(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771638
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】複数マグネトロン、特に二段型褶曲マグネトロンの連動走査
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20150813BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
C23C14/35 A
H01L21/285 S
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-40856(P2013-40856)
(22)【出願日】2013年3月1日
(62)【分割の表示】特願2007-201415(P2007-201415)の分割
【原出願日】2007年8月2日
(65)【公開番号】特開2013-127125(P2013-127125A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2013年3月4日
(31)【優先権主張番号】60/835,671
(32)【優先日】2006年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/835,681
(32)【優先日】2006年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】稲川 真
(72)【発明者】
【氏名】ヒエン ミン フー リー
(72)【発明者】
【氏名】細川 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドレイ オー スティムソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム ホワイト
【審査官】
伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−096078(JP,A)
【文献】
米国特許第05855744(US,A)
【文献】
特開2005−232593(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0145478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性支持構造と、
支持構造により分離して弾力的かつ部分的に支持された複数の磁気ヨークと、
反対の極性の磁極の間に形成された閉鎖経路を有し、かつ磁気ヨークのそれぞれにより分離して支持された複数の磁石配列と、
ターゲットアセンブリ上で磁気ヨーク及び磁石配列が移動しながら部分的に支持されることを可能にするための、磁気ヨークとは反対側の磁石配列の面に形成された回転又は滑動手段とを含む連動マグネトロン。
【請求項2】
各磁気ヨークが複数の可撓性セクションを含む請求項1記載のマグネトロン。
【請求項3】
磁石配置のそれぞれと関連付けられた複数の分離ターゲット帯を含むターゲットを更に備えた請求項1記載のマグネトロン。
【請求項4】
支持構造を二次元パターン状に移動するための走査機構を更に備える請求項1記載のマグネトロン。
【請求項5】
支持構造が非磁気プレートである請求項1記載のマグネトロン。
【請求項6】
剛性支持構造と、
支持構造により分離して弾力的に支持された複数のマグネトロンと、
ターゲットアセンブリ上でマグネトロンが移動しながら部分的に支持されることを可能にするための、支持構造とは反対側の磁石配列の面に形成された回転又は滑動手段とを備える連動マグネトロン。
【請求項7】
個々の非平行方向に沿って延びる部分を有する二次元パターン状にターゲットアセンブリの裏面の周囲の支持構造を移動するための走査機構を更に備える請求項6記載のマグネトロン。
【請求項8】
支持構造が非磁気プレートを備える請求項6及び7のいずれか1項記載のマグネトロン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、共に2006年8月4日に出願された米国特許仮出願第60/835671号及び60/835681号に基づく利益を主張する。また、本出願は2006年11月17日に出願された米国特許出願第11/601576号に関連する。
【0002】
本発明は、概して、半導体集積回路の製造におけるスパッタ堆積に関する。特には、本発明はプラズマスパッタリングターゲットの背面を走査するマグネトロンに関する。
【背景技術】
【0003】
プラズママグネトロンスパッタリングは、シリコン集積回路の製造において長年にわたって実施されてきた。更に最近では、スパッタリングは、ガラス、金属又は重合体製の大面積で概して分離型の矩形パネル、又は同等のシート上に材料層を堆積するのに応用されている。完成したパネルは薄膜トランジスタ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッタ、液晶ディスプレイ(LCD)素子、又は有機発光ダイオード(OLED)を内蔵し、典型的にはフラットパネルディスプレイ向けである。光電池も同様に製造し得る。関連する技術は、ガラス窓への光学層のコーティングにも用いることができる。スパッタ堆積層の材料はアルミニウム又はモリブデン等の金属、インジウムスズ酸化物(ITO)等の透明導電体、及びシリコン、金属窒化物及び酸化物を含む更に別の材料であってもよい。
【0004】
ディマレイ(Demaray)その他はこういったフラットパネルスパッタ用チャンバを米国特許第5565071号に記載しており、参照により本願に全て組み込まれる。彼らのスパッタチャンバ10は、
図1の概略断面図に図示されるように、典型的には電気的に接地された矩形スパッタ台座電極12を含み、台座電極は真空チャンバ18内にて矩形ガラスパネル14又はその他の基板を、矩形のスパッタリングターゲットアセンブリ16に対向して保持している。少なくともその表面がスパッタされる金属から構成されるターゲットアセンブリ16は、隔離装置20を隔てて真空チャンバ18に対して真空シールされる。典型的には、スパッタするターゲット材料層はバッキングプレートに接着され、バッキングプレートの内部には冷却水水路が形成されておりターゲットアセンブリ16を冷却する。典型的にはアルゴンであるスパッタリングガスは、ミリトール範囲の圧力で真空チャンバ18内に供給される。
【0005】
バックチャンバ22又は磁気チャンバをターゲットアセンブリ16の背面に真空シールして低圧に真空排気することで、ターゲット16とそのバッキングプレートとの間の圧力差を実質的に解消することが有利である。これにより、ターゲットアセンブリ16をもっと薄くすることが可能となる。台座電極12又は壁部シールド等のチャンバの別の接地部に対して、負のDCバイアスを導電性ターゲットアセンブリ16に印加した場合、アルゴンはイオン化されてプラズマとなる。正のアルゴンイオンはターゲットアセンブリ16に引き寄せられ、ターゲット層から金属原子をスパッタする。金属原子の一部はパネル14方向に指向され、少なくとも部分的にターゲット金属から構成される層をパネル上に堆積する。金属のスパッタリング中にチャンバ18内に酸素又は窒素を補足的に供給することで、反応性スパッタリングと称される処理で金属酸化物又は窒化物を堆積してもよい。
【0006】
スパッタリング速度を上げるために、通常、マグネトロン24はターゲットアセンブリ16の背面に載置される。マグネトロンがある垂直磁極性の内側磁極26を有し、内側磁極を極性が反対の外側磁極28が取り巻くことでチャンバ18内部に磁場が突出し、かつターゲットアセンブリ16の正面と平行となる場合、適切なチャンバ条件下において、ターゲット層に隣接する処理空間内には高密度プラズマループが形成される。2つの反対の磁極26、28は、プラズマループの軌道を規定する実質的に一定の間隙により隔てられている。マグネトロン24からの磁場が電子を捕捉することでプラズマの密度は上昇し、この結果、ターゲットアセンブリ16のスパッタリング速度が上昇する。線状マグネトロ
ン24と間隙の幅は比較的狭いため、磁束密度が高くなる。単一の閉鎖軌道に沿って磁場の分布が閉鎖形状となっているため、端部からのプラズマの漏れが防止される。
【0007】
スパッタ堆積する矩形パネルのサイズは大型化する一方である。ある世代ではサイズ1.87mx2.2mのパネルを処理し、総面積が40000cm
2を越えることから40Kと称される。50Kと呼ばれるその次の世代のパネルのサイズは、各辺が2mを超える。
【0008】
これらの超大型サイズではマグネトロンの設計に問題が生じるが、これはターゲットは大面積でありマグネトロンは非常に重いにも関わらず、マグネトロンをターゲット全領域に近接させて走査させなくてはならないからである。
【0009】
テップマン(Tepman)は多くのこういった問題点を米国特許出願公開第2006/0049040号で述べており、参照により本願に組み込まれる。テップマンの設計では、ターゲットより若干小さいにすぎないサイズの単一の大面積矩形マグネトロンを、単一の内側磁極と、それを取り囲む極性が反対の単一の外側磁極とを用いて形成している。これらの間の間隙により長い回旋状の経路が形成され、ターゲットのスパッタ面に隣接して閉鎖プラズマ軌道を規定する。マグネトロンは、マグネトロン又はターゲットの寸法よりかなり小さい範囲に延びる二次元パターンで走査される。具体的には、走査範囲は隣り合うプラズマ軌道の間のピッチにほぼ等しいため、単一の連続ターゲットがより均一にスパッタ浸食され、より均一にスパッタ堆積される。リー(Le)その他は、2006年7月11日に出願され、米国特許出願公開第2007/0012562号として公開された米国特許出願第11/484333号で、テップマンの装置と操作方法に加える改良点について述べており、これらの文献は参照により本願に組み込まれる。
【0010】
しかしながら、大面積フラットパネル用の今までのマグネトロンスパッタチャンバはターゲットを完全に活用するものではなかった。特には、マグネトロンの走査領域の周縁に隣接するターゲット縁部は内部より早く侵食される。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様は、反対の磁極性の内側磁極を取り巻き、かつ閉鎖ループを形成する間隙により内側磁極とは隔てられている外側磁極を有するマグネトロンを含む。マグネトロンをプラズマスパッタチャンバ内のスパッタリングターゲットの背面に載置した場合、閉鎖ループよりターゲットのスパッタ面上にプラズマ軌道が規定される。この態様において、ループは湾曲部により連結された平行な直線部を有し、ループは一度折り曲げられている。ループの2つの端部をターゲットの同側に並んで位置させてもよく、更には、ターゲット側近辺のループ極率が大きくなるように中央領域で接触させることがより有利である。
【0012】
こういったマグネトロンは、平行部に垂直及び平行の双方に走査してもよい。
【0013】
こういったマグネトロンを複製し、並べて載置してもよい。複製したマグネトロンを各帯状ターゲット上で同時に走査してもよい。
【0014】
本発明の別の態様において、磁極を形成する磁石はループのコーナー部でその強度又は数という点で強化してもよい。磁石を追加することで、湾曲部の内角を外方向に押し出す。一対の凹部により直線部に連結された180°より大きい凸縁部を有する内部磁極を用いて、急な湾曲部を形成してもよい。
【0015】
本発明の更なる態様においては、複数のマグネトロンは全体的又は部分的のいずれかで支持構造上に支持してもよく、支持構造は一又は二次元方向に走査されるため、連動されたマグネトロンが水平方向に共に走査される。各マグネトロンは反対の磁極間に1つの閉鎖間隙を含み、プラズマチャンバ内に閉鎖プラズマ軌道を発生させる。垂直支持体は弾力性がありかつ部分的であることから、複数のマグネトロンは垂直方向に独立して移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】大パネルへのスパッタリング用に適合されたスパッタチャンバの概略断面図である。
【
図2】マグネトロンシステムの二次元走査に使用する走査機構の正射投影図である。
【
図3】関連する帯状ターゲット上にそれぞれ部分的に支持され、連動させた一連の帯状マグネトロンの概略断面図である。
【
図4】マグネトロンシステムを構成する帯状マグネトロンの正射投影底面図である。
【
図5】従来のレーストラック型マグネトロンの平面図である。
【
図7】その2つの端部を境に対称な二段式褶曲マグネトロンの概略平面図である。
【
図8】一般的な分散の円筒状磁石を含む、
図7の二段式褶曲マグネトロンの平面図である。
【
図9】保持具を有し、プラズマ軌道のコーナー部周辺で磁石の分散を調整した、改良型の二段式褶曲マグネトロンの平面図である。
【
図11】
図9の二段式褶曲マグネトロンの2つの端部の詳細図である。
【
図12】
図9の二段式褶曲マグネトロンの中央部の詳細図である。
【
図13】それぞれが
図9の二段式褶曲マグネトロンの形態である複数の帯状マグネトロンから構成されるマグネトロンシステムの平面図である。
【
図14】複数の帯状ターゲットと関連する帯状マグネトロンを含むスパッタリングソースの概略断面図である。
【0017】
本発明のソースアセンブリの一実施形態では、ターゲットとマグネトロンの双方を、関連づけられた帯状ターゲットと帯状マグネトロンへと分離する。帯状ターゲットは単一のターゲット棚部上に支持され、帯状マグネトロンは単一の走査支持プレートに支持されているため、マグネトロンはその走査中、連動している。
【0018】
別の実施形態は、連動マグネトロンアセンブリ又はその他のマグネトロン構成における使用に適したマグネトロンを含む。
【0019】
図2の投射投影図に図示の二次元走査機構30は、リーその他により記載の走査機構に近い。更により詳しい説明のために、この出願を参考とする。しかしながら、走査機構30は好ましくはアルミニウム等の非磁気材料から構成される大型支持プレートを支持し、走査機構30は任意の二次元パターンに走査可能である。対照的に、テップマンとリーの装置は、マグネトロンアセンブリ全体を強固に支持し、磁気的に結合している単一の磁性ヨークを走査する。支持プレート32はシート部材である必要はないが、剛性の支持構造を形成する複数の連結部材から形成してもよく、支持構造は2つの直角に配置されたアクチュエータにより可動される。主要チャンバ本体部18上に支持されるフレーム34はその対向する辺上に2列のローラ36を支持し、その間にガントリ42を支持する逆フレームレール38、40を転動的に支持する。ガントリ42は内側支材44、46と外側支材48、50上に図示していない4列のローラを含む。4つの支材は逆ガントリ内側レール52、54と外側レール56、58を転動的に支持する。ガントリレールは、その下面に部分的に懸架された磁石を含め支持プレート32を部分的に支持している。内側支材48、50と外側レール56、58は任意であるが、重い支持体34の辺上を補足的に支持し、縁部付近での下垂量を軽減する。ブラケット型ベースプレート60は、ガントリ42を形成しているフレーム構造に固定される。
【0020】
図1のバックチャンバ22の上端壁部を形成する磁気チャンバ屋根部62はガントリ構造をその間に挟みフレーム34上に支持かつシールされ、マグネトロンシステムを収容するチャンバ上部の真空壁部となる。磁気チャンバ屋根部62は、矩形開口部64とブラケット凹部66の底部を含む。ブラケットチャンバ68はブラケット凹部66に嵌合し、矩形開口部64周囲でチャンバ屋根部62にシールされている。上部プレート72をブラケットチャンバ68の上部にシールすることで、真空シールを完成させる。
【0021】
ブラケットチャンバ68内に可動式に配置されたガントリブラケット70は、ガントリ42のベースプレート60に固定される。磁気チャンバ屋根部62の上部の取付台75上に固定される指示ブラケット74と中間山形鋼76とが真空シール外側の磁気チャンバ屋根部62内アクチュエータ凹部79にアクチュエータアセンブリ78を保持する。支持ブラケット74は、更に、磁気チャンバ屋根部62に組み込まれたトラスシステムの一部としても機能する。アクチュエータアセンブリ78は、2つの密閉真空ポートを介してブラケットチャンバ68の内部に連結されている。
【0022】
2つの独立したアクチュエータを含むアクチュエータアセンブリ78は、ガントリ42のベースプレート60に固定されたガントリブラケット70を介して加えられた力によりガントリを一方向に独立して移動し、支持プレート32上にありガントリ窓84から上方向に突出している柱80、82に取り付けられた2つの非図示のローラの周りに巻かれたベルトを備えたベルト駆動装置により、支持プレート32を垂直方向に移動する。ベルトの端部は、支持プレート32の台座86、88に固定されている。
【0023】
図3の断面図で極めて概略的に図示したように、支持プレート32は、個々のバネ構造114を介して平行に配置された複数の帯状マグネトロン112のそれぞれを部分的に支持する。各帯状マグネトロン112は、個々の帯状磁気ヨーク116を含み、帯状マグネトロン112用の背部支持プレートとしても作用する。磁気ヨーク116は、ある磁極性の内側磁極118とそれを取り巻く磁極性が反対の外側磁極120とを支持し、かつ磁気的に連結している。2つの磁極118、120との間の間隙122の幅は多少一定であり、閉鎖経路又はループに沿って形成されている。磁極118、120及び間隙122の図示の構造は、後に述べる好ましい実施形態のものより単純である。
【0024】
各帯状マグネトロン112は、磁気ヨーク116に固定された、或いはおそらくは中間構造によりそこに取り付けられたボール保持体に捕捉された回転ボール126を介して個々の帯状ターゲット124上で部分的に支持されてもいる。回転ボール126により、支持プレート32を帯状マグネトロン112と共に走査する際、帯状マグネトロン112が帯状ターゲット124上を回転することが可能となる。回転ボール126の代わりに同等の軟質滑動部を使用してもよい。典型的には1つ以上のバネ機構114と1つ以上の回転ボール126が各帯状マグネトロン112にはあり帯状マグネトロン112の角度方向を維持しており、個別にやや可撓性である。好ましくは、支持プレート32はマグネトロンの重量ほぼ全てに耐えるが、バネ構造114の弾力性により各帯状マグネトロン112は帯状ターゲット124の変形に追随することが可能となる。リーその他は、2006年2月2日出願の米国特許出願第11/347667号において部分支持体、更なる詳細、特にはヨーク116の可撓性をより高くすることはついては、米国特許仮出願第60/835680号のラビトスキ(Lavitskyk)その他及び2006年11月17日出願の稲川その他による米国特許出願第11/601576号に記載されており、これらは全て参照により本願に組み込まれる。帯状ターゲット124を負にバイアス印加してスパッタ用カソードとしアノード127で取り囲んでもよく、アノード127は接地される或いは帯状ターゲット124より正にバイアス印加して帯状ターゲット124に隣接したプラズマを励起させる。RFバイアス印加も可能である。
【0025】
連動させた帯状マグネトロンは1セットのアクチュエータにより同時に走査可能であるため、これらは複数の帯状ターゲット上の同様の経路を平行に走査される。それでもなお、帯状マグネトロンは直接的には機械的に連結されていない。帯状マグネトロンは別々に作製し、支持プレートに組み立ててもよく、これにより全体として非常に大型で重いマグネトロンアセンブリの使用が簡易化される。また、帯状マグネトロンを、例えば、独立したバネ支持体を用いて個別に垂直方向に支持してもよい。同様に、それぞれの帯状マグネトロンについて個別の垂直方向機械式アクチュエータを使用してもよい。更に、連動させることで、簡単な走査機構により、アノード等の、連続マグネトロンの走査を妨害する可能性のある機械構造により区切られて小区域に分かれたターゲット上で複数のマグネトロンを走査することが可能となる。
【0026】
磁石118、120は円筒形の磁石であり、整理番号第11/484333号に記載された類の非磁性保持具により各ヨーク116に揃えられている。
図4の、概して底面からの正射投影図は、支持プレート32から弾力的に懸架された多重マグネトロンアセンブリを示し、これ自体はレール52、54、56、58から固定支持されている。各帯状マグネトロン112は、その間に境界部129を備えた保持具セクション128に分割され、これらは可撓的に連結されたヨークプレート116のセクションのそれぞれのものに関連づけられており、通常、保持具セクション128の境界部129の下に横たわり、支持プレート32から個別に弾力的に支持されている。回転ボール126は、可撓的に連結され
た保持具セクション128と、関連する帯状ターゲット124上の関連するヨークセクションを部分的に支持する。これにより、可撓性マグネトロンは非平面のターゲットをたどり、かつその形状に沿うことが可能となる。
【0027】
各帯状マグネトロン112についての
図3の簡略化した磁石分布は、
図5の平面図に図示の周知のレーストラック型マグネトロン140に対応する。レーストラック型マグネトロン140は、通常、磁極性が反対の環状外側磁極144に取り囲まれた概して直線状の内側磁極142を有し、その間にはほぼ一定の間隙148がある。実際には、磁石を各磁極面で覆って磁石端部を磁極とするする必要はない。マグネトロン140は先端端部150から尾方向端部152まで軸に沿って延びているため、それが形成するところのプラズマ軌道の大部分を規定する間隙148は180°の端部で連結された2つの直線部分を有する。しかしながら、レーストラック型マグネトロン140では、その先端及び尾方向端部150、152付近のスパッタ侵食パターンにホットスポットが生じるため不都合である。ターゲットの有効利用はホットスポットにより決定され、これはターゲットのホットスポットがターゲットを一旦貫通してしまうと、そのターゲットは交換しなくてはならないからである。ホットスポットは、端部150、152の湾曲部の半径が小さいことから生じると我々は考えており、そこでの磁場分布を調整することで軽減可能である。しかしながら、更に、レーストラック型マグネトロン140は、2mのパネルのスパッタリングを想定した帯状ターゲット及びマグネトロンの数と幅に対して概して狭すぎる。その長辺にそって突き当たるに近い程度で複数のレーストラック型マグネトロンを並べて載置することが知られているが、これではホットスポットの問題を解決できない。
【0028】
テップマン及びリーが記載した類の蛇行型マグネトロンは、レーストラック型マグネトロンを、従来は直線的に配置したレーストラック型マグネトロンの平行部分を有する蛇行パターンに褶曲させることで達成可能である。例えば、
図6の平面図に概略図示した二段式褶曲マグネトロン160は、テップマン又はリーのものより褶曲回数が少ない。このマグネトロンはある極性の内側磁極162と、それを取り巻く極性が反対の外側磁極164を有し、その間には間隙がある。マグネトロンは広いが、間隙とこれにより得られるプラズマ軌道は3つの急な180°コーナー部166を左右の縁部の2つの異なる位置に有し、そのうち2つは縁部に近接し、もう一方は反対側の縁部から若干離れた位置にある。帯状ターゲットの軸端近接部での補正にはより大きな問題があると思われる。更に、片側のより緩やかな180°コーナー部には、異なるタイプの補正が必要となる場合がある。つまり、磁石の分布は図示したように左右で非対称となる。
【0029】
図7の平面図に概略的に図示した別の二段式褶曲マグネトロン170には、更なる利点がある。このマグネトロンは内側磁極172と、それを取り巻く磁極性が反対の外側磁極174を有し、その間には間隙がある。しかしながら、蛇行型ループの先端と尾部は、通常は直線的に配置される細い帯状マグネトロンの幾何学上の端部の中央付近の接合部176で接する。これにより4つの急な180°湾曲部が形成され、全て左右の縁部から若干ずれている。いずれのケースおいても、磁石を帯状マグネトロン及び帯状ターゲットの軸端で対称的に分布することが可能である。
【0030】
図8の底面図に図示されるように、二段式蛇行型マグネトロン180についての詳しい物理的実装には、一連の非磁性保持具181が含まれ、保持具はヨーク116にネジ止めされている。個々の保持具は図示していないが、典型的にはそれぞれはマグネトロン180の軸長さ一部にすぎない。保持具についてのより詳細な説明はテップマンとリーの特許出願に記載されている。保持具は円筒形の穴部つまりその間に内側磁石位置182と外側磁石位置184とを規定する対向する鋸歯状縁部と、その間の非磁気間隙部186を有する。反対の磁極性を有する磁石を内側と外側の磁石位置182、184にそれぞれ挿入する。各磁石セットはほぼ連続的に分布されるため、内側磁石位置182によりある極性の内側磁極が規定され、外側磁石位置184により、内側磁極を取り巻く、極性が反対の外側磁極が規定される。この実施形態において、大部分について、磁石はマグネトロンの内側では最密二列型に、マグネトロンの周縁部では一列に配置されている。内側及び外側磁極の間の間隙186の幅はほぼ一定であり、閉鎖形状つまりループに形成され、これはマグネトロンがターゲットのスパッタ面に形成するプラズマ軌道にほぼ対応している。しかしながら、保持具に追加の磁石位置を列の内側又は外側、特にはコーナー部周辺に設け、磁場の分布と強度を調整してもよい。
【0031】
しかしながら、この一次設計では外部ホットスポット190と内部ホットスポット192が生じる傾向がある。両方のタイプのホットスポット190、192は内側及び外側の磁極の急端部193、194と、これに関連したプラズマ軌道における急なコーナー部から生じると考えられる。様々な理由により、プラズマ軌道は急端部193、194に向かって逸れ、高プラズマ密度を生み出す高電流密度とそれに伴って高スパッタ速度を有する傾向がある。
【0032】
プラズマにおいて電流が横方向に移動する1つの原因は曲率が高いコーナー部での磁石の不均衡であり、これは一次設計では、プラズマ軌道の各セグメント用であり、かつ間隙の両側に配置された、極性が反対の磁石を1列含むからである。つまり、外部の磁石列は
単列であり、内部の磁石列は全て二列である。
図8の一次設計により、褶曲蛇行型磁石の先頭と尾部との間に二列構造接合部196が形成される。急コーナー部に隣接して、湾曲する間隙の凸側の急端部193、194に関連したある極性の磁石の数は、湾曲する間隙の凹側の外側湾曲縁部上に配置された、極性が反対の磁石の数より著しく少ない。この磁石の不均衡により、プラズマ軌道は急端部193、194に向かって押し出される傾向がある。プラズマ軌道の中央線のこのズレは、スパッタターゲットの前方の磁場が水平、つまりターゲットに平行な場合に軌道中心線が生じやすいということを理解することで説明し得る。ある磁極がもう一方の磁極より弱い場合、磁場分布の平坦部は弱いほうの磁極へと押し出される。
【0033】
改良型の二段式蛇行型マグネトロン200が
図9の底面図に図示される。その相補的な端部セクション202、204の更なる詳細は、
図10と11に図示されており、その中央セクション206は
図12に図示されている。直線及びコーナー部保持具は、独特な保持具の数が最小限となるようなサイズと形状に設計してもよい。上記と同様に、鋸歯型縁部を備えた直線状の内部保持具208、210は、その間に噛合型の二列の磁石位置212をその内側に規定する。しかしながら、アノードと、おそらくは帯状ターゲットの間に補強支材を含むターゲットアセンブリでは縁部のクリアランスが減少するため、外部直線状保持具214は一側面からもう一方へと一体化されており、外側直線状保持具を貫通して一列の円筒形磁石穴216が穿孔されている。磁石穴216の片側から反対側へと外部直線状保持具214が連続していることが明白ではないため、これらの図は保持具214の磁石穴216を正確には表してはいない。また、これらの図は保持具の間、時には保持具に入り込む回転ボールも図示していない。
【0034】
侵食の均一性を改善するための一方法は、
図8の接合部196から1つの磁石列を除去することである。
図9及び12に図示されるように、単列接合部220は、2つの接合保持具224、226の鋸歯状縁部の間に形成された単列の磁石位置222により形成され、この保持具は外部単磁石列用の穿穴228も含む。
【0035】
コーナー部での磁場の変化により、コーナー効果が少なくとも部分的に生じる。コーナー部の磁場強度を直線部のそれとほぼ同じに維持することが望ましい。湾曲する形状において磁場を一様にする1つの方法は、個々の磁石の強度を変えることである。例えば記号N38で示される、殆どの磁石の強度は中等度である。しかしながら、一部の磁石位置は、例えば記号N48で示される、より強力かつより高価な磁石によって占められている。
【0036】
図10及び11に図示されるように、一実施形態においては、内部180°急コーナー部で使用の涙滴型保持具230は、N48磁石を充填した内部磁石位置232を有する。標準的な磁石位置234は、内部磁石位置232から外側方向に向かって若干広がっている。外部磁石位置236は、涙滴型保持具230の先端で更に外側に広がっている。異なる実施形態において、標準及び外部磁石位置234、246の一部又は全ては充填又は空洞のまま放置される。これら後者の磁石の強度も変化させてもよい。
【0037】
図12に示されるように、その涙滴形状が磁石位置により規定される同様の涙滴型保持具240を接合部220に隣接した中間180°急コーナー部に用いる。これらも、内部磁石位置242、広がり位置の標準磁石位置244、先端で更に外側に広がった外部磁石位置246を有する。
【0038】
別のアプローチは、180°急コーナー部に隣接したプラズマ軌道の半径を上げることである。これは、内部磁石位置232、242から磁石を除去し、広がった標準位置234、244又は更に広がった外部位置236、246に磁石を集中させることで達成可能である。涙滴形状の効果は、滑らかな末広がり、末狭まりの内側磁石とそれに伴いプラズマ軌道を設け、急な湾曲を軽減することである。この緩やかな広がりは、外部先端部の曲率は下がるがTに入る部分の曲率は上がる、従来のT型端部を有する内側磁極の使用と対照的である。広がりにより、180°を越えるコーナー部にプラズマ軌道の凸部と、凸部を補い、プラズマ軌道の直線部へとつながる一対の凹部とが形成される。凹部は、湾曲部に沿って整列された少なくとも3つの磁石を含むことを特徴としてもよい。
【0039】
図10、11に図示されるように、半径方向外側内部コーナー保持具250は半径方向内側内部コーナー保持具252と共に形成する鋸歯状縁部を有し、曲線を描く噛合型の二列の標準磁石位置254を規定する。しかしながら、半径方向外側内部コーナー保持具250には追加の磁石穴256が穿孔されているため、交換用又は追加の磁石を用いてプラズマ軌道を半径方向外側に押し出すことが可能となる。更に、半径方向内側内部コーナー保持具252に穿孔された追加の磁石穴258により、磁場の調節が可能となる。
【0040】
マグネトロン200を湾曲コーナー部262を有する帯状ターゲット260に並置して、ターゲットに対して短距離を走査してもよい。湾曲コーナー部262のプラズマ軌道の外側の帯状ターゲット260部分に選択的に再堆積が生じるのを防止するために、プラズマ軌道形状の曲率をターゲットの湾曲コーナー部262の曲率とほぼ等しくすることが望ましい。従って、一体型外部コーナー保持具264に、半径方向内側に多数の追加の磁石穴268を穿孔するだけでなく、単列の標準磁石穴266を穿孔する。標準磁石穴266の磁石を減らして、追加磁石穴268の一部又は全てに磁石を集中させることで、プラズマ軌道を半径方向内側に押し込み、ターゲットの湾曲コーナー部262に沿わせることが可能である。
【0041】
図13の平面図に図示のターゲットアセンブリ270は、6つの帯状ターゲット260に関連づけられ、かつ平行に配置された6つの帯状マグネトロン200を含む。各帯状マグネトロン200は、上記記載の特徴を有していてもよい。
【0042】
上記記載の技法は、二段式褶曲マグネトロンとは別のマグネトロンに応用してもよい。特に、単一レーストラック型マグネトロンでは、プラズマ軌道の曲率とその2つの急端部に隣接する磁場強度を調節することが有益である。更に、単一の支持プレート上に複数の単一レーストラック型マグネトロンを支持させることで連動させ、弾力的かつ部分的に支持させ、1つ以上のターゲット上を転動させ、その輪郭に沿わせることが可能である。記載の実施形態はターゲットのスパッタ面に対して垂直な軸を有する円筒形磁石を含むが、2つの磁極を隔てる間隙の中心に向かって極性が反対の磁石が45°未満で傾斜しているマグネトロンに本発明の様々な態様を応用可能である。
【0043】
図14の断面図に図示のスパッタリングチャンバ280は、複数の帯状ターゲット282と、関連づけられた帯状マグネトロン284を含む。帯状ターゲット282と帯状マグネトロン284は、上位記載の本発明の特徴を利用したものである。支持プレート32からマグネトロン284を部分的に支持しているバネ機構114は図示していない。各帯状ターゲット282は、プラズマ暗部に対応する、軸方向に延びている側部切欠境界部288を有するターゲット層286を含む。各帯状ターゲット282のターゲット層286は、帯状ターゲット層286とほぼ同じ水平方向範囲の接着層292を介して帯状バッキングプレート290に接着されている。帯状バッキングプレート290は、そこを貫通して冷却路294が穿孔されている突条部で形成されている。軽量充填材料層296は誘電体であってもよく、突条部の間の谷部を充填し突条部上方で平坦化され、その上を帯状マグネトロン284の回転ボール126が転動する平坦面を構成する。帯状ターゲット282は、帯状バッキングプレート290の周縁部を支持する開口部を備えた棚部298を含む、図示していない機械構造によりチャンバ18上に固定的に支持されている。帯状ターゲ
ット282に電力を供給し、スパッタ作用ガスのプラズマを励起する。
【0044】
帯状ターゲット282により、軸方向に延びる接地アノード300を、2つの隣接する帯状ターゲット282の間の切欠境界部288により形成された間隙内に保持しながら、ターゲットのスパッタ面に向かって突出させことが可能となり有利である。接地アノード300は絶縁体302により帯状バッキングプレート290から電気的に隔離されており、絶縁体は充填材料層296の延長部から構成してもよく、高真空スパッタリングチャンバ18と低真空バックチャンバ22との間の真空シールとしてもよい。反対に、帯状ターゲット282に電力供給し、絶縁体302及びプラズマ暗部より狭いその他の真空間隙によりアノード300から隔離し、スパッタ用プラズマの発生におけるカソードとしてもよい。スパッタチャンバ280は電気接地シールド304を更に備えることで、側部のアノードとしても機能させながら、チャンバ側壁を堆積から保護する。絶縁体306は、棚部298からチャンバ18と棚部が支持する帯状バッキングプレート290を電気的に隔離する。しかしながら、或いは絶縁を棚部298とそれが支持するところの異なる帯状ターゲット282のそれぞれとの間に設けてもよい。
【0045】
支持プレート32をパターン状に走査させることで、全てのマグネトロン284を同パターンと実質的に同期して走査させる。マグネトロンの経路間におけるズレは、主に、支持プレート上のその支持体の弾力性から生じる。走査パターンは直交するx及びy軸の1つに沿って延びたものでよく、或いは、例えばx及びy軸に沿って延びる部分を有するO型パターン、2つの対角線に沿って延びる部分を有するX型パターン、対向する平行辺とその間の対角線に沿って延びるZ型パターン、又はその他の複雑なパターンである。複数のマグネトロンに対して単一の走査機構しか必要としないが、当然ながら、複数セットの複数のマグネトロン、及び関連する走査機構が可能である。
【0046】
本発明の態様の一部は二段式蛇行マグネトロン又は分離かつ弾力的に支持されたマグネトロンに制限されないことを強調しなくてはならない。
【0047】
本発明の様々な態様を用いて更に均一なスパッタリングや更に完全なターゲット利用をしてもよい。