【実施例】
【0038】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
尚、実施例11は参考例である。
【0039】
〔実施例1〜5及び比較例1〜3〕
下記表1の配合で各スパイスミックスを製造した。
【0040】
〔試験例1〕
1枚150gの牛ロースステーキ肉を複数枚用意し、実施例1〜5、比較例1〜3の各スパイスミックス0.5gを、それぞれ2枚ずつ、肉の片面に刷り込んだ。5分後にフライパンに3gの牛脂をのせて加熱し、フライパンが十分に熱せられたところでスパイスミックスを刷り込んだステーキ肉を、そのミックス刷り込み面側を下にして該フライパンにのせ、1分間加熱調理した後、該ステーキ肉を裏返してさらに1分30秒間加熱調理した。こうして焼き上がったステーキ肉の各1枚を切り分け、その調理直後の風味、香りの強さ、香りのバランスを、10名のパネラーに下記評価基準(5点満点)により評価してもらった。さらに焼き上がったステーキ肉の残りの各1枚を、覆いをせず皿にのせた状態で、白熱灯で保温しながら5時間保管し、その後前記と同様に切り分けて10名のパネラーに下記評価基準により評価してもらった。以上の評価結果(10名のパネラーの平均点)を下記表1に示す。
【0041】
(風味の評価基準)
5点:スパイシーで爽やかな香味と香ばしい風味が非常にあり、極めて好ましい。
4点:スパイシーで爽やかな香味と香ばしい風味があり、好ましい。
3点:スパイシーで爽やかな香味と香ばしい風味がややある。
2点:スパイシーで爽やかな香味と香ばしい風味があまり感じられず、やや不良。
1点:スパイシーで爽やかな香味と香ばしい風味がほとんど感じられず、不良。
(香りの強さの評価基準)
5点:スパイシーで清涼感のある濃厚な甘い香りが非常に強い。
4点:スパイシーで清涼感のある濃厚な甘い香りが強い。
3点:スパイシーで清涼感のある濃厚な甘い香りが感じられる。
2点:スパイシーで清涼感のある濃厚な甘い香りがやや感じられる。
1点:スパイシーで清涼感のある濃厚な甘い香りがあまり感じられない。
(香りのバランスの評価基準)
5点:スパイシーな香り、爽やかな香り、甘い香りが非常にバランスよく、極めて好ましい。
4点:スパイシーな香り、爽やかな香り、甘い香りがバランスよく、好ましい。
3点:スパイシーな香り、爽やかな香り、甘い香りがやや崩れている。
2点:スパイシーな香り、爽やかな香り、甘い香りが崩れ、好ましくない。
1点:スパイシーな香り、爽やかな香り、甘い香りが大きく崩れ、非常に好ましくない。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、比較例1は、主としてブラックペッパー末及びホワイトペッパー末からなる群が配合されていないため、また比較例2は、主としてガーリック末及びジンジャー末からなる群が配合されていないため、また比較例3は、主としてナツメグ末、クローブ末及びタイム末からなる群が配合されていないため、何れも各実施例に比して、調理直後及び調理後一定時間経過後の何れにおいても、食品の風味(香味)、香りの強さ及び香りのバランスに劣る結果となった。以上のことから、スパイスミックスにおいてこれら各評価項目を向上するためには、これら特定のスパイス末を配合することが有効であることがわかる。
【0044】
〔実施例6〜10及び比較例4〜6〕
下記表2の配合で各揚げ物用衣材を製造した。薄力粉としては、日清製粉製のフラワーを用いた。
【0045】
〔試験例2〕
100gにカットした鶏もも肉を用意し、澱粉(日食ねりこみ澱粉K−1、日本食品化工製)100質量%に対して水100質量%を混合して調整したバッター液に浸し、次いで実施例6〜10及び比較例4〜6の何れか1つの揚げ物用衣材を絡め、温度175℃の油で4分間油ちょうして、フライドチキンを製造した。調理直後の各フライドチキンの風味、香りの強さ、香りのバランスを、10名のパネラーに前記評価基準(5点満点)により評価してもらった。さらに調理後の各フライドチキンの一部を遠赤外線による温蔵庫に入れ、8時間後に前記と同様に10名のパネラーに評価してもらった。以上の評価結果(10名のパネラーの平均点)を下記表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、比較例4は、主としてブラックペッパー末及びホワイトペッパー末からなる群が配合されていないため、また比較例5は、主としてガーリック末及びジンジャー末からなる群が配合されていないため、また比較例6は、主としてナツメグ末、クローブ末及びタイム末からなる群が配合されていないため、何れも各実施例に比して、調理直後及び調理後一定時間経過後の何れにおいても、食品の風味(香味)、香りの強さ及び香りのバランスに劣る結果となった。以上のことから、揚げ物用衣材においてこれら各評価項目を向上するためには、これら特定のスパイス末を含有させることが有効であることがわかる。
【0048】
〔実施例11〜18及び比較例7〜8〕
下記表3の配合で各揚げ物用衣材を製造した。薄力粉としては、日清製粉製のフラワーを用いた。
【0049】
〔試験例3〕
実施例11〜18及び比較例7〜8の各揚げ物用衣材を用いた以外は、試験例2と同様にしてフライドチキンを製造した。調理直後の各フライドチキンの風味、香りの強さ、香りのバランスを、10名のパネラーに前記評価基準(5点満点)により評価してもらった。その結果(10名のパネラーの平均点)を下記表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3から明らかなように、比較例7及び8は、主としてホワイトペッパー末の含有量が前記特定範囲(0.1〜5質量%)から外れているため、何れも各実施例に比して、少なくとも香りの強さ及び香りのバランスに劣る結果となった。以上のことから、揚げ物用衣材においてこれら各評価項目を向上するためには、ホワイトペッパー末を含有させるだけでは足りず、その含有量を前記特定範囲に調整することが有効であることがわかる。また、実施例15〜18の比較から明らかなように、オニオン末を含有させた実施例15は、バジル末、ナツメグ末又はコリアンダー末を含有させた実施例16〜18に比して、風味、香りの強さ、香りのバランスに優れる結果となっており、このことからオニオン末の有効性が明らかである。
【0052】
〔実施例19〜24及び比較例9〜12〕
下記表4の配合で各揚げ物用衣材を製造した。薄力粉としては、日清製粉製のフラワーを用いた。
【0053】
〔試験例4〕
実施例19〜24及び比較例9〜12の各揚げ物用衣材を用いた以外は、試験例2と同様にしてフライドチキンを製造した。調理直後の各フライドチキンの風味、香りの強さ、香りのバランスを、10名のパネラーに前記評価基準(5点満点)により評価してもらった。その結果(10名のパネラーの平均点)を下記表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4から明らかなように、比較例9及び10は、主としてガーリック末の含有量が前記特定範囲(0.01〜2質量%)から外れているため、何れも各実施例に比して、風味、香りの強さ及び香りのバランスに劣る結果となった。また、比較例11及び12は、主としてクローブ末の含有量が前記特定範囲(0.01〜2質量%)から外れているため、何れも各実施例に比して、風味、香りの強さ及び香りのバランスに劣る結果となった。以上のことから、揚げ物用衣材においてこれら各評価項目を向上するためには、ガーリック末及びクローブ末を含有させるだけでは足りず、それらの含有量を前記特定範囲に調整することが有効であることがわかる。
【0056】
〔実施例25〜34〕
下記表5の配合で各揚げ物用衣材を製造した。薄力粉としては、日清製粉製のフラワーを用いた。
【0057】
〔試験例5〕
実施例25〜34の各揚げ物用衣材を用いた以外は、試験例2と同様にしてフライドチキンを製造した。調理直後の各フライドチキンの風味、香りの強さ、香りのバランスを、10名のパネラーに前記評価基準(5点満点)により評価してもらった。その結果(10名のパネラーの平均点)を下記表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5中、実施例26〜30はオニオン末の含有量の違いによる影響をみたものであり、実施例31〜32はパプリカ末の含有量の違いによる影響をみたものであり、実施例33〜34は大豆蛋白粉の含有量の違いによる影響をみたものである。オニオン末の含有量が前記特定範囲(0.005〜1質量%)内にある実施例27〜29は、該含有量が前記特定範囲外にある実施例26及び30に比して、風味、香りの強さ及び香りのバランスに優れる結果となった。また、パプリカ末の含有量が前記特定範囲(0.01〜1質量%)内にある実施例31は、該含有量が前記特定範囲外にある実施例32に比して、風味、香りの強さ及び香りのバランスに優れる結果となった。また、大豆蛋白粉の含有量が前記特定範囲(0.1〜5質量%)内にある実施例33は、該含有量が前記特定範囲外にある実施例34に比して、風味、香りの強さ及び香りのバランスに優れる結果となった。以上のことから、揚げ物用衣材において、オニオン末、パプリカ末及び大豆蛋白粉それぞれの含有量の前記特定範囲の臨界意義が明らかである。
【0060】
〔製造例1〜10〕
下記表6の配合で3種類の各揚げ物用衣材を製造した。薄力粉としては、日清製粉製のフラワーを用い、タピオカ澱粉としては、日本食品化工製の日食ねりこみ澱粉K−1を用いた。各揚げ物用衣材100質量部に対して、水200質量部を混合してバッター液を製造した。打ち粉をした豚ロース肉100gにこのバッター液を絡め、さらにパン粉を付着させ、下記加熱工程A〜Eの何れか1つを行って、とんかつを製造した。
・加熱工程A:6分間油ちょう(油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合0%)
・加熱工程B:2分間油ちょう→8分間スチームコンベクション→2分間油ちょう(油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合66.7%)
・加熱工程C:1分間油ちょう→10分間スチームコンベクション→1分間油ちょう(油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合83.3%)
・加熱工程D:0.5分間油ちょう→13分間スチームコンベクション(油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合96.3%)
・加熱工程E:3分間油ちょう→3分間スチームコンベクション→3分間油ちょう(油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合33.3%)
【0061】
〔試験例6〕
調理直後の各とんかつについて10名のパネラーに、風味、香りの強さを前記評価基準(5点満点)により評価してもらうと共に、食感を下記評価基準により評価してもらった。その結果(10名のパネラーの平均点)を下記表6に示す。
【0062】
(食感の評価基準)
5点:クリスピーで口溶けよく、香味とのバランスが非常によく、極めて好ましい。
4点:クリスピーで口溶けよく、香味とのバランスがよく、好ましい。
3点:クリスピー感はあるが、香味とのバランスがやや崩れている。
2点:ややねちゃつきがあり、香味とのバランスが崩れ、好ましくない。
1点:ねちゃつきがあり、香味とのバランスが大きく崩れ、非常に好ましくない。
【0063】
【表6】
【0064】
表6から明らかなように、(揚げ物用衣材が付着した食材の総加熱時間に占める、)油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合が前記特定範囲(50〜95%)内にある製造例2、3及び6〜8は、該割合が前記特定範囲外にある他の製造例に比して、風味、香りの強さ及び食感に優れる結果となった。以上のことから、揚げ物用衣材を食材に付着させ加熱調理する食品の製造方法において、油ちょう以外の他の加熱方法による加熱時間の割合の前記特定範囲の臨界意義が明らかである。