特許第5772694号(P5772694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772694
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】環状シラザン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   C07F7/10 S
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-92646(P2012-92646)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-221001(P2013-221001A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−137858(JP,A)
【文献】 Polymer Preprints,1996年,Vol. 37, No. 1,807-808
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/10
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、nは2以上の整数である。)
で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物を、スルホン酸化合物又はその塩の存在下で加熱し、生成する下記一般式(2)で示される環状シラザン化合物を系外に留去しながら製造することを特徴とする下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は上記と同様である。)
で示される環状シラザン化合物の製造方法。
【請求項2】
上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物が、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるビスハロシラン化合物と、下記一般式(4)
6NH2 (4)
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
で示される含窒素化合物とを反応させて製造されたものである請求項1記載の環状シラザン化合物の製造方法。
【請求項3】
上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物が、上記一般式(2)で示される環状シラザン化合物を含む請求項1又は2記載の環状シラザン化合物の製造方法。
【請求項4】
上記一般式(2)で示される環状シラザン化合物が、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンである請求項1〜3のいずれか1項記載の環状シラザン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤等として有用な環状シラザン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状シラザン化合物は、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤等として有用であり、例えば、特開2011−122137号公報(特許文献1)には、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンや2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン等の環状シラザン化合物が、TiNやSiN基板を疎水化できる表面処理剤として有用であるとの記載がある。
【0003】
上記環状シラザン化合物の製造方法としては、例えば、Journal of Organometallic Chemistry(1966),5(4),320(非特許文献1)に記載されているように、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン等のビスハロシラン化合物とアンモニア等の含窒素化合物を反応させ、環状シラザン化合物である2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを得る方法が挙げられる。
【0004】
また、Chemische Berichte(1992),125(12),2561(非特許文献2)には、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタンとアンモニアを反応させ、環状シラザン化合物である2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン及び2,2,5,5,7,7,10,10−オクタメチル−2,5,7,10−テトラシラ−1,6−ジアザシクロデカンや2,2,5,5,7,7,10,10,12,12,15,15−ドデカメチル−2,5,7,10,12,15−ヘキサシラ−1,6,11−トリアザシクロペンタデカン等の環状シラザン化合物や非環状のオリゴマーやポリマーの混合物を得る方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、非特許文献1及び2に記載の方法では、目的の環状シラザン化合物である2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを得るという観点からすると、目的物である2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの他に、非特許文献2記載の2,2,5,5,7,7,10,10−オクタメチル−2,5,7,10−テトラシラ−1,6−ジアザシクロデカンや2,2,5,5,7,7,10,10,12,12,15,15−ドデカメチル−2,5,7,10,12,15−ヘキサシラ−1,6,11−トリアザシクロペンタデカン等の環状シラザン化合物や非環状のオリゴマーやポリマーが副生することとなり、目的物が収率良く得られないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−122137号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Organometallic Chemistry(1966),5(4),320
【非特許文献2】Chemische Berichte(1992),125(12),2561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤として有用な環状シラザン化合物の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、環状シラザン化合物や非環状のオリゴマーやポリマーの混合物を含有する混合物に、スルホン酸又はその塩を添加、加熱することで、クラッキングにより目的とする環状シラザン化合物に変換でき、またこの場合、生成した環状シラザン化合物を系外に留去することにより、収率良く効率的に環状シラザンを製造できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す環状シラザン化合物の製造方法を提供する。
[1] 下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、nは2以上の整数である。)
で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物を、スルホン酸化合物又はその塩の存在下で加熱し、生成する下記一般式(2)で示される環状シラザン化合物を系外に留去しながら製造することを特徴とする下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は上記と同様である。)
で示される環状シラザン化合物の製造方法。
[2] 上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物が、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるビスハロシラン化合物と、下記一般式(4)
6NH2 (4)
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
で示される含窒素化合物とを反応させて製造されたものである[1]記載の環状シラザン化合物の製造方法。
[3] 上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物が、上記一般式(2)で示される環状シラザン化合物を含む[1]又は[2]記載の環状シラザン化合物の製造方法。
[4] 上記一般式(2)で示される環状シラザン化合物が、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンである[1]〜[3]のいずれかに記載の環状シラザン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により提供される製造方法によれば、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤等として有用な上記式(2)の環状シラザン化合物を収率良く効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の環状シラザン化合物の製造方法は、下記一般式(1)
【化4】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、nは2以上の整数である。)
で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物を、スルホン酸化合物又はその塩の存在下で加熱することにより、下記式(2)の環状シラザン化合物を得ることを特徴とするものである。
【化5】
【0013】
ここで、R1、R2、R4、R5、R6が炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基の場合、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示され、特にメチル基、エチル基が好ましい。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、エステル基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が例示される。
【0014】
3で示される炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、イソブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、メチレンフェニレン基、メチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基が例示される。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、上記に挙げた置換基が挙げられる。
nは2以上の整数であり、具体的には2〜30、好ましくは2〜20である。
【0015】
上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザンの化合物を含有する混合物は、上記一般式(1)で示されるシラザン化合物を複数種含んでいてもよく、上記一般式(2)で示される目的物である環状シラザン化合物を含んでいてもよい。
【0016】
更に、上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物を含有する混合物は、1種又は2種以上の溶媒を含んでいてもよい。含まれ得る溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。
【0017】
スルホン酸化合物としては、具体的には、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアレーンスルホン酸化合物、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエタンスルホン酸等のフルオロアルカンスルホン酸化合物等が例示される。また、スルホン酸化合物の塩としては、上記スルホン酸のアンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩等が例示される。
【0018】
上記スルホン酸化合物又はその塩の使用量は特に限定されないが、触媒量であり、反応性及び生産性の点から、上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物の繰り返し単位1モルに対し、0.001〜0.1モル、特に0.003〜0.05モルの範囲が好ましい。使用量が0.001モル未満であると、触媒の充分な効果が発現しない可能性があり、0.1モルを超えると、添加量に見合うだけの反応促進効果がみられない可能性がある。
【0019】
本発明の製造方法は、鎖状又は環状シラザン化合物の混合液にスルホン酸又はその塩を添加した後、加熱するものであるが、加熱温度は30〜250℃、特に40〜200℃が好ましい。反応時間は通常1〜40時間である。
【0020】
なお、本発明において、目的物である上記一般式(2)で示される環状シラザン化合物を留去することにより、系内の環状シラザン化合物の濃度が減少し、環状シラザン化合物を増加させる方向に平衡がずれるため、環状シラザン化合物の生成量をより多くすることができる。
【0021】
留去は通常0〜200℃で行うことが好ましい。
留去時の圧力は特に限定されないが、0.1〜200kPa、特に0.2〜102kPaが好ましい。
【0022】
本発明により製造される上記一般式(2)で示される環状シラザン化合物の具体例としては、2,2,4,4−テトラメチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドリン、2,2,4,4−テトラエチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラエチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラエチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジシライソインドリン、1,2,2,4,4−ペンタメチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1,2,2,5,5−ペンタメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,2,3,3−ペンタメチル−1,3−ジシライソインドリン、2,2,4,4−テトラエチル−1−メチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラエチル−1−メチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラエチル−1−メチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラエチル−2−メチル−1,3−ジシライソインドリン、1−エチル−2,2,4,4−テトラメチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−エチル−2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−エチル−2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−エチル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドリン、1,2,2,4,4−ペンタエチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1,2,2,5,5−ペンタエチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1,2,2,6,6−ペンタエチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,2,3,3−ペンタエチル−1,3−ジシライソインドリン、2,2,4,4−テトラメチル−1−プロピル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−プロピル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラメチル−1−プロピル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラメチル−2−プロピル−1,3−ジシライソインドリン、2,2,4,4−テトラエチル−1−プロピル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラエチル−1−プロピル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラエチル−1−プロピル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラエチル−2−プロピル−1,3−ジシライソインドリン、1−ブチル−2,2,4,4−テトラメチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−ブチル−2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−ブチル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドリン、1−ブチル−2,2,4,4−テトラエチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−ブチル−2,2,5,5−テトラエチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−ブチル−2,2,6,6−テトラエチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−ブチル−1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジシライソインドリン、1−シクロヘキシル−2,2,4,4−テトラメチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−シクロヘキシル−2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−シクロヘキシル−2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−シクロヘキシル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドリン、1−シクロヘキシル−2,2,4,4−テトラエチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−シクロヘキシル−2,2,5,5−テトラエチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−シクロヘキシル−2,2,6,6−テトラエチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−シクロヘキシル−1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジシライソインドリン、2,2,4,4−テトラメチル−1−フェニル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−フェニル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラメチル−1−フェニル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラメチル−2−フェニル−1,3−ジシライソインドリン、2,2,4,4−テトラエチル−1−フェニル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、2,2,5,5−テトラエチル−1−フェニル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラエチル−1−フェニル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラエチル−2−フェニル−1,3−ジシライソインドリン、1−ベンジル−2,2,4,4−テトラメチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−ベンジル−2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−ベンジル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドリン、1−ベンジル−2,2,4,4−テトラエチル−2,4−ジシラ−1−アザシクロブタン、1−ベンジル−2,2,5,5−テトラエチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラエチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン、2−ベンジル−1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジシライソインドリン等が例示され、特に2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で示される鎖状又は環状シラザン化合物の製造方法の1つとして、下記一般式(3)
【化6】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるビスハロシラン化合物と下記一般式(4)
6NH2 (4)
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
で示される含窒素化合物を反応させて製造する方法が挙げられる。
【0024】
上記反応において、原料として用いられるビスハロシラン化合物は、下記一般式(3)
【化7】
(式中、R1、R2、R4、R5は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示される化合物である。
ここで、R1、R2、R3、R4、R5は上述したものが例示される。
【0025】
上記一般式(3)で示されるビスハロシラン化合物の具体例としては、ビス(クロロジメチルシリル)メタン、ビス(ブロモジメチルシリル)メタン、ビス(ヨードジメチルシリル)メタン、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ブロモジメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ヨードジメチルシリル)エタン、1,3−ビス(クロロジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ブロモジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ヨードジメチルシリル)プロパン、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ブロモジメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ヨードジメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロジメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ブロモジメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ヨードジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブロモジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ヨードジメチルシリル)ベンゼン、ビス(クロロジエチルシリル)メタン、ビス(ブロモジエチルシリル)メタン、ビス(ヨードジエチルシリル)メタン、1,2−ビス(クロロジエチルシリル)エタン、1,2−ビス(ブロモジエチルシリル)エタン、1,2−ビス(ヨードジエチルシリル)エタン、1,3−ビス(クロロジエチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ブロモジエチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ヨードジエチルシリル)プロパン、1,2−ビス(クロロジエチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ブロモジエチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ヨードジエチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロジエチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ブロモジエチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ヨードジエチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロジエチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブロモジエチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ヨードジエチルシリル)ベンゼン等が例示される。
【0026】
また、原料として用いられる含窒素化合物は、下記一般式(4)
6NH2 (4)
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
で示される化合物である。
6は、上述したものが例示される。
【0027】
上記一般式(4)で示される含窒素化合物の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、キシリジン、ベンジルアミン、フェネチルアミン等が例示される。
【0028】
上記含窒素化合物の使用量は特に限定されないが、反応性及び生産性の点から、上記一般式(3)で示されるビスハロシラン化合物1モルに対し、0.2〜10モル、特に0.5〜5モルの範囲が好ましい。
【0029】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜200℃、特に20〜180℃が好ましい。反応時間は通常1〜40時間である。
【0030】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用い得る溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
反応終了後には含窒素化合物のハロゲン化水素塩が生じるが、これは反応液を濾過又は、水、水酸化ナトリウム水溶液、エチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等を添加して分離する等の方法により除去できる。
【実施例】
【0032】
以下、合成例、実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0033】
[合成例1]
撹拌機、還流器、ガス吹込管及び温度計を備えたフラスコに、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン107.7g(0.5モル)、テトラリン300mlを仕込み、25〜40℃でアンモニア25.5g(1.5モル)を3時間かけて吹き込み、その温度で1時間撹拌した。生成した塩化アンモニウムをろ過により除去し、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを含有する混合物を364g得た。混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、混合物中の2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの含有量は31.9gであった(ガスクロマトグラフィーによる内部標準収率40%)。
【0034】
[実施例1]
合成例1で得られた2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを含む混合物を還流器、蒸留塔、留出管を備えたフラスコに仕込み、メタンスルホン酸0.5g(0.005モル)を添加し、5kPaに減圧した。フラスコを加熱し、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを塔頂温度52〜53℃、釜温96〜108℃の留分として65.6g得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの純度は98%であった。収率は81%であり、クラッキングにより2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンが生成していることが確認された。
【0035】
[実施例2]
メタンスルホン酸の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸0.75g(0.005モル)を添加した以外は、実施例1と同様に実験を行った。2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを塔頂温度52〜53℃、釜温94〜108℃の留分として49.9g得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの純度は98%であった。収率は61%であり、クラッキングにより2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンが生成していることが確認された。
【0036】
[実施例3]
メタンスルホン酸の代わりにドデシルベンゼンスルホン酸1.6g(0.005モル)を添加した以外は、実施例1と同様に実験を行った。2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを塔頂温度52〜53℃、釜温95〜108℃の留分として60.6g得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの純度は98%であった。収率は75%であり、クラッキングにより2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンが生成していることが確認された。
【0037】
[比較例1]
メタンスルホン酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様に実験を行った。2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを塔頂温度52〜53℃、釜温100〜108℃の留分として27.1g得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの純度は97%であった。収率は33%であり、クラッキングにより2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンは生成していないことが確認された。
【0038】
[比較例2]
メタンスルホン酸の代わりに28質量%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液1.0g(0.005モル)を添加した以外は実施例1と同様に実験を行った。2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンを塔頂温度52〜53℃、釜温99〜108℃の留分として27.9g得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンの純度は97%であった。収率は34%であり、クラッキングにより2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンは生成していないことが確認された。