(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
関係式:−0.1≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.1、
を満たすことを特徴とする請求項1記載の白色光源。
複数の青色発光LEDを具備し、−0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2を満たし、かつ異なる発光スペクトルを有する複数の白色光源を一つのハウジング内に配置したことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の白色光源。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策や二酸化炭素の排出量削減の観点からLED(発光ダイオード)を使用した白色光源が注目されている。タングステンフィラメントを使った従来の白熱電球と比較して、LEDは長寿命で、かつ省エネルギーが可能である。従来の白色LEDは、特開平10−242513号公報(特許文献1)に示されているように、発光ピーク波長が400〜530nmの範囲にある青色LEDを使用してYAG蛍光体を励起させ、LEDの青色光とYAG蛍光体の黄色光とを混合して白色光を実現していた。
【0003】
LEDを使用した白色光源は、信号機や液晶表示装置のバックライト、さらには室内灯などの一般用照明機器としても広く使用されている。従来の青色LEDを使用した白色光源は、その発光スペクトルは青色LEDから発する青色光のピーク高さが蛍光体からの黄色光のピーク高さの1.5倍以上と高く、青色光の影響が強い傾向があった。
【0004】
一方、LEDを使用した白色光源の普及に伴って、白色光源の人体への悪影響が懸念され始めている。前述のように従来の白色LEDは青色LEDの発光ピークが強い。このような青色ピークの強い白色光は自然光とは大きく異なる光である。ここで自然光とは、太陽光を意味する。
【0005】
このような白色光源の人体への影響を考慮して、国際公開WO2008/069101号パンフレット(特許文献2)では、発光ピークの異なるLEDと蛍光体とを組合せて4種類の発光ピークを混合することにより分光視感効率とのずれが少ない白色光を提供している。
【0006】
ここで分光視感効率とは、人間の目の光に対する感度を視感度と呼び、CIE(国際照明委員会)は標準分光比視感度V(λ)として定めたものである。従って、分光視感効率と標準分光比視感度V(λ)とは同じ意味である。
図1にCIEが定めた分光視感効率V(λ)を示す。すなわち、
図1によれば、人間は波長が約555nmの光を最も高い感度で認識することを表している。
【0007】
一方、特許文献2では、青色光の人体への影響を考慮して、波長が420〜490nmの範囲の光を制御することを目的としている。このような方法により、夜間において生物時計による調節に関わるホルモンの一種としてのメラトニンの分泌を正常化する効果があると考えられる。
【0008】
一方、人間は、体内時計で支配されるサーカディアンリズム(circadian rhythm:概日リズム、24時間リズム)を有している。人間は、自然光の下で生活することを基本としているが、現代社会では、長時間の室内労働や昼夜逆転生活など生活スタイルが多様化している。自然光を浴びない生活を長期間続けていると、サーカディアンリズムに乱れが生じ人体への悪影響が懸念されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る白色光源は、発光ピークが421〜490nmにある青色発光LED
と、前記青色発光LEDに励起され白色に発光する蛍光体とを具備した白色光源であり、前記蛍光体は発光ピーク波長の異なる少なくとも4種類以上の蛍光体からなり、そのうちの少なくとも1種がピーク波長480nm〜490nmの範囲にあるユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩青緑色発光蛍光体であって、前記白色光源の発光スペクトルをP(λ)、白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、−0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2の関係式を満たすことを特徴とするものである。ここでλは可視光領域である380〜780nmの波長を示す。
【0022】
上記関係式を満たす白色光源を構成する手順は以下の通りである。まず、白色光源の発光スペクトルP(λ)を測定する。発光スペクトルの測定はJIS−C−8152に準じて積分球を使用した全光束測定で実施するものとする。色温度は、発光スペクトルから計算により求めるものである。なお、色温度の単位はケルビン(K)である。
【0023】
次に、白色光源の色温度と同じ黒体輻射の発光スペクトルB(λ)を求める。発光スペクトルB(λ)はプランク分布により求める。プランク分布は
図2に示す数式により求めることができる。
図2中、hはプランク定数、cは光速、λは波長、eは自然対数の底、kはボルツマン定数、Tは色温度である。黒体輻射の発光スペクトルは、h、c、e、kが定数であるため色温度Tが決まれば、波長λに応じた発光スペクトルを求めることができる。
【0024】
また、黒体輻射は黒体放射とも呼ばれ、本発明では自然光(太陽光)の発光スペクトルを示すものである。自然光は、例えば、日中、朝方、日の出の時にはそれぞれ色温度が異なっている。具体的には、日中の自然光の色温度は5100K程度であり、朝方の自然光の色温度は約4200Kであり、日の出の自然光の色温度は約2700Kである。なお、朝方とは午前7:00時を想定したものである。
【0025】
図3に後述する実施例1の発光スペクトルP(λ)を示した。一方、
図5に、実施例1の(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))を示した。また、
図6に実施例1(色温度2700K)の(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))を示した。
【0026】
図5および
図6を求める際のV(λ)は
図1に示した分光視感効率を用いた。
【0027】
図5は、
図3に示した実施例1の発光スペクトルP(λ)と分光視感効率V(λ)を各波長毎の値を掛け合わせた値を、(P(λmax1)×V(λmax1))で割った値をプロットした図である。
図5において、(P(λ)×V(λ))が最大値となる波長は、λmax1=556nmである。
【0028】
また、
図6は、
図4の発光スペクトルB(λ)と分光視感効率V(λ)を各波長毎の値を掛け合わせた値を、(B(λmax2)×V(λmax2))で割った値をプロットした図である。
図6において、(B(λ)×V(λ))が最大となるのは、λmax2=556nmである。
【0029】
(P(λ)×V(λ))は、分光視感効率V(λ)領域における白色光源の発光スペクトルの強さを示すものである。最大値である(P(λmax1)×V(λmax1))で割ることにより、
図5に示したように1.0を上限とした値とすることができる。
【0030】
また、(B(λ)×V(λ))は、分光視感効率V(λ)領域における黒体輻射の発光スペクトルの強さを示すものであり、最大値である(B(λmax2)×V(λmax2))で割ることにより
図6に示したように1.0を上限とした値とすることができる。
【0031】
次に、差異A(λ)=[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]を求める。本実施例の白色光源は、−0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2である。この差異A(λ)が−0.2≦A(λ)≦+0.2であるということは、分光視感効率V(λ)領域における白色光源の発光スペクトルが黒体輻射の発光スペクトル、つまりは自然光の発光スペクトルに近似していることを示している。つまり、差異A(λ)=0であれば、自然光と同じ発光スペクトルを再現できるという意味である。
【0032】
図7に実施例1の差異A(λ)を示した。
図7から明らかな通り、実施例1は差異A(λ)の範囲が−0.03≦A(λ)≦+0.11であり、日中の自然光を再現していることが分かる。
【0033】
このように本実施例によれば、発光スペクトルを黒体輻射の発光スペクトルに近似するよう設計されているので、従来のような青色光のピークが突出した白色LEDと比べて人間のサーカディアンリズムに対する悪影響を大幅に抑制することができる。
【0034】
また、後述する実施例のように日の出の自然光や朝方の自然光を再現することもできるので、その目的に合わせて発光スペクトルを制御すればよい。また、日中の自然光、日の出の自然光、朝方の自然光を再現した白色光源を組合せて、一日の太陽光と同じ自然光を再現することも可能である。例えば、病棟や長時間の室内業務を行わなければならない場所や部屋の照明設備として、この白色光源を用いれば、そこで生活する患者や作業を行う労働者のサーカディアンリズムへの悪影響を抑制できる。また、自然光を再現できるので、自然光を利用した植物栽培などの農業分野などへの応用も可能である。
【0035】
このような白色光源は、発光の色温度が2500〜5400Kであることが好ましい。この色温度が2500K未満および5400Kを超えると、自然光との乖離が大きくなり色温度の調整が困難となってしまうおそれがある。色温度の好ましい範囲は2700〜5200Kである。
【0036】
このような差異A(λ)を有する白色光源は、LED(発光ダイオード)と蛍光体を具備することが好ましい。LEDの発光ピーク波長は421〜490nmの範囲にある青色発光LEDが好ましい。紫外線〜紫色領域に発光ピークがあるLED光を蛍光体により可視光に変換する方式であることが好ましい。LEDの発光ピーク波長が490nm超の青色LED、緑色LED、赤色LEDは、その発光ピーク高さが大きいため差異A(λ)を−0.2≦A(λ)≦+0.2の範囲に制御し難い。また、発光ピーク波長が421〜490nmの発光源であれば、LEDに限らず半導体レーザなどを用いてもよい。
【0037】
また、蛍光体は、421〜490nmの発光源で励起させたとき、蛍光体の発光ピーク波長が420〜700nmの範囲にあることが好ましい。また、蛍光体は、ピーク波長の異なる3種類以上、さらには5種類以上の蛍光体を用いることが好ましい。また、各蛍光体のピーク波長は、150nm以下、さらには10〜100nm、さらには10〜50nmずれていることが好ましい。つまり、青色領域〜赤色領域にかけて、3種以上、さらには5種以上の蛍光体を使ってピーク波長を10〜100nm毎ずらして組合せることにより、−0.2≦差異A(λ)≦+0.2を実現することができる。
【0038】
蛍光体の材質は、発光ピークが420〜700nmにあれば特に限定されるものではないが、421〜490nmで励起される蛍光体として次の蛍光体が好ましい。また、蛍光体の発光スペクトルのピーク波長の半値幅は40nm以上、さらには50〜100nmと広いものが好ましい。
【0039】
青色蛍光体(B)の例としては、ユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体(ピーク波長440〜455nm)やユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミン酸塩蛍光体(ピーク波長450〜460nm)などが挙げられる。また、青緑色蛍光体として、ユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩蛍光体(ピーク波長480〜500nm)や、ユーロピウム、マンガン付活バリウムマグネシウムアルミン酸塩蛍光体(ピーク波長510〜520nm)などが挙げられる。
【0040】
緑色蛍光体(G)の例としては、ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体(ピーク波長520〜550nm)、ユーロピウム付活βサイアロン蛍光体(ピーク波長535〜545nm)、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体(ピーク波長510〜530nm)などが挙げられる。
【0041】
また、黄色蛍光体(Y)の例としては、ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体(ピーク波長550〜580nm)やセリウム付活希土類アルミニウムガーネット蛍光体(ピーク波長550〜580nm)などが挙げられる。
【0042】
また、赤色蛍光体(R)の例としては、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体(ピーク波長600〜630nm)、ユーロピウム付活カルシウムストロンチウム酸窒化物蛍光体(ピーク波長610〜650nm)、ユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体(ピーク波長620〜630nm)やマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート(ピーク波長640〜660nm)などが挙げられる。
【0043】
前記差異A(λ)を制御するためには、上記青色蛍光体、青緑色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体および赤色蛍光体の中から3種以上、さらには5種以上用いることが好ましい。また、色温度の制御は、それぞれの蛍光体の混合割合を変えることにより制御できる。
【0044】
また、各蛍光体の平均粒径は5〜40μmが好ましい。平均粒径が5μm未満では粒径が小さすぎて製造することが困難でありコストアップの要因となる。一方、平均粒径が40μmを超えて大きいと、各蛍光体を均一に混合するのが困難となる。
【0045】
次に白色光源の構造について説明する。
図19に本発明の白色光源の一実施形態としての電球型白色光源を示した。図中、1はLED電球(白色光源)、2はLEDモジュール、3は基体部、4はグローブ、5は絶縁部材、6は口金、7は基板、8はLEDチップ、9は蛍光体層、10は透明樹脂層である。
【0046】
すなわち、
図19に示すLED電球1は、LEDモジュール2と、LEDモジュール2が設置された基体部3と、LEDモジュール2を覆うように基体部3上に取り付けられたハウジングとしてのグローブ4と、基体部3の下端部に絶縁部材5を介して取り付けられた口金6と、基体部3内に設けられた点灯回路11とを具備する。
【0047】
LEDモジュール2は、基板7上に実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を備えている。基板7上には複数のLEDチップ8が面実装されている。紫外乃至紫色発光のLEDチップ8には、InGaN系、GaN系、AlGaN系等の発光ダイオードが用いられる。基板7の表面(さらに必要に応じて内部)には、配線網(図示せず)が設けられており、LEDチップ8の電極は基板7の配線網と電気的に接続されている。LEDモジュール2の側面もしくは底面には、配線12が引き出されており、この配線12が基体部3内に設けられた点灯回路11と電気的に接続されている。LEDチップ8は、点灯回路11を介して印加される直流電圧により点灯する。
【0048】
ハウジングとしてのグローブ4の内面には、LEDチップ8から出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光体層9が設けられている。蛍光体層9は、3種以上、さらには5種以上のピーク波長の異なる蛍光体を組合せて形成される。また、必要に応じて、樹脂と混合して蛍光体層9を形成してもよい。また、各種蛍光体は、すべて混合して混合蛍光体層としてもよいし、1〜3種類程度ずつ混合した蛍光体層を多層化した多層蛍光体層としてもよい。
【0049】
また、
図19ではグローブ4の内面に蛍光体層9を設けた構造としたが、グローブ4の外面やグローブ4自体に蛍光体を混合する構造であってもよいし、透明樹脂層10に蛍光体粒子を混合してもよい。また、
図19では電球型白色光源を例示したが、本発明はこれに限らず、ワンチップ型の白色光源にも適用できる。また、本発明に係る白色光源は、上記電球型に限らず、蛍光灯タイプ(長細いもの)、シャンデリアタイプなどにも適用でき、その形状も限定されるものではない。
【0050】
以上のように、差異A(λ)を−0.2≦A(λ)≦+0.2に制御することにより、自然光を再現した白色光源を提供することができる。また、日中、日の出、朝方、夕方などの各自然光を再現した白色光源をそれぞれ組合せて一日の自然光のリズムを再現した白色光源システムとすることもできる。これにより、人体のサーカディアンリズムへの悪影響を抑制した白色光源および白色光源システムを提供することができる。
【0051】
(実施例)
(実施例1)
LEDチップとして発光ピーク波長450nmの青色発光LEDを用意した。次に、450nmの電磁波を照射することにより発光する蛍光体として、ピーク波長が490nmであるユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩青緑色蛍光体と、ピーク波長が530nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩緑色蛍光体、ピーク波長が555nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩黄色蛍光体と、ピーク波長が555nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩黄色蛍光体と、ピーク波長が630nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン赤色蛍光体との混合物を用意した。なお、各蛍光体の平均粒径は15μmとした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青緑色蛍光体:緑色蛍光体:黄色蛍光体:赤色蛍光体=20:25:15:40の比率で混合し、透明樹脂と混合して、グローブ内面に塗布することにより、
図19に示した電球型白色光源を作製した。得られた白色光源は、発光色の相関色温度が2700Kであった。この色温度2700Kは朝日の自然光と同等の色温度である。
【0052】
JIS−C−8152に準じて積分球を使った全光束測定により、実施例1の電球型白色光源の発光スペクトルを測定した結果を
図3に示す。また、
図1の分光視感分布V(λ)を使用して、実施例1の(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))を求めたものが
図5である。なお、実施例1のλmax1は574nmである。
【0053】
次に、色温度2700Kの黒体輻射の発光スペクトルをプランク分布(
図2の式)により求めたものが
図4である。
図4の発光スペクトルをB(λ)として、(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))を求めたものが
図6である。なお、λmax2は572nmである。
【0054】
実施例1の差異A(λ)=[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]により求めた。その結果を
図7に示す。
図7から明らかなように、実施例1に係る白色光源では、日中の自然光の発光スペクトルとの差異A(λ)が可視光領域である380〜780nmにおいて−0.2〜+0.2の範囲であり、具体的に差異A(λ)は−0.03〜+0.11であった。
【0055】
(実施例2)
LEDチップとして発光ピーク波長が445nmの青色発光LEDを用意した。次に、445nmの電磁波を照射することにより発光する蛍光体として、ピーク波長が490nmであるユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩青緑色蛍光体と、ピーク波長が530nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩緑色蛍光体と、ピーク波長が555nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩緑色蛍光体と、ピーク波長が530nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩黄色蛍光体と、ピーク波長が630nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン赤色蛍光体との混合物を用意した。
【0056】
なお、各蛍光体の平均粒径は15μmとした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として、青緑色蛍光体:緑色蛍光体:黄色蛍光体:赤色蛍光体=30:30:20:20の比率で混合し、 透明樹脂と混合して、グローブ内面に塗布することにより、
図19に示す電球型白色光源1を作製した。得られた白色光源1は、発光色の相関色温度が4100Kであった。この色温度4100Kは朝方の自然光と同等の色温度である。
【0057】
実施例1と同様に積分球を使用した全光束測定により、実施例2の白色光源の発光スペクトルを調査した。その結果を
図8に示す。また、
図1の分光視感効率V(λ)を使って、実施例2の(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))を求めたものが
図10である。なお、実施例2のλmax1は559nmである。
【0058】
次に、色温度4100Kの黒体輻射の発光スペクトルをプランク分布(
図2の式)により求めたものが
図9である。
図9の発光スペクトルをB(λ)として、(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))を求めたものが
図11である。なお、λmax2は560nmである。
【0059】
実施例2の差異A(λ)を[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]により求めた。その結果を
図12に示す。
図12から明らかなように、実施例2に係る白色光源は、朝方の自然光の発光スペクトルとの差異A(λ)が可視光領域である380〜780nmにおいて−0.2〜+0.2の範囲であり、具体的に差異A(λ)は−0.04〜+0.07であった。
【0060】
(実施例3)
LEDチップとして発光ピーク波長が450nmの青色発光LEDを用意した。450nmの電磁波を照射することにより発光する蛍光体は、ピーク波長が490nmであるユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩青緑色蛍光体と、ピーク波長が530nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩緑色蛍光体と、ピーク波長が555nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩黄色蛍光体と、ピーク波長が630nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン赤色蛍光体との混合物から構成した。
【0061】
なお、各蛍光体の平均粒径は15μmとした。蛍光体の混合比は重量比として青緑色蛍光体:緑色蛍光体:黄色蛍光体:赤色蛍光体=40:30:10:20の比率で混合し、透明樹脂と混合して、グローブ内面に塗布することにより、
図19に示す電球型白色光源1を作製した。得られた白色光源1の発光色の色温度は相関色温度5400Kであった。この白色光源の色温度は日中の自然光と同等の色温度である。
【0062】
実施例1と同様に積分球を使った全光束測定により、実施例3に係る白色光源の発光スペクトルP(λ)を調査した。その結果を
図13に示す。また、
図1の分光視感効率V(λ)を使用して、実施例3の(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))を求めたものが
図16である。なお、実施例3のλmax1は550nmである。
【0063】
次に、色温度5400Kの黒体輻射の発光スペクトルをプランク分布(
図2の式)により求めたものが
図14である。
図14の発光スペクトルをB(λ)として、(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))を求めたものが
図16である。なお、λmax2は555nmである。
【0064】
実施例3の差異A(λ)を[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))−(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]により求めた。その結果を
図17に示す。
図17から明らかなように、実施例3に係る白色光源は、日中の自然光の発光スペクトルとの差異A(λ)が、可視光領域である380〜780nmにおいて−0.2〜+0.2の範囲であり、具体的に差異A(λ)は−0.06〜+0.06であった。
【0065】
(比較例1)
発光ピーク波長460nmの青色発光ダイオードと、セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット黄色蛍光体とを組み合わせて、比較例1に係る白色光源を作製した。比較例1の白色光源の色温度は5100Kであり、差異A(λ)は
図18に示した通り−0.28〜+0.04であった。
【0066】
各実施例と比較例1との白色光源を同照度下で被験者(各10人)が日中9:00から17:00まで過ごし、その夜(21:00)にメラトニンの分泌量の測定を行った。なお、メラトニンの分泌量の分析は唾液検査で実施した。また、比較例1におけるメラトニン分泌量を100としたときの各実施例の分泌量(10人の平均値)を示した。その結果を下記表1に示す。
【0068】
上記表1に示す結果から明らかなように、各実施例に係る白色光源においては、従来の比較例1の白色光源を使用した場合と比較して、被験者のメラトニンの分泌量が多くなった。メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンの一種であり、一般的に昼間はメラトニンの分泌量は低く、夜間は高くなるといわれている。これは日中においては自然光の下で暮らしているためと考えられている。そのため、メラトニンは安らかな睡眠を得るために必要なホルモンと考えられている。また、米国等では体内の酸化を防止するサプリメントとしても広く使用されている。
【0069】
従って、自然光を浴びることが困難な環境(病棟や長時間の室内活動など)では本実施例の白色光源を使用することにより、自然光を浴びるのと同等の効果が得られ、睡眠障害やサーカディアンリズムが狂うことを抑制する効果が期待できる。
【0070】
また、各実施例においては、日の出の自然光(実施例1)、朝方の自然光(実施例2)および日中の自然光(実施例3)を別々に作製したが、適宜、それらの複数個を組み合わせて白色光源システムを構成することにより、一日の自然光と同等の光を再現することもできる。
【0071】
具体的には、
図20に示すように、日中の自然光を発するためのLEDチップ8aおよび蛍光体層9aと、日の出の自然光を発するためのLEDチップ8bおよび蛍光体層9bと、朝方の自然光を発するためのLEDチップ8cおよび蛍光体層9cとを共通した基板7上に配置し、これらのLEDチップ8a,8b,8cを同一の共通するグローブ4内に収容して白色光源システム1aを構成することも可能である。また、LEDチップ8と蛍光体層10の間に透明樹脂層9を設けてもよい。
【0072】
各LEDチップ8a,8b,8cは、配線12aによって点灯回路11aに接続されている。使用者は要望に応じて点灯回路11aに内蔵された図示しない切替機構によって適宜点灯させるLEDチップを選択できるように構成されている。
【0073】
上記構成を有する白色光源システム1aによれば、使用者の要望や照明周期に応じて日中の自然光、日の出の自然光および朝方の自然光を1基の白色光源システム1aから選択的に享受することが可能になる。すなわち、日中、日の出、朝方、夕方などの各自然光を再現した白色光源をそれぞれ組合せて一日の自然光のリズムを再現した白色光源システムとすることもできる。