(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分割予定ラインによって区画された複数の発光デバイスが表面に形成されたサファイアウェーハの表面側を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記サファイアウェーハの前記分割予定ラインに沿って前記サファイアウェーハを透過する波長のパルスレーザーを照射するパルスレーザー照射手段と、を有し、
前記パルスレーザー照射手段は、パルスレーザーを発振する発振器と、前記発振器が発振したパルスレーザーを集光して前記保持手段に保持された前記サファイアウェーハの露出面に照射する集光器と、を有するレーザー加工装置であって、
前記集光器は、前記発振器から発振されたパルスレーザーを前記保持手段に保持された前記サファイアウェーハの厚さ方向に変位させて2箇所の集光点に集光する様に構成されており、
前記サファイアウェーハの前記露出面から遠い側に集光されるパルスレーザーは、振動方向が加工進行方向に平行となる直線偏光であり、
前記サファイアウェーハの前記露出面から近い側に集光されるパルスレーザーは、振動方向が加工進行方向に直交する直線偏光であり、
2箇所の集光点に集光されるパルスレーザーで分割特性の異なる2種類の改質層を形成し、前記露出面から遠い側の集光点に形成される改質層は分割特性が低いのに対して、前記露出面から近い側の集光点に形成される改質層は分割特性が高いことを特徴とするレーザー加工装置。
分割予定ラインによって区画された複数の発光デバイスが表面に形成されたサファイアウェーハの表面側を保持し、前記保持されたサファイアウェーハの前記分割予定ラインに沿って、前記サファイアウェーハを透過する波長のパルスレーザーを、前記サファイアウェーハに照射するレーザー加工方法であって、
前記パルスレーザーを、前記サファイアウェーハの厚さ方向に変位させて2箇所の集光点に集光し、
前記サファイアウェーハの露出面から遠い側に集光されるパルスレーザーを、振動方向が加工進行方向に平行となる直線偏光とし、
前記サファイアウェーハの前記露出面から近い側に集光されるパルスレーザーを、振動方向が加工進行方向に直交する直線偏光とし、
2箇所の集光点に集光されるパルスレーザーで分割特性の異なる2種類の改質層を形成し、前記露出面から遠い側の集光点に形成される改質層は分割特性が低いのに対して、前記露出面から近い側の集光点に形成される改質層は分割特性が高いことを特徴とするレーザー加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照して、レーザー加工装置の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。
【0012】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、ウェーハWにレーザービームを照射するレーザー加工ユニット(パルスレーザー照射手段)26とウェーハWを保持する保持テーブル(保持手段)20とを相対移動させて、ウェーハWを加工するように構成されている。ウェーハWは、略円板状に形成されており、サファイア(Al
2O
3)基板の表面に格子状に配列された分割予定ライン64によって複数の領域に区画されている。この区画された領域には、窒化ガリウム系化合物半導体等から発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の発光デバイスが形成されている。ウェーハWは、発光デバイスが形成されたデバイス形成面側を下向きにして、貼着テープ31を介して環状フレーム32に支持され、レーザー加工装置1に搬入および搬出される。
【0013】
なお、本実施の形態においては、ウェーハWの土台となる単結晶基板として、サファイア基板を例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。ウェーハWは、GaAs(ガリウム砒素)基板、SiC(炭化珪素)基板等を単結晶基板として用いてもよい。また、ウェーハWとして、表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層されていない単結晶基板を用いてもよい。
【0014】
レーザー加工装置1は、直方体状の加工台10と、加工台10の上面後方に立設した支柱部24とを有している。支柱部24の前面には、前方に突出したアーム部25が設けられ、アーム部25の先端側にはレーザー加工ユニット26の加工ヘッド27が設けられている。また、加工台10の上面には、Y軸方向に延在する一対のガイドレール11a、11bが設けられている。一対のガイドレール11a、11bには、加工送り方向となるY軸方向に移動可能に支持されたモーター駆動のY軸テーブル12が配置されている。
【0015】
Y軸テーブル12の上面には、X軸方向に延在する一対のガイドレール15a、15bが設けられている。一対のガイドレール15a、15bには、割出送り方向となるX軸方向に移動可能に支持されたモーター動のX軸テーブル16が配置されている。X軸テーブル16の上面には、保持テーブル20が設けられている。また、Y軸テーブル12、X軸テーブル16の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にそれぞれボールネジ13、17が螺合されている。ボールネジ13、17の一端部には、駆動モーター14、18が連結され、この駆動モーター14、18によりボールネジ13、17が回転駆動される。
【0016】
保持テーブル20は、X軸テーブル16の上面においてZ軸回りに回転可能なθテーブル21と、θテーブル21の上部に設けられ、ウェーハWを吸着保持するワーク保持部22とを有している。ワーク保持部22は、所定の厚みを有する円板状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。吸着面は、負圧により貼着テープ31を介してウェーハWを吸着する面であり、θテーブル21の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0017】
ワーク保持部22の周囲には、θテーブル21の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部23が設けられている。この4つのクランプ部23は、エアーアクチュエータにより駆動し、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム32を四方から挟持固定する。
【0018】
レーザー加工ユニット26は、アーム部25の先端に設けられた加工ヘッド27を有している。加工ヘッド27は、ウェーハWの内部に改質層を形成するレーザービームを、ウェーハWに向けて照射する。加工ヘッド27、アーム部25、支柱部24内には、レーザー加工ユニット26の光学系(
図2参照)が設けられている。なお、レーザー加工ユニット26の光学系は、加工ヘッド27、アーム部25、支柱部24にまたがって形成される構成に限定されるものではなく、加工ヘッド27内にのみ形成される構成としてもよい。
【0019】
この場合、レーザービームは、光学系において2つの直線偏光に分離され、ウェーハWの厚み方向に変位させて二箇所の集光点に集光するように調整される。一方の直線偏光は、加工進行方向に対して平行な振動方向となり発光デバイスに近い位置で集光され、他方の直線偏光は、加工進行方向に対して直交な振動方向となり発光デバイスから離れた位置で集光される。このようにして、ウェーハWの内部に分割起点となる2種類の改質層が形成される。改質層は、レーザービームの照射によってウェーハ内部の密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。改質層は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等であり、これらが混在した領域でもよい。
【0020】
ここで、
図2を参照して、レーザー加工装置の光学系について詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の光学系の模式図である。
【0021】
図2に示すように、レーザー加工装置の光学系には、ウェーハWに対して透過性を有する直線偏光のパルスレーザービームを発振する発振器41と、発振器41が発振したレーザービーム47をウェーハWの内部に集光する集光器44とが設けられている。発振器41から発振されるレーザービーム47の光路上には、λ/2波長板42、ミラー43、上記した集光器44が配置されている。この集光器44は、発振器41から発振されたレーザービーム47を、ウェーハWの厚さ方向に変位させて2箇所に集光するものであり、複屈折レンズ45および対物レンズ46を有して構成される。なお、対物レンズ46は、単レンズ、または組み合わせレンズで構成されてもよい。
【0022】
発振器41から出射された直線偏光のレーザービーム47は、透過するλ/2波長板42の回転角度によって直線偏光方向が回転し、直交する2つの直線偏光成分の比率が調整される。直交する2つの直線偏光成分とは、一方が加工進行方向に対して平行な直線偏光成分であり、他方が加工進行方向に対して直交する直線偏光成分である。λ/2波長板42を透過したレーザービーム47は、ミラー43にて複屈折レンズ45に向けて反射される。なお、直交する2つの直線偏光成分の比率は、1:1に調整されてもよいし、加工対象に応じて柔軟に変更可能である。
【0023】
複屈折レンズ45は、凹面451aを備えるガラス体451と、凸面452aを備える結晶体452とを結合して構成される。このように構成された複屈折レンズ45は、レーザービーム47を、実線で示す分離光47aと、一点鎖線で示す分離光47bとに分離する。分離光47aは、振動方向が加工進行方向に対して直交する直線偏光であり、分離光47bは、振動方向が加工進行方向に対して平行な直線偏光である。複屈折レンズ45は、分離光47aについては屈折させずにそのまま通過させ、分離光47bについては結晶体452によって外側に屈折させて通過させる。
【0024】
対物レンズ46は、複屈折レンズ45によって分離された分離光47aをウェーハWの内部における集光点48aに集光し、分離光47bをウェーハWの内部における集光点48bに集光する。集光点48bは、分離光47bが複屈折レンズ45によって外側に屈折されているので、分離光47aの集光点48aより深い位置(デバイス形成面Wbに近い位置)、すなわち、対物レンズ46から離れた位置に形成される。
【0025】
レーザービーム47の分離光47aが、集光点48aに集光されると、集光点48a付近に改質層が形成される。同様に、レーザービーム47の分離光47bが、集光点48bに集光されると、集光点48b付近に改質層が形成される。この場合、詳細は後述するが、分離光47aに形成された改質層は分割特性に優れ、かつウェーハWに対するダメージが大きい。また、分離光47bに形成された改質層は分割特性が低く、かつウェーハWに対するダメージが小さい。したがって、ウェーハWの露出面Waに近い位置、すなわちデバイス形成面Wbから離れた位置で分割特性に優れた改質層が形成され、ウェーハWの露出面Waから遠い位置、すなわちデバイス形成面Wbに近い位置で電気特性の低下し難い改質層が形成される。
【0026】
そして、レーザー加工装置1は、加工ヘッド27に対して保持テーブル20を、分割予定ライン64に沿って、矢印D1に示す加工進行方向(Y軸方向)に加工送りすることにより、ウェーハW内部に上下2列の改質層を形成する。このように、ウェーハWの内部に上下2列の改質層を形成することで、十分な深さの改質層を形成し、分割特性を向上させることができる。なお、改質層は、分割予定ラインに沿って連続的に形成されてもよいし、断続的に形成されてもよい。
【0027】
図3を参照して、分離光の偏光方向とウェーハに与えるダメージとの関係について説明する。
図3は、本実施の形態に係るレーザー加工装置におけるレーザービームの偏光方向とウェーハに与えるダメージとの関係の説明図である。
図3(a)において、B1がレーザービームの平面模式図、B2がレーザービームのX軸方向からみた側面模式図、B3がレーザービームのY軸方向からみた側面模式図をそれぞれ示す。
【0028】
また、
図3(b)は、集光点の拡大模式図である。なお、
図3における集光点は、説明の便宜上、円環状に示し、分離光のエネルギー分布の傾向をハッチングで表している。集光点のエネルギー密度の高い傾向にある部分を濃いハッチングで示し、集光点のエネルギー密度の低い傾向にある部分を薄いハッチングで示す。
【0029】
図3(a)のB1に示す平面視において、レーザービーム47は、矢印D2に示すY軸方向に偏光している。レーザービーム47は、ウェーハWの内部において、より小さなスポット径に集光される。この場合、B2に示すY側面視側では、レーザービーム47は、矢印D3に示すように入射面に対して平行に振動している。したがって、レーザービーム47のウェーハWに対する入射光が、入射面に平行なp偏光となるので、ウェーハWの反射面Wa(露出面Wa)で反射されにくく、多くのエネルギーが集光されて改質層が形成される。
【0030】
一方、B3に示すX側面視側では、レーザービーム47は、D4に示すように入射面に対して直交する方向に振動している。したがって、レーザービーム47のウェーハWに対する入射光が入射面に直交するs偏光となるので、ウェーハWの反射面Wa(露出面Wa)で反射されやすく、少ないエネルギーが集光されて改質層が形成される。
【0031】
このため、
図3(b)に示すように、集光点48のエネルギー密度は、レーザービーム47の偏光方向に平行な濃いハッチング部分481で高くなり、レーザービーム47の偏光方向に直交する薄いハッチング部分482で低くなる。したがって、レーザービーム47によって、矢印D5に示すようにY軸方向に強い内部応力を持つ改質層がウェーハWに形成される。なお、X軸方向を偏光方向とするレーザービーム47をウェーハWに照射した場合には、X軸方向に強い内部応力を持つ改質層がウェーハWに形成される。すなわち、ウェーハW内には、レーザービーム47(直線偏光)の偏光方向と同方向に強い内部応力を持つ改質層が形成される。
【0032】
本発明では、この直線偏光の性質を利用して、偏光方向が直交する2つのレーザービーム(分離光47a、47b)の照射により、ウェーハWの厚み方向の異なる二箇所に、相互に内部応力の向きが直交する改質層を形成する。この場合、一方のレーザービーム(分離光47a)の偏光方向が加工進行方向に直交する方向に設定され、他方のレーザービーム(分離光47b)の偏光方向が加工進行方向に平行な方向に設定される。
【0033】
ここで、
図4を参照して、分離光の偏光方向と加工進行方向との関係について説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置による加工進行方向と偏光方向との関係を示す説明図である。
図4において、(a)が分離光の偏光方向が加工進行方向に対して平行な状態を示し、(b)が分離光の偏光方向が加工進行方向に対して直交する状態を示す。
【0034】
図4(a)に示すように、レーザービーム47の偏光方向が分割予定ライン64に平行な場合、集光点48は、分割予定ライン64に平行な方向でエネルギー密度が高くなる。そして、分割予定ライン64に沿って矢印D1に示す加工進行方向に加工送りされると、集光点48に集光されたレーザービーム47により分割予定ライン64に沿って連続的に改質層が形成される。このとき、集光点48のエネルギー密度の高い濃いハッチング部分481が重なる範囲が少なく、ウェーハWに与えるダメージが小さい。
【0035】
したがって、加工進行方向に平行な偏光方向のレーザービーム47により、発光デバイス付近の改質層を形成することで、発光デバイスとしての電気特性の低下を抑制できる。一方、上記したように、改質層の内部応力の向きは、偏光方向に平行となる。すなわち、改質層の形成による内部応力が、チップ同士を引き離す方向と直交する方向に働くため、分割に必要な力が大きく分割特性は低い。
【0036】
図4(b)に示すように、レーザービーム47の偏光方向が分割予定ライン64に直交する場合、集光点48は、分割予定ライン64に直交する方向でエネルギー密度が高くなる。そして、分割予定ライン64に沿って矢印D1に示す加工進行方向に加工送りされると、集光点48に集光されたレーザービーム47により分割予定ライン64に沿って連続的に改質層が形成される。このとき、集光点48のエネルギー密度の高い濃いハッチング部分481が重なる範囲が多く、ウェーハWに与えるダメージが大きい。
【0037】
したがって、加工進行方向に直交する偏光方向のレーザービーム47により、発光デバイス付近の改質層を形成する場合、発光デバイスにダメージを与えてしまい、発光デバイスとしての電気特性が低下する。一方、上記したように、改質層の内部応力の向きは、偏光方向に平行となる。すなわち、改質層の形成による内部応力が、チップ同士を引き離す方向に働くため、分割に必要な力が小さく分割特性は高い。
【0038】
図2に戻り、レーザー加工装置によるレーザー加工について説明する。
図2に示すように、レーザー加工装置1は、レーザービーム47を分離光47a、47bに分離してウェーハWの厚み方向における2箇所で集光させている。デバイス形成面Wbから遠い集光点48aには、分離光47aが集光され、デバイス形成面Wbから近い集光点48bには、分離光47bが集光されている。分離光47aは、加工進行方向に対して直交する直線偏光であり、分離光47bは、加工進行方向に対して平行な直線偏光である。
【0039】
したがって、ウェーハWのデバイス形成面Wbから遠い位置においては、加工進行方向に対して直交する直線偏光が集光されるため、内部応力の方向がチップ同士を引き離す方向に働き、分割特性が高い改質層が形成される。この改質層は、ウェーハWに与えるダメージが大きいが、デバイス形成面Wbから遠い位置に形成されるため、発光デバイスに与える影響が小さい。
【0040】
また、ウェーハWのデバイス形成面Wbから近い位置においては、加工進行方向に対して平行な直線偏光が集光されるため、内部応力の方向がチップ同士を引き離す方向と直交する方向に働き、分割特性が低い改質層が形成される。この改質層は、ウェーハWに与えるダメージが小さいため、デバイス形成面Wbから近い位置に形成しても、発光デバイスに与える影響が小さい。
【0041】
このように、本実施の形態に係るレーザー加工装置1により、ウェーハWの分割特性を向上させると共に、発光デバイスの電気特性の低下を抑制したレーザー加工が可能となる。なお、高精度の収差補正がなされて集光性が高い場合は、分離光のガウシアン分布が支配的となり、集光点のエネルギー密度に偏りがなくなる。よって、偏光方向と内部応力の方向(加工進行方向)との関係で、レーザー加工に変化は起こらない。しかしながら、実際には高精度の収差補正が困難であるため、本発明のように、ウェーハWの厚み方向の異なる二箇所に内部応力の向きが直交する改質層を形成する構成が有効となる。
【0042】
ここで、ウェーハの分割方法の全体的な流れについて説明する。まず、保持テーブル20にウェーハWが載置されると、保持テーブル20が加工ヘッド27に臨む加工位置に移動される。次に、加工ヘッド27の出射口がウェーハWの分割予定ライン64に位置合わせされると共に、集光器44により分離光47a、47bの焦点が半導体ウェーハWの内部に調整され、レーザー加工処理が開始される。
【0043】
この場合、保持テーブル20がウェーハWを保持した状態でY軸方向に加工送りされ、分割予定ライン64に沿って上下2列の改質層が形成される。続いて、保持テーブル20が数ピッチ分だけX軸方向に移動され、加工ヘッド27の出射口が隣接する分割予定ライン64に位置合わせされる。そして、保持テーブル20がウェーハWを保持した状態でY軸方向に加工送りされ、分割予定ライン64に沿って上下2列の改質層が形成される。この動作が繰り返されてウェーハWのY軸方向の全ての分割予定ライン64に沿って改質層が形成される。次に、θテーブル21が90度回転され、同様な動作により、半導体ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ライン64に沿って改質層が形成される。
【0044】
次に、レーザー加工処理が完了すると、ウェーハWが保持テーブル20から取り外され、図示しない分割装置に搬入される。そして、分割装置において、ウェーハWの分割予定ライン64に沿って形成された改質層に外力が加えられることで、個々のチップに分割される。
【0045】
以上のように、実施の形態にかかるレーザー加工装置1によれば、振動方向が加工進行方向に対して直交する直線偏光の分離光47aにより、ウェーハWのデバイス形成面Wbから離れた位置で、分割特性が高くダメージが大きい改質層が形成される。また、振動方向が加工進行方向に対して平行な直線偏光の分離光47bにより、ウェーハWのデバイス形成面Wbに近い位置で、分割特性が低くダメージが小さい改質層が形成される。したがって、光デバイスウェーハの分割性の向上と、発光デバイスの電気特性の低下の抑制を同時に達成できる。
【0046】
なお、上記した実施の形態においては、集光器が複屈折レンズによりレーザービームを2箇所の集光点に集光する構成としたが、この構成に限定されるものではない。集光器は、ウェーハの厚さ方向に変位させて2箇所の集光点に集光する構成であればよい。例えば、
図5に示すように偏光ビームスプリッタを用いた構成としてもよい。
図5は、本発明の変形例に係るレーザー加工装置の光学系の模式図である。なお、変形例に係る光学系は、集光器の構成についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。
【0047】
図5に示すように、集光器51は、偏光ビームスプリッタ52、53、対物レンズ46、ミラー55、56および可変ビームエキスパンダ57を有して構成される。なお、対物レンズ46は、単レンズ、または組み合わせレンズで構成されてもよい。偏光ビームスプリッタ52は、λ/2波長板42、ミラー43を介して入射されたレーザービーム47を実線で示す分離光47aと、一点鎖線で示す分離光47bとに分離し、分離光47aをそのまま透過し、分離光47bをミラー55に向けて反射する。
【0048】
偏光ビームスプリッタ52を透過した分離光47aは、偏光ビームスプリッタ53も透過し、対物レンズ46によって、ウェーハWの内部における集光点48aに集光される。一方、偏光ビームスプリッタ52によって反射された分離光47bは、2枚のミラー55、56によって反射され、可変ビームエキスパンダ57に入射する。可変ビームエキスパンダ57は、図示しない2枚のレンズを備えており、この2枚のレンズの間隔を調整することによって、分離光47bのビーム径を広げる。
【0049】
可変ビームエキスパンダ57から出射された分離光47bは、偏光ビームスプリッタ53によって反射され、対物レンズ46によって、ウェーハWの内部における集光点48bに集光される。このように、可変ビームエキスパンダ57によって、分離光47bのビーム径を広げることで、ウェーハWへ集光されるレーザービームの焦点距離を変更することができる。したがって、2箇所の集光点の間隔を調節することができ、加工条件を詳細に選択することができる。
【0050】
また、上記した実施の形態においては、ウェーハのデバイス形成面に近い側に集光されるパルスレーザー(分離光)は、振動方向が加工進行方向に平行な直線偏光としたが、加工進行方向に平行とは完全に平行である場合に限定されるものではない。このパルスレーザーの振動方向は、ウェーハ内に分割特性が低くダメージが小さい改質層を形成する程度に、加工進行方向に平行な方向に対してずれていてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態においては、ウェーハのデバイス形成面に遠い側に集光されるパルスレーザー(分離光)は、振動方向が加工進行方向に直交する直線偏光としたが、加工進行方向に直交とは完全に直交である場合に限定されるものではない。このパルスレーザーの振動方向は、ウェーハ内に分割特性が高くダメージが大きい改質層を形成する程度に、加工進行方向に直交する方向に対してずれていてもよい。
【0052】
また、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。