(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る粉体圧延装置及び圧延シートの製造方法について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る粉体圧延装置の概略を示す図である。粉体圧延装置2は、水平かつ平行に配列された一対のロール4A,4Bを含む圧延ロール4、圧延ロール4のロール4Aと4Bの上方に形成され粉体8を貯槽するホッパー10、ホッパー10に粉体8を供給する中央振動フィーダ12及び端部振動フィーダ14,16、圧延ロール4のロール4Aと4Bとの間隙を測定する間隙検出センサ18A〜18C、制御部54、圧延シート20の目標膜厚の入力を受け付ける操作部56、圧延ロール4のロール4A,4Bを駆動させるモータ等を有するロール駆動部58を備えている。
【0015】
図2は粉体圧延装置2を上から視た図である。
図2に示すように、中央振動フィーダ12は圧延ロール4の軸方向の略中央に設けられ、端部振動フィーダ14,16は圧延ロール4の軸方向の端部にそれぞれ設けられている。なお、
図2には、中央振動フィーダ12、端部振動フィーダ14,16と間隙検出センサ18A〜18Cの位置関係を表すために、間隙検出センサ18A〜18Cを点線で示している。
【0016】
この図に示すように間隙検出センサ18A〜18Cは圧延ロール4を構成するロール4Aと4Bのそれぞれの外側であって、かつ、圧延ロール4の軸方向(圧延シート20の幅方向)に複数設けられている。即ち、間隙検出センサ18Aは端部振動フィーダ14と幅方向に対して略同じ位置に設けられ、間隙検出センサ18Bは中央振動フィーダ12と幅方向に対して略同じ位置に設けられ、間隙検出センサ18Cは端部振動フィーダ16と幅方向に対して略同じ位置に設けられている。なお、間隙検出センサ18A〜18Cは流れ方向(圧延ロール4の軸方向に垂直な方向)に対して略同じ位置に設けられている。また、間隙検出センサ18A〜18Cとしては、接触式変位センサ、レーザ式センサ、過電流式センサ、圧延ロール4のロール押し用シリンダ軸に設けるインクリメント式変位センサ等を用いることができる。
【0017】
図3に示すように中央振動フィーダ12は、粉体8を投入する投入ホッパー24、粉体8をホッパー10に供給し、下方向に所定の長さを有する供給口26、投入ホッパー24に投入された粉体8を供給口26へ送るための通路を有するトラフ28、中央振動フィーダ12を振動させる振動源30、
図1及び
図3に示す矢印方向(上下方向)へ中央振動フィーダ12をモータ等の駆動源により移動させる上下動架台32を備えている。なお、供給口26の内部に粉体8を均一に分布させ、かつ、ホッパー10内の粉体8に加わる自重を緩和するための金網等のスリット材を設けてもよい。
【0018】
また、端部振動フィーダ14は投入ホッパー34、トラフ38、振動源40、上下動架台42を備え、端部振動フィーダ16は投入ホッパー44、トラフ48、振動源50、上下動架台52を備えている(
図1参照)。
【0019】
図1に示すように制御部54は、ロール駆動部58を制御して圧延ロール4を駆動するほか、中央振動フィーダ12の振動源30及び上下動架台32の駆動源、端部振動フィーダ14の振動源40及び上下動架台42の駆動源、端部振動フィーダ16の振動源50及び上下動架台52の駆動源に対する制御を行う。ここで、制御部54は振動源30を振動させてホッパー10内に粉体8を供給させることにより、供給口26の下端と粉体8のレベルH
1とを常に一致させる。ここで、供給口26の下端(供給口下端)とは、供給口(開口)の垂直方向最下部に位置する部分である。なお、粉体8のレベルH
1は、中央振動フィーダ12の直下に位置する粉体8のレベルを示している。また、粉体8のレベルH
1は後述する目標膜厚T
D及び得られる圧延シート20の膜厚T
Gによって決定され、制御部54は中央振動フィーダ12の上下動架台32の駆動源を駆動させて、供給口26の下端の位置を上下動させる。
【0020】
ここで、供給口26の下端の高さの調整方法として、上記方法以外に、フィーダの水平に対する角度を可変にすることにより供給口26の位置を可変可能とする構造としてもよいし、
図4の実線矢印で示すように供給口26の向き(角度)を垂直下方から水平に至るまで可変可能とする構造や
図4の点線矢印で示すように供給口26自体がフィーダに対して伸縮できるような構造などとしてもよい。このように、供給口26の下端の高さを調整することにより、供給口26の下端と粉体8のレベルH
1とが常に一致するため、粉体8のレベルH
1も調整できる。
【0021】
一方、制御部54は、上下動架台32,42,52の駆動源をそれぞれ駆動させる。また、制御部54は端部振動フィーダ14,16の振動源40,50を振動させて、ホッパー10内に粉体8を供給させる。
【0022】
次に、間隙検出センサ18A〜18Cからの出力を用いた粉体8のレベルの制御について説明する。操作部56を介して圧延シート20の目標膜厚T
Dが入力されると、制御部54は中央振動フィーダ12、端部振動フィーダ14,16の上下動架台32,42,52の駆動源を制御して目標膜厚T
Dに応じた粉体8のレベルH
1に供給口26(端部振動フィーダ14,16では図示省略)を移動させる。ここで、粉体レベルH
1と得られる圧延シート20の膜厚T
Gとの関係は予め得られている。例えば、粉体レベルH
1が100mmの場合には得られる圧延シート20の膜厚T
Gは約370μmとなり、粉体レベルH
1が200mmの場合には得られる圧延シート20の膜厚T
Gは約420μmとなり、粉体レベルH
1が300mmの場合には圧延シート20の膜厚T
Gは約450μmとなる関係が得られている。
【0023】
次に、圧延ロール4のロール4A,4Bを
図1に示す矢印方向に回転させることにより粉体8の圧延成形を開始すると、制御部54は間隙検出センサ18A〜18Cから出力される測定結果を示す信号を受信する。
【0024】
ここで、間隙検出センサ18A〜18Cはロール4A,4Bの
図2における左右方向の移動量を測定し、移動量に基づいてロール4Aと4Bとのロール間距離Wが検出される。即ち、粉体8の供給前に圧延ロール4のロール4Aとロール4Bのロール間距離の初期値W
Iを測定し、粉体8の圧延成形が開始されると間隙検出センサ18A〜18Cからの出力に基づいてロール4Aとロール4Bとの距離Wを検出する。即ち、間隙検出センサ18A〜18Cにより測定されたロール4A及び4Bの移動量をMとすると、距離WはW
I+Mとして求められる。
【0025】
従って、圧延ロール4の軸方向に対して間隙検出センサ18A、18B、18Cで測定する位置でのロール4Aと4Bとの距離の初期値をそれぞれW
I(A)、W
I(B)、W
I(C)とし、間隙検出センサ18A〜18Cにより測定される移動量をそれぞれM
A〜M
Cとすると、間隙検出センサ18Aの位置での距離はW
A=W
I(A)+M
A、間隙検出センサ18Bの位置での距離はW
B=W
I(B)+M
B、間隙検出センサ18Cの位置での距離はW
C=W
I(C)+M
Cとなる。なお、ロール4A,4Bが内側へ移動すると移動量M
A〜M
Cは負の値となり、ロール4A,4Bが外側へ移動すると移動量M
A〜M
Cは正の値となる。
【0026】
次に、距離W
A〜W
Cと、得られる圧延シート20の幅方向についての間隙検出センサ18A〜18Cが設けられた位置でのそれぞれの膜厚T
A〜T
Cとの関係を予め得ることにより、距離W
A〜W
Cから膜厚T
A〜T
Cをそれぞれ算出することができる。ここで、膜厚T
Aは間隙検出センサ18Aからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚、膜厚T
Bは間隙検出センサ18Bからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚、膜厚T
Cは間隙検出センサ18Cからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚である。例えば、得られる圧延シート20の膜厚をT
Gとすると、距離Wが200μmの場合には膜厚T
Gが約420μm、距離Wが210μmの場合には膜厚T
Gが約450μm、距離Wが220μmの場合には膜厚T
Gが約500μm等の関係を予め得ておくことにより、距離Wから膜厚T
Gを算出することができる。
【0027】
次に、制御部54は、複数の間隙検出センサ18A〜18Cからの出力に基づいて圧延シート20の膜厚T
A〜T
Cをそれぞれ算出して目標膜厚T
Dと比較し、ホッパー10内の粉体8のレベルを制御する。例えば、制御部54は、操作部56を介して入力された目標膜厚T
Dと間隙検出センサ18Bからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚T
Bとを比較する。ここで、上述のようにホッパー10内の粉体8のレベルH
1が高いほど得られる圧延シート20の膜厚T
Bは厚くなり、ホッパー10内の粉体8のレベルH
1が低いほど得られる圧延シート20の膜厚T
Bは薄くなる。
【0028】
従って、目標膜厚T
Dよりも算出された圧延シート20の膜厚T
Bの方が薄い場合には、制御部54は中央振動フィーダ12の上下動架台32の駆動源を制御して粉体8のレベルH
1を増加させる。一方、目標膜厚T
Dよりも算出された圧延シート20の膜厚T
Bの方が厚い場合には、制御部54は中央振動フィーダ12の上下動架台32の駆動源を制御して粉体8のレベルH
1を減少させる。また、目標膜厚T
Dと算出された圧延シート20の膜厚T
Bが一致する場合には、制御部54は中央振動フィーダ12の上下動架台32の駆動源に対して上下動架台32を上下動させる制御を行わない。
【0029】
また、目標膜厚T
Dよりも算出された圧延シート20の膜厚T
Aの方が薄い場合には、制御部54は端部振動フィーダ14の振動源40を駆動させてホッパー10に粉体8を供給させることによりホッパー10の端部における粉体8のレベルの高さを制御する。目標膜厚T
Dよりも算出された圧延シート20の膜厚T
Cの方が薄い場合には、制御部54は端部振動フィーダ16の振動源50を駆動させてホッパー10に粉体8を供給させることによりホッパー10の端部における粉体8のレベルの高さを制御する。
【0030】
ホッパー10内に貯槽される粉体8としては、例えば電極活物質を含む複合粒子が挙げられる。複合粒子は、電極活物質及び結着材を含み、必要に応じてその他の分散剤、導電材および添加剤を含んでもよい。粉体8として電極活物質を含む複合粒子を用いる場合は、得られる圧延シートは、電極材料から成る電極層として用いることができる。
【0031】
複合粒子をリチウムイオン二次電池の電極材料として用いる場合、正極用活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な金属酸化物が挙げられる。かかる金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、燐酸鉄リチウム、燐酸マンガンリチウム、燐酸バナジウムリチウム、バナジン酸鉄リチウム、ニッケル− マンガン− コバルト酸リチウム、ニッケル− コバルト酸リチウム、ニッケル− マンガン酸リチウム、鉄− マンガン酸リチウム、鉄−マンガン− コバルト酸リチウム、珪酸鉄リチウム、珪酸鉄− マンガンリチウム、酸化バナジウム、バナジン酸銅、酸化ニオブ、硫化チタン、酸化モリブデン、硫化モリブデン、等を挙げることができる。なお、上記にて例示した正極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0032】
さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリキノンなどのポリマーが挙げられる。これらのうち、リチウム含有金属酸化物を用いることが好ましい。
【0033】
なお、リチウムイオン二次電池用正極の対極としての負極の活物質としては、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、活性炭、熱分解炭素などの低結晶性炭素(非晶質炭素)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ、あるいはこれら物理的性質の異なる炭素の複合化炭素材料、錫やケイ素等の合金系材料、ケイ素酸化物、錫酸化物、バナジウム酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物、ポリアセン等が挙げられる。なお、上記に例示した電極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0034】
リチウムイオン二次電池電極用の電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。
【0035】
リチウムイオン二次電池電極用の電極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.8〜20μmである。
【0036】
リチウムイオン二次電池用電極活物質のタップ密度は、特に制限されないが、正極では2g/cm
3以上、負極では0.6g/cm
3以上のものが好適に用いられる。
【0037】
複合粒子をリチウムイオンキャパシタの電極材料として用いる場合、正極用活物質としては、アニオンおよび/またはカチオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な活性炭、ポリアセン系有機半導体(PAS)、カーボンナノチューブ、カーボンウィスカー、グラファイト等が挙げられる。好ましい電極活物質は活性炭、カーボンナノチューブである。
【0038】
なお、リチウムイオンキャパシタ用正極の対極としての負極の活物質としては、リチウムイオン二次電池用負極活物質として例示した材料をいずれも使用することができる。リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる電極活物質の体積平均粒子径は、通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、更に好ましくは0.8〜20μmである。
【0039】
リチウムイオンキャパシタ電極活物質として活性炭を用いる場合、活性炭の比表面積は、30m
2/g以上、好ましくは500〜3,000m
2/g、より好ましくは1,500〜2,600m
2/gである。比表面積が約2,000m
2/gまでは比表面積が大きくなるほど活性炭の単位重量あたりの静電容量は増加する傾向にあるが、それ以降は静電容量は然程増加せず、かえって電極合材層の密度が低下し、静電容量密度が低下する傾向にある。また、活性炭が有する細孔のサイズは電解質イオンのサイズに適合していることがリチウムイオンキャパシタとしての特徴である急速充放電特性の面で好ましい。従って、電極活物質を適宜選択することで、所望の容量密度、入出力特性を有する電極合材層を得ることができる。
【0040】
複合粒子を電気二重層キャパシタの電極材料として用いる場合、正極活物質および負極活物質としては、リチウムイオンキャパシタ用正極活物質として例示された材料をいずれも使用することができる。
【0041】
複合粒子に用いられる結着材としては、前記電極活物質を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。好適な結着材は、溶媒に分散する性質のある分散型結着材である。分散型結着材として、例えば、シリコン系重合体、フッ素含有重合体、共役ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等の高分子化合物が挙げられ、好ましくはフッ素系含有重合体、共役系ジエン重合体およびアクリレート系重合体、より好ましくは共役ジエン系重合体およびアクリレート系重合体が挙げられる。
【0042】
共役ジエン系重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。前記単量体混合物における共役ジエンの割合は通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。共役ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
【0043】
アクリレート系重合体は、一般式(1):CH
2=CR
1−COOR
2(式中、R
1は水素原子またはメチル基を、R
2はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。R
2はさらにエーテル基、水酸基、カルボン酸基、フッ素基、リン酸基、エポキシ基、アミノ基を有していてもよい。)で表される化合物由来の単量体単位を含む重合体、具体的には、一般式(1)で表される化合物の単独重合体、または前記一般式(1)で表される化合物を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体である。一般式(1)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、および(メタ)アクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸等のカルボン酸含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸リン酸エチル等のリン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;等が挙げられる。
【0044】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n―ブチルやアルキル基の炭素数が6〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。これらを選択することにより、電解液に対する膨潤性の低くすることが可能となり、サイクル特性を向上させることができる。
【0045】
さらに、アクリレート系重合体は、たとえば、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類、芳香族ビニル系単量体、アミド系単量体、オレフィン類、ジエン系単量体、ビニルケトン類、複素環含有ビニル化合物などの、共重合可能な単量体を共重合することもできる。また、α,β−不飽和ニトリル化合物や酸成分を有するビニル化合物を共重合することもできる。
【0046】
アクリレート系重合体中における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合は、好ましくは50〜95重量%であり、より好ましくは60〜90重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合を上記範囲とすることにより、電極とした際における柔軟性を向上させることができ、割れに対する耐性を高いものとすることができる。
【0047】
α,β−不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0048】
アクリレート系重合体中におけるα,β−不飽和ニトリル化合物単位の含有割合は、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜20重量部の範囲である。α,β−不飽和ニトリル化合物単位の含有割合を上記範囲とすることにより、結着材としての結着力をより高めることができる。
【0049】
酸成分を有するビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、メタクリル酸、イタコン酸がより好ましく、特に、メタクリル酸とイタコン酸とを併用して用いることが好ましい。
【0050】
アクリレート系重合体における酸成分を有するビニルモノマー単位の含有割合は、好ましくは1.0〜10重量%であり、より好ましくは1.5〜5.0重量%である。酸成分を有するビニルモノマー単位の含有割合を上記範囲とすることにより、スラリーとした際における安定性を向上させることができる。
【0051】
分散型結着材の形状は、特に制限はないが、粒子状であることが好ましい。粒子状であることにより、結着性が良く、また、作製した電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができる。粒子状の結着材としては、例えば、ラテックスのごとき結着材の粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粒子状のものが挙げられる。
【0052】
分散型結着材の体積平均粒子径は、好ましくは0.001〜100μm、より好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nmである。分散型結着材粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、スラリーとした際における安定性を良好なものとしながら、得られる電極としての強度及び柔軟性が良好となる。
【0053】
結着材の量は、電極活物質100重量部に対して、乾燥重量基準で通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。結着材の量がこの範囲にあると、得られる電極合材層と集電体との密着性が充分に確保でき、かつ、内部抵抗を低くすることができる。
【0054】
複合粒子には、前述のように必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸エステル、ならびにアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、ポリアクリル酸、およびポリアクリル酸(またはメタクリル酸)ナトリウムなどのポリアクリル酸(またはメタクリル酸)塩、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。これらの分散剤の使用量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜2重量部の範囲である。
【0055】
複合粒子には、前述のように必要に応じて導電材を用いてもよい。導電材の具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックが好ましい。
【0056】
導電材の体積平均粒子径は、電極活物質の体積平均粒子径よりも小さいものが好ましく、その範囲は通常0.001〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmである。導電材の体積平均粒子径がこの範囲にあると、より少ない使用量で高い導電性が得られる。これらの導電材は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
これらの導電材の使用量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。導電材の含有割合を上記範囲とすることにより、得られる電気化学素子の電気容量を高く保ちながら、内部抵抗を十分に低減することが可能となる。
【0058】
複合粒子は、電極活物質、結着材および必要に応じ添加される前記導電材等他の成分を用いて造粒することにより得られ、少なくとも電極活物質、結着材を含んでなるが、前記のそれぞれが個別に独立した粒子として存在するのではなく、構成成分である電極活物質、結着材を含む2成分以上によって一粒子を形成するものである。具体的には、前記2成分以上の個々の粒子の複数個が結合して二次粒子を形成しており、複数個(好ましくは数個〜数十個)の電極活物質が、結着材によって結着されて粒子を形成しているものが好ましい。
【0059】
複合粒子の形状は、流動性の観点から実質的に球形であることが好ましい。すなわち、複合粒子の短軸径をL
s、長軸径をL
l、L
a=(L
s+L
l)/2とし、(1−(L
l−L
s)/L
a)×100の値を球形度(%)としたとき、球形度が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0060】
ここで、短軸径L
sおよび長軸径L
lは、走査型電子顕微鏡写真像より測定される値である。
【0061】
複合粒子の体積平均粒子径は、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜200μm、より好ましくは30〜150μmの範囲である。複合粒子の体積平均粒子径をこの範囲にすることにより、所望の厚みの電極合材層を容易に得ることができるため好ましい。
【0062】
なお、複合粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
【0063】
また、複合粒子としての構造は特に限定されないが、結着材が複合粒子の表面に偏在することなく、複合粒子内に均一に分散する構造が好ましい。
【0064】
複合粒子の製造方法は特に限定されないが、次に述べる二つの製造方法によって複合粒子を容易に得ることができる。
【0065】
複合粒子の第一の製造方法は、流動層造粒法である。流動層造粒法は、結着材、および必要に応じて導電材、分散剤やその他の添加剤を含有するスラリーを得る工程、加熱された気流中に電極活物質を流動させ、そこに前記スラリーを噴霧し、電極活物質同士を結着させると共に乾燥する工程を有するものである。以下、流動層造粒法について説明する。
【0066】
(流動層造粒法)
先ず結着材、および必要に応じて導電材、分散剤やその他の添加剤を含有するスラリーを得る。スラリーを得るために用いる溶媒として、最も好適には水が用いられるが、有機溶媒を用いることもできる。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類などが挙げられるが、アルキルアルコール類が好ましい。水よりも沸点の低い有機溶媒を併用すると、流動造粒時に、乾燥速度を速くすることができる。また、水よりも沸点の低い有機溶媒を併用すると、結着材の分散性又は溶解型樹脂の溶解性が変わると共に、スラリーの粘度や流動性を溶媒の量又は種類によって調製できるので、生産効率を向上させることができる。
【0067】
スラリーを調製するときに使用する溶媒の量は、スラリーの固形分濃度が、通常は1〜50重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲となるような量である。溶媒の量がこの範囲にあるときに、結着材が均一に分散するため好適である。
【0068】
結着材、必要に応じて導電材、分散剤やその他の添加剤を溶媒に分散又は溶解する方法又は手順は特に限定されず、例えば、溶媒に結着材、導電材、分散剤やその他の添加剤を添加し混合する方法、溶媒に分散剤を溶解した後、溶媒に分散させた結着材(例えば、ラテックス)を添加して混合し、最後に導電材やその他の添加剤を添加して混合する方法、溶媒に溶解させた分散剤に導電材を添加して混合し、それに溶媒に分散させた結着材を添加して混合する方法などが挙げられる。混合の手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどの混合機器が挙げられる。混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行う。
【0069】
次に電極活物質を流動化させ、そこに前記スラリーを噴霧して、流動造粒する。流動造粒としては、流動層によるもの、変形流動層によるもの、噴流層によるものなどが挙げられる。流動層によるものは、熱風で電極活物質を流動化させ、これにスプレー等から前記スラリーを噴霧して凝集造粒を行う方法である。変形流動層によるものは、前記流動層と同様であるが、層内の粉体に循環流を与え、かつ分級効果を利用して比較的大きく成長した造粒物を排出させる方法である。また、噴流層によるものは、噴流層の特徴を利用して粗い粒子にスプレー等からのスラリーを付着させ、同時に乾燥させながら造粒する方法である。本発明における複合粒子の製造方法としては、この3つ方式のうち流動層又は変形流動層によるものが好ましい。
【0070】
噴霧されるスラリーの温度は、通常は室温であるが、加温して室温以上にしたものであってもよい。流動化に用いる熱風の温度は、通常70〜300℃、好ましくは80〜200℃である。
【0071】
以上の製造方法によって、電極活物質、結着材および必要に応じて導電材、分散剤やその他の添加剤を含む複合粒子が得られる。
【0072】
複合粒子の第二の製造方法は、噴霧乾燥造粒法である。以下に説明する噴霧乾燥造粒法によれば、本発明の複合粒子を比較的容易に得ることができるため、好ましい。以下、噴霧乾燥造粒法について説明する。
【0073】
(噴霧乾燥造粒法)
まず、電極活物質、結着材を含有する複合粒子用スラリーを調製する。複合粒子用スラリーは、電極活物質、結着材、ならびに必要に応じて添加される導電材を、溶媒に分散又は溶解させることにより調製することができる。なお、この場合において、結着材が分散媒としての水に分散されたものである場合には、水に分散させた状態で添加することができる。
【0074】
複合粒子用スラリーを得るために用いる溶媒としては、通常、水が用いられるが、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。この場合に用いることができる有機溶媒としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルキルアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類等が挙げられる。これらのなかでも、アルコール類が好ましい。水と、水よりも沸点の低い有機溶媒とを併用することにより、噴霧乾燥時に、乾燥速度を速くすることができる。また、これにより、複合粒子用スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
【0075】
また、複合粒子用スラリーの粘度は、室温において、好ましくは10〜3,000mPa・s、より好ましくは30〜1,500mPa・s、さらに好ましくは50〜1,000mPa・sの範囲である。複合粒子用スラリーの粘度がこの範囲にあると、噴霧乾燥造粒工程の生産性を上げることができる。
【0076】
また、本発明においては、複合粒子用スラリーを調製する際に、必要に応じて、分散剤や界面活性剤を添加してもよい。
【0077】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、ノニオニックアニオン等の両性の界面活性剤が挙げられるが、アニオン性又はノニオン性界面活性剤で熱分解しやすいものが好ましい。界面活性剤の配合量は、正極活物質100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0078】
電極活物質、結着材、ならびに必要に応じて添加される導電材を溶媒に分散又は溶解する方法又は順番は、特に限定されない。また、混合装置としては、たとえば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等を用いることができる。混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行う。
【0079】
次いで、得られた複合粒子用スラリーを噴霧乾燥して造粒する。噴霧乾燥は、熱風中にスラリーを噴霧して乾燥する方法である。スラリーの噴霧に用いる装置としてアトマイザーが挙げられる。アトマイザーとしては、回転円盤方式と加圧方式との二種類の装置が挙げられ、回転円盤方式は、高速回転する円盤のほぼ中央にスラリーを導入し、円盤の遠心力によってスラリーが円盤の外に放たれ、その際にスラリーを霧状にする方式である。回転円盤方式において、円盤の回転速度は円盤の大きさに依存するが、通常は5,000〜30,000rpm、好ましくは15,000〜30,000rpmである。円盤の回転速度が低いほど、噴霧液滴が大きくなり、得られる複合粒子の平均粒子径が大きくなる。回転円盤方式のアトマイザーとしては、ピン型とベーン型が挙げられるが、好ましくはピン型アトマイザーである。ピン型アトマイザーは、噴霧盤を用いた遠心式の噴霧装置の一種であり、該噴霧盤が上下取付円板の間にその周縁に沿ったほぼ同心円上に着脱自在に複数の噴霧用コロを取り付けたもので構成されている。複合粒子用スラリーは噴霧盤中央から導入され、遠心力によって噴霧用コロに付着し、コロ表面を外側へと移動し、最後にコロ表面から離れ噴霧される。一方、加圧方式は、複合粒子用スラリーを加圧してノズルから霧状にして乾燥する方式である。
【0080】
噴霧される複合粒子用スラリーの温度は、通常は室温であるが、加温して室温より高い温度としてもよい。また、噴霧乾燥時の熱風温度は、通常80〜250℃、好ましくは100〜200℃である。噴霧乾燥法において、熱風の吹き込み方法は特に制限されず、たとえば、熱風と噴霧方向が横方向に並流する方式、乾燥塔頂部で噴霧され熱風と共に下降する方式、噴霧した滴と熱風が向流接触する方式、噴霧した滴が最初熱風と並流し次いで重力落下して向流接触する方式等が挙げられる。
【0081】
なお、噴霧方法としては、電極活物質、結着材を有する複合粒子用スラリーを、一括して噴霧する方法以外にも、結着材および必要に応じてその他添加剤を含有するスラリーを、流動している電極活物質に噴霧する方法も用いることができる。粒子径制御の容易性、生産性、粒子径分布が小さくできる、などの観点から、複合粒子の成分等に応じて最適な方法を適宜選択すればよい。
【0082】
乾式成形法により製造される電極合材層は、上述した複合粒子を含んでなる。複合粒子は、単独で又は必要に応じて他の結着材やその他の添加剤を含有させることで、目的の物性を有する電極合材層を得ることができる。電極合材層中に含有される複合粒子の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0083】
必要に応じて用いられる他の結着材としては、たとえば、上述した複合粒子に含有される結着材を用いることができる。複合粒子は、すでに結着材を含有しているため、電極合材層を製造する際に、他の結着材を別途添加する必要はないが、複合粒子同士の結着力をより高めるために他の結着材を添加してもよい。また、他の結着材を添加する場合における該他の結着材の添加量は、複合粒子中の結着材との合計で、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。また、その他の添加剤としては、水やアルコールなどの成形助剤等が挙げられ、これらは、本発明の効果を損なわない量を適宜選択して加えることができる。
【0084】
また、粉体8から圧延シート20を圧延成形する際に、バックアップ基材の一面または両面に圧延シートの圧延成形を行ってもよい。ここで、バックアップ基材としては、薄いフィルム状の基材であればよく、通常、厚さ1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜800μmである。バックアップ基材としては、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄などの金属箔または紙、天然繊維、高分子繊維、布帛、高分子樹脂フィルムなどが挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。高分子樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニル、アラミドフィルム、PEN、PEEK等を含んで構成されるプラスチックフィルム、シート等が挙げられる。また、バックアップ基材の表面には塗膜処理、穴あけ加工、バフ加工、サンドブラスト加工及び/又はエッチング加工等の処理が施されていても良い。バックアップ基材表面に接着剤等を塗布した基材は、シート状粉体を強固に保持することができるため、特に好ましい。
【0085】
なお、前述したように、粉体8として電極活物質を含む複合粒子を用い、圧延シートとして電極材料から成る電極層を製造する場合に、得られる電極層の厚みとしては、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜500μmである。
【0086】
この第1の実施の形態に係る粉体圧延装置によれば、幅方向に均一な膜厚及び密度分布を有する圧延シートを製造することができる。
【0087】
なお、上述の第1の実施の形態において、制御部54は間隙検出センサ18A〜18Cからの出力に基づいてそれぞれ算出される圧延シート20の膜厚T
A〜T
Cと目標膜厚T
Dとを比較し、端部振動フィーダ14,16の駆動及び中央振動フィーダ12の上下動架台32の上下動を行う構成(以下、間隙制御という。)としたが、膜厚検出センサ22A〜22C(
図5参照)により測定された圧延シート20の膜厚T
A〜T
Cと目標膜厚T
Dを比較し、端部振動フィーダ14,16の駆動及び中央振動フィーダ12の上下動架台32の上下動を行う構成(以下、膜厚制御という。)としてもよい。ここで、
図5に示す粉体圧延装置59は、粉体圧延装置2が備える間隙検出センサ18A〜18C(
図1参照)に代えて、圧延ロール4により圧延成形された圧延シート20の膜厚を測定する膜厚検出センサ22A〜22Cをそれぞれ備えている。ここで、膜厚検出センサ22A〜22Cは圧延ロール4の軸方向に複数設けられている。即ち、膜厚検出センサ22Aは端部振動フィーダ14と幅方向に対して略同じ位置に設けられ、膜厚検出センサ22Bは中央振動フィーダ12と幅方向に対して略同じ位置に設けられ、膜厚検出センサ22Cは端部振動フィーダ16と幅方向に対して略同じ位置に設けられている。また、膜厚検出センサ22A〜22Cは流れ方向に対して略同じ位置に設けられている。なお、膜厚検出センサ22A〜22Cとして挟み込みタイプ、接触タイプ等のものを用いることができ、検出方式としてはレーザ式、X線式、赤外線式、過電流式等を用いることができる。
【0088】
なお、膜厚制御(
図5参照)を行うと間隙制御(
図1参照)を行うよりも検出位置が流れ方向に対して距離H
2下流側となる。従って、
図6に示すように膜厚制御を行う場合の方が間隙制御を行う場合よりも、目標膜厚T
Dに対して膜厚T
A〜T
Cにずれが生じた際にずれを補正するための時間遅れが大きくなる。即ち、膜厚制御よりも間隙制御の方が、膜厚T
A〜T
Cを目標膜厚T
Dにより早く近づけることができるため好ましい。
【0089】
また、上述の第1の実施の形態においては、ロール4A,4Bの外側にロール4A,4Bの
図2における左右方向への移動量を検出する間隙検出センサ18A〜18Cを設ける構成としたが、
図7に示すように圧延ロール4における、ロール4Aと4Bとのロール端部でのロール間隙R
1,R
2をそれぞれ測定する間隙検出センサ18D,18Eをロール端部の外側近傍にそれぞれ設ける構成としてもよい。
【0090】
ここで、間隙検出センサ18Dは圧延ロール4の軸方向に対して一方の端部の外側近傍に設けられ、間隙検出センサ18Eは圧延ロール4の軸方向に対してもう一方の端部の外側近傍に設けられている。また、間隙検出センサ18Dは圧延シート20の流れ方向に対して間隙検出センサ18Eと略同じ位置に設けられている。
【0091】
この場合には、間隙検出センサ18Dにより測定されたロール間隙R
1を上述の距離W
Aとし、間隙検出センサ18Eにより測定されたロール間隙R
2を上述の距離W
Cとして用いる。また、間隙検出センサ18Dにより測定されたロール間隙R
1と間隙検出センサ18Eにより測定されたロール間隙R
2との平均間隙値(R
1+R
2)/2を上述の距離W
Bとして用いて、上述の間隙制御を行う。
【0092】
また、上述の第1の実施の形態においては、振動フィーダを3台設け、間隙検出センサを3箇所に設ける構成としたが、これは一例であり、振動フィーダを5台や10台等複数台設け、間隙検出センサを5箇所や10箇所等複数個所に設ける構成であってもよい。また、ホッパー10内の幅方向の粉体8のレベルの制御を容易にする観点から、各振動フィーダに対応する位置にそれぞれ間隙検出センサを設けることが好ましい。
【0093】
また、上述の第1の実施の形態において、圧延ロール4を構成するロール4Aと4Bのそれぞれの外側であって、かつ、圧延ロール4の軸方向に間隙検出センサ18A〜18Cを設ける構成としたが、圧延ロール4を構成するロール4A,4Bの外周部に沿って複数の間隙検出センサを設ける構成(センサがロール表面近傍のロール内部に、ロール外周部に沿って複数または連続したリング状等で埋め込まれている場合など)としてもよい。この場合には、X線式等の透過式センサとしてもよい。
【0094】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る粉体圧延装置について説明する。なお、この第2の実施の形態における粉体圧延装置60は、第1の実施の形態の粉体圧延装置2のホッパー10内に仕切板を設けたものである。従って、第1の実施の形態と同一の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて詳細に説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0095】
図8は第2の実施の形態に係る粉体圧延装置のホッパー内の構成を示す図であり、
図9は第2の実施の形態に係る粉体圧延装置60を上から視た図である。
【0096】
粉体圧延装置60は、ホッパー10内を幅方向に分画する仕切板62A〜62Dを備え、ホッパー10を5つの区画64P〜64Tに分画している。また、5つの区画64P〜64Tに粉体8を供給する振動フィーダ66P〜66Tがそれぞれ設けられている。また間隙検出センサ18P〜18Tは圧延ロール4を構成するロール4Aと4Bのそれぞれ外側に設けられ、間隙検出センサ18Pと振動フィーダ66Pとは幅方向に対して略同じ位置に設けられ、間隙検出センサ18Qと振動フィーダ66Qとは幅方向に対して略同じ位置に設けられ、間隙検出センサ18Rと振動フィーダ66Rとは幅方向に対して略同じ位置に設けられ、間隙検出センサ18Sと振動フィーダ66Sとは幅方向に対して略同じ位置に設けられ、間隙検出センサ18Tと振動フィーダ66Tとは幅方向に対して略同じ位置に設けられている。また、間隙検出センサ18P〜18Tは、流れ方向に対して略同じ位置に設けられている。なお、
図9には、振動フィーダ66P〜66Tと間隙検出センサ18P〜18Tの位置関係を表すために、間隙検出センサ18P〜18Tを点線で示している。
【0097】
次に、間隙検出センサ18P〜18Tからの出力を用いた粉体8のレベルの制御について説明する。操作部56を介して圧延シート20の目標膜厚T
Dが入力されると、制御部54は振動フィーダ66P〜66Tを駆動させて区画64P〜64Tのそれぞれに粉体8を供給する。ここで、各区画の粉体レベルと得られる圧延シート20の膜厚との関係は予め得られており、各区画64P〜64Tの粉体8のレベルが目標膜厚T
Dに応じた粉体レベルとなるように粉体8を供給する。
【0098】
次に、圧延ロール4のロール4A,4Bを回転させることにより粉体8の圧延成形を開始すると、制御部54は間隙検出センサ18P〜18Tから出力される測定結果を示す信号を受信する。ここで、間隙検出センサ18P〜18Tにより測定されるロール4Aと4Bとの間隙距離W
P〜W
Tと、得られる圧延シート20の幅方向についての間隙検出センサ18P〜18Tが設けられた位置でのそれぞれの膜厚T
P〜T
Tとの関係を予め得ることにより、距離Wから膜厚T
P〜T
Tを算出することができる。
【0099】
次に、制御部54は、複数の間隙検出センサ18P〜18Tからの出力に基づいて圧延シート20の膜厚T
P〜T
Tをそれぞれ算出して目標膜厚T
Dと比較し、ホッパー10内の粉体8のレベルを制御する。ここで、間隙検出センサ18Pからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚をT
P、間隙検出センサ18Qからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚をT
Q、間隙検出センサ18Rからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚をT
R、間隙検出センサ18Sからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚をT
S、間隙検出センサ18Tからの出力に基づいて算出される圧延シート20の膜厚をT
Tとする。算出された圧延シート20の膜厚T
P〜T
Tのうち、目標膜厚T
Dよりも薄いものが存在する場合には、制御部54は振動フィーダ66P〜66Tのうち、目標膜厚T
Dよりも薄い箇所に対応する振動フィーダの振動源を駆動して所望の区画に粉体8を供給させることにより粉体8の幅方向のレベルを制御する。例えば、膜厚T
P及びT
Sが目標膜厚T
Dよりも薄い場合には、制御部54は振動フィーダ66P及び66Sを駆動して区画64P及び66Sに粉体8を供給させることにより、区画64P及び66S内の粉体8のレベルを制御する。
【0100】
この第2の実施の形態に係る粉体圧延装置によれば、幅方向に均一な膜厚及び密度分布を有する圧延シートを製造することができる。
【0101】
なお、上述の第2の実施の形態においては、間隙制御を行う構成として説明したが、第1の実施の形態と同様に膜厚制御を行う構成としてもよいが、膜厚制御よりも間隙制御の方が、膜厚T
P〜T
Tを目標膜厚T
Dにより早く近づけることができるため好ましい。
【0102】
また、上述の第2の実施の形態においては、ホッパー10内に仕切板を4枚設けると共に、振動フィーダを5台設け、間隙検出センサを5箇所に設ける構成としたが、これは一例であり、ホッパー10に少なくとも1枚の仕切板を設けると共に、フィーダを3台や10台等複数台設け、間隙検出センサを3箇所や10箇所等複数個所に設ける構成であってもよい。また、各区画の粉体8のレベルの制御を容易にする観点から、仕切板により分画される区画それぞれに粉体を供給する振動フィーダを設けることが好ましく、また、仕切板により分画される各区画に対応する位置にそれぞれ間隙検出センサを設けることが好ましい。
【0103】
また、上述の第2の実施の形態においては、ホッパー10内に仕切板を設ける構成としたが、
図10及び
図11に示すようにホッパー10内に制御用板68P〜68Tを設ける構成としてもよい。この場合には、制御部54は複数の間隙検出センサ18P〜18Tからの出力に基づいて圧延シート20の膜厚T
P〜T
Tをそれぞれ算出して目標膜厚T
Dと比較する。次に、目標膜厚T
Dと差がある箇所が存在する場合には、制御部54は制御用板68P〜66Tのうち、目標膜厚T
Dと差がある箇所に対応する制御用板を上方向または下方向に移動させる。即ち、制御用板の高さを制御することにより制御用板の鉛直下方向に存在する粉体8の量を変化させることができる。従って、制御用板の高さを制御することによりホッパー10内の粉体8の幅方向のレベルを制御することができ、圧延シート20の膜厚を制御することができる。
【0104】
また、上述の各実施の形態において、フィーダとして振動フィーダを用いる構成として説明したが、スクリューフィーダ、空気搬送フィーダ、サークルフィーダ、テーブルフィーダ、ロータリフィーダ、ベルトフィーダ、静電式フィーダ、コロナ放電式フィーダ等を用いる構成としてもよい。