特許第5771146号(P5771146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771146改善された晶出挙動を有するポリエステルジオール系ポリウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771146
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】改善された晶出挙動を有するポリエステルジオール系ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   C08G18/42 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-527311(P2011-527311)
(86)(22)【出願日】2009年9月16日
(65)【公表番号】特表2012-503051(P2012-503051A)
(43)【公表日】2012年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2009062019
(87)【国際公開番号】WO2010031792
(87)【国際公開日】20100325
【審査請求日】2012年9月13日
(31)【優先権主張番号】08164554.1
(32)【優先日】2008年9月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヴェンホルスト,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】プリソク,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ジェランガー,リヨネル
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも一種のイソシアネートA、
ii)少なくとも一種のポリエステルジオールB、並びに
iii)必要に応じて鎖延長剤C、及びさらなる助剤に基づくポリウレタンであって、
上記ポリエステルジオールBが、偶数の炭素原子を有するジカルボン酸、及び奇数の炭素原子を有するジオールに基づくポリウレタンであって、
前記ポリエステルジオールBを構成するジカルボン酸がセバシン酸であり、
前記ポリエステルジオールBを構成するジオールが1,3−プロパンジオールであり、更に
前記ポリエステルジオールBのジカルボン酸及び/又はジオール、及び/又は前記鎖延長剤Cが、非化石原料由来であることを特徴とするポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリエステルジオールBを形成するジカルボン酸が下記式:
【化1】
[式中、nはであり、
mは、0であり、
Rは、炭素原子数が1〜18のアルキルである]
で表わされ、且つ
前記ポリエステルジオールBを構成するジオールが下記式:
【化2】
[式中、xはであり、
yは0であり、
は、炭素原子数が1〜18のアルキルである]
で表わされる請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)である請求項1又は2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
前記イソシアネートAが2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メチル]シクロヘキサン(H12MDI)からなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリエステルジオールBがプロパンジオールセバケートである請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリエステルジオールBの分子量が500〜4000g/molである請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項7】
前記ポリエステルジオールBが、28〜224のOH価を有するプロパンジオールセバケートである請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項8】
前記ポリエステルジオールBが、56〜112のOH価を有するプロパンジオールセバケートである請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項9】
得られるポリウレタンが透明である請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項10】
得られるTPUの、tanδとして測定されるガラス転移温度が、比較用に得られる、前記ポリエステルジオールBにおける直上位の偶数の炭素原子数のジオール及び/又は奇数の炭素原子数のジカルボン酸を有するTPUのガラス転移温度より小さい請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項11】
少なくとも1種の、炭素原子数が24〜34である脂肪酸及び/又はその脂肪酸のエステル及び/又はアミド、又は
アルキレンジアミンとa)1種以上の直鎖脂肪酸との反応生成物及びアルキレンジアミンとb)12−ヒドロキシステアリン酸との反応生成物の混合物、及び/又はアルキレンジアミンとc)12−ヒドロキシステアリン酸及び1種以上の直鎖脂肪酸との反応生成物
を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリウレタンを、成形品、押出品、又は不織品の製造のために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタン(TPU)とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンや熱可塑性ポリウレタンは古くから知られており、幅広く使用されている。例えば、ポリウレタンは、履物産業や自動車産業で自己支持性フィルム/シートやケーブル被覆として使用され、またレジャー器具として、またブレンド成分としていろいろ使用されている。
【0003】
商業的には、石油化学系原料の全部または一部が再生可能な資源からの原料で置き換えられたポリウレタン製品に対する需要が高まっている。例えば、セバシン酸は植物油(ヒマシ油)から得られる再生可能な原料である。しかしセバシン酸エステルは結晶化しやすく、これは多くの用途に望ましくなく、多くの用途での使用が困難となっている。US−A−5695884には、高結晶性の熱可塑性ポリウレタンにセバシン酸系のポリエステルポリオールを使用することが開示されている。US2006/0141883A1とUS2006/0121812にも、セバシン酸系のポリエステルポリオールの高融点繊維用のポリウレタンでの使用が述べられている。WO00/51660A1には、セバシン酸系ポリエステルポリオールを用いる、心臓カテーテル用のポリウレタンが記載されている。ここでも、十分な硬度が求められる。US2007/0161731A1とUS6395833B1には、ポリウレタン化学で使用するためのポリエステルポリオールの製造にセバシン酸が用いられていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US−A−5695884
【特許文献2】US2006/0141883A1
【特許文献3】US2006/0121812
【特許文献4】WO00/51660A1
【特許文献5】US2007/0161731A1
【特許文献6】US6395833B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、明らかに低結晶性であるポリエステルジオールを提供することである。特にこれらは透明な熱可塑性ポリウレタンの製造に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、本目的が、
i)少なくとも一種のイソシアネートA、
ii)少なくとも一種のポリエステルジオールB、並びに
iii)必要に応じて鎖延長剤C、及びさらなる助剤に基づくポリウレタンであって、
上記ポリエステルジオールBが、偶数の炭素原子を有するジカルボン酸、及び奇数の炭素原子を有するジオールに基づいていることを特徴とするポリウレタンで達成できることを見出した。
【0007】
炭素原子数を決めるにあたり、ジカルボン酸のカルボキシル基の間に直接存在する炭素原子と、ジオールのOH基の間に直接存在する炭素原子のみを数え、分岐内の炭素原子は数えないこととする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ある好ましい実施様態においては、このジカルボン酸は、下記式で表わされる:
【0009】
【化1】
【0010】
式中、
nは偶数であり、特に2、4、6、8、10、12、14、又は16であり、
mは、0または1〜2nの整数であり、好ましくは0、1、又は2であり、
Rは、炭素原子数が1〜18のアルキルである。
【0011】
また、ジオールは、下記式で表わされる:
【0012】
【化2】
【0013】
式中、
xは奇数であり、特に1、3、5、7、又は9であり、
yは0または1〜2xの整数、好ましくは0、1、又は2であり、
は、炭素原子数が1〜18のアルキルである。
【0014】
本発明のポリウレタンは、驚くべきことに低結晶性と高透明性を示し、分岐状のジオールが、いわゆる軟質相結晶化の明らかな抑制に寄与している。非分岐のジオールが特に好ましい。もう一つの好ましい実施様においては、分岐状ジオールが非分岐ジオールと共に用いられ、一般的には全ジオールに対して50モル%を超える非分岐ジオールが用いられている。
【0015】
他の好ましい実施様態においては、本発明のポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0016】
他の好ましい実施様態においては、得られるポリウレタンが透明である。
【0017】
他の好ましい実施様態においては、本発明のポリウレタンの動的機械分析(DMA)で求めたガラス転移温度が、比較用に得られる、上記ポリエステルジオールBにおける直上位の偶数の炭素原子数のジオール及び/又は奇数の炭素原子数のジカルボン酸を有するポリウレタンのガラス転移温度より低い。
【0018】
ある好ましい実施様態においては、ポリエステルジオールの分子量が、500〜4000g/molであり、より好ましくは800〜2500g/mol、さらに好ましくは1000〜2000g/mol(OH価で28〜224、好ましくは112〜56mg−KOH/gに相当する)である。他の好ましい実施様態においては、ポリエステルジオールB中のジカルボン酸がセバシン酸である、他の好ましい実施様態においては、ジオールが1,3−プロパンジオールである。特に好ましい実施様態においては、このポリエステルジオールBがプロパンジオールセバケートである。
【0019】
好ましく高温減圧で、好ましくは既知の触媒の存在下で行われる、相当するジオールと少なくとも一種のジカルボン酸との重縮合によるポリエステルジオールの製造方法は公知であり、数多くの記載がある。
【0020】
ポリウレタンの製造方法もまた公知である。例えば、熱可塑性ポリウレタンは、(a)イソシアネートと(b)分子量が500〜10000g/molであるイソシアネート反応性化合物と、必要に応じて、(c)分子量が50〜499g/molである鎖延長剤とを、必要に応じて(d)触媒及び/又は(e)通常の助剤の存在下で反応させて得られる。
【0021】
本発明によれば、好ましい熱可塑性ポリウレタンは、イソシアネートAとポリエステルジオールBと、必要に応じて他のイソシアネート反応性化合物と、必要に応じて鎖延長剤Cとを、必要に応じて触媒D及び/又は通常の助剤Eの存在下で反応させて製造される。なお、この際にセバシン酸プロパンジオールが特に好ましく用いられる。
【0022】
本発明のポリウレタンを、プレポリマーの中間段階を経て得ることもできる。初めにポリマーの不完全鎖を形成して、エンドユーザーの加工が、特にイソシアネート成分の加工が簡単となるようにする。このようにして得られる不完全反応型の出発原料は、例えば靴底の製造において非常に重要な系であるといわれている。
【0023】
ポリウレタンの製造に通常用いられる成分AとBとCとD及び/又はEの例を以下に示す。
【0024】
a)使用可能な有機イソシアネートAとしては、芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族イソシアネート、好ましくはジイソシアネートがあげられ、具体的には、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3、3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)、2,6−ジイソシアナトヘキサンカルボン酸エステル、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(HXDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−及び/又は−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4’−,2,4−及び2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、好ましくは2,2’−,2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メチル]シクロヘキサン、及び/又はIPDIがあげられ、特に4,4’−MDl及び/又はヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はH12MDIがあげられる。
【0025】
b)初めに記載のポリエステルジオールBは、イソシアネート反応性化合物として用いられる。必要に応じて、他の公知のイソシアネート反応性化合物が使用可能であり、その例としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオール(これらはすべで「ポリオール」という名の範疇に入る)で、分子量が500〜12000g/mol、好ましくは600〜6000g/mol、特に800〜4000g/molで、好ましくは平均官能基数が1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2であるものがあげられる。本発明のポリエステルジオールBが、用いられるポリオールのすべてであることが好ましい。
【0026】
c)有用な鎖延長剤Cとしては、公知の脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物であって分子量が50〜499g/molのもの、好ましくは二官能性化合物があげられ、具体的には、アルキレン基の炭素原子数が2〜10であるアルカンジオールが、好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び/又は炭素原子数が3〜8のジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカ−アルキレングリコール、好ましくは非分岐のアルカンジオール、特に1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールがあげられる。
【0027】
d)特にジイソシアネートAのNCO基と成分Bとの間の反応を加速させるのに好適な触媒Dは、公知の第三級アミン、具体的にはトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N.N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ−(2,2,2)オクタン等であり、また特に、有機金属化合物、具体的にはチタンエステルや、鉄(III)アセチルアセトネートなどの鉄化合物、スズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート、またはジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウレートなどのスズジアルキルの脂肪族カルボン酸塩などのスズ化合物等があげられる。これらの触媒は、100重量部のポリヒドロキシ化合物(b)に対して、通常0.00001〜0.1重量部の量で用いられる。
【0028】
e)構造成分A〜Cと触媒Dに加えて、通常の助剤Eが含まれていてもよい。例としては、発泡剤や表面保護物質、難燃剤、核剤、潤滑剤や離型助剤、染料と顔料、例えば加水分解や光、熱、または変色に対する安定剤、無機及び/又は有機充填材、強化剤、可塑剤、金属不活性化剤があげられる。用いる加水分解調整剤は、好ましくはオリゴマー状及び/又は高分子状の脂肪族または芳香族カルボジイミドである。本発明のポリウレタンの老化を防止するために、このポリウレタンが安定剤を含んでいることが好ましい。本発明の目的の安定剤は、有害環境の作用からプラスチックまたはプラスチック混合物を保護する添加物である。例としては、第一級及び第二級の酸化防止剤や、チオ相乗剤、有機三価リン化合物、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解調整剤、失活剤、難燃剤があげられる。市販の安定剤の例が、プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additive Handbook)、第5版、H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), p.98−p.136に記載されている。本発明のポリウレタンが使用中に熱酸化的損傷の恐れのある場合には、酸化防止剤を添加してもよい。フェノール性酸化防止剤を用いることが好ましい。フェノール性酸化防止剤の例は、プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additive Handbook)、第5版、H. Zweifel, ed, Hanser Publishers, Munich, 2001, pp.98−107 and p.116−p.121に記載されている。700g/molを超える分子量のフェノール性酸化防止剤が好ましい。好ましく用いられるフェノール性酸化防止剤の一例は、ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(イルガノックス(登録商用)1010)または対応する酸化防止剤から形成される他の高分子量縮合物である。これらのフェノール性酸化防止剤は、通常、ポリウレタンの総重量に対して0.1〜5重量%の濃度で、好ましくは0.1〜2重量%、特に0.5〜1.5重量%の濃度で使用される。非晶質または液体の酸化防止剤を用いることがさらに好ましい。本発明のポリウレタンは、その好ましい組成により、例えばフタル酸または安息香酸で可塑化されたポリウレタンより明らかに紫外線照射に対して安定であるが、フェノール性安定剤だけでの安定化は、多くの場合不十分である。このため、紫外光に暴露される本発明のポリウレタンは、UV吸収剤でさらに安定化することが好ましい。UV吸収剤は、高エネルギーの紫外光を吸収してそのエネルギーを消散させる分子である。工業的に広く使用されているUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアノアクリレート、オキサミド(オキシアニリド)の群に属するものであり、特に、2−エトキシ−2’−エチルオキシアニリドや、ホルムアミジン、ベンジリデンマロン酸エステル、ジアリールブタジエン、トリアジン、ベンゾトリアゾールである。市販のUV吸収剤の例が、プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additive Handbook)、第5版、H. Zweifel, ed, Hanser Publishers, Munich, 2001, pp. 116−122に記載されている。ある好ましい実施様態においては、このUV吸収剤の数平均分子量が、300g/molより大きく、特に390g/molより大きい。また、好ましく用いられるUV吸収剤の分子量は、5000g/mol以下であり、より好ましくは2000g/mol以下である。ベンゾトリアゾール類は、特にUV吸収剤として有用である。特に有用なベンゾトリアゾールの例としては、チヌビン(R)213や、チヌビン(R)328、チヌビン(R)571、チヌビン(R)384、またエバソルブ(R)82があげられる。これらのUV吸収剤は、ポリウレタンの総質量に対して好ましくは0.01〜5重量%の量で、より好ましくはポリウレタンの総重量に対して0.1〜2.0重量%、特に0.2%〜0.5重量%の量で添加される。酸化防止剤とUV吸収剤による上記のUV安定化では、本発明のポリウレタンのUV光の有害な影響に対する安定性を保障するのに十分でないことが多い。この場合は、上記の酸化防止剤とUV吸収剤に加えて、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を成分Eとして添加することが好ましい。ある特に好ましいUV安定化剤は、それぞれ上記の量のフェノール性安定剤とベンゾトリアゾールとHALS化合物の混合物である。しかしながら、これらの安定剤の官能基を複合してもつ化合物、例えば立体制約のあるピペリジルヒドロキシベンジル縮合生成物、例えばジ(1,2.2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネートやチヌビン(R)144を用いることもできる。
【0029】
特に好適なものとして、ポリウレタンの工業生産だけでなくその加工において重要な機能を果たしているワックス類があげられる。ワックスは、摩擦を軽減させる内部および外部潤滑剤であり、ポリウレタンの流動特性を向上させる。また、これは、ポリウレタンが周辺の材料(例えば金型)に付着するのを防止する剥離剤として、また他の添加物質、例えば顔料やブロッキング防止剤の分散剤として作用すると言われている。好適なのは、例えば、ステア燐酸エステルやモンタンエステルなどの脂肪酸エステルやその金属石鹸や、ステアリルアミドやオレアミドなどの脂肪酸アミド、またはポリエチレンワックスである。用いる熱可塑性樹脂性ワックスの概要が、H. Zweifel編、プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additives Handbook)、第5版、Hanser Verlag, Munich 2001, pp. 443 ff., EP−A 308683や、EP−A670339、JP−A5163431に記載されている。
【0030】
DE−A19607870に記載のようにエステルとアミドとを組合せて用いることで、モンタン酸と脂肪酸誘導体からなる特定のワックス混合物とを使用することで(DE−A19649290)、あるいはDE102006009096A1に記載のようにヒドロキシステアリルアミドを使用することでも、改善が可能である。
【0031】
ある特に好ましい実施様態では、望ましくは物質を吸収及び/又は放出する傾向が低いポリウレタンの場合には、DE−A−19706452に記載の炭素原子数が24〜34である脂肪酸及び/又はこれらの脂肪酸のエステル及び/又はアミドが用いられ、その際、この脂肪酸及び/又はその誘導体は、ポリイソシアネート重付加生成物の総重量に対して0.001〜15重量%の重量比で用いられる。
【0032】
他の好ましい実施様態では、EP−A−1826225に記載のような、アルキレンジアミンとa)一種以上の直鎖脂肪酸との反応性生物、及びアルキレンジアミンとb)12−ヒドロキシステアリン酸との反応性生物の混合物、及び/又はアルキレンジアミンとc)12−ヒドロキシステアリン酸及び一種以上の直鎖脂肪酸との反応生成物を用いる。したがって、この混合物は、アルキレンジアミンとa)、b)及び/又はc)との反応生成物を含む。
【0033】
上述の助剤のさらなる詳細は、技術文献に、例えばプラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additive Handbook)、第5版、H. Zweifel Ed., Hanser Publishers, Munich, 2001に開示されている。本引用文献中の分子量の単位は、すべて[g/mol]である。
【0034】
他の好ましい実施様態においては、上記ポリエステルジオールBのジカルボン酸及び/又はジオール、及び/又は上記鎖延長剤Cが、非化石原料由来のものである。
【0035】
ポリウレタンの製造は、既知の方法でバッチ運転または連続運転として実施可能であり、例えば反応押出機を使用して、ワンショットによるベルト法あるいはプレポリマー法で実施可能であり、好ましくはワンショット法で実施可能である。これらの方法において、反応成分のAとB、また必要に応じて加えられる成分C、D及び/又はEは、逐次であるいは同時に混合可能であり、反応は直ちに進行する。押出機法では、構造成分AとB、また必要に応じて加えられる成分C、D及び/又はEを、押出機中に個別に導入するか混合物として導入し、例えば100〜280℃の温度で、好ましくは140〜250℃の温度で反応させ、得られるポリウレタンを、押出後、冷却してペレット化させる。
【0036】
通常はペレット状または粉末状である本発明のポリウレタンの、所望の自己支持性フィルム/シートや、成形部品、ローラー、繊維、自動車のライニング、ホース、ケーブルプラグ、ベローズ、ドラグケーブル、ケーブル被覆、ガスケット、ベルト、または衝撃吸収部品への加工は、常法により、具体的には射出成型、カレンダ加工または押出し成型により行われる。本発明の方法によって得られる熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは皮膜や、ケーブル、建物や輸送機の床、プラグコネクター、太陽モジュール、自己支持性フィルム/シート、成形部品、靴底や靴の部品、ローラー、繊維、自動車のライニング、形材、積層物やワイパーブレード、ホース、ケーブルプラグ、ベロース、ドラグケーブル、ケーブル被覆、ガスケット、不織布、ベルト、または衝撃吸収部品は、冒頭に記載した利点を有している。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
真空下で、表1に示すジカルボン酸とジオールとを、ジカルボン酸/ジオール比率が約1/1で反応させた。次いで、このポリエステルジオールを、撹拌下でブタンジオール鎖延長剤と混合した。続いて溶液を80℃に加熱後、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を添加し、溶液が均一となるまで攪拌した。
【0038】
得られたポリウレタンの結晶化温度を次のようにして測定した。
【0039】
軟質相のガラス転移温度Tgは、動的機械分析(DMA)で求めた。なお、tanδの最大値がガラス転移温度Tgに相当する。DMA測定は、レオメトリックサイエンティフィック(ARES)社の装置を用いて行った。測定は、DIN−EN−ISO6721に準じて行った。
【0040】
下の表1に示す数値が得られた。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
この結果より次のことが明らかである。
【0045】
・表1中の実施例1〜5(1、3、5は比較用)を比較すると、ジオールの長さが増加するにつれてガラス転移温度が上昇することがわかる。この効果は、一般的には軟質相結晶化と記載されている。驚くべきことに、本発明の実施例2は、明らかに軟質相結晶化の傾向が小さい。軟質相結晶化が増加すると、その材料がより不透明となり、より低い耐低温衝撃性を示す。
【0046】
・実施例2、6及び8(ポリエステルジオールB中にプロパンジオール)のそれぞれを、実施例(比較用)3と7と9(ポリエステルジオールB中にブタンジオール)と比較すると、プロパンジオール系の本発明のポリエステルジオールは、類似の条件下では、ブタンジオール系のポリエステルジオールより結晶化において優れており、より大きな分子量を持つポリエステルジオールBのテストプレートが透明であり、ブタンジオールからのそれが不透明であることがわかる。
【0047】
・ポリオールの分子量が増加すると、当業者はこの効果が増大すると考える。このために、表1に加えて、表3中の実施例10と11を調製した。驚くべきことに、本発明の実施例10の軟質相結晶化への傾向は、実施例2のそれよりさらに小さい。軟質相結晶化傾向が低いため、実施例10のテストプレートは透明であり、実施例11(比較用)のテストプレートは不透明である。