特許第5770662号(P5770662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770662繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770662
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20150806BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-63158(P2012-63158)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-197327(P2013-197327A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年2月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】関口 晋
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 秀樹
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−283562(JP,A)
【文献】 特開2009−013309(JP,A)
【文献】 特開2001−332654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を一括封止するための繊維含有樹脂基板であって、
繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化又は硬化した樹脂含浸繊維基材と、該樹脂含浸繊維基材の片面上に200μmを超え2000μm以下の厚さで形成された未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層とを有し、
前記繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び前記未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方は、イオントラップ剤を含有するものであることを特徴とする繊維含有樹脂基板。
【請求項2】
前記繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び前記未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の両方が、前記イオントラップ剤を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の繊維含有樹脂基板。
【請求項3】
封止後半導体素子搭載基板であって、請求項1又は請求項に記載の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆し、該未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記繊維含有樹脂基板により一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載基板。
【請求項4】
半導体装置を製造する方法であって、
請求項1又は請求項に記載の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆する被覆工程、
該未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子搭載面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板とする封止工程、及び
該封止後半導体素子搭載基板をダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハーレベルで一括封止が可能な封止基板、該封止材により封止された半導体素子搭載基板、及び封止基板を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面のウエハーレベルの封止は種々の方式が提案、検討されており、スピンコ−ティングによる封止、スクリ−ン印刷による封止(特許文献1)、フィルム支持体に熱溶融性エポキシ樹脂をコ−ティングさせた複合シ−トを用いた方法が例示される(特許文献2及び特許文献3)。
【0003】
なかでも、半導体素子搭載面のウエハーレベルの封止方法としては、金属、シリコンウエハ、又はガラス基板等の上部に両面接着層を有するフィルムを貼り付け、又は接着剤をスピンコート等で塗布した後、該基板上に半導体素子を配列し接着、搭載させ半導体素子搭載面とし、その後、液状エポキシ樹脂やエポキシモールディングコンパウンド等で加熱下、加圧成形し封止することで、該半導体素子搭載面を封止する方法が最近量産化されつつある(特許文献4)。また、同様に、半導体素子形成面のウエハーレベルの封止方法としても、液状エポキシ樹脂やエポキシモールディングコンパウンド等で加熱下、加圧成形し封止することで、該半導体素子搭載面を封止する方法が最近量産化されつつある。
【0004】
しかしながら、以上のような方法では、200mm(8インチ)程度の小径ウエハや金属等の小径基板を使用した場合は現状でも大きな問題もなく封止できるが、300mm(12インチ)以上の半導体素子を搭載した大径基板や半導体素子を形成した大径ウエハを封止した場合では、封止硬化時のエポキシ樹脂等の収縮応力により基板やウエハに反りが生じることが大きな問題であった。また、半導体素子を搭載した大径基板の半導体素子搭載面をウエハーレベルで封止する場合には、封止硬化時のエポキシ樹脂等の収縮応力により半導体素子が金属等の基板から剥離するといった問題が発生するため量産化できないことが大きな問題であった。
【0005】
このような半導体素子を搭載した基板や半導体素子を形成したウエハの大径化に伴う問題を解決する方法として、フィラーを封止用樹脂組成物に90wt%近く充填することや、封止用樹脂組成物の低弾性化で硬化時の収縮応力を小さくすることが挙げられる(特許文献1、2、3)。
【0006】
しかし、フィラーを90wt%近く充填すると封止用樹脂組成物の粘度が上昇し、封止用樹脂組成物を流し込み成型、封止する時に基板に搭載された半導体素子に力が加わり、半導体素子が基板から剥離するといった問題が新たに発生する。また、封止用樹脂を低弾性化すると、封止された半導体素子を搭載した基板や半導体素子を形成したウエハの反りは改善されるが耐熱性や耐湿性等の封止性能の低下が新たに発生する。そのため、これらの解決方法では根本的な解決に至っていなかった。以上より、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハに反りが生じたり、半導体素子が金属等の基板から剥離したりすることなく、半導体素子搭載面をウエハーレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる封止材が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−179885号公報
【特許文献2】特開2009−60146号公報
【特許文献3】特開2007−001266号公報
【特許文献4】特表2004−504723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に加え、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる封止材で封止されたとしても、繊維基材由来のイオン性不純物や半導体装置外部から侵入してくるイオン性不純物、さらには半導体素子、半導体素子搭載基板由来のイオン性不純物が微量に含まれてしまう場合には半導体装置の信頼性を低下させることも問題であった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、大型有機基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制しながら、半導体素子搭載面をウエハーレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れ、信頼性の高い半導体装置を与えることができ、汎用性が高い繊維含有樹脂基板を提供することを目的とする。また、繊維含有樹脂基板により封止された封止後半導体素子搭載基板、及び繊維含有樹脂基板を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を一括封止するための繊維含有樹脂基板であって、
繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化又は硬化した樹脂含浸繊維基材と、該樹脂含浸繊維基材の片面上に200μmを超え2000μm以下の厚さで形成された未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層とを有し、
前記繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び前記未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方は、イオントラップ剤を含有するものであることを特徴とする繊維含有樹脂基板を提供する。
【0011】
このような繊維含有樹脂基板であれば、未硬化樹脂層の厚さが適切である上に、膨張係数の非常に小さな樹脂含浸繊維基材が、封止硬化時の未硬化樹脂層の収縮応力を抑制することができるため、大径の有機基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制しながら、半導体素子搭載面をウエハーレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる。また、イオントラップ剤を含有することで、信頼性の高い半導体装置を与えることができ、汎用性が高い繊維含有樹脂基板となる。
【0012】
また、前記繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び前記未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の両方が、イオントラップ剤を含有するものであることが好ましい。
【0013】
これにより、半導体装置外部から侵入してくるイオン性不純物、さらには繊維基材、半導体素子、及び半導体素子搭載基板由来のイオン性不純物をより確実に捕捉できるので、より信頼性の高い半導体装置を与えることができる繊維含有樹脂基板となる。
【0014】
さらに、前記未硬化樹脂層が、50℃未満で固形であり、かつ50℃以上で溶融するエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシシリコーン混成樹脂のいずれかを含むものであることが好ましい。
【0015】
このような未硬化樹脂層であれば、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離をより確実に抑制できる繊維含有樹脂基板となり、かつこれら樹脂を含む未硬化樹脂層を有する繊維含有樹脂基板であれば、特に封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能により優れる繊維含有樹脂基板となる。
【0016】
また、本発明では、封止後半導体素子搭載基板であって、前記繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆し、該未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記繊維含有樹脂基板により一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載基板を提供する。
【0017】
このような封止後半導体素子搭載基板であれば、反りや、半導体素子の剥離が抑制された信頼性の高い封止後半導体素子搭載基板となる。
【0018】
また、本発明では半導体装置を製造する方法であって、前記繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆する被覆工程、
該未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子搭載面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板とする封止工程、及び
該封止後半導体素子搭載基板をダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0019】
このような半導体装置の製造方法であれば、被覆工程においては未硬化樹脂層により簡便に、充填不良なく半導体素子搭載面を被覆することができる。また、樹脂含浸繊維基材が未硬化樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制できるため、封止工程においては半導体素子搭載面を一括封止することができ、大型基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板を得ることができる。さらに、個片化工程においては耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、かつ反りが抑制された該封止後半導体素子搭載基板から半導体装置をダイシングし、個片化することができるため、高品質な半導体装置を製造することができる半導体装置の製造方法となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の繊維含有樹脂基板であれば、未硬化樹脂層の厚さが適切である上に、樹脂含浸繊維基材が硬化封止時の未硬化樹脂層の収縮応力を抑制することができるので、大型有機樹脂基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板に反りが生じたり、半導体素子が金属や有機樹脂等の基板から剥離したりすることを抑制でき、半導体素子搭載面をウエハーレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れ、またイオントラップ剤を含有することで、信頼性の高い半導体装置を与えることができ、汎用性が高い繊維含有樹脂基板となる。また、繊維含有樹脂基板により封止された封止後半導体素子搭載基板は、基板に反りが生じたり、半導体素子が金属等の基板から剥離したりすることが抑制されたものとなる。さらに、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、かつ反りが抑制された封止後半導体素子搭載基板を個片化することで高品質な半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の繊維含有樹脂基板の断面図である。
図2】本発明の繊維含有樹脂基板により封止された封止後半導体素子搭載基板の断面図である。
図3】本発明の繊維含有樹脂基板を用いて製造される半導体装置の断面図である。
図4】本発明の半導体装置の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、及び半導体装置の製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
前述のように、半導体素子を搭載した大型の有機樹脂基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板に反りが生じたり、半導体素子が金属等の基板から剥離したりすることが抑制でき、半導体素子搭載面をウエハーレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れ、信頼性の高い半導体装置を与えることができる、汎用性の高い封止材が求められていた。
【0024】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させて、該熱硬化性樹脂を半硬化又は硬化した樹脂含浸繊維基材と、該樹脂含浸繊維基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂からなるとともに、所定の厚さの未硬化樹脂層とを有する繊維含有樹脂基板であれば、膨張係数の非常に小さな樹脂含浸繊維基材が未硬化樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制することができることを見出し、この収縮応力の抑制作用により、大型有機樹脂基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制できることを見出し、本発明の繊維含有樹脂基板を用いれば半導体素子搭載面をウエハーレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れ、イオントラップ剤を含有することで、信頼性の高い半導体装置を与えることができ、汎用性が高い封止材となることを見出して、本発明の繊維含有樹脂基板を完成させた。
【0025】
また、本発明者らは、前記繊維含有樹脂基板により一括封止された封止後半導体素子搭載基板であれば、基板の反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制されたものとなることを見出し、本発明の封止後半導体素子搭載基板を完成させた。
【0026】
さらに、本発明者らは、前記繊維含有樹脂基板を用いることで簡便に半導体素子搭載面を被覆することができることを見出し、前記繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層を加熱、硬化することで半導体素子搭載面を一括封止することができることを見出し、さらに、このように封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、反り、半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板をダイシングし、個片化することで、高品質な半導体装置を製造することができることを見出して、本発明の半導体装置の製造方法を完成させた。
【0027】
すなわち、本発明の繊維含有樹脂基板は、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を一括封止するための繊維含有樹脂基板であって、
繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化又は硬化した樹脂含浸繊維基材と、該樹脂含浸繊維基材の片面上に200μmを超え2000μm以下の厚さで形成された未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層とを有し、
前記繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び前記未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方は、イオントラップ剤を含有するものである。
【0028】
<樹脂含浸繊維基材>
本発明の繊維含有樹脂基板は樹脂含浸繊維基材を有する。樹脂含浸繊維基材は、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させて、該熱硬化性樹脂を半硬化又は硬化したものである。樹脂含浸繊維基材は膨張係数が非常に小さく、後に詳述する未硬化樹脂層を硬化させた時の収縮応力を抑制することができるため、本発明の繊維含有樹脂基板により大型有機樹脂基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制することができる。
【0029】
[繊維基材]
前記繊維基材として使用することができるものとしては、Eガラス、Sガラス、TガラスまたはDガラスから選択されるガラス繊維を用いることが好ましい。また、一般的に、上記以外のガラス繊維を用いるとナトリウム等のアルカリイオン成分が多く含まれるために封止材としての信頼性が低下し、さらに不純物が多く含まれるために電気特性の劣化が懸念されるが、本発明では繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方にイオントラップ剤を含有するため、これら繊維基材も使用することができる。これにより、200μmを超える様な比較的厚い封止層を有する半導体装置であっても反りが少なく、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。また、必要に応じて、ガラス繊維以外には高純度の石英繊維等を使用することも可能である。
【0030】
前記繊維基材の形態としては、例えば長繊維フィラメントを一定方向に引きそろえたロービング、繊維クロス、不織布等のシート状のもの、更にはチョップストランドマット等が例示されるが、積層体を形成することができるものであれば特に制限はされない。
【0031】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の繊維含有樹脂基板においては、繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方がイオントラップ剤を含有するものであるが、特には、繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂組成物及び未硬化樹脂層を形成する熱硬化性樹脂組成物の両方がイオントラップ剤を含有することが望ましい。
【0032】
イオントラップ剤としてはハイドロタルサイト類、モリブデン酸亜鉛、酸化ランタン等の希土類酸化物などの無機物、イオン交換樹脂などを使用することができる。なお、イオントラップ剤としては、半導体装置の信頼性に影響を与えないものが好ましく、上記の材料に限定されるものではない。
【0033】
上記成分はイオントラップ剤として作用し、ガラス繊維等の繊維基材由来のイオン性不純物のトラップや半導体装置外部から侵入してくるイオン性不純物の捕捉、さらには半導体素子、半導体素子搭載有機基板由来のイオン性不純物を捕捉する効果があり、更には、特に、封止樹脂層が200μmを超える様な比較的厚い封止層を有する場合であっても、基板の反りの低減や半導体装置の高信頼性を発現させるためには必須である。
【0034】
前記熱硬化性樹脂組成物としては、ハイドロタルサイト類、モリブデン酸亜鉛、酸化ランタン等の希土類酸化物などをイオントラップ剤として含有する下記に例示するエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシシリコーン混成樹脂が例示されるが、通常半導体素子の封止に使用される熱硬化性の樹脂であれば特に制限はされない。
【0035】
代表的なイオントラップ剤として下記式で表されるハイドロタルサイト類を例に説明する。ハイドロタルサイト類は熱硬化性樹脂と硬化剤の合計100質量部に対し1〜10質量部であることが望ましい。1質量部以上であれば十分な不純物捕捉能力が得られる。10質量部以下であれば不純物捕捉能力としては十分であり、かつハイドロタルサイト類自身の吸湿量の増加による、耐湿リフロー特性の低下を抑制できる。
MgAl(OH)2x+3y−2z(CO・mH
(x,y,zはそれぞれ0<y/x≦1,0≦z/y<1.5なる関係を有し、mは整数を示す。)
【0036】
また、モリブデン酸亜鉛を用いる場合は熱硬化性樹脂と硬化剤の合計100質量部に対し0.5質量部以上であることが望ましい。0.5質量部以上であれば十分な不純物捕捉能力が得られる。添加量の上限は特に制限されるものではないが、接着性や加工性を維持するという観点から、5〜50重量%であることが好ましい。
【0037】
また、酸化ランタンのような希土類酸化物もイオントラップ剤として使用することができる。希土類酸化物の中でも酸化ランタンが望ましい。
【0038】
酸化ランタンの使用量は熱硬化性樹脂と硬化剤の合計100質量部に対し0.2〜5質量部であることが望ましい。0.2質量部以上であれば十分な不純物捕捉能力が得られる。5質量部以下であれば酸化ランタン自身の吸湿量の増加による、耐湿リフロー特性の低下を抑制できる。
【0039】
上記イオントラップ剤は1種単独でも、または2種以上を併用しても良い。
【0040】
[樹脂含浸繊維基材の作製方法]
繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法としては、溶剤法とホットメルト法のいずれの方法でも実施できる。溶剤法とは熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調整し、樹脂ワニスを繊維基材に含浸させた後、溶剤を加熱揮散させる方法であり、ホットメルト法とは固形の熱硬化性樹脂組成物を加熱して溶かし前記繊維基材に含浸させる方法である。
【0041】
繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を半硬化する方法としては、特に制限はされないが、前記繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱により脱溶媒等して半硬化する方法等が例示される。また、繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化する方法としては、特に制限はされないが、繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱により硬化する方法等が例示される。
【0042】
繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化又は硬化した樹脂含浸繊維基材の厚みは使用する繊維クロス等の繊維基材の厚みによって決まり、厚い樹脂含浸繊維基材を作製する場合は繊維クロス等の繊維基材の使用枚数を多くし、積層して作製する。
【0043】
本発明において半硬化とは、JIS K 6800「接着剤・接着用語」に定義されているようなB−ステージ(熱硬化性樹脂組成物の硬化中間体、この状態での樹脂は加熱すると軟化し、ある種の溶剤に触れると膨潤するが、完全に溶融、溶解することはない)状態をいうものである。
【0044】
前記樹脂含浸繊維基材の厚みは、繊維基材に含浸させた熱硬化性樹脂組成物を半硬化及び硬化したいずれの場合も50μm〜1mmであることが好ましく、より好ましくは100μm〜500μmのものが望ましい。50μm以上であれば薄すぎて変形しやすくなることを抑制できるため好ましく、また1mm以下であれば半導体装置そのものが厚くなることを抑制できるため好ましい。
【0045】
また、前記樹脂含浸繊維基材のX−Y方向の膨張係数は、室温(25℃±10℃)〜200℃の範囲で5ppm/℃以上30ppm/℃以下であることが好ましく、10ppm/℃以上25ppm/℃以下であることがより好ましい。
【0046】
このように、前記樹脂含浸繊維基材のX−Y方向の膨張係数が5ppm/℃以上30ppm/℃以下であれば、前記半導体素子を搭載した基板との膨張係数の差が小さくなり、そのため封止される基板の反り、基板からの半導体素子の剥離をより確実に抑制することができる。なお、X−Y方向とは樹脂含浸繊維基材の面方向をいう。また、X−Y方向の膨張係数は、樹脂含浸繊維基材の面方向に任意にX軸、Y軸をとって測定した膨張係数をいう。
【0047】
前記樹脂含浸繊維基材は半導体素子搭載面を一括封止したあとの反りを低減させ、一個以上の半導体素子を配列、接着させた基板を補強するために重要である。そのため、硬くて剛直な樹脂含浸繊維基材であることが望ましい。
【0048】
<未硬化樹脂層>
本発明の繊維含有樹脂基板は未硬化樹脂層を有する。この未硬化樹脂層は、樹脂含浸繊維基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなるものである。未硬化樹脂層は、封止するための樹脂層となる。
【0049】
また、未硬化樹脂層の厚みは使用する半導体素子の厚みに依存し、半導体素子の厚みが50μ〜500μmの場合で異なる。高度な信頼性を確保するためには、基板表面上に搭載された半導体素子の表面からの封止樹脂層の厚みは100〜2000μm、特に160〜1500μmであることが好ましい。そのため、未硬化樹脂層の厚みは、200μmを超え2000μm以下であり、好ましくは210μm以上2000μm以下である。200μm以下では厚みが100μm程度の半導体素子を封止する場合には均一な封止が困難な場合がある。また、2000μmを超えると半導体装置の厚みが厚くなりすぎて高密度での実装が困難となる。一方で、未硬化樹脂層の厚みが200μm超であれば半導体素子搭載面を封止するのに充分であり、薄すぎることによる充填性の不良が生じることを抑制できる。
【0050】
未硬化樹脂層は、特に制限はされないが、通常半導体素子の封止に使用される液状エポキシ樹脂や固形のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はエポキシシリコーン混成樹脂からなる未硬化樹脂層であることが好ましい。特に、未硬化樹脂層が、50℃未満で固形であり、かつ50℃以上で溶融するエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシシリコーン混成樹脂のいずれかを含むものであることが好ましい。また、未硬化樹脂層は熱硬化性樹脂組成物からなることから、未硬化樹脂層の溶融温度の上限は反応が開始する温度以下であるほうが望ましい。
【0051】
このような未硬化樹脂層であれば、膨張係数の非常に小さな樹脂含浸繊維基材がこれら樹脂を含む未硬化樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制することができるため、大型有機樹脂基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離をより確実に抑制できる。また、特に封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板となる。
【0052】
さらに、未硬化樹脂層は、ハイドロタルサイト、モリブデン酸亜鉛、酸化ランタン等のイオントラップ剤を含有し、50℃未満で固形化し、かつ50℃以上で溶融するエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシシリコーン混成樹脂のいずれかを含むものであることが好ましい。溶融温度の上限としては熱硬化性樹脂組成物の反応、使用する触媒等に依存するが、180℃以下が望ましい。
【0053】
[エポキシ樹脂]
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はされないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂又は4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂など室温で液状や固体の公知のエポキシ樹脂が挙げられる。また、必要に応じて、上記以外のエポキシ樹脂を一定量併用することができる。
【0054】
前記エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。例えば、イオン交換水50mlに試料10gを添加し、密封して120℃のオーブン中に20時間静置した後、加熱抽出する120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが望ましい。
【0055】
エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層にはエポキシ樹脂の硬化剤を含めることができる。硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂、各種アミン誘導体、酸無水物や酸無水物基を一部開環させカルボン酸を生成させたものなどを使用することができる。なかでも本発明の繊維含有樹脂基板を用いて製造される半導体装置の信頼性を確保するためにフェノールノボラック樹脂が望ましい。特に、前記エポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂の混合比をエポキシ基とフェノール性水酸基の比率が1:0.8〜1.3となるように混合することが好ましい。
【0056】
更に、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤の反応を促進するため、反応促進剤としてイミダゾール誘導体、フォスフィン誘導体、アミン誘導体、有機アルミニウム化合物などの金属化合物等を使用しても良い。
【0057】
エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤等の添加剤を添加配合することができる。
【0058】
[シリコーン樹脂]
前記シリコーン樹脂としては、熱硬化性のシリコーン樹脂等が使用可能である。特に、シリコーン樹脂からなる未硬化樹脂層は付加硬化型シリコーン樹脂組成物を含むことが望ましい。付加硬化型シリコーン樹脂組成物としては、(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(C)白金系触媒を必須成分とするものが特に好ましい。以下、これら(A)〜(C)成分について説明する。
【0059】
(A)成分:非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物
前記(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物としては、
一般式(1):RSiO−(RSiO)−(RSiO)−SiR
(式中、Rは非共役二重結合含有一価炭化水素基を示し、R〜Rはそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基を示し、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0060】
上記一般式(1)中、Rは非共役二重結合含有一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜8、特に好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基で代表される脂肪族不飽和結合を有する非共役二重結合含有一価炭化水素基である。
【0061】
上記一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、このうちR〜Rは、より好ましくは脂肪族不飽和結合を除く一価炭化水素基であり、特に好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和結合を持たないアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。さらに、このうちR、Rは芳香族一価炭化水素基であることが好ましく、フェニル基やトリル基等の炭素数6〜12のアリール基等であることが特に好ましい。
【0062】
上記一般式(1)中、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数であり、aは10≦a≦500であることが好ましく、bは0≦b≦150であることが好ましく、またa+bは10≦a+b≦500を満たすことが好ましい。
【0063】
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンは、例えば、環状ジフェニルポリシロキサン、環状メチルフェニルポリシロキサン等の環状ジオルガノポリシロキサンと、末端基を構成するジフェニルテトラビニルジシロキサン、ジビニルテトラフェニルジシロキサン等のジシロキサンとのアルカリ平衡化反応によって得ることができるが、この場合、アルカリ触媒(特にKOH等の強アルカリ)による平衡化反応においては、少量の触媒で不可逆反応で重合が進行するため、定量的に開環重合のみが進行し、末端封鎖率も高いため、通常、シラノール基及びクロル分は含有されない。
【0064】
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものが例示される。
【化1】
(上記式において、k、mは、0≦k≦500、0≦m≦250、かつ0≦k+m≦500を満足する整数であり、好ましくは5≦k+m≦250、かつ0≦m/(k+m)≦0.5を満足する整数である。)
【0065】
(A)成分としては、上記一般式(1)で示される直鎖構造を有するオルガノポリシロキサンの他、必要に応じて、3官能性シロキサン単位、4官能性シロキサン単位等を含む三次元網目構造を有するオルガノポリシロキサンを併用することもできる。(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物は1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物中の非共役二重結合を有する基(Si原子に結合する二重結合を有する一価炭化水素基)の量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)のうち1〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは2〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。非共役二重結合を有する基の量が1モル%以上であれば硬化させたときに良好な硬化物を得ることができ、50モル%以下であれば硬化させたときの機械的特性が良いため好ましい。
【0067】
また、(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物は芳香族一価炭化水素基(Si原子に結合する芳香族一価炭化水素基)を有することが好ましく、芳香族一価炭化水素基の含有量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)の0〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜90モル%、特に好ましくは20〜80モル%である。芳香族一価炭化水素基は樹脂中に適量含まれた方が、硬化させたときの機械的特性が良く製造もしやすいという利点がある。
【0068】
(B)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサン
前記(B)成分としては、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、架橋剤として作用し、(B)成分中のSiH基と(A)成分のビニル基、アルケニル基等の非共役二重結合含有基とが付加反応することにより、硬化物を形成することができる。
【0069】
また、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、芳香族一価炭化水素基を有することが好ましい。このように、芳香族一価炭化水素基を有する(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、前記(A)成分との相溶性を高めることができる。(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよく、例えば、芳香族炭化水素基を有する(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを(B)成分の一部又は全部として含ませることができる。
【0070】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、これに限られるものではないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシラン重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0071】
また、下記構造で示される単位を使用して得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
【化2】
【0072】
また、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記のものが挙げられる。
【化3】
【0073】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合体の場合は重合度)は2以上が好ましく、より好ましくは2〜1,000、特に好ましくは2〜300程度のものを使用することができる。
【0074】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のアルケニル基等の非共役二重結合を有する基1個当たり(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)が0.7〜3.0個となる量であることが好ましい。
【0075】
(C)成分:白金系触媒
前記(C)成分には、白金系触媒が用いられる。(C)白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、キレート構造を有する白金錯体等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0076】
(C)白金系触媒の配合量は、硬化有効量であり所謂触媒量でよく、通常、前記(A)成分及び(B)成分の総質量100質量部あたり、白金族金属の質量換算で0.1〜500ppmであることが好ましく、特に0.5〜100ppmの範囲であることが好ましい。
【0077】
前記シリコーン樹脂からなる未硬化樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。通常、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが望ましい。
【0078】
[エポキシシリコーン混成樹脂]
エポキシシリコーン混成樹脂はエポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなり、これらエポキシ樹脂とシリコーン樹脂としては、前述のエポキシ樹脂と前述のシリコーン樹脂が挙げられる。
【0079】
前記混成樹脂からなる未硬化樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。通常、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが望ましい。
【0080】
[無機充填剤]
本発明に係る未硬化樹脂層には無機充填剤を配合することができる。配合される無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミノシリケート、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒径や形状は特に限定されない。
【0081】
特にエポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層に添加する前記無機充填剤としては、エポキシ樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0082】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン等を用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0083】
前記シリコーン樹脂組成物からなる未硬化樹脂層に添加する場合も、前記無機質充填材の表面を上記のようなカップリング材で処理したものを配合しても良い。
【0084】
前記無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物中の樹脂の総質量100質量部に対し、100〜1300質量部が好ましく、特に200〜1000質量部が好ましい。100質量部以上であれば十分な強度を得ることができ、1300質量部以下であれば増粘による流動性の低下が抑制され、流動性低下による充填性の不良が抑制され、結果としてウエハに形成された半導体素子及び基板上に配列・搭載された半導体素子を良好に封止することができる。なお、この無機充填剤は、未硬化樹脂層を構成する組成物全体の50〜95質量%、特に60〜90質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0085】
<繊維含有樹脂基板>
本発明の繊維含有樹脂基板の断面図の一例を図1に示す。本発明の繊維含有樹脂基板10は、繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化又は硬化した上述の樹脂含浸繊維基材1と、該樹脂含浸繊維基材1の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる上述の未硬化樹脂層2とを有するものである。
【0086】
[繊維含有樹脂基板の作製方法]
繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化した樹脂含浸繊維基材を使用して本発明の繊維含有樹脂基板を作製する場合は、樹脂含浸繊維基材の片面上に、減圧又は真空下で、印刷やディスペンス等で熱硬化性の液状エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂組成物を更に塗布し、加熱することで、50℃以下で固形な未硬化樹脂層を形成し、繊維含有樹脂基板を作製することができる。
【0087】
繊維基材に含浸させる熱硬化性樹脂組成物として熱硬化性エポキシ樹脂を用い、該熱硬化性樹脂組成物を半硬化した樹脂含浸繊維基材を使用して本発明の繊維含有樹脂基板を作製する場合は、該樹脂含浸繊維基材の片面上に形成される未硬化の熱硬化性樹脂組成物もエポキシ樹脂であることが好ましい。このように、樹脂含浸繊維基材に含浸させて半硬化とした熱硬化性樹脂組成物と、未硬化樹脂層の熱硬化性樹脂組成物とが同種の熱硬化性樹脂組成物であれば、半導体素子搭載面を一括封止するときに同時に硬化をさせることができ、それにより一層強固な封止機能が達成されるため好ましい。繊維基材に含浸させる熱硬化性樹脂組成物としてシリコーン樹脂を用いた場合も同様に、未硬化の熱硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0088】
前記繊維基材に前記熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、該熱硬化性樹脂組成物を硬化した樹脂含浸繊維基材を使用して本発明の繊維含有樹脂基板を作製する場合は、該樹脂含浸繊維基材の片面上に未硬化の熱硬化性樹脂組成物をプレス成形、印刷するなど、従来のエポキシ熱硬化性樹脂組成物やシリコーン熱硬化性樹脂組成物等で用いられてきた各種の方法で未硬化樹脂層を形成することができる。形成後、通常では180℃程度の温度で4〜8時間ポストキュアさせることが好ましい。その他、前記樹脂含浸繊維基材の片面上に未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層を形成する方法としては、室温で固体のエポキシ熱硬化性樹脂組成物やシリコーン熱硬化性樹脂組成物等を加熱しながら加圧する方法やエポキシ樹脂組成物にアセトン等の極性溶剤を適量添加することで液状化し印刷などで薄膜を形成し、溶剤を減圧下で加熱するなどの方法で除去することで均一に樹脂含浸繊維基材の片面上に未硬化樹脂層を形成することができる。
【0089】
いずれの方法でも樹脂含浸繊維基材の片面上に、ボイドや揮発成分のない、厚みが200を超え2000μm以下の未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層を形成することができる。
【0090】
[半導体素子を搭載した基板]
本発明の繊維含有樹脂基板は半導体素子搭載面を一括封止するための繊維含有樹脂基板である。半導体素子を搭載した基板としては、例えば図2中の一個以上の半導体素子3を接着剤4で無機、金属あるいは有機の基板5上に搭載した基板が挙げられる。なお、前記半導体素子を搭載した基板とは、半導体素子を搭載し配列等した半導体素子アレイを含むものである。
【0091】
<封止後半導体素子搭載基板>
本発明の繊維含有樹脂基板により封止された封止後半導体素子搭載基板の断面図の一例を図2に示す。本発明の封止後半導体素子搭載基板11は、前記繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2(図1参照)により半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を被覆し、該未硬化樹脂層2(図1参照)を加熱、硬化することで硬化後の樹脂層2’とし、前記繊維含有樹脂基板10により一括封止されたものである(図2)。
【0092】
このような封止後半導体素子搭載基板であれば、基板の反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載基板となる。
【0093】
<半導体装置>
本発明により製造される半導体装置の一例を図3に示す。本発明により製造される半導体装置12は前記封止後半導体素子搭載基板11(図2参照)をダイシングして、個片化したものである。このように、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、かつ基板の反り、基板からの半導体素子3の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板11(図2参照)をダイシングし、個片化して作製された半導体装置12は高品質な半導体装置となる。前記封止後半導体素子搭載基板11(図2参照)をダイシングして個片化した場合、半導体装置12は基板5上に接着剤4を介して半導体素子3が搭載され、その上から硬化後の樹脂層2’と樹脂含浸繊維基材1からなる繊維含有樹脂基板10により封止された半導体装置となる(図3)。
【0094】
<半導体装置の製造方法>
本発明の半導体装置の製造方法は、前記繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆する被覆工程、
該未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子搭載面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板とする封止工程、及び
該封止後半導体素子搭載基板をダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有する。以下、図4を用いて本発明の半導体装置の製造方法について説明する。
【0095】
[被覆工程]
前記被覆工程は、樹脂含浸繊維基材1と未硬化樹脂層2を有する繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2により、接着剤4を介して半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を被覆する工程である(図4(A))。
【0096】
[封止工程]
前記封止工程は、前記繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2を加熱、硬化して硬化後の樹脂層2’とすることで、前記半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板11とする工程である(図4(B))。
【0097】
[個片化工程]
前記個片化工程は、前記封止後半導体素子搭載基板11をダイシングし、個片化することで、半導体装置12を製造する工程である(図4(C)、(D))。
【0098】
以下、より具体的に説明する。前記被覆工程、封止工程においては、ソルダーレジストフィルムや各種絶縁フィルム等のラミネーションに使用されている真空ラミネータ装置等を使用することで、ボイドも反りもない被覆、封止を行うことができる。ラミネーションの方式としてはロールラミネーションやダイアフラム式真空ラミネーション、エアー加圧式ラミネーション等いずれの方式も使用することができる。なかでも、真空ラミネーションとエアー加圧式の併用が好ましい。
【0099】
ここでは例として、ニチゴーモートン社製の真空ラミネーション装置を用いて、厚み50μmのガラスクロス(繊維基材)にエポキシ樹脂を含浸したエポキシ樹脂含浸繊維基材と片面に厚み250μmの未硬化の熱硬化性エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層を有する繊維含有樹脂基板で、接着剤を介して14×14mmのSiチップ(半導体素子、厚み150μm)を搭載した厚み125μm、60mm×220mmのBT(ビスマレイミドトリアジン)レジン製有機基板を封止する場合について説明する。
【0100】
上下にヒーターが内蔵され150℃に設定されたプレートのうち、上側プレートにはダイアフラムラバーが減圧された状態でヒーターと密着している。下側プレート上に、接着剤を介して半導体素子を搭載した有機基板をセットし、その上に片面に前記繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層面を、有機基板の半導体搭載面に合わせてセットする。その後、下側プレートが上昇し、下側プレート上にセットされた有機基板を囲むように設置されたOリングにより上下のプレートが密着して真空チャンバーが形成され、該真空チャンバー内が減圧される。真空チャンバー内が十分に減圧されたら、上側プレートのダイアフラムラバーとヒーターの間から真空ポンプにつながる配管の弁を閉じ、圧縮空気を送り込む。それにより、上側のダイアフラムラバーが膨張し有機基板と繊維含有樹脂基板を上側のダイアフラムラバーと下側のプレートで挟み、真空ラミネーションを行うと同時に熱硬化性エポキシ樹脂の硬化が進行し、封止が完了する。硬化時間としては3〜20分程度あれば十分である。真空ラミネーションが完了したら真空チャンバー内を常圧に戻し、下側プレートを下降させ、封止した有機基板を取り出す。上記工程によりボイドや反りのない基板の封止を行うことができる。取り出した基板は通常、150〜180℃の温度で1〜4時間ポストキュアすることで電気特性や機械特性を安定化させることができる。
【0101】
上記の真空ラミネーション装置を用いた被覆、封止工程は例示したエポキシ樹脂に限らず、シリコ−ン樹脂やエポキシとシリコーンの混成樹脂の場合にも用いることができる。
【0102】
このような半導体装置の製造方法であれば、被覆工程においては前記繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により簡便に、充填不良なく半導体素子搭載面を被覆することができる。また、前記繊維含有樹脂基板を使用するので、樹脂含浸繊維基材が未硬化樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制できるため、封止工程においては該半導体素子搭載面を一括封止することができ、薄型の大型有機樹脂基板や金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板の反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板を得ることができる。さらに、個片化工程においては耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、かつ反りが抑制された該封止後半導体素子搭載基板から半導体装置をダイシングし、個片化することができるため、高品質な半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の繊維含有樹脂基板の熱硬化性樹脂として用いるシリコーン樹脂の合成例と、本発明の繊維含有樹脂基板の実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
[非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物の合成]
<合成例1>
−非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1)−
PhSiClで示されるオルガノシラン:27mol、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl:1mol、MeViSiCl:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1)を合成した。この化合物は、構成する単位の構成比が式:[PhSiO3/20.27[−SiMeO−(MeSiO)33−SiMeO−]0.01[MeViSiO2/20.03で示される。この化合物の重量平均分子量は62,000、融点は60℃であった。なお、ここで組成式中のViは(−CH=CH)で示されるビニル基を示し、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を示す(以下、同様)。
【0105】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合成]
<合成例2>
−オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)−
PhSiClで示されるオルガノシラン:27mol、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl:1mol、MeHSiCl:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を合成した。この樹脂は、構成する単位の構成比が式:[PhSiO3/20.27[−SiMeO−(MeSiO)33−SiMeO−]0.01[MeHSiO2/20.03で示される。この樹脂の重量平均分子量は58,000、融点は58℃であった。
【0106】
[実施例1]
[樹脂含浸繊維基材の作製]
合成例1で得られた非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):189g、合成例2で得られたオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):189g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2g、塩化白金酸の1質量%オクチルアルコール溶液:0.1gを加え、60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌してベース組成物を得た。このベース組成物に、溶剤としてトルエンを400g加え、さらに無機充填剤としてシリカ(商品名:アドマファインE5/24C、平均粒子径:約3μm、(株)アドマテックス製)を378g、ハイドロタルサイト化合物(協和化成(株)製 Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO 商品名DHT−4A−2)を12g、モリブデン酸亜鉛(日本シャーウィン・ウイリアムス(株)製、商品名:911B)を40g、酸化ランタン(信越化学工業(株)製)を2g加えて、シリコーン樹脂組成物のトルエン分散液を調製した。
【0107】
このシリコーン樹脂組成物のトルエン分散液に繊維基材としてEガラスクロス(日東紡績製、厚さ:50μm)を浸漬することにより、該トルエン分散液を該ガラスクロスに含浸させた。該ガラスクロスを60℃で2時間放置することによりトルエンを揮発させた。トルエンを揮発させた後のEガラスクロスの両面には、室温(25℃)で固体の皮膜が形成されていた。該ガラスクロスを熱プレス機にて150℃で10分間加圧成型して成型品を得、更にこれを150℃で1時間2次硬化させて、含浸させた熱硬化性樹脂組成物を硬化させたシリコーン樹脂含浸繊維基材(I−a)を得た。
【0108】
また、前記シリコーン樹脂組成物のトルエン分散液に繊維基材としてEガラスクロス(日東紡績製、厚さ:50μm)を浸漬することにより、該トルエン分散液を該ガラスクロスに含浸させて、該ガラスクロスを60℃で2時間放置することによりトルエンを揮発させて、含浸させた熱硬化性樹脂組成物を半硬化させたシリコーン樹脂含浸繊維基材(II−a)を得た。トルエンを揮発させた後のEガラスクロスの両面には、室温(25℃)で固体の皮膜が形成されていた。
【0109】
[未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成するための組成物の作製]
前述の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):50質量部、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):50質量部、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2質量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1質量部を加えた組成物に対して、さらに平均粒径5μmの球状シリカを350質量部、ハイドロタルサイト化合物(協和化成(株)製 Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO 商品名DHT−4A−2)を3質量部、モリブデン酸亜鉛(日本シャーウィン・ウイリアムス(株)製、商品名:911B)を10質量部、酸化ランタン(信越化学工業(株)製)を0.5質量部を加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(I−b)を調製した。この組成物は、室温(25℃)で固体であった。
【0110】
[繊維含有樹脂基板の作製]
該シリコーン樹脂組成物(I−b)を、シリコーン樹脂含浸繊維基材(I−a)(膨張係数:x−y軸方向 20ppm)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ250μmの未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層をシリコーン樹脂含浸繊維基材(I−a)の片面上に形成した繊維含有樹脂基板(I−c)を作製した。その後、60×220mmの長方形に切断した。
【0111】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
次に、プレート温度を130℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに厚みが125μmで14×14mmのSiチップ(半導体素子、厚み150μm)を搭載したBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂製の有機基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した繊維含有樹脂基板(I−c)の未硬化樹脂層であるシリコーン樹脂組成物(I−b)面を上記BT基板の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、繊維含有樹脂基板(I−c)により封止された基板を更に150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(I−d)を得た。
【0112】
[実施例2]
[未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成するための組成物の作製]
前述の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):50質量部、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):50質量部、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2質量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1質量部を加えた組成物に対して、さらに平均粒径5μmの球状シリカを350質量部、ハイドロタルサイト化合物(協和化成(株)製 Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO 商品名DHT−4A−2)を3質量部、モリブデン酸亜鉛(日本シャーウィン・ウイリアムス(株)製、商品名:911B)を10質量部、酸化ランタン(信越化学工業(株)製)を0.5質量部加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(II−b)を調製した。この組成物は、室温(25℃)で固体であった。
【0113】
[繊維含有樹脂基板の作製]
該シリコーン樹脂組成物(II−b)を、前記シリコーン樹脂含浸繊維基材(II−a)(膨張係数:x−y軸方向 20ppm)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ250μmの未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層をシリコーン樹脂含浸繊維基材(II−a)の片面上に形成した繊維含有樹脂基板(II−c)を作製した。成形後、60×220mmの長方形に切断した。
【0114】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
次に、プレート温度を130℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに14×14mm角のSiチップ(半導体素子、厚み150μm)を搭載し、厚みが125μmのBT基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した繊維含有樹脂基板(II−c)の未硬化樹脂層であるシリコーン樹脂組成物(II−b)面を上記BT基板上の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、繊維含有樹脂基板(II−c)により封止された基板を150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(II−d)を得た。
【0115】
[実施例3]
[樹脂含浸繊維基材の作製]
繊維基材としてEガラスクロスを含み、粒径が0.3μmの球状シリカを添加し膨張係数(x、y軸)を15ppmに調整した厚み70μmのエポキシ樹脂基板を樹脂含浸繊維基材(III−a)として準備した。
【0116】
[未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成するための組成物の作製]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020 日本化薬製)60質量部、フェノールノボラック樹脂(H−4 群栄化学製)30質量部、球状シリカ(龍森製平均粒径7μm)400質量部、ハイドロタルサイト化合物(協和化成(株)製 Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO 商品名DHT−4A−2)を3質量部、モリブデン酸亜鉛(日本シャーウィン・ウイリアムス(株)製、商品名:911B)を10質量部、酸化ランタン(信越化学工業(株)製)を0.5質量部、触媒TPP(トリフェニルホスフィン 北興化学工業製)0.2質量部、シランカップリング剤(KBM403 信越化学工業製)0.5質量部を高速混合装置で十分混合した後、連続混練装置で加熱混練してシート化し冷却した。シートを粉砕し顆粒状の粉末としてエポキシ樹脂組成物(III−b)を得た。
【0117】
[繊維含有樹脂基板の作製]
樹脂含浸繊維基材(III−a)を減圧下で加熱圧縮できる圧縮成形装置の下金型上にセットし、その上にエポキシ樹脂組成物(III−b)の顆粒粉末を均一に分散させた。上下の金型温度を80℃にし、上金型にはフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)をセットして金型内を真空レベルまで減圧し、未硬化樹脂層の厚みが250μmになるように3分間圧縮成形して繊維含有樹脂基板(III−c)を作製した。成形後、60×220mmの長方形に切断した。
【0118】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
次に、プレート温度を170℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに14×14mm角のSiチップ(半導体素子、厚み150μm)を搭載した厚みが125μmのエポキシ樹脂基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した繊維含有樹脂基板(III−c)の未硬化樹脂層であるエポキシ樹脂組成物(III−b)面を上記エポキシ樹脂基板の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、170℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(III−d)を得た。
【0119】
[実施例4]
[半導体素子が搭載された基板]
60×220mm長方形のエポキシ樹脂基板上に、高温で接着力が低下する接着剤を介して、個片化した半導体素子である20個のシリコンチップ(形状:14mm×14mm 厚み150μm)を整列し搭載した。
【0120】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
この基板をプレート温度を170℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに上記半導体素子搭載のエポキシ樹脂基板をセットし、その上に未硬化樹脂層の厚みを210μmとした以外は実施例3と同様にして作製した封止樹脂付繊維含有樹脂基板(IV−c)を60×220mmの長方形に切断したものをセットした。剥離フィルムを除去し、該繊維含有樹脂基板(IV−c)の未硬化樹脂層であるエポキシ樹脂組成物(IV−b)面を上記エポキシ樹脂基板上の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することでシリコンチップ上の樹脂厚みが60μm厚み(封止樹脂層の厚みが210μm)になるように硬化封止した。硬化封止後、170℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(IV−d)を得た。
【0121】
[実施例5]
前述の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):50質量部、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):50質量部、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2質量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1質量部を加えた組成物に対して、さらに平均粒径5μmの球状シリカを350質量部加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(V−b)を調製した。この組成物は、25℃で固体であった。
【0122】
[繊維含有樹脂基板の作製]
該シリコーン樹脂組成物(V−b)を、前記シリコーン樹脂含浸繊維基材(I−a)(膨張係数:x−y軸方向 20ppm)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ2000μmの未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層をシリコーン樹脂含浸繊維基材(I−a)の片面上に形成した繊維含有樹脂基板(V−c)を作製した。成形後、60×220mmの長方形に切断した。
【0123】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
次に、プレート温度を130℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに14×14mm角のSiチップ(半導体素子、厚み725μm)を搭載し、厚みが125μmのBT基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した繊維含有樹脂基板(V−c)の未硬化樹脂層であるシリコーン樹脂組成物(V−b)面を上記BT基板上の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、繊維含有樹脂基板(V−c)により封止された基板を150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(V−d)を得た。
【0124】
[比較例1]
前述の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):50質量部、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):50質量部、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2質量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1質量部を加えた組成物に対して、さらに平均粒径5μmの球状シリカを350質量部加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(VI−b)を調製した。この組成物は、25℃で固体であった。
【0125】
[封止用シートの作製]
上記シリコーン樹脂組成物(VI−b)を、PETフィルム(加圧用ベースフィルム)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ250μmのフィルム状に成形し、シリコーン樹脂組成物(VI−b)のみからなる封止用シート(VI−c)を作製した。成形後、60×220mmの長方形に切断した。
【0126】
[半導体素子が搭載されたウエハの被覆及び封止]
次に、プレート温度を130℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに60×220mmで14×14mm角のSiチップ(半導体素子、厚み150μm)を搭載した厚みが125μmのBT基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去したシリコーン樹脂組成物(VI−b)のみからなる封止用シート(VI−c)を積層した。その後、PETフィルム(加圧用ベースフィルム)も剥離した後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(VI−d)を得た。
【0127】
[比較例2]
前述の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):189g、前述のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):189g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2g、塩化白金酸の1質量%オクチルアルコール溶液:0.1gを加え、60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌してベース組成物を得た。このベース組成物に、溶剤としてトルエンを400g加え、さらに無機充填剤としてシリカ(商品名:アドマファインE5/24C、平均粒子径:約3μm、(株)アドマテックス製)を378g加えて、シリコーン樹脂組成物のトルエン分散液を調製した。
【0128】
このシリコーン樹脂組成物のトルエン分散液に繊維基材としてEガラスクロス(日東紡績製、厚さ:50μm)を浸漬することにより、該トルエン分散液を該ガラスクロスに含浸させた。該ガラスクロスを60℃で2時間放置することによりトルエンを揮発させた。トルエンを揮発させた後のEガラスクロスの両面には、室温(25℃)で固体の皮膜が形成されていた。該ガラスクロスを熱プレス機にて150℃で10分間加圧成型して成型品を得、更にこれを150℃で1時間2次硬化させて、含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させたシリコーン樹脂含浸繊維基材(VII−a)を得た。
【0129】
[未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成するための組成物の作製]
前述の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(A1):50質量部、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):50質量部、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2質量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1質量部を加えた組成物に対して、さらに平均粒径5μmの球状シリカを350質量部を加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(VII−b)を調製した。この組成物は、室温(25℃)で固体であった。
【0130】
[繊維含有樹脂基板の作製]
該シリコーン樹脂組成物(VII−b)を、上記の、含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させたシリコーン樹脂含浸繊維基材(VII−a)(膨張係数:x−y軸方向 20ppm)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ250μmの未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層をシリコーン樹脂含浸繊維基材(VII−a)の片面上に形成した繊維含有樹脂基板(VII−c)を作製した。成形後、60×220mmの長方形に切断した。
【0131】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
次に、プレート温度を130℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに14×14mm角のSiチップ(半導体素子、厚み150μm)を搭載し、厚みが125μmのBT基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した繊維含有樹脂基板(VII−c)の未硬化樹脂層であるシリコーン樹脂組成物(VII−b)面を上記BT基板上の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、繊維含有樹脂基板(VII−c)により封止された基板を150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(VII−d)を得た。
【0132】
[比較例3]
[半導体素子が搭載された基板]
60×220mmで厚みが300μmのBT樹脂基板上に、高温で接着力が低下する接着剤を介して、個片化した半導体素子である20個のシリコンチップ(形状:14mm×14mm 厚み150μm)を整列し搭載した。
【0133】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
この半導体素子が搭載された基板を減圧下で加熱圧縮できる圧縮成形装置の下金型上にセットし、その上に実施例3と同様にして作製したエポキシ樹脂組成物(VIII−b)の顆粒粉末を均一に分散させた。上下の金型温度を170℃にし、上金型にはフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)をセットして金型内を真空レベルまで減圧し、未硬化樹脂層の厚みが250μmになるように3分間圧縮成形し、硬化封止した。硬化封止後、170℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(VIII−d)を得た。
【0134】
[比較例4]
[樹脂含浸繊維基材の作製]
繊維基材としてAガラスクロスを含み、粒径が0.3μmの球状シリカを添加し膨張係数(x、y軸)を15ppmに調整した厚み70μmのエポキシ樹脂基板を樹脂含浸繊維基材(IX−a)として準備した。
【0135】
[未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成するための組成物の作製]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020 日本化薬製)60質量部、フェノールノボラック樹脂(H−4 群栄化学製)30質量部、球状シリカ(龍森製平均粒径7μm)400質量部、ハイドロタルサイト化合物(協和化成(株)製 Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO 商品名DHT−4A−2)を3質量部、モリブデン酸亜鉛(日本シャーウィン・ウイリアムス(株)製、商品名:911B)を10質量部、酸化ランタン(信越化学工業(株)製)を0.5質量部、触媒TPP(トリフェニルホスフィン 北興化学工業製)0.2質量部、シランカップリング材(KBM403 信越化学工業製)0.5質量部を高速混合装置で十分混合した後、連続混練装置で加熱混練してシート化し冷却した。シートを粉砕し顆粒状の粉末としてエポキシ樹脂組成物(IX−b)を得た。
【0136】
[繊維含有樹脂基板の作製]
樹脂含浸繊維基材(IX−a)を減圧下で加熱圧縮できる圧縮成形装置の下金型上にセットし、その上に実施例3と同様のエポキシ樹脂組成物(III−b)の顆粒粉末を均一に分散させた。上下の金型温度を80℃にし、上金型にはフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)をセットして金型内を真空レベルまで減圧し、未硬化樹脂層の厚みが3000μmになるように3分間圧縮成形して繊維含有樹脂基板(IX−c)を作製した。成形後、60×220mmの長方形に切断した。
【0137】
[半導体素子が搭載された基板の被覆及び封止]
次に、プレート温度を170℃に設定した真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに14×14mm角のSiチップ(半導体素子、厚み725μm)を接着剤を介して2枚スタックして搭載した厚みが125μmのエポキシ樹脂基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した繊維含有樹脂基板(IX−c)の未硬化樹脂層であるエポキシ樹脂組成物(III−b)面を上記エポキシ樹脂基板の半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、170℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(IX−d)を得た。
【0138】
以上、実施例1〜5、比較例1〜4において封止された封止後半導体素子搭載基板の反り、外観、樹脂と基板の接着状態、金属基板からの半導体素子の剥離の有無を調査した。その結果を表1に示す。ここで、外観についてはボイド、未充填の有無をしらべ、これらがなければ良好とした。また、接着状態については成型時に剥離がなければ良好とした。
【0139】
【表1】
【0140】
以上より、本発明の繊維含有樹脂基板を用いない比較例1〜4において示されるように、これら比較例において半導体素子搭載面を一括封止した場合には、作製される封止後半導体素子搭載基板の反りは大きく、また基板からの半導体素子の剥離があることが明らかとなった(表1)。一方で、実施例において示されるように、本発明の繊維含有樹脂基板を用いて封止された、封止後半導体素子搭載基板は、基板の反りが著しく抑制されており、外観、接着状態が良好でボイドや未充填なども生じないことが明らかとなった。以上により、本発明に係る樹脂含浸繊維基材は未硬化樹脂層を硬化させた時の収縮応力を抑制することができ、それにより基板の反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制されることが示された。また、比較例4では半導体装置が厚くなり高密度での実装は困難になることが予測された。
【0141】
また、上記実施例1〜5、及び比較例2の封止後半導体素子搭載基板をダイシングして、個片化し半田ボールを取り付けた半導体装置をサンプル数として各試験用に10個準備し、以下の耐熱性試験と耐湿性試験を行った。なお、比較例1,3,4で形成した封止後半導体素子搭載基板はそりが大きいためダイシングによる個片化ができず、個片化した半導体装置について基板からの半導体素子の剥離の有無を評価出来なかった。
【0142】
[耐熱性試験]
ヒートサイクル試験(−25℃で10分保持、125℃で10分保持を1000サイクル繰り返す)を行い、試験後にも導通がとれるかを評価した。
【0143】
[耐湿性試験]
温度85℃、相対湿度85%の条件下で回路の両極に10Vの直流電圧を印加し、マイグレーションテスター(IMV社製、MIG−86)を用いて250時間後の短絡不良数を測定した。
【0144】
【表2】
【0145】
表2に示すように、耐熱性試験、耐湿性試験共に実施例1〜5では断線やクラックなどの不良は発生しなかった。しかしながら、比較例2の個片化した半導体装置では耐熱性試験では不良が発生しなかったものの、耐湿性試験では半数が不良となった。これにより、本発明の繊維含有樹脂基板を用いて封止された半導体装置は信頼性の高いものとなることが示された。
【0146】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0147】
1…樹脂含浸繊維基材、 2…未硬化樹脂層、 2’…硬化後の樹脂層、 3…半導体素子、 4…接着剤、 5…基板、 10…繊維含有樹脂基板、 11…封止後半導体素子搭載基板、 12…半導体装置。
図1
図2
図3
図4