特許第5770530号(P5770530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポリプラスチックス株式会社の特許一覧

特許5770530ポリオキシメチレン重合体ペレット、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法、及びポリオキシメチレン重合体ペレットの品質評価方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770530
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ポリオキシメチレン重合体ペレット、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法、及びポリオキシメチレン重合体ペレットの品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20150806BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 3/10 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCEZ
   C08L59/00
   C08K5/13
   C08K5/3492
   C08K5/10
   C08K5/20
   C08K3/10
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-116946(P2011-116946)
(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公開番号】特開2012-246337(P2012-246337A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】堀口 忠洋
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−036040(JP,A)
【文献】 特開2006−169310(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069184(WO,A1)
【文献】 特開2010−084140(JP,A)
【文献】 特開2010−265439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対し、
(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤を0.01〜1.0質量部と、
(C)メラミン、及びモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン又はヘキサメチロールメラミンから選択される、メラミンのメチロール化物を合計で、0.01〜0.10質量部と、から構成され、
前記メラミンの質量と前記メチロール化物の質量とが下記式(1)を満たすポリオキシメチレン重合体ペレット。

5(%)<[{(X−Y)/X}×100]<50(%) (1)

(式(1)中の、Xは、前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量であり、Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれるメラミンの含有量であり、X−Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる前記メチロール化物の含有量を表す。(いずれもポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)
【請求項2】
前記(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物を0.01〜0.20質量部含む請求項1に記載のポリオキシメチレン重合体ペレット。
【請求項3】
前記(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、(E)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの少なくとも一方を、合計0.01〜0.30質量部含む請求項1又は2に記載のポリオキシメチレン重合体ペレット。
【請求項4】
前記メチロール化物の含有量は、ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、0.025質量部以下である請求項1から3のいずれかに記載のポリオキシメチレン重合体ペレット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のポリオキシメチレン重合体ペレットを製造する方法であって、
ポリオキシメチレン重合体と、立体障害性フェノール系酸化防止剤と、メラミンと、を含む原料を押出機に投入し、押出機内で前記原料を混練し、メラミンとホルムアルデヒドが反応して生成するメラミンのメチロール化物を含むペレット状の組成物を得た後、乾燥温度60〜145℃、乾燥時間3時間以上の条件で乾燥する、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法。
【請求項6】
ポリオキシメチレン重合体ペレット中に含まれる、メラミンの質量と、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン又はヘキサメチロールメラミンから選択される、メラミンのメチロール化物の質量とが下記式(1)を満たす場合に良品と判定するポリオキシメチレン重合体ペレットの品質評価方法。

5(%)<[{(X−Y)/X}×100]<50(%) (1)

(式(1)中の、Xは、前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量であり、Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレット中のメラミンの含有量であり、X−Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレット中の前記メチロール化物の含有量を表す。(いずれもポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレン重合体ペレット、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法、及びポリオキシメチレン重合体ペレットの品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン重合体は、優れた機械的強度、摩擦磨耗特性等を有するエンジニアリングプラスチックの一つであり、電気電子機器部品、自動車部品等の様々な分野において使用されている。このポリオキシメチレン重合体は、ホルムアルデヒド又はその環状オリゴマーであるトリオキサンの重合、あるいはトリオキサンと環状エーテル・環状ホルマール等のコモノマーとの共重合によって製造される。
【0003】
上記のようにして製造されたポリオキシメチレン重合体は、分解しやすい性質を有し、ポリオキシメチレン重合体が分解すると、ホルムアルデヒド等の有害ガスが発生する。そこで、ポリオキシメチレン重合体の分解を抑えるために、ポリオキシメチレン重合体の末端基を安定化処理したり、ポリオキシメチレン重合体を酸化防止剤、耐熱安定剤等の添加剤と併せて使用したりする技術が知られている。
【0004】
また、ポリオキシチメチレン重合体が分解して発生するホルムアルデヒドを捕捉する目的で、シアノグアニジン、メラミン等を添加する技術が知られている。しかしながら、ポリオキシメチレン重合体に、シアノグアニジン、メラミン等を配合した重合体組成物を、長時間に渡って成形を行うことで、金型内にモールドデポジットが付着して成形品外観を悪化させたり、ガスベントを閉塞させてショートショットを招く等の成形加工上の欠点をもたらしたりすることがある。また、上記重合体組成物を成形してなる成形品が高温多湿下に曝された時に、これらの添加剤が染み出してくるという問題もある。
【0005】
これらの問題点を解決する手法として、特許文献1には、ポリオキシメチレン重合体に対して、酸化防止剤と水に不溶性のメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物を組み合わせて配合する手法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案された重合体組成物では、モールドデポジットの付着の問題の改善が不十分であり、さらに、ホルムアルデヒド捕捉能が乏しいために、このホルムアルデヒドにより労働(衛生)環境に支障をきたす恐れがある。さらに、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物は、網状化された分子構造を有し、溶融性に欠けるため、ポリオキシメチレン重合体中に溶融させて均一分散させることが困難である。
【0007】
また、特許文献2にも上記問題を解決する手法が開示されているが、特許文献2に開示された重合体組成物でも、モールドデポジットの問題の改善が不十分であり、また、ホルムアルデヒド捕捉能に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭52−33943号公報
【特許文献2】特開平4−81449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ポリオキシメチレン重合体を含む重合体ペレットを原料とする成形品の成形加工時における、モールドデポジットの金型への付着を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来はメラミンの重縮合化により、添加剤由来のモールドデポジットを抑制させたが、ホルムアルデヒド捕捉能が乏しいためにホルムアルデヒド発生に起因するモールドデポジットが発生するという問題があった。そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、メラミン使用時のモールドデポジット発生機構については、原料であるポリオキシメチレン重合体ペレット中の、メラミンの含有量、メラミンのメチロール化物の含有量、及び成形加工時のホルムアルデヒドの発生量に起因することを見出した。その主要因は、メラミン自身よりもメラミンのアミノ基がホルムアルデヒドと反応してできたメチロールメラミンであることを突き止めた。具体的には、ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる、メチロールメラミンの生成を制御することが、モールデポジットの低減に効果的であることを明らかにし、本発明を完成するに至った。より詳細には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) (A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対し、(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤を0.01〜1.0質量部と、(C)メラミンとメラミンのメチロール化物とを合計で、0.01〜0.10質量部と、から構成され、前記メラミンの質量と前記メチロール化物の質量とが下記式(1)を満たすポリオキシメチレン重合体ペレット。
【数1】
(式(1)中の、Xは、前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量であり、Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれるメラミンの含有量であり、X−Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる前記メチロール化物の含有量を表す。(いずれもポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)
【0012】
(2) 前記(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、前記(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物を0.01〜0.20質量部含む(1)に記載のポリオキシメチレン重合体ペレット。
【0013】
(3) 前記(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、(E)脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの少なくとも一方を、合計0.01〜0.30質量部含む(1)又は(2)に記載のポリオキシメチレン重合体ペレット。
【0014】
(4) 前記メチロール化物の含有量は、ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、0.025質量部以下である(1)から(3)のいずれかに記載のポリオキシメチレン重合体ペレット。
【0015】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のポリオキシメチレン重合体ペレットを製造する方法であって、ポリオキシメチレン重合体と、立体障害性フェノール系酸化防止剤と、メラミンと、を含む原料を押出機に投入し、押出機内で前記原料を混練し、メラミンとホルムアルデヒドとが反応して生成するメラミンのメチロール化物を含むペレット状の組成物を得た後、乾燥温度60〜145℃、乾燥時間3時間以上の条件で前記ペレット状の組成物を乾燥するポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法。
【0016】
(6) ポリオキシメチレン重合体ペレット中に含まれる、メラミンの質量と前記メラミンのメチロール化物の質量とが下記式(1)を満たす場合に良品と判定するポリオキシメチレン重合体ペレットの品質評価方法。
【数2】
(式(1)中の、Xは、前記ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量であり、Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレット中のメラミンの含有量であり、X−Yは前記ポリオキシメチレン重合体ペレット中の前記メチロール化物の含有量を表す。(いずれもポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットを原料とすれば、成形品の成形加工時における、モールドデポジットの金型への付着を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0019】
<ポリオキシメチレン重合体ペレット>
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットは、(A)ポリオキシメチレン重合体と、(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤と、(C)メラミン及びメラミンのメチロール化物と、を含み、必要に応じて(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物と、(E)脂肪族アミド、脂肪酸エステル等の他の成分を含むことができる。
【0020】
[(A)ポリオキシメチレン重合体]
(A)ポリオキシメチレン重合体とは、オキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とする高分子化合物である。(A)ポリオキシメチレン重合体は、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマーの何れでもよく、また、分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。
【0021】
(A)ポリオキシメチレン重合体の、ヘミホルマール末端基数量、ホルミル末端基数量、不安定末端部分重量は、特定の範囲にあることが好ましい。これらの量が多くなると、ポリオキシメチレン重合体ペレットの成形加工時に、ポリオキシメチレン重合体から発生するホルムアルデヒド量が多くなるからである。
【0022】
ここで、ヘミホルマール末端基とは、−OCHOHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ末端基あるいはヘミアセタール末端基とも称される。ヘミホルマール末端基数量は、1.0mmol/kg以下であることが好ましい。より好ましいヘミホルマール末端基数量は、0.5mmol/kg以下である。また、ヘミホルマール末端基数量はH−NMR測定により求めることができる。その具体的な測定方法は、特開2001−11143号公報に記載された方法を参照できる。なお、ヘミホルマール末端基数量が少ないほど、ポリオキシメチレン重合体ペレットの成形加工時に発生するホルムアルデヒドの量は少なくなるため、(A)ポリオキシメチレン重合体中のヘミホルマール末端基数量は少ないほど好ましい。なお、ポリアセタール共重合体のヘミホルマール末端基量及びホルミル基末端基量は、Bruker(株)製のAVANCE400型FT−NMR装置を用いて、特開2001−11143号公報に記載の方法に準じて測定を行って得られた値(mmol/kg)である。
【0023】
ホルミル末端基とは、−CHOを指す。ホルミル末端基数量は、2.0mmol/kg以下であることが好ましい。より好ましいホルミル末端基数量は、1.0mmol/kg以下である。ホルミル末端基数量は、ヘミホルマール末端基数量と同様の方法で測定することができる。なお、ヘミホルマール末端基数量の場合と同様の理由で、(A)ポリオキシメチレン重合体中のホルミル末端基数量は少ないほど好ましい。
【0024】
不安定末端基とは、ポリオキシメチレン重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解しやすい部分を指す。不安定末端部分重量は、0.5質量%以下であることが好ましい。より好ましい不安定末端部分重量は、0.25質量%以下である。この不安定末端部分重量は、実施例に記載の方法で導出した値を指す。なお、ヘミホルマール末端基数量の場合と同様の理由で、(A)ポリオキシメチレン重合体中の不安定末端部分重量は少ないほど好ましい。
【0025】
(A)ポリオキシメチレン重合体の分子量は特に限定されないが、成形加工時のポリオキシメチレン重合体の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM−D1238に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定)は、1〜50g/10分であることが好ましい。
【0026】
以下に本件の発明の要件を満たすポリアセタール重合体(A)を製造する方法の具体例を挙げるが、何らこの方法に限定されるものではない。
【0027】
先ず、重合系で不安定末端を形成する活性不純物、具体的には、上記モノマー及びコモノマー中に含まれる水、アルコール(例えばメタノール)、酸(例えばギ酸)等の不純物を少なくすることが重要であり、これらの活性不純物の総量が反応系中の全モノマーに対して1×10−2mol%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは5×10−3mol%以下である。この含有量が過大であると不安定末端部の少ないポリアセタール重合体を得るのに好ましくない。なお、不安定末端を形成することの無い連鎖移動剤、例えば、メチラールの如き両末端がアルコキシ基を有する低分子量線状アセタール等は任意の量を含有させ、ポリアセタール重合体の分子量を調整することができる。
【0028】
重合反応時に使用する触媒としては、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の無機及び有機酸、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレート等の複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド等のアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等が挙げられる。その中でも特に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素配位化合物、ヘテロポリ酸、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。これらの触媒は有機溶剤等で予め希釈して用いることもできる。触媒の量は、三フッ化ホウ素又はその配位化合物からなる触媒を用いる場合、全モノマーに対して5×10−3〜1×10−2mol%の範囲であることが好ましく、特に1×10−3〜7×10−3mol%の範囲であることが好ましい。触媒量をかかる範囲とすることは、不安定末端部の生成を防ぐ上で有効である。触媒量が多すぎると重合温度の適正な制御を困難にし、重合中の分解反応が優勢となって、本発明の要件を満たす不安定末端部の少ないポリアセタール重合体を得ることが困難となる。一方、触媒量が少なすぎると重合反応速度の低下や重合収率が低下を招き好ましくない。
【0029】
コモノマーの量や種類は、ポリアセタール重合体の熱安定性に大きく影響する。本発明のポリアセタール重合体としては、トリオキサンと環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれた化合物の1種以上とを、前者/後者=99.9/0.1〜80.0/20.0の割合(重量比)で共重合させてなるものが好ましく、さらに好ましくは前者/後者=99.5/0.5〜90.0/10.0の割合(重量比)で共重合させてなるものである。また、環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれる化合物としては、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールが特に好ましい。
【0030】
重合法としては、従来公知の方法が何れも可能であるが、液状モノマーを用いて重合の進行とともに固体粉塊状のポリマーを得る連続式塊状重合法が工業的には好ましく、重合温度は60〜105℃、特に65〜100℃に保つことが望ましい。
【0031】
三フッ化ホウ素又はその配位化合物からなる触媒を用いた場合、重合後の触媒の失活法としては、塩基性化合物を含む水溶液等に重合後のポリマーを加える等の方法が可能である。本発明の要件を満たすポリアセタール重合体を得るためには、重合反応により得られた重合体を粉砕し細分化して失活剤と接触させ、速やかに触媒の失活を図るのが好ましい。例えば、触媒の失活に供する重合体を粉砕し、その80重量%以上、好ましくは90重量%が1.5mm以下の粒径であり、15重量%以上、好ましくは20重量%以上が0.3mm以下の粒径に細分化されていることが望ましい。重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物としては、アンモニア、あるいは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のアミン類、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、塩類、その他公知の触媒失活剤を用いることができる。これら塩基性化合物は、0.001〜0.5重量%、特に0.02〜0.3重量%の水溶液として加えるのが好ましい。また、好ましい水溶液の温度は10〜80℃、特に好ましくは15〜60℃である。また、重合終了後、これらの水溶液に速やかに投入し触媒を失活させることが好ましい。
【0032】
また、重合に先立ち予めモノマー中にヒンダードフェノール系酸化防止剤を全モノマーに対して0.01〜0.1重量%添加し、これの存在下で重合を行うことで、重合反応系にヒンダードフェノール系酸化防止剤を均一に存在させることによって重合中の解重合を抑制することができ、重合後の乾燥等後処理や安定化工程での酸化分解も抑制させることができる。
【0033】
以上のようなモノマー及びコモノマーに含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択及びその製造条件の最適化等により不安定末端量の少ないポリアセタール重合体を製造することができる。さらに要すれば、安定化工程を経ることでさらに不安定末端量を低減することが可能である。安定化工程としては、ポリアセタール重合体をその融点以上の温度に加熱して溶融状態で処理して不安定部分のみを分解除去することや、不溶性液体媒体中で不均一系を保って80℃以上の温度で加熱処理することで不安定末端部分のみを分解除去すること等が挙げられる。
【0034】
[(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤]
(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤は、(A)ポリオキシメチレン重合体の分解を抑える目的で添加される。
【0035】
使用可能な(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、ジ−ステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)等が挙げられる。
【0036】
(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤は、従来公知の方法で製造して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0037】
ポリオキシメチレン重合体中の(B)立体障害性フェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、0.01〜1.0質量部である。上記含有量が、0.01質量部未満の場合には、(A)ポリオキシメチレン重合体の分解を抑える効果が不十分になりやすいため好ましくない。また、上記含有量が1.0質量部を超える場合には、上記の分解を抑える効果が飽和に達することに加え、ポリオキシメチレン重合体ペレットを変色させる場合があるため好ましくない。より好ましい含有量は0.04質量部以上0.40質量部以下である。
【0038】
[(C)メラミン及びメラミンのメチロール化物]
メラミンとは、未反応のメラミンを指す。また、メチロール化物とは、メラミンのメチロール化物を指し、メラミンのアミノ基がホルムアルデヒドと反応したメチロールメラミンである。そのメチロール化物は、縮合の進んでいない1核体である。メチロール化物は、メチロール化の度合いによって、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンに分けられる。
【0039】
メラミンは従来公知の方法で製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、メチロール化物は、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造時に、メラミンとホルムアルデヒドとが反応して生成する。なお、本発明は、従来公知の方法で製造されたメチロール化物を、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造時に、原料として使用することを排除しない。
【0040】
本発明では、ポリオキシメチレン重合体ペレット中の、メラミンと上記メチロール化物との合計量に対するメチロール化物の含有比率(本明細書において、「メチロール化度」という場合がある。)を特定の範囲に調整する。具体的には、下記式(1)を満たすように、上記メチロール化度を調整する。メチロール化度が50%を超えると、本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットを原料とする成形品の成形加工時に、メラミンがメチロール化されて、生成したメチロール化物が金型へ染み出し、金型にモールドデポジットが付着することを十分に抑えることができない。また、上記メチロール化度は5%以下であることが好ましいが、メチロール化度を5%以下に制御することは技術的に困難である。
【数3】
【0041】
式(1)中の、Xは、本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量(ポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)である。Xは、ポリオキシメチレン重合体から水可溶成分を分離し、この水可溶成分を1MのHClaqに溶かし、吸光度を測定し、この吸光度と予め作成した検量線とに基づいて決定される。より詳細な上記トリアジン環を有する化合物の含有量の決定方法は、実施例に記載する。
【0042】
式(1)中の、Yは、発明のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれるメラミンの含有量である。Yは、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)により決定される。実施例に記載の通り、LC/MSによれば、メラミンのm/zが127であることを利用して、ポリオキシメチレン重合体ペレット中のメラミンの含有量(ポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)を定量することができる。
【0043】
式(1)中の(X−Y)は、発明のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる上記メチロール化物の含有量(ポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)である。メラミン二量体等のメラミン多量体は、水にほとんど溶けないため、Xは、ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれるメラミンとメチロール化物の合計量であると考えることができる。その結果、この合計量からメラミンの含有量を引けば、メチロール化物の含有量になる。
【0044】
ポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる、メラミンとメチロール化物の合計含有量は、(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、0.01〜0.10質量部である。上記含有量が、0.01質量部未満の場合、メラミンによるホルムアルデヒドの捕捉効果が十分で無くなる。また、上記含有量が0.10質量部を超える場合には、本発明のペレットを用いた成形品の成形加工時に、メラミンがメチロール化されて、生成したメチロール化物が金型へ染み出し、メラミンに由来するモールドデポジットが発生しやすくなるため好ましくない。より好ましい含有量は0.03質量部以上0.07質量部以下である。
【0045】
特に、メチロール化物の含有量は、ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、0.025質量部以下であることが好ましい。
【0046】
[(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物]
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットには、さらに(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物(以下、単に「金属含有化合物」という場合がある)を配合することが好ましい。(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物を含むことで、ポリオキシメチレン重合体から発生したホルムアルデヒドが酸化してできるギ酸を捕捉するという効果が得られる。ギ酸はポリオキシメチレン重合体を分解させ、ホルムアルデヒドの発生を促し、成形加工時にポリオキシメチレン重合体由来のモールドデポジットが析出する。
【0047】
使用可能な(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであるが、使用可能な(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物は何らこれらに限定されるものではない。
【0048】
(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物は、従来公知の方法で製造したものを使用してもよいし、市販品を購入して使用してもよい。
【0049】
ポリオキシメチレン重合体ペレット中の(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物の含有量は、(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、0.005〜0.50質量部である。(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物の含有量が0.005質量部以上であればポリオキシメチレン重合体から発生したホルムアルデヒドが酸化してできるギ酸を捕捉しやすいという理由で好ましい。(D)アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物の含有量が0.50質量部を超える過剰添加では、ホルムアルデヒドと金属塩との不均化反応及び着色の原因となるホルモースの生成を促進させるという理由で好ましくない。より好ましい(D)金属含有化合物の含有量は、0.01〜0.20質量部である。
【0050】
[(E)脂肪酸アミド、脂肪酸エステル]
本発明のポリオキシメチレン重合体は、脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの少なくとも一方を含むことが好ましい。脂肪酸アミド及び脂肪酸エステルの少なくとも一方を含むことで、成形加工時の離型性を向上させるという効果が得られる。
【0051】
脂肪酸アミドは、特に限定されないが、好ましくは10以上の炭素原子を含有する少なくとも一種の飽和又は不飽和脂肪酸とアミンあるいはジアミンとから誘導されたものである。
【0052】
また、脂肪酸エステルとしては、好ましくは10以上の炭素原子を含有する少なくとも一種の飽和又は不飽和脂肪酸とアルコールとから誘導されたものである。
【0053】
脂肪酸アミド、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸等が挙げられ、脂肪酸エステルを構成するアルコールの例としてはプロピル、ブチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、プロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、ベヘニル等の一価アルコールが挙げられる。特に好ましい脂肪酸アミドとしてはエチレンビスステアリルアミド等が、脂肪酸エステルとしてはグリセリンモノステアレート等が挙げられる。
【0054】
脂肪酸アミド、脂肪酸エステルは従来公知の方法で製造したものを使用してもよいし、市販品を購入して使用してもよい。
【0055】
ポリオキシメチレン重合体ペレット中の、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されないが、(A)ポリオキシメチレン重合体100質量部に対して0.01〜0.50質量部であることが好ましい。上記含有量が0.01質量部以上であれば、成形加工時の離型性を向上させるという理由で好ましい。また、上記含有量が0.50質量部を超えると、成形品表面上にメチロール化物等の染み出しが発生するという理由で好ましくない。より好ましい上記含有量は、0.05〜0.30質量部である。
【0056】
[その他の成分]
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットには、本発明の効果を害さない範囲で、上記(A)成分〜(E)成分以外の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、他の重合体や、一般的な添加剤等を挙げることができる。
【0057】
[ポリオキシメチレン重合体ペレットの性質]
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットは、このペレットに含まれるメラミンと上記メチロール化物との合計量に対するメチロール化物の含有比率が特定の範囲にある。このため、本発明のペレットを原料とする成形品の成形加工時に、金型にモールドデポジットが付着する量を抑えることができる。
【0058】
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットの形状は、一般的なペレット状であり、大きさ等も従来公知の範囲で適宜調整できる。
【0059】
<ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法>
本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットは、上述の通り、メラミンと上記メチロール化物との合計量に対するメチロール化物の含有比率が特定の範囲にある。メチロール化物は、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造時に、メラミンからも生成する。したがって、製造条件を調整して、ポリオキシメチレン重合体ペレット中のメチロール化物の上記含有比率を特定の範囲に調整する必要がある。
【0060】
上記本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットの製造方法について、一般的な押出機を用いる場合を例に説明する。一般的な押出機は、原料を投入するためのホッパを有するシリンダーに、スクリューが配設されている。スクリューは、ホッパ側からフィードゾーン(供給部)、コンプレッションゾーン(圧縮部)、メータリングゾーン(計量部)を、スクリューの上流から下流に向かってこの順で有する。また、押出機の下流側端部には、ダイが装着されている。
【0061】
供給部は、通常、原料が溶融しないような温度設定で、原料をホッパ側からダイ方向側に移送する働きを有し、原料を圧縮部に送る。圧縮部は、供給部から送られてきた原料に圧力を加えながら、原料を溶融混練し、溶融混練した原料を計量部に送る。計量部は、溶融混練された原料を、一定圧のもとに一定量ずつダイに送り出す。なお、計量部よりも下流側にミキシングゾーン(混練部)を有するスクリューを使用してもよい。
【0062】
より具体的には、先ず、押出機に原料を投入する。ここで、原料とは上記の成分を含む重合体組成物であり、全ての成分を同時に押出機に投入してもよいし、一部の成分を圧縮部やその他の部分で投入してもよい。また、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して押出に供し、押出後に目的組成の重合体ペレットを得る方法、押出機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造において、(A)ポリオキシメチレン重合体の一部又は全部を粉砕し、これを、他の成分を混合した後、ホッパに投入して、押出等を行うことは、添加剤の分散性を良くする上で好ましい方法である。
【0063】
圧縮部では、上記の通り、原料に圧力を加えながら、原料を混練する。混練の程度は、スクリュー回転数等の押出条件に依存する。ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造においては、樹脂の種類、樹脂成形体の形状等に応じて、適宜、混練の程度を調整することができる。
【0064】
ダイから押し出されることで、ストランド状の押出物が得られる。このストランド状の押出物を、従来公知の方法(例えば、ペレタイズ法)で切断することで、ペレット状にすることができる。このペレット状に切断した組成物を乾燥することで、本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットを製造することができる。
【0065】
上記ペレット状の組成物の乾燥の際の条件は、メチロール化しているメラミンからのホルムアルデヒドの脱離を促すという理由で、メチロール化物の上記メチロール化度に影響する。乾燥温度を高くしたり、乾燥時間を長くしたりすることで、メチロール化物の上記メチロール化度が低くなる傾向にある。一方、乾燥温度を低くしたり、乾燥時間を短くしたりすることで、メチロール化物の上記メチロール化度が高くなる傾向にある。本発明のポリオキシメチレン重合体ペレットの製造においては、乾燥温度60〜145℃、乾燥時間3時間以上の範囲で調整することが好ましい。ただし、長時間及び高温での乾燥はペレットの着色を招く原因になるため、注意を要する。許容される長時間の程度、高温の程度は、含まれる樹脂の種類等によって異なる。
【0066】
<ポリオキシメチレン重合体ペレットの品質評価方法>
上記のようにして製造されたポリオキシメチレン重合体ペレットは、メラミンと上記メチロール化物との合計量に対するメチロール化物の含有比率が特定の範囲にある。このため、ポリオキシメチレン重合体を含む重合体ペレットを原料とする成形品の成形加工時における、モールドデポジットの金型への付着及びホルムアルデヒドの発生を抑えることができる。
【0067】
上記の点を利用して、メラミンと上記メチロール化物との合計量に対するメチロール化物の含有比率が未知のポリオキシメチレン重合体ペレットの品質を評価することができる。具体的には、上記含有比率が未知のポリオキシメチレン重合体ペレットの上記含有比率を、ペレット中のメラミンの含有量、メチロール化物の含有量から導出し、導出された含有比率が上記式(1)の範囲であるか否かを確認することで、ポリオキシメチレン重合体ペレットの品質を評価することができる。なお、ペレット中のメラミンの含有量、メチロール化物の含有量は、ポリオキシメチレン重合体ペレットの説明で記載した方法と同様の方法で測定することができる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0069】
<材料>
A−1;ポリアセタール共重合体(MI=9g/10分)、ヘミホルマール末端基数量が1.0mmol/kg、ホルミル末端基数量が2.0mmol/kg、不安定末端部分重量が0.5質量%のポリオキシメチレン共重合体
A−2;ポリアセタール共重合体(MI=9g/10分)に加水分解処理を施した、ヘミホルマール末端基数量が0.5mmol/kg、ホルミル末端基数量が1.0mmol/kg、不安定末端部分重量が0.25質量%以下のポリオキシメチレン共重合体
A−3;ポリアセタール共重合体(MI=27g/10分)、ヘミホルマール末端基数量が1.0mmol/kg、ホルミル末端基数量が2.0mmol/kg、不安定末端部分重量が0.5質量%のポリオキシメチレン共重合体
A−4;ポリアセタール共重合体(MI=27g/10分)に加水分解処理を施した、ヘミホルマール末端基数量が0.5mmol/kg、ホルミル末端基数量が1.0mmol/kg、不安定末端部分重量が0.25質量%以下のポリオキシメチレン共重合体
B;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
C;メラミン
D−1;12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
D−2;ステアリン酸カルシウム
D−3;酸化マグネシウム
E−1;エチレンビスステアリン酸アミド
E−2;グリセリンモノステアレート
【0070】
重合方法としては、二軸パドルタイプの連続式重合機にトリオキサン96.7重量%と1,3−ジオキソラン3.3重量%との混合物を連続的に供給し、触媒として三フッ化ホウ素15ppmを添加し重合を行った。重合に供するトリオキサンと1,3−ジオキソランの混合物とには、その全量に対し0.03重量%のペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を含有させた。また、重合に供するトリオキサンと1,3−ジオキソランとの混合物は、不純物として水6ppm、メタノール3.5ppm、ギ酸5ppmを含有するものであった。
【0071】
次いで、重合機吐出口より排出された重合体は、直ちにトリエチルアミン1000ppm含有水溶液を加えて粉砕、攪拌処理を行うことにより触媒の失活を行い、遠心分離、乾燥を行うことにより粗ポリオキシメチレン共重合体を得た(A−1、3)。なお、A−1とA−3とは重合条件を調整することで、それぞれ製造できる。
【0072】
ヘミホルマール末端基、ホルミル末端基、不安定末端部がより一層低減されたポリオキシメチレン重合体(A−2、4)を得る方法は、保温可能な円筒状の耐圧容器を用い、その上部より上記のペレット状の重合体を連続的に供給し、下部よりトリエチルアミン500ppmを含有する135℃の水溶液で加水分解処理を8時間行った後、遠心分離、乾燥を行った。
【0073】
ASTM−D1238に準じ、190℃、荷重2.16kgの条件で、ポリオキシメチレン重合体の流動性の指標となるメルトインデックスの測定を行った。
【0074】
上記ポリオキシメチレン重合体A1〜4のヘミホルマール末端基数量、ホルミル末端基数量は、前記特開2001−11143の実施例に記載の末端基分析法と同様の方法で導出した。
【0075】
上記ポリオキシメチレン重合体A1〜4の不安定末端部分重量は、以下の導出方法で導出した。
(導出方法)
ポリオキシメチレン重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mLとともに耐圧密閉容器に入れ、180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリオキシメチレン重合体100質量部に対する質量部で表した。
【0076】
<ポリオキシメチレン重合体ペレットの製造>
実施例1〜6のポリオキシメチレン重合体ペレット、比較例1〜4のポリオキシメチレン重合体ペレットを以下の方法で製造した。
【0077】
先ず、表1、2に示す成分を、表1、2に示す割合(単位は質量部)で含む原料を、押出機(日本製鋼所社製、「TEX30α」)に投入した。次いで、押出機に投入した上記の原料を以下の押出条件で混練した。次いで、混練された原料をストランド状に押出し、冷却後ペレット状に切断し、乾燥させてポリオキシメチレン重合体ペレット(円柱状(直径1〜2mm、長さ2〜3mm)、)を製造した。乾燥の条件は表1、2に示した。
(押出条件)
シリンダー温度:170〜200℃
押出し量:18kg/hr(定量フィーダ使用)
回転数:120rpm
【0078】
<トリアジン環を有する化合物の含有量>
実施例及び比較例のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量(質量部)を以下の方法で導出した。導出結果は、表1、2に示した。
(導出方法)
ポリオキシメチレン重合体ペレット0.5gをヘキサフルオロイソプロパノール10mLに溶かし溶液を得た。その溶液に約30mLの水を徐々に加え、ポリマーを析出させた。吸引ろ過により、その溶液を析出物と液体とに分離し、液体をエバポレーターで濃縮、乾固させて残留物を得た。残留物を1MのHClaqで溶かした後、50mLにメスアップし、236nm(トリアジン環をもつ化合物の吸収領域)での吸光度を測定した。予め作成しておいた吸光度とトリアジン環を有する化合物の濃度と関係を表す検量線に基づいて、上記の吸光度からトリアジン環を有する化合物の濃度を定量した。最後に、この濃度から実施例及び比較例のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれる水可溶成分中のトリアジン環を有する化合物の含有量を導出した。
【0079】
<メラミンの含有量>
実施例及び比較例のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれるメラミンの含有量(質量部)を以下の方法で導出した。導出結果は、表1、2に示した。
(導出方法)
ポリオキシメチレン重合体ペレット0.1gをヘキサフルオロイソプロパノール1.5mLに溶かし溶液を得た。その溶液に水を15mL徐々に加え、ポリマーを析出させた。吸引ろ過により、その溶液を析出物と液体とに分離した後、液体を100mLにメスアップした。この液体をさらに10倍希釈して、この希釈した液体を、LC/MS分析装置を用いて下記の条件で分析することで、実施例及び比較例のポリオキシメチレン重合体ペレットに含まれるメラミンの含有量を定量した。
(分析条件)
eluent:100mM Ammonium formate/MeCN=10/90→50/50,0.4mL/min
column:Acquity HILIC 1.7μm,2.1x150mm
oven temp.:40℃
MSD:ESI positive,capillary 15V,cone 2V,extractor 2V
m/z:127(メラミン)
【0080】
<メチロール化物の含有量>
トリアジン環を有する化合物の含有量からメラミンの含有量を引くことで、上記ポリオキシメチレン重合体ペレット中のメチロール化物の含有量(ポリオキシメチレン重合体ペレットを100質量部としたときの含有量)を導出した。この導出結果についても表1、2に示した。また、メチロール化度(%)についても表1、2に示した。
【0081】
<モールドデポジット重量試験>
先ず、射出成形用金型に取り付けるコマの重量を予め測定した。次いで、射出成形機にて下記成形条件で、実施例及び比較例のポリオキシメチレン重合体ペレットを原料とする成形品(2.3mm×3.3mm、1mmt)を連続成形(10000shots)した。最後に、上記連続成形後の、上記コマの重量を測定し、金型内におけるキャビティの付着物であるモールドデポジットの重量を定量した。
(成形条件)
射出成形機;S−2000i 50B(ファナック株式会社製)
金型;2.3mm×3.3mm、1mmt
シリンダー温度;185〜215℃
射出速度;280mm/s
保圧力;40MPa
金型温度;80℃
【0082】
【表1】
【表2】
【0083】
以上の結果から、メチロール化度を5%から50%の範囲に調整することで、ポリオキシメチレン重合体ペレットを原料とする成形品の成形加工時に、金型に付着するモールドデポジット量を大幅に低減することができることが確認された。