【実施例】
【0024】
次に、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、以下の実施例は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に含まれるものである。
【0025】
(実施例1)
白金スクラップを酸で溶解し、残渣を濾別した後、液と塩化アンモニウムとを反応させる工程を経て、塩化白金酸アンモニウムを製造した。
次に、この白金スクラップの精製工程で得た塩化白金酸アンモニウムとSiO
2とを混合した。
混合比は体積換算で塩化白金酸アンモニウム10に対し、SiO
2を1とした。混合方法は、乳鉢の中に混合物を入れて充分に撹拌した。その後、混合物を石英製の容器に入れて、焙焼炉へ投入し、大気中で600°C、20時間、焙焼して塩化アンモニウムを脱離させた。
【0026】
焙焼後の混合物を分析した結果、塩素<100ppm、窒素500ppmであり、塩化アンモニウムが残存していないことを確認できた。粒度分布を測定(HORIBA製、レーザー回折散乱式)した結果、白金粉末の粒径は90%以上が3〜10μmであった。また、SiO
2粉末の粒径は、90%以上が0.5〜3μmであった。
【0027】
この焙焼後の混合粉を原料として、Co−Cr−Pt−SiO
2ターゲットを作製するに当たり、所定量のCo粉、Cr粉、不足分としてSiO
2粉を加えて混合し焼結させた。
一般に、記録媒体として使用する際には、Co−Cr−Pt−SiO
2の場合、それぞれの成分を所定の割合に調整して使用されるが、これらの成分調整、すなわち不足分の材料については、適宜添加することができる。以下の実施例及び比較例において、同様の成分調整が可能である。
焼結体の組織は微細であり、磁気記録媒体の記録層膜形成用の好適なスパッタリングターゲットを得ることができた。
【0028】
(比較例1)
以下の比較例については、従来公知技術ではない。すなわち、従来技術では本願発明に近似する技術が存在しないからである。この比較例では、本発明の請求項で規定した従属項の内、望ましい範囲とした条件、以外の例を示すものである。したがって、ここに示す条件が、本願発明の上位概念で規定した範囲の除外要因とすべきものでないことは理解されるべきことである。
【0029】
焙焼条件を大気中で900°C、20時間とした場合、塩素、窒素量は充分低いが、白金の粒径は20μm以上が約30%の割合を占めており、やや大きくなった。この場合、この原料を用いてターゲットを作製しても、希望する好ましい微細組織が得られなかった。逆に、焙焼条件を大気中で300°C、20時間とした場合、塩化アンモニウムが、完全には脱離しておらず、この場合も希望する、より好ましい白金粉が得られなかった。以上から、焙焼に際しては、温度を350°C以上、800°C以下とすることが望ましい条件であることが分かる。
【0030】
(比較例2)
上記、実施例1において、混合比を体積換算で、塩化白金酸アンモニウム10に対しSiO
2を0.2、すなわち2%とした場合、焙焼後、混合粉を顕微鏡で観察した結果、白金粉の大きな凝集がところどころに見られた。酸化物粉末の割合が少なく、焙焼時に貴金属粉末同士が凝集しやすくなると考えられる。
【0031】
(実施例2)
ルテニウム含有スクラップを酸で溶解し、残渣を濾別した後、液と塩化アンモニウムとを反応させる工程を経て、塩化ルテニウム酸アンモニウムを製造した。次に、このルテニウムスクラップの精製工程で得た塩化ルテニウム酸アンモニウムとSiO
2とを混合した。
混合比は体積換算で塩化ルテニウム酸アンモニウム10に対し、SiO
2を1とした。混合方法は、乳鉢の中に混合物を入れて充分に撹拌した。その後、混合物を石英製の容器に入れて、焙焼炉へ投入し、不活性雰囲気中、600°C、20時間、焙焼して塩化アンモニウムを脱離させた。
【0032】
焙焼後の混合物を分析した結果、塩素<100ppm、窒素500ppmであり、塩化アンモニウムが残存していないことを確認できた。粒度分布を測定(HORIBA製、レーザー回折散乱式)した結果、ルテニウム粉末の粒径は90%以上が3〜10μmであった。また、SiO
2粉末の粒径は、90%以上が0.5〜3μmであった。
【0033】
この焙焼後の混合粉を原料として、Co−Ru−SiO
2ターゲットを作製するに当たり、所定量のCo粉、不足分としてSiO
2粉を加えて混合し焼結させた。
焼結体の組織は微細であり、磁気記録媒体用の好適なスパッタリングターゲットを得ることができた。
【0034】
(実施例3)
上記実施例1の白金スクラップの精製工程で得た塩化白金酸アンモニウムとTiO
2とを混合した。混合比は体積換算で塩化白金酸アンモニウム10に対し、TiO
2を1とした。
混合方法は、乳鉢の中に混合物を入れて充分に撹拌した。その後、混合物を石英製の容器に入れて、焙焼炉へ投入し、大気中で600°C、20時間、焙焼して塩化アンモニウムを脱離させた。
【0035】
焙焼後の混合物を分析した結果、塩素<100ppm、窒素500ppmであり、塩化アンモニウムが残存していないことを確認できた。粒度分布を測定(HORIBA製、レーザー回折散乱式)した結果、白金粉末の粒径は90%以上が3〜10μmであった。また、TiO
2粉末の粒径は、90%以上が0.5〜3μmであった。
この結果で得られた焙焼後の混合粉を原料として、Co−Cr−Pt−TiO
2ターゲットを作製するに当たり、所定量のCo粉、Cr粉、不足分として酸化チタン(TiO
2)粉を加えて混合し焼結させた。
この結果、焼結体の組織は微細であり、磁気記録媒体の記録層膜形成用の好適なスパッタリングターゲットを得ることができた。
【0036】
上記実施例では、酸化物として酸化ケイ素、酸化チタンの2例を用いたが、これらの酸化ケイ素、酸化チタンを含め、酸化リチウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブテン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ビスマスの少なくとも1種を添加した場合も同様の結果が得られた。
【0037】
(実施例4)
白金スクラップを酸で溶解し、残渣を濾別した後、液と塩化アンモニウムとを反応させる工程を経て、塩化白金酸アンモニウムを製造した。次に、この白金スクラップの精製工程で得た塩化白金酸アンモニウムとSiO
2とを混合した。
混合比は体積換算で塩化白金酸アンモニウム100に対し、SiO
2を32とした。混合方法は、乳鉢の中に混合物を入れて充分に撹拌した。その後、混合物を石英製の容器に入れて、焙焼炉へ投入し、水素雰囲気中、400°C、10時間、焙焼して塩化アンモニウムを脱離させた。
【0038】
焙焼後の混合物を分析した結果、塩素<100ppm、窒素500ppmであり、塩化アンモニウムが残存していないことを確認できた。粒度分布を測定(HORIBA製、レーザー回折散乱式)した結果、白金粉末の粒径は90%以上が7〜16μmであった。また、SiO
2粉末の粒径は、90%以上が0.5〜3μmであった。
【0039】
この焙焼後の混合粉を原料として、Co−Cr−Pt−SiO
2ターゲットを作製するに当たり、所定量のCo粉、Cr粉、不足分としてSiO
2粉を加えて混合し焼結させた。
焼結体の組織は微細であり、磁気記録媒体用の好適なスパッタリングターゲットを得ることができた。
【0040】
以上の実施例では、白金とルテニウムを使用したが、これらの貴金属を含め、白金、金、ルテニウム、パラジウム、イリジウムの少なくとも1種を用いても同様の結果が得られた。