(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769954
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】粉塵処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 47/02 20060101AFI20150806BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20150806BHJP
B23Q 11/00 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
B01D47/02 Z
B01D47/06 Z
!B23Q11/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-263167(P2010-263167)
(22)【出願日】2010年11月26日
(65)【公開番号】特開2012-110853(P2012-110853A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦充
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−043924(JP,U)
【文献】
特公昭41−007384(JP,B1)
【文献】
特開2000−015034(JP,A)
【文献】
特公昭40−023877(JP,B1)
【文献】
実公昭49−024616(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D47/00−47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵捕捉液を収容する処理槽と、該処理槽を処理空気導入室と粉塵分離室とに区画するとともに下部に処理空気導入室と粉塵分離室と連通する連通口を備えた仕切り壁とを具備し、該処理空気導入室を粉塵発生源に連通し、該粉塵分離室を排気手段に連通した粉塵処理装置において、
該粉塵分離室に該処理空気導入室側から該仕切り壁の連通口を通して流入する粉塵捕捉液を攪拌するための攪拌板を配設するとともに、該仕切り壁の連通口に該処理空気導入室側から該粉塵分離室に流入する粉塵捕捉液を整流する整流手段が配設されており、
該整流手段は、ハニカム構造体からなっている、
ことを特徴とする粉塵処理装置。
【請求項2】
該粉塵分離室に粉塵捕捉液を噴霧する粉塵捕捉液供給手段を備えている、請求項1記載の粉塵処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置や研磨装置等の加工装置によって加工する際に発生する粉塵を処理するための粉塵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面にフォトダイオード等の受光素子やレーザーダイオード等の発光素子等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々のフォトダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿って破断する方法が実用化されている。
【0004】
上述したように被加工物であるウエーハにレーザー光線を照射すると、デブリが発生し、このデブリを含む粉塵が飛散されるため、粉塵を処理する必要がある。この粉塵を処理する装置として湿式粉塵処理装置が実用化されている。この湿式粉塵処理装置は、粉塵捕捉液を収容する処理槽と、該処理槽を処理空気導入室と粉塵分離室とに区画するとともに下部に処理空気導入室と粉塵分離室と連通する連通口を備えた仕切り壁とを具備し、上記処理空気導入室を粉塵発生源に連通し、上記粉塵分離室を排気手段に連通して構成されている。(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−237521号公報
【特許文献2】特開2005−32937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、上記特許文献に開示された粉塵処理装置においては、処理空気導入室に導入された処理空気に含まれる粉塵を確実に捕捉することができず、必ずしも満足し得るものではない。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、処理空気に含まれる粉塵を確実に捕捉することができる粉塵処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、粉塵捕捉液を収容する処理槽と、該処理槽を処理空気導入室と粉塵分離室とに区画するとともに下部に処理空気導入室と粉塵分離室と連通する連通口を備えた仕切り壁とを具備し、該処理空気導入室を粉塵発生源に連通し、該粉塵分離室を排気手段に連通した粉塵処理装置において、
該粉塵分離室に該処理空気導入室側から該仕切り壁の連通口を通して流入する粉塵捕捉液を攪拌するための攪拌板を配設するとともに、該仕切り壁の連通口に該処理空気導入室側から該粉塵分離室に流入する粉塵捕捉液を整流する整流手段が配設されて
おり、
該整流手段は、ハニカム構造体からなっている、
ことを特徴とする粉塵処理装置が提供される。
【0009】
上記粉塵分離室に粉塵捕捉液を噴霧する粉塵捕捉液供給手段を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による粉塵処理装置は、処理空気導入室と粉塵分離室と区画する仕切り壁に設けられた連通口に処理空気導入室側から粉塵分離室に流入する粉塵捕捉液を整流する
ためのハニカム構造体からなる整流手段が配設されているので、粉塵捕捉液の上下左右への波打が抑制され、攪拌板によって粒子が揃った水粉末を生成することができ、処理空気中の粉塵に水滴を効率よく付着することができる。また、仕切り壁の連通口にはハニカム構造体からなる整流手段が配設されているので、粉塵捕捉液の水位変化が生じても上下左右への波打を抑制する効果を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された粉塵処理装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された粉塵処理装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成された粉塵処理装置の断面図が示されている。
図1に示す粉塵処理装置は、粉塵捕捉液を収容する処理槽2を具備している。この処理槽2は、底壁21と側壁22および上壁23とからなっている。処理槽2内には、処理槽を処理空気導入室2aと粉塵分離室2bとに区画する仕切り壁3が配設されている。この仕切り壁3の下部には、処理空気導入室2aと粉塵分離室2bとを連通する連通口31が設けられている。仕切り壁3に設けられた連通口31には処理空気導入室2a側から粉塵分離室2bに流入する粉塵捕捉液10を整流するための整流手段4が配設されている。この整流手段4は、図示の実施形態においてはハニカム構造体からなっている。
【0014】
処理空気導入室2aを形成する上壁23には処理空気導入口231が設けられており、この処理空気導入口231が粉塵発生源としての図示しない加工装置に連通されている。図示の実施形態における粉塵処理装置は、処理空気導入室2aに粉塵捕捉液を供給するための粉塵捕捉液供給手段5を具備している。この粉塵捕捉液供給手段5は、粉塵捕捉液としての水を貯留する水タンク51と、該水タンク51に貯留された水を送出するポンプ52と、該ポンプ52によって送出された水を処理空気導入室2aに供給する粉塵捕捉液供給管53とからなっている。粉塵捕捉液供給管53は処理空気導入室2aを形成する上壁23に配設され、その吐出端である
図1において下端には粉塵捕捉液を霧状に噴出する噴霧ノズル54が設けられている。
【0015】
上記粉塵分離室2bには、仕切り壁3の連通口31に配設されたハニカム構造体からなる整流手段4と対向して攪拌板6が配設されている。この攪拌板6は、下部に整流手段4を通して粉塵分離室2bに流入する粉塵捕捉液10を攪拌するための湾曲凹部61を備えており、該湾曲凹部61の下側に流通穴62が設けられている。
【0016】
また、粉塵分離室2bには、粉塵分離室2bに収容される粉塵捕捉液10の水位を維持するための水位維持パイプ7が配設されている。この水位維持パイプ7は一端(上端)が処理槽2の底壁21から所定の高さ位置に開口し、その他端が底壁21を貫通して図示しない排水手段に接続されている。
【0017】
また、粉塵分離室2bには、上記攪拌板6と水位維持パイプ7との間に水位を安定させるための水位安定板8が配設されている。この水位安定板8は、下端が処理槽2の底壁21と水位維持パイプ7の一端(上端)の間の位置に位置付けられており、上端が処理槽2の上壁23に接続されている。そして、水位安定板8には、粉塵分離室2bの上部と水位維持パイプ7が配設された領域の上部に形成される排気室2cとを連通する開口81が設けられている。
【0018】
なお、排気室2cを構成する上壁23には排出口232が設けられており、この排出口232が送風機9に接続されている。
【0019】
図示の実施形態における粉塵処理装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
処理槽2の上壁23に設けられた処理空気導入口231に連通された粉塵発生源としての図示しない加工装置によって発生した粉塵を処理するためには、上記送風機9を作動するとともに粉塵捕捉液供給手段5のポンプ52を作動する。送風機9が作動すると、排気室2cおよび水位安定板8の開口81を介して粉塵分離室2bの空気が吸引される。この結果、処理槽2の処理空気導入室2aの処理空気および粉塵捕捉液10が仕切り壁3の連通口31に配設されたハニカム構造体からなる整流手段4を通して粉塵分離室2b側に流入されるとともに、処理空気導入口231から粉塵を含む処理空気が処理空気導入室2aに吸引される。また、処理空気導入室2aには粉塵捕捉液供給手段5を構成する粉塵捕捉液供給管53の下端に設けられた噴霧ノズル54から粉塵捕捉液としての水が噴霧される。この結果、処理空気導入室2aに吸引された処理空気中の粉塵に水滴が付着して仕切り壁3の連通口31に配設されたハニカム構造体からなる整流手段4を通して粉塵分離室2bに流入するとともに、粉塵の一部は処理槽2に収容されている粉塵捕捉液10に接触して落下する。
【0020】
一方、仕切り壁3の連通口31に配設されたハニカム構造体からなる整流手段4を通して粉塵分離室2b側に流入した粉塵捕捉液10は、攪拌板6の湾曲凹部61に沿って上方に舞い上げられ、処理空気導入室2aから粉塵分離室2bに吸引された処理空気中の粉塵に水滴を付着せしめる。このとき上述したように、仕切り壁3の連通口31にはハニカム構造体からなる整流手段4が配設されているので、粉塵捕捉液10の上下左右への波打が抑制され、攪拌板6によって粒子が揃った水粉末を生成することができ、処理空気中の粉塵に水滴を効率よく付着することができる。また、仕切り壁3の連通口31にはハニカム構造体からなる整流手段4が配設されているので、粉塵捕捉液10の水位変化が生じても上下左右への波打を抑制する効果を維持することができる。
【0021】
粉塵分離室2bに吸引された処理空気中の粉塵は水滴が付着し、一部は仕切り壁3を伝って粉塵捕捉液10に落下し、残りは処理空気とともに切り壁3を乗り越えて水位安定板8との間に侵入する。そして、水滴が付着した粉塵はそのまま粉塵捕捉液10に落下したり、仕切り壁3や水位安定板8を伝って粉塵捕捉液10に落下する。このようにして、水滴が付着した粉塵が粉塵捕捉液10に落下することによって除去された処理空気は、水位安定板8に設けられた開口81を通して排気室2cに導かれ、排出口232から送風機9を通して排出される。
【0022】
なお、処理槽2の粉塵分離室2bに収容される粉塵捕捉液10は、水位が水位維持パイプ7の上端に達すると、該水位維持パイプ7を通して排出される。また、粉塵分離室2bには、上記攪拌板6と水位維持パイプ7との間に水位を安定させるための水位安定板8が配設されているので、水位維持パイプ7が位置する領域の水位は安定している。
【0023】
以上のように図示の実施形態における粉塵処理装置は、仕切り壁3の連通口31にハニカム構造体からなる整流手段4が配設されているので、粉塵捕捉液10の上下左右への波打が抑制され、攪拌板6によって粒子が揃った水粉末を生成することができ、処理空気中の粉塵に水滴を効率よく付着することができる。従って、処理空気中の粉塵を確実に捕捉することができる。
【符号の説明】
【0024】
2:処理槽
2a:処理空気導入室
2b:粉塵分離室
3:仕切り壁
31:連通口
4:整流手段
5:粉塵捕捉液供給手段
51:水タンク
52:ポンプ
53:粉塵捕捉液供給管
54:噴霧ノズル
6:攪拌板
7:水位維持パイプ
8:水位安定板
9:送風機