(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772854
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 9/02 20060101AFI20150813BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20150813BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20150813BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20150813BHJP
H01B 7/295 20060101ALI20150813BHJP
H01B 7/17 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
H01B9/02 A
C08L23/08
C08K3/22
C08K5/14
H01B7/34 B
H01B7/18 H
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-64323(P2013-64323)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-191907(P2014-191907A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2014年12月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137855
【弁理士】
【氏名又は名称】沖川 寛
(72)【発明者】
【氏名】西 甫
(72)【発明者】
【氏名】梶山 元治
(72)【発明者】
【氏名】中村 孔亮
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴之
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−200574(JP,A)
【文献】
特開2010−095638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 9/02
C08K 3/22
C08K 5/14
C08L 23/08
H01B 7/17
H01B 7/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚線導体と、これを覆う内部半導電層と、この内部半導電層の外周に絶縁層を介して外部半導電層と、その外周にシース層を備えた非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルにおいて、
前記シース層は、酢酸ビニル含有量が40wt%以上50wt%未満で、JIS
K 6924に基づいて、190℃、2.16kgの荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1g/10min以上2.5g/10min以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分としたオレフィン系ポリマ100重量部に対して、金属水酸化物を80〜200重量部、及び架橋剤を0.5〜10重量部含有し、架橋されており、JISC3005に準拠した試験における、引張強さが8MPa以上、破断伸びが200%以上の機械特性、100℃で168時間の加熱後の引張強さ残率が70%以上、破断伸び残率が60%以上の耐老化性、100℃のIRM902号油に24時間浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ60%以上の耐油性、JIS C 3660に準拠した試験における−40℃で10分間の冷却後の破断伸びが100%以上、かつ−50℃で10分間の冷却後の破断伸びが30%以上の低温特性、BS6853に準拠した垂直燃焼試験における炭化長が2.5m以下である難燃性を有することを特徴とする非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブル。
【請求項2】
上記架橋剤が1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)=ペルオキシド、1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブル。
【請求項3】
上記絶縁層にエチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンブテンゴム、エチレンヘキセンゴム、エチレンオクテンゴムあるいは架橋ポリエチレンを用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械特性、耐老化性、耐油性、低温特性、難燃性、安全性に優れる非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速鉄道車両においては走行速度の向上のため、高電圧の電力を架線からパンタグラフを介して車両内に取り込む必要があり、鉄道車両用特別高圧ケーブルが使用されている。
【0003】
具体的には、パンタグラフと車両床下部に設置されたトランスとを結ぶ引き通しケーブルと車両間を繋ぎ電力を供給する車両渡りケーブルがある。
【0004】
この種の鉄道車両用特別高圧ケーブルは、電気特性はもちろんのこと、外傷や摩耗などに対する機械的特性、耐老化性・耐油性などの耐環境性、難燃性も要求される。また、寒冷地における用途もあるため低温特性にも優れることが求められる。
【0005】
そのため、従来から上記特性に優れるシース材料としてクロロプレンゴムが使用され、かかる特別高圧ケーブルが実用化されてきた。
【0006】
しかし、上記クロロプレンゴムを使用した特別高圧ケーブルは火災時に不燃性のハロゲン系ガスを大量に発生させ、それによりケーブルの周囲における酸素を遮断し燃焼を防止しようとするものであり、十分な難燃性は発揮するものの、その際に発生するハロゲン系ガスなどは有毒なものが多く、有毒ガスを含んだ煙を大量に発生させてしまう欠点がある。
【0007】
そこで、上記クロロプレンゴムに代えて、ポリオレフィン系樹脂に水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を難燃剤として混和し、火災時の安全性を重視した非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルが望まれている。
【0008】
これまで、高難燃性の非ハロゲン樹脂組成物を電線、ケーブルに適用するために、金属水酸化物のみでは十分な難燃性と優れた機械特性を両立することが困難なため、難燃助剤として赤リンなどのリン含有難燃剤を添加する方法(特許文献1〜3)や、ベースポリマに酢酸ビニル含有量の高いエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、メラミンシアヌレートなどの1,3,5−トリアジン誘導体を添加する方法(特許文献4〜6)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−42574号公報
【特許文献2】特開2002−42575号公報
【特許文献3】特開2003−113276号公報
【特許文献4】特許第3632735号公報
【特許文献5】特許第4398552号公報
【特許文献6】特開2005−200574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、難燃助剤としてリン含有難燃剤や1,3,5−トリアジン誘導体を添加すると十分な難燃性は得られるものの、燃焼時に有毒のホスフィン(PH3)や窒素酸化物、シアン化水素を発生させるため、火災時の安全性が要求される非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルには適当ではない。
【0011】
従って、本発明の目的は、機械特性、耐老化性、耐油性、低温特性、難燃性、安全性に優れる非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、撚線導体と、これを覆う内部半導電層と、この内部半導電層の外周に絶縁層を介して外部半導電層と、その外周にシース層を備えた非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルにおいて、前記シース層は、酢酸ビニル含有量が40wt%以上50wt%未満で、
JIS K 6924に基づいて、190℃、2.16kgの荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が
0.1g/10min以上2.5g/10min以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分としたオレフィン系ポリマ100重量部に対して、金属水酸化物を80〜200重量部、及び架橋剤を0.5〜10重量部含有し、架橋されており、JISC3005に準拠した試験における、引張強さが8MPa以上、破断伸びが200%以上
の機械特性、100℃で168時間の加熱後の引張強さ残率が70%以上、破断伸び残率が60%以上
の耐老化性、100℃のIRM902号油に24時間浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ60%以上
の耐油性、
JIS C 3660に準拠した試験における−40℃で10分間の冷却後の破断伸びが100%以上、かつ−50℃で10分間の冷却後の破断伸びが30%以上
の低温特性、BS6853に準拠した垂直燃焼試験における炭化長が2.5m以下である
難燃性を有することを特徴とする非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルである。
【0013】
請求項2の発明は、上記架橋剤が1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)=ペルオキシド、1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルである。
【0014】
請求項3の発明は、上記絶縁層にエチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンブテンゴム、エチレンヘキセンゴム、エチレンオクテンゴムあるいは架橋ポリエチレンを用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機械特性、耐老化性、耐油性、低温特性、難燃性、安全性に優れる非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鉄道車両用特別高圧ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、撚線導体と、これを覆う内部半導電層と、この内部半導電層の外周に絶縁層を介して外部半導電層と、その外周にシース層を備えた非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルにおいて、JISC3005に準拠した試験における、引張強さが8MPa以上、破断伸びが200%以上、100℃で168時間の加熱後の引張強さ残率が70%以上、破断伸び残率が60%以上、100℃のIRM902号油に24時間浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ60%以上であり、−40℃で10分間の冷却後の破断伸びが100%以上、かつ−50℃で10分間の冷却後の破断伸びが30%以上であり、BS6853に準拠した垂直燃焼試験における炭化長が2.5m以下を実現した非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルを提供するものである。
【0018】
そのため、本発明の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルのシース層に用いられる具体的な樹脂組成として、酢酸ビニル含有量が40wt%以上50wt%未満で、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10min以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分としたオレフィン系ポリマ100重量部に対して、金属水酸化物を80〜200重量部、及び架橋剤を0.5〜10重量部含有し、架橋されたものを用いた。
【0019】
なお、ここでいう主成分とは、2種類のポリマをブレンドする場合には、オレフィン系ポリマに対して50重量%以上を占める成分のことをいい、3種類のポリマをブレンドする場合には全体の3分の1以上を占める成分のことをいう。
【0020】
以下に、本発明の一実施形態に係る非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルについて説明する。
【0021】
本実施形態のシース層に用いる樹脂組成物は、酢酸ビニル含有量が40wt%以上50wt%未満で、メルトフローレート(MFR)が0.1〜2.5g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分としたオレフィン系ポリマ100重量部に対して、金属水酸化物を80〜200重量部、及び架橋剤を0.5〜10重量部含有し、架橋されたものを用いた。
【0022】
本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)は、酢酸ビニル含有量が40wt%以上50wt%未満で、メルトフローレート(MFR)が0.1〜2.5g/10minのものを用い、これを単独、もしくは他のポリオレフィン系樹脂と混合して用いる。
【0023】
ここで、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いるのは難燃性を向上させ、十分な耐油性を得るためである。またエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量を40wt%以上50wt%未満で、メルトフローレートを0.1〜2.5g/10minとしたのは、40wt%未満の含有量では極性が小さいため十分な耐油性が得られず、50wt%以上の含有量ではガラス転移温度が高くなるために低温における柔軟性が低下し低温特性に劣るためである。また、MFRが2.5g/10minより大きいポリマでは引張強さ等の特性低下が顕著になるからである。なお、ここにメルトフローレートの測定はJIS K 6924に基づいて、190℃、2.16kgの荷重で測定した際の値である。0.1g/10min以上に制限する理由は、これよりも粘性が高いと押出性が低下するためである。
【0024】
エチレン−酢酸ビニル共重合体と混合する他のエチレン系共重合体やポリオレフィン系樹脂としては、低密度、中密度、及び高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、αオレフィンコポリマー、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−スチレン共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、マレイン酸グラフト直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらは、1種、又は2種以上混合して使用できる。また、フィラの密着性向上のため、マレイン酸などで変性処理したものも適用可能である。
【0025】
ポリマに添加する金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を併用しても良い。また、これらの金属水酸化物は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸塩やステアリン酸カルシウム等の脂肪酸又は、脂肪酸金属塩等によって表面処理されているものを用いても差し支えない。また、他の金属水酸化物を適量加えても良い。
【0026】
本発明において、オレフィン系ポリマ100重量部に対する金属水酸化物の添加量は、80重量部以上200重量部以下であり、添加量が80重量部より少ないと十分な難燃性が得られず、200重量部より多いと機械特性が著しく低下する。
【0027】
またポリマに添加する架橋剤としては、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)=ペルオキシド、1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。これらは複数を添加することも可能である。
【0028】
本発明において、架橋剤は、オレフィン系ポリマ100重量部に対して0.5〜10重量部であり、添加量が0.5重量部より少ないと十分な架橋効果が得られず引張強さが不足し、10重量部より多いと破断伸びが不十分となる。
【0029】
本発明において、ケーブルの内部絶縁体にはエチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンブテンゴム、エチレンヘキセンゴム、エチレンオクテンゴムあるいは架橋ポリエチレンを用いることができる。中でも耐コロナ性、可とう性に優れるEPRが最適である。
【0030】
本発明の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルの製造方法においては、シース被覆後に145℃で60分間シース材料を架橋させることが望ましい。
【0031】
また、シース材料には必要に応じて酸化防止剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、無機充填剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等の添加剤を加えることが可能である。
【実施例】
【0032】
本発明の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルの例を
図1で説明する。
【0033】
図1は、錫めっき銅導体1に内部半導電層2を巻き付け、絶縁体3を被覆して絶縁層を形成し、その上に外部半導電層4、遮へい層5を設け、押えテープ6を施し、最外層をシース層7として押出し被覆したケーブルを示す図であり、シース層7を本発明の非ハロゲン樹脂組成物により作製する。
【0034】
非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルは、以下のように作製した。
【0035】
内部半導電層を巻いた錫めっき銅導体に内部絶縁樹脂(EPR)を被覆し、内部絶縁樹脂を1.8MPaで1分間スチーム架橋した。その後、外部半導電層(外導テープ)、遮へい層(編組)、押えテープを順次巻きつけた後、表1(実施例1〜6)、表2(比較例1〜6)に示した配合割合で各種成分を配合し、加圧ニーダによって開始温度40℃、終了温度140℃で混練後、混練物をペレットにし、これを
図1に示すケーブルのシース材料として、厚さ3mmで、設定90℃で押出して被覆してシース層を形成した。最後に、シース層の上から鉛を被覆し、145℃で60分間加熱してシース材料を架橋させた。
【0036】
ケーブルの評価は以下に示す方法により判定した。
【0037】
機械特性、耐老化性、耐油性、低温特性の評価は作製したケーブルより
、シースをサンプリングし、厚さ1mmのシートに切削加工して行った。難燃性はケーブルのまま評価を実施した。
【0038】
機械特性、耐老化性、耐油性はJIS C 3005、低温特性はJIS C 3660、難燃性はBS6853に準拠して評価した。シースの特性は、引張強さ8MPa以上、破断伸び200%以上、老化特性は恒温槽内において100℃、168時間加熱し、引張強さの残率が70%以上、破断伸びの残率が60%以上、耐油性はIRM902号油を試験油とし100℃、24時間浸漬させ、引張強さおよび破断伸びの残率が60%以上、低温特性はチャンバー内において−40℃あるいは−50℃、10分間冷却し、破断伸びがそれぞれ100%以上、30%以上であるものを合格とした。
【0039】
難燃性はBS 6853に準拠して垂直燃焼試験(1条布設)を行い、炭化長2.5m以下を合格(○)とした。
【0040】
本発明の樹脂組成物を用いて製造した実施例を表1に、また上記と同様にして作製した比較例を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1に示すように、本発明における実施例1〜6においては、いずれも機械特性、耐老化性、耐油性、低温特性、難燃性に優れている。しかも、難燃助剤としてリン含有難燃剤や1,3,5−トリアジン誘導体を添加しないため、燃焼時に有毒のホスフィン(PH3)や窒素酸化物、シアン化水素を発生させることがなく、安全性にも優れている。
【0044】
このように本発明の実施例に係る非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルは、機械特性、難燃性、耐老化性、耐油性を保持しつつ、難燃助剤としてリン含有難燃剤や1,3,5−トリアジン誘導体を添加していないため、燃焼時に有毒のホスフィン(PH3)や窒素酸化物、シアン化水素を発生させることがなく、安全性にも優れている。しかも、優れた低温特性を示すため、寒冷地の使用においても十分な信頼性を有する。
【0045】
一方、酢酸ビニル含有量が本発明の規定より少ない比較例1では、極性が小さい為に耐油性が不十分である。酢酸ビニル含有量が本発明の規定より多い比較例2では、ガラス転移温度が高い為に低温における柔軟性に劣り低温特性が不十分である。金属水酸化物の添加量が規定量を下回る比較例3においては難燃性が不十分であり、規定量を上回る比較例4では機械特性、低温特性が不十分である。架橋剤の添加量が規定量を下回る比較例5においては引張強さ、低温特性が不十分であり、規定量を上回る比較例6では破断伸びが不十分である。また、規定値よりもメルトフローレートの大きいエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として用いる比較例7では機械特性が不十分である。
【0046】
以上見てきたように、本発明の非ハロゲン鉄道車両用特別高圧ケーブルは優れた機械特性、耐老化性、耐油性、低温特性、安全性を有しており、その工業的な有用性は極めて高いと考えられる。
【符号の説明】
【0047】
1 錫めっき銅導体
2 内部半導電層
3 絶縁体
4 外部半導電層
5 遮へい層
6 押えテープ
7 シース層