【実施例】
【0047】
(実施例1)
Mnフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)を10.05kg(62.9mol)と、Mn
3O
4(平均粒径:2μm)を4.95kg(21.6mol)と、水3.8kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を90g、フェライト中に含まれるSrOが0.3mol%となるようにSr原料としてSrCO
3を55g(0.38mol)、SiO
2原料としてコロイダルシリカ(固形分濃度50%)を30g(0.25mol)添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜200μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目54μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目33μmの篩網を用いて微粒を分離した。この造粒粉を、N
2とCO
2とのガス流量を4:1に調整した混合ガスと、大気とを、酸素濃度が17000ppmとなるよう流入させた還元雰囲気下の電気炉に投入し、1100℃で3時間焼成した。そして、得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、平均粒径35μmのフェライト粒子を得た。
【0048】
得られたフェライト粒子の最大高さRz、平均長さRSm、RSmのバラツキσ、磁気特性、強度、粒度分布を後述の方法でそれぞれ測定した。表1に測定結果をまとめて示す。また、
図3に、実施例1のフェライト粒子の部分拡大SEM写真を示す。
【0049】
次に、このようにして得られた実施例1のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆し、実施例1のキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂(東レダウコーニング社製SR2411)を、トルエンに溶解させてコーティング樹脂溶液を作製した。そして、フェライト粒子とコーティング樹脂溶液とを、重量比でフェライト粒子:樹脂溶液=9:1の割合で撹拌機に装填し、フェライト粒子を樹脂溶液に浸漬させながら、温度150℃〜250℃で3時間加熱撹拌した。次いで、熱風循環式加熱装置で温度250℃で5時間さらに加熱を行い、コーティング樹脂層を硬化させてキャリアを得た。
【0050】
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、実施例1に係る二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤について後述の帯電量測定及び画像特性評価を行った。測定及び評価結果を表1に合わせて示す。なお、フェライト粒子の断面についてSEMによるEDS分析を行ったところ、Srの偏析が点在していることが観察された。
【0051】
実施例2
フェライト中に含まれるSrOが0.6mol%となるようにSr原料としてのSrCO
3の添加量を110g(0.75mol)とした以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0052】
実施例3
フェライト中に含まれるSrOが0.9mol%となるようにSr原料としてのSrCO
3の添加量を165g(1.13mol)とした以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0053】
実施例4
フェライト中に含まれるSrOが0.6mol%となるようにSr原料としてのSrCO
3の添加量を110g(0.75mol)とすると共に、焼成時に、N
2とCO
2とのガス流量を1:1に調整した混合ガスを電気炉に流入させた以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0054】
比較例1
焼成時にCO
2を流入させなかった以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例2と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。また、
図4に、比較例1のフェライト粒子の部分拡大SEM写真を示す。
【0055】
比較例2
SrCO
3を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0056】
比較例3
フェライト中に含まれるSrOが1.2mol%となるようにSrCO
3の添加量を220g(1.50mol%)とした以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0057】
比較例4
Fe
2O
3を52mol、MnO
2を40mol及びMgOを8molとなるように秤量し、ローラーコンパクターでペレット化した。得られたペレットを大気雰囲気の条件下、1030℃にてロータリー式の焼成炉で仮焼成をおこなった。これを乾式ビーズミルにて粗粉砕した後、水とSrCO
3を0.75mol添加し、湿式ビーズミルで6時間粉砕し、バインダー成分としてPVAをスラリー固形分に対して3.2重量%となるように添加し、ポリカルボン酸系分散剤をスラリーの粘度が2〜3ポイズになるように添加したものを粉砕スラリーとした。この際のスラリーの固形分は55重量%、スラリー粒径のD
50は1.8μmであった。このようにして得られた粉砕スラリーをスプレードライヤーにて造粒、乾燥し、大気雰囲気の条件下、ロータリーを用いて大気中、700℃で一次焼成を行った。次いで、電気炉を用いて、酸素濃度0.5体積%の条件下、1130℃で4時間保持し、本焼成を行なった。その後、解粒し、さらに分級してフェライト粒子からなるキャリア芯材を得た。さらに得られたフェライト粒子からなるキャリア芯材を大気雰囲気の条件下、表面酸化処理温度520℃、ロータリー式の電気炉で表面酸化処理を行い表面酸化処理済みの比較例4に係るキャリア芯材(フェライト粒子)を得た。
【0058】
比較例5
Fe
2O
3を50.5mol、MnO
2を37.5mol、MgCO
3を12.5mol及びSrCO
3を0.25molとなるように秤量し、ローラーコンパクターでペレット化した。得られたペレットを大気雰囲気の条件下、970℃にてロータリー式の焼成炉で仮焼成をおこなった。これを乾式ビーズミルにて粗粉砕した後、水を添加し、湿式ビーズミルで6時間粉砕し、バインダー成分としてPVAをスラリー固形分に対して3.2重量%となるように添加し、ポリカルボン酸系分散剤をスラリーの粘度が2〜3ポイズになるように添加したものを粉砕スラリーとした。この際のスラリーの固形分は55重量%、スラリー粒径のD
50は1.7μmであった。このようにして得られた粉砕スラリーをスプレードライヤーにて造粒、乾燥し、大気雰囲気の条件下、ロータリーを用いて大気中、700℃で一次焼成を行った。次いで、電気炉を用いて、酸素濃度0.25体積%の条件下、1150℃で4時間保持し、本焼成を行なった。その後、解砕、分級してフェライト粒子を得た。さらに得られたフェライト粒子を、熱間部の後続に冷却部を有するロータリー式の電気炉を用い、熱間部で大気雰囲気の条件下、650℃で表面酸化処理を行った。続いて酸化処理を施されたキャリア芯材は、冷却部で150℃に冷却され、表面酸化処理済みの比較例5に係るフェライト粒子(キャリア芯材)を得た。この際、冷却部を10分で通過しており、急冷速度は50℃/分であった。
【0059】
比較例6
Fe
2O
3(体積粒径D
50:0.6μm、体積粒径D
90:3.0μm)10kg、Mn
3O
4(体積粒径D
50:0.3μm、体積粒径D
90:2.0μm)4kgを900℃で2時間仮焼成し、その後、振動ボールミルで1時間粉砕した。得られた仮焼原料14kgを水5kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を84g、還元剤としてカーボンブラック42g、ストロンチウムを含む原料としてのSrCO
3(体積粒径D
50:1.0μm、体積粒径D
90:4.0μm)を103g添加して混合物とした。このときの固形分濃度を測定した結果、74重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、仮焼原料の体積粒径D
50が1.6μm、体積粒径D
90が3.1μmである混合スラリーを得た。すなわち、この場合の鉄を含む原料は、仮焼原料である。また、添加するSrの量が4350ppmとなるように添加した。このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉については、篩により除去した。この造粒粉を電気炉に投入し、1130℃で3時間焼成した。このとき、電気炉内は、酸素濃度が0.8%、すなわち、8000ppmとなるように雰囲気を調整した電気炉にフローした。焼成時の冷却温度は、2℃/分とした。得られた焼成粉を解粒後に篩を用いて分級し、平均粒径25μmとして、比較例6に係るキャリア芯材を得た。
【0060】
(最大高さRz,平均長さRSm及びRSmのバラツキσの測定)
フェライト粒子の最大高さRz、平均長さRSm及びそのバラツキσを次のように測定した。超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK−X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整し、オート撮影機能を用いてフェライト粒子表面の3次元形状を取り込んだ。
各パラメータの測定には、装置付属のソフトウェアVK−H1XAを用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子の表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。
図5に、観察画面の概略図を示す。フェライト粒子の表面の中央部分に長さ15.0μmの水平方向に延びる線分31を引き、その上下に4本間隔で10本ずつ平行線を追加した場合の線分上にあたる粗さ曲線を、計21本分取り出した。
図5において、上側の10本の線分32a、下側の10本の線分32bを簡略的に示している。
【0061】
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合のカットオフ値λsを、0.25μm、カットオフ値λcを0.08mmとした。
【0062】
最大高さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。
【0063】
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。また、そのバラツキσ(標準偏差)は、平均長さRSmと各データとの差の2乗を平均し、平方根をとったものである。
【0064】
以上説明した最大高さRz、平均長さRSm及びそのバラツキσの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0065】
また、解析に用いるフェライト粒子の平均粒子径については、32.0μm〜34.0μmに限定した。このように測定対象となるフェライト粒子の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。なお、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0066】
(画像特性評価)
デジタル反転現像方式を採用する60枚機を評価機として使用し、作製した電子写真現像剤500gを投入し、200k枚の文字画像を形成し、初期、100k枚の画像形成後、200k枚の画像形成後の画質及び帯電量を評価・測定した。画質について下記基準で評価を行った。なお、kは、1000枚を表し、100k枚とは、10万枚を意味し、200k枚とは、20万枚を意味する。
「◎」:画質が極めて良好である場合
「○」:画質が良好である場合(使用可能なもの)
「△」:画質が良好でない場合(使用不可能なもの)
「×」:画質が悪い場合
【0067】
(帯電量)
初期、100k枚の画像形成後、200k枚の画像形成後の電子写真現像剤を500mg採取し、日本パイオテク社製のSTC−1−C1型を用い、吸引圧力5.0kPa、吸引用メッシュをSUS製の795meshとして帯電量を測定した。同一サンプルについて2回の測定を行い、これらの平均値をキャリアの帯電量とした。キャリアの帯電量は下記式から算出した。なお、測定環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。
帯電量(μC/g)=実測電荷(nC)×10
3×係数(1.0083×10
-3)÷トナー重量
(式中、トナー重量=吸引前重量(g)−吸引後重量(g))
【0068】
(強度評価)
フェライト粒子30gをサンプルミル(協立理工社製「SK−M10型」)に投入し、回転数14000rpmで60秒間破砕試験を行った。その後、破砕試験前の粒径22μm以下の累積値と、破砕後の粒径22μm以下の累積値との変化率を、微粉増加率として算出し粒子強度の指標とした。なお、フェライト粒子の粒径22μm以下の累積値は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。単位は体積%である。
【0069】
(粒度分布)
フェライト粒子の累積粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定し、D
10,D
50,D
90をそれぞれ測定した。なお、単位は体積%である。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1〜4のフェライト粒子を用いたキャリアでは、200k印刷後でも帯電量は低下せず、画質も良好であった。また、粒子強度の指標としての微粉増加率は0.4%以下と小さく、十分な粒子強度を有していた。そしてまた、フェライト粒子の粒度分布は粒径20μm〜60μmの範囲で99体積%を占めていた。
【0072】
これに対して、粒子の最大高さRz、粒子の平均長さRSm、RSmのバラツキσのすべて又はいずれかが本発明の規定から外れている比較例1〜6のフェライト粒子を用いたキャリアでは、200k印刷後の帯電量は17μC/g以下と、初期の帯電量よりも大きく低下し、画質も良好といえないものもあった。加えて、粒子強度の指標としての微粉増加率は0.9%以上と大きく、粒子の割れや欠けが発生していた。