(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る導電性炭素材料分散剤は、側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーからなるものである。
本発明において、側鎖にオキサゾリン基を有するポリマー(以下、オキサゾリンポリマーという)とは、主鎖を構成する繰り返し単位に直接またはアルキレン基等のスペーサー基を介してオキサゾリン基が結合した重合体であれば特に限定されるものではないが、具体的には、式(1)に示されるような2位に重合性炭素−炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーをラジカル重合して得られる、オキサゾリン環の2位でポリマー主鎖またはスペーサー基に結合した繰り返し単位を有するポリマーであることが好ましい。
【0018】
式中、Xは、重合性炭素−炭素二重結合含有基を表し、R
1〜R
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
オキサゾリンモノマーが有する重合性炭素−炭素二重結合含有基としては、重合性炭素−炭素二重結合を含んでいれば特に限定されるものではないが、重合性炭素−炭素二重結合を含む鎖状炭化水素基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基等が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0019】
式(1)で示される2位に重合性炭素−炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーの具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−ブチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−ブチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−ブチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−ブチル−2−オキサゾリン等が挙げられるが、入手容易性などの点から、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0020】
また、導電性炭素材料分散液を、水系溶媒を用いて調製することを考慮すると、オキサゾリンポリマーは水溶性であることが好ましい。
このような水溶性のオキサゾリンポリマーは、上記式(1)で表されるオキサゾリンモノマーのホモポリマーでもよいが、水への溶解性をより高めるため、上記オキサゾリンモノマーと親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの少なくとも2種のモノマーをラジカル重合させて得られたものであることが好ましい。
【0021】
親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物が好適である。
【0022】
また、本発明においては、得られるオキサゾリンポリマーの導電性炭素材料分散能に悪影響を及ぼさない範囲で、上記オキサゾリンモノマーおよび親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他のモノマーを併用することができる。
その他のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のα−オレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロオレフィン系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明で用いるオキサゾリンポリマー製造に用いられるモノマー成分において、オキサゾリンモノマーの含有率は、得られるオキサゾリンポリマーの導電性炭素材料分散能をより高めるという点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。なお、モノマー成分におけるオキサゾリンモノマーの含有率の上限値は100質量%であり、この場合は、オキサゾリンモノマーのホモポリマーが得られる。
一方、得られるオキサゾリンポリマーの水溶性をより高めるという点から、モノマー成分における親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。
また、モノマー成分におけるその他の単量体の含有率は、上述のとおり、得られるオキサゾリンポリマーの導電性炭素材料分散能に影響を与えない範囲であり、また、その種類によって異なるため一概には決定できないが、5〜95質量%以下、好ましくは10〜90質量%以下の範囲で適宜設定すればよい。
【0024】
オキサゾリンポリマーの平均分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量が1,000〜2,000,000であることが好ましい。当該ポリマーの重量平均分子量が1,000未満であると、導電性炭素材料の分散能が著しく低下する、または分散能を発揮しなくなる虞がある。一方、重量平均分子量が2,000,000を超えると、分散処理における取り扱いが極めて困難となる虞がある。重量平均分子量が2,000〜1,000,000のオキサゾリンポリマーがより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィーによる測定値(ポリスチレン換算)である。
【0025】
本発明で用いるオキサゾリンポリマーは、上述した各種モノマーを、例えば、特開平6−32844号公報や特開2013−72002号公報等に記載された公知のラジカル重合法で重合させて製造することができる。
また、本発明で使用可能なオキサゾリンポリマーは、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、エポクロスWS−300((株)日本触媒製、固形分濃度10質量%、水溶液)、エポクロスWS−700((株)日本触媒製、固形分濃度25質量%、水溶液)、エポクロスWS−500((株)日本触媒製、固形分濃度39質量%、水/1−メトキシ−2−プロパノール溶液)、Poly(2−ethyl−2−oxazoline)(Aldrich)、Poly(2−ethyl−2−oxazoline)(AlfaAesar)、Poly(2‐ethyl−2−oxazoline)(VWR International,LLC)等が挙げられる。
なお、溶液として市販されている場合、そのまま使用して導電性炭素材料分散液としても、溶媒置換して目的とする溶媒系の導電性炭素材料分散液としてもよい。
【0026】
以上で説明したオキサゾリンポリマーとともに用いられる導電性炭素材料は、特に限定されるものではないが、二次電池の結着層を形成するために用いる場合、繊維状導電性カーボン材料、層状導電性カーボン材料、粒子状導電性カーボン材料が好ましい。なお、これらの導電性炭素材料は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0027】
繊維状導電性カーボン材料の具体例としては、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等が挙げられるが、導電性、分散性、入手性などの観点からCNTが好ましい。
CNTは、一般的に、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等によって作製されるが、本発明に使用されるCNTはいずれの方法で得られたものでもよい。また、CNTには1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT(以下、SWCNTとも略記する)と、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT(以下、DWCNTとも略記する)と、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNT(MWCNT)とがあるが、本発明においては、SWCNT、DWCNT、MWCNTをそれぞれ単体で、または複数を組み合わせて使用できる。
なお、上記の方法でSWCNT、DWCNTまたはMWCNTを作製する際には、ニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属も残存することがあるため、この不純物を除去するための精製を必要とする場合がある。不純物の除去には、硝酸、硫酸などによる酸処理とともに超音波処理が有効である。しかし、硝酸、硫酸などによる酸処理ではCNTを構成するπ共役系が破壊され、CNT本来の特性が損なわれてしまう可能性があるため、適切な条件で精製して使用することが望ましい。
【0028】
層状導電性カーボン材料の具体例としては、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。グラファイトについては、特に制限はなく、市販の各種グラファイトを用いることができる。
グラフェンは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシートであって、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっており、その厚さは、0.38nm程度と言われている。また、市販の酸化グラフェンの他に、グラファイトをHummers法により処理して得られる酸化グラフェンを用いてもよい。
【0029】
粒子状導電性カーボン材料の具体例としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックについては、特に制限はなく、市販の各種カーボンブラックを用いることができ、その粒子径は5nm〜500nmが好ましい。
【0030】
本発明の導電性炭素材料分散液は、上述したオキサゾリンポリマー(導電性炭素材料分散剤)と、導電性炭素材料と、溶媒とを含み、導電性炭素材料が溶媒に分散しているものである。
溶媒としては、例えば、水;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)などのエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類等の有機溶媒が挙げられ、これらの溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0031】
特に、導電性炭素材料の孤立分散の割合を向上させ得るという点から、水、NMP、DMF、THF、メタノール、イソプロパノールが好ましく、これらの溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。さらに、用いる溶媒によっては、組成物の成膜性を向上し得るという点から、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、プロピレングリコールなどのグリコール類等を少量含むことが望ましい。
【0032】
なお、上記オキサゾリンポリマーを用いた場合、アルコール類、グリコールエーテル類、グリコール類等の親水性溶媒を用いた場合でも分散性および成膜性が良好であり、さらに、上記親水性溶媒と水との混合溶媒や、水単独溶媒とした場合でも、分散性、成膜性が低下することがない。
近年、脱有機溶媒化の潮流から溶媒として水を用いた材料が求められていることから、本発明の導電性炭素材料分散液においても、親水性溶媒と水との混合溶媒や水単独溶媒を用いることが好ましく、水単独溶媒が最適である。
【0033】
本発明の導電性炭素材料分散液の調製法は任意であり、オキサゾリンポリマー(分散剤)、導電性炭素材料、および溶媒を任意の順序で混合して分散液を調製すればよい。
この際、オキサゾリンポリマー、導電性炭素材料および溶媒からなる混合物を分散処理することが好ましく、この処理により、導電性炭素材料の分散割合をより向上させることができる。分散処理としては、機械的処理である、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどを用いる湿式処理や、バス型やプローブ型のソニケータを用いる超音波処理が挙げられる。
分散処理の時間は任意であるが、1分間から10時間程度が好ましく、5分間から5時間程度がより好ましい。
なお、本発明で用いるオキサゾリンポリマーは、導電性炭素材料の分散能に優れているため、分散処理前等に加熱処理を施さなくとも、導電性炭素材料が高濃度で分散した組成物を得ることができるが、必要に応じて加熱処理を施しても構わない。
【0034】
本発明の導電性炭素材料分散液における、オキサゾリンポリマーと導電性炭素材料との混合比率は、質量比で1,000:1〜1:100程度とすることができる。
また、分散液中におけるオキサゾリンポリマーの濃度は、導電性炭素材料を溶媒に分散させ得る濃度であれば特に限定されるものではないが、分散液中に0.001〜30質量%程度とすることが好ましく、0.002〜20質量%程度とすることがより好ましい。
さらに、この分散液中における導電性炭素材料の濃度は、薄膜に要求される機械的、電気的、熱的特性などにおいて変化するものであり、また、少なくとも導電性炭素材料の一部が孤立分散する限りにおいて任意であるが、分散液中に0.0001〜30質量%程度とすることが好ましく、0.001〜20質量%程度とすることがより好ましく、0.001〜10質量%程度とすることがより一層好ましい。
以上のようにして調製された導電性炭素材料分散液では、分散剤が導電性炭素材料の表面に物理吸着して複合体を形成しているものと推測される。
【0035】
上記導電性炭素材料分散液は、上述した溶媒に可溶な架橋剤を含んでいてもよい。
架橋剤としては、オキサゾリンポリマーのオキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物、自己架橋する化合物のどちらでもよいが、得られる薄膜の耐溶剤性をより高めるという点から、オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物が好ましい。
【0036】
オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、スルフィン酸基、エポキシ基等のオキサゾリン基との反応性を有する官能基を2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではないが、カルボキシル基を2個以上有する化合物が好ましい。なお、薄膜形成時の加熱や、酸触媒の存在下で上記官能基が生じて架橋反応を起こす官能基、例えば、カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等を有する化合物も架橋剤として用いることができる。
オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物の具体例としては、酸触媒の存在下で架橋反応性を発揮する、ポリアクリル酸やそのコポリマー等の合成高分子およびカルボキシメチルセルロースやアルギン酸といった天然高分子の金属塩、加熱により架橋反応性を発揮する、上記合成高分子および天然高分子のアンモニウム塩等が挙げられるが、特に、酸触媒の存在下や加熱条件下で架橋反応性を発揮するポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸アンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム等が好ましい。
【0037】
このようなオキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業(株)製)、アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製、鹿1級)、アロンA−30(ポリアクリル酸アンモニウム、東亞合成(株)製、固形分濃度32質量%、水溶液)、DN−800H(カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ダイセルファインケム(株)製)アルギン酸アンモニウム((株)キミカ製)等が挙げられる。
【0038】
自己架橋する化合物としては、例えば、水酸基に対してアルデヒド基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基、アルコキシ基、カルボキシル基に対してアルデヒド基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基に対してイソシアネート基、アルデヒド基などの、互いに反応する架橋性官能基を同一分子内に有している化合物や、同じ架橋性官能基同士で反応する水酸基(脱水縮合)、メルカプト基(ジスルフィド結合)、エステル基(クライゼン縮合)、シラノール基(脱水縮合)、ビニル基、アクリル基などを有している化合物などが挙げられる。
自己架橋する化合物の具体例としては、酸触媒の存在下で架橋反応性を発揮する多官能アクリレート、テトラアルコキシシラン、ブロックイソシアネート基を有するモノマーおよび水酸基、カルボン酸、アミノ基の少なくとも1つを有するモノマーのブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0039】
このような自己架橋する化合物は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、多官能アクリレートでは、A−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学工業(株)製)、A−GLY−9E(Ethoxylated glycerine triacrylate(EO9mol)、新中村化学工業(株)製)、A−TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業(株)製)、テトラアルコキシシランでは、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)、テトラエトキシシラン(東横化学(株)製)、ブロックイソシアネート基を有するポリマーとしては、エラストロンシリーズE−37、H−3、H38、BAP、NEW BAP−15、C−52、F−29、W−11P、MF−9、MF−25K(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0040】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の含有量は、使用する溶媒、使用する基材、要求される粘度や膜形状などにより変動するが、通常、オキサゾリンポリマーに対して0.001〜80質量%であり、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜40質量%である。
なお、本発明の導電性炭素材料分散液は、架橋反応を促進するための触媒として、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物、および/または2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を含んでいてもよい。
触媒の含有量は、導電性炭素材料分散剤(オキサゾリンポリマー)に対して、通常、0.0001〜20質量%であり、好ましくは0.0005〜10質量%、より好ましくは0.001〜3質量%である。
【0041】
さらに、本発明の導電性炭素材料分散液は、マトリックスとなる高分子を含んでいてもよい。その含有量は、特に限定されるものではないが、分散液中に、0.0001〜99質量%程度とすることが好ましく、0.001〜90質量%程度とすることがより好ましい。
マトリックスとなる高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔P(VDF−HFP)〕、フッ化ビニリデン−塩化3フッ化エチレン共重合体〔P(VDF−CTFE)〕などのフッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)、スチレン−ブタジエンゴムなどのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアクリル酸ナトリウム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等の熱可塑性樹脂や、ポリアニリンおよびその半酸化体であるエメラルジンベース;ポリチオフェン;ポリピロール;ポリフェニレンビニレン;ポリフェニレン;ポリアセチレン等の導電性高分子、さらにはエポキシ樹脂;ウレタンアクリレート;フェノール樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などが挙げられるが、本発明の導電性炭素材料分散液においては、溶媒として水を用いることが好適であることから、マトリックス高分子としても水溶性のもの、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水溶性セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール等が挙げられるが、特に、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が好適である。
【0042】
このようなマトリックスとなる高分子は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業(株)製)、アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製、鹿1級)、メトローズSHシリーズ(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業(株)製)、メトローズSEシリーズ(ヒドロキシエチルメチルセルロース、信越化学工業(株)製)、JC−25(完全ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、JM−17(中間ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、JP−03(部分ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、ポリスチレンスルホン酸(Aldrich社製、固形分濃度18質量%、水溶液)等が挙げられる。
【0043】
本発明の導電性分散液が、架橋剤および/またはマトリックスとなる高分子を含む場合、分散液の調製方法としては、少なくとも導電性炭素材料、導電性炭素材料分散剤、溶媒、架橋剤および/またはマトリックスとなる高分子を混合したものに、機械的処理としてのボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどを用いた湿式処理や、バス型やプローブ型のソニケータを用いる超音波処理して調製することができるが、特に、ジェットミルを用いた湿式処理や超音波処理が好適である。なお、架橋剤やマトリックスとなる高分子は、先に述べた方法により分散液を調製した後に加えてもよい。
【0044】
本発明の導電性炭素材料分散液は、一般的な導電性炭素材料分散液と同様に導電性薄膜用組成物として好適に用いることができる。
すでに述べたとおり、本発明の導電性炭素材料分散液に含まれるオキサゾリンポリマー(分散剤)は、導電性炭素材料の分散能に優れるだけでなく、エネルギー貯蔵デバイスの電極に用いられる集電基板に対する高い密着性をも有している。
したがって、本発明の導電性炭素材料分散液(導電性薄膜用組成物)から得られる導電性薄膜は、エネルギー貯蔵デバイスの電極を構成する集電基板と活物質層との間に介在し、両者を結着させる導電性結着層に特に適している。
なお、エネルギー貯蔵デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、プロトンポリマー電池、ニッケル水素電池、アルミ固体コンデンサ、電解コンデンサ、鉛蓄電池等の各種エネルギー貯蔵デバイスが挙げられるが、本発明の導電性薄膜用組成物から得られる導電性薄膜は、特に、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池の電極に好適に適用することができる。
【0045】
本発明の導電性薄膜用組成物を用いた電極作製にあたっては、まず、集電基板と導電性結着層とからなる複合集電体を作製することが好ましい。
この複合集電体は、集電基板上に、上述した導電性炭素材料分散液(導電性薄膜用組成物)を塗布し、これを自然または加熱乾燥し、導電性結着層を形成して作製することができる。
集電基板としては、従来、エネルギー貯蔵デバイス用電極の集電基板として用いられているものから適宜選択すればよく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀およびそれらの合金やカーボン材料、金属酸化物、導電性高分子等の薄膜を用いることができる。
その厚みは特に限定されるものではないが、本発明においては、1〜100μmが好ましい。
また、導電性結着層の厚みも、特に限定されるものではないが、内部抵抗を低減することを考慮すると、0.05〜10μmが好ましい。
【0046】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法などが挙げられるが、作業効率等の点から、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法が好適である。
加熱乾燥する場合の温度も任意であるが、50〜200℃程度が好ましく、80〜150℃程度がより好ましい。
【0047】
さらに、エネルギー貯蔵デバイス用電極は、上記複合集電体の導電性結着層上に、活物質層を形成して作製することができる。
ここで、活物質としては、従来、エネルギー貯蔵デバイス用電極に用いられている各種活物質を用いることができる。
例えば、リチウム二次電池やリチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としてリチウムイオンを吸着・離脱可能なカルコゲン化合物またはリチウムイオン含有カルコゲン化合物、ポリアニオン系化合物、硫黄単体およびその化合物等を用いることができる。
このようなリチウムイオンを吸着離脱可能なカルコゲン化合物としては、例えばFeS
2、TiS
2、MoS
2、V
2O
6、V
6O
13、MnO
2等が挙げられる。
リチウムイオン含有カルコゲン化合物としては、例えばLiCoO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiMo
2O
4、LiV
3O
8、LiNiO
2、Li
xNi
yM
1-yO
2(但し、Mは、Co、Mn、Ti、Cr,V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦x≦1.10、0.5≦y≦1.0)などが挙げられる。
ポリアニオン系化合物としては、例えばLiFePO
4等が挙げられる。
硫黄化合物としては、例えばLi
2S、ルベアン酸等が挙げられる。
【0048】
一方、上記負極を構成する負極活物質としては、アルカリ金属、アルカリ合金、リチウムイオンを吸蔵・放出する周期表4〜15族の元素から選ばれる少なくとも1種の単体、酸化物、硫化物、窒化物、またはリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な炭素材料を使用することができる。
アルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられ、アルカリ金属合金としては、例えば金属Li、Li−Al、Li−Mg、Li−Al−Ni、Na、Na−Hg、Na−Zn等が挙げられる。
リチウムイオンを吸蔵放出する周期表4〜15族の元素から選ばれる少なくとも1種の元素の単体としては、例えば、ケイ素やスズ、アルミニウム、亜鉛、砒素等が挙げられる。
同じく酸化物としては、例えば、スズケイ素酸化物(SnSiO
3)、リチウム酸化ビスマス(Li
3BiO
4)、リチウム酸化亜鉛(Li
2ZnO
2)、リチウム酸化チタン(Li
4Ti
5O
12)等が挙げられる。
同じく硫化物としては、リチウム硫化鉄(Li
xFeS
2(0≦x≦3))、リチウム硫化銅(Li
xCuS(0≦x≦3))等が挙げられる。
同じく窒化物としては、リチウム含有遷移金属窒化物が挙げられ、具体的には、Li
xM
yN(M=Co、Ni、Cu、0≦x≦3、0≦y≦0.5)、リチウム鉄窒化物(Li
3FeN
4)等が挙げられる。
リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはこれらの焼結体等が挙げられる。
【0049】
また、電気二重層キャパシタの場合、活物質として炭素質材料を用いることができる。
この炭素質材料としては、活性炭等が挙げられ、例えば、フェノール樹脂を炭化後、賦活処理して得られた活性炭が挙げられる。
【0050】
活物質層は、以上で説明した活物質、バインダーポリマーおよび必要に応じて溶媒を含む電極スラリーを、導電性結着層上に塗布し、自然または加熱乾燥して形成することができる。
バインダーポリマーとしては、公知の材料から適宜選択して用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔P(VDF−HFP)〕、フッ化ビニリデン−塩化3フッ化エチレン共重合体〔P(VDF−CTFE)〕、ポリビニルアルコール、ポリイミド、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアニリン等の導電性高分子などが挙げられる。
なお、バインダーポリマーの添加量は、活物質100質量部に対して、0.1〜20質量部、特に、1〜10質量部が好ましい。
溶媒としては、上記オキサゾリンポリマーで例示した溶媒が挙げられ、それらの中からバインダーの種類に応じて適宜選択すればよいが、PVdF等の非水溶性のバインダーの場合はNMPが好適であり、PAA等の水溶性のバインダーの場合は水が好適である。
【0051】
なお、上記電極スラリーは、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0052】
電極スラリーの塗布方法としては、上述した導電性結着層形成用組成物と同様の手法が挙げられる。
また、加熱乾燥する場合の温度も任意であるが、50〜400℃程度が好ましく、80〜150℃程度がより好ましい。
【0053】
また電極は、必要に応じてプレスすることができる。プレス法は、一般に採用されている方法を用いることができるが、特に金型プレス法やロールプレス法が好ましい。ロールプレス法でのプレス圧は、特に限定されないが、0.2〜3ton/cmが好ましい。
【0054】
本発明に係るエネルギー貯蔵デバイスは、上述した電極を備えたものであり、より具体的には、少なくとも一対の正負極と、これら各極間に介在するセパレータと、電解質とを備えて構成され、正負極の少なくとも一方が、上述したエネルギー貯蔵デバイス用電極から構成される。
このエネルギー貯蔵デバイスは、電極に上述したエネルギー貯蔵デバイス用電極を用いることにその特徴があるため、その他のデバイス構成部材であるセパレータや、電解質などは、公知の材料から適宜選択して用いることができる。
セパレータとしては、例えば、セルロース系セパレータ、ポリオレフィン系セパレータなどが挙げられる。
電解質としては、液体、固体のいずれでもよく、また水系、非水系のいずれでもよいが、本発明のエネルギー貯蔵デバイス用電極は、非水系電解質を用いたデバイスに適用した場合にも実用上十分な性能を発揮させ得る。
【0055】
非水系電解質としては、電解質塩を非水系有機溶媒に溶かしてなる非水系電解液が挙げられる。
電解質塩としては、4フッ化硼酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のリチウム塩;テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルトリエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムパークロレート等の4級アンモニウム塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドなどが挙げられる。
非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどアミド類等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、用いた装置は以下のとおりである。
(1)プローブ型超音波照射装置(分散処理)
Hielscher Ultrasonics社製 UIP1000
(2)ワイヤーバーコーター(薄膜作製)
(株)エスエムテー製 PM−9050MC
(3)セレクトローラー
松尾産業(株)製 OSP−30
(4)充放電測定装置(二次電池評価)
北斗電工(株)製 HJ1001SM8A
(5)マイクロメーター(バインダー、活物質層の膜厚測定)
(株)ミツトヨ製 IR54
(6)T.K.ロボミックス(ホモディスパー2.5型(φ32)付き)(プライミ
クス(株)製)
(7)薄膜旋回型高速ミキサー
フィルミクス40型(プライミクス(株)製)
(8)自転・公転ミキサー
あわとり練太郎 ARE−310((株)シンキー製)
(9)ロールプレス装置
超小型卓上熱ロールプレス機 HSR−60150H(宝泉(株)製)
(10)インピーダンス測定
PARSTAT2273(Princeton Applied Research社製)
【0057】
[1]導電性炭素材料分散液の調製
[実施例1−1]
オキサゾリンポリマーを含む水溶液であるエポクロスWS−300((株)日本触媒製、固形分濃度10質量%、重量平均分子量1.2×10
5、オキサゾリン基量7.7mmol/g)4.9gと、蒸留水44.6gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液Aを調製した。
【0058】
[実施例1−2]
オキサゾリンポリマーを含む水溶液であるエポクロスWS−700((株)日本触媒製、固形分濃度25質量%、重量平均分子量4×10
4、オキサゾリン基量4.5mmol/g)2.0gと、蒸留水47.5gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液Bを調製した。
【0059】
[実施例1−3]
ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)0.36gを蒸留水49.64gに溶解させた。得られた溶液と、実施例1−1で調製した導電性炭素材料分散液A50gとを混合して、導電性炭素材料分散液Cを調製した。
【0060】
[実施例1−4]
ポリアクリル酸アンモニウム(PAA−NH
4)を含む水溶液であるアロンA−30(東亞合成(株)、固形分濃度31.6質量%)1.09gと、蒸留水48.91gとを混合した。得られた溶液と、実施例1−1の導電性炭素材料分散液A50gとを混合して、導電性炭素材料分散液Dを調製した。
【0061】
[実施例1−5]
ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)0.33gと、ポリアクリル酸(PAA)を含む水溶液であるアロンA−10H(東亞合成(株)、固形分濃度25.8質量%)0.11gと、蒸留水49.56gとを混合した。得られた溶液と、実施例1−1の導電性炭素材料分散液A50gとを混合して、導電性炭素材料分散液Eを調製した。
【0062】
[実施例1−6]
ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)0.33gと、ポリアクリル酸アンモニウム(PAA−NH
4)を含む水溶液であるアロンA−30(東亞合成(株)、固形分濃度31.6質量%)0.11gと、蒸留水49.56gとを混合した。得られた溶液と、実施例1−1の導電性炭素材料分散液A50gとを混合して、導電性炭素材料分散液Fを調製した。
【0063】
[実施例1−7]
オキサゾリンポリマーを含む水溶液であるエポクロスWS−300((株)日本触媒製、固形分濃度10質量%、重量平均分子量1.2×10
5、オキサゾリン基量7.7mmol/g)4.9gと、蒸留水44.6gとを混合し、そこへ多層CNT(宇部興産(株)製“AMC”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、さらにそこへ、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)0.33gと、ポリアクリル酸(PAA)を含む水溶液であるアロンA−10H(東亞合成(株)、固形分濃度25.8質量%)0.11gとを、蒸留水49.56gに溶解させたものを混合して、導電性炭素材料分散液Gを調製した。
【0064】
[実施例1−8〜11]
多層CNT(宇部興産(株)製“AMC”)の代わりに、多層CNT(昭和電工(株)製“VGCF−X”)、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製“デンカブラック”)、グラフェン(ブリヂストンKBG(株)製“WGNP”)、多層CNT(Bayer社製“Baytubes”)をそれぞれ用いた以外は、実施例1−7と同様の方法で導電性炭素材料分散液H〜Kを調製した。
【0065】
[実施例1−12]
ポリアクリル酸アンモニウム(PAA−NH
4)を含む水溶液であるアロンA−30(東亞合成(株)、固形分濃度31.6質量%)0.275gと、アルギン酸アンモニウム(アルギン酸NH
4)((株)キミカ)の1%水溶液8gと、蒸留水11.73gとを混合した。得られた溶液と、実施例1−1の導電性炭素材料分散液A20gとを混合して、導電性炭素材料分散液Lを調製した。
【0066】
[実施例1−13]
ポリアクリル酸アンモニウム(PAA−NH
4)を含む水溶液であるアロンA−30(東亞合成(株)、固形分濃度31.6質量%)0.7gと、アルギン酸ナトリウム(アルギン酸Na)(関東化学(株)、鹿1級)0.2gと、蒸留水49.1gとを混合した。得られた溶液と、実施例1−2の導電性炭素材料分散液B50gとを混合して、導電性炭素材料分散液Mを調製した。
【0067】
[実施例1−14]
ポリアクリル酸アンモニウム(PAA−NH
4)を含む水溶液であるアロンA−30(東亞合成(株)、固形分濃度31.6質量%)0.7gと、アルギン酸ナトリウム(アルギン酸Na)(関東化学(株)、鹿1級)0.2gと、蒸留水49.1gとを混合した。得られた溶液と、実施例1−9の導電性炭素材料分散液I50gとを混合して、導電性炭素材料分散液Nを調製した。
【0068】
[比較例1−1]
ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製、分子量630,000)0.5gと、蒸留水49.0gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液を調製した。
【0069】
[比較例1−2]
ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製、分子量40,000)0.5gと、蒸留水49.0gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液を調製した。
【0070】
[比較例1−3]
ポリビニルアルコール(東亞合成(株)製、JF−17)0.5gと、蒸留水49.0gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液の調製を試みたが、処理後も混合物中には凝集物が存在し、均一な分散液を得ることができなかった。
【0071】
[比較例1−4]
ポリアクリルアミド水溶液(Aldrich製、重量平均分子量10,000、固形分濃度50質量%)1.0gと、蒸留水48.5gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液の調製を試みたが、処理後も混合物中には凝集物が存在し、均一な分散液を得ることができなかった。
【0072】
[比較例1−5]
ポリアクリル酸ナトリウム(PAA−Na)を含む水溶液であるアロンA−7195(東亞合成(株)製、固形分濃度19質量%)2.63gと、蒸留水46.87gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液の調製を試みたが、処理後も混合物中には凝集物が存在し、均一な分散液を得ることができなかった。
【0073】
[比較例1−6]
ポリアクリル酸アンモニウム(PAA−NH
4)を含む水溶液であるアロンA−30(東亞合成(株)、固形分濃度31.6質量%)1.58gと、蒸留水47.92gとを混合し、さらにそこへ多層CNT(Nanocyl社製“NC7000”)0.5gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて室温で30分間超音波処理を行い、導電性炭素材料分散液の調製を試みたが、処理後も混合物中には凝集物が存在し、均一な分散液を得ることができなかった。
【0074】
以上の結果からわかるように、実施例の導電性炭素材料分散液においては凝集物が発生しておらず、これらの分散液は均一であったのに対し、分散剤としてポリビニルピロリドンを用いた場合は凝集物を含まない導電性炭素材料分散液が得られたものの、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムまたはポリアクリル酸アンモニウムを用いた場合、凝集物が発生して均一な導電性炭素材料分散液を得ることができなかった。
以上のことから、オキサゾリンポリマーが、導電性炭素材料を水へ分散するための分散剤として有効に作用することがわかった。
【0075】
[2]導電性薄膜の製造
均一な導電性炭素材料分散液であった実施例1−1〜1−11および比較例1−1〜1−2で調製した分散液をそれぞれ用いて、導電性薄膜の製造を試みた 。
【0076】
[実施例2−1]
実施例1−1の導電性炭素材料分散液を、アルミ箔(厚み20μm)上にワイヤーバーコーター(セレクトローラー:OSP−30、ウェット膜厚30μm)で均一に展開した後、それを120℃で20分間乾燥して導電性薄膜を製造した。
【0077】
[実施例2−2〜2−11]
実施例1−1の導電性炭素材料分散液の代わりに、実施例1−2〜1−11で調製した各導電性炭素材料分散液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で導電性薄膜を製造した。
【0078】
[実施例2−12]
実施例1−12の導電性炭素材料分散液Lを、銅箔(厚み20μm)上にワイヤーバーコーター(セレクトローラー:OSP−30、ウェット膜厚30μm)で均一に展開した後、それを120℃で20分間乾燥し、さらに150℃で20分間、真空下で乾燥して導電性薄膜を製造した。
【0079】
[実施例2−13〜2−14]
実施例1−1の導電性炭素材料分散液の代わりに、実施例1−13〜1−14で調製した各導電性炭素材料分散液を用い、120℃で20分間乾燥する代わりに150℃で20分間乾燥した以外は、それぞれ実施例2−1と同様の方法で導電性薄膜を製造した。
【0080】
なお、以上で得られたアルミ箔または銅箔と導電性薄膜との積層体を、アルミ箔を集電基板とし、導電性薄膜を結着層とする複合集電体(実施例2−1〜2−9、2−13〜2−14の複合集電体)として、または銅箔を集電基板とし、導電性薄膜を結着層とする複合集電体(実施例2−12の複合集電体)として、後述の実施例において使用した。
【0081】
[比較例2−1,2−2]
比較例1−1,1−2で調製した各導電性炭素材料分散液を、それぞれアルミ箔(厚み20μm)上にワイヤーバーコーター(セレクトローラー:OSP−30、ウェット膜厚30μm)で均一に展開し、それらを乾燥して導電性薄膜の製造を試みたが、いずれも分散液がアルミにはじかれて均一に展開することができず、導電性薄膜を製造できなかった。
【0082】
以上の結果からわかるように、実施例の分散液は、アルミ、銅等の金属上に均一に展開可能であり、アルミ上に導電性薄膜が製造できたのに対し、比較例の分散液は、アルミにはじかれて薄膜化できなかった。
以上のことから、分散剤としてオキサゾリンポリマーを含む導電性炭素材料分散液は、アルミ等の金属上への優れた成膜性を有することがわかった。
CNTを含む導電性薄膜は金属上に形成されて用いられることが多く、また、昨今の脱有機溶媒化の潮流から溶媒として水を用いた材料が求められているが、本発明のオキサゾリンポリマーを含む水系の導電性炭素材料分散液は、これらの要求に応えうる好適な材料といえる。
【0083】
[3]密着性および耐溶剤性評価
実施例2−1〜2−14で作製した導電性薄膜について、下記に示す手法にて、集電基板であるアルミまたは銅との密着性および耐溶剤性を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
<密着性試験>
導電性薄膜を、縦横それぞれ1mm間隔でクロスカットし、1mm四方のマス目を100個形成した。次いで、このクロスカット部分に粘着テープ(ニチバン(株)製、CT−12S2P)を貼り付けて、そのテープを剥離し、密着性試験を行った。その際、まったく剥がれなかった場合を「○」、一部または全部が剥がれた場合を「×」として評価した。
【0085】
<耐溶剤性試験>
下記の各溶媒を浸み込ませた綿棒を導電性結着層に接触させて往復させて耐溶剤性試験を行った。その際、導電性結着層が剥がれ落ちない場合を「○」、部分的に剥れる場合を「△」、すべて剥がれ落ちた場合を「×」として評価した。
1.蒸留水
2.ジエチルカーボネート(DEC)
3.エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC/DEC=1/1(v/v))
4.プロピレンカーボネート(PC)
5.ジメチルスルホキシド(DMSO)(関東化学(株)製)
6.テトラヒドロフラン(THF)(関東化学(株)製)
7.N−メチルピロリドン(NMP)(純正化学(株)製)
【0086】
【表1】
【0087】
添加剤(マトリックスポリマーおよび架橋剤)を含まない実施例1−1,1−2で調製した分散液から作製した導電性結着層は、アルミに対する密着性は良好であるものの耐溶剤性が悪いことがわかる(実施例2−1,2−2)。
これに対し、PAA−Naを添加した実施例1−3で調製した分散液から作製した導電性結着層は耐溶剤性が改善された(実施例2−3)。オキサゾリン基は、PAA−Naとは架橋反応を起こさないため、PAA−Naはマトリックスポリマーとして機能し、これにより耐溶剤性が改善されたものと推察される。
また、PAA−NH
4を添加した実施例1−4、PAA−NaおよびPAAを添加した実施例1−5、1−7〜1−11、PAA−NaとPAA−NH
4を添加した実施例1−6、PAA−NH
4とアルギン酸NH
4を添加した実施例1−12、PPA−NH
4とアルギン酸Naを添加した実施例1−13〜1−14で調製した分散液からそれぞれ作製した導電性結着層は、さらに耐溶剤性が改善された(実施例2−4〜2−11、2−13〜14)。
PAA−NH
4やアルギン酸NH
4は、加熱によってアンモニアが脱離し、オキサゾリンと高い反応性を持つPAAやアルギン酸になり、また、PAA−Naやアルギン酸Naは酸触媒(PAA)の存在下でオキサゾリンと反応し得るため、これらの化合物とオキサゾリン基とが関与した架橋により耐溶剤性がさらに改善されたものと推察される。
【0088】
以上のように、剥離試験において、オキサゾリンポリマーを用いて作製した導電性結着層は、集電基板であるアルミ箔および銅箔との高い密着性を示し、全く剥離しなかった。このことから、本発明の導電性炭素材料分散剤を用いることで、集電基板上に形成した薄膜が脱落しにくい、耐久性に優れた電極が製造できることがわかる。
一方、耐溶剤性試験において、オキサゾリンポリマーを用いて作製した導電性結着層に、適切なマトリックスポリマーや架橋剤を添加することによって、電極スラリーの分散媒や電解液に対する耐久性を向上できる。これにより、電極スラリーや電解液に対する導電性結着層の溶出、膨潤、脱落などの劣化を抑制することができ、その結果、電池の電圧降下を起こすことなく電流を取り出すことができると同時に、サイクル寿命が長い、安全性の高い二次電池を作製することができ、また、安全性の高い電気二重層キャパシタを作製することができる。
【0089】
[4]電極の作製
[実施例3−1]
活物質としてリン酸鉄リチウム(LFP、TATUNG FINE CHEMICALS製、17.3g)、バインダーとしてPVdFのNMP溶液(12質量%、12.8g)、導電助剤としてアセチレンブラック(AB、電気化学工業(株)製、デンカブラック、0.384g)およびNMP(9.54g)を混合し、T.K.ロボミックス(ホモディスパー2.5型(φ32)付き)(プライミクス(株)製)を用い、3,500rpmで1分間処理を行った。次いで、薄膜旋回型高速ミキサー フィルミクス40型(プライミクス(株)製)を用いて周速:20m/秒で30秒間の混合処理をし、さらに自転・公転ミキサーを用いて1000rpmで2分間脱泡することで電極スラリー(固形分濃度48質量%、LFP:PVdF:AB=8:90:2(質量比))を作製した。
実施例2−1の集電体の結着層の上に、ドクターブレード法により、先に調製した電極スラリーを均一(ウェット膜厚200μm)に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して導電性結着層上に活物質層を形成し、これをロールプレス機にて圧着して電極(膜厚55μm)を作製した。
【0090】
[実施例3−2〜3−9]
実施例2−1の複合集電体の代わりに、実施例2−2〜2−9の複合集電体をそれぞれ用いた以外は、実施例3−1と同様の方法で電極を作製した。
【0091】
[比較例3−1]
実施例2−1の複合集電体の代わりに、集電基板であるアルミ箔(厚み20μm)のみを用いた以外は、実施例3−1の方法と同様の方法で電極を作製した。
【0092】
[実施例3−10]
活物質としてケイ素(Si、(株)高純度化学研究所製、SIE23PB、8.89g)、バインダーとしてポリアミック酸(PI、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の反応物)のNMP溶液(15質量%、12.5g)、導電助剤としてアセチレンブラック(AB、電気化学工業(株)製、デンカブラック、0.936g)、およびNMP(7.69g)を混合し、T.K.ロボミックス(ホモディスパー2.5型(φ32)付き)(プライミクス(株)製)を用い、8,000rpmで1分間処理を行った。次いで、薄膜旋回型高速ミキサーを用いて周速:20m/秒で60秒間の混合処理をし、さらに自転・公転ミキサーを用いて1000rpmで2分間脱泡することで、電極スラリー(固形分濃度39質量%、Si:PI:AB=76:16:8(質量比))を作製した。
実施例2−12の複合集電体の結着層の上に、ドクターブレード法により、先に調製した電極スラリーを均一(ウェット膜厚50μm)に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して導電性結着層上に活物質層を形成し、これをロールプレス機にて圧着し、さらに、真空下350℃で40分間焼成し、電極を作製した。
【0093】
[比較例3−2]
実施例2−12の複合集電体の代わりに、集電基板である銅箔(厚み20μm)のみを用いた以外は、実施例3−10と同様の方法で電極を作製した。
【0094】
[実施例3−11]
電極材として活性炭(クラレケミカル(株)製、YP−50F)11.83g、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩(CMC−NH4、ダイセル化学工業(株)製、ダイセルCMC DN800H)の水溶液(1質量%)27.5g、導電助剤としてアセチレンブラック(AB、電気化学工業(株)製、デンカブラック)0.69g、蒸留水13.02gおよびスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を含む水系エマルジョン溶液(JSR(株)製、固形分48.5質量%、TRD2001)1.96を混合し、T.K.ロボミックス(ホモディスパー2.5型(φ32)付き)(プライミクス(株)製)を用い、5,000rpmで3分間処理を行った。次いで、薄膜旋回型高速ミキサー フィルミクス40型(プライミクス(株)製)を用いて周速:20m/秒で60秒間の混合処理をし、さらに自転・公転ミキサーを用いて1000rpmで2分間脱泡することで、電極スラリー(固形分濃度25質量%、活性炭:CMC−NH4:AB:SBR=86:2:5:7(質量比))を作製した。
実施例2−13の複合集電体の結着層の上に、ドクターブレード法により、先に調製した電極スラリーを均一(ウェット膜厚300μm)に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して導電性結着層上に活物質層を形成し、これをロールプレス機にて圧着して電極(膜厚120μm)を作製した。
【0095】
[実施例3−12]
実施例2−13の複合集電体の代わりに、実施例2−14の複合集電体を用いた以外は、実施例3−11と同様の方法で電極を作製した。
【0096】
[比較例3−3]
実施例2−13の複合集電体の代わりに、集電基板であるアルミ箔(厚み20μm)のみを用いた以外は、実施例3−11と同様の方法で電極を作製した。
【0097】
[5]リチウムイオン二次電池の作製および特性評価
[5−1]正極として用いた電池
[実施例4−1]
実施例3−1で作製した電極を直径10mmの円盤状に打ち抜き、質量を測定した後、100℃で15時間真空乾燥し、アルゴンで満たされたグローブボックスに移した。ワッシャーとスペーサーを溶接した2032型のコインセル(宝泉(株)製)のキャップにガスケットを載せ、直径14mmに打ち抜いたリチウム箔(本荘ケミカル(株)製、厚み0.17mm)を6枚重ねたものを設置し、その上に、電解液(キシダ化学(株)製、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)、電解質であるリチウムヘキサフルオロホスフェートを1mol/L含む)を24時間以上浸み込ませた、直径16mmに打ち抜いたセパレータ(セルガード(株)製、2400)を一枚重ねた。さらに上から、活物質を塗布した面を下にして先に円盤状に打ち抜いた電極を重ねた。電解液を1滴滴下した後、ケースを載せて、コインセルかしめ機で密封した。その後24時間静置し、二次電池を作製した。
【0098】
[実施例4−2〜4−9]
実施例3−1で作製した電極の代わりに、実施例3−2〜3−9で作製した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0099】
[比較例4−1]
実施例3−1で作製した電極の代わりに、比較例3−1で作製した電極を用いた以外は実施例4−1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0100】
実施例4−1〜4−9および比較例4−1で作製した二次電池の特性を評価した。正極における導電性結着層の安定性およびセル抵抗に対する導電性結着層の影響を評価することを目的として、以下の条件で充放電試験を行った。13サイクル目の、放電レート5Cのときの平均電圧(V)および放電容量(mAh/g)を表2に示す。
・電流:0.5C定電流充電、0.5C、3C、5C、10C、0.5Cの順に5サイクルずつ定電流放電(LFPの容量を170mAh/g)後、5Cで50サイクルまで定電流放電
・カットオフ電圧:4.50V−2.00V
・温度:室温
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示されるように、実施例4−1〜4−9で作製した電池は、比較例4−1で作製した電池と比較して、放電時により高い電圧と、より大きな放電容量を示した。これは、実施例の電池においては、活物質層と集電体との間に存在する導電性結着層がそれらの密着性を向上させ、その結果、活物質層および集電体間の界面抵抗が低くなったためと推測される。
また、実施例4−1〜4−9で作製した電池では、50サイクル後でも放電容量に大きな減少は認められなかった。このことから、多層CNT層はリチウムに対して4.5V付近の高電圧下でも酸化分解を起こさず、本発明の導電性結着を有する電極は、リチウムイオン二次電池の正極に適用可能であることがわかる。このことは、特に電気自動車用途など瞬間的に大電流が必要な用途において、電圧降下を起こすことなく電流を取り出すことができると同時に、サイクル寿命が長いエネルギー貯蔵デバイスを作製できることを意味する。
以上のことから、本発明の導電性炭素材料分散液を用いることにより、基材に塗布するだけで容易に導電性薄膜が成膜可能であるうえに、得られた導電性薄膜は二次電池の導電性結着層として好適であり、さらには、本発明のこのような導電性薄膜を結着層として有する二次電池用電極を二次電池の電極として、特にリチウムイオン二次電池の正極として用いることで、良好な特性を有する二次電池を得ることが可能となる。
【0103】
[5−2]負極として用いた電池
[実施例4−10]
実施例3−10で作製した電極を直径10mmの円盤状に打ち抜き、質量を測定した後、100℃で15時間真空乾燥し、アルゴンで満たされたグローブボックスに移した。ワッシャーとスペーサーを溶接した2032型のコインセル(宝泉(株)製)のキャップにガスケットを載せ、直径14mmに打ち抜いたリチウム箔(本荘ケミカル(株)製、厚み0.17mm)を6枚重ねたものを設置し、その上に、電解液(キシダ化学(株)製、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)、電解質であるリチウムヘキサフルオロホスフェートを1mol/L含む)を24時間以上浸み込ませた、直径16mmに打ち抜いたセパレータ(セルガード(株)製、2400)を一枚重ねた。さらに上から、活物質を塗布した面を下にして先に円盤状に打ち抜いた電極を重ねた。電解液を1滴滴下した後、ケースを載せて、コインセルかしめ機で密封した。その後24時間静置し、試験用の二次電池とした。
【0104】
[比較例4−2]
実施例3−10で作製した電極の代わりに、比較例3−2で作製した電極を用いた以外は、実施例4−10と同様の方法で二次電池を作製した。
【0105】
実施例4−10および比較例4−2で作製した二次電池の特性を評価した。陰極における導電性結着層の安定性およびセル抵抗に対する導電性結着層の影響を評価することを目的として、以下の条件で充放電試験を行った。
30サイクル目の放電容量を表3に示す。
・電流:0.1C定電流充放電(1サイクル目のみ0.01Vでの定電流定電圧充電、Siの容量を4200mAh/gとした)
・カットオフ電圧:1.50V−0.01V
・充電容量:活物質の重量を基準とし、2000mAh/gまで
・温度:室温
【0106】
【表3】
【0107】
30サイクル時において、放電容量が731mAh/gであった比較例4−2で作製した電池と比較して、実施例4−10で作製した電池は1950mAh/gという高い放電容量を維持していた。
以上のことから、本発明の導電性結着をリチウムイオン二次電池の負極、特に、活物質としてケイ素を備える負極に適用することで、良好な特性を有する二次電池を製造し得ることがわかる。
【0108】
[6]電気二重層キャパシタの作製および特性評価
[実施例5−1]
実施例3−11で作製した電極を直径10mmの円盤状に2枚打ち抜き、質量を測定した後、130℃で8時間真空乾燥し、アルゴンで満たされたグローブボックスに移した。電極2枚と直径16mmに打ち抜いたセパレータ(ニッポン高度紙工業(株)製、TF−40−50)1枚を、電解液(キシダ化学(株)製、プロピレンカーボネート、電解質であるテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを1mol/L含む)に浸し、0.05MPaで20分間の減圧脱泡処理をした。ワッシャーとスペーサーを溶接した2032型のコインセル(宝泉(株)製)のケースに、先に減圧脱泡処理をした電極1枚を、活性炭を塗布した面を上にして重ね、その上にセパレータを重ねた。さらに上から、先に減圧脱泡処理をした電極1枚を、活性炭を塗布した面を下にして重ねた。電解液を3滴滴下した後、ガスケットを載せ、これにワッシャーとスペーサーを溶接したキャップを載せて、コインセルかしめ機で密封した。その後24時間静置し、電気二重層キャパシタを作製した。
【0109】
[実施例5−2]
実施例3−11で作製した電極の代わりに、実施例3−12で作製した電極を用いた以外は、実施例5−1と同様の方法で電気二重層キャパシタを作製した。
【0110】
[比較例5−1]
実施例3−11で作製した電極の代わりに、比較例3−3で作製した電極を用いた以外は、実施例5−1と同様の方法で電気二重層キャパシタを作製した。
【0111】
実施例5−1〜5−2および比較例5−1で作製した電気二重層キャパシタの特性を評価した。セル抵抗に対する導電性結着層の影響を評価することを目的として、以下の条件で充放電試験を行った。31サイクル目の電圧上昇から算出したセル抵抗(Ω)を表4に示す。
・電流:0.1mA/cm
2で8サイクル、0.2mA/cm
2、0.5mA/cm
2、1.0mA/cm
2、2.0mA/cm
2、4.0mA/cm
2、8.0mA/cm
2の順に各5サイクルずつ定電流充放電した後、0.1mA/cm
2で定電流充電し、最後に定電流定電圧放電
・カットオフ電圧:最初の3サイクルだけ2.0V−0Vで、以後は2.5V−0V
・温度:室温
【0112】
【表4】
【0113】
また、集電体−活物質の界面に対する導電性結着層の影響を評価することを目的として、以下の条件でインピーダンス測定を行った。インピーダンス測定の結果を
図1に示す。
・AC Amplitude:10mVrms
・周波数:200kHz〜100mHz
【0114】
表4、
図1に示されるように、実施例5−1〜5−2で作製した電気二重層キャパシタは、比較例5−1で作製した電気二重層キャパシタと比較して、低いセル抵抗と低い界面抵抗を示した。これは、実施例の電気二重層キャパシタにおいては、活物質層と集電体との間に存在する導電性結着層がそれらの密着性を向上させ、その結果、活物質層および集電体間の界面抵抗が低くなったためと推測される。
以上のことから、本発明の導電性炭素材料分散液を用いることにより、基材に塗布するだけで容易に導電性薄膜が成膜可能であるうえに、得られた導電性薄膜は電気二重層キャパシタの導電性結着層として好適であり、このような導電性薄膜を結着層として有する電気二重層キャパシタ用電極を用いることで、良好な特性を有する電気二重層キャパシタを得ることが可能となる。
例えば、式(1)で示されるようなオキサゾリン基含有モノマーを用いて得られた、側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーからなる導電性炭素材料分散剤は、導電性炭素材料の分散能に優れるとともに、導電性炭素材料とともに薄膜化した場合に集電基板に対する密着性に優れた薄膜を与える。
は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)