(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769711
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】新規な化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いた環状オレフィン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/54 20060101AFI20150806BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20150806BHJP
C07F 9/54 20060101ALI20150806BHJP
C08F 32/00 20060101ALI20150806BHJP
C07F 15/00 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
C08F4/54
C07F5/02 ACSP
C07F9/54
C08F32/00
!C07F15/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-525468(P2012-525468)
(86)(22)【出願日】2010年8月11日
(65)【公表番号】特表2013-502408(P2013-502408A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】KR2010005267
(87)【国際公開番号】WO2011021805
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年6月14日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0076134
(32)【優先日】2009年8月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0077159
(32)【優先日】2010年8月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン−チュル・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】スン−ホ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ−スン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン−ウー・ユー
(72)【発明者】
【氏名】ブン−ヨウル・イ
【審査官】
村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−527565(JP,A)
【文献】
特開平10−139806(JP,A)
【文献】
特開平10−218921(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/080174(WO,A1)
【文献】
Hissako Iwahashi, et al.,An Onium Salt-catalyzed Direct Polycondensation of Lactic Acid,Chemistry Letters,2008年,vol.37 no.7,p.708-709
【文献】
Gregory C. Welch, et al.,Phosphonium-Borate Zwitterions, Anionic Phosphines, and Dianionic Phosphonium-Dialkoxides via Tetrahydrofuran Ring-Opening Reactions,Inorganic Chemistry,2006年,vol.45 no.2,p.478-480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)またはパラジウムアセタート(Pd(OAc)
2)である10族金属化合物、および下記一般式1:
【化1】
〔式中、R1は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜40のアリール基、置換若しくは非置換の炭素数7〜15のアラルキル基および炭素数2〜20のアルキニル基よりなる群から選ばれ;
Zは、2つのホウ素原子を共有結合により連結する基であり、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン基、置換若しくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基および炭素数2〜20のアルキニレン基よりなる群から選ばれる〕で表される化合物の助触媒を含む
環状オレフィン系重合体の製造用触媒組成物。
【請求項2】
上記一般式1で表される化合物と、上記10族金属化合物とのモル比は、1:2であることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系重合体の製造用触媒組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の環状オレフィン系重合体の製造用触媒組成物を用いた環状オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記環状オレフィン系重合体を製造する環状オレフィン系単量体は、下記一般式5で表されることを特徴とする請求項3に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法:
【化2】
式中、mは0〜4の整数であり;
R
10、R’
10、R’’
10およびR’’’
10は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素;ハロゲン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基;および酸素、窒素、リン、硫黄、シリコーンおよびホウ素のうちの少なくとも一つ以上を含む極性官能基よりなる群から選ばれ、
前記R
10およびR’
10、またはR’’
10およびR’’’
10は、互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、
R
10またはR’
10はR’’
10およびR’’’
10のうちのいずれか1種と連結されて、炭素数4〜12の飽和もしくは不飽和脂肪族環または炭素数6〜24の芳香族環を形成し、
前記極性基は、−R
5OR
6、−OR
6、−OC(O)OR
6、−R
5OC(O)OR
6、−C(O)OR
6、−R
5C(O)OR
6、−C(O)R
6、−R
5C(O)R
6、−OC(O)R
6、−R
5OC(O)R
6、−(R
5O)
p−OR
6、−(OR
5)
p−OR
6、−C(O)−O−C(O)R
6、−R
5C(O)−O−C(O)R
6、−SR
6、−R
5SR
6、−SSR
6、−R
5SSR
6、−S(=O)R
6、−R
5S(=O)R
6、−R
5C(=S)R
6−、−R
5C(=S)SR
6、−R
5SO
3R
6、−SO
3R
6、−R
5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R
5−NCO、−CN、−R
5CN、−NNC(=S)R
6、−R
5NNC(=S)R
6、−NO
2、−R
5NO
2、
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
であり、
前記極性基中、R
5は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリーレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のアルコキシレン基;およびハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のカルボニルオキシレン基よりなる群から選ばれ、
R
6、R
7およびR
8は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素;ハロゲン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリロクシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のアルコキシ基;およびハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のカルボニルオキシ基よりなる群から選ばれ、
pは、それぞれ互いに独立して、1〜10の整数である。
【請求項5】
前記極性基は、−CO2R、−C(O)NR2、−C(O)N(R)C(O)R、−N(R)C(O)R、−OC(O)OR、−C(O)R、−OC(O)R、−OSO3R、または−OS(O)2Rであり、ここで、Rは、水素または炭素数1〜10の鎖状または環状アルキル基であることを特徴とする請求項4に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記環状オレフィン系単量体と10族金属とのモル比は、5,000〜100,000であることを特徴とする請求項4に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記環状オレフィン系重合体の製造時に溶媒が用いられ、前記溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエンおよびクロロベンゼンよりなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒と環状オレフィン系単量体との質量比は、(0.5〜5):1であることを特徴とする請求項7に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記環状オレフィン系重合体は、環状オレフィン系単量体の単独重合体、異なる極性基を有する環状オレフィン系単量体の二元若しくは三元共重合体、または極性基を有する環状オレフィン系単量体と極性基を有しない環状オレフィン系単量体との二元若しくは三元共重合体であることを特徴とする請求項4に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記環状オレフィン系重合体の重量平均分子量は、300,000以上であることを特徴とする請求項4に記載の環状オレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いた環状オレフィン系重合体の製造方法に関する。
【0002】
本出願は、大韓民国特許出願第10−2009−0076134号(2009年08月18日出願)および大韓民国特許出願第10−2010−0077159号(2010年08月11日出願)に基づく優先権を主張し、この内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
環状オレフィン高分子は、ノルボルネンなどの環状オレフィン単量体の重合により得られる高分子であり、既存のオレフィン系高分子に比べて、透明性、耐熱性および耐薬品性に優れており、しかも、複屈折率および吸水率が低いという長所がある。ノルボルネン系樹脂は、優れた光学特性を有することから、フレキシブルディスプレイの基板材料の候補物質として考えられているが、高分子は、上述した熱的安定性に加えて、金属との接着力に優れていることが求められる。すなわち、シリコーン、アルミニウム、銅、金、銀、白金、チタン、ニッケルなどの金属材質への接着力に優れていることが求められる。このため、金属材質への接着力を高めるために、高分子中に極性官能基を導入する必要がある。
【0004】
環状オレフィンモノマーがエステル基などの極性基を有する場合に、この極性基は分子間の充電能を増大させるとともに、金属材質や他のポリマーとの接着性を高める役割を果たして、情報電子の素材として有効に活用することができ、この理由から、エステル基を含むノルボルネンの重合または共重合には絶えず関心が払われてきている(米国特許第3,330,815号、ヨーロッパ特許第0445755A2号、米国特許第5,705,503号、米国特許第6,455,650号)。
【0005】
このエステル基を含むノルボルネンを重合する場合、触媒の構造が複雑になり、これに伴い、単量体に対して触媒を約1/100〜1/400程度に過剰に使用することを余儀なくされる。しかしながら、過剰な触媒使用にも拘わらず、重合収率が低く、しかも、重合後に触媒残渣を除去することが困難であるという欠点がある。
【0006】
本発明者らは、パラジウム2価化合物もしくはパラジウム0価化合物を[Cy
3P−H]
+[B(C
6F
5)
4]
−などのホスホニウム化合物に活性化させることにより、極性環状オレフィン重合に高活性を示す触媒が得られることを知見した(大韓民国特許第10−0843613号)。しかしながら、一部の極性環状オレフィンの場合、単量体とモノマーとの比が低いときには高活性を示すものの、その比が高くなるにつれて活性が急減する。これは、下記の反応式1に示すように、重合反応が起こるときに、2つの金属センターが同時に作用して伝播が起こることに起因するものと推察される。すなわち、極性環状オレフィンには、単量体中の金属に配位可能なリガンド(配位子)としてオレフィンおよび極性基の2つが存在し、極性基が金属に配位された後に他の金属にオレフィン基が配位して伝播が起こるためである。このような機序により重合反応が起こると、重合反応速度が金属濃度の自乗に反比例することとなり、その結果、活性が触媒濃度に敏感になってしまう。
【0007】
【化1】
【0008】
この理由から、単量体と触媒との比が高い条件下でも高い重合活性が得られる化合物の開発が切望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,330,815号
【特許文献2】ヨーロッパ特許第0445755A2号
【特許文献3】米国特許第5,705,503号
【特許文献4】米国特許第6,455,650号
【特許文献5】大韓民国特許第10−0843613号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の技術の問題点を解消するために、本発明は、単量体と触媒との比が高い条件下でも高い重合活性が得られる化合物およびこれを用いた環状オレフィン重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式1で表される化合物を提供する。
【0012】
【化2】
【0013】
式中、R1は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜40のアリール基、置換若しくは非置換の炭素数7〜15のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数7〜15のアラルキル基および炭素数2〜20のアルキニル基よりなる群から選ばれ;
Zは、2つのホウ素原子を共有結合により連結する基であり、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン基、置換若しくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基および炭素数2〜20のアルキニレン基よりなる群から選ばれる。
【0014】
また、本発明は、前記化合物を含む触媒組成物を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、前記触媒組成物を用いた環状オレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、2つの陰イオンを1分子中に有している化合物を助触媒として使用することにより、陽イオン性を帯びる2つの金属センターを金属化合物の濃度によらずに近く位置させることができ、これにより、極性環状オレフィン系単量体の重合に際して、[単量体]と[触媒]との比が高い場合でも高活性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に従い製造された化合物をX線単結晶回折法により分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の一般式1中、それぞれの官能基が置換される場合に、官能基としては、ハロゲン、シアノ基、フェニルスルホニル基などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
上記一般式1中、好ましくは、R1はシクロヘキシル基であり、Zは−C
6F
4−であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0021】
本発明による上記一般式1で表される化合物は、環状オレフィン系重合体の製造に際して助触媒として用いられることが好ましい。
【0022】
上記一般式1で表される化合物を用いて、プレ触媒であるパラジウムなどの10族金属を含む化合物を活性化させる場合に、触媒の濃度によらずに2つのパラジウム金属センターが常に近く位置することとなる。このため、触媒の濃度が低い場合でも、2つのパラジウム金属センターが近く置かれることとなり、単量体に対して触媒を少量投入した条件下でも高い重合活性を実現することができる(反応式2)。
【0024】
極性基を含むノルボルネン単量体の場合には、まず、単量体の極性基に金属が配位した後に、他の金属が二重結合に配位して重合反応が進められるため、既存の助触媒を用いる場合に、重合液中の触媒の濃度が低くなると、金属触媒が極性基に配位した後に、他の金属触媒が二重結合に配位する機会が減ってしまう。しかしながら、本発明による上記一般式1で表される化合物を助触媒として用いる場合に、2つの金属が常に近く位置することとなり、金属触媒が極性基に配位した後に他の金属触媒が二重結合に配位することが容易になる。このため、触媒の濃度が低い場合でも高い重合活性を実現することができる。
【0025】
上記一般式1で表される化合物の製造方法は、後述する製造例に具体的に記載されている。
【0026】
また、本発明は、前記化合物を含む触媒組成物を提供する。
【0027】
前記触媒組成物は、下記一般式2で表される10族金属化合物のプレ触媒および上記一般式1で表される化合物の助触媒を含むことが好ましい。
【0029】
式中、Mは10族金属であり;
Rはヒドロカルビルリガンドであり;
L
1は中性リガンドであり;
aは1または2、bは0または2、cは0または3であり;
0<b+c≦3および3≦a+b+c≦5の式を満足する。
【0030】
上記一般式2中、Rは、下記一般式3で表されることがさらに好ましい。
【0032】
上記一般式3中、XおよびYは、それぞれ互いに独立して、S、OおよびNから選ばれるヘテロ原子であるか;あるいは、
前記ヘテロ原子に、水素、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のビニル基、炭化水素により置換された若しくは置換されていない炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭化水素により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基、炭化水素により置換された若しくは置換されていない炭素数7〜15のアラルキル基、または炭素数3〜20のアルキニル基が連結された構造であり;
R
*は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のビニル基、炭化水素により置換された若しくは置換されていない炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭化水素により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基、炭化水素により置換された若しくは置換されていない炭素数7〜15のアラルキル基および炭素数3〜20のアルキニル基よりなる群から選ばれる。
【0033】
上記一般式2中、L
1は、下記一般式4で表されることがさらに好ましい。
【0035】
上記一般式4中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素;ハロゲン;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキル基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数7〜15のアラルキル基;および少なくとも一つ以上の酸素、窒素、リン、硫黄、シリコーンまたはホウ素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)よりなる群から選ばれ、
前記非炭化水素極性基は、−R
9OR
9’、−OR
9’、−OC(O)OR
9’、−R
9OC(O)OR
9’、−C(O)R
9’、−R
9C(O)OR
9’、−C(O)OR
9’、−R
9C(O)R
9’、−OC(O)R
9’、−R
9OC(O)R
9’、−(R
9O)
k−OR
9’、−(OR
9)
k−OR
9’、−C(O)−O−C(O)R
9’、または−R
9C(O)−O−C(O)R
9’であり、
それぞれのR
9は、ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニレン基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキレン基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリーレン基;または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数7〜15のアラルキレン基であり、
それぞれのR
9’は、水素;ハロゲン;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基;ハロゲンにより置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキル基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルにより置換された若しくは置換されていない炭素数7〜15のアラルキル基;アルコキシ基;ハロアルコキシ基;カルボニルオキシ基;およびハロカルボニルオキシ基よりなる群から選ばれ、
kは1〜10の整数である。
【0036】
上記一般式4中、特に制限はないが、前記R
1、R
2、R
3およびR
4のうちの少なくとも一つは極性基であることが好ましい。
【0037】
上記一般式4中、Mはパラジウムであることが好ましいか、本発明はこれに限定されない。
【0038】
本発明による触媒組成物において、上記一般式2で表される化合物は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0(Pd
2(dba)
3)またはパラジウムアセタート(Pd(OAc)
2であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明による触媒組成物において、上記一般式1で表される化合物と、上記一般式2で表される10族金属化合物とのモル比は、1:2であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
【0040】
また、本発明は、前記触媒組成物を用いた環状オレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【0041】
前記環状オレフィン系重合体を製造する環状オレフィン系単量体は、下記一般式5で表される。
【0043】
式中、mは0〜4の整数であり;
R
10、R’
10、R’’
10およびR’’’
10は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素;ハロゲン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基;および酸素、窒素、リン、硫黄、シリコーンおよびホウ素のうちの少なくとも一つ以上を含む極性官能基よりなる群から選ばれ、
前記R
10およびR’
10、またはR’’
10およびR’’’
10が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基を形成するか、あるいは、R
10またはR’
10がR’’
10およびR’’’
10のうちのいずれか1種と連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和脂肪族環、または炭素数6〜24の芳香族環を形成し、
前記極性基は、−R
5OR
6、−OR
6、−OC(O)OR
6、−R
5OC(O)OR
6、−C(O)OR
6、−R
5C(O)OR
6、−C(O)R
6、−R
5C(O)R
6、−OC(O)R
6、−R
5OC(O)R
6、−(R
5O)
p−OR
6、−(OR
5)
p−OR
6、−C(O)−O−C(O)R
6、−R
5C(O)−O−C(O)R
6、−SR
6、−R
5SR
6、−SSR
6、−R
5SSR
6、−S(=O)R
6、−R
5S(=O)R
6、−R
5C(=S)R
6−、−R
5C(=S)SR
6、−R
5SO
3R
6、−SO
3R
6、−R
5N=C=S、−N=C=S、−NCO、−R
5−NCO、−CN、−R
5CN、−NNC(=S)R
6、−R
5NNC(=S)R
6、−NO
2、−R
5NO
2、
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
であり、
前記極性基中、R
5は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリーレン基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のアルコキシレン基;およびハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のカルボニルオキシレン基よりなる群から選ばれ、
R
6、R
7およびR
8は、互いに同一または異なり、それぞれ互いに独立して、水素;ハロゲン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリロクシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数3〜12のシクロアルキル基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数6〜40のアリール基;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のアルコキシ基;およびハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選ばれる1以上の官能基により置換された若しくは置換されていない炭素数1〜20のカルボニルオキシ基よりなる群から選ばれ、
pは、それぞれ互いに独立して、1〜10の整数である。
【0044】
本発明による環状オレフィン系重合体の製造方法において、上記一般式5で表される環状オレフィン系単量体としては、特に制限はないが、前記R
10、R’
10、R’’
10およびR’’’
10のうちの少なくとも一つは極性基であることが好ましい。
【0045】
上記一般式5中、極性基は、−CO
2R、−C(O)NR
2、−C(O)N(R)C(O)R、−N(R)C(O)R、−OC(O)OR、−C(O)R、−OC(O)R、−OSO
3R、または−OS(O)
2Rであり、ここで、Rは、水素または炭素数1〜10の鎖状または環状アルキル基である。
【0046】
上記一般式5で表される環状オレフィン系単量体は、5−ノルボルネン−2−カルボン酸であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明による環状オレフィン系重合体の製造方法において、前記環状オレフィン系単量体は、極性基を有する環状オレフィン系単量体を少なくとも0.1〜99.9モル%含むことができ、前記極性基を有する環状オレフィン系単量体は、エンド(endo)異性体、エキソ(exo)異性体およびこれらの混合体を含むことができるが、このとき、混合体の組成比は特に限定されない。
【0048】
また、本発明による環状オレフィン系重合体の製造方法において、前記環状オレフィン系単量体が極性基を有する環状オレフィン系単量体である場合には、極性基を有しない環状オレフィン系共単量体をさらに含むことができる。
【0049】
さらに、本発明による環状オレフィン系重合体は、前記触媒組成物を用いて環状オレフィン系単量体を付加重合させることにより単独重合体を製造するか、異なる極性基を有する環状オレフィン系単量体を共重合させて極性基を有するノルボルネン系単量体からなる二元若しくは三元共重合体を製造するか、または、極性基を有する環状オレフィン系単量体と、極性基を有しない環状オレフィン系単量体とを共重合させて二元若しくは三元共重合体を製造することができる。
【0050】
本発明による環状オレフィン系重合体の製造方法において、環状オレフィン系単量体とパラジウムなどの10族金属とのモル比は、5,000〜100,000であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
前記環状オレフィン系重合体の製造に際しては、溶媒が使用可能である。前記溶媒は、特に制限はないが、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、クロロベンゼンなどが使用可能である。このとき、溶媒と環状オレフィン系単量体との質量比は、(0.5〜5):1である。ここで、溶媒と環状オレフィン系単量体との質量比が低すぎると、重合反応中の溶液の粘度が高すぎて攪拌が困難になるという問題がある。
【0052】
本発明による環状オレフィン系重合体の製造方法において、重合圧力は常圧であり、反応温度は0〜100℃、好ましくは、80〜100℃であるが、本発明はこれに限定されない。
【0053】
本発明による環状オレフィン系重合体の製造方法によって製造される環状オレフィン系重合体は、既存の触媒システムによって製造される環状オレフィン系重合体よりも分子量が高いという傾向にあり、より具体的に、重量平均分子量が300,000以上である高分子量の特性を有する。
【実施例】
【0054】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
<実施例>
<製造例1>{[H−PCy
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−の合成
合成スキームを下記の反応式3に示す。ここで、Cyはシクロヘキシル基を表す(以下同じ)。
【0056】
【化12】
【0057】
1)Me
3Sn(C
6F
4)SnMe
3の製造
ドライアイスボックス中で、250mLの単口丸底フラスコに2,3,5,6−テトラフルオロジブロモベンゼン1.50g(0.01mol)を投入し、水分を除去したテトラヒドロフラン70mLを入れて溶解させた。次に、n−ブチルリチウム8.5mL(0.02mol)を注射器に取り、−78℃のドライアイスアセトンバス中で滴加した後に40分間攪拌し、トリメチルチンクロリド3.90g(0.02mol)をテトラヒドロフラン30mLに溶かして、リチウムにより置換されて攪拌されているフラスコに徐々に加えた。反応混合物を−78℃で2時間攪拌後、室温で20時間さらに攪拌した。次に、室温でHCl(100mLの0.1M水溶液)で反応を終結して有機層のみを抽出し、マグネシウムホスファートで水分を除去した後に、真空中で溶媒を除去した。得られた白い固体生成物2.76gは80℃/0.01mmHgの条件下で昇華させて、固体生成物Me
3Sn(C
6F
4)SnMe
3を得た。
【0058】
2)Cl
2B(C
6F
4)BCl
2の製造
Me
3Sn(C
6F
4)SnMe
31.50g(0.003mol、Meはメチル)を封止可能なコネクタに付けうる100mLのフラスコに加え、このフラスコをコネクタを介してデュアルマニホールド真空ラインと接続した。次に、トリクロロボランガス3mLを窒素ラインを介してフラスコに入れた。14日間反応させた後、真空中で残余トリクロロボランガスを除去した。得られた化合物をドライアイスボックス中でペンタンに溶解させた後、ガラスフィルターに通させてろ過し、真空ポンプで溶媒を除去して、固体生成物Cl
2B(C
6F
4)BCl
2を得た。
【0059】
3)[Li
+]
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−の製造
C
6F
5Br(ペンタフルオロブロモベンゼン)1.53mL(0.0123mol)を500mLのフラスコに投入し、トルエン200mLで溶解させた。次に、ドライアイスボックス中で、n−ブチルリチウム7.67mL(0.0123mol)を注射器に取り、−78℃のドライアイスアセトンバス中で滴加した後、2時間攪拌してC
6F
5Liを得た。次に、Cl
2B(C
6F
4)BCl
20.64g(0.002mol)をトルエン40mLに溶解させて注射器に取り、C
6F
5Liが攪拌されているフラスコに−78℃で滴加後、室温まで徐々に昇温させて12時間さらに反応させた。残余溶媒を真空中で除去して、塩として存在する(Li
+)
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−化合物を製造した。
【0060】
4){[H−PCy
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−の製造
[Li
+]
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−0.42g(0.00035mol)を25mLの単口丸底フラスコに投入し、ジクロロメタン5mLに溶解させた。次に、Cy
3PHCl0.22g(0.0007mol)(ここで、Cyはシクロヘキシル基を表す)を[Li
+]
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−が溶解されているフラスコに加えて10分間攪拌し、LiClと推定される白い沈殿物を確認した。その後、この沈殿物をガラスフィルターに通してろ過し、真空中で溶媒を除去して、結果物[(H−PCy
3)]
+2 [(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−を得た。
【0061】
図1は、このようにして得られた化合物をX線単結晶回折法により分析した結果を示す。
【0062】
<製造例2>{[H−PPh
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−の合成
Cy
3PHClの代わりに、PPh
3PHClを用いた以外は、前記製造例1の方法と同様にして{[H−PPh
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−を製造した。
【0063】
<製造例3>{[H−P(t−Bu)
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−の合成
Cy
3PHClの代わりに、t−Bu
3PHClを用いた以外は、前記製造例1の方法と同様にして{[H−P(t−Bu)
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B[(C
6F
5)
3]
2−を製造した。
【0064】
<実施例1>重合反応
ドライアイスボックス中で、Pd
2(dba)
31.0mg(0.001mmol)および助触媒{[H−PCy
3]
+}
2[(C
6F
5)
3B−C
6F
4−B(C
6F
5)
3]
2−1.9mg(0.001mmol)(ここで、Cyはシクロヘキシル基を表す)をシュレンクフラスコに加え、ここに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル3.32g(21.8mmol、[単量体]/[Pd]=11,000)およびジクロロエタン10gを入れて溶かした。90℃で24時間反応させ、室温まで冷却後に溶液をメタノールに入れて沈殿物をろ過して集めた60℃で真空ポンプにより乾燥させて白い固体2.7gを得た(収率81%)。このとき、分子量(Mw)は546,700であり、Mw/Mnは2.32であった。
【0065】
<実施例2>重合反応
触媒として、Pd
2(dba)
3の代わりに、同じPdモル数のPd(OAc)
2を用いた以外は、前記実施例2の方法と同様にして重合を行った。このとき、収率は2.1g(63%)であった。なお、分子量(Mw)は、850,100であり、Mw/Mnは2.52であった。
【0066】
<実施例3>重合反応
ジクロロエタンの代わりに、同じ質量のトルエンを用いた以外は、前記実施例2の方法と同様にして重合を行った。このとき、収率は2.5g(75%)であった。なお、分子量(Mw)は506,030であり、Mw/Mnは2.27であった。
【0067】
<比較例1>助触媒として[HPCy
3]
+[B(C
6F
5)
4]
−を用いた重合
ドライアイスボックス中で、フラスコにPd
2(dba)31.0mg(0.0010mmol)および助触媒としてのHPCy
3B(C
6F
5)
42.1mg(0.002mmol)(ここで、Cyはシクロヘキシル基を表す)を加え、ここに5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル3.32g(21.8mmole)およびトルエン10gを入れて溶かした。90℃で24時間反応させ、室温まで冷却後に溶液をメタノールに入れて沈殿物をろ過して集めた60℃で真空ポンプにより乾燥させて白い固体1.4gを得た(収率:42%)。このとき、分子量(Mw)は232,200であり、Mw/Mnは2.41であった。