特許第5771938号(P5771938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771938露光方法、サーバ装置、露光装置及びデバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771938
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】露光方法、サーバ装置、露光装置及びデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
【請求項の数】40
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2010-231548(P2010-231548)
(22)【出願日】2010年10月14日
(65)【公開番号】特開2012-84793(P2012-84793A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】沖田 晋一
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−066639(JP,A)
【文献】 特開平07−084357(JP,A)
【文献】 特開2010−080512(JP,A)
【文献】 特開平04−192317(JP,A)
【文献】 特開昭63−041021(JP,A)
【文献】 特開2008−026656(JP,A)
【文献】 特開2007−103882(JP,A)
【文献】 特開2004−200430(JP,A)
【文献】 特開平08−264428(JP,A)
【文献】 特開平08−227845(JP,A)
【文献】 特開2005−294473(JP,A)
【文献】 特開平10−242039(JP,A)
【文献】 特開2009−071103(JP,A)
【文献】 特開2003−086479(JP,A)
【文献】 特開2009−266864(JP,A)
【文献】 特開2001−100392(JP,A)
【文献】 特開平11−045846(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/072502(WO,A1)
【文献】 特開平04−225213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに設けられたパターンの像を基板に露光する露光方法であって、
前記基板に露光された転写パターンを計測すること、
前記転写パターンの計測結果と、前記マスクの熱変形に対応するマスク伸縮変動量に基づいて、マスク伸縮補正値を算出すること、
該マスク伸縮補正値を用いて像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方についての調整を行うこと、及び
前記調整が行われた前記像を前記基板に投影すること、
を含み、
前記調整は、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分と、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分の変動率との少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行う
露光方法。
【請求項2】
前記パターンは、フォーカスモニタ可能なパターンであることを含み、
前記マスク伸縮変動量は、フォーカス制御誤差に対応する補正量を含む
請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記マスク伸縮変動量は、前記マスクの熱変形量に関する第一関数に基づいて設定され、
前記調整は、前記第一関数を補正することを含む
請求項1又は請求項2に記載の露光方法。
【請求項4】
前記第一関数の補正は、
前記マスク伸縮変動量を用いて前記関数の更新値を算出し、前記更新値を用いて前記関数を更新することを含む
請求項3に記載の露光方法。
【請求項5】
前記第一関数は、前記基板に対して前記像を投影する際に用いられる投影レンズの制御トレースデータ、及び、前記像の結像位置を制御するためのフォーカス制御トレースデータ、のうち少なくとも一方に基づいて設定される
請求項3又は請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
前記像面の位置の調整は、前記像の投影方向における前記像面の移動量を調整することを含み、
前記像面の姿勢の調整は、前記投影方向に対する前記像面の傾斜量を調整することを含む
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項7】
前記調整は、前記移動量、前記傾斜量、前記移動量の変動率、及び、前記傾斜量の変動率、のうち少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行う
請求項6に記載の露光方法。
【請求項8】
前記転写パターンの計測は、前記転写パターンの形成に関する他の動作と並行して行う請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項9】
前記像の結像位置の調整に用いられるフォーカス調整機構のフォーカスキャリブレーションの補正値として、前記マスクに設けられた前記パターンの伸縮変動量に基づいて算出された前記マスク伸縮補正値と前記マスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値との差分を算出し、この差分値でフォーカスキャリブレーション値の補正を行う
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項10】
前記フォーカス調整機構の前記フォーカスキャリブレーションの補正値は、請求項9に記載の、前記マスクに設けられた前記パターンの伸縮変動量に基づいて算出された前記マスク伸縮補正値と、前記マスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値と、の差分を算出する、マスクの熱変形量に関する第二関数、及び、請求項3に記載のマスクの熱変形量に関する第一関数に基づいて算出され、
前記フォーカス調整機構の前記フォーカスキャリブレーションの実行は、前記第二関数を補正することを含む
請求項9に記載の露光方法。
【請求項11】
前記第二関数の補正は、前記マスク伸縮変動量を用いて前記第二関数の第二更新値を算出し、
前記第二更新値を用いて前記第二関数を更新することを含む
請求項10に記載の露光方法。
【請求項12】
前記フォーカスキャリブレーション結果に対して、投影時の所定の寄与分を補正して算出されたマスク上のフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスクの伸縮補正値と、前記フォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量との差分、または、この差分の変動率が所定の閾値を超えている場合に前記第二関数を更新することを含む
請求項10又は請求項11に記載の露光方法。
【請求項13】
前記調整は、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分の変動率、前記像面の位置及び姿勢の1次変形成分の変動率及び2次以上の高次変形成分の変動率のうち少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行う
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項14】
前記調整は、前記所定の閾値を超えた対象についての前記関数の更新値を算出することを含む
請求項11又は請求項13に記載の露光方法。
【請求項15】
マスクに設けられたパターンの像を基板に露光する露光方法であって、
前記基板に露光された転写パターンを計測すること、
前記転写パターンの計測結果と、前記マスクの熱変形に対応するマスク伸縮変動量に基づいて、マスク伸縮補正値を算出すること、
該マスク伸縮補正値を用いて像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方についての調整を行うこと、及び
前記調整が行われた前記像を前記基板に投影すること、
を含み、
前記調整は、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分と、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分の変動率との少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行い、
前記転写パターンの形成は、
前記マスクに設けられた前記パターンの前記像を、複数の前記基板を含む第一の単位基板群のそれぞれの前記基板に対して連続して露光することと、
第一の前記単位基板群に対する前記像の露光の後、所定の時間をおいて、前記マスクと同一のマスクに設けられた前記パターンの前記像を、第二の前記単位基板群のそれぞれの前記基板に対して連続して行うことと、
を含み、
前記調整は、第一の前記単位基板群への前記像の露光と第二の前記単位基板群への前記像の露光との間における前記マスク伸縮変動量に基づいて算出された前記マスク伸縮補正値に応じて行うことを含む
露光方法。
【請求項16】
前記転写パターンの計測結果に基づく第一の単位基板群のマスク伸縮変動量と第二の単位基板群のマスク伸縮変動量との間におけるマスク伸縮変動量オフセットは、前記像の結像位置を調整するためのフォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく第一の単位基板群のマスク伸縮変動量と第二の単位基板群のマスク伸縮変動量との間におけるマスク伸縮変動量オフセットに合わせるように補正され、
この補正されたマスク伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値に応じて、前記像の調整量を算出することを含む
請求項15に記載の露光方法。
【請求項17】
前記フォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく第一の単位基板群のマスク伸縮変動量は、第一の前記単位基板群のうち最後の基板に対するマスク伸縮変動量を算出し、
前記フォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく第二の単位基板群のマスク伸縮変動量は、第二の前記単位基板群のうち最初の基板に対するマスク伸縮変動量を算出し、
前記2つの算出結果の差分を前記マスク伸縮変動量オフセットとする
請求項16に記載の露光方法。
【請求項18】
前記転写パターンの計測結果に基づく第一の単位基板群のマスク伸縮変動量と第二の単位基板群のマスク伸縮変動量との間におけるマスク伸縮変動量オフセットは、前記フォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく第一の単位基板群のマスク伸縮変動量と第二の単位基板群のマスク伸縮変動量との間におけるマスク伸縮変動量オフセットに合わせるため、前記2つのマスク伸縮変動量オフセットの差分を前記転写パターンの計測結果に基づく第二の前記単位基板群の各マスク伸縮変動量に加算する
請求項16に記載の露光方法。
【請求項19】
前記フォーカスキャリブレーションの計測結果が、第一の前記単位基板群のうち最後の前記基板に対して所定数以前に行われた前記フォーカスキャリブレーションの計測結果である場合には、警告表示を行う
請求項16から請求項18のうちいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項20】
基板に転写された転写パターンの計測結果を含む入力信号が入力される入力部と、
入力された前記計測結果と、マスクの熱変形に対応するマスク伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値を用いて像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方についての調整データを生成する生成部と、
生成された前記調整データを含む出力信号が出力される出力部とを備え、
前記調整データの生成は、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分と、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分の変動率との少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行う
サーバ装置。
【請求項21】
前記マスクに設けられたパターンは、フォーカスモニタ可能なパターンであることを含み、
前記マスク伸縮変動量は、フォーカス制御誤差に対応する補正量を含む
請求項20に記載のサーバ装置。
【請求項22】
前記マスク伸縮変動量は、前記マスクの熱変形量に関する第一関数に基づいて設定され、
前記調整データは、前記第一関数を補正するデータである
請求項20又は請求項21に記載のサーバ装置。
【請求項23】
前記調整データは、前記マスク伸縮変動量を用いて算出される更新値によって前記第一関数を更新するデータである
請求項22に記載のサーバ装置。
【請求項24】
前記第一関数は、前記基板に対して前記パターンの像を投影する際に用いられる投影レンズの制御トレースデータ、及び、前記像の結像位置を制御するためのフォーカス制御トレースデータ、のうち少なくとも一方に基づいて設定される
請求項22又は請求項23に記載のサーバ装置。
【請求項25】
前記像面の位置の調整は、前記像の投影方向における前記像面の移動量を調整することを含み、
前記像面の姿勢の調整は、前記投影方向に対する前記像面の傾斜量を調整することを含む
請求項20から請求項24のうちいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項26】
前記調整は、前記移動量、前記傾斜量、前記移動量の変動率、及び、前記傾斜量の変動率、のうち少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行う
請求項25に記載のサーバ装置。
【請求項27】
前記転写パターンの計測は、前記転写パターンの形成に関する他の動作と並行して行う
請求項20から請求項26のうちいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項28】
前記生成部は、前記マスク伸縮変動量に基づいて、前記像の結像位置の調整に用いられるフォーカス調整機構のフォーカスキャリブレーション値を補正するデータを生成する
請求項20から請求項27のうちいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項29】
前記フォーカスキャリブレーション値を補正するデータは、請求項28に記載の、前記マスクに設けられたパターンの伸縮変動量に基づいて算出された前記マスク伸縮補正値と、前記マスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値と、の差分を算出する、マスクの熱変形量に関する第二関数、及び、請求項22に記載のマスクの熱変形量に関する第一関数とに基づいて設定され、
前記フォーカス調整機構のフォーカスキャリブレーションの実行は、前記第二関数を補正することを含む
請求項28に記載のサーバ装置。
【請求項30】
前記第二関数の補正は、前記マスク伸縮変動量を用いて前記第二関数の第二更新データを算出し、前記第二更新データを用いて前記第二関数を更新することを含む
請求項29に記載のサーバ装置。
【請求項31】
前記調整データの生成は、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分の変動率、前記像面の位置及び姿勢の1次変形成分の変動率並びに2次以上の高次変形成分の変動率のうち少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行う
請求項20から請求項30のうちいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項32】
前調整データの生成は、前記所定の閾値を超えた対象についての前記関数の更新値を算出することを含む
請求項30又は請求項31に記載のサーバ装置。
【請求項33】
基板に転写された転写パターンの計測結果を含む入力信号が入力される入力部と、
入力された前記計測結果と、マスクの熱変形に対応するマスク伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値を用いて像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方についての調整データを生成する生成部と、
生成された前記調整データを含む出力信号が出力される出力部とを備え、
前記調整データの生成は、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分と、前記像面の位置及び姿勢の0次変形成分の変動率との少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に行い、
前記伸縮補正量は、
前記マスクに設けられた前記パターンの前記像を、複数の前記基板を含む第一の単位基板群のそれぞれの前記基板に対して連続して投影すると共に、第一の前記単位基板群に対する前記像の投影の後、所定の時間をおいて、前記マスクと同一のマスクに設けられた前記パターンの前記像を、第二の前記単位基板群のそれぞれの前記基板に対して連続して行う場合における、第一の前記単位基板群への前記像の投影と第二の前記単位基板群への前記像の投影との間における前記マスク伸縮変動量である
サーバ装置。
【請求項34】
前記入力信号は、第二の前記単位基板群のうち最初の前記基板に対する計測結果を含み、
前記生成部は、
第一の前記単位基板群のうち最後の前記基板に対する前記転写パターンの形成時における前記マスク伸縮変動量を算出すると共に、
最初の前記基板に対する前記計測結果と、算出された最後の前記基板に対する前記転写パターンの形成時における前記マスク伸縮変動量と、に応じて前記調整データを生成する
請求項33に記載のサーバ装置。
【請求項35】
前記入力信号に含まれる前記計測結果が、第一の前記単位基板群のうち最後の前記基板に対して所定数以前に行われたフォーカス調整機構のフォーカスキャリブレーションの計測結果である場合には、警告表示を行う
請求項34に記載のサーバ装置。
【請求項36】
請求項20から請求項35のうちいずれか一項に記載のサーバ装置を備える露光装置。
【請求項37】
マスクに設けられたパターンの像を基板に露光する露光装置であって、
前記像の結像位置を調整するフォーカス調整機構と、
前記フォーカス調整機構を較正する較正装置と、
請求項20から請求項25のうちいずれか一項に記載のサーバ装置から前記マスクに設けられた露光パターンの伸縮変動量と前記マスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量とを受信する受信装置と、
マスクに設けられた露光パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値とマスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値との差分を算出し、この差分値でフォーカスキャリブレーション値の補正を行わせる制御装置と
を備える露光装置。
【請求項38】
前記制御装置は、
前記マスクに設けられた露光パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値と、前記マスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値との差分を算出する、前記マスクの熱変形量に関する第二関数、及び、前記マスクの熱変形量に関する第一関数に基づいてフォーカスキャリブレーションの補正値を算出し、
前記投影光学系のフォーカスキャリブレーションを実行する際には、前記第二関数を補正することを含む
請求項37に記載の露光装置。
【請求項39】
前記制御装置は、前記第二関数の補正の際、前記マスク伸縮変動量を用いて前記第二関数の第二更新値を算出し、前記第二更新値を用いて前記第二関数を更新することを含む
請求項38記載の露光装置。
【請求項40】
請求項36から請求項39のうちいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと
を含むデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法、サーバ装置、露光装置及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶表示素子、撮像装置(CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等)、薄膜磁気ヘッド等のデバイスは高集積化が図られている。特に、半導体素子は、高機能化及び低コスト化等の要請から、種々の電気部品を1チップ上に集積した大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)とされることが多い。LSIは、それが搭載される電子機器全体の性能を大きく左右するため、LSI単体での性能向上が望まれている。とりわけ、LSIに形成されるトランジスタを高速化しつつ低消費電力化する要請が高まっている。
【0003】
上記のデバイスは、例えばフォトリソグラフィ法によって製造される。フォトリソグラフィ法では、例えばマスクに形成されるパターンを基板上に投影する露光処理が繰り返し行われる(例えば、特許文献1参照)。この露光処理では、基板上に既に形成されている転写パターンと、次に形成すべきパターンの光学像とを精確に重ね合わせる必要がある。
【0004】
一方、露光処理の処理時間が経過するにつれて、露光光の照射を受けるマスクの温度が上昇し、処理時間の経過と共にマスクが変形することがある。マスクにこのような熱変形が生じると、基板上に形成された転写パターンに光学像を重ね合わせる際、転写パターンと光学像とがずれてしまう。この結果、重ね合わせの精度が低下することになり、露光精度の低下につながる虞がある。
【0005】
これに対して、例えば露光処理の経過時間とマスクの熱変形量との関係をマスクの種類毎に予めモデリングしておき、同一種類のマスクを用いて露光する場合の熱変形量を予測し、予測結果に応じて投影光学系の倍率を変更することで光学像を補正する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0248744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、マスクが熱変形すると、上記のような重ね合わせの位置ずれの他、投影光学系のベストフォーカス位置が変化する場合がある。この場合、転写パターン上にぼやけた像が投影される場合があり、重ね合わせの精度が低下してしまう一因となる。このため、所期の転写パターンの形成精度を維持する技術が求められている。
【0008】
本発明は、所期の転写パターン形成精度を維持することができる露光方法、サーバ装置、露光装置及びデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様に従えば、マスクに設けられたパターンの露光光像を基板に投影して当該基板にパターンの転写パターンを形成する露光方法であって、転写パターンを計測し、この計測結果に対して投影時の所定の寄与分を補正して算出されたマスク伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値に応じて、露光光像の像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方についての調整を行い、調整が行われた露光光像を前記基板に投影する露光方法が提供される。
【0010】
本発明の第二の態様に従えば、マスクに設けられたパターンの露光光像が基板に投影されて形成される転写パターンを計測した計測結果を含む入力信号が入力される入力部と、入力された計測結果に対して投影時の所定の寄与分を補正して算出されたマスク伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値に応じて、露光光像の像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方についての調整データを生成する生成部と、生成された調整データを含む出力信号が出力される出力部とを備えるサーバ装置が提供される。
【0011】
本発明の第三の態様に従えば、本発明のサーバ装置を備える露光装置が提供される。
【0012】
本発明の第四の態様に従えば、マスクに設けられたパターンの露光光像を基板に投影して基板に前記パターンの転写パターンを形成する露光装置であって、露光光像の結像位置を調整するフォーカス調整機構と、フォーカス調整機構を較正する較正装置と、本発明の第三の態様の一形態に従うサーバ装置から前記マスクに設けられた露光パターンの伸縮変動量と前記マスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量とを受信する受信装置と、マスクに設けられた露光パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値とマスクに設けられたフォーカスキャリブレーション用パターンの伸縮変動量に基づいて算出されたマスク伸縮補正値との差分を算出し、この差分値でフォーカスキャリブレーション値の補正を行わせる制御装置とを備える露光装置が提供される。
【0013】
本発明の第五の態様に従えば、本発明の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された前記基板を現像することとを含むデバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所期の転写パターン形成精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】露光システムの構成を示す図。
図2】露光装置の構成を概略的に示す図。
図3】計測装置の構成を概略的に示す図。
図4】マスクの構成を示す図。
図5】サーバ装置の構成を示すブロック図。
図6】露光システムによる露光処理を示すフローチャート。
図7】露光パターンに基づくマスク伸縮変動量を示すグラフ。
図8】フォーカスキャリブレーション用パターンに基づくマスク伸縮変動量を示すグラフ。
図9】露光システムの他の構成を示す図。
図10】露光システムの他の構成を示す図。
図11】マイクロデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る露光システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、露光システムSYSは、露光装置EX、計測装置MS及びサーバ装置SRを備えている。露光システムSYSは、サーバ装置SRと露光装置EX及び計測装置MSとの間では情報の通信が行われるようになっており、露光装置EXから計測装置MSには、露光対象である基板が搬送されるようになっている。
【0017】
図2は、露光装置EXの構成を示す図である。
図2に示すように、露光装置EXは、パターンMpを有するマスクMを介した露光光ELを基板Pに投影することで基板Pを露光する構成になっており、照明光学系IL、マスクステージMST、投影光学系PL、フォーカス検出装置FD、基板ステージPST及び制御装置CONTを有している。
【0018】
以下、露光装置EXの説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0019】
照明光学系ILは、露光光ELでマスクMを照明する。照明光学系ILは、露光光ELの光源ユニット、オプティカル・インテグレータを含む照度均一化光学系、ビームスプリッタ、集光レンズ系、レチクルブラインド、及び結像レンズ系等(何れも不図示)を含んで構成されている。
【0020】
マスクステージMSTは、照明光学系ILの例えば−Z側に配置されている。マスクステージMSTは、マスク保持機構(不図示)及び駆動機構(不図示)を有している。マスクステージMSTは、例えばマスクMを真空吸着又は静電吸着等により保持し、X方向及びY方向に移動可能に設けられている。
【0021】
投影光学系PLは、露光光ELで照明されたマスクMのパターンMpの像(露光光像)Imを基板Pに投影する。投影光学系PLは、例えば複数の投影レンズなどの光学系を有している。当該光学系は、物体面(マスクM)側と像面(基板P)側との両方がテレセントリックとなっており、所定の縮小倍率β(βは例えば1/4,1/5等)でパターンMpの像Imを基板Pに投影する。なお、マスクパターンMpには、結像特性を計測するための複数のフォーカスモニタ用パターンMfとフォーカスキャリブレーション用パターンMcが形成されている。ここで、フォーカスモニタ用パターンMfとフォーカスキャリブレーション用パターンMcは、別々の場所に設けてもよい。
【0022】
投影光学系PLの光軸AXの方向は、Z方向に設定されている。投影光学系PLには、温度や気圧を検出するセンサと、温度、気圧等の環境変化に応じて投影光学系PLの結像特性等の光学特性を一定に制御するレンズコントローラとが設けられている。センサの温度や気圧の計測結果は制御装置CONTに出力されるようになっている。制御装置CONTは、センサから出力された温度や気圧の測定結果に基づいて、レンズコントローラを介して投影光学系PLの光学特性を制御するようになっている。
【0023】
レンズコントローラは、投影レンズを駆動するレンズ駆動機構を有している。レンズ駆動機構は、各投影レンズを独立して駆動可能である。レンズ駆動機構により、各投影レンズのX方向チルト及びY方向チルトが独立して調整されるようになっている。
【0024】
フォーカス・レベリング検出系FDは、基板ステージPSTに支持されている基板Pの表面の位置及び姿勢を検出する。フォーカス・レベリング検出系FDの検出結果は制御装置CONTに出力されるようになっている。制御装置CONTはフォーカス・レベリング検出系FDの検出結果に基づいて、基板P表面のZ軸方向の位置情報、及び基板PのθX及びθY方向の傾斜情報を検出することができる。
【0025】
基板ステージPSTは、投影光学系PLの−Z側に配置されている。基板ステージPSTは、不図示の基板保持機構及び駆動機構を有している。基板ステージPSTは、例えば基板Pを真空吸着又は静電吸着等により保持し、X方向、Y方向、Z方向、θX方向(ロール方向)、θY方向(ピッチ方向)及びθZ方向に移動可能に設けられている。
【0026】
基板ステージPSTは、基板PのZ方向の位置及びθX方向及びθY方向の傾斜を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込むことができる構成となっている。加えて、基板ステージPSTは、基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行うことができる構成となっている。なお、基板ステージPSTのうちZ方向の位置及びθX方向及びθY方向の傾斜を制御するZチルトステージと、X軸方向及びY軸方向における位置決めを行うXYステージとを別個に設けても良いことは言うまでもない。
【0027】
制御装置CONTは、例えば照明光学系ILの光源の動作や、マスクステージMSTのマスク保持動作及び駆動動作、投影光学系PLのレンズコントローラの動作、フォーカス・レベリング検出系FDの駆動動作、基板ステージPSTの基板保持動作及び駆動動作など、上記各部の動作を制御する。制御装置CONTには、例えば不図示の記憶部及び通信部が設けられている。制御装置CONTは、通信部を介してサーバ装置SRとの間で情報の通信が可能になっている。
【0028】
制御装置CONTの記憶部には、例えばマスクMの種類ごとに設定されたマスク伸縮補正データが記憶されている。マスクMに露光光が照射されると、当該露光光のエネルギーによってマスクMの温度が上昇し、マスクMが熱変形することがある。マスクMが熱変形すると、当該マスクMを介して基板Pに投影される露光光像Imが変形したり、当該露光光像Imの像面がZ方向に移動したり、X方向及びY方向のうち少なくとも一方に傾いたりする場合がある。
【0029】
このため、基板ステージPSTでは、例えばマスクMの熱変形による露光光像ImのZ方向への移動やX方向、Y方向への傾きを矯正するためのフォーカス・レベリングのオフセット補正も行われるようになっている。オフセット補正は、例えば基板ステージPSTの位置及び姿勢のうち少なくとも一方を補正することによって行われる。マスク伸縮補正データは、この基板ステージPSTの位置及び姿勢の補正に用いられるデータである。
【0030】
マスク伸縮補正データは、例えばマスクMの種類ごとのマスク伸縮量に基づいて設定されている。マスク伸縮量は、例えば露光開始からの時間の関数として設定されている。この関数は、例えば実験やシミュレーション、試験露光などによって予め求めておくことができる。したがって、制御装置CONTは、露光開始からの時間に基づいて、投影光学系PLの投影倍率を補正するようになっている。
【0031】
図3は、計測装置MSの構成を示すブロック図である。
計測装置MSは、例えば露光装置EXにおいて基板P上に形成された転写パターンCpを計測する。転写パターンCpには、マスクMのパターンMpに含まれるフォーカスモニタ用パターンMfの転写マークが含まれている。
【0032】
フォーカスモニタ用パターンMfは、例えば図4に示すように、マスクMの各角部、各辺部及び中央部に1つずつ配置されている。当該フォーカスモニタ用パターンMfは、実際のデバイスパターンと隣接するレイアウト上に入れられ、フォーカスモニタ値がプラス・デフォーカスとマイナス・デフォーカスで識別可能で、フォーカスモニタ値が露光量に依存せず、任意の照明条件で使用でき、短時間で高精度に計測可能なパターンであることが求められる。例えば、特開2001−100392、特開2001−189264などが公開されている。
計測装置MSは、転写パターンCpのうちフォーカスモニタ用パターンMfに相当する部分を検出することにより、転写パターンCpのフォーカス条件を検出可能である。
【0033】
図3に戻って、計測装置MSは、ステージ21、計測機構22及び制御装置CONT2を有している。ステージ21は、不図示の基板保持機構及び駆動機構を有している。ステージ21は、基板Pを保持して移動可能に設けられる。計測機構22は、基板P上に形成された転写パターンCpを検出する。計測結果は、制御装置CONT2に送られるようになっている。
【0034】
制御装置CONT2は、不図示の記憶部、判断部及び通信部を有している。記憶部には、例えば計測機構22の計測データを含む各種データが記憶されている。計測データとしては、例えばフォーカス条件のデータなどが挙げられる。フォーカス条件のデータは、それぞれ像ImのZ方向における像面の位置、X方向、Y方向についての像面の傾きについてのデータを含む。
【0035】
判断部は、計測機構22の計測結果と記憶部に記憶された閾値とを比較し、計測結果が閾値を超えたか否かを判断する。通信部は、例えばサーバ装置SRとの間で情報の送受信を行う。計測装置MSと露光装置EXとの間には、露光装置EXから計測装置MSに基板Pを搬送する不図示の搬送装置が設けられている。
【0036】
図5は、サーバ装置SRの構成を示すブロック図である。
図5に示すように、サーバ装置SRは、露光装置側通信部31、計測装置側通信部32、制御部33及び表示部34を有する。露光装置側通信部31は、露光装置EXとの間で情報を送受信する。計測装置側通信部32は、計測装置MSとの間で情報を送受信する。
【0037】
制御部33は、異常検出部35、データ処理部36、ファイル作成部37、表示制御部38及び記憶部39を有している。制御部33には、例えばCPUなどの不図示の制御装置が設けられている。
【0038】
異常検出部35は、計測装置側通信部32で受信される計測装置MSからの異常通知信号を検出する。異常検出部35は、異常通知信号を検出をトリガーとして、露光装置EXに対してデータ要求信号を送信する。データ要求信号は、露光装置EX内の露光データをサーバ装置SRに送信させる信号である。このときの露光データとしては、例えばマスク伸縮補正ファイルや各種ログデータなどが挙げられる。ログデータとしては、例えばレンズ制御トレース変動量、フォーカス制御のトレース変動量などが挙げられる。各データは、それぞれZ方向についての位置データ、X方向及びY方向についての傾きデータを含む。マスク伸縮補正ファイルは、例えばマスクMの種類ごとに予め設定されたデータファイルである。具体的には、マスク伸縮補正ファイルには、露光開始からの時間とマスクMの変形量との関係を示す関数についての、変形量の飽和値及び時定数が含まれている。
【0039】
データ処理部36は、露光装置EXからの露光データに含まれるログデータ及び計測装置MSからの計測データを用いて、基板Pごとに、実際のマスク伸縮変動量やマスクに吸収される露光パワーを算出する。データ処理部36は、算出されたマスク伸縮変動量とマスクに吸収される露光パワーに基づいて、最適なマスク伸縮補正値を算出する。
【0040】
ここで、ログデータについて、フォーカスモニタ用パターンの計測データに基づく像面上下変動量をEMesrZ、マスクの熱変形起因の経時的なフォーカス変動に対する露光中のZ方向への補正量をEexpZとすると、露光処理中のZ方向マスク伸縮変動量Eは、下記[数1]で示す式によって求められる。[数1]で示されるように、マスク伸縮変動量Eは、フォーカスモニタ用パターン計測結果EMesrZに対して、マスクの熱変形に起因する経時的なフォーカス変動に対する露光中のZ方向への補正量をEexpZを加算し、露光中のフォーカスZ制御誤差EerrZを差し引いた値である。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、ログデータについて、フォーカスモニタ用パターンの計測データに基づく像面のロール方向姿勢の変動量をEMesrRoll、マスクの熱変形起因の経時的なフォーカス変動に対する露光中のロール方向への補正量をEexpRollとすると、露光処理中のロール方向マスク伸縮変動量ERollは、下記[数2]で示す式によって求められる。[数2]で示されるように、マスク伸縮変動量ERollは、フォーカスモニタ用パターン計測結果EMesrRollに対して、マスクの熱変形に起因する経時的なフォーカス変動に対する露光中のロール方向への補正量EexpRollを加算し、露光中のロール制御誤差EerrRollを差し引いた値である。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、ログデータについて、フォーカスモニタ用パターンの計測データに基づく像面上下変動量をEMesrZ、マスクの熱変形起因の経時的なフォーカス変動に対する露光中のZ方向への補正量をEexpZとすると、露光処理中のZ方向マスク伸縮変動量Eは、下記[数3]で示す式によって求められる。[数1]で示されるように、マスク伸縮変動量Eは、フォーカスモニタ用パターン計測結果EMesrZに対して、マスクの熱変形に起因する経時的なフォーカス変動に対する露光中のZ方向への補正量をEexpZを加算した値である。
【0045】
ここで、ログデータについて、フォーカスモニタ用パターンの計測データに基づく像面のピッチ方向姿勢の変動量をEMesrPitch、マスクの熱変形起因の経時的なフォーカス変動に対する露光中のピッチ方向への補正量をEexpPitchとすると、露光処理中のピッチ方向マスク伸縮変動量EPitchは、下記[数3]で示す式によって求められる。[数3]で示されるように、マスク伸縮変動量EPitchは、フォーカスモニタ用パターン計測結果EMesrPitchに対して、マスクの熱変形に起因する経時的なフォーカス変動に対する露光中のピッチ方向への補正量EexpPitchを加算し、露光中のピッチ制御誤差EerrPitchを差し引いた値である。
【0046】
【数3】
【0047】
また、基板Pごとにマスクに吸収される露光パワーP(t)[単位はW]は、基板Pごとの平均露光処理時刻をt[単位はsec]、1つ前の平均露光処理時刻からの経過時間を△t[単位はsec]、時刻tにおけるX方向のレンズ制御トレース変動量をELcX(t)[単位はppm]、時刻tより1つ手前のX方向レンズ制御トレース変動量(n成分、n=A、B、C)をELcXn(t−△t)[単位はppm]、露光X飽和値n成分(n=A、B、C)SMag_n[単位はppm/W]、露光X時定数n成分(n=A、B、C)をTMag_n[単位はsec]とすると、下記[数4]に示す式によって求められる。
【0048】
【数4】
【0049】
また、データ処理部36は、時刻tにおけるマスク伸縮変動量ELcX(t)[単位はppm]を示す下記[数5]のモデル式において、時刻tより1つ手前のマスク伸縮変動量ELcXn(t−△t)[単位はppm](n成分、n=A、B、C)と時刻tにおいてマスクに吸収される露光パワーP(t)[単位はW]に基づいて、△t時間ごとに逐次計算を行い、マスク伸縮変動量データとモデル式との残差二乗和が最小となる飽和値SMag_n及び時定数TMag_nを算出する。算出される飽和値SMag_n(n=A、B、C)、時定数TMag_n(n=A、B、C)が最適なマスク伸縮補正値となる。
【0050】
【数5】
【0051】
更に、データ処理部36は、マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動量の時系列データE(t)と、[数4]及び[数5]によって算出される露光パワーP(t)とに基づいて、マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動量に対するZ方向の補正最適値を算出する。
【0052】
マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動の時系列モデル式は、以下の[数6]のように表される。なお、時刻tにおけるZ方向のマスク伸縮変動量をE(t)[単位はnm]、時刻tのZ方向のマスク伸縮変動量(n成分、n=A、B、C)をEZ_n(t)[単位はnm]、時刻tより1つ手前のマスク伸縮変動量をEZ_n(t−△t)[単位はnm](n成分、n=A、B、C)、露光中におけるZ方向への変動の飽和値n成分(n=A,B,C)をSZ_n[単位はnm/W]、露光中におけるZ方向への変動の時定数n成分(n=A、B、C)をTZ_n[単位はsec]とする。この[数6]において、マスク伸縮変動量データとモデル式との残差二乗和が最小となる飽和値SZ_n及び時定数TZ_nを算出する。
【0053】
【数6】
【0054】
更に、データ処理部36は、マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動量の時系列データE(t)と、[数4]及び[数5]によって算出される露光パワーP(t)とに基づいて、マスクMの熱変形に起因する像Imの像面のX方向に対する傾斜変動量の補正最適値を算出する。
【0055】
マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動の時系列モデル式は、以下の[数7]のように表される。なお、時刻tにおけるθX方向(ロール方向)のレンズ又はフォーカス制御トレース変動量をERoll(t)[単位はurad]、時刻tのθX方向レンズ又はフォーカス制御トレース変動量(n成分、n=A、B、C)をERoll_n(t)[単位はurad]、時刻tより1つ手前のマスク伸縮変動量をERoll_n(t−△t)[単位はurad](n成分、n=A、B、C)、露光中におけるθX方向への変動の飽和値n成分(n=A,B,C)をSRoll_n[単位はurad/W]、露光中におけるθX方向への変動の時定数n成分(n=A、B、C)をTRoll_n[単位はsec]とする。この[数7]において、マスク伸縮変動量データとモデル式との残差二乗和が最小となる飽和値SRoll_n及び時定数TRoll_nを算出する。
【0056】
【数7】
【0057】
更に、データ処理部36は、マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動量の時系列データE(t)と、[数4]及び[数5]によって算出される露光パワーP(t)とに基づいて、マスクMの熱変形に起因する像Imの像面のY方向に対する傾斜変動量の補正最適値を算出する。
【0058】
マスクMの熱変形に起因するフォーカス変動の時系列モデル式は、以下の[数8]のように表される。なお、時刻tにおけるθY方向(ピッチ方向)のレンズ又はフォーカス制御トレース変動量をEPitch(t)[単位はurad]、時刻tのθY方向のレンズ又はフォーカス制御トレース変動量(n成分、n=A、B、C)をEPitch_n(t)[単位はurad]、時刻tより1つ手前のマスク伸縮変動量をEPitch_n(t−△t)[単位はurad](n成分、n=A、B、C)、露光中におけるθY方向への変動の飽和値n成分(n=A,B,C)をSPitch_n[単位はurad/W]、露光中におけるθY方向への変動の時定数n成分(n=A、B、C)をTPitch_n[単位はsec]とする。この[数8]において、マスク伸縮変動量データとモデル式との残差二乗和が最小となる飽和値SPitch_n及び時定数TPitch_nを算出する。
【0059】
【数8】
【0060】
尚、ここでは、基板ごとの平均露光処理時刻を用いたが、各基板のショットごとの平均露光処理時刻を用いて、マスク伸縮変動量とマスクに吸収される露光パワーを算出し、最適なマスク伸縮補正値を求めてもよい。
【0061】
ファイル作成部37は、データ処理部36において算出された最適補正値を用いてマスク伸縮補正ファイルを最適化し、最適補正ファイルを作成する。
【0062】
表示制御部38は、データ処理部36における算出結果や、ファイル作成部37において作成された最適補正ファイルのデータを表示部34に表示させる。表示制御部38は、各算出結果を個別に表示させて当該表示を切り替えることもできるし、各算出結果を対応付けた状態で表示させることもできる。
【0063】
記憶部39は、例えば露光装置側通信部31及び計測装置側通信部32を介して受信されたデータや、データ処理部36及びファイル作成部37において処理されたデータなどが記憶される。
【0064】
次に、図6を参照して、上記のように構成された露光システムSYSの動作を説明する。図6は、露光システムSYSによる処理工程を示すフローチャートである。
露光装置EXにおいて基板Pの露光処理が行われる(ステップS1)。制御装置CONTは、露光装置EXの周囲の環境(温度、湿度及びクリーン度を含む)が所定の状態となるよう下位の調整手段等を制御する。環境を調整した後、制御装置CONTは、マスクMをマスクステージMSTのマスク保持部に保持させる。
【0065】
制御装置CONTは、マスクMを保持させた後、マスクアライメント、ベースライン計測等の準備作業が行わせる。その後、制御装置CONTは、基板ステージPSTに基板Pを保持させ、アライメントセンサを用いた基板Pのファインアライメント(EGA;エンハンスト・グローバル・アライメント等)を行わせ、基板P上の複数のショット領域の配列座標を求める。制御装置CONTは、アライメント結果に基づいてレーザ干渉計の計測値をモニタしつつ、駆動機構を制御して基板Pの第一ショットの露光のための走査開始位置に基板ステージPSTを移動させる。制御装置CONTは、マスクステージMSTと基板ステージPSTとのY方向の走査を開始させ、両ステージがそれぞれの目標走査速度に達すると、露光用照明光によってマスクMのパターン領域を照明させ、走査露光を開始させる。
【0066】
マスクMのパターン領域の異なる領域が照明光で逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより、基板P上の第一ショットの走査露光が完了する。これにより、マスクMのパターンが投影光学系PLを介して基板P上の第一ショット領域に縮小転写される。
【0067】
このようにして、第一ショットの走査露光が終了すると、制御装置CONTは、基板ステージPSTをX、Y方向にステップ移動させ、第二ショットの露光のため走査開始位置に移動させる。制御装置CONTは、上記第一ショット領域と同様に、第二ショット領域に対して走査露光を行わせる。当該制御により、基板P上のショット領域の走査露光と次ショット露光のためのステップ移動とが繰り返し行われ、基板P上の露光対象ショット領域の全てにマスクMのパターンが順次転写される。
【0068】
露光処理の処理時間が経過するにつれ、露光光の照射を受けるマスクMの温度が上昇し、処理時間の経過と共にマスクMが変形することがある。マスクMにこのような熱変形が生じると、基板P上に形成された転写パターンCpに露光光像Imを重ね合わせる際、転写パターンCpに対して露光光像Imのフォーカスがずれてしまう場合がある。この結果、露光パターンの線幅精度、及び、重ね合わせの精度が低下することになり、露光精度の低下につながる虞がある。
【0069】
そこで、本実施形態では、例えば露光処理の経過時間とマスクMの熱変形量との関係をマスクの種類毎に予めモデリングしておき、同一種類のマスクMを用いて露光する場合の熱変形量を予測し、予測結果に応じて基板ステージPSTの位置及び姿勢などを変更することで露光光像ImのZ方向の位置、θX方向及びθY方向への傾き(姿勢)を補正する。
【0070】
全てのショット領域にパターンが転写された後、制御装置CONTは、当該基板Pを搬出させる。露光装置EXから搬出された基板Pは、不図示のレジストコーター・デベロッパーによって現像処理され、そして、不図示の搬送機構によって計測装置MSに搬送され、基板Pに転写された転写パターンCpが計測される(ステップS2)。
【0071】
計測装置MSの制御装置CONT2は、計測された転写パターンCpのフォーカス条件に基づいて、当該転写パターンCpを形成する際の像Imの像面の移動量や傾斜量を算出し、これら移動量、傾斜量が所定の閾値を超えたと判断した場合、または、移動量の変動率、傾斜量の変動率が所定の閾値を超えたと判断した場合は(ステップS3のYES)、制御装置CONT2は、異常通知信号をサーバ装置SRに送信すると共に、異常のあった転写パターンCpの計測データをサーバ装置SRに送信する(ステップS4)。
【0072】
サーバ装置SRの制御部33の異常検出部35において、計測装置MSからの異常通知信号が検出されると(ステップS5のYES)、制御部33は露光装置EXに対してデータ要求信号を送信する(ステップS6)。露光装置EXにおいて当該信号が受信されると(ステップS7のYES)、制御装置CONTは、露光データとして、上記のマスク伸縮補正ファイル、レンズ制御トレース変動量、フォーカス制御トレース変動量をサーバ装置SRに送信する(ステップS8)。
【0073】
サーバ装置SRで露光データが受信されると(ステップS9のYES)、データ処理部36は、送信された露光データ及び計測データに基づいて、基板Pごとに、マスク伸縮変動量及びマスクに吸収される露光パワーを算出し、これらの算出結果に基づいて、最適なマスク伸縮補正値である飽和値SZ_n、SRoll_n、SPitch_n(n=A、B、C)及び時定数TZ_n、TRoll_n、TPitch_n(n=A、B、C)を算出する。(ステップS10)。
【0074】
その後、ファイル作成部37は、算出された最適補正値{SZ_n、TZ_n|n=A、B、C}、{SRoll_n、TRoll_n|n=A、B、C}、{SPitch_n、TPitch_n|n=A、B、C}によってマスク伸縮補正ファイル内の飽和値SZ_n、SRoll_n、SPitch_n及び時定数TZ_n、TRoll_n、TPitch_nを最適化し、最適補正ファイルを作成する(ステップS11)。作成された最適補正ファイルは、露光装置側通信部31を介して露光装置EXに送信される(ステップS12)。
【0075】
露光装置EXにおいて最適補正ファイルが受信されると(ステップS13のYES)、制御装置CONTは、送信された最適補正ファイルによってマスク伸縮補正ファイルの内容(飽和値SZ_n、SRoll_n、SPitch_n及び時定数TZ_n、TRoll_n、TPitch_n)を更新する(ステップS14)。制御装置CONTは、更新したマスク伸縮補正ファイルに基づいて基板ステージPSTのZ方向の位置、θX方向への傾き及びθY方向への傾きのうち少なくとも1つを制御し、以降の露光処理を行わせる。
【0076】
このように、本実施形態によれば、マスクMに設けられたパターンMaの露光光像Imを基板Pに投影し当該基板PにパターンMaの転写パターンCpを形成し、計測装置MSにおいて転写パターンCpを計測し、この計測結果に対して、露光処理中のフォーカス補正量の加算を行って、マスク伸縮変動量を算出する。そして、前記マスク伸縮変動量、及び、マスクに吸収される露光パワーに基づいて算出された最適なマスク伸縮補正値に基づいて、露光光像Imの像面の位置及び姿勢のうち少なくとも一方を調整することとしたので、個々に熱変形の特性が異なるマスクMを用いる場合であっても、更には、同じマスクMでも露光装置ごとのマスク吸着状態によって、マスク変形の特性が異なる場合であっても、露光光像Imの調整を迅速に行うことができる。これにより、スループットにほとんど影響を及ぼすことなく、所期の露光精度を維持することができる。
【0077】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
本実施形態では、上記の露光装置EXにおいて、フォーカス・レベリング検出系FDのフォーカスキャリブレーションを行う場合の動作を説明する。本実施形態では、第一実施形態と同一構成の露光装置EXを用いて説明する。したがって、上記実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明する。
【0078】
露光装置EXでは、フォーカス・レベリング検出系FDのキャリブレーション(較正)を行わせるようにしている。この場合、前提条件として照明系の開口絞り板(不図示)の通常絞りが選択され、照明条件として通常照明条件が設定されているものとする。ベストフォーカス位置の検出には、例えば、マスクMのフォーカスキャリブレーション用パターンMcを用いて行う。
【0079】
まず、制御装置CONTは、フォーカス用マスク上のフォーカスキャリブレーション用パターンMcが投影光学系PLの光軸上にほぼ一致するように、マスクステージMSTを移動させる。次に、制御装置CONTは、露光光ELがフォーカスモニタ用パターンMfに照射されるように照明領域を規定する。この状態で、制御装置CONTは、マスクMに露光光ELを照射させつつ、基板ステージPSTをX軸方向に走査させ、フォーカス・レベリング検出系FDを用いてフォーカスキャリブレーション用パターンMcの空間像計測をスリットスキャン方式により行わせる。この動作を、フォーカスキャリブレーション用パターンMcのそれぞれについて行わせる。
【0080】
この際、制御装置CONTは、基板ステージPSTのZ軸方向の位置を所定のステップピッチで変化させつつ、計測マークの空間像計測を複数回繰り返し、各回の光強度信号(光電変換信号)を記憶する。制御装置CONTは、繰り返しにより得られた複数の光強度信号(光電変換信号)をそれぞれフーリエ変換し、それぞれの1次周波数成分と0次周波数成分との振幅比であるコントラストを求める。制御装置CONTは、そのコントラストが最大となる光強度信号に対応する基板ステージPSTのZ位置を検出し、この位置を投影光学系PLのベストフォーカス位置として決定する。制御装置CONTは、フォーカスキャリブレーション用パターンMcのそれぞれについて得られた各ベストフォーカス位置に基づいて所定の統計的処理を行うことにより、Z方向、θX方向及びθY方向におけるフォーカス・レベリング検出系FDのベストフォーカス位置を求めることができる。
【0081】
このようなフォーカスキャリブレーションを行う場合、マスク熱変形は非線形であるため、例えばフォーカスキャリブレーション用パターンMcには合うものの露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に対してはフォーカスずれ(オフセット)が生じてしまう、といった問題が発生する場合がある。例えば、露光処理中、基板5枚ごとにフォーカスキャリブレーションを実行した場合、基板5枚ごとに異なる値のフォーカスオフセットが露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に生じてしまう。
【0082】
これに対して、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に対する最適なマスク伸縮補正パラメータ(時定数と飽和値)とフォーカスキャリブレーション用パターンMcに対する最適なマスク伸縮補正パラメータ(時定数と飽和値)の両方を求めておき、露光処理中にフォーカスキャリブレーションを実行した際は、その時刻における露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮補正量とフォーカスキャリブレーション用パターンMcに基づくマスク伸縮補正量の両方を算出し、その差分をオフセット補正値として、フォーカスキャリブレーション値に加算することにより、従来のフォーカスキャリブレーション時に発生する露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に対するフォーカスずれをなくすることが可能となる。
【0083】
この動作を行うためには、制御装置CONTは、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)と同様に、まず、下記の[数9]、[数10]及び[数11]に示すように、Z方向、θX方向(ロール方向)及びθY方向(ピッチ方向)におけるマスク伸縮変動量(補正しない場合のマスク伸縮変動量)V及びVRoll及びVPitchを算出する。
【0084】
ここで、フォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく像面上下変動量VMesrZが[数9]で示されるように、上下方向マスク伸縮変動量Vである。
【0085】
【数9】
【0086】
ここで、フォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく像面のロール方向姿勢の変動量VMesrRollが[数10]で示されるように、ロール方向マスク伸縮変動量VRollである。
【0087】
【数10】
【0088】
ここで、フォーカスキャリブレーション用パターンの計測結果に基づく像面のピッチ方向姿勢の変動量VMesrPitchが[数11]で示されるように、ピッチ方向マスク伸縮変動量VPitchである。
【数11】
【0089】
次に、マスク上のフォーカスキャリブレーションパターンに基づく、基板Pの露光時におけるマスク伸縮補正量V(t)、VRoll(t)及びVPitch(t)を、次の[数12]、[図13]及び[数14]より算出する。
【0090】
【数12】
【0091】
【数13】
【0092】
【数14】
【0093】
ここで、VZm(t−△t)は、1つ手前の基板PにおけるZ方向のマスク伸縮変動量であり、△tは1つ手前の基板Pの平均露光処理時刻と基板Pの平均露光処理時刻との時間間隔であり、P(t)は、1つ手前の基板Pから基板Pへの露光処理にかけてマスクに吸収される露光パワーであり、TZmとSZmはそれぞれマスクのフォーカスキャリブレーション用パターンMcに対するZ方向の伸縮の時定数と飽和値である。
【0094】
また、VRollm(t−△t)は、1つ手前の基板PにおけるθX方向のマスク伸縮変動量であり、△tは1つ手前の基板Pの平均露光処理時刻と基板Pの平均露光処理時刻との時間間隔であり、PRoll(t)は、1つ手前の基板Pから基板Pへの露光処理にかけてマスクに吸収される露光パワーであり、TRollmとSRollmはそれぞれマスクのフォーカスキャリブレーション用パターンMcに対するθX方向の伸縮の時定数と飽和値である。
【0095】
また、VPitchm(t−△t)は、1つ手前の基板PにおけるθY方向のマスク伸縮変動量であり、△tは1つ手前の基板Pの平均露光処理時刻と基板Pの平均露光処理時刻との時間間隔であり、PPitch(t)は、1つ手前の基板Pから基板Pへの露光処理にかけてマスクに吸収される露光パワーであり、TPitchmとSPitchmはそれぞれマスクのフォーカスキャリブレーション用パターンMcに対するθY方向の伸縮の時定数と飽和値である。
【0096】
次に、制御装置CONTは、露光時の時定数と飽和値を設定することにより、露光処理中でのマスクのZ方向伸縮補正量V(t)、θX方向伸縮量VRoll(t)及びθY方向伸縮補正量VPitch(t)を求める。制御装置CONTは、この結果と、上記算出したマスクの実際のZ方向伸縮変動量VZm(t)、θX方向伸縮変動量VRollm(t)及びθY方向伸縮変動量VPitchm(t)との差を求める。
【0097】
制御装置CONTは、当該差が所定の閾値より大きい場合には、フォーカスキャリブレーション用のマスク伸縮補正パラメータ(飽和値と時定数)を最適化する。具体的には、例えば、Z方向のマスク伸縮の場合、1つ手前の基板Pについての実際の伸縮変動量VZm(t)と、1つ手前の基板Pから基板Pへの露光処理にかけてマスクに吸収される露光パワーP(t)、及び、1つ手前の基板Pの露光と基板Pの露光との時間間隔△tをそれぞれ上記[数12]に代入して、基板P露光時のマスク伸縮補正量を算出する。これを基板Pについて、順次、逐次計算を行い、左辺V(t)と実際のマスク伸縮変動量VZm(t)との残差二乗和が最小となるように最小二乗法を適用して、[数11]内の時定数TZmと飽和値SZmを最適化する。
【0098】
そして、露光処理中にフォーカスキャリブレーションを実行した際は、前記最適化された露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)用のマスク伸縮補正パラメータとフォーカスキャリブレーション用のマスク伸縮補正パラメータに基づき、各フォーカスキャリブレーション実行時刻における、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)でのマスク伸縮補正量とフォーカスキャリブレーション用パターンMcでのマスク伸縮補正量の両方を算出し、その差分をオフセット補正値として、フォーカスキャリブレーション値に加算することにより、従来のフォーカスキャリブレーション時に発生する露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に対するフォーカスずれをなくすることが可能となる。
【0099】
このように、本実施形態によれば、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に対する最適なマスク伸縮補正パラメータ(時定数と飽和値)とフォーカスキャリブレーション用パターンMcに対する最適なマスク伸縮補正パラメータ(時定数と飽和値)の両方を求めておき、露光処理中にフォーカスキャリブレーションを実行した際は、その時刻における露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮補正量とフォーカスキャリブレーション用パターンMcに基づくマスク伸縮補正量の両方を算出し、その差分(フォーカスキャリブレーションオフセット補正値)をフォーカスキャリブレーション値に加算する処理を行わせることとしたので、フォーカス・レベリング検出系FDのフォーカスキャリブレーション時における露光パターンの線幅精度、及び、重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0100】
なお、本実施形態では、最適値に更新された露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に対するマスク伸縮補正パラメータ(時定数と飽和値)と最適値に更新されたフォーカスキャリブレーション用パターンMcに対するマスク伸縮補正パラメータ(時定数と飽和値)に基づいて、フォーカスキャリブレーション実行時刻における露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)でのマスク伸縮補正量とフォーカスキャリブレーション用パターンMcでのマスク伸縮補正量との差分(フォーカスキャリブレーションオフセット補正値)を算出し、このオフセット補正値をフォーカスキャリブレーション値に加算する処理を制御装置CONTにおいて行わせる場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えばサーバ装置SRにおいて同様の処理を行わせるように構成しても構わない。
【0101】
この場合、例えば図4に示す露光装置側通信部31を用いて露光装置EXとの間でデータの送受信を行うようにすればよい。また、フォーカスキャリブレーションオフセット補正値などの各値の算出は、例えば図4に示すデータ処理部36などにおいて行わせるようにすればよい。また、例えばファイル作成部37においては、データ処理部36などでの算出結果に基づいて、例えばフォーカスキャリブレーションオフセット補正値ファイルを作成するようにしても構わない。作成されたフォーカスキャリブレーションオフセット補正値ファイルは、例えば露光装置側通信部31を介して露光装置EXに送信されるようにすればよい。この場合、露光装置EXでは、フォーカスキャリブレーションオフセット補正値ファイルに基づいて投影光学系PLのフォーカスキャリブレーションが行われることとなる。勿論、データの送受信や各値の算出、ファイルの作成などのそれぞれの処理を行わせる処理部をサーバ装置SRに別途設けるようにしても構わない。
【0102】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
本実施形態では、第一実施形態と同一構成の露光システムSYSを用いて説明する。したがって、上記第一実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付して説明する。本実施形態の露光システムEXでは、例えば1ロット(1ロットは25枚又は50枚)の基板Pを一まとめとして、複数ロット(例えば5ロット〜10ロット)の基板Pに対して露光処理が繰り返して行われる。
【0103】
図7は、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくZ方向、または、ロール方向、または、ピッチ方向のマスク伸縮変動量を示すグラフである。グラフの縦軸は、マスク伸縮変動の大きさを示している。グラフの横軸は、複数ロットのうち例えば1ロット目の最初の基板Pに対して露光が開始される時刻を基準とした時刻の経過を示している。なお、上記第一実施形態と同様、本実施形態においても平均時刻を用いている。図12では、複数ロットのうち1ロット目及び2ロット目についてのマスク伸縮変動量を例に挙げて示している。
【0104】
図7に示すように、1ロット目の最後の基板Pの平均露光時刻t1と、2ロット目の最初の基板Pの平均露光時刻t2との間には、Z方向、または、ロール方向、または、ピッチ方向について、マスク伸縮変動量のギャップ(△Fcs_exp_lot)が形成されている。これは、当該1ロット目と2ロット目との間の期間(ロット間)において露光処理が行われず、この間、マスクが冷えて、マスクMの変動量が小さくなることに基づいている。しかし、これ以外に、1ロット目と2ロット目との間のマスク伸縮変動量のギャップは、例えば露光処理を行う基板Pの下地層のパターン状態や、当該基板Pに対して露光処理の前に行われるプロセス処理などの影響により、ロット処理間で異なる値となる場合がある。
【0105】
また、露光装置EXにおいては、例えば各ロットにおける最初の基板Pの露光開始前や、各ロットにおいて所定枚数(例えば、5枚〜10枚)の基板Pを露光する毎に、例えばフォーカス・レベリング検出系FDのフォーカスキャリブレーションが行われる。このフォーカス・レベリング検出系FDのフォーカスキャリブレーションは、例えば上記第二実施形態に記載の手法によって行われる。
【0106】
図8は、このときのZ方向、または、ロール方向、または、ピッチ方向のマスク伸縮変動量を示すグラフである。グラフの縦軸は、マスク伸縮変動量の大きさを示している。グラフの横軸は、複数ロットのうち例えば1ロット目の最初の基板Pに対して露光が開始される時刻を基準とした時刻の経過を示している。また、グラフの実線はサーバ装置SRによって算出された最適なマスク伸縮補正値であり、
グラフの丸印は各フォーカスキャリブレーションによる計測値である。
【0107】
図8に示すように、サーバ装置SRでは、各ロット(ここでは1ロット目及び2ロット目が示されている)における最初の基板Pの平均露光時刻から最後の基板Pの平均露光時刻までのマスク伸縮変動量が算出される。このとき、1ロット目の最後の基板Pの平均露光時刻t1におけるマスク伸縮変動量と、2ロット目の最初の基板Pの平均露光時刻t2におけるマスク伸縮変動量との間には、Z方向、または、ロール方向、または、ピッチ方向について、マスク伸縮変動量のギャップ(△Fcs_ais_lot)が形成される。これは、当該1ロット目と2ロット目との間の期間(ロット間)において露光処理が行われず、この間、マスクが冷えて、マスクMの変動量が小さくなることに基づいている。各フォーカスキャリブレーションにおけるフォーカスキャリブレーション用パターンMcでは、前記、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)における下地層のパターン状態や、露光処理前のプロセス処理などの影響は発生しない。
【0108】
このため、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップとフォーカスキャリブレーション用パターンMcに基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップとの間にズレが生じる場合がある。この結果、露光パターンの線幅精度、及び、重ね合わせ精度が低下することになり、露光精度の低下につながる虞がある。
【0109】
これに対して、本実施形態では、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップが、フォーカスキャリブレーション用パターンMcに基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップに等しくなるようにする。これにより、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップから、下地層のパターン状態や、露光処理前のプロセス処理などの影響を除去することができる。具体的には、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップ(△Fcs_exp_lot)からフォーカスキャリブレーション用パターンMcに基づくマスク伸縮変動量のロット間のギャップ(△Fcs_ais_lot)を差し引いた以下の値
(△Fcs_exp_lot)−(△Fcs_ais_lot)
をオフセットとして、2ロット目(図7の例の場合)の露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量に加算する。これにより、ロット間に対して、下地層のパターン状態や、露光処理前のプロセス処理などの影響を受けず、露光パターンに基づくマスク伸縮変動量が得られ、この適切なマスク伸縮変動量に基づいて、最適なマスク伸縮補正値の算出が行え、露光パターンの線幅精度、及び、重ね合わせの精度の低下が抑制されることになる。
【0110】
本実施形態においては、複数ロットの基板Pに対して処理を行う露光処理において、1ロット目と2ロット目との間について例を挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、2ロット目以降について、nロット目と(n+1)ロット目との間における露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量のギャップについても、上記説明が適用されうる(ただし、nは2以上の整数である)。
【0111】
本実施形態において、マスクMの熱変形に起因する経時的なフォーカス変動量として、例えば上記各実施形態に記載のように、Z方向への変動、θX方向への変動、θY方向への変動、2次以上の高次変形成分の変動などによる変動量が挙げられる。本実施形態では、このような種類の変動がマスクMに発生した場合において、露光パターン(フォーカスモニタ用パターンMf)に基づくマスク伸縮変動量を補正し、これにより、最適なマスク伸縮補正値を求めることができる。
【0112】
また、本実施形態において、サーバ装置SRによって1ロット目の最後の基板Pの平均露光時刻における最適なフォーカスキャリブレーション用パターンMcに基づくマスク伸縮変動量を算出する場合には、算出結果の信頼性確保の観点から、当該最後の基板Pに対して所定枚数(5枚〜10枚程度)以内のフォーカスキャリブレーション用パターンMcの結果を用いて算出されるようにする。この場合、最後の基板Pに対して所定枚数以前のフォーカスキャリブレーション用パターンMcの結果しか得られていない場合には、例えば不図示の出力部などを介して警告表示を行うようにしても構わない。
【0113】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記各実施形態では、マスクMの熱変形に起因する経時的なフォーカス変動量として、例えばZ方向への変動(0次)、ピッチ方向への変動(0次)、ロール方向への変動(0次)を用いる場合を例に挙げて説明したがこれに限られることは無い。マスクMのパターン構成や露光光の照明条件、マスクの冷却方法などの要因により、マスクMの熱変形が不均衡に発生し、上記の各変動とは異なる変動が発生する場合がある。このような変動として、例えば、上記各変動成分がマスク内で変化したり、上記変動が2つ以上組み合わされた2次以上の高次変形成分の変動などが挙げられる。このような変動が発生した場合であっても、マスク伸縮補正値を最適化することができる。
【0114】
フォーカスモニタ用パターンMfが転写されたパターンを計測し、Z方向、または、ロール方向、または、ピッチ方向ごとに、それぞれ0次、1次、2次以上の高次変形成分の検出を行い、各高次変形成分ごとに同様な補正を行うことができる。例えば、マスクに対して露光スリットをY方向に走査する際、マスク中心Y方向計測位置をSy、露光スリット中心Z方向位置の変形量を△Z、露光スリットロール方向姿勢の変形量を△Roll、露光スリットピッチ方向姿勢の変形量を△Pitch、とすると各Y方向計測位置における像面位置及び姿勢の2次変形モデルは、以下の[数15]〜[数17]で示される式によって表される。
【0115】
【数15】
【0116】
【数16】
【0117】
【数17】
上記マスク変形モデル式のEz_0、Eroll_0、Epitch_0がZ/ロール/ピッチそれぞれの0次変形成分となり、Ez_1、Eroll_1、Epitch_1がZ/ロール/ピッチそれぞれの1次変形成分となり、Ez_2、Eroll_2、Epitch_2がZ/ロール/ピッチそれぞれの2次変形成分となる。上記変形成分ごとに、計測・監視し、経時的な変動が大きい成分に対してマスク伸縮変動量を算出し、これに基づきマスク伸縮補正値を算出して露光光像の調整を行うことができる。
【0118】
例えば、上記実施形態においては、露光システムSYSを構成する露光装置EX、計測装置MS、サーバ装置SRのそれぞれに制御装置を設ける構成としたが、これに限られることは無く、露光システムSYSの全体を統括する主制御装置を設け、当該主制御装置が各構成要素の動作を制御する構成としても構わない。この場合、主制御装置を露光装置EX、計測装置MS、サーバ装置SRのいずれかに設置しても良いし、各構成要素から独立して設けても構わない。
【0119】
また、上記実施形態においては、例えば最適補正ファイルによって更新されたマスク伸縮補正ファイルを用いてレンズコントローラLCを制御し、投影光学系PLのフォーカスを補正することによって露光光像Imを調整する構成としたが、これに限られることは無く、例えば基板ステージPSTの上下位置・傾斜姿勢を調整するなど、他の部位を調整することによっても露光光像Imの調整は可能である。
【0120】
また、上記実施形態の構成に加えて、計測装置MSの記憶部に計測結果を蓄積させておき、当該蓄積したデータを用いて異常を検出させるようにしても構わない。この場合、例えばフォーカスの精度が他と比べて悪くなる期間を検出し、当該期間内には例えば閾値を低くして異常を検出しやすくすることができるなど、効率的な動作が可能となる。
【0121】
また、例えば上記実施形態においては、露光システムSYSの構成として露光装置EX、計測装置MS及びサーバ装置SRが1台ずつ設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば図9に示すように、露光システムSYS2が露光装置EX及び計測装置MSを有する構成とし、サーバ装置SRが例えば露光装置EXに組み込まれている構成としても構わない。また、図10に示すように、露光システムSYS3が露光装置EX及び計測装置MSを有する構成とし、サーバ装置SRが計測装置MSに組み込まれている構成としても構わない。
【0122】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0123】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置にも適用することができる。
【0124】
また、例えば対応米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。
【0125】
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
【0126】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置などにも広く適用できる。また、露光光の光路上に液浸空間を設ける液浸露光装置においても本発明の適用は可能である。
【0127】
上記実施形態の露光システムSYS、SYS2、SYS3は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0128】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図11に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0129】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0130】
SYS…露光システム EX…露光装置 FD…フォーカス・レベリング検出系 MS…計測装置 SR…サーバ装置 M…マスク Mf…フォーカスモニタ用パターン Mc…フォーカスキャリブレーション用パターン P…基板 MST…マスクステージ CONT…制御装置 LC…レンズコントローラ Ma…パターン Cp…転写パターン Im…露光光像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11