(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772770
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】エアミルクおよびエアモルタル作製用の混合粉末材料
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20150813BHJP
C04B 7/345 20060101ALI20150813BHJP
C04B 24/08 20060101ALI20150813BHJP
C04B 24/16 20060101ALI20150813BHJP
C04B 24/14 20060101ALI20150813BHJP
C09K 17/44 20060101ALI20150813BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20150813BHJP
C09K 17/14 20060101ALI20150813BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20150813BHJP
E02D 3/00 20060101ALI20150813BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20150813BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B7/345
C04B24/08
C04B24/16
C04B24/14
C09K17/44 P
C09K17/10 P
C09K17/14 P
C09K17/32 P
E02D3/00 101
E02D3/12 101
C09K103:00
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-194685(P2012-194685)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51398(P2014-51398A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2012年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595024869
【氏名又は名称】第一化成産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 賢司
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正博
(72)【発明者】
【氏名】山谷 詩朗
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 千秋
【審査官】
相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−248887(JP,A)
【文献】
特開2004−083339(JP,A)
【文献】
特開平06−009255(JP,A)
【文献】
特開2002−362961(JP,A)
【文献】
特開平10−291871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00〜28/36
C04B 38/00〜38/10
C04B 103/00〜111/94
B28C 5/00〜9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末炭化水素系界面活性剤および/または粉末蛋白質系界面活性剤と水硬性固化剤とを混合してなり、かつ上記水硬性固化剤は、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al2O3・CaF2)を主成分とする超速硬セメントおよび/または非晶質カルシウムアルミネートを含有する超速硬セメントであることを特徴とするエアミルクおよびエアモルタル作製用の混合粉末材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアミルクおよびエアモルタルを作製する際に用いられる
混合粉末材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアミルクおよびエアモルタルは、起泡剤を予め水と混合攪拌し、発泡機などを用いて作製した気泡をセメントスラリーに添加する方法(プレフォーム方式)や、水に起泡剤を添加してミキサーなどで攪拌して泡立たせ、セメントや骨材などその他の材料を加えて再度攪拌しながら泡立てる方法(ミックスフォーム方式)などにより作製する。そして、上記のいずれかの方法により作製されたエアモルタルは、ホッパーなどに投入されて、ポンプ圧送により充填場所に充填していた。
【0003】
ところが、これら従来のエアミルクおよびエアモルタルの作製方法においては、起泡剤が液体であるため、エアミルクおよびエアモルタルの施工現場において、当該起泡剤を水に希釈して使用することになるため、その使用方法が限定されてしまうという問題がある。
【0004】
また、上記起泡剤は、当該起泡剤に含まれる界面活性剤や各種添加剤などの溶解安定性を向上させるために、各種の有機溶媒が多量に添加されている。しかし、これらの有機溶媒は、危険物に指定されているものが多く用いられているため、取り扱いに細心の注意が必要になり、作業効率を著しく低下させてしまうという問題もある。
【0005】
一方、液体の起泡剤に替えて、粉末の起泡剤も一部市販されている。しかしながら、エアミルクおよびエアモルタルを上記従来の作製方法によって作製した場合、この粉末の起泡剤は、発泡力に優れるものの、気泡安定性が極めて低く、品質にバラツキが生じてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、下記特許文献1において、炭化水素系界面活性材および/または蛋白質系界面活性材を主成分とする起泡性成分を、水および有機溶媒に対して難溶性または不溶性である無機粉体および/または有機粉体に担持させた気泡モルタル用粉末起泡剤が提案されている。
【0007】
この従来の気泡モルタル用粉末起泡剤は、水や有機溶媒に不溶な無機、および有機粉末に液体の起泡剤を含浸させているため、起泡力および気泡安定性に優れた粉末タイプの気泡モルタル用起泡剤を得ることができる。
【0008】
しかしながら、上記従来の気泡モルタル用粉末起泡剤は、液体の界面活性剤を主成分とした起泡剤においては、有機溶剤などを含有するため、極めて安全であるとは言い難く、また、液体の蛋白質を主成分とした起泡剤においても、鉄塩等が含有されているのため、極めて安全であるとは言い難く、いずれにおいても人体や環境に対しての影響が懸念されるという問題がある。
【0009】
さらに、この従来の気泡モルタル用粉末起泡剤を予めセメントなどと混合しておく場合、長期的なことを考慮すると、これらの起泡剤は水分や有機溶剤分が含有されているため、セメントなどが固化してしまうことが懸念されるとともに、混合割合も限定されてしまうため、コストや作業効率の向上が望めないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−83339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、極めて安全性が高く人体や環境への影響を低減させるとともに、予めセメントなどと混合した場合でも、長期安定性を有するエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、粉末炭化水素系界面活性剤および/または粉末蛋白質系界面活性剤と水硬性固化剤とを混合してなり、かつ上記水硬性固化剤は、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al
2O
3・CaF
2)を主成分とする超速硬セメント
および/または非晶質カルシウムアルミネートを含有する超速硬セメントであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項
1に記載の本発明によれば、粉末炭化水素系界面活性剤および/または粉末蛋白質系界面活性剤と水硬性固化剤とを混合するため、起泡剤に当該粉末炭化水素系界面活性剤を用いた場合に有機溶媒、また起泡剤に当該粉末蛋白質系界面活性剤の場合に鉄塩を使用する必要がないため、人体や環境への影響がなく安全に使用することができるエアモルタルを得ることができる。これにより、例えば、少量のエアミルクおよびエアモルタルを作製する場合でも、プラスチック製バケツなどを用いて簡便に作製することができる。
【0015】
また、エアミルクおよびエアモルタルの作製にあたり、上記起泡剤を予め水と混合攪拌し、発泡機などを用いて作製した気泡をセメントスラリーに添加するプレフォーム方式や、水に起泡剤を添加してミキサーなどで攪拌して泡立たせ、セメントや骨材などその他の材料を加えて再度攪拌しながら泡立てるミックスフォーム方式のいずれにおいても、起泡力および気泡安定性に優れたエアミルクおよびエアモルタルを得ることができる。
【0016】
しかも、上記水硬性固化剤が、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al
2O
3・CaF
2)を主成分とする超速硬セメント
および/または非晶質カルシウムアルミネートを含有する超速硬セメントあるため、例えば、上記起泡剤を予め水と混合攪拌し、発泡機などを用いて作製した気泡をセメントスラリーに添加するプレフォーム方式によって作製したエアミルクおよびエアモルタルを、充填場所にポンプなどを用いて充填した際に、短時間で効率良く固化させることができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料は、起泡性成分である粉末炭化水素系界面活性剤として、例えば、アニオン界面活性剤または非イオン界面活性剤などが挙げられる。また、これらの粉末炭化水素系界面活性剤の内、好適に使用できるものは、粉末のアニオン界面活性剤である。この粉末のアニオン界面活性剤として主なものは、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸石鹸などが挙げられる。また、粉末の非イオン界面活性剤として主なものは、グリセリンエステル、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0018】
そして、起泡性成分である粉末蛋白系界面活性剤として、例えば、ケラチン粉末、コラーゲン粉末、カゼイン粉末、大豆粉末などが挙げられる。
【0019】
これらの起泡性成分として、本発明の一実施形態においては、粉末炭化水素系界面活性剤および粉末蛋白質系界面活性剤の中から、1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0020】
また、水硬性固化剤としては、例えば、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al
2O
3・CaF
2)を主成分とする、いわゆる超速硬セメント、非晶質カルシウムアルミネートを含有する超速硬セメント、アーウィンを含有するアーウィン系セメント、アルミナセメントなどが挙げられる。
【0021】
そして、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料の一実施形態においては、所定量の粉末起泡性成分、例えば、粉末のアニオン界面活性剤であるアルファオレフィンスルホン酸塩と、水硬性固化剤、例えば、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al
2O
3・CaF
2)を主成分とする超速硬セメントとを、一般に用いられる混合機などにより攪拌混合することにより得ることができる。
【0022】
なお、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を、例えば、粉末起泡性成分と水硬性固化剤とが所定の割合で配合された所定量の一袋を完全に使用する場合には、上記混合機での攪拌混合をしないで、そのまま使用することが可能となる。また、上記
混合粉末材料を完全に一袋使用する場合、所定量に計算された粉末起泡性成分を水溶性の袋に入れ、その袋を所定量の水硬性固化剤が入った袋に入れる方法も可能である。
【0023】
以上述べたように、所定量の粉末起泡性成分と水硬性固化剤とを混合して得られたエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を用いて、例えば、小規模の工事現場に充填するには、まず、少量のエアミルクを作製する。その際に、プラスチック製バケツを用意し、このプラスチック製バケツに、所定量の水を入れて、そこに所定量に配合された所定量の上記エアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を一袋加え、ハンドミキサーによって充分に攪拌させてエアミルクを作製する。
【0024】
この際に、所定量の一袋には、所定量の粉末起泡性成分、例えば、粉末のアニオン界面活性剤であるアルファオレフィンスルホン酸塩と、水硬性固化剤、例えば、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al
2O
3・CaF
2)を主成分とする超速硬セメントとが配合されている。
【0025】
次いで、作製したエアミルクをそのまま上記プラスチック製バケツに入れた状態で、充填場所に運搬して充填する。また、作製した上記エアミルクを上記プラスチック製バケツからポッパーに投入して、ポンプ圧送により充填場所に充填することも可能である。
【0026】
また、大規模な充填場所にエアミルクを大量に充填する場合には、グラウトミキサーなどの混合機を用いて、所定量の水と所定量のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を加えて攪拌を充分におこなってエアミルクを作製する。この際に、上記エアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料は、所定量の粉末起泡性成分、例えば、粉末のアニオン界面活性剤であるアルファオレフィンスルホン酸塩と、水硬性固化剤、例えば、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al2O3・CaF2)を主成分とする超速硬セメントとを、一般に用いられる混合機などにより攪拌混合する。
【0027】
そして、上記グラウトミキサーによって作製されたエアミルクを、当該グラウトミキサーからホッパーなどに投入して、ポンプ圧送により充填場所に充填する。
【0028】
なお、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料は、必要に応じて、当該エアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料の性能を妨げない範囲内により、以下の挙げる物質の1種または2種以上を組み合わせて併用することが可能である。
【0029】
上記物質としては、例えば、ラウリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸等の脂肪酸、メチルセルロース等のセルロース系誘導体やポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系増粘剤、グアーガム等の天然系増粘剤、キトサン等の植物または甲殻類抽出物、アミノ酸系界面活性剤等のカルボン酸系界面活性剤、水ガラス系薬剤やアルミニウム塩類等の無機塩類またはナトリウム塩やカルシウム塩等の水溶性無機金属塩、カオリン鉱物やアタパルジャイト等の繊維状粘土鉱物またはイモゴライト等の非晶質粘土鉱物あるいはシリカ鉱物やドロマイト及びこれらの焼成物等の粘土鉱物、ポリカルボン酸系やナフタレンスルホン酸系等の減水剤、ナフタレン系やポリカルボン酸系またはアクリル酸ナトリウム等の分散剤等である。
【0030】
さらに、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料には、水以外に、当該水と骨材など混練してエアモルタルを作製して使用することも可能である。また、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料に上記骨材と、必要に応じて減水剤、分散剤、各種セメント混和剤などを予め配合した配合製品として生産しておくことも可能である。この場合、施工現場において上記配合製品と水とを単に混練することによりエアモルタルを作製することができるため、現場作業において配合成分の計量をおこなう作業を省くことができ、作業効率を向上させるとともに、計量ミスをなくすことができる。
【0031】
また、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料と混合する上記骨材に関しては、その種類に特に制約がないため、川砂、山砂、海砂、砕石粉末砂などの通常の砂や、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどの混和材、パーライト、シラスバルーンなどの軽量骨材、現地発生土、石灰石、砕石、珪砂などが挙げられる。また、混練する際に用いられる水としては、水道水、地下水、海水等が使用できる。
【0032】
さらに、エアミルクまたはエアモルタルを作製する際に、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料の起泡性を阻害しないものや、水硬性硬化剤の固化および強度を阻害しないものであれば、必要に応じて従来から慣用されている各種セメント混和剤を併用することも可能である。この従来から慣用されているセメント混和材としては、例えば、硬化遅延剤(ポリリン酸塩、クエン酸塩など)、硬化促進剤(塩化カルシウムなど)、収縮低減剤(低級アルコールなど)、撥水剤(高級脂肪酸など)、急結剤(アルミン酸カルシウムなど)、高炉スラグ、シリカフューム、石膏、火山灰などが挙げられる。
【0033】
なお、本発明の
混合粉末材料を使用することが可能な軽量エアミルクまたはエアモルタルとしては、土木・建築に用いられる現場打設のコンクリートやモルタル、または工場で生産される各種コンクリートやモルタル2次製品など、軽量化を必要とする種々のセメント系硬化体である。
【0034】
また、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を用いた場合、当該
混合粉末材料を水、骨材などのその他の材料とともに、ミキサーを用いて攪拌しながら泡立ててエアミルクまたはエアモルタルを作製するミックスフォーム方式でおこなうか、また場合によっては、上記
混合粉末材料を予め水と混合撹拌しておき、特殊発泡装置によりエアミルクまたはエアモルタルを作製するプレフォーム方式でも対応可能である。
【0035】
さらに、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料の添加方法は、水、
混合粉末材料、骨材の順序で混合した場合でも、また
混合粉末材料、水、骨材の順序で添加混合するなど、添加順序を適宜変えた場合でも、作製されるエアモルタルの性能に影響はしない。
【0036】
そして、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を使用して作製されるエアミルクまたはエアモルタルを用いたコンクリートの施工法は、従来の施工法を用いることができ、型枠への充填、コーキングガンによる注入など種々の方法によって施工することができる。また、養生方法は、気乾養生、湿空養生、加熱促進養生(蒸気養生、オートクレーブ養生など)のいずれかでもよく、さらに、各々の養生方法を併用してもよい。
【0037】
次に、実施例を用いて、本発明のエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を具体的に説明する。しかし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1〜5]
表1に示す起泡性成分(A)と水硬性固化剤(B)を用いて、(A):(B)=1.5:100(質量比)の比率で混合し、表2に示すような組み合わせの組成を有するエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料を調製し、実施例1〜5とした。
【0039】
[比較例1〜2]
また、市販の粉末起泡剤である「ライポンPS−860」(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:ライオン(株)製商品名)、および市販のエアモルタル用液体起泡剤である「スミシールド」(主成分:液体炭化水素系界面活性剤:住友大阪セメント(株)製商品名)を比較用として、比較例1、比較例2とした。
【0042】
ここで、エアミルクの作成について説明する。まず、実施例1〜5においては、40Lの容器に、表2で調製した試作品を表3で示す割合にして投入し、そこに水を加え、ハンドミキサーにより1分間攪拌混合してエアミルクを作製した。そして、比較例においては、40Lの容器に、表4で示した割合により、超速硬系セメントと起泡剤と水を加え、ハンドミキサーにより1分間混合してエアミルクを作製した。
【0045】
そして、実施例1〜5および比較例1〜2で作製したエアミルクの密度とフロー値を下記(1)および(2)の方法により測定した。
(1) 密度の測定:内容量1000cm
3の計量用カップに試料を充填して、1000cm
3当りの重量を計測し密度を算出した。
(2) フロー値の測定:NEXCO試験方法「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(試験法313−1999)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して、内径8cm、高さ8cmのシリンダーに、試料を入れて、引き抜き後の試料底面の直径を測定した。
【0046】
次に、このエアミルクをφ5×10cmの型枠に流し込み、湿空養生(20℃、24時間)を行いエアミルクの沈下の有無を観察した。それらの結果を表5にまとめた。
【0048】
そして、実施例1〜5および比較例1〜2のエアミルクについての評価方法としては、まず、ハンドミキサーを用いて攪拌した後の密度における評価と、密度とエアミルクの沈下の有無を合わせて総合的に評価をした。評価にあたっては、密度が0.4〜0.9の範囲を「○」とし、範囲外を「×」とした。
【0049】
この評価方法において、密度が0.4〜0.9の範囲を「○」とした理由は、0.4以下の密度では圧縮強度不足となり、エアミルクの自立の安定性を欠いてしまい、また、0.9以上の密度では圧縮強度が大きくなりすぎて、練りあがった時の体積が小さくなってしまい経済的に適さないことからである。そして、総合評価としては、密度が0.4〜0.9の範囲にあって、エアミルクの沈下が「無」の場合には「○」とし、それ以外は「×」とした。
【0050】
上記評価を示した表5の結果から、本発明のエアミルクおよびモルタル
作製用の
混合粉末材料は、市販の液体起泡剤で作製したエアミルクまたはエアモルタルと比較して起泡性に優れるとともに、気泡安定性を有していることが判明した。
【0051】
上述の実施形態によるエアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料によれば、粉末炭化水素系界面活性剤および/または粉末蛋白質系界面活性剤と水硬性固化剤とを混合するため、起泡剤に当該粉末炭化水素系界面活性剤を用いた場合に有機溶媒、また起泡剤に当該粉末蛋白質系界面活性剤の場合に鉄塩を使用する必要がないため、人体や環境への影響がなく安全に使用することができるエアモルタルを得ることができる。これにより、例えば、少量のエアモルタルを作製する場合でも、プラスチック製バケツなどを用いて簡便に作製することができる。
【0052】
また、エアミルクまたはエアモルタルを作製するにあたり、上記エアミルクおよびエアモルタル
作製用の
混合粉末材料は、上記起泡剤を予め水と混合攪拌し、発泡機などを用いて作製した気泡をセメントスラリーに添加するプレフォーム方式や、水に起泡剤を添加してミキサーなどで攪拌して泡立たせ、セメントや骨材などその他の材料を加えて再度攪拌しながら泡立てるミックスフォーム方式のいずれにおいても、実施例に示すように、起泡力および気泡安定性に優れたエアミルクまたはエアモルタルを得ることができる。
【0053】
そして、上記エアミルクおよびエアモルタル作製用の混合粉末材料は、上記水硬性固化剤が、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al
2O
3・CaF
2)を主成分とする超速硬セメント
および/または非晶質カルシウムアルミネートを含有する超速硬セメントであるため、ミックスフォーム方式またはプレフォーム方式によって作製されたエアミルクまたはエアモルタルを、充填場所にポンプなどを用いて充填した際に、短時間で効率良く固化させることができ、作業効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
空洞などを充填するエアミルクおよびエアモルタルの作製に利用することができる。