特許第5773031号(P5773031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5773031露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773031
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20150813BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20150813BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
   G03F7/20 502
   H01L21/68 K
   H01L21/68 F
   G01B11/00 G
【請求項の数】42
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2014-101905(P2014-101905)
(22)【出願日】2014年5月16日
(62)【分割の表示】特願2013-169801(P2013-169801)の分割
【原出願日】2009年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-195104(P2014-195104A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/139,092
(32)【優先日】2008年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/640,299
(32)【優先日】2009年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】特願2009-122337(P2009-122337)
(32)【優先日】2009年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/038752(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/077925(WO,A1)
【文献】 特開2008−300839(JP,A)
【文献】 特開2006−121077(JP,A)
【文献】 特開2005−268608(JP,A)
【文献】 特開2008−072119(JP,A)
【文献】 特開2005−086030(JP,A)
【文献】 特開2005−019864(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142351(WO,A1)
【文献】 特開2011−003873(JP,A)
【文献】 特開2011−003875(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/062296(WO,A2)
【文献】 特開2009−004771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00 −11/30 、
G03F 7/20 − 7/24 、 9/00 − 9/02 、
H01L21/027、21/30 、21/46 、
21/67 −21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記液体と接する前記投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を有し、前記ノズル部材を介して前記投影光学系の下に供給される液体によって液浸領域を形成するとともに、前記ノズル部材を介して前記液浸領域の液体を回収する局所液浸装置と、
前記投影光学系の下方に配置され、表面が、前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材と、
前記基板の載置領域が上面側に設けられるとともに、格子を有する計測面が下面側に設けられる保持部材と、前記計測面の下方に空間が形成されるように前記保持部材を前記ベース部材上で支持する本体部と、を有し、前記ベース部材上で移動可能に支持される基板ステージと、
前記基板ステージを駆動する電磁モータを有する駆動システムと、
前記投影光学系の下方で前記計測面よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置されるヘッド部を有し、前記基板ステージが前記投影光学系と対向して位置付けられることによって前記空間内に配置される前記ヘッド部を介して、前記計測面に対して下方から計測ビームを照射して、前記基板ステージの位置情報を計測する計測システムと、
前記ベース部材上に配置され、上面を有する可動部材と、
前記計測システムの計測情報に基づいて、前記電磁モータによる前記基板ステージの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、一方が前記投影光学系と対向して配置される前記基板ステージと前記可動部材が互いに接近するように、前記基板ステージと前記可動部材との他方を前記基板ステージと前記可動部材との一方に対して相対移動するとともに、前記基板ステージと前記可動部材との一方の代わりに前記基板ステージと前記可動部材との他方が前記投影光学系と対向して配置されるように、前記接近した基板ステージと可動部材を前記ノズル部材に対して相対移動する露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記投影光学系を支持するフレーム部材と、
前記フレーム部材に接続され、前記ヘッド部が設けられる計測部材と、をさらに備える露光装置。
【請求項3】
投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記液体と接する前記投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を有し、前記ノズル部材を介して前記投影光学系の下に供給される液体によって液浸領域を形成するとともに、前記ノズル部材を介して前記液浸領域の液体を回収する局所液浸装置と、
前記投影光学系を支持するフレーム部材と、
前記フレーム部材に支持される前記投影光学系の下方に配置され、表面が、前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材と、
前記基板の載置領域と、前記載置領域よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置される、格子を有する計測面と、を有し、前記ベース部材上で移動可能に支持される基板ステージと、
前記基板ステージを駆動する電磁モータを有する駆動システムと、
前記フレーム部材に接続され、一部が前記投影光学系の下方に配置される計測部材と、
前記計測部材の一部に設けられ、前記計測面よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置されるヘッド部を有し、前記基板ステージが前記投影光学系と対向して位置付けられることによって前記ベース部材の前記表面の上方で前記計測面と対向する前記ヘッド部を介して、前記計測面に対して下方から計測ビームを照射して、前記基板ステージの位置情報を計測する計測システムと、
前記ベース部材上に配置され、上面を有する可動部材と、
前記計測システムの計測情報に基づいて、前記電磁モータによる前記基板ステージの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、一方が前記投影光学系と対向して配置される前記基板ステージと前記可動部材が互いに接近するように、前記基板ステージと前記可動部材との他方を前記基板ステージと前記可動部材との一方に対して相対移動するとともに、前記基板ステージと前記可動部材との一方の代わりに前記基板ステージと前記可動部材との他方が前記投影光学系と対向して配置されるように、前記接近した基板ステージと可動部材を前記ノズル部材に対して相対移動する露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記ヘッド部は、前記投影光学系と対向して配置される前記基板ステージの前記計測面と前記ベース部材の表面との間に配置される露光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測システムは、前記ヘッド部と前記計測部材の内部とを介して、前記計測面で反射される前記計測ビームを検出する露光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測部材は、前記ヘッド部が設けられ、前記投影光学系の下方に配置される第1部と、前記フレーム部材に接続され、前記第1部を支持する第2部と、を有する露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の露光装置において、
前記第1部は、前記ヘッド部が露光領域の下方に位置付けられるように、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向のうち前記第1方向に関して延びて設けられる露光装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の露光装置において、
前記第1部は、前記第1、第2方向と直交する第3方向に関して前記計測面と前記ベース部材の表面との間に配置されるように前記第2部によって支持される露光装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記第1部は、前記第1方向に関して一側に前記ヘッド部が設けられるとともに、前記第1方向に関して他側で前記第2部によって支持される露光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の露光装置において、
前記第1部は、前記第1方向に関して前記他側のみで前記第2部によって支持される露光装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の露光装置において、
前記投影光学系の下方に移動される前記基板ステージに対して、前記第1方向に関して前記一側から前記計測面の下方に進入する露光装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測面は、反射型の2次元格子が形成され、
前記計測システムは、前記ヘッド部を介して、前記計測面で反射される前記計測ビームを検出する露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置において、
前記2次元格子の形成領域はそのサイズが前記基板ステージに保持される基板のサイズよりも大きい露光装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の露光装置において、
前記保持部材は、前記2次元格子の形成領域を覆う保護部材を有し、
前記計測システムは、前記保護部材を介して前記2次元格子に前記計測ビームを照射する露光装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測システムは、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向に関して、前記投影光学系を介して前記照明光が照射される露光領域内に、前記計測ビームを照射する検出点を有する露光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の露光装置において、
前記検出点は、前記露光領域内でその中心と実質的に一致する露光装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測システムは、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向、及び前記第1、第2方向と直交する第3方向を含む6自由度方向に関して前記基板ステージの位置情報を計測する露光装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測システムは、前記計測ビームを含む複数の計測ビームを前記計測面に照射し、
前記複数の計測ビームは、前記露光領域内で前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向の少なくとも一方に関して位置が異なる複数の検出点にそれぞれ照射される露光装置。
【請求項19】
請求項18に記載の露光装置において、
前記複数の検出点の1つは、前記露光領域内でその中心と実質的に一致する露光装置。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の露光装置において、
前記複数の検出点は、前記露光領域内でその中心に関して実質的に対称に配置される一対の検出点を含む露光装置。
【請求項21】
投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光方法であって、
表面が前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材上で移動可能に支持され、上面側に前記基板の載置領域が設けられ、下面側に格子を有する計測面が設けられる保持部材と、前記計測面の下方に空間が形成されるように前記保持部材を前記ベース部材上で支持する本体部と、を有する基板ステージを、前記投影光学系と対向して配置することと、
前記投影光学系の下方で前記計測面よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置されるヘッド部を有し、前記基板ステージが前記投影光学系と対向して位置付けられることによって前記空間内に配置される前記ヘッド部を介して、前記計測面に対して下方から計測ビームを照射する計測システムによって、前記基板ステージの位置情報を計測することと、
前記液体と接する前記投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を介して前記投影光学系の下に供給される液体によって形成される液浸領域に対して前記基板が相対移動されるように、前記計測システムの計測情報に基づいて、前記基板ステージを駆動する電磁モータを制御することと、
前記基板ステージと、前記ベース部材上に配置される可動部材とが互いに接近するように、前記可動部材を、前記投影光学系と対向して配置される前記基板ステージに対して相対移動することと、
前記基板ステージの代わりに前記可動部材が前記投影光学系と対向して配置されるように、前記接近した基板ステージと可動部材を前記ノズル部材に対して相対移動することと、を含み、
前記液浸領域は、前記ノズル部材に対する前記接近した基板ステージと可動部材の相対移動において、前記投影光学系の下に実質的に維持される露光方法。
【請求項22】
請求項21に記載の露光方法において、
前記ヘッド部は、前記投影光学系の下方で前記計測面よりも低く配置されるように、前記投影光学系を支持するフレーム部材に接続される計測部材に設けられる露光方法。
【請求項23】
投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光方法であって、
表面が前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材上で移動可能に支持され、前記基板の載置領域と、前記載置領域よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置される、格子を有する計測面と、を有する基板ステージを、前記投影光学系と対向して配置することと、
前記計測面よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置されるように前記投影光学系を支持するフレーム部材に接続される計測部材に設けられるヘッド部を有し前記基板ステージが前記投影光学系と対向して位置付けられることによって前記ベース部材の前記表面の上方で前記計測面と対向する前記ヘッド部を介して、前記計測面に対して下方から計測ビームを照射する計測システムによって、前記基板ステージの位置情報を計測することと、
前記液体と接する前記投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を介して前記投影光学系の下に供給される液体によって形成される液浸領域に対して前記基板が相対移動されるように、前記計測システムの計測情報に基づいて、前記基板ステージを駆動する電磁モータを制御することと、
前記基板ステージと、前記ベース部材上に配置される可動部材とが互いに接近するように、前記可動部材を、前記投影光学系と対向して配置される前記基板ステージに対して相対移動することと、
前記基板ステージの代わりに前記可動部材が前記投影光学系と対向して配置されるように、前記接近した基板ステージと可動部材を前記ノズル部材に対して相対移動することと、を含み、
前記液浸領域は、前記ノズル部材に対する前記接近した基板ステージと可動部材の相対移動において、前記投影光学系の下に実質的に維持される露光方法。
【請求項24】
請求項23に記載の露光方法において、
前記ヘッド部は、前記投影光学系と対向して配置される前記基板ステージの前記計測面と前記ベース部材の表面との間に配置される露光方法。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記計測面で反射される前記計測ビームは、前記ヘッド部と前記計測部材の内部とを介して検出される露光方法。
【請求項26】
請求項21〜25のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記計測部材は、前記ヘッド部が設けられ、前記投影光学系の下方に配置される第1部と、前記フレーム部材に接続され、前記第1部を支持する第2部と、を有する露光方法。
【請求項27】
請求項26に記載の露光方法において、
前記第1部は、前記ヘッド部が前記露光領域の下方に位置付けられるように、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向のうち前記第1方向に関して延びて設けられる露光方法。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の露光方法において、
前記第1部は、前記第1、第2方向と直交する第3方向に関して前記計測面と前記ベース部材の表面との間に配置されるように前記第2部によって支持される露光方法。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記第1部は、前記第1方向に関して一側に前記ヘッド部が設けられるとともに、前記第1方向に関して他側で前記第2部によって支持される露光方法。
【請求項30】
請求項29に記載の露光方法において、
前記第1部は、前記第1方向に関して前記他側のみで前記第2部によって支持される露光方法。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の露光方法において、
前記投影光学系の下方に移動される前記基板ステージに対して、前記第1方向に関して前記一側から前記計測面の下方に進入する露光方法。
【請求項32】
請求項21〜31のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記計測面は、反射型の2次元格子が形成され、
前記計測面で反射される前記計測ビームは、前記ヘッド部を介して検出される露光方法。
【請求項33】
請求項32に記載の露光方法において、
前記2次元格子の形成領域はそのサイズが前記基板ステージに保持される基板のサイズよりも大きい露光方法。
【請求項34】
請求項32又は33に記載の露光方法において、
前記計測ビームは、前記2次元格子の形成領域を覆う保護部材を介して前記2次元格子に照射される露光方法。
【請求項35】
請求項21〜34のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記計測ビームは、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向に関して、前記投影光学系を介して前記照明光が照射される露光領域内の検出点に照射される露光方法。
【請求項36】
請求項35に記載の露光方法において、
前記検出点は、前記露光領域内でその中心と実質的に一致する露光方法。
【請求項37】
請求項21〜36のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向、及び前記第1、第2方向と直交する第3方向を含む6自由度方向に関して前記基板ステージの位置情報が計測される露光方法。
【請求項38】
請求項21〜37のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記計測ビームを含む複数の計測ビームが、前記露光領域内で前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向の少なくとも一方に関して位置が異なる複数の検出点にそれぞれ照射される露光方法。
【請求項39】
請求項38に記載の露光方法において、
前記複数の検出点の1つは、前記露光領域内でその中心と実質的に一致する露光方法。
【請求項40】
請求項38又は39に記載の露光方法において、
前記複数の検出点は、前記露光領域内でその中心に関して実質的に対称に配置される一対の検出点を含む露光方法。
【請求項41】
デバイス製造方法であって、
請求項1〜20のいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項42】
デバイス製造方法であって、
請求項21〜40のいずれか一項に記載の露光方法を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法、並びデバイス製造方法に係り、特に、半導体素子等の電子デバイスを製造するリソグラフィ工程で用いられる露光装置及び露光方法、並び露光装置又は露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置で用いられる、露光対象となるウエハ又はガラスプレート等の基板は、次第に(例えばウエハの場合、10年おきに)大型化している。現在は、直径300mmの300ミリウエハが主流となっているが、今や直径450mmの450ミリウエハ時代の到来が間近に迫っている。450ミリウエハに移行すると、1枚のウエハから採れるダイ(チップ)の数が現行の300ミリウエハの2倍以上となり、コスト削減に貢献する。加えて、エネルギ、水、その他のリソースの効率的な利用により、1チップにかかるすべてのリソース使用を減少させられるものと期待されている。
【0004】
半導体素子は、次第に微細化しており、このため、露光装置には、高解像力も要請されている。解像力向上のための手段として、露光光の波長の短波長化と投影光学系の開口数の増大化(高NA化)とがある。投影光学系の実質的な開口数を最大限に大きくするため、投影光学系と液体とを介してウエハを露光する液浸露光装置が種々提案されている(例えば特許文献1、2等参照)。
【0005】
しかるに、特許文献1、2等に開示される局所液浸型の露光装置では、スループットを最大限に高くするため、投影光学系下方に形成される液浸空間を常時維持する場合には、投影光学系の直下に、複数のステージ(例えば2つのウエハステージ、又はウエハステージと計測ステージ)が交換的に配置される必要がある。
【0006】
しかしながら、ウエハのサイズが450mmにもなると、ウエハを保持するウエハステージが大型化する。このため、液浸空間を常時維持することを目的として、複数のステージを投影光学系の直下に、交換的に配置されるようにする場合には、フットプリントが相当大きくなるおそれがあった。
【0007】
従って、450ミリウエハに対応が可能で、液浸空間の常時維持を実現するためのフットプリントが大きくなるのを極力抑制することが可能な新たなシステムの出現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0259234号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光装置であって、液体と接する投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を有し、ノズル部材を介して投影光学系の下に供給される液体によって液浸領域を形成するとともに、ノズル部材を介して液浸領域の液体を回収する局所液浸装置と、投影光学系の下方に配置され、表面が、投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材と、基板の載置領域が上面側に設けられるとともに、格子を有する計測面が下面側に設けられる保持部材と、計測面の下方に空間が形成されるように保持部材をベース部材上で支持する本体部と、を有し、ベース部材上で移動可能に支持される基板ステージと、基板ステージを駆動する電磁モータを有する駆動システムと、投影光学系の下方で計測面よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置されるヘッド部を有し、基板ステージが投影光学系と対向して位置付けられることによって空間内に配置されるヘッド部を介して、計測面に対して下方から計測ビームを照射して、基板ステージの位置情報を計測する計測システムと、ベース部材上に配置され、上面を有する可動部材と、計測システムの計測情報に基づいて、電磁モータによる基板ステージの駆動を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、一方が投影光学系と対向して配置される基板ステージと可動部材が互いに接近するように、基板ステージと可動部材との他方を基板ステージと可動部材との一方に対して相対移動するとともに、基板ステージと可動部材との一方の代わりに基板ステージと可動部材との他方が投影光学系と対向して配置されるように、接近した基板ステージと可動部材をノズル部材に対して相対移動する第1の露光装置が、提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光装置であって、液体と接する投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を有し、ノズル部材を介して投影光学系の下に供給される液体によって液浸領域を形成するとともに、ノズル部材を介して液浸領域の液体を回収する局所液浸装置と、投影光学系を支持するフレーム部材と、フレーム部材に支持される投影光学系の下方に配置され、表面が、投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材と、基板の載置領域と、載置領域よりも低く且つ前記ベース部材の前記表面より高く配置される、格子を有する計測面と、を有し、ベース部材上で移動可能に支持される基板ステージと、基板ステージを駆動する電磁モータを有する駆動システムと、フレーム部材に接続され、一部が投影光学系の下方に配置される計測部材と、計測部材の一部に設けられ、計測面よりも低く且つベース部材の表面より高く配置されるヘッド部を有し、基板ステージが投影光学系と対向して位置付けられることによってベース部材の表面の上方で計測面と対向するヘッド部を介して、計測面に対して下方から計測ビームを照射して、基板ステージの位置情報を計測する計測システムと、ベース部材上に配置され、上面を有する可動部材と、計測システムの計測情報に基づいて、電磁モータによる基板ステージの駆動を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、一方が投影光学系と対向して配置される基板ステージと可動部材が互いに接近するように、基板ステージと可動部材との他方を基板ステージと可動部材との一方に対して相対移動するとともに、基板ステージと可動部材との一方の代わりに基板ステージと可動部材との他方が投影光学系と対向して配置されるように、接近した基板ステージと可動部材をノズル部材に対して相対移動する第2の露光装置が、提供される。
【0011】
第1、第2の露光装置によれば、投影光学系との間に保持される液体(液体によって形成される液浸領域)を、基板ステージと可動部材の一方から基板ステージと可動部材の他方に受け渡すことが可能となる。従って、投影光学系の直下に複数のステージを交換的に配置する必要がなく、装置のフットプリントの増大化を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光方法であって、表面が投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材上で移動可能に支持され、上面側に基板の載置領域が設けられ、下面側に格子を有する計測面が設けられる保持部材と、計測面の下方に空間が形成されるように保持部材をベース部材上で支持する本体部と、を有する基板ステージを、投影光学系と対向して配置することと、投影光学系の下方で計測面よりも低く且つベース部材の表面より高く配置されるヘッド部を有し、基板ステージが投影光学系と対向して位置付けられることによって前記空間内に配置されるヘッド部を介して、計測面に対して下方から計測ビームを照射する計測システムによって、基板ステージの位置情報を計測することと、液体と接する投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を介して投影光学系の下に供給される液体によって形成される液浸領域に対して基板が相対移動されるように、計測システムの計測情報に基づいて、基板ステージを駆動する電磁モータを制御することと、基板ステージと、ベース部材上に配置される可動部材とが互いに接近するように、可動部材を、投影光学系と対向して配置される基板ステージに対して相対移動することと、基板ステージの代わりに可動部材が投影光学系と対向して配置されるように、接近した基板ステージと可動部材をノズル部材に対して相対移動することと、を含み、液浸領域は、ノズル部材に対する接近した基板ステージと可動部材の相対移動において、投影光学系の下に実質的に維持される第1の露光方法が、提供される。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、投影光学系と液体とを介して照明光で基板を露光する露光方法であって、表面が投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置されるベース部材上で移動可能に支持され、基板の載置領域と、載置領域よりも低く且つベース部材の表面より高く配置される、格子を有する計測面と、を有基板ステージを、投影光学系と対向して配置することと、計測面よりも低く且つベース部材の表面より高く配置されるように投影光学系を支持するフレーム部材に接続される計測部材に設けられるヘッド部を有し基板ステージが投影光学系と対向して位置付けられることによってベース部材の表面の上方で計測面と対向するヘッド部を介して、計測面に対して下方から計測ビームを照射する計測システムによって、前記基板ステージの位置情報を計測することと、液体と接する投影光学系の光学部材を囲んで設けられるノズル部材を介して投影光学系の下に供給される液体によって形成される液浸領域に対して基板が相対移動されるように、計測システムの計測情報に基づいて、基板ステージを駆動する電磁モータを制御することと、基板ステージと、ベース部材上に配置される可動部材とが互いに接近するように、可動部材を、投影光学系と対向して配置される基板ステージに対して相対移動することと、基板ステージの代わりに可動部材が投影光学系と対向して配置されるように、接近した基板ステージと可動部材をノズル部材に対して相対移動することと、を含み、液浸領域は、ノズル部材に対する接近した基板ステージと可動部材の相対移動において、投影光学系の下に実質的に維持される第2の露光方法が、提供される。
【0014】
第1、第2の露光方法によれば、基板ステージ(保持部材)が投影光学系との間で液体を保持しているとき、可動部材は、基板ステージの代わりに投影光学系と対向して配置され、投影光学系の下に液浸領域が維持される。従って、投影光学系の直下に複数のステージを交換的に配置する必要がなく、装置のフットプリントの増大化を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様によれば、デバイス製造方法であって、第1、第2の露光装置のいずれかを用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0016】
本発明の第6の態様によれば、デバイス製造方法であって、第1、第2の露光方法のいずれかを用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2(A)は、図1の露光装置が備えるウエハステージを示す−Y方向から見た側面図、図2(B)は、ウエハステージを示す平面図である。
図3図1の露光装置が備える主制御装置の入出力関係を説明するためのブロック図である。
図4図1の露光装置が備えるアライメント系と投影ユニットPUとの配置を、ウエハステージとともに示す平面図である。
図5図1の露光装置が備える補助ステージについて説明するための図である。
図6】粗動ステージの分離構造について説明するための図である。
図7】微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す平面図である。
図8図8(A)は、微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す−Y方向から見た側面図、図8(B)は、微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す+X方向から見た側面図である。
図9図9(A)は、微動ステージをY軸方向に駆動する際の駆動原理を説明するための図、図9(B)は、微動ステージをZ軸方向に駆動する際の駆動原理を説明するための図、図9(C)は、微動ステージをX軸方向に駆動する際の駆動原理を説明するための図である。
図10図10(A)は、微動ステージを粗動ステージに対してZ軸回りに回転させる際の動作を説明するための図、図10(B)は、微動ステージを粗動ステージに対してY軸回りに回転させる際の動作を説明するための図、図10(C)は、微動ステージを粗動ステージに対してX軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
図11】微動ステージの中央部を+Z方向に撓ませる際の動作を説明するための図である。
図12図12(A)は、補助ステージを+Y方向から見た図、図12(B)は、補助ステージを+X方向から見た図、図12(C)は、補助ステージを+Z方向から見た図である。
図13図13(A)はスリット板に設けられたスリットを示す図、図13(B)は計測用レチクルに形成された計測用マークを示す図、図13(C)及び図13(D)は計測用マークの投影像に対するスリットの走査を説明するための図である。
図14】アライメント装置を示す斜視図である。
図15図15(A)は、計測アームの先端部を示す斜視図、図15(B)は、計測アームの先端部の上面を+Z方向から見た平面図である。
図16図16(A)は、Xヘッド77xの概略構成を示す図、図16(B)は、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム内での配置を説明するための図である。
図17図17(A)は、スキャン露光時のウエハの駆動方法を説明するための図、図17(B)は、ステッピング時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
図18図18(A)〜図18(D)は、微動ステージWFS1とWFS2とを用いて行われる並行処理について説明するための図(その1)である。
図19】微動ステージとブレードとの配置関係を説明するための図(その1)である。
図20】微動ステージとブレードとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図(その1)である。
図21】微動ステージとブレードとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図(その2)である。
図22】微動ステージとブレードとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図(その3)である。
図23図23(A)〜図23(F)は、微動ステージWFS1とWFS2とを用いて行われる並行処理について説明するための図(その2)である。
図24図24(A)及び図24(B)は、微動ステージとブレードとの配置関係を説明するための図(その2)である。
図25】微動ステージとブレードとの配置関係を説明するための図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図1図25に基づいて説明する。
【0019】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0020】
露光装置100は、図1に示されるように、ベース盤12上の−Y側端部近傍に配置された露光ステーション(露光処理部)200、ベース盤12上の+Y側端部近傍に配置された計測ステーション(計測処理部)300、2つのウエハステージWST1,WST2、リレーステージDRST、及びこれらの制御系等を、備えている。ここで、ベース盤12は、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に(XY平面に平行に)支持されている。ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、上述の3つのステージWST1,WST2,DRSTの移動の際のガイド面とされている。なお、図1において、露光ステーション200には、ウエハステージWST1が位置しており、ウエハステージWST1(より詳細には微動ステージWFS1)上にウエハWが保持されている。また、計測ステーション300には、ウエハステージWST2が位置しており、ウエハステージWST2(より詳細には微動ステージWFS2)上に別のウエハWが保持されている。
【0021】
露光ステーション200は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU及び局所液浸装置8等を備えている。
【0022】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0023】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図3参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0024】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図3参照)に送られる。なお、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されているように、エンコーダシステムによってレチクルステージRSTの位置情報を計測しても良い。
【0025】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、不図示の支持部材によって水平に支持されたメインフレーム(メトロロジーフレームとも呼ばれる)BDによってその外周部に設けられたフランジ部FLGを介して支持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上で照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTと微動ステージWFS1(又は微動ステージWFS2)との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。ここで、投影ユニットPUはメインフレームBDに保持され、本実施形態では、メインフレームBDが、それぞれ防振機構を介して設置面(床面など)に配置される複数(例えば3つ又は4つ)の支持部材によってほぼ水平に支持されている。なお、その防振機構は各支持部材とメインフレームBDとの間に配置しても良い。また、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベースなどに対してメインフレームBD(投影ユニットPU)を吊り下げ支持しても良い。
【0026】
局所液浸装置8は、本実施形態の露光装置100が、液浸方式の露光を行うことに対応して設けられている。局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図3参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように、不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。ノズルユニット32は、液体Lqの供給口及び回収口と、ウエハWが対向して配置され、かつ回収口が設けられる下面と、液体供給管31A及び液体回収管31B(いずれも図1では不図示、図4参照)とそれぞれ接続される供給流路及び回収流路とを備えている。液体供給管31Aには、その一端が液体供給装置5(図1では不図示、図3参照)に接続された不図示の供給管の他端が接続されており、液体回収管31Bには、その一端が液体回収装置6(図1では不図示、図3参照)に接続された不図示の回収管の他端が接続されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(図3参照)を制御して、液体供給管31A及びノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図3参照)を制御して、ノズルユニット32及び液体回収管31Bを介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。なお、ArFエキシマレーザ光に対する純水の屈折率nは、ほぼ1.44であり、純水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
【0027】
この他、露光ステーション200には、メインフレームBDから支持部材72Aを介してほぼ片持ち状態で支持された(一端部近傍が支持された)計測アーム71Aを含む微動ステージ位置計測系70Aが設けられている。ただし、微動ステージ位置計測系70Aについては、説明の便宜上、後述する微動ステージについての説明の後に、説明する。
【0028】
計測ステーション300には、メインフレームBDに設けられたアライメント装置99と、メインフレームBDから支持部材72Bを介して片持ち状態で支持された(一端部近傍が支持された)計測アーム71Bを含む微動ステージ位置計測系70Bと、が設けられている。微動ステージ位置計測系70Bは、前述の微動ステージ位置計測系70Aとは、左右対称であるが同様に構成されている。
【0029】
アライメント装置99は、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されているように、図4に示される5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24を含む。詳述すると、図4に示されるように、投影ユニットPUの中心(投影光学系PLの光軸AX、本実施形態では前述の露光領域IAの中心とも一致)を通りかつY軸と平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LV上で、光軸AXから+Y側に所定距離隔てた位置に、検出中心が位置する状態でプライマリアライメント系AL1が配置されている。プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。すなわち、5つのアライメント系AL1,AL21〜AL24はその検出中心がX軸方向に沿って配置されている。なお、図1では、5つのアライメント系AL1,AL21〜AL24及びこれらを保持する保持装置(スライダ)を含んでアライメント装置99として示されている。なお、アライメント装置99の具体的な構成等については更に後述する。
【0030】
ウエハステージWST1は、図1及び図2(A)等からわかるように、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリング94によりベース盤12の上に浮上支持され、粗動ステージ駆動系51A(図3参照)により、XY二次元方向に駆動される粗動ステージWCS1と、粗動ステージWCS1に非接触状態で支持され、粗動ステージWCS1に対して相対移動可能な微動ステージWFS1とを有している。微動ステージWFS1は、微動ステージ駆動系52A(図3参照)によって粗動ステージWCS1に対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(以下、6自由度方向、又は6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)と記述する)に駆動される。
【0031】
ウエハステージWST1(粗動ステージWCS1)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、ウエハステージ位置計測系16Aによって計測される。また、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に支持された微動ステージWFS1(又は後述する微動ステージWFS2)の6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70Aによって計測される。ウエハステージ位置計測系16A及び微動ステージ位置計測系70Aの計測結果(計測情報)は、粗動ステージWCS1、微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置制御のため、主制御装置20(図3参照)に供給される。
【0032】
ウエハステージWST2は、ウエハステージWST1と同様、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、粗動ステージ駆動系51B(図3参照)により、XY二次元方向に駆動される粗動ステージWCS2と、粗動ステージWCS2に非接触状態で支持され、粗動ステージWCS2に対して相対移動可能な微動ステージWFS2とを有している。微動ステージWFS2は、微動ステージ駆動系52B(図3参照)によって粗動ステージWCS2に対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)に駆動される。
【0033】
ウエハステージWST2(粗動ステージWCS2)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、ウエハステージ位置計測系16Bによって計測される。また、計測ステーション300にある粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2(又はWFS1)の6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70Bによって計測される。ウエハステージ位置計測系16B及び微動ステージ位置計測系70Bの計測結果は、粗動ステージWCS2、微動ステージWFS2(又はWFS1)の位置制御のため、主制御装置20(図3参照)に供給される。
【0034】
リレーステージDRSTは、粗動ステージWCS1,WCS2と同様、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、リレーステージ駆動系53(図3参照)により、XY二次元方向に駆動可能になっている。
【0035】
リレーステージDRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、例えば干渉計及び/又はエンコーダなどを含む不図示の位置計測系によって計測される。位置計測系の計測結果は、リレーステージDRSTの位置制御のため、主制御装置20に供給される。
【0036】
さらに、本実施形態の露光装置100は、図1では図示が省略されているが、図5に示されるように、投影ユニットPUの近傍に、ブレードBLを有する補助ステージASTを備えている。補助ステージASTは、図5からもわかるように、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、補助ステージ駆動系58(図5では不図示、図3参照)によって、XY2次元方向に駆動される。
【0037】
上記各種計測系を含み、ステージ系の構成各部の構成等については、後に詳述する。
【0038】
この他、本実施形態の露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図3参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図3参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、アライメント装置99(アライメント系AL1、AL2〜AL2)の近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70Aの一部を構成するレーザ干渉計システム75(図3参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。この場合、投影ユニットPUの近傍に多点AF系を設けなくても良い。なお、レーザ干渉計システム75ではなく、微動ステージ位置計測系70Aを構成する後述のエンコーダシステム73の計測値を、フォーカス・レベリング制御で用いても良い。
【0039】
また、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA,RA図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RAの紙面奥側に隠れている。)が配置されている。一対のレチクルアライメント系RA,RAは、投影光学系PLの直下に微動ステージWFS1(又はWFS2)上の後述する計測プレートが位置する状態で、主制御装置20により、レチクルRに形成された一対のレチクルアライメントマーク(図示省略)の投影像と対応する計測プレート上の一対の第1基準マークとを投影光学系PLを介して検出することで、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影領域の中心と計測プレート上の基準位置、すなわち一対の第1基準マークの中心との位置関係を検出するために用いられる。レチクルアライメント系RA,RAの検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図3参照)。なお、レチクルアライメント系RA,RAは設けなくても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるように、微動ステージWFSに光透過部(受光部)が設けられる検出系を搭載して、レチクルアライメントマークの投影像を検出することが好ましい。
【0040】
図3には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51A,51B、微動ステージ駆動系52A,52B、及びリレーステージ駆動系53など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0041】
ここで、ステージ系の各部の構成等について詳述する。まず、ウエハステージWST1,WST2について説明する。本実施形態では、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とは、その駆動系、位置計測系などを含み、全く同様に構成されている。従って、以下では、代表的にウエハステージWST1を取り上げて説明する。
【0042】
粗動ステージWCS1は、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視で(+Z方向から見て)X軸方向を長手方向とする長方形板状の粗動スライダ部91と、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面にYZ平面に平行な状態でそれぞれ固定され、かつY軸方向を長手方向とする長方形板状の一対の側壁部92a,92bと、側壁部92a,92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bと、を備えている。粗動ステージWCS1は、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCS1には、その内部にY軸方向に貫通した空間部が形成されている。
【0043】
粗動ステージWCS1は、図6に示されるように、粗動スライダ部91の長手方向の中央の分離線を境として、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとの2つの部分に分離可能に構成されている。従って、粗動スライダ部91は、第1部分WCS1aの一部を構成する第1スライダ部91aと、第2部分WCS1bの一部を構成する第2スライダ部91bとから構成されている。
【0044】
ベース盤12の内部には、図1に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14を含む、コイルユニットが収容されている。
【0045】
コイルユニットに対応して、粗動ステージWCS1の底面、すなわち第1スライダ部91a、第2スライダ部91bの底面には、図2(A)に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数の永久磁石18から成る磁石ユニットが設けられている。磁石ユニットは、ベース盤12のコイルユニットと共に、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されるローレンツ電磁力駆動方式の平面モータから成る粗動ステージ駆動系51Aa、51Ab(図3参照)を、それぞれ構成している。コイルユニットを構成する各コイル14に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される(図3参照)。
【0046】
第1、第2スライダ部91a、91bそれぞれの底面には、上記磁石ユニットの周囲に複数のエアベアリング94が固定されている。粗動ステージWCS1の第1部分WCS1a及び第2部分WCS1bは、それぞれエアベアリング94によって、ベース盤12の上方に所定のクリアランス、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、粗動ステージ駆動系51Aa、51Abによって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。
【0047】
通常は、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとは、一体化して不図示のロック機構を介してロックされている。すなわち、通常は、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとは、一体的に動作する。そこで、以下では、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bが一体化して成る粗動ステージWCS1を駆動する平面モータから成る駆動系を、粗動ステージ駆動系51Aと呼ぶ(図3参照)。
【0048】
なお、粗動ステージ駆動系51Aとしては、ローレンツ電磁力駆動方式の平面モータに限らず、例えば可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。この他、粗動ステージ駆動系51Aを、磁気浮上型の平面モータによって構成しても良い。この場合、粗動スライダ部91の底面にエアベアリングを設けなくても良くなる。
【0049】
一対の固定子部93a、93bそれぞれは、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFS1(又はWFS2)を駆動するための複数のコイルから成るコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。コイルユニットCUa、CUbの構成については、さらに後述する。ここで、微動ステージWFS1と微動ステージWFS2とは、全く同様に構成され、同様にして、粗動ステージWCS1に非接触で支持され、駆動されるが、以下では、微動ステージWFS1を代表的に取り上げて説明する。
【0050】
一対の固定子部93a,93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする矩形板状の形状を有する。固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
【0051】
微動ステージWFS1は、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形板状の部材から成る本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
【0052】
本体部81は、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(レーザ光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な透明な素材で形成されている。また、本体部81は、その内部におけるレーザ光に対する空気揺らぎの影響を低減するため、中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明な素材は、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良いが、エンコーダシステムの計測ビームが透過する部分のみが透明な素材で構成されていても良く、この計測ビームが透過する部分のみが中実に形成されていても良い。
【0053】
微動ステージWFS1の本体部81(より正確には、後述するカバーガラス)の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。本実施形態では、例えば環状の凸部(リム部)内に、ウエハWを支持する複数の支持部(ピン部材)が形成される、いわゆるピンチャック方式のウエハホルダが用いられ、一面(表面)がウエハ載置面となるウエハホルダの他面(裏面)側に後述するグレーティングRGなどが設けられる。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFS1と一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。前者では、グレーティングRGは微動ステージWFS1の裏面側に設けられることになる。
【0054】
さらに、本体部81の上面には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図2(A)及び図2(B)に示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ本体部81に対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83の−Y側端部には、図2(B)に示されるように、その表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態でX軸方向に細長い長方形の計測プレート86が設置されている。計測プレート86の表面には、前述した一対のレチクルアライメント系RA,RAそれぞれにより検出される一対の第1基準マークと、プライマリアライメント系AL1により検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。なお、プレート83を本体部81に取り付ける代わりに、例えばウエハホルダを微動ステージWFS1と一体に形成し、微動ステージWFS1の、ウエハホルダを囲む周囲領域(プレート83と同一の領域(計測プレート86の表面を含んでも良い)の上面に撥液化処理を施して、撥液面を形成しても良い。
【0055】
図2(A)に示されるように、本体部81の上面には、2次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RGが水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRGは、透明な素材から成る本体部81の上面に、固定(あるいは形成)されている。グレーティングRGは、X軸方向を周期方向とする反射型回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。本実施形態では、本体部81上で2次元グレーティングが固定あるいは形成される領域(以下、形成領域)は、一例として、ウエハWよりも一回り大きな円形となっている。
【0056】
グレーティングRGは、保護部材、例えばカバーガラス84によって覆われて、保護されている。本実施形態では、カバーガラス84の上面に、ウエハホルダを吸着保持する前述の保持機構(静電チャック機構など)が設けられている。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。また、保護部材(カバーガラス84)は、本体部81と同一の素材によって形成しても良いが、これに限らず、保護部材を、例えば金属、セラミックスで形成しても良い。また、グレーティングRGを保護するのに十分な厚みを要するため板状の保護部材が望ましいが、素材に応じて薄膜状の保護部材を用いても良い。
【0057】
なお、グレーティングRGの形成領域のうち、ウエハホルダの周囲にはみ出す領域に対応するカバーガラス84の一面には、グレーティングRGに照射されるエンコーダシステムの計測ビームがカバーガラス84を透過しないように、すなわち、ウエハホルダ裏面の領域の内外で計測ビームの強度が大きく変動しないように、例えばその形成領域を覆う反射部材(例えば薄膜など)を設けることが望ましい。
【0058】
この他、一面にグレーティングRGが固定又は形成される透明板の他面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置し、かつその透明板の一面側に保護部材(カバーガラス84)を設ける、あるいは、保護部材(カバーガラス84)を設けずに、グレーティングRGが固定又は形成される透明板の一面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置しても良い。特に前者では、透明板の代わりにセラミックスなどの不透明な部材にグレーティングRGを固定又は形成しても良いし、あるいは、ウエハホルダの裏面にグレーティングRGを固定又は形成しても良い。あるいは、従来の微動ステージにウエハホルダとグレーティングRGを保持するだけでも良い。また、ウエハホルダを、中実のガラス部材によって形成し、該ガラス部材の上面(ウエハ載置面)にグレーティングRGを配置しても良い。
【0059】
本体部81は、図2(A)からもわかるように、長手方向の一端部と他端部との下端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
【0060】
本体部81の+X側、−X側の張り出し部それぞれの上面には、断面凸形状のスペーサ85a、85bが、それぞれの凸部89a、89bを、外側に向けてY軸方向に延設されている。
【0061】
可動子部82aは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a、82aを含む。これら2枚の板状部材82a、82aは、本体部81の長手方向の+X側の端部に対し、前述したスペーサ85aの凸部89aを介して、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。この場合、板状部材82aは、スペーサ85aと本体部81の+X側の張り出し部とによって、その−X側端部が挟持されている。2枚の板状部材82a、82aの間には、粗動ステージWCS1の固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a、82aの内部には、後述する磁石ユニットMUa、MUaが、収容されている。
【0062】
可動子部82bは、スペーサ85bにZ軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b、82bを含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b、82bの間には、粗動ステージWCSの固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b、82bの内部には、磁石ユニットMUa、MUaと同様に構成された磁石ユニットMUb、MUbが、収容されている。
【0063】
ここで、前述したように、粗動ステージWCS1は、Y軸方向に両側面が開口しているので、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1に装着する際には、板状部材82a、82a、及び82b、82b間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージWFS1のZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFS1をY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
【0064】
次に、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1に対して相対的に駆動するための微動ステージ駆動系52Aの構成について説明する。
【0065】
微動ステージ駆動系52Aは、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa、MUaと、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb、MUbと、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
【0066】
これをさらに詳述する。図7及び図8(A)並びに図8(B)からわかるように、固定子部93aの内部における−X側の端部には、複数(ここでは、12個)の平面視長方形状のYZコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)55、57が、Y軸方向に等間隔でそれぞれ配置された2列のコイル列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。YZコイル55は、上下方向(Z軸方向)に重ねて配置された平面視長方形状の上部巻線55aと、下部巻線55bと、を有する。また、固定子部93aの内部であって、上述した2列のコイル列の間には、Y軸方向を長手方向とする細長い平面視長方形状の一つのXコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)56が、配置されている。この場合、2列のコイル列と、Xコイル56とは、X軸方向に関して等間隔で配置されている。2列のコイル列と、Xコイル56とを含んで、コイルユニットCUaが構成されている。
【0067】
なお、以下では、図7図9(C)を用いて、一対の固定子部93a、93bのうち、一方の固定子部93a、及びこの固定子部93aに支持される可動子部82aについて説明するが、他方(−X側)の固定子部93b及び可動子部82bは、これらと同様に構成され、同様に機能する。従って、コイルユニットCUb、磁石ユニットMUb,MUbは、コイルユニットCUa、磁石ユニットMUa,MUaと同様に構成されている。
【0068】
微動ステージWFS1の可動子部82aの一部を構成する+Z側の板状部材82aの内部には、図7及び図8(A)並びに図8(B)を参照するとわかるように、X軸方向を長手方向とする平面視長方形の複数(ここでは10個)の永久磁石65a、67aが、Y軸方向に等間隔で配置された2列の磁石列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。2列の磁石列それぞれは、コイル55、57に対向して配置されている。
【0069】
複数の永久磁石65aは、図8(B)に示されるように、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極である永久磁石と、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極である永久磁石とが、Y軸方向に交互に配列されている。複数の永久磁石67aから成る磁石列は、複数の永久磁石65aから成る磁石列と同様に構成されている。
【0070】
また、板状部材82aの内部であって、上述の2列の磁石列の間には、X軸方向に離間して配置されたY軸方向を長手方向とする一対(2つ)の永久磁石66a、66aが、コイル56に対向して配置されている。図8(A)に示されるように、永久磁石66aは、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極となっており、永久磁石66aは、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極となっている。
【0071】
上述した複数の永久磁石65a、67a及び66a、66aによって、磁石ユニットMUaが構成されている。
【0072】
−Z側の板状部材82aの内部にも、図8(A)に示されるように、上述した+Z側の板状部材82aと同様の配置で、永久磁石65b、66b、66b、67bが配置されている。これらの永久磁石65b、66b、66b、67bによって、磁石ユニットMUaが構成されている。なお、−Z側の板状部材82a内の永久磁石65b、66b、66b、67bは、図7では、磁石65a、66a、66a、67aに対して、紙面奥側に重なって配置されている。
【0073】
ここで、微動ステージ駆動系52Aでは、図8(B)に示されるように、Y軸方向に隣接して配置された複数の永久磁石(図8(B)において、Y軸方向に沿って順に永久磁石65a〜65aとする)は、隣接する2つの永久磁石65a及び65aそれぞれが、YZコイル55の巻線部に対向したとき、これらに隣接する永久磁石65aが、上述のYZコイル55に隣接するYZコイル55の巻線部に対向しないように(コイル中央の中空部、又はコイルが巻き付けられたコア、例えば鉄芯に対向するように)、複数の永久磁石65及び複数のYZコイル55のY軸方向に関する位置関係(それぞれの間隔)が設定されている。なお、図8(B)に示されるように、永久磁石65a及び65aそれぞれは、YZコイル55に隣接するYZコイル55の巻線部に対向する。永久磁石65b、67a、67bのY軸方向に関する間隔も、同様になっている(図8(B)参照)。
【0074】
従って、微動ステージ駆動系52Aでは、一例として図8(B)に示される状態で、図9(A)に示されるように、コイル55,55の上部巻線及び下部巻線それぞれに、+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル55,55には−Y方向の力(ローレンツ力)が作用し、その反作用として、永久磁石65a、65bそれぞれには、+Y方向の力が作用する。これらの力の作用により、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して+Y方向に移動する。上記の場合とは逆に、コイル55,55に、それぞれ+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して−Y方向に移動する。
【0075】
コイル57に電流を供給することにより、永久磁石67(67a,67b)との間で電磁相互作用が行われ、微動ステージWFS1をY軸方向に駆動することができる。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFS1のY軸方向の位置を制御する。
【0076】
また、微動ステージ駆動系52Aでは、一例として図8(B)に示される状態で、図9(B)に示されるように、コイル55の上部巻線に+Z方向から見て左回りの電流、下部巻線に+Z方向から見て右回りの電流がそれぞれ供給されると、コイル55と永久磁石65aとの間に吸引力、コイル55と永久磁石65bとの間に反発力(斥力)がそれぞれ発生し、微動ステージWFS1は、これらの吸引力及び反発力によって粗動ステージWCS1に対して下方(−Z方向)、すなわち降下する方向に移動する。上記の場合とは逆向きの電流が、コイル55の上部巻線及び下部巻線のそれぞれに供給されると、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して上方(+Z方向)、すなわち上昇する方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、浮上状態の微動ステージWFS1のZ軸方向の位置を制御する。
【0077】
また、図8(A)に示される状態で、図9(C)に示されるように、コイル56に+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル56に+X方向の力が作用し、その反作用として永久磁石66a、66a及び66b,66bそれぞれには、−X方向の力が作用し、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して−X方向に移動する。また、上記の場合とは逆に、コイル56に+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、永久磁石66a、66a及び66b,66bには、+X方向の力が作用し、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して+X方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFS1のX軸方向の位置を制御する。
【0078】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置20は、Y軸方向に配列された複数のYZコイル55、57に対して、一つおきに電流を供給することによって、微動ステージWFS1をY軸方向に駆動する。また、これと併せて、主制御装置20は、YZコイル55、57のうち、微動ステージWFS1のY軸方向への駆動に使用していないコイルに電流を供給することによって、Y軸方向への駆動力とは別に、Z軸方向への駆動力を発生させ、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1から浮上させる。そして、主制御装置20は、微動ステージWFS1のY軸方向の位置に応じて、電流供給対象のコイルを順次切り替えることによって、微動ステージWFS1の粗動ステージWCS1に対する浮上状態、すなわち非接触状態を維持しつつ、微動ステージWFS1をY軸方向に駆動する。また、主制御装置20は、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1から浮上させた状態で、Y軸方向と併せて独立にX軸方向にも駆動可能である。
【0079】
また、主制御装置20は、例えば図10(A)に示されるように、微動ステージWFS1の+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる大きさのY軸方向の駆動力(推力)を作用させることによって(図10(A)の黒塗り矢印参照)、微動ステージWFS1をZ軸回りに回転(θz回転)させることができる(図10(A)の白抜き矢印参照)。なお、図10(A)とは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる駆動力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFS1をZ軸に対して左回りに回転させることができる。
【0080】
また、主制御装置20は、図10(B)に示されるように、微動ステージWFS1の+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる浮上力(図10(B)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをY軸回りに回転(θy駆動)させること(図10(B)の白抜き矢印参照)ができる。なお、図10(B)とは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる浮上力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFS1をY軸に対して左回りに回転させることができる。
【0081】
さらに、主制御装置20は、例えば図10(C)に示されるように、微動ステージWFS1の可動子部82a、82bそれぞれにおいて、Y軸方向の+側と−側とに、互いに異なる浮上力(図10(C)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFS1をX軸回りに回転(θx駆動)させること(図10(C)の白抜き矢印参照)ができる。なお、図10(C)とは反対に、可動子部82a(及び82b)の−Y側の部分に作用させる浮上力を+Y側の部分に作用させる浮上力よりも小さくすることで、微動ステージWFS1をX軸に対して左回りに回転させることができる。
【0082】
以上の説明からわかるように、本実施形態では、微動ステージ駆動系52Aにより、微動ステージWFS1を、粗動ステージWCS1に対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCS1に対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
【0083】
また、本実施形態では、主制御装置20は、微動ステージWFS1に浮上力を作用させる際、固定子部93a内に配置された2列のコイル55、57(図7参照)に互いに反対方向の電流を供給することによって、例えば図11に示されるように、可動子部82aに対して、浮上力(図11の黒塗り矢印参照)と同時にY軸回りの回転力(図11の白抜き矢印参照)を作用させることができる。また、主制御装置20は、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、微動ステージWFS1の中央部を+Z方向又は−Z方向に撓ませることができる(図11のハッチング付き矢印参照)。従って、図11に示されるように、微動ステージWFS1の中央部を+Z方向に撓ませることによって、ウエハW及び本体部81の自重に起因する微動ステージWFS1(本体部81)のX軸方向の中間部分の撓みを打ち消して、ウエハW表面のXY平面(水平面)に対する平行度を確保できる。これにより、ウエハWが大径化して微動ステージWFS1が大型化した時などに、特に効果を発揮する。
【0084】
また、ウエハWが自重等により変形すると、照明光ILの照射領域(露光領域IA)内において、微動ステージWFS1上に載置されたウエハWの表面が、投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入らなくなるおそれもある。そこで、主制御装置20が、上述した微動ステージWFS1のX軸方向に関する中央部を+Z方向に撓ませる場合と同様に、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、ウエハWがほぼ平坦になるように変形され、露光領域IA内でウエハWの表面が投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入るようにすることもできる。なお、図11には、微動ステージWFS1を+Z方向に(凸形状に)撓ませる例が示されているが、コイルに対する電流の向きを制御することによって、これとは反対の方向に(凹形状に)微動ステージWFS1の撓ませることも可能である。
【0085】
なお、自重撓み補正及び/又はフォーカス・レベリング制御のためだけでなく、ウエハのショット領域内の所定点が露光領域IAを横切る間に、焦点深度の範囲内でその所定点のZ軸方向の位置を変化させて実質的に焦点深度を増大させる超解像技術を採用する場合にも、微動ステージWFS1(及びこれに保持されたウエハW)をY軸に垂直な面(XZ面)内で凹形状又は凸形状に変形させる手法を適用することができる。
【0086】
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFS1のXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステム73(図3参照)を用いて計測される。微動ステージWFS1の位置情報は、主制御装置20に送られ、主制御装置20は、この位置情報に基づいて微動ステージWFS1の位置を制御する。
【0087】
これに対し、ウエハステージWST1(微動ステージWFS1)が微動ステージ位置計測系70Aの計測領域外に位置する際には、ウエハステージWST1(及び微動ステージWFS1)の位置情報は、主制御装置20により、ウエハステージ位置計測系16A(図1及び図3参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16Aは、図1に示されるように、粗動ステージWCS1側面に鏡面加工により形成された反射面に測長ビームを照射してウエハステージWST1のXY平面内の位置情報を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、図1では図示が省略されているが、実際には、粗動ステージWCS1には、Y軸に垂直なY反射面とX軸に垂直なX反射面とが形成され、これに対応して、レーザ干渉計もX反射面、Y反射面にそれぞれ測長ビームを照射するX干渉計、Y干渉計とが設けられている。なお、ウエハステージ位置計測系16Aでは、例えばY干渉計は複数の測長軸を有し、各測長軸の出力に基づいて、ウエハステージWST1のθz方向の位置情報(回転情報)をも計測できる。なお、ウエハステージWST1のXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16Aに代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。この場合、例えばベース盤12の上面に2次元スケールを配置し、粗動ステージWCS1の底面にエンコーダヘッドを設けることができる。
【0088】
前述の如く、微動ステージWFS2は、上述した微動ステージWFS1と全く同様に構成されており、微動ステージWFS1に代えて、粗動ステージWCS1に非接触で支持させることができる。この場合、粗動ステージWCS1と、粗動ステージWCS1によって支持された微動ステージWFS2とによって、ウエハステージWST1が構成され、微動ステージWFS2が備える一対の可動子部(各一対の磁石ユニットMUa、MUa及びMUb、MUb)と粗動ステージWCS1の一対の固定子部93a、93b(コイルユニットCUa、CUb)とによって、微動ステージ駆動系52Aが構成される。そして、この微動ステージ駆動系52Aによって、微動ステージWFS2が、粗動ステージWCS1に対して、非接触で6自由度方向に駆動される。
【0089】
また、微動ステージWFS2、WFS1は、それぞれ粗動ステージWCS2に非接触で支持させることができ、粗動ステージWCS2と、粗動ステージWCS2によって支持された微動ステージWFS2又はWFS1とによってウエハステージWST2が構成される。この場合、微動ステージWFS2又はWFS1が備える一対の可動子部(各一対の磁石ユニットMUa、MUa及びMUb、MUb)と粗動ステージWCS2の一対の固定子部93a、93b(コイルユニットCUa、CUb)とによって、微動ステージ駆動系52B(図3参照)が構成される。そして、この微動ステージ駆動系52Bによって、微動ステージWFS2又はWFS1が、粗動ステージWCS2に対して、非接触で6自由度方向に駆動される。
【0090】
図1に戻り、リレーステージDRSTは、粗動ステージWCS1,WCS2と同様(ただし、第1部分と第2部分とに分離できるようには構成されていない)に構成されたステージ本体44と、ステージ本体44の内部に設けられた搬送装置46(図3参照)とを備えている。従って、ステージ本体44は、粗動ステージWCS1,WCS2と同様に、微動ステージWFS1又はWFS2を非接触で支持(保持)できるようになっており、リレーステージDRSTに支持された微動ステージは、微動ステージ駆動系52C(図3参照)によってリレーステージDRSTに対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)に駆動可能である。ただし、微動ステージは、リレーステージDRSTに対して少なくともY軸方向にスライド可能であれば良い。
【0091】
搬送装置46は、リレーステージDRSTのステージ本体44のX軸方向の両側壁に沿ってY軸方向に所定ストロークで往復移動可能でかつZ軸方向に関しても所定ストロークで上下動可能な搬送部材本体と、微動ステージWFS1又はWFS2を保持して搬送部材本体に対してY軸方向に相対移動可能な移動部材とを含む搬送部材48と、搬送部材48を構成する搬送部材本体及び移動部材を個別に駆動可能な搬送部材駆動系54(図3参照)とを備えている。
【0092】
次に、補助ステージASTについて説明する。図12(A)、図12(B)、及び図12(C)には、それぞれ、投影光学系PLの直下に位置している補助ステージASTの側面図(+Y方向から見た図)、正面図(+X方向から見た図)、及び平面図(+Z方向から見た図)が示されている。補助ステージASTは、これら図12(A)〜図12(C)からわかるように、平面視で(+Z方向から見て)X軸方向を長手方向とする矩形状のスライダ部60aと、スライダ部60aの上面の−X側半部に固定された四角柱状の支持部60bと、支持部60bにその−X側半部が支持された矩形状のテーブル60cと、テーブル60cの上面に固定されたプレート状のブレードBLと、を備えている。
【0093】
スライダ部60aの底面には、不図示ではあるが、ベース盤12のコイルユニットと共に、ローレンツ電磁力駆動方式の平面モータから成る補助ステージ駆動系58(図3参照)を構成する、複数の永久磁石から成る磁石ユニットが設けられている。スライダ部60aの底面には、上記磁石ユニットの周囲に複数のエアベアリング(不図示)が固定されている。補助ステージASTは、エアベアリングによって、ベース盤12の上方に所定のクリアランス、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、補助ステージ駆動系58によって、X軸方向及びY軸方向に駆動される。
【0094】
通常は、補助ステージASTは、図19に示されるように、計測アーム71Aの−X側に所定距離以上離れた待機位置に待機している。補助ステージASTの一部をブレードBLが構成しているので、補助ステージASTをXY平面内で駆動すれば、ブレードBLがXY平面内で駆動される。すなわち、補助ステージ駆動系58は、ブレードBLをX軸方向及びY軸方向に駆動するブレード駆動系を兼ねている。
【0095】
ブレードBLは、図12(B)及び図12(C)に示されるように、その+Y側端部の一部が他の部分より突出した略矩形の板部材から成り、その突出部がテーブル60c上面から突出する状態で、テーブル60cの上面に固定されている。
【0096】
ブレードBLの上面は、液体Lqに対して撥液性である。ブレードBLは、例えばステンレス等の金属製の基材と、その基材の表面に形成された撥液性材料の膜とを含む。撥液性材料は、例えばPFA(Tetra fluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)、テフロン(登録商標)等を含む。なお、膜を形成する材料が、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂でも良い。また、ブレードBL全体が、PFA、PTFE、テフロン(登録商標)、アクリル系樹脂、及びシリコン系樹脂の少なくとも一つで形成されても良い。本実施形態において、液体Lqに対するブレードBLの上面の接触角は、例えば90度以上である。
【0097】
補助ステージASTは、計測アーム71Aに対して−X側から所定の隙間を介して係合可能で、その係合状態では、ブレードBLが計測アーム71Aの真上に位置する。また、ブレードBLは、粗動ステージWCS1に支持されている微動ステージWFS1(又はWFS2)に−Y側から接触又は数300μm程度のクリアランスを介して近接可能であり、その接触又は近接状態で微動ステージWFS1(又はWFS2)の上面とともに、見かけ上一体のフルフラットな面を形成する(例えば図20参照)。ブレードBL(補助ステージAST)は、主制御装置20により、補助ステージ駆動系58を介して駆動され、微動ステージWFS1(又はWFS2)との間で液浸空間(液体Lq)の受け渡しを行う。なお、ブレードBLと微動ステージWFS1(又はWFS2)との間の液浸空間(液体Lq)の受け渡しについてはさらに後述する。
【0098】
テーブル60cの内部には、投影光学系の光学特性を計測するための各種計測器、例えば、照度むらセンサ(不図示)、波面収差計測器(不図示)、空間像計測器61等が設けられている。照度むらセンサとしては、例えば特開昭57−117238号公報(対応する米国特許第4,465,368号)などに開示されている構成のセンサを採用することができる。波面収差計測器としては、例えば国際公開第03/065428号などに開示されているシャック−ハルトマン(Shack-Hartman)方式の計測器を採用することができる。また、空間像計測器61としては、例えば特開2002−014005号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0041377号明細書)などに開示されている構成の計測器を採用することができる。
【0099】
図12(A)には、代表的に、空間像計測器61の構成が示されている。ここで、例えば図5に示されるように、テーブル60cの厚さは、ブレードBLを含んで、微動ステージWFS1、WFS2と、同程度の厚さである。空間像計測器61は、補助ステージAST(テーブル60c)の上面及び内部に配置された光学部材、例えばスリット板61a、ミラー61b,61c、送光レンズ61d、及びその他を含む光学系と、メインフレームBDに固定された受光系62、すなわち受光レンズ62a、光センサ62bと、を有している。
【0100】
スリット板61aは、その上面がブレードBLの上面と同一となるように、ブレードBLを構成する板部材に形成された円形の開口を閉塞する状態で配置され、その板部材とともに見かけ上一体でフルフラットなブレードBLを構成している。ここで、スリット板61aの上面、すなわちブレードBLの上面の高さは、粗動ステージWCS1(又はWCS2)に支持された微動ステージWFS1(又はWFS2)の上面、及び該微動ステージWFS1(又はWFS2)に載置されるウエハWの表面の高さにほぼ等しい。スリット板61aは、照明光ILに対して高い透過性を有する合成石英又はホタル石等によって形成された円形の受光ガラスと、その上面の中央の円形領域外に形成されたアルミニウム等の金属薄膜から成る反射膜(遮光膜を兼ねる)と、円形領域内に形成されたクロムの薄膜から成る遮光膜と、を有する。遮光膜(スリット板61a)には、図13(A)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)の開口パターン(Xスリット)61Xと、X軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)の開口パターン(Yスリット)61Yと、がパターンニングにより形成されている。
【0101】
スリット板61aの下方には、ミラー61bが、光軸AXに対して45度の角度で斜設されている。このため、スリット板61aを介して鉛直下向き(−Z方向)に入射する照明光IL(像光束)は、ミラー61bにより、その光路が−X方向に折り曲げられる。折り曲げられた照明光ILの光路上には、更に、その光路を鉛直上向き(+Z方向)に折り曲げるミラー61cが配置されている。ミラー61cによってその光路が折り曲げられた照明光ILをテーブル60cの外部に送り出す送光レンズ61dが、テーブル60cの上面に固定されている。その他、スリット板61aから送光レンズ61dまでの光路上に、適宜、レンズが配置されている。
【0102】
送光レンズ61dの上方(+Z方向)のメインフレームBDの下面には、受光系62が、その筐体の一部がメインフレームBDの外部に露出した状態で固定されている。筐体内には、受光系62を構成する受光レンズ62aと光センサ62bとが配置されている。ここで、受光レンズ62aは筐体の下方(−Z側)の開口に固定され、光センサ62bは受光レンズ62aの上方(+Z側)に下向き(−Z方向)に固定されている。光センサ62bとしては、微弱な光を精度良く検出する光電変換素子(受光素子)、例えばフォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT、光電子増倍管)等が用いられている。
【0103】
受光系62(光センサ62b)の出力信号は、例えば増幅器、A/Dコンバータ(通常16ビットの分解能のものが用いられる)等を含む信号処理装置(不図示)に送られ、信号処理装置により所定の信号処理が施されて主制御装置20に送られる。
【0104】
空間像計測器61を用いて投影光学系PLの光学特性を計測する際には、主制御装置20は、図12(A)〜図12(C)に示されるように、スリット板61aを例えば投影光学系PLの光軸AX上に位置させるべく、補助ステージASTを投影光学系PLの直下に移動させる。同時に、主制御装置20は、レチクルステージRST上に設けられたレチクル基準板RFM(図13(B)参照)を、例えば光軸AX上に位置させるべく、レチクルステージRSTを駆動する。ここで、レチクル基準板RFMには、図13(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.8μm、1μm又は1.6μm)の開口パターンがX軸方向に複数配列されたX計測用マークPMXと、X軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.8μm、1μm又は1.6μm)の開口パターンがY軸方向に複数配列されたY計測用マークPMYと、が形成されている。
【0105】
主制御装置20は、照明光ILを、レチクル基準板RFMのX計測用マークPMX(又はY計測用マークPMY)と投影光学系PLと液浸空間(液体Lq)とを介して、スリット板61aに投射しつつ、補助ステージ駆動系58を介して、図13(C)(又は図13(D))中に白抜き矢印を用いて示されるように、補助ステージAST(スリット板61a)をX軸方向(又はY軸方向)に駆動して、X計測用マークPMX(又はY計測用マークPMY)の投影像に対してスリット板61aのXスリット61X(又はYスリット61Y)をX軸方向(又はY軸方向)に走査する。
【0106】
図13(C)には、上記の照明光ILの投射により、スリット板61aを含むブレードBLを構成する板部材上に投影されたX計測用マークPMXの像(図中、破線を用いて示されている)に対してXスリット61Xを走査している状態が示されている。また、図13(D)には、スリット板61aを含むブレードBLを構成する板部材上に投影されたY計測用マークPMYの像(図中、破線を用いて示されている)に対してYスリット61Yを走査している状態が示されている。
【0107】
上記のスリット板61aの走査中に、照明光ILは、Xスリット61X(又はYスリット61Y)を透過し、ミラー61b、61c、送光レンズ61dを順次介してテーブル60cの外部に導出される。導出された照明光ILは受光系62によって受光され、照明光ILの光量信号が信号処理装置(不図示)を経て主制御装置20に送られる。
【0108】
走査中、主制御装置20は、受光系62からの光量信号を補助ステージASTの位置情報とともに取り込む。これにより、主制御装置20は、X計測用マークPMX(又はY計測用マークPMY)の投影像(空間像)のプロファイル(空間像プロファイル)を得る。
【0109】
次に、図1に示されるアライメント装置99の具体的な構成等について、図14に基づいて説明する。
【0110】
図14には、メインフレームBDが一部破断された状態で、アライメント装置99が斜視図にて示されている。アライメント装置99は、上述したように、プライマリアライメント系AL1と、4本のセカンダリアライメント系AL21、AL22、AL23、AL24と、を備えている。プライマリアライメント系AL1に対して+X側に配置される一対のセカンダリアライメント系AL21、AL22と、−X側に配置される一対のセカンダリアライメント系AL23、AL24とは、プライマリアライメント系AL1を中心として左右対称な構成となっている。また、セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、例えば国際公開第2008/056735号(対応米国特許出願公開第2009/0233234号明細書)などに開示されているように、後述のスライダ及び駆動機構などを含む駆動システムによって独立に移動可能となっている。
【0111】
プライマリアライメント系AL1は、支持部材202を介して、メインフレームBDの下面にて吊り下げ支持されている。プライマリアライメント系AL1としては、例えば、ウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(各アライメント系内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。このプライマリアライメント系AL1からの撮像信号は、主制御装置20に供給されるようになっている(図3参照)。
【0112】
セカンダリアライメント系AL21、AL22の上面にはそれぞれスライダSL1、SL2が固定されている。スライダSL1、SL2の+Z側には、メインフレームBDの下面に固定されたFIA定盤302が設けられている。また、セカンダリアライメント系AL23、AL24の上面にはそれぞれスライダSL3、SL4が固定されている。スライダSL3、SL4の+Z側には、メインフレームBDの下面に固定されたFIA定盤102が設けられている。
【0113】
セカンダリアライメント系AL24は、プライマリアライメント系AL1と同様、FIA系であって、内部にレンズ等の光学部材が設けられた略L字状の鏡筒109を含む。鏡筒109のY軸方向に延びる部分における上面(+Z側の面)には、前述したスライダSL4が固定されており、このスライダSL4は前述のFIA定盤102に対向して設けられている。
【0114】
FIA定盤102は、磁性体かつ低熱膨張率の素材(例えば、インバ等)から成り、その一部(+Y側の端部近傍)に複数の電機子コイルを含む電機子ユニットが設けられている。電機子ユニットは、一例として、2つのY駆動用コイルと、一対のX駆動用コイル群とを含む。また、FIA定盤102の内部には、液体流路(不図示)が形成されており、該流路内を流れる冷却用液体により、FIA定盤102が所定温度に温調(冷却)されている。
【0115】
スライダSL4は、スライダ本体、該スライダ本体に設けられた複数の気体静圧軸受、複数の永久磁石、及び磁石ユニットを含む。気体静圧軸受としては、FIA定盤102内の気体流路を介して気体が供給される、いわゆるグランド給気型の気体静圧軸受が用いられている。複数の永久磁石は、前述した磁性体から成るFIA定盤102と対向し、複数の永久磁石とFIA定盤102との間には、磁気的吸引力が常時作用している。従って、複数の気体静圧軸受に気体を供給しない間は、磁気的吸引力により、スライダSL4が、FIA定盤102の下面に最接近(接触)する。複数の気体静圧軸受に気体を供給すると、気体の静圧により、FIA定盤102とスライダSL4との間に斥力が発生する。磁気的吸引力と気体の静圧とのバランスにより、スライダSL4はその上面とFIA定盤102の下面との間に所定のクリアランスが形成された状態で維持(保持)される。以下においては、前者を「着地状態」と呼び、後者を「浮上状態」と呼ぶものとする。
【0116】
磁石ユニットは、前述の電機子ユニットに対応して設けられており、本実施形態では、磁石ユニットと電機子ユニット(2つのY駆動用コイルと、一対のX駆動用コイル群)との間の電磁相互作用によって、スライダSL4にX軸方向の駆動力及びY軸方向の駆動力、並びにZ軸回りの回転(θz)方向の駆動力を作用させることができる。なお、以下においては、上記磁石ユニットと電機子ユニットとにより構成される駆動機構(アクチュエータ)を、「アライメント系モータ」と呼ぶものとする。
【0117】
セカンダリアライメント系AL24の+X側に配置されたセカンダリアライメント系AL23は、上述したセカンダリアライメント系AL24と同様に構成され、スライダSL3もスライダSL4とほぼ同様に構成されている。また、スライダSL3とFIA定盤102との間には、前述と同様の駆動機構(アライメント系モータ)が設けられている。
【0118】
主制御装置20は、セカンダリアライメント系AL24、及びAL23を駆動する(位置調整する)際、前述した気体静圧軸受に対して気体を供給することにより、スライダSL4、SL3とFIA定盤102との間に所定のクリアランスを形成することでスライダSL4、SL3を上記浮上状態とする。そして、主制御装置20は、該浮上状態を維持した状態で、不図示の計測装置の計測値に基づいて、各アライメント系モータを構成する電機子ユニットに供給する電流を制御することにより、スライダSL4(セカンダリアライメント系AL24)、スライダSL3(セカンダリアライメント系AL2)をX軸、Y軸及びθz方向に微小駆動する。
【0119】
図14に戻り、セカンダリアライメント系AL21,AL22は、上述したセカンダリアライメント系AL23,AL24と同様の構成であり、スライダSL2は、上述したスライダSL3と左右対称の構成を有し、スライダSL1は、上述したスライダSL4と左右対称の構成を有している。また、FIA定盤302の構成は、上述したFIA定盤102と左右対称の構成を有している。
【0120】
次に、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に移動可能に保持される(ウエハステージWST1を構成する)微動ステージWFS1又はWFS2の位置情報の計測に用いられる微動ステージ位置計測系70A(図3参照)の構成について説明する。ここでは、微動ステージ位置計測系70Aが微動ステージWFS1の位置情報を計測する場合について説明する。
【0121】
微動ステージ位置計測系70Aは、図1に示されるように、ウエハステージWST1が投影光学系PLの下方に配置された状態で、粗動ステージWCS1の内部に設けられた空間部内に挿入されるアーム部材(計測アーム71A)を備えている。計測アーム71Aは、露光装置100のメインフレームBDに支持部材72Aを介して片持ち状態で支持(一端部近傍を支持)されている。なお、アーム部材は、ウエハステージの移動の妨げにならない構成を採用する場合には、片持ち支持に限らず、その長手方向の両端部で支持されても良い。また、アーム部材は、前述したグレーティングRG(XY平面と実質的に平行なその配置面)よりも下方(−Z側)に配置されていれば良く、例えばベース盤12の上面よりも下方に配置しても良い。さらに、アーム部材はメインフレームBDに支持されるものとしたが、例えば防振機構を介して設置面(床面など)に設けても良い。この場合、メインフレームBDとアーム部材との相対的な位置関係を計測する計測装置を設けることが好ましい。アーム部材は、メトロロジーアームあるいは計測用部材などとも呼ぶことができる。
【0122】
計測アーム71Aは、Y軸方向を長手方向とする、幅方向(X軸方向)よりも高さ方向(Z軸方向)の寸法が大きい縦長の長方形断面を有する四角柱状(すなわち直方体状)の部材であり、光を透過する同一の素材、例えばガラス部材が複数貼り合わされて形成されている。計測アーム71Aは、後述するエンコーダヘッド(光学系)が収容される部分を除き、中実に形成されている。計測アーム71Aは、前述したようにウエハステージWST1が投影光学系PLの下方に配置された状態では、先端部が粗動ステージWCS1の空間部内に挿入され、図1に示されるように、その上面が微動ステージWFS1の下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図2(A)等参照)の下面)に対向している。計測アーム71Aの上面は、微動ステージWFS1の下面との間に所定のクリアランス、例えば数mm程度のクリアランスが形成された状態で、微動ステージWFS1下面とほぼ平行に配置される。なお、計測アーム71Aの上面と微動ステージWFSの下面との間のクリアランスは、数mm以上でも以下でも良い。
【0123】
微動ステージ位置計測系70Aは、図3に示されるように、微動ステージWFS1のX軸方向、Y軸方向、及びθz方向の位置を計測するエンコーダシステム73と、微動ステージWFS1のZ軸方向、θx方向及びθy方向の位置を計測するレーザ干渉計システム75とを備えている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFS1のX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73x、微動ステージWFS1のY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya、73yb(以下、適宜これらを併せてYリニアエンコーダ73yとも呼ぶ)を含む。エンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び国際公開第2007/083758号(対応する米国特許出願公開第2007/288,121号明細書)などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71Aの外部に配置され、光学系のみが計測アーム71Aの内部に、すなわちグレーティングRGに対向して配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71Aの内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
【0124】
図15(A)には、計測アーム71Aの先端部が斜視図にて示されており、図15(B)には、計測アーム71Aの先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFS1のX軸方向の位置を1つのXヘッド77x(図16(A)及び図16(B)参照)で計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド77ya、77yb(図16(B)参照)で計測する。すなわち、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFS1のX軸方向の位置を計測するXヘッド77xによって、前述のXリニアエンコーダ73xが構成され、グレーティングRGのY回折格子を用いて微動ステージWFS1のY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya、77ybによって、一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybが構成されている。
【0125】
図15(A)及び図15(B)に示されるように、Xヘッド77xは、計測アーム71AのY軸方向のセンターラインCLから等距離にある、X軸に平行な直線LX上の2点(図15(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上に計測ビームLBx、LBx図15(A)中に実線で示されている)を照射する。計測ビームLBx、LBxは、グレーティングRG上の同一の照射点に照射される(図16(A)参照)。計測ビームLBx、LBxの照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図15(B)中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx、LBxは、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図16(A)等では、簡略化して図示されている。
【0126】
図16(B)に示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、計測アーム71Aの前述のセンターラインCLの+X側、−X側に配置されている。Yヘッド77yaは、図15(A)及び図15(B)に示されるように、Y軸に平行な直線LYa上に配置され、直線LXからの距離が等しい2点(図15(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図15(A)においてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya,LByaを照射する。計測ビームLBya,LByaの照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図15(B)に符号DPyaで示されている。
【0127】
Yヘッド77ybは、Yヘッド77yaと同様に、計測アーム71AのセンターラインCLから直線LYaと同一距離離れたY軸に平行な直線LYb上に配置され、直線LXからの距離が等しい2点(図15(B)の白丸参照)から、計測ビームLByb,LBybを、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。図15(B)に示されるように、計測ビームLBya,LBya及び計測ビームLByb,LBybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。ここで、主制御装置20では、微動ステージWFS1のY軸方向の位置は、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFS1のY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点を実質的な計測点として計測される。そして、Yヘッド77ya、77ybによる検出点DPya、DPybの中点は、計測ビームLBx,LBXのグレーティングRG上の照射点DPと一致する。すなわち、本実施形態では、微動ステージWFS1のX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS1上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFS1のXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(微動ステージWFS1の裏面側)で行うことができる。また、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置をそれぞれ計測する、X軸方向に離間して配置された一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFSのθz方向の回転量を計測する。
【0128】
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図16(A)には、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図16(B)には、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71A内での配置が示されている。
【0129】
図16(A)に示されるように、Xヘッド77xは、その分離面がYZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図16(A)及び図16(B)に示されるように、ユニット化されて計測アーム71Aの内部に固定されている。
【0130】
図16(B)に示されるように、Xヘッド77x(Xリニアエンコーダ73x)では、計測アーム71Aの−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDxから−Z方向にレーザビームLBxが射出され、計測アーム71Aの一部にXY平面に対して45°の角度で斜設された反射面RPを介してY軸方向に平行にその光路が折り曲げられる。このレーザビームLBxは、計測アーム71Aの内部の中実な部分を、計測アーム71Aの長手方向(Y軸方向)に平行に進行し、図16(A)に示される反射ミラーR3aに達する。そして、レーザビームLBxは、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBxは、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFS1に形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0131】
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0132】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。それにより、計測ビームLBx,LBxそれぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bでその光路が、Y軸に平行に折り曲げられて、計測アーム71Aの内部をY軸に平行に進行し、前述の反射面RPを介して、図16(B)に示される、計測アーム71Aの−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられたX受光系74xに送光される。
【0133】
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFS1が計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFS1のX軸方向に関する位置情報として主制御装置20(図3参照)に供給される。
【0134】
図16(B)に示されるように、Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDybから射出され、前述の反射面RPで光路が90°折り曲げられたY軸に平行なレーザビームLBya、LBybが入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏向分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、Y受光系74ya、74ybに戻される。ここで、光源LDya、LDybから射出されるレーザビームLBya、LBybとY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とは、図16(B)における紙面垂直方向に重なる光路をそれぞれ通る。また、上述のように、光源から照射されるレーザビームLBya、LBybとY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とが、Z軸方向に離れた平行な光路を通るように、Yヘッド77ya、77ybでは、それぞれの内部で光路が適宜折り曲げられている(図示省略)。
【0135】
レーザ干渉計システム75は、図15(A)に示されるように、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzを計測アーム71Aの先端部から、微動ステージWFSの下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz、LBz、LBzそれぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図3参照)を備えている。
【0136】
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzは、図15(A)及び図15(B)に示されるように、計測アーム71Aの上面上の同一直線上に無い3点それぞれから、Z軸に平行に射出される。ここで、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzは、図15(B)に示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点の位置から、それぞれ照射される。この場合、測長ビームLBzの射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz、LBzの射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置20は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFS1のZ軸方向の位置、θx方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71Aの−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz、LBz、LBzは、前述の反射面RPを介して計測アーム71A内をY軸方向に沿って進行し、その光路がそれぞれ折り曲げられて、上述の3点から射出される。
【0137】
本実施形態では、微動ステージWFS1の下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。波長選択フィルタは、波長選択性を有する薄膜などが用いられ、本実施形態では、例えば透明板(本体部81)の一面に設けられ、グレーティングRGはその一面に対してウエハホルダ側に配置される。
【0138】
以上の説明からわかるように、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFS1の6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFS1のXY平面内の位置情報(θz方向も含む)を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティング上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)に一致するので、いわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Aを用いることで、アッベ誤差なく、微動ステージWFS1のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。また、粗動ステージWCS1が投影ユニットPUの下方にあり、粗動ステージWCS1に微動ステージWFS2が移動可能に支持されている場合には、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Aを用いることで、微動ステージWFS2の6自由度方向の位置を計測することができ、特に、微動ステージWFS2のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置については、アッベ誤差なく、高精度に計測できる。
【0139】
また、計測ステーション300が備える微動ステージ位置計測系70Bは、図1に示されるように、微動ステージ位置計測系70Aと左右対称であるが、同様に構成されている。従って、微動ステージ位置計測系70Bが備える計測アーム71Bは、Y軸方向を長手方向とし、その+Y側の端部近傍が、支持部材72Bを介してメインフレームBDによってほぼ片持ち支持されている。
【0140】
粗動ステージWCS2がアライメント装置99の下方にあり、粗動ステージWCS2に微動ステージWFS2又はWFS1が移動可能に支持されている場合には、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Bを用いることで、微動ステージWFS2(又はWFS1)の6自由度方向の位置を計測することができ、特に、微動ステージWFS2(又はWFS1)のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置については、アッベ誤差なく、高精度に計測できる。
【0141】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に保持された一方の微動ステージ(ここでは、一例としてWFS1であるものとする)に保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、そのウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。このステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、主制御装置20により、事前に行われた、ウエハアライメントの結果(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)により得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を第2基準マークを基準とする座標に変換した情報)、及びレチクルアライメントの結果等に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ微動ステージWFS1が移動されるショット間移動動作と、レチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で各ショット領域に転写する走査露光動作と、を繰り返すことにより、行われる。なお、上記の露光動作は、先端レンズ191とウエハWとの間に液体Lqを保持した状態で、すなわち液浸露光により行われる。また、+Y側に位置するショット領域から−Y側に位置するショット領域の順で行われる。なお、EGAについては、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。
【0142】
本実施形態の露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70Aを用いて、微動ステージWFS1(ウエハW)の位置が計測され、この計測結果に基づいてウエハWの位置が制御される。
【0143】
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で駆動する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、走査露光動作時には、図17(A)に示されるように、原則的に粗動ステージWCS1を駆動せず、微動ステージWFS1のみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図17(A)の黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCS1を駆動する場合に比べ、微動ステージWFS1のみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70Aは、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16Aよりも高いので、走査露光時には微動ステージWFS1を駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFS1の駆動による反力(図17(A)の白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCS1が微動ステージWFS1と反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCS1がカウンタマスとして機能し、ウエハステージWST1の全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFS1の走査駆動によってベース盤12に偏荷重が作用するなどの不都合が生じることがない。
【0144】
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFS1のX軸方向の移動可能量が少ないことから、主制御装置20は、図17(B)に示されるように、粗動ステージWCS1をX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。
【0145】
上述した一方の微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光と並行して、他方の微動ステージWFS2上では、ウエハ交換、ウエハアライメント等が行われる。ウエハ交換は、微動ステージWFS2を支持する粗動ステージWCS2が、計測ステーション300又はその近傍の所定のウエハ交換位置にあるときに、不図示のウエハ搬送系によって、露光済みのウエハWが微動ステージWFS2上からアンロードされるとともに、新たなウエハWが微動ステージWFS2上へロードされることで行われる。ここで、ウエハ交換位置では、微動ステージWFS2のウエハホルダ(図示省略)とウエハWの裏面とにより形成される減圧室(減圧空間)が、不図示の排気管路及び配管を介してバキュームポンプに接続されており、このバキュームポンプを主制御装置20が作動させることにより、減圧室内の気体が排気管路及び配管を介して外部に排気され、減圧室内が負圧となって、ウエハホルダによるウエハWの吸着が開始される。そして、減圧室内が所定の圧力(負圧)となったとき、主制御装置20によりバキュームポンプが停止される。バキュームポンプが停止されると、不図示のチェック弁の作用により、排気管路は閉じられる。従って、減圧室の減圧状態が維持され、減圧室の気体を真空吸引するためのチューブなどを微動ステージWFS2に接続しなくても、ウエハWがウエハホルダに保持される。このため、微動ステージWFS2を、粗動ステージから分離して支障なく搬送することができる。
【0146】
ウエハアライメントに際し、主制御装置20は、まず、プライマリアライメント系AL1の直下に微動ステージWFS2上の計測プレート86を位置決めすべく、微動ステージWFS2を駆動し、プライマリアライメント系AL1を用いて、第2基準マークを検出する。そして、主制御装置20は、例えば、国際公開第2007/097379号(対応米国特許出願公開第2008/0088843号明細書)などに開示されるように、ウエハステージWST2を例えば−Y方向に移動させ、その移動経路上における複数箇所にウエハステージWSTを位置決めし、位置決めの都度、アライメント系AL1,AL22,AL23の少なくとも1つを用いてアライメントショット領域(サンプルショット領域)におけるアライメントマークの位置情報を、計測する(求める)。例えば、4回の位置決めを行う場合を考えると、主制御装置20は、例えば1回目の位置決め時に、プライマリアライメント系AL1,セカンダリアライメント系AL22,AL23を用いて、3箇所のサンプルショット領域におけるアライメントマーク(以下、サンプルマークとも呼ぶ)を、2回目の位置決め時にアライメント系AL1,AL21〜AL24を用いてウエハW上の5つのサンプルマークを、3回目の位置決め時にアライメント系AL1,AL21〜AL24を用いて5つのサンプルマークを、4回目の位置決め時に、プライマリアライメント系AL1,セカンダリアライメント系AL22,AL23を用いて3つのサンプルマークを、それぞれ検出する。これにより、合計16箇所のアライメントショット領域におけるアライメントマークの位置情報を、16箇所のアライメントマークを単一のアライメント系で順次計測する場合などに比べて、格段に短時間で得ることができる。この場合において、上記のウエハステージWST2の移動動作と連動して、アライメント系AL1,AL22,AL23はそれぞれ、検出領域(例えば、検出光の照射領域に相当)内に順次配置されるY軸方向に沿って配列された複数のアライメントマーク(サンプルマーク)を検出する。このため、上記のアライメントマークの計測に際して、ウエハステージWST2をX軸方向に移動させる必要が無い。
【0147】
本実施形態では、主制御装置20は、第2基準マークの検出を含み、ウエハアライメントの際には、計測アーム71Bを含む微動ステージ位置計測系70Bを用いてウエハアライメント時における粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2のXY平面内の位置計測を行う。ただし、これに限らず、ウエハアライメント時の微動ステージWFS2の移動を粗動ステージWCS2と一体で行う場合には、前述したウエハステージ位置計測系16Bを介してウエハWの位置を計測しながらウエハアライメントを行っても良い。また、計測ステーション300と露光ステーション200とが離間しているので、ウエハアライメント時と露光時とでは、微動ステージWFS2の位置は、異なる座標系上で管理される。そこで、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。
【0148】
このようにして微動ステージWFS2に保持されたウエハWに対するウエハアライメントが終了するが、このときは未だ、露光ステーション200において微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対する露光が続行されている。図18(A)には、このウエハWに対するウエハアライメントが終了した段階の、粗動ステージWCS1、WCS2及びリレーステージDRSTの位置関係が示されている。
【0149】
主制御装置20は、粗動ステージ駆動系51Bを介してウエハステージWST2を図18(B)中の白抜き矢印で示されるように、−Y方向に所定距離駆動し、所定の待機位置(投影光学系PLの光軸AX)とプライマリアライメント系AL1の検出中心との中央位置にほぼ一致)に静止しているリレーステージDRSTに接触又は500μm程度隔てて近接させる。
【0150】
次に、主制御装置20は、微動ステージ駆動系52B,52CのY駆動コイルに流れる電流を制御して、ローレンツ力により微動ステージWFS2を、図18(C)中の黒塗り矢印で示されるように、−Y方向に駆動し、粗動ステージWCS2からリレーステージDRSTへ微動ステージWFS2を移載する。図18(D)には、リレーステージDRSTへの微動ステージWFS2の移載が終了した状態が示されている。
【0151】
主制御装置20は、図18(D)に示される位置にリレーステージDRST及び粗動ステージWCS2を待機させた状態で、微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光が終了するのを待つ。
【0152】
図20には、露光が終了した直後のウエハステージWST1の状態が示されている。
【0153】
主制御装置20は、露光終了に先立って、図24(A)の白抜き矢印で示されるように、補助ステージ駆動系58(図3参照)を介して図19に示される待機位置から補助ステージAST(ブレードBL)を、+X方向に所定量駆動する。これにより、図24(A)に示されるように、ブレードBLの先端が計測アーム71Aの上方に位置する。そして、主制御装置20は、この状態で、露光が終了するのを待つ。
【0154】
そして、露光が終了すると、主制御装置20は、補助ステージ駆動系58を介して補助ステージAST(ブレードBL)を+X方向及び+Y方向に駆動し、ブレードBLを、図20及び図24(B)に示されるように、微動ステージWFS1にY軸方向に関して接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させる。すなわち、主制御装置20は、ブレードBLと微動ステージWFS1とをスクラム状態の設定を開始する。その後、主制御装置20は、補助ステージAST(ブレードBL)をさらに+X方向に駆動する。そして、ブレードBLの突出部の中心が計測アーム71Aの中心と一致する状態になると、図21及び図25示されるように、ブレードBLと微動ステージWFS1とのスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWST1と一体で補助ステージAST(ブレードBL)を+Y方向に駆動する(図21及び図25の白抜き矢印参照)。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、微動ステージWFS1からブレードBLに渡される。図21には、液体Lqで形成される液浸空間が微動ステージWFS1からブレードBLに渡される直前の状態が示されている。この図21の状態では、先端レンズ191と、微動ステージWFS1及びブレードBLとの間に、液体Lqが保持されている。なお、ブレードBLと微動ステージWFS1とを近接させて駆動する場合、液体Lqの漏出が防止あるいは抑制されるようにブレードBLと微動ステージWFS1とのギャップ(クリアランス)を設定することが好ましい。ここで、近接は、ブレードBLと微動ステージWFS1とのギャップ(クリアランス)が零の場合、すなわち両者が接触する場合をも含む。
【0155】
そして、微動ステージWFS1からブレードBLへの液浸空間の受け渡しが終了すると、図22に示されるように、微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1が、前述の待機位置で微動ステージWFS2を保持して、粗動ステージWCS2と近接した状態で待機しているリレーステージDRSTに接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接する。この微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1が、+Y方向に移動している途中の段階で、主制御装置20は、搬送部材駆動系54を介して搬送装置46の搬送部材48を粗動ステージWCS1の空間部内に挿入している。
【0156】
そして、微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1が、リレーステージDRSTに接触又は近接した時点で、主制御装置20は、搬送部材48を上方に駆動して、下方から微動ステージWFS1を支持させる。
【0157】
そして、この状態で、主制御装置20は、不図示のロック機構を解除し、粗動ステージWCS1を、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとに分離する。これにより、微動ステージWFS1が粗動ステージWCS1から離脱可能となる。そこで、主制御装置20は、図23(A)の白抜き矢印で示されるように、微動ステージWFS1を支持している搬送部材48を下方に駆動する。
【0158】
そして、主制御装置20は、粗動ステージWCS1の、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとを合体後、不図示のロック機構をロックする。
【0159】
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS1を下方から支持する搬送部材48をリレーステージDRSTのステージ本体44の内部に移動させる。図23(B)には、搬送部材48の移動が行われている状態が示されている。また、主制御装置20は、搬送部材48の移動と並行して、微動ステージ駆動系52C,52AのY駆動コイルに流れる電流を制御して、ローレンツ力により微動ステージWFS2を、図23(B)中の黒塗り矢印で示されるように、−Y方向に駆動し、微動ステージWFS2をリレーステージDRSTから粗動ステージWCS1に移載(スライド移動)する。
【0160】
また、主制御装置20は、微動ステージWFS1がリレーステージDRSTの空間に完全に収容されるように、搬送部材48の搬送部材本体をリレーステージDRSTの空間に収容後、微動ステージWFS1を保持している移動部材を搬送部材本体上で+Y方向に移動させる(図23(C)中の白抜き矢印参照)。
【0161】
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS2を保持した粗動ステージWCS1を、−Y方向に移動させて、ブレードBLから微動ステージWFS2に、先端レンズ191との間で保持されている液浸空間を渡す。この液浸空間(液体Lq)の受け渡しは、前述した微動ステージWFS1からブレードBLへの液浸空間の受け渡しと逆の手順で行われる。
【0162】
そして、主制御装置20は、露光開始に先立って、前述の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2、及び微動ステージWFSの計測プレート86上の一対の第1基準マークなどを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメントを行う。図23(D)には、レチクルアライメント中の微動ステージWFS2が、これを保持する粗動ステージWCS1とともに示されている。そして、主制御装置20は、レチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行い、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンをそれぞれ転写する。この露光は、図23(E)及び図23(F)からも明らかなように、レチクルアライメント後、微動ステージWFS2を一端−Y側に戻し、ウエハW上の+Y側のショット領域から−Y側のショット領域の順で行われる。
【0163】
上記の液浸空間の受け渡し、レチクルアライメント及び露光と並行して、以下のような動作が行われている。
【0164】
すなわち、主制御装置20は、図23(D)に示されるように、微動ステージWFS1を保持している搬送部材48を粗動ステージWCS2の空間内に移動させる。このとき、主制御装置20は、搬送部材48の移動とともに、微動ステージWFS1を保持している移動部材を搬送部材本体上で+Y方向に移動させる。
【0165】
次に、主制御装置20は、不図示のロック機構を解除し、粗動ステージWCS2を、第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとに分離するとともに、図23(E)中の白抜き矢印で示されるように、微動ステージWFS1を保持している搬送部材48を上方に駆動し、微動ステージWFS1を、微動ステージWFS1が備える一対の可動子部が、粗動ステージWCS2の一対の固定子部に係合可能となる高さに位置決めする。
【0166】
そして、主制御装置20は、粗動ステージWCS2の第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとを合体させる。これにより、露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1が、粗動ステージWCS2に支持される。そこで、主制御装置20は、不図示のロック機構をロックする。
【0167】
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS1を支持している粗動ステージWCS2を、図23(F)の白抜き矢印で示されるように+Y方向に駆動し、計測ステーション300に移動させる。
【0168】
その後、主制御装置20によって、微動ステージWFS1上では、ウエハ交換、第2基準マークの検出、ウエハアライメント等が、前述と同様の手順で行われる。この場合も、ウエハ交換位置で、微動ステージWFS1のウエハホルダ(図示省略)とウエハWの裏面とにより形成される減圧室内の気体がバキュームポンプによって、外部に排気され、減圧室内が負圧となって、ウエハホルダによりウエハWが吸着される。そして、不図示のチェック弁の作用により、上記減圧室の減圧状態が維持され、減圧室の気体を真空吸引するためのチューブなどを微動ステージWFS1に接続しなくても、ウエハWがウエハホルダに保持される。このため、微動ステージWFS1を、粗動ステージから分離して支障なく搬送することができる。
【0169】
そして、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。この場合も、微動ステージ位置計測系70Bを用いて、アライメントの際の微動ステージWFS1の位置計測が行われる。
【0170】
このようにして微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対するウエハアライメントが終了するが、このときは未だ、露光ステーション200において微動ステージWFS2に保持されたウエハWに対する露光が続行されている。
【0171】
そして、主制御装置20は、前述と同様にして、微動ステージWFS1をリレーステージDRSTへ移載する。主制御装置20は、リレーステージDRST及び粗動ステージWCS2を前述の待機位置で待機させた状態で、微動ステージWFS2上のウエハWに対する露光が終了するのを待つ。
【0172】
以降、同様の処理が、微動ステージWFS1、WFS2を交互に用いて繰り返し行われ、複数枚のウエハWに対する露光処理が連続して行われる。
【0173】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100によると、ブレードBL(補助ステージAST)は、微動ステージWFS1(又はWFS2)が先端レンズ191(投影光学系PL)との間で液体Lqを保持しているとき、Y軸方向に関して微動ステージWFS1(又はWFS2)に接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接するスクラム状態となり、該スクラム状態を維持して微動ステージWFS1(又はWFS2)と共にY軸方向に沿って計測アーム71Aの固定端側から自由端側に移動し、その移動後に先端レンズ191(投影光学系PL)との間で液体Lqを保持する。このため、計測アーム71Aに邪魔されることなく、先端レンズ191(投影光学系PL)との間に保持される液体Lq(該液体Lqによって形成される液浸空間)を、微動ステージWFS1(又はWFS2)からブレードBLに受け渡すことが可能となる。従って、投影光学系PLの直下に複数のステージを交換的に配置する必要がなく、露光装置のフットプリントの増大化を抑制することが可能となる。
【0174】
また、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Aを介して粗動ステージWCS1の第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとがそれぞれ駆動され、該第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとが分離すると、分離前の粗動ステージWCS1によって保持されていた微動ステージWFS1(又はWFS2)を、露光済みのウエハWを保持したまま、粗動ステージWCS1から容易に離脱させることができる。すなわち、微動ステージWFS1と一体でウエハWを粗動ステージWCS1から容易に離脱させることができる。
【0175】
この場合において、本実施形態では、粗動ステージWCS1の内部の空間部内に先端部が位置する片持ち支持状態の計測アーム71Aの固定端から自由端に向かう方向(+Y方向)に粗動ステージWCS1と一体で微動ステージWFS1(又はWFS2)を移動させた後、粗動ステージWCS1を第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとに分離させて、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)を、粗動ステージWCS1から容易に離脱させるので、その離脱の際に、計測アーム71Aに邪魔されることなく、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)を、粗動ステージWCS1から離脱させることができる。
【0176】
また、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)が粗動ステージWCS1から離脱した後、露光前のウエハWを保持する別の微動ステージWFS2(又はWFS1)を、粗動ステージWCS1に保持させる。従って、露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1(又はWFS2)と、露光前のウエハWを保持する別の微動ステージWFS2(又はWFS1)とを、それぞれウエハWを保持したままの状態で、粗動ステージWCS1から離脱、又は粗動ステージWCS1に保持させることが可能になる。
【0177】
また、主制御装置20により、搬送部材駆動系54を介して搬送部材48が駆動され、露光済みのウエハWを保持したまま粗動ステージWCS1から離脱した微動ステージWFS1(又はWFS2)がリレーステージDRSTの内部空間に収納される。
【0178】
また、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Bを介して粗動ステージWCS2の第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとが分離された状態で、搬送部材駆動系54を介して搬送部材48が駆動され、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)が所定高さに位置決めされる。そして、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Bを介して粗動ステージWCS2の第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとが一体化されることで、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)を、リレーステージDRSTから粗動ステージWCS2に受け渡すことができる。
【0179】
さらに、主制御装置20により、露光前のウエハWを保持する微動ステージWFS2(又はWFS1)が、微動ステージ駆動系52B,52Cを介して粗動ステージWCS2からリレーステージDRSTへ、さらには微動ステージ駆動系52C,52Aを介してリレーステージDRSTから粗動ステージWCS1へ、移載される。
【0180】
従って、本実施形態の露光装置100によると、ウエハWが大型化しても、特に支障なく、微動ステージWFS1又はWFS2と一体でウエハWを、粗動ステージWCS1、リレーステージDRST、及び粗動ステージWCS2の3者間で、受け渡すことができる。
【0181】
また、本実施形態の露光装置100によると、露光ステーション200において、粗動ステージWCS1に相対移動可能に保持された微動ステージWFS1(又はWFS2)上に載置されたウエハWがレチクルR及び投影光学系PLを介して露光光ILで露光される。この際、粗動ステージWCS1に移動可能に保持されている微動ステージWFS1(又はWFS2)のXY平面内の位置情報は、主制御装置20により、微動ステージWFS1(又はWFS2)に配置されたグレーティングRGに対向して配置された計測アーム71Aを有する微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステム73を用いて計測される。この場合、粗動ステージWCS1には、その内部に空間部が形成され、微動ステージ位置計測系70Aの各ヘッドは、この空間部内に配置されているので、微動ステージWFS1(又はWFS2)と微動ステージ位置計測系70Aの各ヘッドとの間には、空間が存在するのみである。従って、各ヘッドを微動ステージWFS1(又はWFS2)(グレーティングRG)に近接して配置することができ、これにより、微動ステージ位置計測系70Aによる微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置情報の高精度な計測が可能になる。また、この結果、主制御装置20による粗動ステージ駆動系51A及び/又は微動ステージ駆動系52Aを介した微動ステージWFS1(又はWFS2)の高精度な駆動が可能になる。
【0182】
また、この場合、計測アーム71Aから射出される、微動ステージ位置計測系70Aを構成するエンコーダシステム73、レーザ干渉計システム75の各ヘッドの計測ビームのグレーティングRG上の照射点は、ウエハWに照射される露光光ILの照射領域(露光領域)IAの中心(露光位置)に一致している。従って、主制御装置20は、いわゆるアッベ誤差の影響を受けることなく、微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置情報を高精度に計測することができる。また、計測アーム71AをグレーティングRGの直下に配置することによって、エンコーダシステム73の各ヘッドの計測ビームの大気中の光路長を極短くできるので、空気揺らぎの影響が低減され、この点においても、微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置情報を高精度に計測することができる。
【0183】
また、本実施形態では、計測ステーション300には、微動ステージ位置計測系70Aと左右対称に構成された微動ステージ位置計測系70Bが設けられている。そして、計測ステーション300において、粗動ステージWCS2に保持された微動ステージWFS2(又はWFS1)上のウエハWに対するウエハアライメントがアライメント系AL1、AL21〜AL24などによって行われる際、粗動ステージWCS2に移動可能に支持されている微動ステージWFS2(又はWFS1)のXY平面内の位置情報が、微動ステージ位置計測系70Bによって高精度に計測される。この結果、主制御装置20による粗動ステージ駆動系51B及び/又は微動ステージ駆動系52Bを介した微動ステージWFS2(又はWFS1)の高精度な駆動が可能になる。
【0184】
また、本実施形態では、露光ステーション200側の計測アーム71Aと計測ステーション300側の計測アーム71Bとは、互いの自由端と固定端とが反対向きに設定されているので、それらの計測アーム71A,71Bに邪魔されることなく、粗動ステージWCS1を計測ステーション300に(より正確には、リレーステージDRSTに)近づけることができるとともに、粗動ステージWCS2を露光ステーション200に(より正確には、リレーステージDRSTに)近づけることができる。
【0185】
また、本実施形態によると、露光前のウエハを保持する微動ステージWFS2(又はWFS1)の粗動ステージWCS2からリレーステージDRSTへの受け渡し及びリレーステージDRSTから粗動ステージWCS1への受け渡しは、粗動ステージWCS2、リレーステージDRST、及び粗動ステージWCS1の上端面(一対の固定子部93a、93bを含むXY平面に平行な面(第1面))に沿って微動ステージWFS2(又はWFS1)を、スライド移動させることで行われる。また、露光済みのウエハを保持する微動ステージWFS1(又はWFS2)の粗動ステージWCS1からリレーステージDRSTへの受け渡し及びリレーステージDRSTから粗動ステージWCS2への受け渡しは、第1面の−Z側に位置する、粗動ステージWCS1、リレーステージDRST、及び粗動ステージWCS2の内部の空間内で微動ステージWFS1(又はWFS2)を移動させることで行われる。従って、粗動ステージWCS1とリレーステージDRSTとの間、及び粗動ステージWCS2とリレーステージDRSTとの間における、ウエハの受け渡しを、装置のフットプリントの増加を極力抑制して、実現することが可能になる。
【0186】
また、上記実施形態では、リレーステージDRSTは、XY平面内で移動可能な構成であるにもかかわらず、前述の一連の並行処理動作の説明から明らかなように、実際のシーケンスでは、前述した待機位置に待機したままである。この点においても、装置のフットプリントの増加が抑制されている。
【0187】
また、本実施形態の露光装置100によると、微動ステージWFS1(又はWFS2)を精度良く駆動することができるので、この微動ステージWFS1(又はWFS2)に載置されたウエハWをレチクルステージRST(レチクルR)に同期して精度良く駆動し、走査露光により、レチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能になる。また、本実施形態の露光装置100では、露光ステーション200において、微動ステージWFS1(又はWFS2)上に載置されたウエハWに対する露光動作を行うのと並行して、計測ステーション300において、微動ステージWFS2(又はWFS1)上のウエハ交換、及びそのウエハWに対するアライメント計測などを行うことができるので、ウエハ交換、アライメント計測、露光の各処理をシーケンシャルに行う場合に比べて、スループットの向上が可能である。
【0188】
なお、上記実施形態では、図23(A)〜図23(C)を用いて、露光済のウエハWを保持する微動ステージWFS1を先にリレーステージDRSTの搬送部材48に受渡し、その後でリレーステージDRSTに保持された微動ステージWFS2をスライドさせて粗動ステージWCS1で保持することとした。しかし、これに限らず、微動ステージWFS2を先にリレーステージDRSTの搬送部材48に受渡し、その後で粗動ステージWCS1に保持された微動ステージWFS1をスライドさせてリレーステージDRSTで保持しても良い。
【0189】
また、上記実施形態では、微動ステージWFS1、WFS2を、粗動ステージWCS1、WCS2間で入れ替えるために、リレーステージDRSTに対して粗動ステージWCS1、WCS2をそれぞれ近接させる場合、リレーステージDRSTと粗動ステージWCS1、WCS2とのギャップ(クリアランス)を300μm程度に設定するものとしたが、このギャップは、例えば可動ブレードBLと微動ステージWFS1とを近接させて駆動する場合などのように狭く設定する必要はない。この場合、リレーステージDRSTと粗動ステージとの間での微動ステージの移動時に微動ステージが大きく傾かない(要はリニアモータの固定子と可動子とが接触しない)範囲で、リレーステージDRSTと粗動ステージとを離しても良い。すなわち、リレーステージDRSTと粗動ステージWCS1、WCS2とのギャップは、300μm程度に限らず、極端に大きくしても良い。
【0190】
なお、上記実施形態では、ブレードBL(可動部材)が、XY平面内で移動する補助ステージASTに設けられた場合を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、可動部材は、保持部材(上記実施形態では微動ステージがこれに相当)が光学部材(上記実施形態では先端レンズ191がこれに相当)との間で液体Lqを保持しているとき、Y軸方向に関して保持部材に所定距離(例えば300μm)以内に近接(接触する場合を含む)し、該近接状態(前述のスクラム状態)を維持して保持部材と共にY軸方向に沿って移動(上記実施形態では計測アーム71Aの固定端側から自由端側に移動)し、その移動後に光学部材との間で液体Lqを保持することができれば、その構成は問わない。従って、ロボットアームその他の駆動装置により駆動される可動ブレードなどであっても良い。
【0191】
また、上記実施形態では、粗動ステージWCS1、WCS2が、第1部分と第2部分とに分離可能でかつ第1部分と第2部分とが係合可能である場合について説明したが、これに限らず、第1部分と第2部分とは、物理的には常時離れていても、相互に接近及び離間可能で、離間した際には、保持部材(上記実施形態の微動ステージ)を離脱可能で、接近した際には、保持部材を支持可能であれば良い。
【0192】
また、上記実施形態では、粗動ステージWCS1,WCS2に加えて、リレーステージDRSTを備える場合について説明したが、リレーステージは、必ずしも設けなくても良い。この場合には、例えば粗動ステージWCS2と粗動ステージWCS1との間で微動ステージの受け渡しを直接行う、あるいは例えばロボットアームなどで粗動ステージWCS1,WCS2に対して、微動ステージを受け渡すこととすれば良い。前者の場合、例えば粗動ステージWCS1に対して微動ステージを渡し、粗動ステージWCS1から微動ステージを受け取って不図示の外部搬送系に渡す搬送機構を、粗動ステージWCS2に設けても良い。この場合、外部搬送系によってウエハを保持する微動ステージを粗動ステージWCS2に対して装着するようにすれば良い。後者の場合、粗動ステージWCS1、WCS2の一方が支持する微動ステージを支持装置に受け渡し、他方が支持する微動ステージを一方に直接受け渡し、最後に支持装置が支持している微動ステージを他方に受け渡す。この場合、支持装置としては、ロボットアームなどの他、通常時は、床面から上方に突出しないようにベース盤12の内部に収まっており、粗動ステージWCS1、WCS2が2つの部分に分離した際に上昇して微動ステージを支持し、支持したまま下降する上下動可能なテーブルなどを用いることができる。この他、粗動ステージWCS1、WCS2の粗動スライダ部91にY軸方向に細長い切り欠きが形成されている場合には、軸部が床面から上方に突出した上下動可能なテーブルなどを用いることもできる。いずれにしても支持装置は、その微動ステージを支持する部分が、少なくとも一方向に可動で、微動ステージを支持した状態で、粗動ステージWCS1、WCS2間で微動ステージが直接受け渡される際、その妨げとならない構造であれば良い。いずれにしてもリレーステージを設けない場合には、その分装置のフットプリントを小さくすることができる。
【0193】
なお、上記実施形態では、微動ステージ位置計測系70A,70Bが、全体が例えばガラスによって形成され、内部を光が進行可能な計測アーム71A,71Bを備える場合を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、計測アームは、少なくとも前述の各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能な中実な部材によって形成されていれば良く、その他の部分は、例えば光を透過させない部材であっても良いし、中空構造であっても良い。また、例えば計測アームとしては、グレーティングに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えば計測アームの先端部に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、計測アームの内部にエンコーダの計測ビームを進行させる必要は無い。
【0194】
また、計測アームは、各レーザビームが進行する部分(ビーム光路部分)が中空などでも良い。あるいは、エンコーダシステムとして、格子干渉型のエンコーダシステムを採用する場合には、回折格子が形成される光学部材を、セラミックス又はインバーなどの低熱膨張性のアームに設けるだけでも良い。これは、特にエンコーダシステムでは、空気揺らぎの影響を極力受けないように、ビームが分離している空間が極めて狭く(短く)なっているからである。さらに、この場合、温度制御した気体を、微動ステージ(ウエハホルダ)と計測アームとの間(及びビーム光路)に供給して温度安定化を図っても良い。さらに、計測アームは、その形状は特に問わない。
【0195】
なお、上記実施形態では、計測アーム71A,71BがメインフレームBDに一体的に固定されているので、内部応力(熱応力を含む)によって計測アーム71A,71Bにねじれ等が発生し、計測アーム71A,71BとメインフレームBDとの相対位置が変化する可能性がある。そこで、かかる場合の対策として、計測アーム71A,71Bの位置(メインフレームBDに対する相対位置、又は基準位置に対する位置の変化)を計測し、アクチュエータ等で計測アーム71A,71Bの位置を微調整する、あるいは、測定結果を補正するなどしても良い。
【0196】
また、上記実施形態では、計測アーム71A,71BとメインフレームBDとが一体である場合について説明したが、これに限らず、計測アーム71A,71BとメインフレームBDとが、分離されていても良い。この場合、メインフレームBD(あるいは基準位置)に対する計測アーム71A,71Bの位置(あるいは変位)を計測する計測装置(例えばエンコーダ及び/又は干渉計など)と、計測アーム71A,71Bの位置を調整するアクチュエータ等とを設け、主制御装置20その他の制御装置が、計測装置の計測結果に基づいて、メインフレームBD(及び投影光学系PL)と、計測アーム71A,71Bとの位置関係を、所定の関係(例えば一定)に維持することとすれば良い。
【0197】
また、計測アーム71A,71Bに、光学的な手法により計測アーム71A,71Bの変動を計測する計測システム(センサ)、温度センサ、圧力センサ、振動計測用の加速度センサ等を設けても良い。あるいは、計測アーム71A,71Bの変動を測定する歪みセンサ(歪みゲージ)、又は変位センサ等を設けても良い。そして、これらのセンサで求めた値を使って、微動ステージ位置計測系70A及び/又はウエハステージ位置計測系68A、又は微動ステージ位置計測系70B及び/又はウエハステージ位置計測系68Bで得られた位置情報を補正するようにしても良い。
【0198】
また、上記実施形態では、計測アーム71A(又は71B)が、メインフレームBDから1つの支持部材72A(又は72B)を介して片持ち状態で支持された場合について説明したが、これに限らず、例えば、X軸方向に離れた2本の吊り下げ部材を含むU字状の吊り下げ部を介して計測アーム71A(又は71B)をメインフレームBDから吊り下げ支持しても良い。この場合、2本の吊り下げ部材の間を微動ステージが移動できるように、その2本の吊り下げ部材の間隔を設定することが望ましい。
【0199】
また、上記実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッドと一対のYヘッドを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティング上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
【0200】
なお、微動ステージ位置計測系70Aは、レーザ干渉計システム75を備えることなく、エンコーダシステム73のみで微動ステージの6自由度方向に関する位置情報を計測できるようにしても良い。この場合、例えばX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダを用いることができる。例えば、2次元のグレーティングRG上の同一直線上に無い3つの計測点に、X軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダと、Y軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダとを含む合計3つのエンコーダから計測ビームを照射し、グレーティングRGからのそれぞれの戻り光を受光することで、グレーティングRGが設けられた移動体の6自由度方向の位置情報を計測することとすることができる。また、エンコーダシステム73の構成は上記実施形態に限られないで任意で構わない。
【0201】
なお、上記実施形態では、微動ステージの上面、すなわちウエハに対向する面にグレーティングが配置されているものとしたが、これに限らず、グレーティングは、ウエハを保持するウエハホルダに形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダが膨張したり、微動ステージに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダ(ウエハ)の位置を計測することができる。また、グレーティングは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。
【0202】
なお、上記各実施形態では、計測アーム71A,71Bの内部を進行させて計測ビームを微動ステージのグレーティングRGに下方から照射するエンコーダシステムを用いるものとしたが、これに限らず、計測アームにエンコーダヘッドの光学系(ビームスプリッタ等)を設け、その光学系と光源とを光ファイバで接続し、その光ファイバを介して光源からレーザ光を光学系に伝送する、及び/又は光学系と受光部とを光ファイバで接続し、その光ファイバによりグレーティングRGからの戻り光を光学系から受光部に伝送するエンコーダシステムを用いても良い。
【0203】
なお、上記実施形態では、ウエハステージは、粗動ステージと微動ステージとを組み合わせた粗微動ステージである場合を例示したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0204】
また、微動ステージを粗動ステージに対して駆動する駆動機構は、上記実施形態で説明したものに限られない。例えば実施形態では、微動ステージをY軸方向に駆動するコイルが微動ステージをZ軸方向に駆動するコイルとしても機能したが、これに限らず微動ステージをY軸方向に駆動するアクチュエータ(リニアモータ)と、微動ステージをZ軸方向に駆動する、すなわち微動ステージを浮上させるアクチュエータとを、それぞれ独立して設けても良い。この場合、微動ステージに常に一定の浮上力を作用させることができるので、微動ステージのZ軸方向の位置が安定する。なお、上記各実施形態では、微動ステージが備える可動子部82a,82bが側面視でU字状である場合について説明したが、微動ステージを駆動するリニアモータが備える可動子部は勿論、固定子部もU字状である必要はない。
【0205】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFS1,WFS2は、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCS1又WCS2に非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFS1,WFS2に真空予圧型空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCS1又WCS2に対して浮上支持しても良い。また、上記実施形態では、微動ステージWFS1,WFS2は、全6自由度方向に駆動可能であったが、これに限らず少なくともXY平面に平行な二次元平面内を移動できれば良い。また、微動ステージ駆動系52A,52Bは、上述したムービングマグネット式のものに限らず、ムービングコイル式のものであっても良い。さらに微動ステージWFS1,WFS2は、粗動ステージWCS1又はWCS2に接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFS1,WFS2を粗動ステージWCS1又はWCS2に対して駆動する微動ステージ駆動系は、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
【0206】
なお、ウエハステージの移動範囲全域でその位置計測が可能となるように微動ステージ位置計測系を構成しても良い。この場合にはウエハステージ位置計測系が不要になる。また、上記実施形態において、ベース盤12をウエハステージの駆動力の反力の作用により移動可能なカウンタマスとしても良い。この場合、粗動ステージをカウンタマスとして使用してもしなくても良いし、粗動ステージを上記実施形態と同様にカウンタマスとして使用するときでも粗動ステージを軽量化することができる。
【0207】
なお、上記実施形態の露光装置で用いられるウエハは、450mmウエハに限られものでなく、それよりサイズの小さいウエハ(300mmウエハなど)でも良い。
【0208】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0209】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0210】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0211】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0212】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0213】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0214】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0215】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0216】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0217】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
以上説明したように、本発明の露光装置及び露光方法は、エネルギビームを物体上に照射して物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0219】
10…照明系、20…主制御装置、32…ノズルユニット、46…搬送装置、48…搬送部材、51A,51B…粗動ステージ駆動系、52A,52B…微動ステージ駆動系、53…リレーステージ駆動系、54…搬送部材駆動系、93a,93b…固定子部、70A,70B…微動ステージ位置計測系、71A,71B…計測アーム、82a、82b…可動子部、77x…Xヘッド、77ya,77yb…Yヘッド、100…露光装置、191…先端レンズ、200…露光ステーション、300…計測ステーション、IL…照明光、AST…補助ステージ、BL…ブレード、R…レチクル、RST…レチクルステージ、WST1,WST2…ウエハステージ、WCS1,WCS2…粗動ステージ、WCS1a…第1部分、WCS1b…第2部分、WFS1,WFS2…微動ステージ、DRST…リレーステージ、PL…投影光学系、W…ウエハ、RG…グレーティング。
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