(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切削ブレードの先端形状は、前記切削溝の底面側方に形成される面を広くとるように、レーザースポット径と略同一の幅の平坦面を有するように形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分割方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る分割方法を用いたサファイアウェーハの分割は、切削装置による切削溝形成工程、レーザー加工装置による改質層形成工程、テープ拡張装置による分割工程を経て実施される。切削溝形成工程では、表面に発光層が積層されたサファイアウェーハの裏面に、分割予定ラインに沿った切削溝が形成される。改質層形成工程では、サファイアウェーハの内部に分割予定ラインに沿った改質層が形成される。
【0014】
分割工程では、サファイアウェーハの表面に貼り付けられたダイシングテープの拡張によりサファイアウェーハが個々の発光デバイスに分割される。これらの工程を経て分割された発光デバイスは、切削溝形成工程で形成された切削溝により裏面側の角部が面取りされ、表面側に設けられた発光層からの光線が外部に出射され易くなる。以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して、各工程で用いられる装置構成について説明する。
【0015】
図1を参照して、サファイアウェーハに切削溝を形成する切削装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る切削装置の斜視図である。なお、本発明の分割方法に用いられる切削装置は、
図1に示す構成に限定されない。切削装置は、サファイアウェーハに対して切削溝を形成可能であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0016】
図1に示すように、切削装置101は、切削ブレード111を有する一対のブレードユニット106とサファイアウェーハWを保持したチャックテーブル103とを相対移動させて、サファイアウェーハWを切削するように構成されている。サファイアウェーハWは、略円板状に形成されており、サファイア(Al
2O
3)基板の表面に発光層が積層されている。サファイアウェーハWの裏面は、格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。
【0017】
また、サファイアウェーハWは、発光層が形成された上面を下向きにして、環状フレーム131に張られたダイシングテープ132に貼着されている。なお、本実施の形態においては、発光デバイス用ウェーハとしてサファイアウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。発光デバイスウェーハは、サファイア基板に発光層を積層したものに限らず、GaAs(ガリウム砒素)基板、SiC(炭化珪素)基板に発光層を積層したものでもよい。
【0018】
切削装置101は、基台102を有しており、基台102上にはチャックテーブル103をX軸方向に加工送りするチャックテーブル移動機構104が設けられている。また、基台102上には、チャックテーブル移動機構104を跨ぐように立設した門型の柱部105が設けられ、柱部105には、チャックテーブル103の上方において一対のブレードユニット106をY軸方向に割出送りするブレードユニット移動機構107が設けられている。
【0019】
チャックテーブル移動機構104は、上部にチャックテーブル103を保持するX軸テーブル112を有している。X軸テーブル112は、基台102の上面に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール113に支持され、ボールねじ式の移動機構によりX軸方向に移動される。
【0020】
チャックテーブル103は、X軸テーブル112の上面に固定されたZ軸回りに回転可能なθテーブル114と、θテーブル114の上部に設けられ、サファイアウェーハWを吸着保持するワーク保持部116とを有している。ワーク保持部116は、所定の厚みを有する円盤状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。吸着面は、負圧によりダイシングテープ132を介してサファイアウェーハWを吸着する面であり、θテーブル114の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0021】
ワーク保持部116の周囲には、θテーブル114の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部117が設けられている。4つのクランプ部117は、エアーアクチュエータにより駆動し、サファイアウェーハWの周囲の環状フレーム131を挟持固定する。
【0022】
ブレードユニット移動機構107は、柱部105の前面に対してY軸方向に移動する一対のY軸テーブル121と、各Y軸テーブル121のそれぞれに対してZ軸方向に移動するZ軸テーブル122とを有している。各Z軸テーブル122には、それぞれブレードユニット106が延設されている。Y軸テーブル121は、柱部105の前面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール123に支持され、ボールねじ式の移動機構によりY軸方向に移動される。Z軸テーブル122は、Y軸テーブル121の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール124に支持され、ボールねじ式の移動機構によりZ軸方向に移動される。
【0023】
ブレードユニット106は、Y軸回りに回転するスピンドルの先端に設けられた円盤状の切削ブレード111と、切削部分に切削水を噴射する図示しない噴射ノズルとを有している。ブレードユニット106は、スピンドルにより切削ブレード111を高速回転させ、複数のノズルから切削部分に切削水を噴射しつつサファイアウェーハWを切削加工する。
【0024】
ここで、切削装置101による切削加工動作について説明する。まず、チャックテーブル103にサファイアウェーハWが載置されると、チャックテーブル103が切削ブレード111に臨む加工位置に向けて移動される。次に、切削ブレード111の切削刃がサファイアウェーハWの分割予定ラインに位置合わせされる。そして、ブレードユニット106が下降されることで、高速回転した切削刃によりサファイアウェーハWの裏面が所定の深さだけ切り込まれる。
【0025】
切削ブレード111によりサファイアウェーハWが切り込まれると、チャックテーブル103がX軸方向に加工送りされ、サファイアウェーハWに1本の切削溝401(
図5参照)が形成される。続いて、切削ブレード111がY軸方向に数ピッチ分だけ割出送りされ、切削ブレード111により隣接する分割予定ラインに切削溝401が形成される。この動作が繰り返されてサファイアウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ラインが加工される。
【0026】
次に、チャックテーブル103がθテーブル114により90度回転され、サファイアウェーハWのY軸方向の分割予定ラインに切削溝401が形成される。裏面に切削溝401が形成されたサファイアウェーハWは、チャックテーブル103から取り外されてレーザー加工装置201に搬入される。なお、切削装置101は、切削ブレード111の切削刃に超音波振動を伝達して振動切削することで、サファイアウェーハWに対する加工負荷を低減する構成としてもよい。
【0027】
図2を参照して、サファイアウェーハの内部に改質層を形成するレーザー加工装置について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。なお、本発明の分割方法に用いられるレーザー加工装置は、
図2に示す構成に限定されない。レーザー加工装置は、サファイアウェーハに対して改質層を形成可能であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0028】
図2に示すように、レーザー加工装置201は、レーザービームを照射するレーザー加工ユニット206とサファイアウェーハWを保持したチャックテーブル208とを相対移動させて、サファイアウェーハWを加工するように構成されている。レーザー加工装置201は、直方体状のベッド部203と、ベッド部203の上面後方に立設したコラム部204とを有している。コラム部204の前面には、前方に突出したアーム部205が設けられ、アーム部205の先端側にはレーザー加工ユニット206の加工ヘッド207が設けられている。
【0029】
ベッド部203の上面には、チャックテーブル208をX軸方向に加工送りすると共に、Y軸方向に割出送りするチャックテーブル移動機構209が設けられている。チャックテーブル移動機構209は、チャックテーブル208をX軸方向に加工送りする加工送り機構211と、チャックテーブル208をY軸方向に割出送りする割出送り機構212とを備えている。加工送り機構211は、ベッド部203に対してX軸方向に移動するX軸テーブル216を有している。X軸テーブル216は、ベッド部203の上面に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール215に支持され、ボールねじ式の移動機構によりX軸方向に移動される。
【0030】
割出送り機構212は、X軸テーブル216に対してY軸方向に移動するY軸テーブル219を有している。Y軸テーブル219は、X軸テーブル216の上面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール218に支持され、ボールねじ式の移動機構によりY軸方向に移動される。Y軸テーブル219の上面には、チャックテーブル208が設けられている。
【0031】
チャックテーブル208は、Y軸テーブル219の上面においてZ軸回りに回転可能なθテーブル231と、θテーブル231の上部に設けられ、サファイアウェーハWを吸着保持するワーク保持部232とを有している。ワーク保持部232は、所定の厚みを有する円板状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。吸着面は、負圧によりダイシングテープ132を介してサファイアウェーハWを吸着する面であり、θテーブル231の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0032】
ワーク保持部232の周囲には、θテーブル231の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部234が設けられている。4つのクランプ部234は、エアーアクチュエータにより駆動し、サファイアウェーハWの周囲の環状フレーム131を四方から挟持固定する。
【0033】
レーザー加工ユニット206は、アーム部205の先端に設けられた加工ヘッド207を有している。アーム部205および加工ヘッド207内には、レーザー加工ユニット206の光学系が設けられている。加工ヘッド207は、発振器242から発振されたレーザービームを集光レンズによって集光し、チャックテーブル208上に保持されたサファイアウェーハWをレーザー加工する。この場合、レーザービームは、透過性を有しており、光学系においてサファイアウェーハWの内部に集光するように調整される。
【0034】
このようにして、サファイアウェーハWの内部に分割起点となる改質層402(
図5参照)が形成される。改質層402は、レーザービームの照射によってサファイアウェーハW内部の密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。改質層402は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等であり、これらが混在した領域でもよい。
【0035】
ここで、レーザー加工装置201によるレーザー加工動作について説明する。まず、チャックテーブル208にサファイアウェーハWが載置されると、チャックテーブル208が加工ヘッド207に臨む加工位置に向けて移動される。次に、加工ヘッド207の射出口がサファイアウェーハWの分割予定ライン(切削溝401)に位置合わせされると共に、レーザービームの焦点がサファイアウェーハWの内部に調整され、レーザー加工処理が開始される。
【0036】
この場合、チャックテーブル208がサファイアウェーハWを保持した状態でX軸方向に加工送りされ、切削溝401に沿ってサファイアウェーハW内に1列の改質層402が形成される。続いて、チャックテーブル208が数ピッチ分だけY軸方向に割出送りされ、隣接する切削溝401に沿ってサファイアウェーハW内に改質層402が形成される。この動作が繰り返されてサファイアウェーハWのX軸方向の全ての切削溝401に沿って改質層が形成される。
【0037】
次に、チャックテーブル208がθテーブル231により90度回転され、サファイアウェーハWのY軸方向の切削溝401に沿って改質層402が形成される。内部に改質層402が形成されたサファイアウェーハWは、チャックテーブル208から取り外されてテープ拡張装置301に搬入される。
【0038】
図3を参照して、ダイシングテープを拡張して、サファイアウェーハを個々の発光デバイスに分割するテープ拡張装置について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係るテープ拡張装置の斜視図である。なお、本発明の分割方法に用いられるテープ拡張装置は、
図3に示す構成に限定されない。テープ拡張装置は、ダイシングテープの拡張によってサファイアウェーハを分割可能であれば、どのような構成を有していてもよい。
【0039】
図3に示すように、テープ拡張装置301は、サファイアウェーハWに貼られたダイシングテープ132を拡張ドラム321により拡張することで、サファイアウェーハWを分割するように構成されている。テープ拡張装置301は、円盤状の円形台322と、円形台322の上面中央に設けられた拡張ドラム321とを有している。また、円形台322の上面において、拡張ドラム321の周囲には、サファイアウェーハWを保持する環状テーブル311を昇降させる4つの昇降機構323が設けられている。
【0040】
各昇降機構323は、エアシリンダであり、シリンダケース324から突出されたピストンロッド325を環状テーブル311に連結して構成される。環状テーブル311は、環状フレーム131を載置する載置面311aを有し、拡張ドラム321の上方にサファイアウェーハWを位置付ける。環状テーブル311の周囲には、環状フレーム131を四方から挟持固定する4つのクランプ部312が設けられている。
【0041】
拡張ドラム321は、環状フレーム131の内径より小さく、ダイシングテープ132に貼られたサファイアウェーハWの外径より大きなドラム径を有している。このため、拡張ドラム321の上端部は、ダイシングテープ132において、サファイアウェーハWの外縁部と環状フレーム131の内縁部との間の環状領域に当接される。拡張ドラム321とダイシングテープ132との当接により、ダイシングテープ132に引張力が作用して、サファイアウェーハWが改質層402に沿って分割される。
【0042】
ここで、テープ拡張装置301による分割加工動作について説明する。まず、環状テーブル311にサファイアウェーハWが固定されると、4つの昇降機構323により環状テーブル311が下降される。このとき、ダイシングテープ132の環状領域に拡張ドラム321の上端部が当接され、ダイシングテープ132に急激な引張力が作用する。この構成により、サファイアウェーハWが改質層402を分割起点として個々の発光デバイスに分割される。個々の発光デバイス411は、ピックアップコレット304により吸着され、ダイシングテープ132から剥離される。
【0043】
この場合、
図4に示すように、発光デバイス411は、直方体状を成すように破断され、裏面Wbと4側面Wc(破断面)との角部に面取り部Wdが形成されている。なお、
図4において、破線が発光層412からの光線を示し、一点鎖線が発光デバイス411の界面に対する法線をそれぞれ示す。面取り部Wdは、サファイアウェーハWの切削溝401の分割により形成される。この面取り部Wdにより、発光層412からの光線が、サファイア層413から外部に出射され易くなり、発光デバイス411の輝度が向上される。側面Wcおよび裏面Wbで反射される光線が、面取り部Wdでは反射されずに透過され得るからである。
【0044】
より具体的には、発光層412からの破線で示される光線が、サファイア層413内で側面Wcに入射した場合、側面Wcを透過可能な臨界角度θ
1は、サファイアと空気との屈折率に基づき、一点鎖線で示される法線に対して34.5度である。この臨界角度θ
1内で光線が側面Wcに入射すれば光線が側面Wcにて全反射することは無いが、臨界角度θ
1外から光線が側面Wcに入射すれば光線が側面Wcに全反射される。面取りによって裏面Wb側が多面形状に形成された発光デバイス411では、角度保存が阻害され、臨界角度よりも大きな入射角度での反射の繰り返しが低減される。
【0045】
図4(a)に示すように、面取りされていない直方体状の発光デバイス411の場合、臨界角度θ
1外から光線が側面Wcに入射すると、反射角度が保存されてサファイア層413内で全反射が繰り返される場合がある。例えば、光線が臨界角度θ
1外の入射角度θ
2で側面に入射され、側面Wcにて全反射された光線が臨界角度θ
1外の入射角度90−θ
2で裏面に入射されて、さらに裏面Wbにて全反射される場合がある。この場合、発光デバイス411の界面に対して臨界角度θ
1外の入射角度θ
2および入射角度90−θ
2で光線の入射が繰り返されるため、全反射が繰り返されてサファイア層411内で消光する事態が生じ得る。
【0046】
一方、
図4(b)に示すように、面取りされた直方体状の発光デバイス411では、直交する側面Wcおよび裏面Wbの他に面取り部Wdが形成されるため、発光層412からの光線が界面に対して臨界角度θ
1内で入射し易くなる。例えば、光線が臨界角度θ
1外の入射角度θ
3で側面Wcに入射され、側面Wcにて全反射された光線が臨界角度θ
1内の入射角度θ
4で面取り部Wdに入射される。また、光線が面取り部Wdにて臨界角度θ
1外で反射される場合には、側面Wcや裏面Wbにて臨界角度θ
1内の入射角度で入射され易くなる。このように、側面Wcや裏面Wbにて臨界角度θ
1外の角度保存される入射角度で光線が入射しても、反射された光線が面取り部Wdにて角度保存が阻害される。
【0047】
このように、面取り部Wdによって、サファイア層413内の全反射の繰り返しが減少されることで、サファイア層413から出射する光線の量が多くなる。言い換えれば、発光デバイス411のエスケープコーン(任意の発光点から光線がサファイア層413と空気との界面を透過可能な範囲)を広げることができる。このように、本実施の形態に係る発光デバイス411は、裏面Wbの面取りにより輝度が向上される。
【0048】
図5および
図6を参照して本発明の実施の形態に係る分割方法の流れについて説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る分割方法の説明図である。
図6は、本発明の実施の形態に係るブレード幅とレーザースポット径との関係の説明図である。
【0049】
最初に、
図5(a)に示すように、切削装置101において切削溝形成工程が実施される。ここでは、例えば、ブレード回転数20000[rpm]、加工送り速度100[mm/s]で加工される。切削溝形成工程では、表面Waに発光層412が形成されたサファイアウェーハWの裏面Wbに、分割予定ラインに沿う切削溝401が形成される。ここでは、切削ブレード111として、先端形状に平坦面を有する切削ブレードが用いられ、切削溝401の底面が平坦に形成される。この場合、切削ブレード111は、先端形状を平坦に形成可能で、かつ編摩耗し難いニッケルメッキにダイヤモンド砥粒を使用したブレードが用いられる。このため、切削ブレード111の先端の形状変化が抑制され、切削溝401の底面を平坦に保った状態で加工できる。
【0050】
なお、切削ブレード111は、ニッケルメッキにより様々な先端形状および幅寸法で成形可能である。特に、切削ブレード111の先端形状が、次工程の改質層形成工程で切削溝401の底部に形成されるレーザースポット径よりも、大きな幅の平坦面を有するものが好ましい。この切削ブレード111により形成された切削溝401には、
図6に示すように、底面中央に改質層形成工程におけるレーザースポット径よりも大きな幅で平坦面401aが形成され、底面側方に平坦面401aとサファイアウェーハWの裏面Wbとを連ねる曲面401bが形成される。平坦面401aは、詳細は後述するが、改質層形成工程における改質層402の精度向上に寄与する。
【0051】
曲面401bは、角度保存を起こさない反射面を形成する外面形状であり、発光デバイス411の輝度の向上に寄与している。よって、切削ブレード111の先端形状は、切削溝401における曲面401bの範囲を広げるように、レーザースポット径と略同一の幅の平坦面を有するものがより好ましい。なお、切削溝401の底面側方に形成される面は、曲面形状に限らず、平坦面以外の面状態、すなわちサファイアウェーハWの裏面Wbに対して平行又は垂直でない平面(Wbに対する傾斜面)でもよい。
【0052】
また、切削ブレード111の砥粒は、粒径が大きすぎると面が荒くなるため、改質層形成工程でレーザービームが錯乱され精度のよい改質層402が形成できない。一方、切削ブレード111の粒径が小さすぎると、角度保存となる反射になり易いため好ましくない。したがって、切削ブレード111の粒径は、1000番〜4000番(粒径約2〜17[μm])が好ましく、1500番〜3000番(粒径約3〜9[μm])がより好ましく、1800番〜2500番(粒径約3〜8[μm])がさらに好ましい。
【0053】
なお、本実施の形態では、切削ブレード111がダイヤモンド砥粒を使用したニッケルメッキブレードである構成としたが、この構成に限定されるものではない。切削ブレード111は、サファイアウェーハWを加工であれば、どのような構成でもよい。
【0054】
次に、
図5(b)に示すように、レーザー加工装置201において改質層形成工程が実施される。ここでは、例えば、レーザービームとして、波長が1064[nm]、出力が0.3[W]、繰り返し周波数が100[kHz]のパルスレーザービームを用いる。改質層形成工程では、サファイアウェーハWの裏面Wbから所定の深さに焦点を合わせて、切削溝401の下方に分割予定ラインに沿う改質層402を形成する。レーザー加工装置201は、切削溝401の平坦面401aを介してサファイアウェーハW内にレーザービームを集光するため、平坦面401aにおいてレーザービームの屈折および反射を低減して、レーザービームの集光精度を向上している。
【0055】
なお、ここでは、サファイアウェーハWの裏面Wbからの焦点深さを約40[μm]に設定することで、サファイアウェーハW内に焦点位置から上方に向かって約25[μm]程度の改質層402が形成される。この場合、レーザー加工装置201は、切削溝401に届かないように改質層402を形成する。切削溝401と改質層402とに隙間を設けることで、切削溝401と改質層402との繋がりによる品質劣化や割れが防止される。
【0056】
また、改質層402の形成時にはサファイアウェーハWの一部が分割される場合がある。このため、改質層形成後に切削溝を形成すると、サファイアウェーハWの加工品質が低下するおそれがある。本実施の形態では、切削溝形成工程後に改質層形成工程を実施することで、サファイアウェーハWの加工品質の低下を抑えている。なお、サファイアウェーハWの加工品質が低下しないのであれば、改質層形成工程後に切削溝形成工程を実施してもよい。
【0057】
つまり、切削溝401や改質層402が形成された時点でサファイアウェーハWが部分的に分割予定ラインに沿って分割されると、その後の工程が部分的に分割された分割予定ラインに沿った加工や、部分的に分割された分割予定ラインを跨ぐ加工となり、加工の品質が低下してしまう。しかし、前述の様に切削溝401に届かないような改質層402を形成したり、切削溝形成工程後に改質層形成工程を実施すること、またはこれらを両方実施することで切削溝401や改質層402が形成された時点で生じるサファイアウェーハWの分割予定ラインに沿う分割を低減できる。
【0058】
次に、
図5(c)に示すように、テープ拡張装置301において分割加工が実施される。分割加工では、サファイアウェーハWを保持した環状テーブル311が下降され、拡張ドラム321の上端部が環状テーブル311の載置面311aに対して相対的に上方に位置される。この結果、ダイシングテープ132には、拡張ドラム321の上端部に押し上げられて放射状に引張力が作用される。このダイシングテープ132の引張力により、強度が低下したサファイアウェーハWの改質層402に外力が加えられて、改質層402を起点として個々の発光デバイス411に分割される。
【0059】
また、切削溝401は、改質層402の上方に形成されるため、改質層402を境として左右に分割される。このため、発光デバイス411の裏面側の角部が、切削溝形成工程において形成された切削溝401により面取りされた状態となる。分割された発光デバイス411は、ピックアップコレット304により吸着され、ダイシングテープ132から剥離される。このとき、各発光デバイス411の間には隙間Sが形成されるため、隣接する発光デバイス411が相互に接触することなくピックアップコレット304により容易にピックアップされる。
【0060】
発光デバイス411は、上述したように裏面側の角部の面取りにより、発光層412からの光線がサファイア層413から外部に出射され易くなる。このように、本実施の形態に係る分割方法でサファイアウェーハWが分割されることにより、分割後の発光デバイス411の輝度が向上される。
【0061】
図7を参照して、切削ブレードのブレード幅(切削溝幅)と輝度との関係について説明する。
図7は、本発明の実施の形態に係る切削ブレードのブレード幅と輝度との関係の説明図である。
【0062】
図7(a)、(b)、(c)に示すように、ブレード幅33[μm]、50[μm]、80[μm]の3種類の切削ブレード111を用い、以下の加工条件で加工した発光デバイス411の輝度を測定した。なお、ここでは、改質層形成工程、切削溝形成工程、分割工程の順に実施し、チップサイズ0.25×0.27[mm]の発光デバイス411を形成した。
(位置情報)
サファイアウェーハの厚みa:100[μm]
サファイアウェーハの裏面からの切り込み量b:10[μm]
切削溝の平坦面から改質層までの間隔c:5〜10[μm]
改質層の寸法d:20〜25[μm]
サファイアウェーハの裏面からの集光位置e:40[μm]
(切削加工条件)
ブレードの種類:ダイヤモンド砥粒を使用したニッケルメッキブレード
砥粒の粒径:2000番
ブレード回転数:20000[rpm]
加工送り速度:100[mm/s]
(レーザー加工条件)
波長:1064波長[nm]
繰り返し周波数:100[kHz]
出力:0.3[W]
加工送り速度:400[mm/s]
【0063】
この結果、
図7(d)、(e)に示すような結果が得られた。
図7(d)、(e)で得られた値は、サファイアウェーハWに改質層402のみを形成して分割された発光デバイス411の輝度を100%とした場合の値である。したがって、
図7(a)、(b)、(c)のように、サファイアウェーハWに切削溝401を設けて分割することで、発光デバイス411に面取り部Wdが形成されて輝度が向上することが分かる。また、ブレード幅が大きくなるにつれて、発光デバイス411の輝度が向上されている。これは、発光デバイス411の面取り部Wdが広くなることにより、角度保存とならない反射面の面積が増加して輝度が向上することを示している。
【0064】
切削溝形成工程の後に改質層形成工程が実施される場合には、切削溝形成工程で平坦面401aをレーザースポット径より大きくすることで、改質層形成工程でレーザービームの集光精度が高められて発光デバイス411の歩留まりが向上される。そして、上記結果、改質層形成工程の加工条件、切削ブレードの製造歩留まりの関係から、ブレード幅は30[μm]以上300[μm]以下が好ましく、30[μm]以上200[μm]以下がより好ましく、50[μm]以上100[μm]以下がさらに好ましい。実際のブレード幅についてはチップサイズやウェーハの厚みに応じて上記範囲から適宜選定される。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る分割方法によれば、切削溝形成工程で分割予定ラインに沿ってサファイアウェーハWに切削溝401が形成されることで、分割工程でサファイアウェーハWを分割して形成された個々の発光デバイス411の角部が面取りされる。この面取りによって発光デバイス411の裏面側に多角形状の外形面が形成され、デバイス内で反射された光線が臨界角度以下で外形面に入射し易くなる。よって、発光層412からの光線が外部に出射され易くなり、発光デバイス411の輝度を向上できる。
【0066】
次に、
図8を参照して、サファイアウェーハの分割方法の変形例について説明する。
図8は、変形例に係る分割方法の説明図である。なお、変形例に係る分割方法は、上記した分割方法と、予備溝形成工程を加えた点についてのみ相違する。したがって、ここでは、主に相違点についてのみ説明する。
【0067】
図8に示すように、変形例に係る分割方法では、レーザー加工装置による予備溝形成工程、切削装置による切削溝形成工程、レーザー加工装置による改質層形成工程、テープ拡張装置による分割工程を経て、サファイアウェーハWが分割される。なお、予備溝形成工程で用いられるレーザー加工装置は、サファイアウェーハWに対してアブレーション加工可能な構成であればよく、例えば、改質層形成工程で用いられるレーザー加工装置と同様なものでもよい。
【0068】
最初に、
図8(a)に示すように、レーザー加工装置により予備溝形成工程が実施される。ここでは、例えば、レーザービームとして、波長が355[nm]、出力が1.5[W]、繰り返し周波数が100[kHz]のレーザービームを用いる。予備溝形成工程では、アブレーション加工によりサファイアウェーハWの裏面Wbに、分割予定ラインに沿う予備溝403が形成される。アブレーション加工により形成された予備溝403の表面は、細かな凹凸状の溶融部を有している。
【0069】
次に、
図8(b)に示すように、切削装置により切削溝形成工程が実施される。切削溝形成工程では、上述した加工条件で切削ブレード111により予備溝403をさらう(仕上げ加工する)ことで、予備溝403の溶融部が除去され、サファイアウェーハWの裏面Wbに切削溝401が形成される。切削溝形成工程では、アブレーション加工時に発生する溶融部の除去により、切削溝401を介して光線を効果的に外部に出射可能とする。また、変形例に係る分割方法では、アブレーション加工により切削ブレード111による加工量が減少されるため、サファイアウェーハWのように硬いワークであっても、切削ブレード111の消耗が抑えられ、偏磨耗による切削ブレード111の先端の形状変化も抑制される。
【0070】
次に、
図8(c)に示すように、レーザー加工装置により改質層形成工程が実施される。改質層形成工程では、上述した加工条件で、サファイアウェーハWの内部に分割予定ラインに沿った改質層402が形成される。次に、
図8(d)に示すように、テープ拡張装置301により分割工程が実施される。分割工程では、ダイシングテープ132に対して放射状に引張力が作用され、サファイアウェーハWが改質層402を起点として個々の発光デバイス411に分割される。分割された個々の発光デバイス411は、上述した実施の形態と同様に、裏面Wbの面取りにより輝度が向上される。
【0071】
以上のように、変形例に係る分割方法によれば、アブレーション加工により予備溝403が形成されることで、サファイアウェーハWのように硬い材料であっても、切削溝401の形成時に切削ブレード111の消耗が抑えられる。また、変形例に係る分割方法においても、発光デバイス411の面取りにより、発光層412からの光線が外部に出射され易くなり、輝度が向上される。
【0072】
なお、上記した実施の形態および変形例においては、切削ブレード111の先端形状が、平坦面を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。切削ブレードは、切削溝の底面に平坦面を形成しないものでもよく、例えば、
図9に示すような、ベベルブレードを用いてもよい。この場合、
図9(a)に示すように、サファイアウェーハWの裏面WbにV字状の切削溝401が形成される。そして、
図9(b)に示すように、サファイアウェーハWが分割されると、発光デバイス411の角部がV字状の切削溝401により斜めに面取りされた状態となる。このように、切削溝401は、平坦面を有さなくてもよいし、角度保存にならない反射面であれば、どのように形成されてもよい。
【0073】
また、上記した実施の形態および変形例においては、テープ拡張装置によりサファイアウェーハを分割する構成としたが、この構成に限定されるものではない。分割工程では、サファイアウェーハに外力を加えて分割可能な装置であれば、テープ拡張装置以外の装置で分割する構成としてもよい。
【0074】
また、上記した実施の形態および変形例においては、切削溝形成工程後に改質層形成工程を実施してサファイアウェーハを分割する構成としたが、この構成に限定されるものではない。サファイアウェーハは、改質層形成工程後に切削溝形成工程が実施されて分割される構成としてもよい。
【0075】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。