特許第5772869号(P5772869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5772869-製鉄用ヘマタイトの製造方法 図000003
  • 特許5772869-製鉄用ヘマタイトの製造方法 図000004
  • 特許5772869-製鉄用ヘマタイトの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772869
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】製鉄用ヘマタイトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20150813BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20150813BHJP
   B03C 1/30 20060101ALI20150813BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20150813BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C22B23/00 102
   C22B3/08
   B03C1/30 Z
   B03B5/28 B
   C01G49/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-91814(P2013-91814)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-214338(P2014-214338A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年4月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】小原 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】菅 康雅
(72)【発明者】
【氏名】今村 正樹
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095788(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099714(WO,A1)
【文献】 特開昭62−254851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
B03B 1/00−13/06
B03C 1/00−1/30
C01G 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧酸浸出法を利用したニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントから得られる浸出残渣を原料とする製鉄用ヘマタイトの製造方法であって、
前記浸出残渣を、オーバーフローが1μm以下となる設定以上、2μm以下となる設定以下の分級サイズ条件で湿式サイクロンを使用して、ヘマタイト及びクロマイトを含むオーバーフローと、石膏を含むアンダーフローとに分離するステップと、
前記オーバーフローに含まれるヘマタイトとクロマイトを、強磁場磁気分離装置による磁場強度が5〜20[kGauss]の磁力を利用して分離するステップの少なくとも2ステップを順次行って、ヘマタイトケーキを作製することを特徴とする製鉄用ヘマタイトの製造方法。
【請求項2】
前記ヘマタイトケーキが含有する水分の水分率を、10wt%〜17wt%に調整する脱水工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の製鉄用ヘマタイトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製鉄用ヘマタイトの製造方法に関する。
詳しくは、ニッケル酸化鉱石の高温酸浸出(HPAL)法による湿式精錬プラントの最終中和工程から得られるテーリングスラリーを分離して、製鉄用ヘマタイトを回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルはステンレスの原料として幅広く用いられているが、その原料となる硫化鉱石の資源枯渇傾向に伴い、低品位の酸化鉱石を精製する技術が開発、実用化されてきている。
具体的には、リモナイトやサプロライトなどのニッケル酸化鉱石を硫酸溶液とともにオートクレーブなどの加圧装置に入れ、240〜300℃程度の高温高圧下においてニッケルを浸出する、高温加圧酸浸出(High Pressure Acid Leach、以下HPALと表記する。)プロセスと呼ばれる製造プロセスが実用化されている。図3に、その製造工程の概略フロー図を示す。
【0003】
このHPALプロセスにおける硫酸溶液中に浸出されたニッケルは、中和剤を添加して余剰の酸を中和し、次いで固液分離して浸出残渣と分離される。
その後ニッケルは、不純物を分離する工程を経て、水酸化物や硫化物などの形態の中間原料として回収され、この中間原料をさらに精製することにより、ニッケルメタルやニッケル塩化物などの形態で得られるものである。
なお、その余剰の酸を中和する工程では、浸出物は固液分離に適したpHに調整され、次工程の固液分離工程において、CCD(Counter Current Decantation)と呼ばれる設備で、固形分の濃縮および固液分離が行われる。通常CCDでは、連続する複数段のシックナーが使用されている。
【0004】
そのCCDから得られる液体成分(以下、オーバーフローという場合がある。)は、硫化工程に適したpHに調整するために中和工程に回される。そこではpHを調整し、発生する微細な固形物を沈殿除去した後、例えば硫化処理が供され、ニッケル硫化物という中間原料が生成される。
【0005】
このようなHPALプロセスでは、例えばニッケル酸化鉱の場合、回収目的の有価金属が1〜2重量%以下の低品位鉱石(以下、重量%を%で表記する。)であっても、ほぼ完全にニッケルを浸出できる。即ち、目的金属を従来原料と同程度まで濃縮し、従来原料とほぼ同様の精製方法および工程で目的金属を得ることが出来る。また、このHPALプロセスは、ニッケル酸化鉱のみでなく、ニッケル硫化鉱や硫化銅鉱石、酸化銅鉱石など他の原料にも適用できる。
【0006】
さらに、HPALプロセスで得られる浸出残渣の主な成分は、酸化鉄であり、浸出残渣固形分中の鉄分はおよそ40〜50%程度であり、また、浸出残渣の生産量は中間原料の生産量に対しておよそ50倍から100倍である。これは原料のニッケル酸化鉱石や硫化鉱石に、ニッケルの含有量をはるかに超える量の鉄を含有しているためである。
この浸出残渣は、高温で生成されているため科学的環境的には安定な酸化物の状態であるが、現状では特段の利用価値もなく、残渣堆積置場に積立保管されている。
従って、HPALプロセスの操業に伴って発生する、膨大な量の浸出残渣を積立保管するための広大な残渣積立置場が必要である。
【0007】
ところで、酸化鉄は鉄鉱石に多く含まれ、精鋼の原料に鉄鉱石が広く利用されている。
鉄鋼精錬では酸化鉄が含まれた鉄鉱石を、コークスなどの還元剤と共に高炉に装入、加熱により還元溶融して粗鋼を形成する。この粗鋼を転炉で精錬して目的とする鋼を製造している。
一般に、その原料となる鉄鉱石は限られた資源であり、しかも鋼の品質維持に必要な良質な鉄鉱石の入手は次第に難しくなってきている。このため、浸出残渣を鉄鉱石として使用する検討がなされている。
【0008】
しかしながら、HPALプロセスの浸出残渣を製鉄原料用に直接用いることは、以下の理由から困難であった。
HPALプロセスの浸出残渣には、酸化鉄以外にも脈石や不純物、特に硫黄が含まれるため、従来の製鉄プロセスに用いる原料には適さなかった。具体的には硫黄の品位が高いためである。
特に製鉄原料に利用できる酸化鉄中の硫黄品位は、個々の製鉄所の設備能力、生産量などによって異なるが、一般的には1%未満に抑制することが必要とされている。
【0009】
しかしながら、浸出残渣固形分中には5〜8%程度の硫黄が含有されている。この浸出残渣中の硫黄の由来は、その大部分がHPALプロセスで混入する硫酸カルシウム(石膏)である。
この石膏は、高圧酸浸出で得られた浸出スラリーに残留する遊離硫酸(遊離硫酸とはHPALプロセスで十分な浸出を行うために過剰に加えた硫酸のうち、未反応で残留する酸のことである。)を中和する際に、一般的で安価なカルシウム系の中和剤、例えば、石灰石や消石灰を添加することにより、中和剤に含まれるカルシウムと遊離硫酸が反応することで生成し、浸出残渣中に混入しているものである。
なお、浸出残渣固形分中に含有される硫黄の一部(1%程度)は、生成したヘマタイトの粒子中に取り込まれている。
【0010】
この時点で得られるニッケル浸出後の残渣中の固形分は1μm程度のヘマタイトを主とする粒子からなり、固形分中の鉄品位はおよそ30〜40%、硫黄品位はおよそ5〜8%となる。なお、この時点で得られる浸出残渣の水分率は60%である。
この浸出残渣を製鉄用のヘマタイトとして使用するには、浸出残渣固形分中の鉄品位を50%以上、硫黄品位を1%以下とすることが必要である。
【0011】
そのための技術としては、例えば、特許文献1に、浸出残渣を、篩い分けによる分離、湿式サイクロンによる分離、磁性による分離に付して、ヘマタイト混合物中の不純物を除去する技術が記載されており、ヘマタイト中の不純物を除去するために一定の効果が認められた。
しかし、上記の製鉄用ヘマタイトとして単独で使用するためには満足できる方法ではなく、特に鉄品位は高くても40〜45%程度までしか向上できなかった。そのため、製鉄用ヘマタイトとして使用するには、より高品位の鉄を含む製鉄用原料と混合する必要があった。なお、物理分離後に得られる浸出残渣の水分率は40%程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−095788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、製鉄用原料として使用可能なヘマタイト含有物を得ることが可能な浸出残渣の分離方法を提案し、浸出残渣から製鉄用ヘマタイトを生成する製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、湿式サイクロンによる分離ステップと、適正な磁性分離のステップを順次おこなうことで、前記した鉄品位、硫黄品位の問題を同時に解決できることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0015】
本発明の第1の発明は、高圧酸浸出法を利用したニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントから得られる浸出残渣を原料とする製鉄用ヘマタイトの製造方法であって、
その浸出残渣を、オーバーフローが1μm以下となる設定以上、2μm以下となる設定以下の分級サイズで湿式サイクロンを使用して、ヘマタイト及びクロマイトを含むオーバーフローと、石膏を含むアンダーフローとに分離するステップと、分離したオーバーフローに含まれるヘマタイトとクロマイトを、強磁場磁気分離装置による磁場強度が5〜20[kGaussの磁力を利用して分離するステップの少なくとも2ステップを順次行って、ヘマタイトケーキを作製することを特徴とする製鉄用ヘマタイトの製造方法である。
【0016】
本発明の第の発明は、第1の発明におけるヘマタイトケーキが含有する水分の水分率を、10wt%〜17wt%に調整する脱水工程を含むことを特徴とする製鉄用ヘマタイトの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製鉄用ヘマタイトの製造方法によれば、製鉄用原料として使用可能な品位のヘマタイト含有物を、酸化鉱石の精錬工程から容易に得ることを可能とし、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のテーリングスラリーから製鉄用ヘマタイトを製造する製造工程フロー図である。
図2】従来のテーリングスラリーから製鉄用ヘマタイトを製造する製造工程フロー図である。
図3】HPALプロセスの製造工程における概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の、製鉄用ヘマタイトの製造方法を、図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明の製鉄用ヘマタイトを製造する製造工程フロー図である。
本発明は、図3のHPALプロセスの製造工程概略フロー図に示されるような高圧酸浸出(HPAL)法を利用したニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントから排出される浸出残渣(以下、図3の「テーリングダム」に貯留される「最終中和残渣(テーリングスラリー)」を意味する。)から有益な成分組成を有する材料を分離するものであり、その工程が、浸出残渣であるところのテーリングスラリーを湿式サイクロンを使用して、オーバーフローとアンダーフローとに分離するステップと、分離したオーバーフローを、磁力を利用して、磁性の強いもの(製鉄用ヘマタイト)と、弱いものとに分離するステップの少なくとも2ステップを順次行うもので、さらに、磁力を利用して分離するステップでは、強磁場磁気分離装置を使用することを特徴とするものである。
【0020】
このため、例えば、鉄:30〜35%、硫黄(S):3〜10%を含む浸出残渣から、鉄品位53重量%程度、S品位1%程度の高鉄品位低硫黄品の製鉄用ヘマタイトを得ることが可能である。
このような品位の組成であれば、単独で製鉄用に供することが可能であり、他の製鉄原料と混合して使用する場合も調整の余裕が大きく使用しやすい。
【0021】
HPALプロセスにおける浸出残渣の固形分において、鉄はヘマタイト、Sは石膏の形として含まれている。
その粒径は、例えば、それぞれ、ヘマタイトが1μm、石膏は30μm程度であり、また、磁性はヘマタイトが弱い磁性をもち、他には磁性は無い。
本発明では、このような浸出残渣は湿式サイクロンに装入され、粒径の大きな石膏の大部分がアンダーフローとして除去される。オーバーフローには粒径の小さいヘマタイトが濃縮される。
【0022】
次に、得られたオーバーフローを、ヘマタイトとクロマイトを分離可能な程度に磁化可能な「強磁場磁気分離装置」を用いて分離処理する。
通常の磁力選鉱において使用する磁力は、高々2000[Gauss]程度であるが、例えば、実施例で使用している「強磁場磁気分離装置」では、粉体に対してメッシュを通過する際に磁力を掛ける方式を採用しているため、非常に強力な磁力を掛けることができる。なお、このメッシュは分離対象の粉体に最適な目開きとなるように設定されている。
【0023】
このような構成により通常の磁力選鉱では実質的に分離が不可能な、ヘマタイトとクロマイトを分離可能となる。また、少量残留している石膏も磁性が無いため、ヘマタイトから分離可能である。
その結果、最終的に、磁力選鉱装置の磁性体側の排出物(着磁物)として、鉄:53重量%程度、S:1重量%程度の製鉄用ヘマタイトが回収される。
【0024】
これまで述べたように本発明の製鉄用ヘマタイトの製造方法では、まず湿式サイクロンで分離し、次いで強磁場磁気分離装置で分離することに最大の特徴を有しているが、湿式サイクロンで分離するステップと、強磁場磁気分離装置で分離するステップとを、単純に組み合わせただけ、例えば、上記と逆の順番では製鉄用ヘマタイトを効率良く回収することは困難である。
即ち、強磁場磁気分離装置での分離ステップを先に行うと、粒径が大きく異なる石膏が存在するために、小粒径のヘマタイトとクロマイトに対して、両者を分離するのに十分な磁力を与えることが難しくなるためである。また使用する強磁場磁気分離装置の磁力を掛ける方式によっても分離が難しくなる。例えば、粉体に対してメッシュを通過する際に磁力を掛ける方式である実施例でも使用した「強磁場磁気分離装置」では、運転直後から粒径の大きな石膏が上記したメッシュを目詰まりさせ、分離操作が進行しなくなるからである。
【0025】
本発明の製鉄用ヘマタイトの製造方法の特徴は、先ず、湿式サイクロンによる分離は、湿式サイクロンにおける分級サイズを適正範囲設定して行う。
次いで、磁界強度を適正な範囲に設定した磁力を利用した分離を行うものである。
そこで、湿式サイクロンの分級サイズの設定として、先ずオーバーフローの設定は、含まれているヘマタイトおよび石膏の粒径によって適宜調整すればよいが、湿式サイクロンの分級サイズが、「オーバーフローが1μm以下となる設定以上、2μm以下となる設定以下となるように設定することが好ましい。
【0026】
特にニッケル酸化鉱石をHPAL方式の湿式精錬で処理し、最終中和工程から得られる浸出残渣の固形分に含まれるヘマタイトは1μm程度、石膏は30μm程度の粒径となることが一般的であることから上記範囲において、湿式サイクロンでの分級効果を高めることが可能となる。
【0027】
また、磁力を利用して分離する際の好ましい磁界強度の条件は、10〜15[kGauss]である。
基本的に磁界強度は強いほうが好ましいが、5[kGauss]未満だと、ヘマタイトの分離が不充分になるからである。また、20[kGauss]より大きい場合、それ以上の効果が期待できないばかりでなく、経済的にも好ましくない。
【0028】
一方、本発明の製造方法において前記の物理分離処理後に得られる浸出残渣(水分率40%程度)を一般的な脱水処理をして得られるヘマタイトケーキは、その硫黄分は1%未満と低いが、水分含有率22wt%程度と比較的高いものが得られる。
一般的に固体物質の運送においては、水分含有量が多いと船舶輸送中に液状化現象を引き起こし、船舶の転覆を引き起こす可能性があると言われ、日本海事検定協会の調査結果では、本発明ヘマタイトの運送許容水分値(Transportable Moisture Limit:TML)は17wt%以下であった。このため、船舶搬送する場合、本発明によるヘマタイトケーキを製造する場合、その水分含有率を下げる必要がある。
【0029】
同時にヘマタイトの粒子径は1μm程度と非常に細かいので、発塵の可能性が非常に高い。この発塵は、水分量が多くなると少なくなる。水分量を17wt%から下げていくと10wt%程度から細粒子が著しく多くなる傾向がみられるので、水分含有量は10〜17wt%が好ましく、ハンドリング時にフレコンを使用するなど防塵対策が可能である場合には、その水分含有量はより低い方が好ましい。
【0030】
そこで、水分含有量の調整を行うと良い。本発明ではヘマタイトケーキから水分を除去する脱水処理を行う。
その脱水方法には加熱法、フィルタープレス法、遠心分離法などがあるが、水分除去効率の高さや経済性からフィルタープレスによる方法が望ましい。
【0031】
また、これまで述べてきた製造方法で製造された製鉄用ヘマタイトを造粒して造粒物とすることが好ましい.
本発明の製造方法で得られるヘマタイトケーキは、形状の不均一性、粉立ちが発生しやすい、流動性の悪さなどの観点から製鉄メーカーにおいて他の鉄鉱石と混合する場合に不均一な混合状態を形成し易い、流動性の低さによる装入効率の低下、粉塵が発生しやすいなどの問題点が示唆されるために、造粒を行い均一な造粒物にすることで示唆される問題点を解消する。
【0032】
造粒に際しては、転動造粒、圧縮造粒、押出造粒などの広く知られた造粒法を用いると良く、均一で流動性の良い造粒物が得られる。同時にヘマタイトケーキよりも粉立ちの発生は低く抑えられる。
【0033】
さらに、本発明による製鉄用ヘマタイトには、本発明を適用することによって石膏由来の硫黄は、その全量が除去され、高温加圧酸浸出の工程で、ヘマタイト粒子の中に取り込まれた硫酸成分に由来すると考えられる硫黄が1%前後残留している。
そこで、以下に示す公知の方法を組み合わせて適用することにより、更に良好な製鉄用原料とすることが可能である。
具体的には「特表2012−517523号公報」に記載があるように、供給材料を乾燥、焼成して、供給材料に含まれている硫黄および結晶水和水を除去することにより、ヘマタイト中に残留する硫黄を除去し、次いで、例えば「特開2004−269960号公報」にあるように粉末状の鉄原料をプリケット化する、または「特開2012−211363号公報」にあるように粉末状の鉄原料をペレット化するなどの方法を組み合わせて適用することにより、更に良好な製鉄用原料とすることが期待できる。
【0034】
また、本発明により得られたヘマタイトを、所定の温度で焙焼することにより、ヘマタイト粒子中の硫黄をSOxとして除去し、その硫黄品位を低くすることが出来る。
具体的には600℃以上の熱処理を行うことにより、硫黄が0.5%以下の濃度のヘマタイトを得ることが可能となる。1400℃を超えた熱処理では0.05%以下の硫黄濃度になり、従来の鉄鉱石と同等の硫黄濃度が得られる。
1400℃よりも高い温度での熱処理で低硫黄濃度のヘマタイトを得ることが出来るが、熱処理温度を高くすると消費エネルギーの増加、炉壁材質の短寿命化を引き起こすため、経済的に1400℃以下での熱処理が好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例、比較例により本発明をより詳細に説明する。実施例、比較例に共通の製造条件及び特性測定条件を表1に纏めて示す。
【0036】
【表1】
【実施例1】
【0037】
上記、浸出残渣を分離する際に、本発明を適用し、まず、表1に示す湿式サイクロンで処理し、得られたオーバーフローを引き続き、磁力選鉱装置で分離した。
固形分の処理量は、10トンの浸出残渣を処理し、得られたオーバーフロースラリー重量は9.1トンであった。
磁力選鉱の結果、鉄分:53%、S:0.7%の品位を示す2.2トンのヘマタイトを得た。
【実施例2】
【0038】
上記、浸出残渣を分離する際に、本発明を適用し、まず、表1に示す湿式サイクロンで処理し、得られたオーバーフローを引き続き、磁力選鉱装置で分離した。
固形分の処理量は、10トンの浸出残渣を処理し、得られたオーバーフロースラリー重量は9.1トンであった。
磁力選鉱および脱水処理で得られたヘマタイトケーキ2.2トンを、高圧フィルタープレス(高圧加熱濾過装置)をすることで、鉄分:52%、S:0.8%、水分率15%、2.0トンのヘマタイトを得た。
【実施例3】
【0039】
上記、浸出残渣を分離する際に、本発明を適用し、まず、表1に示す湿式サイクロンで処理し、得られたオーバーフローを引き続き、磁力選鉱装置で分離した。
固形分の処理量は、10トンの浸出残渣を処理し、得られたオーバーフロースラリー重量は9.1トンであった。
磁力選鉱および脱水処理で得られたヘマタイトケーキ2.2トンを、高圧フィルタープレス(高圧加熱濾過装置)をすることで、鉄分:52%、S:0.8%、水分率15%、2.0トンのヘマタイトを得た。
このケーキを1400℃で加熱処理することで、水分含有率0%、硫黄濃度0.05%のヘマタイト造粒物が得られた。
【実施例4】
【0040】
実施例1の処理条件において、湿式サイクロンの設定を1μm以下、磁力選鉱装置の磁界の強度を5[kGauss]とした以外は、全て同じ方法で処理を行った。
得られたオーバーフロースラリー重量は8トンであった。
磁選処理を行ったところ、鉄分:52%、S:0.8%、固形分重量1.6トンのヘマタイトが得られた。
【実施例5】
【0041】
実施例1の処理条件において、湿式サイクロンの設定を2μm以下、磁力選鉱装置の磁界の強度を20[kGauss]とした以外は、全て同じ方法で処理を行った。
得られたオーバーフロースラリー重量は9.3トンであった。
磁選処理を行ったところ、鉄分:55%、S:0.9%、固形分重量2.3トンのヘマタイトが得られた。
【0042】
(比較例1)
本発明を適用せず、上記の磁力選鉱装置による分離をしなかったこと以外は、実施例1と同様の操業を行った。
その結果、鉄分:37%、S:5%で、7.9トンの固形分を得ることができたが、製鉄用ヘマタイトとしては単独では利用不可能であった。
【0043】
(比較例2)
本発明を適用せず、上記の湿式サイクロンによる分離をしなかったこと以外は、実施例1と同様の操業を行った。
その結果、磁力を印加するメッシュが運転直後に目詰まりしたため、操業を継続することが出来なかった。
【0044】
(比較例3)
実施例1の処理条件において、湿式サイクロンの設定を0.4μm以下、磁力選鉱装置の磁界の強度を4[kGauss]とした以外は、全て同じ方法で処理を行った。
得られたオーバーフロースラリー重量は0.5トンであった。
磁選処理を行ったところ、鉄分:49%、S:1.2%、固形分重量0.01トンと、非常に少量の低品位ヘマタイトが得られた。
【0045】
(比較例4)
実施例1の処理条件において、湿式サイクロンの設定を2.5μm以下、磁力選鉱装置の磁界の強度を22[kGauss]とした以外は、全て同じ方法で処理を行った。
得られたオーバーフロースラリー重量は9.3トンであった。
磁選処理を行ったところ、鉄分:52%、S:1.5%、固形分重量2.1トンと、S品位が高いヘマタイトが得られた。
図1
図2
図3