【実施例】
【0102】
一般的合成方法と試験手順
実施例2の表3に記載されるような約380g/当量〜約620g/当量の当量重量を有する1種以上のフッ素化イオノマーを約0.4重量%〜約4重量%含有するフルオロカーボン液体組成物を、微孔質膜支持体を被覆するために使用した。フッ素化イオノマーは、CF
2=CF−O−CF
2CF
2SO
2Fモノマー単位、テトラフルオロエチレン、式CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2のビス−オレフィン単位、およびヨード化連鎖移動剤I−(CF
2)
4−Iから誘導されたものであった。イオノマーは、メチルペルフルオロブチルエーテル(Novec(商標)HFE7100)のようなフルオロカーボン溶媒、Galden(登録商標)SV90のようなペルフルオロポリエーテル溶媒、またはこれらの組み合わせに溶解されていた。これらのイオノマー溶液は、Solvay Solexisから入手したものであり、使用前に、必要に応じて、0.45ミクロン、0.2ミクロン、またはさらに小さい定格細孔径のフィルター微孔質膜で濾過することもあった。HFE溶媒とともに被覆する際に使用することのあった、イオノマー、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンの組み合わせの非限定的な例を、表1に示す。各液体フルオロカーボン溶液は、希釈後に、0.6重量%Luperoxを含有した。
【0103】
【表1】
【0104】
LUPEROX(登録商標)101は、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(CAS 78−63−7)であり、Arkemaより市販されている。ビス−オレフィン架橋剤は、1,9−デカジエン,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,−ドデカフルオロ(CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2)(CAS 1800−91−5)であり、例えばApollo Scientific,Ltd.より市販されている。場合によっては、フッ素化イオノマー溶液を、追加のビス−オレフィン(イオノマー重量に基づき3重量%)および開始剤(Luperox(登録商標)101、イオノマー重量に基づき3重量%)と組み合わせ、HFE7100溶媒および/またはGalden(登録商標)SV90溶媒で希釈して、その溶液を被覆のために適切なイオノマー重量パーセント(0.4〜4%)にした。
【0105】
このイオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤との溶液を用いて、ポリマー微孔質膜支持体を被覆した。場合によっては、微孔質膜支持体を、米国特許第6,902,676号明細書に記載されているように含浸によって、そのイオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤との溶液で被覆した。場合によっては、微孔質膜支持体を、ロールを用いた機械的塗布によって、そのフッ素化イオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤溶液との溶液で被覆した。機械的塗布に関して、そのフッ素化イオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤との過剰な溶液を、例えばロール、スクィーズバー、またはスキージバーを用いて、不活性微孔質膜支持体から除去した。被覆微孔質膜から溶媒を除去し、密閉容器において、約140℃〜約180℃の温度にて、約10分〜約60分にわたり架橋/硬化を行った。
【0106】
ポリマースルホニル基(−SO
2F)の酸性スルホン酸基(−SO
3H)への変換を、硬化された被覆微孔質膜支持体を、約10重量%KOHのKOH水溶液中で、約70℃〜約85℃の温度にて約4時間〜約8時間またはそれ以上にわたって処理し、続いてこの被覆微孔質膜を脱塩水中で洗浄し、次いでこの被覆微孔質膜を、20重量%のHCl溶液または20重量%の硝酸のような強酸水中で、室温にて、約2時間〜約16時間にわたって処理することにより行った。次いで、この硬化され、活性化された微孔質膜複合材料を、脱塩水で洗浄した。
【0107】
次いで、この硬化され、活性化された微孔質膜複合材料を、約80℃〜約90℃の範囲にわたる温度の熱水中で、約30分間、または不要なアニオンおよびカチオンを膜から除去するのに充分な時間にわたって抽出した。
【0108】
イオノマー含有溶液で被覆された微孔質膜支持体は、厚さが約14〜約20ミクロンの範囲にわたり、製造(Gore)から得られたままで約0.02ミクロン〜約0.1ミクロンの範囲にわたる細孔径を含む。これらのPTFE微孔質膜は多層であり、0.1ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜;0.05ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜;0.03ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜;0.02ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜を含んだ。
【0109】
一部の多層膜について、沸騰、または熱水が約100℃の、清浄または抽出工程の間に、離層が生じるのが観察された。理論により拘束されることを望むものではないが、被覆膜において沸騰中に生じる水蒸気が、離層の原因であったのであろう。抽出液の温度をその沸点よりも低い温度に下げることにより、離層なしに多層微孔質複合材料膜を作製し得ることを発見した。
【0110】
流動時間および流動損失。流動時間は、所与の圧力、通常は14.2psi、すなわち97,905.5パスカルで、500mLのイソプロピルアルコール(IPA)または水などの他の液体が、微孔質膜支持体の直径47mm試料または微孔質膜複合材料の直径47mm試料を貫流する時間(秒)である。これらの結果は、微孔質膜複合材料の透過度に換算され得る。例えば、直径47mm微孔質複合材料膜試料について、14.7psi/atmの換算率を用い、透過度の単位をL/(時間×m
2×atm)とすると、11.5psiで670秒という水についての流動時間を有した0.02ミクロン定格PTFE膜は、約1979.6L/時間×m
2×atmの透過度と計算される。この微孔質膜は、1.3重量%イオノマーコーティング濃度の597g/当量EWのイオノマーで被覆された場合、水流動時間は725秒であったので、1829.4L/時間×m
2×atmの透水度と計算される。IPA流動損失試験については、Swinnexハウジング(Millipore Corp.)を、直径47mm微孔質膜支持体試料および微孔質膜複合材料試料のために使用した。水流動損失試験については、直径47mmのSavillexハウジングを、微孔質複合材料膜および微孔質膜支持体試料のために使用した。流動損失は、式:
流動損失=100×[1−((被覆されていない膜の平均流動時間)/(被覆された膜の平均流動時間))]
を用いて計算した。
【0111】
非脱湿潤性試験を、微孔質膜複合材料の非脱湿潤特性を特徴付けるために使用した。非脱湿潤性試験は、水を含むシール容器中で微孔質膜複合材料の試料をオートクレーブ処理することを含む。被覆微孔質膜複合材料試料をPFAホールダーに取り付け、IPAで予備湿潤した。被覆微孔質膜試料の水流動時間は、約11.5psi(79289.7Pa)で測定した。水温補正のために水温を測定し、結果を22.5℃での水流動時間として報告した。
【0112】
次に、温度を135℃に設定したオーブン中で、被覆微孔質膜複合材料試料をオートクレーブする。オートクレーブを、水中で1時間にわたって行い、次いで冷却させた。オートクレーブ処理した試料ディスクを、疎水性について検査する。微孔質膜複合材料が非脱湿潤性であれば、透明であるはずである。
【0113】
オートクレーブ処理した微孔質膜複合材料試料の水流動時間を、圧力約11.5psi(79289.7Pa)で測定する。水温補正のために水温を測定し、結果を22.5℃または約22.5℃の温度での水流動時間として報告した。
【0114】
湿潤性試験を、微孔質膜複合材料の表面エネルギーを特徴付けるために使用した。微孔質膜複合材料の表面を濡らすために使用した液体の組成を、微孔質膜複合材料の表面エネルギー(dyn/cm
2)に遡って関連付け得た。秤を用いて様々な重量パーセントのメタノールと水との溶液を作製する。これらのメタノール(MeOH)/水溶液の液滴を、微孔質膜複合材料の47mm試験試料に、試料の上方5cm以下の高さから適用する。試験試料膜が5秒以内に不透明から半透明に変化し、それにより膜がMeOH/水溶液で湿潤されたということが示される場合、微孔質膜複合材料は、その溶液で湿潤可能である。その微孔質膜複合材料試料の湿潤が生じなかった場合には、より多くの量のMeOHを含有する溶液を用いた。湿潤が生じた場合には、より少ない量のMeOHを含有する溶液を用いた。試料微孔質膜複合材料を、メタノールと水とを含有する様々な溶液を用いて評価した。試料を湿潤させた溶液中のメタノールの重量パーセントを報告した。
【0115】
デンシトメトリーを、約70℃〜約80℃の間の温度における、5000百万分率の3M(商標)Novec(商標)FC4432フルオロ界面活性剤を含有する熱イソプロピルアルコール浴と複合材料との貫流接触の前後の微孔質膜複合材料上のコーティングを特徴付けるために使用した。微孔質膜複合材料と、Solvay Solexisより入手可能なイオノマー当量重量850の非架橋フッ素化コーティングで被覆された比較の微孔質膜支持体とを、それらの被覆微孔質膜試料をメチレンブルー染料の0.1%水溶液中に膜表面の染色が生じるまで浸漬することにより、メチレンブルーで染色した。次いで、これらのメチレンブルー染色された、イオノマーの非架橋フッ素化コーティングを有する微孔質膜支持体、または微孔質膜複合材料試料を、順次、水、イソプロピルアルコール、次いで水中で、全て、その染色された微孔質膜試料から過剰な染料を除去するように撹拌しながら洗浄した。
【0116】
コントロールデンシトメーター読取りを、熱フルオロ界面活性剤含有IPAでの貫流処理の前に、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜試料の直径47mm試料上の任意の点で行った。デンシトメーターでの読取りは、DensiEye 700デンシトメーターを用いて行った。デンシトメーター読取り値の平均、標準偏差、および相対標準を計算した。デンシトメトリー読取りのためにサンプリングされた点の数(N)は限定されておらず、実施例において、読取りの数は、N=10程度〜N=20程度の範囲にわたった。
【0117】
メチレンブルー染色された被覆微孔質膜の直径47mm試料を、約17.4cm
2のディスク面積の、ステンレス鋼膜ホールダーに取り付けた。5000百万分率の3M(商標)Novec(商標)からのフルオロ界面活性剤FC4432を含有する、約70℃〜約80℃の温度の熱イソプロピルアルコール浴を、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜試料を通って再循環させた。この界面活性剤含有浴は、約200mLの容量のIPA/フルオロ界面活性剤浴から、4〜10時間にわたり、少なくとも80mL/分の流量で再循環させた。この流れは、細孔径によって、約80mL/分〜約120mL/分の範囲にわたり得た。いくらかの浴の減容が蒸発により生じたが、これは4時間で約11%であった。
【0118】
熱IPA/フルオロ界面活性剤の貫流後、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜試料をIPAで洗浄し、乾燥させた。DensiEye 700デンシトメーターを使用し、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料または試料の直径47mm試料上の任意の点で、デンシトメトリー測定を再度行った。接触または処理後のデンシトメーター読取り値の平均を計算した。
【0119】
熱IPAおよびフルオロ界面活性剤の浴との接触(処理)前のデンシトメーター読取り値の平均と、接触(処理)後のデンシトメーター読取り値の平均とを、スチューデントt検定により、従来から化学分析に用いられている限界である95%の信頼限界で統計的に比較し、両平均間の差異も決定した。
【0120】
実施例1
コポリマーは、米国特許第6,902,676号明細書に開示されている乳化重合手順に従い、TFEと式CF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2Fのビニルエーテルとを共重合させること、および予備架橋剤(pre−crosslinker)として式CH
2CH−C
6F
12−CHCH
2のビス−オレフィン、連鎖移動剤としてI−C
4F
8−I、そしてラジカル開始剤として過硫酸カリウムを用いることによって得た。次の表2に示される条件下で、コポリマーC1、C2、C3およびC4を得た。
【0121】
【表2】
【0122】
実施例2
本実施例は、本発明の変形例において使用されるコーティングフッ素化イオノマー溶液の調製を開示するものである。ヨウ素鎖末端を有する実施例1において調製された予備架橋ペルフルオロイオノマーを、部分的にフッ素化または過フッ素化された溶媒に、約4重量パーセントの最終濃度が得られるように溶解させた。次いでこの混合物を、10,000rpmで2時間にわたり遠心分離した。さらに、溶液の一つS2*は、20,000rpmでさらなる2時間にわたり遠心分離した。不溶性残留物を除去した後、次の表3に要約されるような物性を示す、澄んだ透明な液体を得た。
【0123】
【表3】
【0124】
40mgのコポリマーを0.6mLのヘキサフルオロベンゼンに溶解させた後、NMRによるコモノマーのモル百分率の決定後に、当量重量を計算した。
【0125】
イオノマーのヨウ素含量を、X線蛍光(XRF)により測定し、固有粘度を、Ubbelohde粘度計を使用して、30℃にて、Novec(商標)HFE−7100において測定した。粒度は動的光拡散法の適用により決定し、流体力学的半径を、ともにBrookhaven Instrument Co.の商業用計器であるゴニオメーターBI−200SMおよび相関器BI−9000ATによって構成される計器で測定した。レーザー源は、Spectra−Physics 2000シリーズ 2020モデル/Ar 15Wであった。明確な散乱信号を得るために、0.22ミクロンで濾過された高純度のNovec(商標)HFE−7100で、溶液を予め約10倍に希釈した。この構成により、光拡散係数を決定し、次いでこれを、Stokes−Einsteinの関係(Stokes−Einstein−Sutherlandの式としても知られる)により平均粒径と相互に関係付ける。上記の表に示されたような平均粒径をもたらす全ての測定を、ISO規格#13321に従って行った。さらに、これらの測定は、重み付き平均粒径に相当する「Z平均」平均値を提供する。それゆえに、得られた平均は、より大きい粒子画分によって支配され、したがって、溶液中の最大の粒子画分の信頼性の高い同定であると見なされ得る。
【0126】
実施例3
本実施例は、遠心分離後に観察される分別を開示するものである。575g/当量の初期EWを有し、溶解前に0.71重量%のヨウ素含量を有した、予備架橋されたコポリマーC2を、室温にて20時間にわたり、Galden SV90中で撹拌した。こうして得られた混合物を、10,000rpmで、20℃にて、2時間にわたり遠心分離し、次いで、20,000rpmで、20℃にて、さらに2時間にわたり遠心分離した結果、透明溶液S2*および固体残留物が得られ、それらを別個に分析した。当量重量(EW)およびヨウ素含量の決定に使用した方法は、実施例2の場合と同様であった。その分析の結果を、次の表4に要約する。
【0127】
【表4】
【0128】
溶解するコポリマーの当量重量は、不溶性残留物として分離されるコポリマーの当量重量よりもかなり低いということが指摘され得る。しかしながらヨウ素含量は、これら2つの相においてほぼ同じままである。
【0129】
実施例4
本実施例は、実施例2に記載されたようなフッ素化イオノマー(S1)溶液からの、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.3重量%、2重量%、および4重量%のイオノマー含量を含有するHFEベースのコーティング溶液で被覆された、Goreからの0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜についての、イソプロピルアルコール(IPA)の流動時間および(流動損失)測定値を記載するものである。このコーティング溶液は、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンも含有した。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン定格細孔径の微孔質膜を被覆した。この被覆された微孔質膜支持体を、コーティングを架橋するために、約30〜60分にわたって175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃のKOHで活性化し、続いて室温にてHNO
3処理を行い、次いで90℃の熱脱イオン(DI)水で洗浄した。流動損失試験を、微孔質膜複合材料の47mmディスクに対して行った。それを表5に要約する。
【0130】
【表5】
【0131】
これらの結果は、微孔質膜支持体上に塗布されるイオノマーのパーセントが増加するにつれて、微孔質膜複合材料についての流動損失パーセントが増加すること、および4%イオノマーの濃度においては、この多層多孔質膜を通るIPAの流動が全くないことを示している。4重量%のイオノマーを用いては、1つの例で、85%の流動損失が観察された(下記参照)。
【0132】
これらの結果は、被覆されていない微孔質膜支持体と比較して、71%以下または約71%以下のIPAに基づく流動損失パーセントを有する微孔質膜複合材料を、1.3重量%以下または約1.3重量%以下のコーティング溶液中のイオノマーのパーセント濃度を用いて作製し得たということを示している。これらの結果はまた、ベース膜と比較して、77%以下または約77%以下のIPAに基づく流動損失パーセントを有する被覆微孔質複合材料膜を、2重量%以下または約2重量%以下のコーティング溶液中のイオノマーのパーセント濃度を用いて作製し得たということも示している。これらの結果は、コーティング溶液中で用いられたイオノマーの濃度が減少するにつれて、微孔質膜複合材料の流動時間が減少したことを示している。
【0133】
表6の結果は、0.02ミクロン細孔径の微孔質膜支持体上にロールを用いてコーティング溶液を塗布することによって作製された微孔質膜複合材料について得られたものである。この微孔質膜は、多層PTFE膜(Gore)であり、コーティング溶液は、597g/当量イオノマー(S1)溶液を1.3重量%のイオノマー濃度で含んでいた。コントロール試料は、被覆されていない0.02ミクロン細孔径の微孔質膜であった。
【0134】
【表6】
【0135】
これらの結果は、0.02ミクロンの細孔径を有する微孔質膜を、その膜上にイオノマー溶液を塗布することにより被覆して、水中約40重量%メタノール〜水中約50重量%メタノールの間を有するメタノールと水との溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料を提供し得るということを示している。この微孔質膜複合材料は、水流動時間および47mmのディスク直径に基づき、両方のディスク試料について、1800L/atm×時間×m
2より高い計算透水度を有する。小さい細孔径の微孔質膜複合材料の高い透水性は、フィルターデバイス中で使用されるまたは必要とされる微孔質膜複合材料の領域を最小限にし、それにより濾過デバイスの費用および全体の大きさを削減し得るため、当該微孔質膜複合材料は濾過用途において有益である。
【0136】
実施例5
本実施例は、実施例2の(S3)溶液からの、1.3重量%および2重量%のイオノマー含量を含むHFE溶媒ベースのフルオロカーボン液体組成物コーティング溶液で被覆された、0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜(Gore)についての、イソロピルアルコール(IPA)の流動時間および(流動損失)測定値を記載するものである。このコーティング溶液はまた、一般的合成方法において記載されたように、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンも含有した。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン定格細孔径の微孔質膜を被覆した。この被覆膜を、コーティングを架橋するために、約30〜60分にわたって175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃のKOHで活性化し、周囲温度にてHNO
3で処理し、90℃の熱DI水で洗浄した。流動損失試験を、被覆され硬化された微孔質膜支持体の直径47mmディスクに対して行った。その結果は表7にある。
【0137】
【表7】
【0138】
本実施例は、微孔質膜支持体の液体接触表面および細孔上にロールを用いて塗布されるイオノマー濃度が増加するにつれて、IPA流動損失パーセントが増加するということを示している。
【0139】
これらの結果は、2重量%以下のフルオロカーボン液体組成物中イオノマー含量を用い、フルオロカーボン溶媒からのイオノマーのコーティングを微孔質膜支持体上に塗布することによって、69%(すなわち、82%未満)のIPA流動損失が達成され得たことを示している。百分率として同じイオノマー含量での流動損失パーセントは、実施例4におけるイオノマー(S1)についてよりも、イオノマー(S3)についての方が低かった。
【0140】
実施例6
本実施例は、実施例2の(S4)溶液を含み、0.75重量%、1重量%、1.3重量%、2重量%、および3.5重量%のイオノマー含量を含有するGalden溶媒ベース(溶媒の大部分はGalden SV90であるがLuperoxラジカル開始剤からの少量のHFE溶媒が存在する)のフルオロカーボン液体組成物で被覆された、0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜(Gore)についてのイソプロピルアルコール(IPA)の流動時間および(流動損失)測定値を記載するものである。一般的合成方法に記載されたように、開始剤およびビス−オレフィンを、このコーティング溶液に加えた。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン細孔径の微孔質膜支持体を被覆した。この被覆膜を、コーティングを架橋するために、約30〜60分にわたって175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃のKOHおよび周囲温度のHNO
3で活性化し、次いで90℃の熱DI水で洗浄した。流動損失試験を、微孔質膜複合材料および微孔質膜支持体の47mmディスクに対して行った。その結果は表8にある。
【0141】
【表8】
【0142】
本実施例は、コーティングを塗布することによって微孔質膜支持体内に適用されるイオノマー含量パーセントが増加するにつれて、IPA流動損失パーセントが増加することを示している。これらの結果はまた、コーティング溶液中1重量%のイオノマー含量を用いて、複数の試料について達成された流動損失についての良好な反復性(3%差)も示している。
【0143】
これらの結果は、3.5重量%のイオノマー濃度で微孔質膜を被覆することによって、51%(すなわち、82%未満)のIPA流動損失を達成し得たということを示している。同じイオノマー濃度パーセントにおける流動損失パーセントは、(S3)または(S1)のイオノマー溶液を含むフルオロカーボン組成物についてよりも、(S4)イオノマー溶液を含むフルオロカーボン液体組成物についての方が低かった。
【0144】
実施例7
本実施例は、0.03ミクロン細孔径の多層PTFE微孔質膜支持体を被覆するために用いられた、様々な当量重量イオノマーおよびイオノマー濃度についての湿潤性範囲、すなわち水中メタノール重量パーセントの範囲を示すものである。本実施例における架橋された被覆微孔質膜複合材料は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例1〜6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0145】
【表9】
【0146】
表9は、例えば、0.75重量%のイオノマー濃度を有する溶液で被覆された0.03ミクロン微孔質膜支持体を含む微孔質膜複合材料が、水中30重量%〜40重量%メタノールで湿潤可能な微孔質膜複合材料を提供するということを示している。同様の記載が、表9における他の結果についてもなされ得る。比較のために、0.785重量%の濃度の非架橋イオノマーで被覆された微孔質膜の湿潤性は約80〜85%MeOHであった。
【0147】
意外なことに、本実施例の結果は、微孔質膜支持体を被覆するために用いられた同じ重量パーセントのコーティング溶液中のイオノマーについて、イオノマーの当量重量が低いほど、微孔質膜複合材料を湿潤させそれを半透明にするために使用される必要がある、水中MeOHの量がより多くなるということを示している。
【0148】
0.5重量%〜少なくとも3.5重量%、または約0.5重量%イオノマー〜約3.5重量%イオノマーの範囲にわたり得るコーティング溶液中のイオノマーの濃度(重量%)、および458g/当量〜597g/当量、または約460g/当量〜約600g/当量の範囲にわたり得るイオノマーの当量重量に依存して、メタノールのパーセントが10重量%〜80重量%、場合によっては10重量%〜70重量%、他の場合においては20重量%〜60重量%、さらに他の場合においては20重量%から30重量%の範囲にわたるメタノールと水との溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料を作製した。
【0149】
本実施例の結果は、微孔質膜複合材料が水では直接的に湿潤されないということを示している。さらに、これらの結果は、コーティング溶液中のイオノマーのパーセント濃度が所与の当量重量について上昇するにつれて、膜を湿潤させるために使用される水中メタノールのパーセントも低下するということを示している。水溶液中のメタノールが少なくなるということは、イオノマー濃度が上昇するにつれて、被覆された微孔質膜複合材料の表面エネルギーが増加したということを示している。
【0150】
実施例8
本実施例は、含浸技術(米国特許第6,902,676号明細書)によってフッ素化イオノマーで被覆された多孔質膜の調製物と、ロールコーティングによって機械的に非晶質フッ素化イオノマーを多孔質膜全体にわたって塗布することにより調製した調製物とを比較するものである。これらの微孔質膜複合材料試料は、実施例2および実施例4において記載された、(S1)のフッ素化イオノマー前駆体と、架橋剤と、ラジカル開始剤とのコーティング溶液を用いて調製した。試料を、一般的合成方法における条件を用いて硬化させ、活性化させた。本実施例において、微孔質ベース膜支持体は、厚さ35ミクロンの、0.1ミクロン定格細孔径を有する、Goreより入手可能なPTFE微孔質膜であった。本実施例における被覆微孔質膜複合材料を、IPA流動時間および流動損失パーセントを測定することによって比較する。その組成および結果は表10にある。
【0151】
【表10】
【0152】
表10のデータは、含浸法が、フルオロカーボン液体組成物コーティングにおいてより低い重量パーセントのイオノマー濃度(イオノマー含量)を用いても、被覆された微孔質膜は流動損失パーセントの改善を平均してほとんど示さない結果となるということを示している。2重量%イオノマーおよび1重量%イオノマーで被覆された試料の間には平均流動損失においてわずか7%の差異しかなかった。4重量%イオノマー濃度での1つの例において、被覆微孔質膜上に疎水性箇所が観察された。
【0153】
【表11】
【0154】
微孔質膜中へのロールでのフッ素化イオノマー含有溶液の塗布は、表11に示されるように、コーティング中2重量%のイオノマーについては約55%の流動損失を、そしてコーティング中1重量%のイオノマーについては約36%の流動損失をもたらした。コーティング中4重量%のイオノマー濃度における1つの例で、85%の流動損失が観察されたが、他の試料においては、流動は全く観察されなかった。2重量%イオノマーコーティング溶液と1重量%イオノマーコーティング溶液との間の流動損失の差は19%であった。コーティング溶液中のイオノマー重量パーセントが減少するにつれて、湿潤性が低下した。
【0155】
表10および表11中のデータは、ロールでの微孔質膜支持体全体にわたるイオノマーの塗布が、概してより低い流動損失をもたらすこと、すなわち、1重量%のイオノマーを含有するコーティング溶液について、含浸法については58%となるのに対し、ロールコーティングについては36%となることを示している。さらに含浸法と比較して、ロール法については、流動減少パーセントがイオノマー濃度によってより激しく変化した。ロールでコーティング溶液を塗布することによって、より流動損失の低い被覆微孔質膜複合材料を作製し得た。両方法は、同様な湿潤性を有する微孔質膜をもたらした。
【0156】
実施例9
本実施例は、メタノール湿潤性(水中メタノール重量パーセント)と0.03ミクロン細孔径のPTFE微孔質膜支持体(Goreより入手可能)上のコーティングにおいて用いられたイオノマー濃度またはイオノマー含量(重量パーセント)との間の非線形の関係を説明するものである。微孔質膜支持体を、実施例2において記載されるような異なる当量重量の非晶質イオノマー(S1)597g/当量、(S3)512g/当量、および(S4)458g/当量を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆した。本実施例における複合材料膜は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例4〜6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0157】
図1に示されるように、(S3)を含有するフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料の湿潤性は、(S4)を含有するフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料と、(S1)を含有するフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料との間の中間にある。使用されるイオノマー濃度が減少するにつれて、(S3)イオノマーを用いて作製された微孔質膜複合材料を湿潤させるために用いられる水中メタノールの重量パーセントが増加することが予想される。
【0158】
本実施例の結果は、微孔質膜支持体を被覆するために用いられるコーティング溶液中のイオノマー濃度またはイオノマー含量(重量パーセントとして)が減少するにつれて、非線形的に湿潤性が低下するということを示している。
【0159】
図1の結果はまた、イオノマー当量重量が減少するにつれて、湿潤性が低下することも示している。例えば2重量%のイオノマー含量において、(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜は、(S3)溶液(水中約30重量%MeOHで湿潤可能)を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微細孔膜よりも、優れた湿潤性(水中約12重量%MeOHで湿潤可能)を有し、(S3)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微細孔膜は、(S4)溶液(水中約45重量%MeOHで湿潤可能)を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微細孔膜よりも湿潤性が高い。理論により拘束されることを望むものではないが、より低い当量重量イオノマーは、より高い密度の親水性基を有することが予想され、したがって親水性はより高いはずであるから、このことは意外である。
【0160】
実施例10
本実施例は、1.3重量%のイオノマー含量を有するように希釈された(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物についての流動損失パーセントを記載するものである。この液体組成物は、架橋剤およびラジカル開始剤を含む。このフルオロカーボン液体組成物を、微孔質膜支持体の表面および細孔表面上に塗布する。本実施例における微孔質複合材料膜は、先の実施例4において作製されたもの、あるいは実施例2からの溶液とともに、実施例4における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。IPA流動損失試験に関しては、47mm多孔質膜試料用のSwinnexハウジング(Millipore Corp.)を、試料微孔質膜複合材料を保持するために使用した。
【0161】
0.03ミクロン細孔径の多層微孔質膜に関しては、微孔質複合材料膜についての約3700秒のIPA流動時間、および被覆されていない微孔質膜支持体についての約1085秒の流動時間に基づき計算すると、その微孔質膜複合材料のIPA流動損失パーセントは、71%または約71%であった。また、この微孔質膜複合材料試料は、水中約24重量%のMeOHで湿潤可能であった。
【0162】
0.05ミクロン細孔径の多層微孔質膜支持体に関しては、500mLのIPAについての、微孔質膜複合材料についての約1300秒のIPA流動時間、および被覆されていない微孔質膜支持体についての約600秒のIPA流動時間から計算すると、その微孔質膜複合材料についてのIPA流動損失は、約55%であった。また、この微孔質膜複合材料試料は、水中約22重量%のMeOHで湿潤可能であった。
【0163】
単一保持層である、0.1ミクロン定格細孔径の微孔質膜支持体に関しては、微孔質膜複合材料についての約600秒のIPA流動時間、および被覆されていない微孔質膜支持体についての約350のIPA流動時間から計算すると、IPA流動損失は、約42%であった。また、この微孔質複合材料試料は、水中約18重量%のMeOHで湿潤可能であった。
【0164】
本実施例の結果は、流動損失が約71%以下であり、約25重量%以下のMeOHを有する水溶液中MeOHで湿潤可能な微孔質膜複合材料を、1.3重量%のイオノマー濃度で(S1)イオノマー溶液を含むフルオロカーボン液体組成物を用いて作製し得るということ、およびこの微孔質膜複合材料を、約0.03ミクロン〜0.1ミクロンの範囲の細孔径を有する微孔質膜支持体を用いて作製し得るということを示している。
【0165】
実施例11
本実施例は、架橋フッ素化イオノマーで被覆された0.1ミクロン微孔質膜支持体および0.03ミクロン微孔質膜支持体を含む微孔質膜複合材料に対して行った水流動損失および非脱湿潤性試験について詳述するものである。非脱湿潤性試験方法は、SavillexからのPFAホールダーに微孔質膜複合材料の直径47mm試料を取り付けることを含み、この微孔質膜複合材料を、IPAで予備湿潤させた。
【0166】
微孔質膜複合材料からIPAを流水洗浄した後、圧力約11.5psi(79289.7Pa)で水流動時間を測定した。温度補正のために水温を測定し、22.5℃での流動時間を下記の表に報告した。
【0167】
次に、微孔質膜複合材料試料を、シール容器中、水中でオートクレーブ処理した。このオートクレーブに用いられるオーブンを135℃の温度に設定し、試料を1時間にわたってオートクレーブ処理し、次いで冷却した。
【0168】
オートクレーブ処理された微孔質膜複合材料ディスクを疎水性について検査し、次いで、Savillexホールダーに取り付けた後、約11.5psi(79289.7Pa)で水流動時間を再測定した。温度補正のために水温を測定し、22.5℃での流動時間を報告した。
【0169】
水オートクレーブ前後の水流動時間、および非脱湿潤性結果を、様々な微孔質膜支持体細孔径、イオノマーコーティング溶液、および膜を被覆するために用いられたイオノマーの濃度(重量%)について、下記の表に要約する。本実施例における微孔質膜複合材料は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例2からの溶液を用いて実施例4および6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0170】
1重量%イオノマーを用いて被覆された(硬化、活性化および予備湿潤後の)直径47mmの0.1ミクロン細孔定格の微孔質膜試料の、11.5psi/22.5℃/500mL容量の水で測定された水流動時間は、465秒であった。これは、約2852L/atm×時間×m
2の透水度と計算される。
【0171】
表12の結果は、0.5重量%、0.75重量%、および1重量%の濃度のイオノマーが得られるように実施例2からの(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で、微孔質の0.03ミクロン細孔径の多層PTFE膜(Gore)を被覆することによって作製された微孔質膜複合材料について得たものである。非架橋は、架橋されていないイオノマーで被覆された微孔質膜であることを示す。
【0172】
【表12】
【0173】
表12の結果は、(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物を用いて作製された0.03ミクロン細孔径の多層微孔質膜複合材料が水オートクレーブ試験により非脱湿潤性であること、水流動時間がオートクレーブ後に架橋試料について減少し、計算透水度もオートクレーブ処理後に上昇するということを示している。水流動時間に基づく、これらの被覆微孔質膜複合材料についての計算透水度は、1000L/atm×時間×m
2より高く、場合によっては1200L/atm×時間×m
2より高い。
【0174】
表13の結果は、0.75重量%、1重量%、1.3重量%、2重量%、および3.5重量%のイオノマー濃度を有する組成物が得られるように(S4)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で、微孔質の0.03ミクロン細孔径の多層PTFE膜(Gore)を被覆することによって作製された微孔質膜複合材料について得たものである。非架橋は、架橋されていないイオノマーで被覆された微孔質膜であることを示している。
【0175】
【表13】
【0176】
表13の結果は、(S4)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物を用いて作製された被覆微孔質膜複合材料がオートクレーブ処理後に非脱湿潤性であることを示している。計算透水度は、特にオートクレーブ処理後の試料について、1000L/atm×時間×m
2より高い。場合によっては、水流動時間に基づく計算透水度は、1200L/atm×時間×m
2より高い。
【0177】
実施例12
本実施例は、異なる当量重量を有する異なるイオノマーの混合物を用いて調製された微孔質膜複合材料についての、メタノール湿潤性、イソプロピルアルコール流動時間、および流動損失を説明するものである。本実施例は、平均0.03ミクロンの細孔径を有するGoreからの多層PTFE微孔質膜支持体を使用する。フルオロカーボン液体組成物には、実施例2におけるフッ素化イオノマー溶液(S4)および(S1)からの、それぞれ約460g/当量および約600g/当量の当量重量を有するフッ素化イオノマーの、50:50の組合せまたは混合物が含まれる。微孔質膜支持体を、実施例4ならびに一般的方法および材料における方法により、ロールコーティングした。下記の表14は、(S4)および(S1)溶液の50重量%:50重量%混合物を含んだ1.3重量%のイオノマー混合物を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜支持体の湿潤性およびIPA流動時間を、同じく0.03μm細孔径の微孔質膜支持体(厚さ16ミクロン、4層)上に(S4)溶液および(S1)溶液からの1.3重量%のイオノマー含量を有する実施例4〜6において別個に調製された微孔質膜複合材料と比較している。(14.4psi=99284.5Pa)。
【0178】
【表14】
【0179】
表14の結果は、(S4)および(S1)からのフッ素化イオノマーの50:50混合物を含有する1.3%wt/wtコーティング濃度が、水中30%メタノールを含有する溶液での湿潤性および1880秒のIPA流動時間をもたらすことを示している。1.3重量%(S1/S4)微孔質膜複合材料は、水溶液中30重量%のメタノールで湿潤され、これは、(S1)のみを含む液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料を湿潤させるために用いられた溶液についての20重量%メタノール〜30重量%メタノールの範囲内にあり、(S4)のみを含む液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料の湿潤性(50重量%MeOH〜60重量%MeOH)よりも優れている。1.3%(S1/S4)微孔質膜複合材料についての流動損失パーセントは44%であり、これは、(S4)ベースの微孔質膜複合材料の流動損失(33%)より高く、単独の(S1)ベースの被覆微孔質膜複合材料の流動損失(71%)より低かった。
【0180】
これらの結果はまた、高表面積の微孔質膜支持体上のより低い当量重量の架橋イオノマーコーティングは、より高い当量重量の架橋イオノマーコーティングを用いて作製された同様のコーティングと比較して、湿潤性はより劣るが、より優れた流動損失特性を有することを示している。これは意外なことであった。低い当量重量の架橋イオノマーコーティングが濾過用途に適していた一方で、1種以上の低当量イオノマーおよび1種以上の高当量イオノマーの組合せを含む薄い架橋コーティングもまた、イソプロピルアルコール流動損失が82%以下の、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤された、かつオートクレーブ試験により非脱湿潤性である、被覆微孔質膜複合材料をもたらした。
【0181】
実施例13
本実施例は、微孔質膜支持体上で架橋されたフッ素化イオノマーのパーセントに伴う透水度の変化を示すものであり、この微孔質膜は、米国特許第6,902,676号明細書の実施例4および5の、40ミクロンの厚さを有するものである。この引用文献の実施例4は、厚さ40ミクロンの膜を0.2ミクロンの細孔径により特定した。この引用文献の実施例5は、厚さ40ミクロンの膜を多孔質であると特定しただけで、細孔径については開示しなかった。この引用文献における実施例2、7、11および比較実施例Dが、0.2ミクロンの多孔度を有する厚さ40ミクロンの膜を使用していることから、米国特許第6,902,676号明細書の実施例5についての細孔径もまた0.2ミクロンであったと、本実施例について想定した。
【0182】
図2に示されたこのグラフは、総重量(イオノマーおよびPTFE支持体)の33%〜総重量(イオノマーおよびPTFE支持体)の16%の間の588g/当量EWのイオノマーを含む米国特許第6,902,676号明細書における架橋された被覆多孔質膜について、予測透水度(y軸の単位はL/atm×時間×m
2)が、約25L/atm×時間×m
2〜250L/atm×時間×m
2の範囲にわたるであろうことを図示している(矢印はこれらの点を示す)。
【0183】
意外なことに、コーティングとして総重量(イオノマーおよび支持体、実施例13参照、下記参照)の約25%〜コーティングとして総重量の30%の間を有する本発明の一部の変形例における微孔質膜複合材料は、1000L/atm×時間×m
2(水流動時間に基づく)以上の透水度を有する。1000L/atm×時間×m
2以上の透過度は、それらの実施例における微孔質膜の細孔径が米国特許第6,902,676号明細書において使用された多孔質膜の0.2ミクロンの細孔径より小さいもの(0.1ミクロン〜0.02ミクロン)であっても、このグラフに示された線よりも上の点としてあるであろう。理論により拘束されることを望むものではないが、本発明において使用される高表面積の微孔質膜支持体上の架橋フッ素化イオノマーの薄いコーティングは、米国特許第6,902,676号明細書において使用された多孔質膜および方法と比較して、同様の重量付加量ではあるが、より高い透水性をもたらす。
【0184】
実施例14
本実施例は、約70℃〜約80℃の温度にて、80mL/分〜120mL/分の間の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触の前後における、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値を比較するものである。この流量は、膜細孔径および温度に応じて可変であった。フルオロ界面活性剤溶液の貫流接触を、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の47mm試料に対して行った。デンシトメーター測定は、微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料上の様々な点で行った。これらの測定値を、70℃〜80℃の間の温度の熱イソプロピルアルコール中に3M(商標)Novec(商標)からの5000ppmのフルオロ界面活性剤FC4432を含有する浴での染色試料の、貫流接触または処理の前後において記録した。架橋されていない過フッ素化イオノマーで被覆された微孔質膜もまた、デンシトメトリーにより評価した。
【0185】
微孔質膜複合材料試料は、ステンレス鋼の膜ホールダー内に保持した。使用した試料のディスク面積は、17.35cm
2(47mm)であった。界面活性剤を含む熱イソプロピルアルコール(IPA)を、約100mL/分〜約120mL/分の流量で、約200mLのレザバから膜試料を通って再循環させた。処理時間は、概して4時間であったが、1つの例で10時間の長さであった。
【0186】
本実施例における微孔質膜複合材料は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例4〜6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0187】
デンシトメーター読取りは、DensiEye 700反射率計を用いて行った。デンシトメーター読取り値を、スチューデントt検定により統計的に評価した。その結果を表15に示す。
【0188】
表15において、(S1)イオノマー含量(1.3重量%)を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料についてのデンシトメーター読取り値平均における−8.39%の差異は、熱IPA/フルオロ界面活性剤を用いた貫流後に測定されたデンシトメーター読取り値の平均が、熱IPA/フルオロ界面活性剤を用いた貫流なしのコントロール微孔質膜複合材料試料のデンシトメーター読取り値の平均と比較してより高かったということを示している。この試料は、記されたように、10時間にわたって処理されたものである。
【0189】
表15の結果は、非架橋の850g/当量の当量重量のイオノマーで被覆された微孔質膜について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均とは、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異なっており、これらの平均間の差異が、±9%より大きかったということを示している。
【0190】
【表15】
【0191】
表15の結果は、表15において597(S1)/(0.75)、597(S1)/(1),597(S1)/(1.3)10時間、597(S1)/(1.3)、597(S1)/(1.3)、および512(S3)/(2)の微孔質膜複合材料について示されているように、架橋フッ素化イオノマーで被覆された微孔質膜複合材料について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均との間の差異は、−9%〜9%の間であったということを示している。
【0192】
本実施例の一部の例においては、この表において597(S1)/(0.75)、597(S1)/(1)、597(S1)/(1.3)、および512(S3)/(2)の微孔質膜複合材料により示されるように、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均とは、±4%未満の差異を有していた。
【0193】
これらの結果は、597(S1)/(0.5)、597(S1)/(1.3)、512(S3)/(2)、および458(S4)/(1)の微孔質膜複合材料について示されているように、架橋イオノマーで被覆された微孔質膜複合材料について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均とは、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異ならなかったということを示している。
【0194】
これらの結果はまた、架橋イオノマーで被覆された微孔質膜複合材料について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均との間の差異は、例えば512(S3)/(2)および597(S1)/(1.3)の試料について、−9%〜9%の間であり、これらの平均は95%の信頼限界で異ならなかったということを示している。
【0195】
平均デンシトメーター読取り値の相対標準偏差を、微孔質膜複合材料上のイオノマーコーティングの均一性を特徴付けるために使用した。相対標準偏差は、標準偏差を平均で除することによって算出した。例えば、熱IPAおよび界面活性剤での処理前の、597(S1)/(0.05)試料についての相対標準偏差は0.29であり、458(S4)/(1)試料についての相対標準偏差は0.39であり、そして597(S1)/(1)試料についての相対標準偏差は0.054であった。これらの相対標準偏差は0.4未満である。
【0196】
実施例15
本実施例は、SC1浴中での処理前後の微孔質膜複合材料のイオン交換容量(IEC)を示すものである。微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体と、(Gore)からの0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜と、その微孔質膜支持体の細孔を含めた表面上に非晶質の架橋フッ素化イオノマーを含むある量のコーティングとを含んだ。本実施例における複合材料膜は、先の実施例4において作製されたもの、あるいは実施例4における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0197】
複合材料膜のIECを、SC1溶液への曝露前に測定した。次いで、微孔質膜複合材料試料を、80℃にて30分間(水:水酸化アンモニウム:過酸化水素の5:1:1 SC1溶液)中に浸漬した。約30分後に、その使用されたSC1溶液を、新しいSC1混合物と交換した(2半減期)。この手順を6回繰り返した。
【0198】
このSC1溶液中での処理に続いて、微孔質膜複合材料を、洗浄し、再生し、そして乾燥させた。イオン交換容量を、再度測定した。
SC1浴曝露前のIEC 158nM/cm
2
SC1浴曝露後のIEC 161nM/cm
2
【0199】
これらの結果は、膜のイオン交換容量が、SC1溶液中での処理前後で本質的に同じ、すなわち実験誤差の範囲内であったことを示している。理論により拘束されることを望むものではないが、0.03ミクロン微孔質膜支持体のより高い表面積が、次の実施例における0.1ミクロン膜に比べてより高いイオン交換容量(IEC)の理由であると考えられる(下記参照)。
【0200】
実施例16
本実施例は、実施例2からの(S1)溶液およびラジカル開始剤(3重量%)を含むフルオロカーボン溶液で被覆された微孔質膜複合材料についての、泡立ち点、イオン交換容量、および重量付加量を特徴付けるものである。表16に詳述されているように、コーティング溶液を含むこのフルオロカーボンは、0重量%〜4重量%の異なるイオノマー含量を有した。微孔質膜支持体上の架橋コーティングの効果を、不活性微孔質膜支持体の質量増加の変化(付加重量パーセント)、不活性微孔質膜支持体のIPA泡立ち点の上昇(泡立ち点は多孔質複合材料膜による粒子保持と相関関係にあり、より高い泡立ち点は同じ大きさの粒子に対するより高い保持力を示す)、および被覆微孔質膜支持体のイオン交換容量(IEC)により測定する。本実施例における複合材料膜は、先の実施例4において作製されたもの、あるいは実施例4における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって、実施例2における(S1)溶液を用い、約35ミクロンの総厚さを有する0.1ミクロン定格細孔径のPTFE微孔質膜上へのロールコーティングにより作製されたものであった。
【0201】
【表16】
【0202】
これらの結果は、微孔質膜支持体を被覆するためのコーティング溶液中で用いられるフッ素化イオノマーのパーセント濃度が上昇するにつれて、エアフローポロシメトリー(air flow porosimetry)による微孔質膜複合材料のIPA泡立ち点が上昇することを示している。上昇するIPA泡立ち点は、コーティング溶液中のイオノマーの濃度が上昇するにつれて、被覆された微孔質膜複合材料の細孔径が減少したことを示している。
【0203】
イオン交換容量(IEC)は、微孔質膜複合材料の直径47mmディスク試料に対する電位差滴定により決定した。本実施例における多孔質膜複合材料を作製するために用いられた(S1)からの1重量%〜4重量%のイオノマーを含むフルオロカーボン液体組成物について、IECは、約95nmol/cm
2〜約125nmol/cm
2の範囲内にあった。このIECは、実施例12におけるより小さい細孔径の膜についてよりも低い。
【0204】
この非晶質コーティングにより微孔質膜支持体に付加された重量パーセントは、約25重量パーセント〜約30重量パーセント、または25重量パーセント〜30重量パーセントである。
【0205】
実施例17
本実施例は、約40〜51dyn/cmの間の表面エネルギーを有した本発明の変形例における架橋微孔質膜複合材料の湿潤性と、約28〜32dyn/cmの表面エネルギーを有した非架橋イオノマーで被覆された表面変性0.03ミクロン微孔質膜の湿潤性とを比較するものである。架橋微孔質膜複合材料は、ビス−オレフィンおよび実施例2からの(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された0.03ミクロンPTFE微孔質膜支持体から調製した。フルオロカーボン溶液は、一般的合成方法および試験手順に従って、1.3重量%のイオノマー含量が得られるように溶媒で希釈した。
【0206】
【表17】
【0207】
表17の結果は、41dyn/cm以上の表面エネルギーを有する微孔質膜複合材料を、ある範囲の表面エネルギーを有する種々の処理化学物質で直接的に湿潤させ得るということを示している。場合によっては、湿潤はより遅かったが(5分以下)、この膜複合材料を、予備湿潤および溶媒廃棄物の発生なしに使用し得た。微孔質膜複合材料の表面エネルギーおよび適用液体の表面張力に依存して、本発明の変形例における微孔質膜複合材料を含有するフィルターは、水分を含まずに、または有機溶媒での予備湿潤の必要なしに、使用に向けて乾燥状態で梱包され、輸送され得る。これは、オートクレーブを無くすことおよび水分を含んで梱包されたフィルターにかかわる輸送費を無くすことによって製造費を削減し得、フィルター設置後の湿潤、流水洗浄および溶媒交換手順の間に生じる溶媒廃棄物を低減し得る。
【0208】
実施例18
本実施例は、0.75重量%、1重量%、1.3重量%の濃度の557g/当量の当量重量のイオノマー(S2)溶液を含むGalden(登録商標)SV90溶媒ベース(溶媒の大部分はGalden SV90であったがLuperox(登録商標)からの少量のHFE溶媒が存在した)のフルオロカーボン液体組成物で被覆された、Goreからの0.03ミクロン定格細孔径の多層微孔質PTFE膜についてのイソプロピルアルコール(IPA)流動時間および湿潤性を記載するものである。このコーティング溶液はまた、一般的合成方法に記載されるように、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンも含んだ。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン定格細孔径の微孔質膜を被覆した。被覆された微孔質膜を、コーティングを架橋させるために、約30分〜約60分間、175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃KOHおよび室温HNO
3処理により活性化し、次いで90℃の熱DI水で洗浄した。流動損失試験を、被覆膜の47mmディスクに対して行った。
【0209】
被覆されていないベース微孔質膜支持体の3つの試料の平均流動時間は、1050秒であった。これを用いて流動損失パーセントを計算し、その結果を表18に示した。
【0210】
【表18】
【0211】
表18の結果は、コーティング溶液中のイオノマー重量パーセントが増加するにつれて流動時間が増加するということ、およびコーティング溶液中のイオノマー重量パーセントが増加するにつれて微孔質膜複合材料の湿潤性がより高くなるということを示している。流動損失パーセントはコーティング溶液中に用いられているイオノマーのパーセントによって決まり、0.75重量%の557当量重量イオノマー(S2)についての平均67%の流動損失から、1重量%の557当量重量イオノマー(S2)についての平均74%の流動損失、1.3重量%の557当量重量イオノマー(S2)についての平均82%の流動損失の範囲にわたった。
【0212】
実施例19
本実施例は、多孔質多層膜支持体を被覆する非架橋イオノマーの、イオン交換容量をはじめとする特性を示すものである。
【0213】
アンモニウム型の0.79重量%に希釈されたAquivion(商標)溶液(非架橋性イオノマー)を、Solvay Solexisから受け取ったままで使用した。この希釈コーティング溶液を、スクィーズバーを使用して、Goreからの0.05ミクロン細孔径のPTFE膜上に被覆した。このコーティングを、175〜180℃にて硬化させた。
【0214】
この被覆多孔質膜の水オートクレーブ処理された試料は、透明に見えた。この被覆多孔質膜の乾燥させた試料は、水中70重量%〜75重量%メタノールの溶液で湿潤される。
【0215】
正圧11.5psi、22.5℃、500mL容量の水でのオートクレーブ前後の水流動時間は、465秒および487秒であった。オ−トクレーブ後の流動時間に基づき、平均脱湿潤は5.4%であった。
【0216】
平均イオン交換容量は、59.6nmol/cm
2または0.03601mmol/gであった。
【0217】
実施例20
本実施例は、イオノマーおよび架橋剤を含む溶液で微孔質膜を含有するフィルターデバイスをコーティングし、デバイス中の微孔質膜支持体表面および細孔上で架橋させるためにそのコーティングを硬化させ、活性化させることを説明するものである。
【0218】
Entegris Inc.(Chaska,MN)からの4インチChemline(登録商標)Iフィルターデバイスを、被覆のために使用した。Chemline(登録商標)I微孔質膜支持体は、20nm細孔径のPTFE膜であった。この微孔質膜支持体を、一般的合成手順に記載されたように、Solvay Solexisからの約557g/当量の当量重量を有するイオノマー(S2)で被覆した。コーティング溶液は、250g(150mL)の4重量%架橋性イオノマー557g/当量溶液(S2)およびビス−オレフィン;100gのHFE−7100中Luperox 101ラジカル開始剤(94% Arkema)18.6g、Galden SV90溶媒−2150g(1360mL)を含み、最終フルオロカーボン液体組成物コーティング溶液中のイオノマー含量は、0.4重量%であった。このコーティング溶液を、フィルターハウジング内の膜に重力流下で適用し、次いで、20ポンド毎平方インチの圧力の空気をこのデバイスに通して排水口から出すことを1分間行った。硬化を、175℃の温度に設定したオーブン中で、シールされたデバイスに対し2.5時間にわたって行った。IPAで予備湿潤させたデバイスに対する活性化は、重力流下で供給される1Lの10%KOHからなった。このデバイスを塞ぎ、80℃の温度に設定したオーブン中で16時間にわたって加熱する。冷却し、KOHを排出させ、pHが11より小さくなるまで重力流下で、水で流水洗浄する。20%HNO
3を重力流下でデバイス内に流入させ、2時間にわたり室温にて浸透させる。フィルターデバイスおよび膜を、pHが3より大きくなるまで水で洗浄および流水洗浄する。デバイスに水1Lを貫流させる。このデバイスを塞ぎ、90℃の温度に設定したオーブン中で4時間にわたって加熱する。冷却し、排水する。このフィルターデバイス中の被覆された膜、すなわち微孔質膜複合材料の流量を測定する。排水し、105℃の温度に設定したオーブン中で、デバイスを2日間にわたって乾燥させる。
【0219】
コーティング変性前のフィルターデバイス中の微孔質膜支持体(20nm細孔径)の水流動試験は、1.0ガロン毎分/ポンド毎平方インチ(GPM/psi)(1.02psid/GPM)であった。フィルター中の微孔質膜支持体を、この水流動試験の前に、IPAで予備湿潤させ、水で流水洗浄した。
【0220】
イオノマーを含む溶液での被覆、硬化、活性化、および抽出後のフィルターデバイス中の微孔質膜複合材料の、水流動試験を行った。このデバイスを、IPAで予備湿潤させ、水で流水洗浄した。測定された水流動は、0.6GMP/psi(1.6psid/GPM)であった。このフィルターデバイスユニットを、この試験後に乾燥させた。
【0221】
湿潤性/コーティング均一性を、微孔質膜複合材料を含有する乾燥したデバイスについて測定した。50重量%メタノール/水混合液を含有する1.0Lの溶液を、乾燥したデバイス中に流す。排水し、約3Lの水で流水洗浄し、水流動を測定する。50%MeOH/水で湿潤させた後の水流動は、0.6GPM/psiであった。これは、IPAで予備湿潤させた被覆デバイスからのものとほぼ同じ水流動であり、コーティングが、微孔質膜支持体全体にわたって均一であったということを示している。もし被覆されていないまたは疎水性の箇所があれば、それは50重量%MeOH/水溶液によって湿潤されないだろうし、0.6GPM/psiより低い水流動値に繋がっていたであろう。
【0222】
これらの結果は、0.4重量パーセントのイオノマー含量が得られるように(S2)溶液から生成されたフルオロカーボン液体組成物を使用して、フィルターデバイス中の膜支持体を均一に被覆し得たということを示している。イオノマーの他のコーティング重量パーセント、例えば0.3重量%イオノマーまたは0.2重量%イオノマーもまた、フィルターデバイス中の膜支持体を被覆するために用い得、そのコーティング均一性を、本実施例において示された試験手順によって証明し得る。
【0223】
実施例21
本実施例は、イオノマー、ラジカル開始剤、および架橋剤を含むフルオロカーボン液体組成物溶液で微孔質膜支持体をフロースルーコーティングし、続いて微孔質膜支持体表面および細孔上で架橋させるためにそのコーティングを硬化させ、活性化させて、微孔質膜複合材料を形成することを説明するものである。
【0224】
フロースルー表面変性は、Goreより入手可能な20nm細孔径のPTFE膜に対して行った。20nmPTFE微孔質膜の直径47mmディスクを、50mL Savillexハウジング中に装填した。変性されていない微孔質膜支持体試料のIPA流動時間もまた測定し、記録した。
【0225】
微孔質PTFE膜支持体を被覆するために用いたイオノマー溶液、ラジカル開始剤、および架橋剤を含むフルオロカーボン液体組成物は、0.25重量%イオノマーおよびジオレフィン、0.35重量%イオノマーおよびジオレフィン、ならびに0.45重量%イオノマーおよびジオレフィンという3つの異なるイオノマー濃度を用い、一般的合成方法に従って調製した(SM後の流動損失が平均25%であり、水中40重量%MeOHで湿潤され、1.14の色濃度(Cd)を有した微孔質膜複合材料をもたらした(S2*)については、0.1重量%にまで希釈されたコーティング溶液を用いた)。
【0226】
4重量%イオノマーの、ジオレフィンを含有する架橋性イオノマー溶液を、Solvayから受け取ったままで使用した。これらのイオノマー溶液は、Galden SV90溶媒またはHFE7100(3M)溶媒中のものであった。ラジカル開始剤は、純度94%のLuperox−101(Arkema)であった。本実施例におけるイオノマーは、実施例2の表からの溶液S1、S2、S2*、およびS3であった。
【0227】
Savillexハウジング中の直径47mm微孔質PTFE膜試料の表面変性(SM)は、イオノマーと、ラジカル開始剤と、架橋剤とのコーティング溶液をそのSavillexハウジングに充填し、そのコーティング溶液を正圧3.2psi(22,063Pa)で微孔質膜に貫流させることによって作製した。被覆のために微孔質PTFE膜を通過するコーティング溶液の容量は、2.5mL未満であった。過剰なフルオロカーボン液体組成物コーティング溶液は、Savillexハウシングから排出させた。本実施例における微孔質膜複合材料上のコーティングの平均質量を、その微孔質膜複合材料の総重量の約3.5%であると決定した。
【0228】
被覆された膜を、175℃の温度に設定したオーブン中で60分間にわたって加熱することにより硬化させ、架橋させた(Savillexハウジング中の被覆された膜支持体)。硬化されたコーティングの加水分解(活性化)は、10%KOHでハウジングを満たし、Savillexハウジングの両側を塞ぎ、80℃の温度のオーブン中で9時間にわたって加熱することにより加水分解し、RT(室温)まで冷却し、次いでKOHを排出させ、pH<11となるまで水で洗浄することにより行った。(活性化)再生は、20%HNO
3でSavillexハウジングを満たし、Savillexハウジングを塞ぎ、室温で2時間にわたって膜を浸漬させることにより達成した。この20%硝酸をハウジングから排出させ、pH>3となるまで膜およびハウジングを水で流水洗浄した。抽出は、脱イオン水でハウジングを満たし、45〜50分にわたって90℃の温度のオーブンに入れ、RT(室温)まで冷却し、排水することにより行った。この膜を、約30〜45分間または乾燥するまで、125℃の温度のオーブン中のSavillexハウジングに入れておくことにより乾燥させた。
【0229】
HFE−7100溶媒中のフルオロカーボン液体組成物である実施例2の表3のS1およびS3を用い、本実施例における方法によって作製された被覆膜は、IPAが貫流できない被覆膜となった、すなわち、これらの試料は閉塞された(結果は示していない)。Galden SV−90(Gal)溶媒中のフルオロカーボン液体組成物である実施例2の表3のS2およびS2*を用い、本実施例における方法によって作製された被覆膜は、IPAが貫流できる被覆膜となった。湿潤性(膜を完全に湿潤させるための水混合物中のメタノールの重量%)、14.2psiで47mmディスクを通る500mLについてのIPA流動時間である流動時間(秒)、流動損失%の測定、およびメチレンブルー染料試験(色濃度測定を用いてコーティングの存在を決定するために使用される)を、Galden SV−90中イオノマーを用いて作製された被覆膜試料に対して行った。これらの結果は、表19および表20にある。
【0230】
【表19】
【0231】
【表20】
【0232】
本実施例の結果は、表面変性後の流動損失パーセントが、本実施例における被覆膜について、35%〜84%の範囲にわたったことを示している。16nm粒度のコーティング粒子についての表面変性後の流動損失パーセント(表20参照)は、コーティング中のイオノマー重量パーセントに依存して、約35%〜56%の間であった。同じイオノマー重量パーセントについて、流動損失は、37nm粒子(表19)についてよりも16nm粒子(表20)についての方が、平均してより低かった。
【0233】
Galden SV−90溶剤中のイオノマーで被覆された膜についてのメチレンブルー染料試験結果を、下記の表21に示す。1より高い青色染料の色濃度の値は、非常に優れたコーティングの存在を示している。下記の結果は、微孔質膜複合材料試料毎に10個のデンシトメーター測定値の平均に基づいている。下記の表中の結果は、全ての試料上のコーティングの存在を示している。
【0234】
【表21】
【0235】
種々の溶媒中に様々な粒度のイオノマー粒子を含むフルオロカーボン液体組成物を、微孔質膜支持体の表面および細孔上に(例えば、ロールコーティングにより)塗布して、先の実施例に示されたように82%以下の流動損失を有する微孔質複合材料膜を提供し得る。本実施例の結果は、溶媒特性が、フロースルーコーティング方法とともに使用され得る約50nm以下のイオノマー粒子を含むフルオロカーボン液体組成物を提供して約82%以下の流動損失を有する微孔質膜複合材料を形成するのに重要であるということを示している。本実施例におけるGalden SV−90のような溶媒中に分散させた16nmおよび37nmのイオノマー粒子は、フロースルー塗布とともに使用することができる上、約82%未満の流動損失を有する微孔質膜複合材料をもたらした。本実施例の方法および材料を使用して、フルオロカーボン液体組成物に適した他の溶媒を決定し得た。膜支持体上の架橋コーティングでの表面変性後に約82%未満の流動損失を有する本実施例における微孔質膜複合材料はまた、水中約20重量%メタノール〜水中約30重量%メタノールを含有する溶液で湿潤可能であった。より高いイオノマー濃度、すなわち0.25重量%に対して0.45重量%は、被覆微孔質膜複合材料を僅かに湿潤に優れたものとしたが、より高い流動損失を犠牲にした。
【0236】
実施例22
本実施例は、実施例17の微孔質膜複合材料が、SPM浴のような浸食性の環境において安定であるということを示すものである。本実施例におけるSPM試験浴は、硫酸と過酸化水素との容量で5:1の混合物である。このSPM洗浄浴混合物を、被覆されたChemline(登録商標)フィルターを通して供給し、この浴の温度を、約150℃の所定の処理温度に調節した。Chemline(登録商標)フィルターを通るSPM浴の流量は、約10〜11L/分であった。
【0237】
約52時間(1日に6.5時間で8日間)にわたるSPM処理後、この被覆されたChemline(登録商標)フィルターを切り開き、各構成要素を、本明細書に記載されるようにメチレンブルーで染色した。
図3は、上流側支持材、コア膜層、および下流側支持材を含む実施例20の被覆されたChemline(登録商標)フィルターの、メチレンブルー染料で染色された各要素を示す写真を描いた線画である。
【0238】
図3における描写図は、メチレンブルー染料による膜の均一な呈色を示している。均一性および陰影強度は、この膜複合材料が非脱湿潤性であることを示している。本実施例は、微孔質膜複合材料コーティングがSPM浴中で安定であるということ、およびこのコーティングがSPM浴のような浸食性の環境における長時間の使用の後でも安定であるということを示している。
【0239】
これらの非限定的な実施例は、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な、熱いIPA中フルオロ界面活性剤での処理前の被覆膜のデンシトメーター読取り値の±9%以内である熱いIPA中フルオロ界面活性剤での処理後のデンシトメーター読取り値を有する、架橋フッ素化イオノマーで被覆された非脱湿潤性の微孔質膜複合材料を作製し得るということ、およびこれらの微孔質膜複合材料は、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づく平均82%以下の流動損失(圧力約14.2psi(約97905Pa)での500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)を有するということを示している。さらに、これらの微孔質膜複合材料は、0.45ミクロン未満の細孔を有し、微孔質膜支持体の細孔を含めた表面上に非晶質の架橋フッ素化イオノマーを含むある量のコーティングを有する微孔質膜支持体を含む。微孔質膜複合材料の中には、約60nmol/cm
2より高いイオン交換容量、場合によっては95nmol/cm
2以上のイオン交換容量、一部の変形例においては160nmol/cm
2以上のイオン交換容量を有するものもある。本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、99nmol/cm
2〜161nmol/cm
2の間のイオン交換容量を有している。
【0240】
これらの非脱湿潤性の微孔質複合材料を、ある範囲のイオノマー当量重量およびある範囲のコーティング溶液中のイオノマー量を用いて作製し得る。380g/当量〜620g/当量の間、場合によっては458g/当量〜597g/当量の間、他の変形例においては約460g/当量〜約600g/当量の間の当量重量を有するイオノマーを用い得る。当量重量、流動損失、および湿潤特性に依存して、コーティング溶液中のイオノマーの濃度は、約0.1重量%〜約3.5重量%、一部の変形例においては0.25重量%〜3.5重量%、さらに他の変形例においては約0.25重量%〜約3.5重量%の間、なおさらに他の変形例においては1重量%〜2重量%、または約1重量%〜約2重量%の間のイオノマーの範囲内にあり得る。
【0241】
これらの実施例における微孔質膜複合材料は、フィルターデバイスにおいて様々な支持体と様々な構成で組み合わせ得る。微孔質膜複合材料は、1つ以上の支持層またはネットとともにひだをつけられ、ケージ、支持体、およびエンドキャップ構造物を用いて詰められて、種々のフィルターカートリッジを形成し得る。このカートリッジは、交換可能であってもよいし、ハウジング内に結合されていてもよい。微孔質膜複合材料が中空糸である場合には、1本以上の中空糸が詰められて、デバイスを形成し得る。微孔質膜複合材料を含むフィルターは、種々の気体または液体送達システム(例えば、フォトレジストまたは現像液または反射防止膜ディスペンスポンプ)中に組み込まれ得、そうした液体を基板との接触前に濾過するために使用され得る。これらのディスペンスシステムは、フィルターと流体接続されたディスペンスポンプ、および分配ポイントにおけるバルブまたはノズルを含み得る。あるいは、微孔質膜複合材料を含むフィルターは、ポンプ、フィルター、および洗浄液が入ったタンクを含む、循環洗浄ツールまたは枚葉式洗浄ツール中に含まれ得る。
【0242】
本発明を、そのある特定の変形例および実施例に関してかなり詳細に説明してきたが、他の変形例も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書中に含まれる記載および変形例に限定されるべきではない。