特許第5770674号(P5770674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770674光学半導体装置用基板及びその製造方法、並びに光学半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770674
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】光学半導体装置用基板及びその製造方法、並びに光学半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20150806BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01L23/36 C
   H01L23/12 J
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-85195(P2012-85195)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-214675(P2013-214675A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】深澤 博之
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−135381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの電気的接続部を有する光学半導体装置用基板であって、
繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層の表面に金属層が接合された基台を有し、該基台の前記樹脂層側に前記光学半導体素子を収容して搭載するための少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した素子搭載用凹部が形成され、該素子搭載用凹部の内面にメッキが形成されたものであることを特徴とする光学半導体装置用基板。
【請求項2】
前記電気的接続部は、前記基台の前記樹脂層側に形成された少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した電気的接続部用凹部の内面にメッキによって形成され、前記金属層と電気的に接続したものであることを特徴とする請求項1に記載の光学半導体装置用基板。
【請求項3】
前記繊維強化材は、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学半導体装置用基板。
【請求項4】
前記基台の樹脂層は、前記繊維強化材に前記シリコーン樹脂組成物を含浸させたプリプレグを少なくとも1層以上を用いて硬化させたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光学半導体装置用基板。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂組成物は、縮合硬化型又は付加硬化型のシリコーン樹脂組成物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光学半導体装置用基板。
【請求項6】
前記基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造又は封止材ダム構造を有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光学半導体装置用基板。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の光学半導体装置用基板に光学半導体素子を搭載した光学半導体装置。
【請求項8】
光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの電気的接続部を有する光学半導体装置用基板を製造する方法であって、
繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層の表面に金属層が接合された基台の前記樹脂層側に前記光学半導体素子を収容して搭載するための少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した素子搭載用凹部を形成する工程と、前記素子搭載用凹部の内面にメッキを形成する工程とを含むことを特徴とする光学半導体装置用基板の製造方法。
【請求項9】
前記光学半導体素子を収容して搭載するための素子搭載用凹部を形成する工程において、前記樹脂層の表面に前記金属層を接合した後の前記基台に前記素子搭載用凹部を形成することを特徴とする請求項8に記載の光学半導体装置用基板の製造方法。
【請求項10】
前記光学半導体素子を収容して搭載するための素子搭載用凹部を形成する工程において、前記金属層を接合する前の前記樹脂層に前記素子搭載用凹部に対応する貫通孔を形成し、その後、前記樹脂層と前記金属層とを接合することを特徴とする請求項8に記載の光学半導体装置用基板の製造方法。
【請求項11】
前記基台の前記樹脂層側に少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した電気的接続部用凹部を形成し、該電気的接続部用凹部の内面にメッキによって前記金属層と電気的に接続した前記電気的接続部を形成する工程を有することを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の光学半導体装置用基板の製造方法。
【請求項12】
前記基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造又は封止材ダム構造を形成する工程を有することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の光学半導体装置用基板の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学半導体装置用基板とその製造方法、当該基板を使用した光学半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED、フォトダイオード等の光学素子は、高効率であり、外部応力および環境的な影響に対する耐性が高いことから産業界において幅広く用いられている。さらに、光学素子は効率が高いことに加えて、寿命が長く、コンパクトであり、多くの異なる構造に構成することができ、比較的低い製造コストで製造できる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、一般的に半導体素子を搭載する基板の材質として、FR−4に代表される繊維強化材を有したエポキシ材を用いることが知られている。
特に、大量の熱を発生する高出力の光学半導体装置において、高放熱性であると同時に、長時間にわたって高反射率を保持する基板を用いることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−521481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性の光学半導体装置を実現するための光学半導体装置用基板とその製造方法、並びに当該基板を使用した光学半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの電気的接続部を有する光学半導体装置用基板であって、繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層の表面に金属層が接合された基台を有し、該基台の前記樹脂層側に前記光学半導体素子を収容して搭載するための少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した素子搭載用凹部が形成され、該素子搭載用凹部の内面にメッキが形成されたものであることを特徴とする光学半導体装置用基板が提供される。
【0007】
このようなものであれば、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性を有する光学半導体装置用基板となる。
【0008】
このとき、前記電気的接続部は、前記基台の前記樹脂層側に形成された少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した電気的接続部用凹部の内面にメッキによって形成され、前記金属層と電気的に接続したものであることが好ましい。
このようなものであれば、放熱性により優れたものとなる。また、金属層により他の基板と接続できるものとなる。
【0009】
またこのとき、前記繊維強化材は、ガラス繊維であることが好ましい。
繊維強化材がガラス繊維であれば、更に、良好な耐紫外線性および耐熱性を示す基板となり、繊維強化材とシリコーン樹脂組成物との良好な接着も確保される。さらに、ガラス繊維は、安価で扱いやすい材料であるため、コスト面からも有利である。
【0010】
またこのとき、前記基台の樹脂層は、前記繊維強化材に前記シリコーン樹脂組成物を含浸させたプリプレグを少なくとも1層以上を用いて硬化させたものであることが好ましい。
このようなものであれば、所望の厚さを有する、より機械的安定性に優れたものとなる。
【0011】
またこのとき、前記シリコーン樹脂組成物は、縮合硬化型又は付加硬化型のシリコーン樹脂組成物であることができる。
このようなものであれば、機械的特性、耐熱性、耐変色性に優れ、表面のタックの少ない光学半導体装置用基板となる。
【0012】
またこのとき、前記基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造又は封止材ダム構造を有するものであることができる。
このように、リフレクター構造を有するものであれば高光束なものとなり、封止材ダム構造を有するものであれば封止材の形状を維持できる高品質なものとなる。
【0013】
また、本発明によれば、本発明の光学半導体装置用基板に光学半導体素子を搭載した光学半導体装置が提供される。
このようなものであれば、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性なものとなる。
【0014】
また、本発明によれば、光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの電気的接続部を有する光学半導体装置用基板を製造する方法であって、繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層の表面に金属層が接合された基台の前記樹脂層側に前記光学半導体素子を収容して搭載するための少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した素子搭載用凹部を形成する工程と、前記素子搭載用凹部の内面にメッキを形成する工程とを含むことを特徴とする光学半導体装置用基板の製造方法が提供される。
【0015】
このようにすれば、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性を有する光学半導体装置用基板を製造できる。
【0016】
このとき、前記光学半導体素子を収容して搭載するための素子搭載用凹部を形成する工程において、前記樹脂層の表面に前記金属層を接合した後の前記基台に前記素子搭載用凹部を形成することができる。
このようにすれば、所望の深さを有する素子搭載用凹部を容易に形成できる。
【0017】
或いは、前記光学半導体素子を収容して搭載するための素子搭載用凹部を形成する工程において、前記金属層を接合する前の前記樹脂層に前記素子搭載用凹部に対応する貫通孔を形成し、その後、前記樹脂層と前記金属層とを接合することもできる。
このようにすれば、素子搭載用凹部を形成する工程の工程時間を低減できる。
【0018】
またこのとき、前記基台の前記樹脂層側に少なくとも前記樹脂層を厚さ方向に貫通した電気的接続部用凹部を形成し、該電気的接続部用凹部の内面にメッキによって前記金属層と電気的に接続した前記電気的接続部を形成する工程を有することが好ましい。
このようにすれば、放熱性により優れた光学半導体装置用基板を製造できる。この製造した光学半導体装置用基板では、金属層により他の基板と接続できる。
【0019】
またこのとき、前記基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造又は封止材ダム構造を形成する工程を有することができる。
このような製造方法であれば、リフレクター構造を形成して高光束な光学半導体装置用基板を製造でき、又は封止材ダム構造を形成して封止材の形状を維持できる高品質な光学半導体装置用基板を製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学半導体装置用基板は、繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層の表面に金属層が接合された基台の樹脂層側に光学半導体素子を収容して搭載するための少なくとも樹脂層を厚さ方向に貫通した素子搭載用凹部を形成し、素子搭載用凹部の内面にメッキを形成して製造されたものであるので、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性を有する光学半導体装置用基板である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の光学半導体装置用基板の一例を示した概略図である。(A)概略上面図。(B)概略断面図。
図2】樹脂層内の繊維強化材の繊維層の繊維方向を示した概略上面図である。
図3】本発明の大面積プリント基板の形態の光学半導体装置用基板の概略上面図である。
図4】本発明の光学半導体装置の製造方法の一例を説明する説明図である。
図5】本発明の光学半導体装置の製造方法で製造した本発明の光学半導体装置用基板の例を示す概略断面図である。
図6】リフレクター構造(A)及び封止材ダム構造(B)を有する本発明の光学半導体装置用基板の例を示す概略図である。
図7】本発明の光学半導体装置の一例を示す概略断面図である。
図8】リフレクター構造(A)及び封止材ダム構造(B)を有する本発明の光学半導体装置の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来より、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性の光学半導体装置を実現できる光学半導体装置用基板が望まれていた。
本発明者等は、このような課題を達成するため鋭意検討を重ねた。その結果、繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層を有する基台を用いることにより機械的安定性、高耐久性が達成され、光学半導体素子の搭載領域として基台に素子搭載用凹部を形成し、その素子搭載用凹部の内面にメッキを形成することにより高放熱性が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
まず、本発明の光学半導体装置用基板について説明する。
〔基台〕
図1(A)に、本発明の光学半導体装置用基板10の上面図を示し、図1(B)に、図1(A)におけるAA線に沿った断面図を示す。基台1は、3層の繊維強化材2にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させた樹脂層1aの表面(下面)に金属層1bが接合されたものである。このように、従来のエポキシ基板(FR−4など)と比較して耐熱性の高いシリコーン樹脂を主体とした樹脂層1aを有する基台とすることで、耐熱性が高く長期環境試験(高温高湿試験等)において基台の黄変も無く、長時間にわたり高反射率を保持する耐久性に優れた光学半導体装置用基板となる。その上、このような基板は機械的安定性が高く、かつ可撓性に優れ、取り扱いが容易である。
【0024】
基台1の樹脂層1aは、繊維強化材2にシリコーン樹脂組成物を含浸させたプリプレグを少なくとも1層以上を用いて硬化させたものであることが好ましい。
このようなものであれば、所望の厚さを有する、より機械的安定性に優れたものとなる。
高出力ダイオード(光出力が高く、したがって大量の廃熱も発生させるもの)の場合や、温度が上昇する環境(例:自動車のエンジン付近のヘッドライト)において光学半導体装置用基板を使用する場合には耐熱性に関して厳しい要件が求められる。本発明の光学半導体装置用基板であれば、これらの要求にも応えることができる。
【0025】
図1(B)に示すように、基台1の樹脂層1a側に光学半導体素子を収容して搭載するための素子搭載用凹部4が形成されている。素子搭載用凹部4は少なくとも樹脂層1aを厚さ方向に貫通するように形成されていれば、その深さは特に限定されず、金属層1bの内部まで到達するものであっても良い。素子搭載用凹部4の内面にはメッキ5が形成される。光学半導体素子はこの形成されたメッキ5上の凹形状部内に収容され搭載される。
このようなものであれば、光学半導体素子から発生する熱を素子搭載用凹部4の内面に形成されたメッキ5から効率良く外部に排出することができ、高放熱性を有する光学半導体装置用基板となる。
【0026】
基台1の厚さはできる限り薄いことが好ましく、例えば自重で湾曲しない程度の十分な機械的安定性を有することが好ましい。基台1の厚さは、1mm以下、好ましくは0.6mm以下、特に好ましくは0.4mm以下である。
金属層1b及びメッキ5は、特に制限されないが、銅、ニッケル、金、パラジウム、銀、又はこれらの合金によって形成できる。或いは、これらを無機質充填材(透明導電性酸化物(略してTCO)としても知られている)などの透明な導電性材料から形成することも可能である。
【0027】
図1(B)に示すように、メッキ5は素子搭載用凹部4の内面のみならず、その上端が樹脂層1aの表面より高くなるように形成しても良い。そして、基台1の表面の大部分(例えば50%以上)がメッキによって覆われていることが好ましい。金属は一般的に高い熱伝導性を示すため、メッキを基台1の表面上の大きな領域に形成することによって、光学半導体素子から発生する熱を効率的に外部へ拡散させることができる。
【0028】
図3に示すように、本発明の光学半導体装置用基板10は、基台1が複数の素子搭載用凹部4、及び光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの、後述する電気的接続部3を有するものとすることができ、大面積プリント基板の形態をとることができる。また、光学半導体素子の搭載時前後に、光学半導体装置用基板10をより小さな個別のユニットに分けることもできる。
【0029】
〔シリコーン樹脂組成物〕
シリコーン樹脂は、耐熱性が高く、高耐久性であり、誘電率も低いことにより低ノイズ性であるため、基台1の樹脂層1aの構成材料に極めて適している。シリコーン樹脂組成物としては、特に制限されないが、硬化性のシリコーン樹脂組成物であって、付加硬化型や縮合硬化型のシリコーン樹脂組成物が望ましい。このようなシリコーン樹脂組成物であれば、従来の成型装置でも容易に成型可能であり、機械的特性に優れ、表面のタックが少ない基台を容易に得ることができる。ひいては、機械的特性、耐熱性、耐変色性に優れ、表面のタックが少ない光学半導体装置用基板を容易に得ることができる。
【0030】
特に、特開2010−89493号公報に記載されているような室温で固体状であるシリコーン樹脂組成物を用いた場合、該シリコーン樹脂組成物を溶剤に溶解・分散させた状態で繊維強化材に含浸させ、該繊維強化材から前記溶剤を蒸発させて除去した後は、該組成物がAステージ状態であり固形となる。そのため、シリコーン樹脂組成物を繊維強化材に含浸させたプリプレグの保管がより容易となり、熱プレス機での成型をより容易に行うことができ、更に、光学半導体装置用基板の形状をより自由に成型できるという利点がある。また、この光学半導体装置用基板を用いて作製した本発明の光学半導体装置は、経時的な波長(色調)の変化、初期光束や反射率の変化が小さく長寿命となる。
【0031】
また、上記シリコーン樹脂組成物には無機質充填材を添加することができる。具体的にはアルミナ、シリカ、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが用いられる。これらの無機質充填材は単独でも、二種以上併用して用いても良い。
【0032】
この無機質充填材の形状及び粒径は特に制限されるものではない。充填材の粒径は、通常、0.01〜50ミクロンとすることができ、好ましくは0.1〜20ミクロンである。無機質充填材の配合量は特に制限されるものではないが、一般的に樹脂成分合計100質量部に対し、1〜1000質量部添加することができ、5〜800質量部添加することが好ましい。
【0033】
シリコーン樹脂組成物には無機質充填材の他に、1以上の添加物質を添加することができる。このような添加物質としては、例えば、拡散媒体、染料、フィルタ媒体、反射媒体、変換媒体の形をとることができ、例えば、発光染料、中空粒子、あるいは接着促進剤などが挙げられる。このような添加物質によって、特に、基板が反射性、透過性、あるいは吸収性を有するものとなる。このように1つまたは複数の添加物質を使用することによって、基板の設計上のオプションが増える。
【0034】
〔繊維強化材〕
繊維強化材としては、炭素繊維、ガラス繊維、石英ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維などの有機繊維、さらには炭化ケイ素繊維、炭化チタン繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維など、製品特性に応じていかなるものも使用することができる。好ましい繊維としてはガラス繊維、石英繊維、炭素繊維などである。中でも絶縁性の高いガラス繊維や石英ガラス繊維が特に好ましい。他の観点からは、繊維強化材としては、シリコーン樹脂組成物への良好な接着性と高い機械的負荷能力とを示す材料が特に好ましい。また、繊維強化材は、少なくともシリコーン樹脂組成物と同程度の耐熱性と、低い熱膨張係数とを有することが好ましい。
【0035】
特に、繊維強化材がガラス繊維であれば、良好な耐紫外線性および耐熱性を示す基版となる。さらには、ガラス繊維を使用することによって、繊維強化材と、シリコーン樹脂組成物との良好な接着が確保される。また、ガラス繊維は、安価で扱いやすい材料である。
【0036】
ここで、図2に基台1の樹脂層1a内の繊維強化材2の繊維層の繊維2’、2’’の方向を模式的に示す。図2に示すように、繊維強化材2は2層以上の繊維層を備えていることが好ましく、4つの繊維層を備えていることがより好ましい。また、繊維強化材2の各層の繊維2’、2’’は基台1の主面に平行な方向に沿って延びていることが好ましい。通常、繊維強化材の1つの繊維層の中では、複数の繊維が実質的に平行になるように向いており、繊維方向がそろっている。樹脂層が複数層からなる繊維強化材を備えている場合、それぞれの繊維層の繊維方向は互いに対して90°回転していることが好ましい。ここで、「回転している」とは、樹脂層の上面及び/又は下面に垂直な軸線を中心として個々の層中の繊維の向きが互いに90°回転していることをいう。
【0037】
繊維強化材の形態としては、特に制限されないが、長繊維フィラメントを一定方向に引きそろえたロービング、クロス、不織布などのシート状のもの、更にはチョップストランドマットなど、積層体を形成することができるものが好ましい。
また、繊維強化材はシリコーン樹脂により完全に囲まれたものとすることができる。このようなものであれば、繊維強化材がシリコーン樹脂により保護されて金属又は金属イオンが繊維に達しないため、例えば金属イオンが繊維に沿って移動することを防ぐことができる。
【0038】
〔電気的接続部〕
図1(A)(B)に示すように、本発明の光学半導体装置用基板10は、基台1の上面に、光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの電気的接続部3を有する。それぞれの電気的接続部3は金ワイヤー等を介して光学半導体素子に接続するように設計することができる。或いは、フリップチップ実装方式で光学半導体素子に接続するように設計することもできる。
電気的接続部3は、図1(B)に示すように、基台1の樹脂層1a側に形成された少なくとも樹脂層1aを厚さ方向に貫通した電気的接続部用凹部6の内面にメッキによって形成され、金属層1bと電気的に接続したものであることが好ましい。
【0039】
このようなものであれば、より放熱性に優れたものとなるし、金属層1bは他の基板の外部接続部と、例えばはんだ付け又は接着結合により電気的に接続可能なものとなり、基板の省スペースな電気接続構成が実現できる。この場合、本発明の光学半導体装置用基板10は、はんだ付け工程時に生じる熱応力に耐えるものであることが好ましい。このような光学半導体装置用基板であれば、例えば光学半導体素子や外部接続部との接続を歩留まり良く達成することが可能になる。この際、金属層1bは、外部接続部に接続させる上で互いに電気的に絶縁されている領域が形成されることが好ましい。
電気的接続部3の材質は、上記した素子搭載用凹部4内面のメッキ5と同様なものとすることができる。
【0040】
また、電気的接続部3及び上記金属層1bは1つの金属又は金属合金からなるものであっても、異なる金属又は金属合金からなる複数の層からなるものであっても良い。
例えば、電気的接続部3において、基台1に最も近い位置にある第1の層を銅層とすることが好ましい。第1の層の厚さは、好ましくは8μm以上500μm未満である。更に第1の層上に、ニッケル、パラジウム、金、銀のうちの少なくとも1つの第2の金属層を形成することができる。これらの層の厚さは、25μm未満が好ましく、5μm未満が特に好ましく、2μm未満が最も好ましい。特にニッケル−金の層を銅層上に形成する場合は500nm未満であることが好ましい。このような第2の層は、費用効果が高く、簡単な工程で形成することができ、さらには効果的に構造化することができる。
【0041】
[リフレクター構造、封止材ダム構造]
図6(A)に示すように、本発明の光学半導体装置用基板20は、基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造7を有するものとすることができる。リフレクター構造7を有するものであれば高光束なものとなる。リフレクター構造7は光学半導体素子を囲繞し、光学半導体素子からの光を反射する構造であれば特に限定されない。或いは、図6(B)に示す本発明の光学半導体装置用基板30のように、封止材ダム構造8を有するものであっても良い。封止材ダム構造8は光学半導体素子の搭載領域の周囲に形成され、光学半導体素子の封止時に封止材の流れを止め、封止材の形状を維持するためのものである。
【0042】
リフレクター構造、封止材ダム構造が熱硬化性樹脂であれば、基台1の樹脂層との接着性が向上されたものとなる。しかし、リフレクター構造、封止材ダム構造は樹脂成型によって構成されたものに限定されず、例えば、素子搭載用凹部4又は電気的接続部用凹部6の内面に形成するメッキを、その上端が基台表面より高くなるように形成してリフレクター構造、封止材ダム構造を構成することもできる。
【0043】
次に、本発明の光学半導体装置用基板の製造方法について説明する。
[樹脂層作製工程]
樹脂層作製工程では、繊維強化材にシリコーン樹脂組成物を含浸させ硬化させて樹脂層1aを作製する(図4のA)。樹脂層1aはプリプレグを少なくとも1層以上用いて硬化させて作製することが好ましい。プリプレグは溶剤法又はホットメルト法によって製造できる。シリコーン樹脂組成物、繊維強化材としては、上記光学半導体装置用基板で記載したものと同様のものを用いることができる。
【0044】
溶剤法を用いた場合では、シリコーン樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを繊維強化材に含浸させ、加熱により脱溶媒してプリプレグを製造する。プリプレグの厚みは使用する補強用繊維などの厚みによって決まり、基板を厚くしたい場合は補強用繊維を多く積層する。
より具体的には、シリコーン樹脂組成物の溶液または分散液に、ガラスクロスを含浸させ、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃の乾燥炉中で溶剤を除去することにより、シリコーンプリプレグを得ることができる。
【0045】
また、ホットメルト法を用いた場合では、固形のシリコーン樹脂組成物を加熱して溶かし繊維強化材に含浸させることでプリプレグを製造する。
このようにして製造したプリプレグを用いて樹脂層1aを作製する。この際、絶縁層の厚みに応じた枚数のプリプレグを重ね、加圧加熱して樹脂層1aとすることができる。
【0046】
[金属層形成工程]
金属層形成工程では、樹脂層1aの表面に金属層1bを接合して基台1を作製する(図4のB)。この工程は例えば以下のようにして実施できる。
樹脂層1aの下面に8〜500μmの金属箔を重ねて、5〜50MPaの圧力、70〜180℃の温度の範囲で真空プレス機等を用いて加圧加熱することによって金属層1bを接合する。この場合の金属箔としては特に限定されないが、銅、ニッケル、金、パラジウム、又は銀などを用いることができ、電気的、経済的な面から銅箔が好ましく用いられる。
【0047】
[素子搭載用凹部形成工程]
素子搭載用凹部形成工程では、上記で作製した基台1に素子搭載用凹部4を形成する(図4のC)。この際、素子搭載用凹部4は少なくとも樹脂層1aを厚さ方向に貫通するように形成する。素子搭載用凹部4の深さは特に限定されず、金属層1bの内部、例えば金属層1bの表面から数十μm以上の深さに到達するように形成しても良い。素子搭載用凹部4はダイパット又はワイヤーボンドパッドの面積の15%〜100%を占めていることが好ましい。素子搭載用凹部4は、例えば、ルータ等によって形成することができる。この際、必要に応じて電気的接続部用凹部6も形成することができる。
【0048】
[メッキ形成工程]
メッキ形成工程では、素子搭載用凹部4の内面にメッキ5を形成する(図4のD)。上記したように、電気的接続部3を電気的接続部用凹部6の内面にメッキによって形成する場合には、図4のDに示すように、素子搭載用凹部4の内面、電気的接続部用凹部6の内面、基台1の表面全てにメッキを形成し、後工程でこのメッキを電気的接続部3に形成するパターニング処理を行うようにしても良い。このようにすれば、メッキ形成工程及び後述する電気的接続部形成工程を容易に行うことができる。
【0049】
メッキする金属としては、上記光学半導体装置用基板で記載したものと同様のものを用いることができる。例えば、銅メッキを実施する場合、メッキ液内に亜鉛を適量混合しておくことが好ましい。これは亜鉛が触媒の役割を果たし、銅メッキの付着が促進される。メッキを形成する方法は特に限定されず、印刷法、ディップ法、蒸着、スパッタリング又は電気めっき法などを用いることができる。電気的接続部3と基台1との良好な接着を確保するために、基台1の電気的接続部の形成面は粗面化されていることが好ましい。
【0050】
[電気的接続部形成工程]
電気的接続部形成工程では、上記工程で形成したメッキを、光学半導体素子と電気的に接続される少なくとも2つの電気的接続部3に形成する(図4のE)。例えば、メッキをサブトラクト法や穴あけ加工などの通常用いられる方法により加工したり、エッチング処理することで電気的接続部3を有する基板(印刷配線板)を得ることができる。
電気的接続部用凹部6又は素子搭載用凹部4の内面に形成するメッキの上端が基台の表面より高くなるように形成することでリフレクター構造、封止材ダム構造を形成することもできる。
上記工程を経て、本発明の光学半導体装置用基板が製造される。
【0051】
電気的接続部形成工程後、必要に応じて熱硬化樹脂のレジスト9等の充填工程(図4のF)や、上記した大面積プリント基板の形態の光学半導体装置用基板から個片化された光学半導体装置用基板を得る場合には、ダイシングやルータによるカット工程(不図示)を行うことができる。
上記した方法では、光学半導体素子を収容して搭載するための素子搭載用凹部を形成する工程において、樹脂層の表面に金属層を接合した後の基台に素子搭載用凹部を形成したが、これに限定されず、金属層を接合する前の樹脂層に素子搭載用凹部に対応する貫通孔を形成し、その後、樹脂層と金属層とを接合しても良い。素子搭載用凹部形成工程において複数の凹部を形成する場合にはルータ等の装置にて律速されてしまうが、このような方法で素子搭載用凹部形成工程を行うことで工程時間を低減できる。この場合、樹脂層の貫通孔をカット金型による打ち抜きにより形成することができる。
【0052】
図5に上記工程にて製造される本発明の光学半導体装置用基板の例を示す。
図5の(A)では、素子搭載用凹部4の内面にメッキ5が形成され、メッキ5上の凹形状部内に光学半導体素子が収容され搭載される。また、電気的接続部用凹部6の内面に形成されたメッキから電気的接続部3が形成されている。
図5の(B)では、金属層形成工程後に基台上面に8〜500μmの金属箔13を重ねて、金属層形成工程と同様に5〜50MPaの圧力、70〜180℃の温度の範囲で真空プレス機等を用いて加圧加熱する工程を実施し、その後、素子搭載用凹部形成工程以降の工程を実施して得られた基板を示している。
【0053】
図5の(C)では、素子搭載用凹部形成工程を基台の下面側から実施し、その後、その下面に対してメッキ形成工程以降の工程を実施することで得られた基板を示し、素子搭載用凹部が下向きに配置されている。この場合、この基板を用いて製造された光学半導体装置が外部基板と搭載する際のはんだ付けにおいて、アンカー効果による接着強度の向上が期待できる。
図5の(D)では、金属層を接合する前の樹脂層に素子搭載用凹部4に対応する貫通孔を形成し、その後、樹脂層と金属層とを接合して得られた基板である。この基板では、素子搭載用凹部4の下端の位置は樹脂層の下端と同一となる。
【0054】
また、図6の(A)に示すように、基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造7、又は封止材ダム構造8を成型することができる。或いは、上記したように、メッキ形成工程において、素子搭載用凹部4又は電気的接続部用凹部6の内面に形成するメッキを、その上端が基台表面より高くなるように形成してリフレクター構造、封止材ダム構造を形成すれば、リフレクター構造又は封止材ダム構造の成型工程を省略し、低コスト化できる。
【0055】
次に、本発明の光学半導体装置について説明する。
図7に示すように、本発明の光学半導体装置11は、上記本発明の光学半導体装置用基板10の素子搭載用凹部4に光学半導体素子12を収容、搭載、封止して製造されたものである。本発明の光学半導体装置11は、本発明の光学半導体装置用基板を用いたものであるので、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性なものとなる。図7では、フェイスアップ型の光学半導体装置を示しているが、フリップチップ型の光学半導体装置であってもよく、この場合も同様に、機械的安定性が高く、かつ高耐久性、高放熱性のものとなる。
【0056】
〔リフレクター構造、封止材ダム構造〕
図8(A)に示すように、本発明の光学半導体装置21は、基台上に熱硬化性樹脂のリフレクター構造7を有するものである。リフレクター構造7を有するものであれば高光束なものとなる。リフレクター構造7は光学半導体素子を囲繞し、光学半導体素子からの光を反射する構造であれば特に限定されない。或いは、図8(B)に示すように、封止材ダム構造8を有するものであっても良い。封止材ダム構造8は光学半導体素子の搭載領域の周囲に形成され、光学半導体素子の封止時に封止材の流れを止め、封止材の形状を維持できる。このように、基台の表面に熱硬化性樹脂によるリフレクター構造もしくは封止材ダム構造を形成することで、より耐久性が向上した高機能の光学半導体装置31となる。
【0057】
リフレクター構造及び封止材ダム構造に用いる熱硬化性樹脂の例として、1)熱硬化性シリコーン樹脂組成物、2)トリアジン誘導体エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、無機質充填剤からなる熱硬化性エポキシ樹脂組成物、3)熱硬化性のシリコーン樹脂とエポキシ樹脂からなるハイブリッド樹脂(混成樹脂)組成物などが挙げられる。しかし、熱硬化性樹脂はこれらに限定されることはなく、最終的な光学半導体装置の使用用途に合わせて決定すれば良い。
【0058】
上記1)の熱硬化性シリコーン樹脂組成物としては、下記平均組成式(1)で表される縮合型熱硬化性シリコーン樹脂組成物などが代表的なものである。
Si(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、Rは同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
このほかに付加硬化型シリコーン樹脂組成物も使用できる。
【0059】
上記2)の熱硬化性エポキシ樹脂組成物のトリアジン誘導体エポキシ樹脂としては、1,3,5−トリアジン核誘導体エポキシ樹脂が耐熱性、耐光性などの観点から好ましい。熱硬化性エポキシ樹脂組成物はトリアジン誘導体、硬化剤としての酸無水物などからなるものに限らず、従来から公知のエポキシ樹脂やアミン、フェノール硬化剤なども適宜使用しても良い。
上記3)のシリコーン樹脂とエポキシ樹脂のハイブリット樹脂としては、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる共重合体などが挙げられる。
【0060】
上記シリコーン樹脂やエポキシ樹脂の組成物には、無機充填材を配合することができる。配合される無機充填材としては、通常シリコーン樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物等に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、ガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状充填材、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填材の平均粒径や形状は特に限定されない。
【0061】
本発明で使用する樹脂組成物には、二酸化チタンも配合することができる。二酸化チタンは、白色着色材として、白色度を高め、光の反射効率を向上させるために配合するものであり、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型のどちらでも構わない。また、平均粒径や形状も限定されない。二酸化チタンは、樹脂や無機充填材との相溶性、分散性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物等で予め表面処理することができる。
【0062】
二酸化チタンの充填量は、組成物全体の2〜30質量%、特に5〜10質量%が好ましい。2質量%未満では十分な白色度が得られない場合があり、30質量%を超えると未充填やボイド等の成型性が低下する場合がある。
【0063】
本発明の光学半導体装置は、例えば高耐久性や高放熱性が要求されている自動車産業機器の投影を目的とする照明装置や機器の存在を外部に知らせる標識灯として使用することができる。さらに一般家庭における室内用照明や液晶のバックライトにおいても使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
無機質充填材として酸化チタンを含むフェニル系シリコーン樹脂組成物をガラス繊維に含浸させた1枚当り70μmのシートを2層積層し、下面に200μmの銅層(金属層)を熱圧着させて基台を作製した。そして、ルータにより素子搭載用凹部及び電気的接続部用凹部を形成し、銅層の下面板厚100μmを残した状態にした。その後、無電解メッキにて基台の上面、素子搭載用凹部及び電気的接続部用凹部の内面の全面に銅メッキを形成した。その後、エッチング処理により基台上面に2つの電気的接続部を形成し、さらにその表面にNi/Pd/Auのメッキを施した金属被覆層を形成し、本発明の光学半導体装置用基板を得た。
【0066】
次に、基板の表面に対して100W/30秒にてプラズマ処理を実施し、その処理面に対してトランスファーモールドによりシリコーン樹脂組成物を用いてリフレクター構造を成型した。素子搭載用凹部内面のメッキ上の凹形状部内に光学半導体素子を収容して搭載した。リフレクター内のザグリ部にシリコーン系ダイボンド材(信越化学製:商品名632DA−1)をスタンピング塗布し、青色LEDチップ(Cree製TR350Mシリーズ)を搭載し、150℃4時間にて硬化させた。その後、直径30μmの金ワイヤーにて電気的接続部と青色LEDチップをワイヤーボンド接続した。
【0067】
その後、リフレクター内に、黄色蛍光体とシリコーン樹脂組成物(信越化学製:商品名KJR−9022)を混練したインナー材を武蔵エンジニアリング製ディスペンサーにて塗布後、150℃4時間にて熱硬化させた。熱硬化後、ダイシング工程を経て、個片化し、図8(A)に示すような本発明の光学半導体装置を得た。
【0068】
(比較例1、2)
FR−4基板(比較例1)、AlN基板(比較例2)を基台として用いた以外は実施例1と同様にして、光学半導体装置を作製した。
その後、実施例1、比較例1〜2で作製した光学半導体装置に対して、85℃/85%の高温高湿通電試験を実施し、100h、500h、1,000h初期光束値の変動状況を確認した。その結果を表1に示す。初期光束を100%とすると実施例1の光学半導体装置は、セラミックであるAlN基板(比較例2)の光学半導体装置と同程度の光束を維持した。
【0069】
【表1】
【0070】
さらに、実施例1、比較例1〜2で作製した光学半導体装置に対して、85℃/85%の高温高湿通電試験を実施し、100h、500h、1,000hの光学半導体装置の反射率の変動状況を確認した。その結果を表2に示す。初期反射率を100%とすると実施例1の光学半導体装置は、樹脂であるFR−4基板(比較例1)の光学半導体装置と同程度以上に反射率を維持できた。
【0071】
【表2】
【0072】
更に、実施例1で用いた光学半導体装置用基板と比較例1、2で用いた基板の熱伝導率を比較した。熱伝導率は、レーザーフレッシュ法により、室温25℃において測定を行った。結果を表3に示す。本発明の光学半導体装置用基板の熱伝導率は350W/mKとなり、従来のFR-4基板は0.6W/mK、AlN基板は150W/mKとなった。これにより、本発明の光学半導体装置用基板は、他の基板に比べ高い熱伝導率を有することが分かった。
【0073】
【表3】
【0074】
(実施例2、3)
リフレクター構造を成型する際に、トランスファー成型にてエポキシ樹脂(実施例2)又は、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂のハイブリット樹脂(実施例3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学半導体装置を作製した。
実施例2〜3にて作製した光学半導体装置に対し、85℃/85%の高温高湿通電試験を実施し、100h、500h、1,000h初期光束値の変動状況を確認した。その結果を表4に示す。基台の耐久性が高いため、2種類とも大きな光束の低下がなく、良好であることが分かった。
【0075】
【表4】
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0077】
1…基台、 1a…樹脂層、 1b…金属層、 2…繊維強化材、
2’、2’’…繊維、 3…電気的接続部、 4…素子搭載用凹部、
5…メッキ、 6…電気的接続部用凹部、 7…リフレクター構造、
8…封止材ダム構造、 9…レジスト、 10、20、30…光学半導体装置用基板、
11、21、31…光学半導体装置、 12…光学半導体素子、 13…金属箔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8