【実施例1】
【0024】
本実施例では、比較的短時間で酸化膜除去ができるダイレクト式大気圧プラズマ処理部をダイボンダの線はんだ供給ユニット511に搭載した例を説明する。
【0025】
図2は、本実施例のダイレクト式大気圧プラズマ処理部9をダイボンダ50の線はんだ供給ユニット1(
図1の線はんだ供給ユニット511に相当)に搭載し、シュート3内の基板4に線はんだ2を所定の量ずつ供給する様子を示す正面の断面図である。
【0026】
線はんだ供給ユニット1は、線はんだ2をシュート3に送り出す。シュート3に送り出された線はんだ2は、線はんだ供給ユニット1の下へ搬送された基板4と接触する。基板4は搬送中にヒータ57で加熱されて高温になっているため、線はんだ2が基板4に接触した段階で溶解し、基板4上にはんだ部5が形成される。
【0027】
ここで、基板4は、例えば銅(Cu)、または銅の表面に銀(Ag)やニッケル(Ni)をめっきしたような金属である一般的には導体と呼ばれる導電性の高い材質からなる物体である場合もあるし、また、セラミクスのような導電性の低い材質からなる物体である場合もある。
【0028】
線はんだ供給ユニット1は、スプール6、送り機構部7、線はんだ供給ノズル8、ダイレクト式大気圧プラズマ処理部9を有する。スプール6は、線はんだ2を糸巻き様に収納する。送り機構部7は、スプール6にある線はんだ2をノズル8へと送り出す。ダイレクト式大気圧プラズマ処理部9は、ノズル8を通して送られる線はんだ2の表面にあるスズ酸化膜などの酸化膜を還元除去する。
【0029】
ダイレクト式大気圧プラズマ処理部9は、絶縁体10、高電圧電極11、誘電体12、大気圧プラズマ発生領域13、交流高圧電源14、を有する。
【0030】
本実施例のダイレクト式大気圧プラズマ処理部9は、線形状はんだ2が基板4に供給されるまでの途中経路に搭載される。
図2に示した構成ではダイレクト式大気圧プラズマ処理部9は、シュート2の外に搭載されているが、シュート3の内部、またはシュート3の内部から外部のスプール6側にわたる領域に搭載してもよい。
【0031】
次に、
図2を用いて、実施例1に係る形態のダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の構成及びその作用を詳しく説明する。
【0032】
11は第1の電極であり、交流高圧電源14の一端に接続されて高周波電力が印加される電圧印加電極である。交流高圧電源14の他端は、接地されている。電圧印加電極11は、例えばアルミニウム(Al)またはステンレススティールのような金属で形成され、一般的には導体と呼ばれる導電性の高い材質からなり、ノズル8の外周部を囲むように円筒状に形成されている。
【0033】
ノズル8の内部に供給された線はんだ2は、第2の電極として、電圧印加電極1と対向して設けられた接地電極として作用する。また、線はんだ2は、プラズマ処理の対象となる被処理物でもある。線はんだ2は、一般的にははんだと呼ばれるスズを含む合金からなる棒状の物体である。本実施例では、線はんだ2はスズを主体とする200〜300℃程度の融点を有する材料で構成されていることを想定している。
【0034】
12は、電圧印加電極11に設けられた誘電体である。誘電体12は、アルミナ、ガラス、またはポリイミドなどの絶縁体からなり、ノズル8の外周部を囲むように形成された円筒状の物体である。誘電体12の厚みは、誘電体バリア放電を実現するために、好ましくは0.1〜5mmとする。厚みが薄すぎると誘電体バリア放電が不十分になり、ストリーマ、またはアーク放電が起こりやすくなる。厚すぎると、電圧印加電極11と線はんだ2間の空間に発生する電界が減少し、プラズマを発生させる為に必要な印加電圧が増大してしまう。
【0035】
次に、電圧印加電極11、誘電体12、線はんだ2の位置関係の詳細を説明する。
図3は、
図2の領域15における拡大図である。電圧印加電極11の長さは、その端部が誘電体12より短くするのが好ましい。電圧印加電極11が誘電体12より外側に出ると、外側に出た端部において誘電体によるバリアがされない。その場合、電圧印加電極11と線はんだ2間にてアークまたはストリーマ放電が発生してしまう。また、電圧印加電極11と誘電体12との端部が同じ程度の位置にあっても、わずかな隙間を経由して、電圧印加電極11と線はんだ2間にアークまたはストリーマ放電が発生することがある。
【0036】
図4Aは、
図2の面16での断面図である。線はんだ2と誘電体12とのギャップt1は、好ましくは0.5〜5mmとする。t1が0.5mmより小さい場合、交流高圧電源14の出力電圧が増加側に変動する、または線はんだ2が曲がった状態でダイレクト式大気圧プラズマ処理部9に供給される条件が重なると、誘電体12と線はんだ2間に発生する電界が更に高くなる。結果として、誘電体12と線はんだ2間にストリーマまたはアーク放電が発生することがある。t1が5mmより大きい場合、誘電体12と線はんだ2間の空間に発生する電界が減少し、プラズマを発生させる為に必要な印加電圧が増大してしまう。
【0037】
10は、プラズマ発生領域13に対向する面を除き、高電圧印加電極11の周囲に設けられた絶縁体である。絶縁体10は、誘電体12と同様に、アルミナ、ガラス、またはポリイミドなどの絶縁体からなる物体であるが、厚みについては好ましくは10mm以上とする。これは、厚みを十分大きくすることにより電気絶縁性を高め、絶縁体10の周囲に高い電界が発生しないようにするためである。その結果、高電圧印加電極11と線はんだ2との間の空間、すなわちプラズマ発生領域13のみに高い電界を発生させることができ、プラズマが発生する領域を限定することができる。
【0038】
6は、電圧印加電極11と線はんだ2との間に、1kV以上の高電圧を印加できる交流高圧電源であり、電圧印加部である。交流高圧電源6の周波数は、30kHz以上1000kHz未満が好ましい。
【0039】
30kHz未満の場合、発生するプラズマの密度が低い為に、線はんだ2の表面に形成された酸化膜の除去速度が低い。ここで、電源周波数が酸化膜除去速度へ与える影響を、実験結果により説明する。本実施例1のダイレクト式大気圧プラズマ処理部9において、交流高圧電源14の出力周波数を30kHz以下にした場合の線はんだ2の酸化膜除去速度を評価した。評価条件は以下の通りである。処理試料の線はんだ2は、SnAg3Cu0.5からなる外径1mmの棒とした。誘電体12は、パイレックス(登録商標)ガラスからなる内径4mm、外径5mmの円筒体とした。電圧印加電極は、銅(Cu)からなる内径φ5.1mmの円筒体とした。処理ガスは、窒素(N2)+水素(H2)(4%)とし、ガス流量は、2slmとした。電源は、サイン半波状の電圧波を出力する交流高圧電源とし、その出力周波数は12〜30kHzとした。電源による印加電圧は、ストリーマ、またはアーク放電が起こらない範囲おいて、高い電圧を印加するようにした。プラズマ処理前後での線はんだ2のスズ酸化膜(SnOx)厚をSERA(Sequential Electrochemical Reduction Analysis)法により測定し、その膜厚差を処理時間で除算することによりスズ酸化膜の除去速度を求めた。
【0040】
図5に、スズ酸化膜除去速度の電源周波数依存性を示す。
図5に示すように、酸化膜除去速度は、電源周波数が30kHz未満の場合、0.01〜0.02nm/sであり、一方、30kHzの場合、0.4nm/sだった。この結果は、周波数が30kHzであれば自然酸化膜2nmを約5秒で完全に除去でき、周波数が30kHz未満であれば、100〜200秒程度必要であることを意味する。
【0041】
電源周波数が1000kHz以上となると、電源及び電力供給経路について、電力整合を考慮して設計及び作成する必要が生じる。その結果、電源の他にインピーダンス整合器を使用せねばならず、電源系統の費用が増大してしまう。
【0042】
次に、プラズマ発生領域13へのプロセスガス導入について説明する。
図2のガス導入口17は、ガス導入管(図示せず)、ガス供給源(図示せず)に接続されている。プロセスガスは、ガス導入口17経て、スプール6及び送り装置7の側から大気圧プラズマ処理部1のプラズマ発生領域13へ導入される。プロセスガスの構成は、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などの希ガス、または窒素(N2)を主とする。処理コストの低減の観点から、窒素を使用することが好ましい。主たるガスに加え、線はんだ2の酸化膜を還元処理するために、水素等の解離した原子が還元性活性種となりうる反応性ガスを混合する。
【0043】
以下に、本実施例におけるダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の具体的な処理動作を説明する。
図6は、第1実施形態に係るダイレクト式大気圧プラズマ処理部9において、線はんだ2のプラズマ処理を開始する際の、ダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の下部分の正面断面図である。まず、
図6に示すように、電圧印加電極11の下端と線はんだ2の先端との距離t2が10mm以下となるように配置し、線はんだ2を固定した状態で、交流高圧電源14により電圧印加電極11に電圧印加し、プラズマ発生領域13にプラズマを発生させてプラズマ処理を開始する。プラズマ処理を開始すると、線はんだ2の電圧印加電極11と対向する部分に、水素原子(H)を含むプラズマが照射される。加えて、プロセスガスが上部のスプール6側からシュート3側に流れる為、水素原子もその方向に流される。t2が10mm以下であれば、プラズマで生成する水素原子を、誘電体12にてあまり失活をさせることなく、線はんだ2の先端まで供給できる。その結果、プラズマ処理開始時において、線はんだ2の先端の酸化膜を除去できる。線はんだ2の先端の酸化膜を除去した後、プラズマ処理を継続したまま、送り機構部7を駆動して線はんだ2の供給を開始する。
【0044】
スプール6にある線はんだ2がなくなる等して、プラズマ処理を終了するときは、電圧印加電極11への電圧印加を停止して、プラズマ放電を停止する。その後、スプール6に線はんだ2を再充填し、
図6の状態からプラズマ処理を再開する。
【0045】
[実施例1の変形例1]
はんだダイボンダの線はんだ供給ユニット1において、基板4へのはんだ供給量を精度よく所定の量にするため、線はんだ2と基板4との接触検知をすることがある。
【0046】
図7は、線はんだ供給ユニット1’に組み込む電流式接触検知部18の原理を説明する図である。この例では、線はんだ供給装置1’に実施例1で説明したダイレクト式大気圧プラズマ処理部9を含んでいない構成を示している。電流式接触検知部18は、直流電源19、過電流保護用抵抗21、接触検知回路22、送り機制御部23を備えている。直流電源19から印加される直流電圧は、スプール6、送り機構部7を通して、線はんだ2に印加される。また、シュート3内の基板4は電気的に接地されている。
【0047】
以下に、電流式接触検知部18における接触検知、及び所定量の線はんだ供給の動作を説明する。直流電源19により線はんだ2に数10V程度の所定の直流電圧が印加されている。線はんだ2がシュート3内の基板4に接触しない限り、電流は流れない。線はんだ2が基板4と接触すると、直流電源19から基板4の経路で直流電流が流れ、接触検知回路21が電流を検知する。電流検知のタイミングに基づき、送り機構制御部22は送り機構部7に所定量(所定の長さ)の線はんだ2を送る。このようにして、線はんだ2が基板4に接触した時から基板4に対して、所定量の線はんだ2を送る。
【0048】
上記のような電流による接触検知をするため、本変形例で用いる基板4は、例えば銅(Cu)、または銅の表面に銀(Ag)やニッケル(Ni)をめっきしたような金属である一般的には導体と呼ばれる導電性の高い材質からなる物体である。
【0049】
図7に示した電流式接触検知部18を組み込んだダイボンダに、実施例1の
図2で示したダイレクト式大気圧プラズマ処理部9を搭載する場合、以下の問題が起こる。
【0050】
1つ目は、電気的に接地されている箇所が電流検知回路である為、交流高圧電源からの交流高電圧が、線はんだ2から電流検知回路21までの電流式接触検知部18の各部品に印加されることである。電流式接触検知部18の各部品は、交流高圧電源18からの数kVの電圧印加には耐えられないので、各部品が損傷してしまう。2つ目は、線はんだ2に対して、電流式接触検知部18により数10Vの直流電圧が印加されるが、同時に、交流高圧電源18により数kVの交流高電圧が印加され、その結果、接触検知の為の直流電圧を安定に印加できないことである。
【0051】
上記2つの問題を解決するために、大気圧プラズマ放電のための交流高電圧が電流式接触検知部18に印加されず、かつ線はんだ2に所定の直流電圧を印加されるようにするための構成を、以下に説明する。
【0052】
図8は、実施例1の変形例1に係る線はんだ供給ユニット100の正面断面図である。
図8に示した本変形例1に係る線はんだ供給ユニット100では、実施例1で
図2を用いて説明した線はんだ供給ユニット1に対して、電気フィルタ回路23を含む電流式接触検知部180が設けられている点が相違点である。その他は実施例1で説明した構成と同じであり、同じ番号を付してあるので、説明を省略する。
【0053】
電気フィルタ回路23は、コイル24、コンデンサ25、26を備えている。ここで、コイル24は、交流高圧電源14により印加される交流電圧に対して、100Ω以上の高インピーダンスを有し、一方、コンデンサ25、26のインピーダンスは1Ω以下の、コイル24のインピーダンスに対して1/100以下小さいことが好ましい。以下に、電気フィルタ回路の働きを説明する。
【0054】
交流高圧電源14からの交流高電圧は、電圧印加電極11からスプール6までの電気経路に印加されるが、コンデンサ25が低インピーダンスのため、コンデンサ25を通じて交流的に接地されている状態になる。コンデンサ25が低インピーダンスであり、かつコイル24が高インピーダンスである為、交流高電圧は電流式接触検知部180にほとんど印加されない。なお、コンデンサ26は、コンデンサ25、コイル24によるフィルタ特性を更に高める為に付属されてものである。
【0055】
一方、直流電源19から出力される直流電圧に対して、コイル24が電気的に短絡、及びコンデンサ24、25が電気的に開放となるため、線はんだに所定の直流電圧が印加される。
【0056】
なお、上記電気フィルタ回路23は、コイル24、コンデンサ25、26からなる電気回路としたが、コイル24の代わりに抵抗を用いる、コンデンサ26を省略するなどの適宜変更可能である。
【0057】
[実施例1の変形例2]
図9に、実施例1で説明したダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の断面図である
図3に関して、線はんだ2の位置を変えた場合の断面図を示す。
図9に示すように、線はんだ2が電圧印加電極11の内側の誘電体12で囲まれたプラズマ発生領域13の中心軸からずれて、外周の点Aと誘電体12との間のギャップt3が狭まくなった場合、点Aの線はんだ中心に対して反対側の点Bと誘電体12とのギャップt4は広くなる。実施例1で説明したように、線はんだ2と誘電体12とのギャップは、電界および放電処理に影響を与える。そのため、
図9の場合、線はんだ2の点Aと点Bとでは、プラズマ処理、すなわちスズ酸化膜除去速度において不均一になってしまう。
【0058】
上記の理由から、線はんだ2を外周に渡って均一にプラズマ処理するには、線はんだ2がダイレクト式大気圧プラズマ処理部9内を通過する時に、誘電体12で囲まれたプラズマ発生領域13の中心軸上を通過するようにすることが望ましい。そこで、実施例1の変形例2として、線はんだ2が誘電体12で囲まれたプラズマ発生領域13の中心軸上を通過するようにする装置を提案する。
【0059】
図10は、実施例1の変形例2に係るダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の正面断面図である。実施例1の変形例2では、実施例1で説明した
図2に示した構成に対して、線はんだ位置補正部品27が設けられている点が相違点である。その他は第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0060】
線はんだ位置補正部品27は、高電圧印加電極11の上下端に設けられている。線はんだ位置補正部品27は、絶縁体10と同様に、アルミナ、ガラス、またはポリイミドなどの絶縁体からなる物体である。
【0061】
図11に、線はんだ位置補正部品27の配置、形状の詳細を説明する。線はんだ位置補正部品27は、線はんだ2の供給方向(
図11の矢印方向)に対して勾配を有し、その勾配の角度はαとする。角度αは45°より大きく85°以下が好ましい。45°より小さい場合、線はんだ2が線はんだ位置補正部品27と当たった後に、線はんだ2の先端が供給方向の反対に向き、線はんだ2の供給が適切にできなくなることが起こりやすいためである。
【0062】
線はんだ位置補正部品27は、中空を有し、その内径はd1とする。内径d1は、線はんだ2の外径よりも0.1〜1mm大きくする。0.1mmより小さいと線はんだが通過し難くなり、1mmより大きいと線はんだのがたつきが大きくなり、中心軸に補正する効果が小さくなる。
【0063】
なお、上記線はんだ位置補正部品27は、断面形状が台形状としたが、線はんだ2と当たる角度αが上記角度範囲内であれば、断面形状が半円状のものなどに適宜変更可能である。
【0064】
[実施例1の変形例3]
次に、
図12Aと
図12Bを用いて、実施例1の変形例3におけるダイレクト式大気圧プラズマ処理部9を説明する。
図12A及び
図12Bは、実施例1の変形例3に係る線はんだ供給ユニット120a及び120bの一部の断面拡大図である。
図12A及び
図12Bでは、実施例1で
図2を用いて説明した構成に対して、線はんだ供給ノズル8及び絶縁体10について、材質及び形状が変更されている点が相違点である。その他は実施例1で
図2を用いて説明した構成と同じであるので、同じ部品番号を付して説明を省略する。
【0065】
図12A及び
図12Bにおいて、線はんだ供給ノズル8a及び8bは可視光をほとんど通さず、一方透明絶縁体10a及び10bは可視光をよく通す、すなわち透明な材質からなるとする。
【0066】
図12Aに示した線はんだ供給ユニット120aの構成では、X方向に線はんだ供給ノズル8aの幅が広く、かつ、Y方向に透明絶縁体10aの幅が狭い。その為、観察者は視点AのようなX方向から透明絶縁体10aを通して、プラズマ発生領域13の発光をわずかに観察できるだけであり、視点Bからでは線はんだ供給ノズル8aにより光が遮られてしまい、プラズマ発生領域13の発光の観察ができない。
【0067】
図12Bに示した線はんだ供給ユニット120bの構成では、
図12Aで説明した構成に比べて、X方向に線はんだ供給ノズル8bの幅が狭く、かつ、Y方向に透明絶縁体10bの幅が広い。その為、観察者は視点Cから透明絶縁体10bを通して、プラズマ発生領域13について端部からより中央の深い部分の発光まで観察できる。その結果、観察者は、プラズマ発生領域13をより高い発光強度にて観察でき、プラズマの点火、消滅、あるいは異常放電の発生などについての診断が容易になる。
【0068】
[実施例1の変形例4]
実施例1で説明したダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の面16での断面である
図4Aに関して、線はんだ2を断面が円形の棒状から、断面が矩形のリボン状に変えた場合の断面を
図4Bに示す。
図4Aでは、棒状の線はんだを取り囲むように高電圧電極11および誘電体12は円筒形状だが、
図4Bでは、高電圧電極11は線はんだ2両面と対向する2枚の平板状であり、誘電体12は高電圧電極11の線はんだ面側に設けられた平板状である。その為、誘電体12を挟んだ高電圧電極11と線はんだ2とが平行平板電極として対向するため、ギャップt1に均一な電界が発生する。これにより、大気圧プラズマ領域13は、高電圧電極11に接した誘電体12と線はんだ2との間に平板状に生成し、その結果、線はんだ2の表面を均一にプラズマ処理できる。
【実施例2】
【0069】
本実施例2では、リモート式大気圧プラズマ処理部90を搭載した線はんだ供給ユニット130の例を説明する。
図13は、本実施例2のリモート式大気圧プラズマ処理部90をダイボンダの線はんだ供給ユニット130に搭載し、シュート3の内部の基板4に線はんだ2を供給する構成を示す正面断面図である。本実施例2では、実施例1で示したダイレクト式大気圧プラズマ処理部9の代わりに、リモート式大気圧プラズマ処理90を搭載している点が相違点であり、その他は実施例1で
図2を用いて説明した構成と同じであるので、説明を省略する。
【0070】
図13に示した構成において、ガス導入口17よりガス導入ノズル30に導入されるプロセスガスを原料として、リモート式大気圧プラズマ処理部90のプラズマ生成部28内にてプラズマが生成される。プラズマ内で発生した活性種29は、ガス導入口17から供給されるガス流により押し出され、ガス導入ノズル30に沿って流れて線はんだ供給ノズル8の内部に導入されて線はんだ2へと吹き付けられる。
【0071】
ここで、ガス導入ノズル30は、ガラス、セラミクスのような導電性の低い、一般的に絶縁体と呼ばれる材質からなる物体である。但し、ガス導入ノズル30の内、リモート式大気圧プラズマ処理装置28内の電極と接していない部分の一部を、ステンレススティール、アルミニウム(Al)といった一般的に導体と呼ばれる金属にしてもよい。ガス導入ノズル30の形状は、中央部にガスを導入する為に管状であり、その断面は円形の場合もあるし、矩形の場合もある。
【0072】
本実施例の特徴は、リモート式大気圧プラズマ処理部90のプラズマ生成部28と線はんだ2及び線はんだ供給ノズル8とが電気的に絶縁されていることである。これにより、実施例1の変形例1で取り上げた電流式接触検知部18とリモート式大気圧プラズマ処理部90とを併用する際、実施例1の変形例1で説明した電気フィルタ回路23を必要とせずにすむ。
【0073】
図14から
図17に、リモート式大気圧プラズマ処理部90のとりうる構成を示す。
図14は、リモート式大気圧プラズマ処理装置部90の第1の構成例である。ガス導入口17に対して、近い方から高電圧電極31、接地電極32が配置され、それら高電圧電極31と接地電極32とに交流高圧電源14が接続され、接地電極32は接地されている。絶縁体33は、高電圧電極31と接地電極32との間でガス導入ノズル30の外側に配置される。高電圧電極31と接地電極32との間のガス導入ノズル30の内部に高電界が発生し、その高電界中にてプラズマおよび活性種29が生成される。高電圧電極31および接地電極32間のガス導入ノズル30外側は、絶縁体33で覆われているため、高電界が発生せず、プラズマが生成されないようになっている。高電圧電極31と接地電極32とはガス導入ノズル30に対して覆うように接している為、それらの形状は管状であり、またそれらの材質は、ステンレススティール、アルミニウム(Al)といった一般的に導体と呼ばれる金属である。なお、高電圧電極31と接地電極32との配置を入れ替えても良い。
【0074】
図15は、リモート式大気圧プラズマ処理部90の第2の構成例である。ガス導入ノズル30の半径方向外側に接地電極34、ガス導入ノズル30の半径方向内側にガス導入ノズル30とギャップを設けて高電圧電極35が配置され、それら接地電極34と高電圧電極35とに交流高圧電源14が接続され、接地電極34が接地されている。接地電極34と高電圧電極35との間のギャップに高電界が発生し、その中にてプラズマおよび活性種29が生成される。接地電極34はガス導入ノズル30に対して覆うように接している為、それらの形状は管状である。一方、高電圧電極35の形状は棒状、または管状である。接地電極34と高電圧電極35の材質は、それぞれステンレススティール、アルミニウム(Al)といった一般的に導体と呼ばれる金属である。また、高電圧電極35の表面をアルミナ、ガラス、またはポリイミドなどの絶縁体にて覆ってもよい。なお、接地電極34と高電圧電極35との配置を入れ替えても良い。
【0075】
図16は、リモート式大気圧プラズマ処理装置90の第3の構成例である。ガス導入ノズル30の外側に巻きつくように、コイル36が配置され、コイル36の両端は、交流高圧電源14に接続されており、コイル36の一端は接地されている。なお、交流高圧電源14の高電圧側と接地側の配置向きは順不同である。コイル36およびガス導入ノズル30の内側に高交番磁界が発生し、その中に誘導結合(ICP)プラズマが発生する。ICPプラズマによりガス導入ノズル30の内部空間に活性種29が生成される。コイル36は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)といった一般的に導体と呼ばれる金属である。また、コイル36の表面をアルミナ、ガラス、またはポリイミドなどの絶縁体にて覆ってもよい。
【0076】
図17は、リモート式大気圧プラズマ処理部90の第4の構成例である。1組の平行平板電極38と39が配置され、それら電極間のギャップ部にガス導入口17からガスを導入されるように導入管40が接続される。導入管40のうち平行平板電極38と39とのギャップ部よりガス経路の下流にある部分41は、ガス導入ノズル30と接続される。平行平板電極38と39には、互いが対向する面に誘電体板37が配置される。平行平板電極38には交流高圧電源14が接続され、平行平板電極39は接地されている。なお、一組の電極38,39に対して、どちらを交流高圧電源14の高電圧側か、または接地側とするかの向きは、順不同である。平行平板電極37と38との間のギャップに高電界が発生し、その中にプラズマおよび活性種29が発生する。
【0077】
[実施例2の変形例1]
図18に、実施例2の変形例1として、前記の実施例2で説明したリモート式大気圧プラズマ処理装置90を、線はんだ2および線はんだ供給ノズル8を挟んで対向して設けた例を示す。
図18に示すように、リモート式大気圧プラズマ処理装置90を線はんだ供給ノズル8の左右に1台ずつ対向して配置することにより、供給ノズル8内の線はんだ2に対して左右の両方向から活性種29を吹き付けられるようにしてある。これにより、線はんだ2の円形の外周に対して、なるべく広い面に活性種29が吹き付けられ、線はんだ2の酸化膜の内、除去されない部分が生じるのを抑制できる。なお、
図18ではリモート式大気圧プラズマ処理部90を線はんだ供給ノズル8に対して2台を左右に配置したが、それ以上の台数を等間隔に並べて配置させても良い。リモート式大気圧プラズマ処理部90の配置台数を増加させることにより、線はんだ2の酸化膜の除去速度の増加、および除去の均一性が向上することが期待できる。
【0078】
図19および
図20は、それぞれ、
図17に示したリモート式大気圧プラズマ処理部90の配置を変えた場合の、正面図および上面図である。
図17に示した一組の平行平板電極37,38の代わりに、線はんだ供給ノズル8に対して取り囲むように、中空のある一組の平行円板電極41、42が配置されている。
図17で説明した誘電体板37に対して、その働きをガス導入ノズル30により代替される。以上の配置により、平行円板電極41,42間に生成される活性種29が、線はんだ供給ノズル8の内部の線はんだ2の外周に対して均一に吹き付けられる。その結果、線はんだ2の酸化膜を均一に処理することが可能となる。
[実施例2の変形例2]
図21は、実施例2の変形例2に係るプラズマ処理装置の断面拡大図である。
図21では、
図13で説明した実施例2の構成に対して、ガス導入ノズル30の材質及び形状が変更されている点が相違点である。その他は
図13で説明した実施例2の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0079】
図21において、ガス導入ノズル30’は、可視光について透明部分30a及び遮光部分30bからなる。実施例2の部分で
図14から
図17を用いて説明したように、リモート式大気圧プラズマ処理部90にはプラズマ発生部分28があり、その部分にプラズマが発生(プラズマ領域43)する。
【0080】
図21でガス導入ノズル30の透明部分30aは、ノズル伸展方向の幅が広い。その為、観測者が視点Dから透明部分30aを通して、プラズマ領域43の発光をよりプラズマ領域内部まで観察することができる。その結果、実施例2の変形例1で
図12A及び
図12Bを用いて説明した場合と同様に、リモート式大気圧プラズマ処理部90でも、観察者によるプラズマの点火、消滅、あるいは異常放電の発生などについての診断が容易になる。
【0081】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。