(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された自動分析装置では、ラックの搬送経路は分析ユニットにラックが搬送される前に決定される。よって複数の分析ユニットでの分析が必要である場合は、上流側から順に搬送されることになり、上流側で分析しなければならない検体が多数ある場合はラック搬送路が渋滞し、下流側でのみ分析を行いたい検体があっても追い越しをすることはできない。
【0007】
また、特許文献2に記載された自動分析装置では、下流側から上流側にラックを搬送する復路を設けているが、先に下流側の分析ユニットにラックを搬送した場合、一旦最上流であるラック供給ユニットまでラックを戻した後に上流側の分析ユニットに搬送しなければならず、時間がかかる上に供給部から供給されるラックの処理を妨害することになる。 さらに自動再検が必要な検体は収納ユニット前の待機部に集約されるため、処理速度が異なる複数の分析ユニットから構成されるシステムの場合、結果が出力され再検を行いたいラックがあっても、先に待機部に入ったラックを追い越すことができず無駄な待ち時間が発生する。また、再検時にラック供給部まで戻るために時間がかかるのと供給されるラックの進路を妨害してしまうことは同様である。
【0008】
これらを解決する手段として、本発明では機能モジュールに対となるバッファユニットを設けたシステムを構成するが、バッファユニット内に複数の検体ラックを保持可能とするため、何らかの障害により装置が停止した後のリセット処理が問題となる。
【0009】
リセットを行う場合、検体容器識別コードあるいは検体ラック識別コードの読取りを再度行ってから処理を再開するのが通常である。これは、例えば搬送途中であったラックの位置が不定となることや、装置停止中に装置内の検体ラックがオペレータによりマニュアルで取り除かれた場合などに本当に処理すべき検体であるとの確証が取れなくなるため、検体の取り違いを防止するためである。
【0010】
すなわち、リセット時には全ての検体ラックを一旦収納部に格納し、オペレータによる再投入を行う必要があり、多数の検体ラックを処理するシステム、特に本構成のようにバッファユニットを持ち、大量のラックを処理するシステムにおいては、リセット時間が膨大なものとなる。
【0011】
これを緩和する手段として、例えば特許第3655509号に記載されたシステムのように、検体ラックの搬送経路中に検体容器識別コードあるいは検体ラック識別コードの読取り部を設け、読取った情報により搬送経路(分岐)を確定し処理を再開する手段がある。
【0012】
しかし、読取り部までは無条件に検体ラックを順番に搬送する必要があるため、読取り部に至るまでの搬送経路では渋滞が発生することになり、特に複数のモジュールで構成されるシステムにおいては効率が悪い。また緊急で処理すべき検体があっても追い越して処理を行うことはできないなどの問題が発生する。
【0013】
本発明の目的は、効率良く運用するのに好適な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0015】
検体分析を行う機能モジュールと、前記機能モジュールに隣接された配置され、検体ラックを一時的に待機させることができる前記検体ラックの短手方向に設けられた複数のスロットを備えたバッファユニットと、前記スロットに収容された検体ラックを、前記機能モジュールで分注するために前記スロットから前記検体ラックの長手方向に引き出す機構と、前記機構が前記スロットに収容された検体ラックを引き出す位置で、前記検体ラックに付された検体ラックIDを読取るID識別ユニットと、を備え、前記ID識別ユニットは、前記検体ラックIDを読取った後、当該検体ラックIDを読み取った検体ラックのスロットから1スロット分離れたスロットに収容された検体ラックの検体ラックIDを読取る自動分析装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、バッファユニット内に検体ラック識別コードの読取り手段を設けることにより、バッファユニット内の検体ラック情報をバッファユニット内で確定し、効率良く運用するのに好適な自動分析装置を提供することができる。
【0017】
また、バッファユニット内の全ての検体ラックを一度バッファ部スロット内に格納することで、緊急度の高い検体の処理を優先させて処理を再開させることが可能である。
【0018】
また、複数の機能モジュールで構成されるシステムにおいても、各々の対となるバッファユニットで並行して処理が行えるため、システム構成に左右されることなく短時間での処理が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
はじめに本発明におけるシステムの構成と検体ラックの搬送について以下、説明する。
【0021】
第1図は、本発明の一実施例による検体処理システムの平面図である。第1図では、検体ラックの投入と収納を行うサンプラユニット100,サンプラユニットと各機能モジュールとの間で検体ラックを搬送するラック搬送ユニット200と、ラック搬送ユニット200に沿って配置される、ラック搬送ユニット200との間で検体ラックの移載を行い、また一時的に検体ラックを待機させるバッファユニット300a,300b,バッファユニット300a,300b各々と対をなしバッファユニットの右側に配置される機能モジュール400a,400b,バッファユニット300aの左側に配置される付属モジュール500で構成されるシステムを例に示している。
【0022】
第2図にサンプラユニット100の構成を示す。
【0023】
サンプラユニット100は、検体ラックをシステムに投入するための投入部101,検体ラックをシステムから取り出すための収納部102,投入部からの検体ラックをラック搬送ユニット200に搬送する投入ラック移動ユニット103,検体ラックのIDを識別するためのラックID識別ユニット104,検体ラックに検体容器が架設されているかの確認と検体容器の高さを検出するための検体容器高さ検出ユニット105,検体ラックに架設された検体容器に貼り付けられた検体IDを識別するための検体ID識別ユニット106,ラック搬送ユニット200からのラックを収納部102まで移動する収納ラック移動ユニット107,緊急検体ラック、あるいは本システムより上流側に接続される検体搬送システムからの検体ラックを本システムに投入するための緊急検体投入部108を備えている。
【0024】
投入部101に架設された検体ラックは、投入レバー109により投入ラック移動ユニット103に搬送される。投入ラック移動ユニット103は、投入部から移動されたラックをラックID識別ユニット104位置に移動してラックIDの読取りを行った後、検体容器高さ検出ユニット105に移動する。
【0025】
検体容器高さ検出ユニットでは、検体ラックの各ポジションに検体容器が架設されているか否かの確認と検体容器の高さを検出する。
【0026】
その後検体ラックは検体ID読取り位置に移動され、検体ID識別ユニット106による検体IDの読取りが行われる。
【0027】
以上のラックID、および検体IDの情報に基づき、検体ラックに対して必要な処理が決定され、搬送先である機能モジュールが決定される。
【0028】
投入ラック移動ユニット103は検体ラックの搬送先が決定された後、ラック搬送ユニット200に検体ラックを移動させる。
【0029】
緊急検体ラック、あるいはサンプラユニットの上流側に接続された検体搬送システムは、緊急検体投入部108からサンプラユニット100に投入される。緊急検体投入部108から投入されたラックは、前述の検体投入部101からのラックと同様の処理が行われた後に、ラック搬送ユニット200に移動される。
【0030】
また、各機能モジュールでの必要な処理が終わった検体ラックは、収納ラック移動ユニット107により収納部102前まで搬送され、収納レバー110により収納部102に格納される。
【0031】
第1図のラック搬送ユニット200は、2つのラック搬送レーン、すなわちサンプラユニット100から各機能モジュール400a,400bに検体ラックを搬送する送りレーン201と、各機能モジュール400a,400bからサンプラユニット100に検体ラックを搬送する戻りレーン202を備えている。
【0032】
第3図にバッファユニット300の構成を示す。
【0033】
バッファユニット300は、ラック搬入出待機部301,バッファ部302,保冷部303,モジュール搬入出待機位置304,ラック搬送部310,1ラック投入取り出し部320,ID読取り部321から構成し、駆動機構としてラック移載機構330,ラック移動機構360,ラック搬出機構370,371により検体ラックの移動を行う。
【0034】
ラック搬入出待機部301は、1ラックを待機させるスペースを有し、ラック搬送ユニット200からの検体ラックをバッファユニット300に移載する位置であり、かつバッファユニット300からラック搬送ユニット200に搬出する検体ラックを待機させる位置である。
【0035】
バッファ部302は、検体ラックを一時的に待機させることができる独立した複数のスロットで構成される。
【0036】
保冷部303は、精度管理検体などが定期的に機能モジュールでの処理が必要とされる検体が架設された検体ラックを複数個待機させることが可能であり、検体の蒸発を防止するための保冷機能を備えている。
【0037】
モジュール搬入出待機位置304は、1ラックを待機させるスペースを有し、バッファユニット300からの検体ラックを機能モジュール400に搬出する位置であり、かつ機能モジュールで処理が終わった検体ラックをバッファユニット300に搬入する位置である。
【0038】
ラック搬送部310は、モジュール搬入出待機位置304と機能モジュール400との間で検体ラックの搬送を行う部分である。
【0039】
1ラック投入取り出し部320は、ラック搬送ユニット200を介さずに機能モジュールでの検体ラック処理を行うための検体投入取り出し部となっている。
【0040】
ラック移載機構330は、ラック搬入出待機部301と前述のラック搬送ユニット200の送りレーン201との間、および戻りレーン202との間でY方向に双方向で検体ラックの移載を行うものである。
【0041】
サンプラユニット100から送りレーン201上に搬送された検体ラックは、バッファユニット300とのラック移載位置である送りレーンラック搬入出位置にラックを移動する。バッファユニット300はラック移載機構330により、検体ラックをラック搬入出待機部301に移載する。
【0042】
またバッファユニット300で処理が終了したラックで収納部102に搬送するラックは、ラック搬入出待機部301からラック移載機構330により戻りレーンラック搬入出位置204にラックを搬出される。その後、戻りレーン202はサンプラユニットの収納ラック移動ユニット107にラックを搬送する。
【0043】
次にバッファユニット300内でのラック移動動作について説明する。
【0044】
ラック移動機構360は、1ラックを保持しY方向に移動可能なバケット361と、バケットとともにY方向に移動しバケット内のラックをX方向に移動するためのX機構362,X機構に取り付けられた上下動するキャリッジ363で構成される。
【0045】
ここでは、ラック搬入出待機部301の検体ラックをバッファ部302に移動する動作を例に、ラック移動機構の詳細について第4図〜第7図を用いて説明する。
【0046】
まずラック移動機構360はY駆動モータ364を駆動しバケット361をラック搬入出待機部301の位置に移動する(第4図)。また同時にX駆動モータ365を駆動し、X機構362に取り付けられたキャリッジ363をラック搬入出待機部301の検体ラック下まで移動し、検体ラックの底部の溝にキャリッジ363が入り込む位置に移動した時点でZ駆動モータ366を駆動し、キャリッジ363を上昇させる(第5図)。
【0047】
バケット361,ラック搬入出待機部301の検体ラック搬送面にはキャリッジ363が上昇したままX方向に移動可能であるようにスリット367が設けられている。なお、スリットはバッファ部302,保冷部303など、ラック移動機構360を用いて検体ラックを移動する部位にも同様に設けられている。
【0048】
次にX駆動モータ365を駆動してキャリッジ363をバケット361下まで移動することにより検体ラックをバケット上に移動する(第6図)。
【0049】
バケット361上に検体ラックを移動した後、Y駆動モータ364を駆動し、移動先のバッファ部302スロット位置までバケット361を移動する。このときバケット上のラックがX方向に動き、バケットから飛び出すのを防止するため、キャリッジ363は上昇したままである。
【0050】
バッファ部302のスロット位置まで移動した後、X駆動モータ365を駆動し、キャリッジ363をスロット下に移動することで検体ラックをバッファ部302スロット位置に移動する(第7図)。
【0051】
本実施例では、ラック搬入出待機部301からバケット361上へのラック移動について説明したが、バッファ部302,保冷部303などからバケット361上に検体ラックを移動する場合も同様である。またバケット361上からバッファ部302へのラック移動について説明したが、保冷部303,モジュール搬入出待機位置304などに検体ラックを移動する場合も同様であり、バッファ部302などのように検体ラックを待機させるスロットを独立して設けることにより、任意の検体ラックにランダムにアクセスが可能である。
【0052】
次にバッファユニット300から機能モジュール400への検体ラック搬送動作について第8図を用いて説明する。
【0053】
機能モジュール400に搬送される検体ラックは、ラック移動機構360によりモジュール搬入出待機位置304に移動され、ラック搬出機構370によりラック搬送部310に移動される。
【0054】
ラック搬送部310は各機能モジュールに適した機構構成となる。本実施例では機能モジュール400が、ラック搬送部からのラックを機能モジュール内に検体ラックを引き込み、分注などの処理が終了した後にラック搬送部に検体ラックを戻すタイプの場合を例に説明する。また本実施例での機能モジュールは、ラックの引き込みと戻しを別々の位置にて行い、内部に複数ラックを直列に保持できるバッファを有する。
【0055】
ラック搬出機構370によりラック搬送部310に移動された検体ラックは、ラック移動機構により機能モジュールの検体ラック搬入位置401まで移動される。
【0056】
機能モジュール400の図示しないラック搬入機構により機能モジュール内に引き込まれた検体ラックは、分注などの処理が行われる処理位置402まで移動され、必要な処理が行われる。この間、バッファユニット300は、次に機能モジュール400で処理すべき検体ラックがあれば同様の手順にてラック搬送部を介して機能モジュールに検体ラックを移動し、機能モジュールはモジュール内バッファ位置403に検体ラックを待機させる。
【0057】
機能モジュール400で処理が終了した検体ラックは、図示しないラック搬出機構により再びラック搬送部310のラック搬出位置404に戻される。ラック移動機構は機能モジュール400に検体ラックを搬送したときと逆の方向に検体ラックを移動し、バッファユニット300のモジュール搬入出待機位置304に検体ラックを搬出する。
【0058】
検体ラックの搬送動作についての別の実施例を第9図〜第13図を用いて説明する。
【0059】
別の実施例での機能モジュール410は、ラック搬送部からのラックの引き込みと戻しを同じ位置にて行い、内部に複数ラックを円周上に保持できる扇形バッファ411を有する。
【0060】
ラック搬出機構370によりラック搬送部310に移動された検体ラックは、ラック移動機構により機能モジュールの扇形バッファ411のスロット412まで移動される。
【0061】
機能モジュール410は、扇形バッファ411を回転させてスロット412にある検体ラックを機能モジュール410の処理ライン414に移動させ処理を行う。また、機能モジュール410が処理を行っている間、ラック搬出機構370は次に機能モジュール410で処理する検体ラックを、ラック搬送部310を介して扇形バッファのスロット413に移動させる。
【0062】
機能モジュール410で処理が終了した検体ラックは、処理ライン414から扇形バッファ411のスロット412に戻される。機能モジュール410は扇形バッファ411を回転させてスロット413にある検体ラックを処理ライン414に移動させ処理を行う。
【0063】
分析が終了し、扇形バッファ411のスロット412に保持されているラックは、扇形バッファ411の回転によりラック搬送路310に戻され、扇形バッファ411に検体ラックを搬送したときと逆の方向に検体ラックを移動し、バッファユニット300のモジュール搬入出待機位置304に検体ラックを搬出する。連続で、機能モジュール410が処理を行う場合、ラック搬出機構370は次に機能モジュール410で処理する検体ラックを、ラック搬送部310を介して扇形バッファのスロット412に移動させる。
【0064】
このように機能モジュール410が検体ラックを処理している間に、扇形バッファ411のうち1つのスロットに常にラックを移動させておくことにより、機能モジュールでの処理が途切れる時間を最小にするようにラックの入れ替えを行うことが可能となる。
【0065】
次にバッファユニット300から付属モジュール500へのラック搬送動作について第14図を用いて説明する。本実施例における付属モジュール500は、バッファユニット300の左側に配置され、独立した検体ラックの搬入位置と搬出位置を有している。
【0066】
付属モジュール500へ搬出する検体ラックはラック移動機構360のバケット361上に移動され、ラック移動機構360のY駆動モータ364を駆動し付属モジュール500のラック搬入位置501に移動する。その後ラック搬出機構371はバケット361上の検体ラックを付属モジュールの搬入ラインに押し出して搬出する。
【0067】
付属モジュールに搬入された検体ラックは、処理位置502で分注などの処理が行われた後、搬出ラインのラック搬出待機位置503に移動する。
【0068】
ラック搬出待機位置503からの検体ラック搬出要求により、バッファユニット300のラック移動機構360はY駆動モータ364を駆動し、付属モジュールのラック搬出位置503にバケット361を移動する。その後付属モジュールのラック搬出機構504により、検体ラックはバケット361上に移動する。
【0069】
次に1ラック投入取り出し部320から投入された検体ラックの搬送動作について説明する。
【0070】
オペレータにより1ラック投入取り出し部320に検体ラックが架設されると、ラック移動機構360はY駆動モータ364を駆動しバケット361を1ラック投入取り出し部位置320に移動し、X駆動モータ365を駆動しキャリッジ363を検体ラック位置まで移動し上昇させる。その後、ID識別ユニット321位置に検体ラックを移動させてラックID読取りを行い、続いて検体ラックを移動させて図示しない検体容器有無検出器による検体容器架設有無の確認と検体IDの読取りを行う。読取りを行ったラックIDおよび検体IDの情報を元に機能モジュールでの処理内容が決定される。検体IDの読取りが終了した検体ラックは、バケット361上に移動され、前述の搬送動作にしたがい、機能モジュールや付属モジュールへの搬送が行われ処理が行われる。処理が終了した検体ラックは、同様にバケット361を介して1ラック投入取り出し部320へ搬出され処理が終了する。
【0071】
本実施例に示す1ラック投入取り出し部320のような検体ラック投入取り出し部をバッファユニットに備え、また前述のように電源,純水の供給などが独立して供給される構成とすることにより、前述のサンプラユニット100やラック搬送ライン200が障害等により動作することができない場合であっても、機能モジュールでの処理を行うことが可能であり、またバッファユニット300内のバッファ部302等に待機していた検体ラックも、図示しないスイッチや操作部からオペレータが搬出指示を入力することにより1ラック投入取り出し部320から搬出することが可能である。
【0072】
次に本発明によるリセット動作の一実施例について以下に説明する。
【0073】
前述のとおり、リセット時にはどの位置にどの検体ラックが存在するかの確定が必要である。リセットが開始されると、バッファユニット300ははじめに各機構の原点位置出し動作を行う。
【0074】
次にラック移動機構360のバケット361をバッファ部のスロット位置まで移動し、スロット内の検体ラックをバケット361に移動させる動作を行う。
【0075】
このとき、バケットに設けられたラックバケット内ラック検知器368がラックを検出した場合、すなわちスロット内に検体ラックが存在していた場合には、バケット361を1ラック投入取り出し部320に移動し、ID識別ユニット321位置に移動させて検体ラックIDの読取りを行う。読取りが終了した後、再びバケットをそのラックがあった位置に移動し、スロット内にラックを戻す動作を行う。
【0076】
なお、バケットのラックバケット内ラック検知器368がラックを検出しなかった場合は、スロット内にはラックが存在していないこととなるため、バケットを次のスロットに移動させて上記動作を行う。
【0077】
これらを繰り返し、各スロット内の検体ラック有無情報と、スロット内にある全てのラックの検体ラックID情報を確定する。
【0078】
次に、スロット内ではなくバッファユニット300内の機能モジュール400への搬送経路上、あるいは機能モジュール400内に残ったラックの処理を行う。処理の方法としては上記同様にラックをバケット361に移動しID識別ユニット321位置に移動させて検体ラックIDの読取りを行う。読取りが終了した後は、空きスロット内にラックを格納する。
【0079】
上記の実施例では、最小限のハードウェア構成でリセット処理時間を短縮することが可能であるが、空きスロットに対してもバケットに検体ラックを移動させる動作を行うため、例えばバッファ部にラックが全く存在しない場合に無駄な処理時間が生じてしまう。
【0080】
これを解決するための別の一実施例を以下に説明する。
【0081】
別の実施例におけるバッファユニットの構成を第15図に示す。第3図と構成が異なる部位は、スロット内のラック有無を検出するスロット内ラック検知器368がバケットに備わっていることである。
【0082】
リセットが開始されると、バッファユニット300ははじめに各機構の原点位置出し動作を行いラック移動機構360のバケット361をバッファ部のスロット位置まで移動する点は同じである。次にバケット361に備わるラックスロット内ラック検知器368によってスロット内にラックが存在するか否かを検出する。
【0083】
全てのスロット内のラック有無状況を検出後、バケット361をラックが有ったスロット位置に移動し、スロット内のラックをバケットに移動、ID識別ユニット321位置に移動し検体ラックIDの読取りを実施、元のスロットにラックを戻す動作を行う点は前記実施例と同じである。
【0084】
また、バッファユニット300内の機能モジュール400への搬送経路上、あるいは機能モジュール400内に残ったラックの処理についても前記実施例と同じである。
【0085】
上記実施例ではラック検知器を追加することにより空きスロットに対して機構動作を行う必要がないため効率が向上するが、以下に記述する別の一実施例によると更に効率良くリセットを行うことが可能である。
【0086】
さらに別の実施例におけるバッファユニットの構成を第16図に示す。第15図と構成が異なる部位は、ID識別ユニット321がバケットに取り付けられていることである。なお本実施例においては、スロット間の最少ピッチAと、ラックスロット内ラック検知器368とID識別ユニット321の取り付けピッチBは等しくなっている。
【0087】
第16図の構成におけるリセット処理は以下のように行われる。
【0088】
リセットが開始により、各機構の原点位置出し動作を行い、次にラック移動機構360のバケット361をバッファ部のスロット位置まで移動し、バケット361に備わるラックスロット内ラック検知器368によってスロット内にラックが存在するか否かを検出する点は前記実施例と同じである。第17図はスロット302−1のラックの有無を検出している状態を示している。
【0089】
次にバケット361を1スロット分移動させる。このとき前動作にてスロット302−1にラックが存在していた場合は、ID識別ユニット321により検体ラックIDの読取りを行う。またこのとき同時にスロット302−2のラック有無の検出を行う。(第18図)
以降スロット302−2の検体ラックID読取りと同時にスロット302−3のラック有無検出を行うというように全てのスロットに対してラック有無情報と検体ラックID情報の確定を行っていく。
【0090】
その後のバッファユニット300内の機能モジュール400への搬送経路上、あるいは機能モジュール400内に残ったラックの処理を行うが、これらのラックはバッファ部の空きスロットに格納し、1スロット分バケット361を移動させてID識別ユニット321により検体ラックIDの読取りを行う。
【0091】
なお、ラックスロット内ラック検知器368とID識別ユニット321の取り付けピッチBがスロット間の最少ピッチAの整数倍となっていれば、上記同様にスロット内のラック有無検出と検体ラックID読取りが同時に行えるため効率良い運用が可能である。
【0092】
上記の3つの実施例においては、順に処理時間の短縮が可能であるが、逆にハードウェアの追加が必要になるなどコストアップとなるため、実際にはシステムに求められるリセット処理能力と照らし合わし、方式を選択することが望ましい。
【0093】
以上述べてきたように、ラック搬送ユニット200からバッファユニット300に搬入された全てのラックはバッファ部302のスロット内に格納された状態となり、かつスロット内のどの位置にどのラックが格納されているのかが既知の状態となる。
【0094】
システムの制御部は、各々の検体すなわち検体を保持する検体ラックに対し、投入部101において行うべき処理を既に確定している。さらにリセットが開始される以前に、その検体ラックに対しての処理状態、すなわち、未測定,測定結果待ち、測定済で再検待ち、測定済で収納待ち、他の機能モジュールでの処理要否などの情報を記憶している。
【0095】
よってバッファユニット300は、バッファユニット300内に存在しているラックに対して行うべき処理をシステムの制御部に問い合わせを行う。
【0096】
制御部は、各機能モジュールの復帰状況に基づきラックの搬送先を再決定し、バッファユニット300に対して指示を行う。すなわち、リセット時に障害が復旧できずオフラインとなった機能モジュールが存在した場合などには、その機能モジュールで処理すべきであった処理を他の機能モジュールで行うことが可能であるかを判断し、可能であれば他の機能モジュールに搬送経路を設定し、不可能である場合には収納部に搬送経路を決定するなど、リセット前に決定された経路とは異なる経路設定を再スケジューリングする。
【0097】
なお、複数の機能モジュール400で構成されるシステムにおいては、上述の処理は完全に並列で行うことが可能であり、従来の方式に対してリセット処理、および再測定再開までの時間を大幅に短縮することが可能である。