に、乾燥後の厚さが約20μmになるように間隔を調節してコーティングした後、コーティングされた基材をそれぞれの長さが2mであり、温度が80℃、180℃及び180℃に調節された3個のオーブンに1m/minの速度で順次に通過させて、樹脂層を形成した。その後、基材の反対面に同一の方式で上記樹脂組成物をコーティングし、PETフィルム(基材)の両面にフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有高分子 がコーティングされた多層フィルムを製造した。
【0096】
〈実施例2〜5〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形分40%)、日本触媒社製)の含量を下記表2に示されたように変更して使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0097】
〈実施例6〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形分40%)、日本触媒社製)1gの代わりに、重量平均分子量が4万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−700(固形分25%)、日本触媒社製)5gを使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0098】
〈実施例7〉
フッ素系高分子Aの代わりに、上記製造例1で準備したフッ素系高分子B(ビニリデンフルオライド(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)を85:15(VDF:HFP)の重量比率で重合された形態で含む共重合体)を使用したことを除いて、実施例3と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0099】
〈実施例8〉
フッ素系高分子A 70g及びフッ素系高分子D 30gの代わりに、上記製造例1で準備したフッ素系高分子C(ビニリデンフルオライド(VDF)の重合体、PVDF)100gを使用したことを除いて、実施例3と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0100】
〈実施例9〉
実施例1で樹脂組成物を準備するにあたって、上記製造例1で準備したフッ素系高分子Aのエマルジョン液(ビニリデンフルオライド(VDF)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を85:15(VDF:CTFE)の重量比率で重合された形態で含む共重合体エマルジョン液、水に固形分20%に分散された分散液)250g;上記製造例1で準備したフッ素系高分子Dのエマルジョン液(PVDFエマルジョン液、 水に固形分20%に分散された分散液)250g;重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形分40%)、日本触媒社製)10g;及び顔料である二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社製)30gを攪拌器を用いて分散させて水分散組成物を製造したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0101】
〈比較例1〉
商業的に販売されているTedlarフィルム/接着剤/PETフィルム/接着剤/Tedlarフィルムの積層構造体を多層フィルムとして使用した。上記積層構造体は、押出工程で製造されたデュポン社のTedlarフィルム(PVFフィルム、厚さ38μm)を接着剤を利用してPETフィルムの両面にラミネーションした製品である。
【0102】
〈比較例2〉
商業的に販売されているTedlarフィルム/接着剤/PETフィルム/接着剤/Tedlarフィルムの積層構造体を多層フィルムとして使用した。上記積層構造体は、キャスティング工程で製造されたデュポン社のTedlarフィルム(PVFフィルム、厚さ25μm)を接着剤を利用してPETフィルムの両面にラミネーションした製品である。
【0103】
〈比較例3〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形分40%)、日本触媒社製)1gを使用する代わりに、 重量平均分子量が4万であるエポキシ基含有アクリル系共重合体(メチルメタクリレート:グリシジルメタクリレート:ブチルメタクリレート:スチレンの重量比が49.5:35.5:10.5であるアクリル系共重合体)2gを使用することを除いて、 実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0104】
〈比較例4〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形分40%)、日本触媒社製)を使用しないことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0105】
〈比較例5〉
フッ素系高分子Cの代わりに、上記製造例1で準備したフッ素系高分子D(PVDF)100gを使用したことを除いて、実施例8と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0106】
〈比較例6〉
フッ素系高分子Cの代わりに、上記製造例1で準備したフッ素系高分子E(ビニリデンフルオライド(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)を90:10(VDF:HFP)の重量比率で重合された形態で含む共重合体)100gを使用したことを除いて、実施例8と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0107】
【表2】
【0108】
〈試験例1〉
上記実施例1〜9及び比較例1〜6の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行った後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間、50時間及び75時間放置した後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、接着力の変化を評価した。評価結果は、下記表3に記載した。
【0109】
【表3】
【0110】
上記表3に示されたように、本発明による実施例の多層フィルムの場合、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有アクリル系共重合体の混合物を含む樹脂層は、基材(PET)と高い初期接着力を示し、また、PCTを75時間進行した後にもやはり優れた接着力を示した。また、PCTを75時間進行した後にも、樹脂層などに界面剥離及びピンホール生成などのような見掛けの変化は観察されなかった。一方、商業的に販売されている多層フィルムであるTedlarフィルム/接着剤/PET/接着剤/Tedlarフィルム(比較例1及び2)の場合、PCTが進行されながら、基材との接着力が大きく低下する点を確認した。また、フッ素系高分子とともに混合される反応性高分子としてオキサゾリン基含有高分子の代わりにエポキシ基含有高分子を使用した比較例3の場合や、初めからオキサゾリン基含有高分子を含まない比較例4の場合には、本発明による実施例と比較するとき、劣悪な接着信頼性を示した。また、融点が155℃以下であるか、または軟化点が100℃以下であるフッ素系高分子を含まない比較例5及び6の場合、初期接着力は良好であるが、PCT後に接着力が急激に低下することができることを確認することができる。
【0111】
〈試験例2〉
上記実施例1〜9及び比較例1〜6の多層フィルムに対して、湿熱(damp heat)試験を行った後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを85℃及び85%R.H.の条件のオーブンでそれぞれ1000時間、2000時間及び3000時間放置した後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、接着力の変化を評価した。上記評価結果を下記表4に記載した。
【0112】
【表4】
【0113】
上記表4に示されたように、本発明による実施例の多層フィルムの場合、フッ素系高分子及びオキサゾリン基含有アクリル系共重合体の混合物を含む樹脂層が基材(PET)と高い初期接着力を示し、また、湿熱テストを3,000時間まで進行した後にも、やはり優れた接着力を示した。また、湿熱テストを3,000時間進行した後にも、樹脂層などに界面剥離及びピンホール生成などのような見掛けの変化は観察されなかった。一方、商業的に販売されている多層フィルムであるTedlarフィルム/接着剤/PET/接着剤/Tedlarフィルム(比較例1及び2)の場合、湿熱テストが進行されながら、基材との接着力が大きく低下する点を確認した。また、フッ素系高分子とともに混合される反応性高分子として、オキサゾリン基含有高分子の代わりに、エポキシ基含有高分子を使用した比較例3の場合や、初めからオキサゾリン基含有高分子を含まない比較例4の場合には、本発明による実施例と比較するとき、劣悪な接着信頼性を示した。また、融点が155℃以下であるか、または軟化点が100℃以下であるフッ素系高分子を含まない比較例5及び6の場合、初期接着力は良好であるが、湿熱テスト後に接着力が急激に低下することができることを確認することができる。
【0114】
〈実施例10〜15〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形粉40%)、日本触媒社製)の含量を下記表5に示されたように変更して使用し、ミルベース分散液の製造過程で、顔料として、二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社製)を使用する代わりに、表5に示されたように、異なる顔料及び含量を使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0115】
〈比較例7〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形粉40%)、日本触媒社製)1gを使用する代わりに、重量平均分子量が4万であるエポキシ基含有アクリル系共重合体(メチルメタクリレート:グリシジルメタクリレート:ブチルメタクリレート:スチレンの重量比が49.5:35.5:10:5であるアクリル系共重合体)5gを使用し、顔料である二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社製)を使用しないことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0116】
〈比較例8〉
重量平均分子量が7万であるオキサゾリン基含有アクリル系共重合体(WS−500(固形粉40%)、日本触媒社製)1gを使用する代わりに、重量平均分子量が4万であるエポキシ基含有アクリル系共重合体(メチルメタクリレート:グリシジルメタクリレート:ブチルメタクリレート:スチレンの重量比が49.5:35.5:10:5であるアクリル系共重合体)5gを使用し、ミルベース分散液の製造過程で、顔料として、二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社製)の代わりに、下記表5に示されたように、異なる顔料及び含量を使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0117】
【表5】
【0118】
〈試験例3〉
上記実施例10〜15及び比較例7、8の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行った後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間、50時間及び75時間放置した後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、接着力の変化を評価した。上記評価結果を下記表6に記載した。
【0119】
【表6】
【0120】
上記表6に示されたように、本発明による実施例の多層フィルムの場合、樹脂層がフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有アクリル系共重合体の混合物を含んでいて、顔料を使用しないか、または顔料としてブラック顔料を使用した場合にも、すなわち顔料の種類または包含有無とは関係なく基材(PET)と高い初期接着力を示し、PCTを75時間進行した後にも、やはり優れた接着力を示した。また、PCTを75時間進行した後にも、樹脂層などに界面剥離及びピンホール生成などのような見掛けの変化は観察されなかった。一方、フッ素系高分子とともに混合される反応性高分子として、オキサゾリン基含有高分子の代わりに、エポキシ基含有高分子を使用した比較例7及び8の場合には、本発明による実施例と比較するとき、劣悪な接着信頼性を示した。
【0121】
〈試験例4〉
上記実施例10〜15及び比較例7、8の多層フィルムに対して、湿熱(damp heat)試験を行った後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを85℃及び85%R.H.の条件のオーブンでそれぞれ1000時間、2000時間及び3000時間放置した後、180゜剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、接着力の変化を評価した。上記評価結果を下記表7に記載した。
【0122】
【表7】
【0123】
上記表7に示されたように、本発明による実施例の多層フィルムの場合、樹脂層がフッ素系高分子及びオキサゾリン基含有アクリル系共重合体の混合物を含んでいて、顔料を使用しないか、または顔料としてブラック顔料を使用した場合にも、すなわち顔料の種類または包含有無とは関係なく、基材(PET)と高い初期接着力を示し、湿熱テストを3,000時間まで行った後にも、やはり優れた接着力を示した。また、湿熱テストを3,000時間まで行った後にも、樹脂層などに界面剥離及びピンホール生成などのような見掛けの変化は観察されなかった。一方、フッ素系高分子とともに混合される反応性高分子として、オキサゾリン基含有高分子の代わりに、エポキシ基含有高分子を使用した比較例7及び8の場合には、本発明による実施例と比較するとき、劣悪な接着信頼性を示した。
【0124】
以上、本発明の例示的な実施例を参照して本発明について詳細に説明したが、これらは、ただ例示的なものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者ならこれから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができる。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求範囲の技術的思想によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0125】
10 多層フィルム
11 樹脂層
12 基材
20 ウェーハ系光電池モジュール
30 薄膜型光電池モジュール
21,31 受光シート
22,32 封止材層
22a 第1層
22b 第2層
23,33 裏面シート
24,34 光電池素子
図1
図2
図3